北東北3県(岩手・秋田・青森)におけるナラ枯れ被害は、近年急速に拡大、特にミズナラやコナラなどのナラ類が多く分布する地域で深刻な影響が出ている。ナラ枯れが発生する可能性の高い地域をあらかじめ把握しておくことは重要。東北地方でナラ枯れの被害が激化しやすい ミズナラ、カシワ、コナラ 、クリ等がどこに分布しているか、ミズナラ、コナラ、ブナ、針葉樹人工林、マツ類、その他を凡例として色分けした植生分布図が作成されている。近藤洋史・斉藤正一「ナラ枯れ被害に対応した東北地方の森林植生マップの作成」(『山形大学紀要(農学)』19巻4号、2025年2月)142頁東日本でのナラ枯れ拡大、近隣の既存被害地からの移住により分布拡大

2024年11月26日の森林総研プレスリリース「東日本のカシノナガキクイムシの由来を遺伝情報により解明-ナラ枯れがどのように広がったかを理解する手がかり-」によれば、ナラ枯れは2008年頃までは本州中部日本海側の地域(左図:オレンジ色)を中心に発生していたが、その後23年までには東北地方と北海道南端部、関東地方の広い範囲(左図:黄色)に拡大。東日本各地から採集したカシノナガキクイムシのDNA分析を行ったところ、東日本のカシノナガキクイムシには地域による遺伝的な違いがあり、これらはすくなくとも3つの遺伝的グループ(右図:茶色、青色、緑色)に分けられることがあきらかになり、近年、ナラ枯れ被害をもたらしているカシノナガキクイムシの由来は単一ではないことが分かった。
東日本におけるカシノナガキクイムシの遺伝的構造、過去の集団動態モデル図

左図の円グラフの大きさは解析した個体数(全地域で合計165固体)。円グラフの色は3つの遺伝的グループに由来する割合を示している。分布域が拡大するなかで交錯し、一部地域では交配した集団があることもまた明らかになった。 それぞれのグループの分布域は拡大しており、近年新たに被害が発生した地点では、近隣の既被害地と遺伝的に同じグループのカシノナガキクイムシが被害の原因となっていた。このことから近年新たに発生した被害の多くは、隣県などの近隣の既存の被害地からカシノナガキクイムシが飛来・移住することにより被害地拡大が起きた結果である可能性が高い。ナラ枯れが発生していない地域では、近隣被害地からのカシノナガキクイムシの飛来を警戒して対策を行うことが重要である。
