草原の歴史 菅平高原・峰の原高原 山城 農業用ため池
茅場の斜面は崩れないという経験則
森林の脆弱性 根返り:根こそぎ倒れ地面がめくれる
樹木は斜面を不安定化(河川法、1964年)
植樹木の主根が堤防内に入らぬよう、安定性を損なうことがないよう十分留意すること
(能登半島地震でも、約4割の池で亀裂・崩壊等)
ため池防災特措法(2020~30年)
46都道府県の6160池で防災工事が計画(NHK調べ)
土地改良法・指針による環境配慮が、ため池土手は見落とされていた
堤体植生の掘削、張芝による植生改変
※2018 水と巡る信州上田地域の旅 ~塩田ため池群~ 6:01
●みんなでため池の植物を守る 2023.12.3
塩田にたくさんあるため池。「日本のため池百選」にも選定されているのですが、塩田平土地改良区に登録されているため池の数は41。貯水量を合計すると300万トンにもなります。一般家庭が一年間に使う水の量が平均300トンだそうで、そうすると1万軒のお宅が使う年間使用量を賄える勘定に。そんなたくさんあるため池ですが、数年前から耐震工事が行われています。東日本大震災で福島県のため池が決壊し、大きな被害が出たことを契機に、全国的にため池の耐震工事が進められています。塩田平でも、ため池の耐震調査を行い、対策が必要な所で順次工事が行われています。工事で何をするのかと言うと、基本は堤を厚くすること。決壊しにくくするためです。堤を厚くするということは、工事する時はそこを削ったりするわけです。そうすると、そこに生えている植物はなくなってしまいます。工事が終わって、もしかしたら、何年か先にはまた生えてくるかもしれませんが、もう二度と見られなくなる可能性は高いですよね。……工事が始まる前に堤の植物を別のところに移植して、工事が終わったら堤に埋め戻す。これまで、工事が行われたため池で行われてきたのですが、今年後期は、塩吹池と浅間池、そして不動池で希少植物を移植しました。塩吹池と浅間池は、堤体に生えている植物を掘り取って別の場所に移す作業を行い、不動池は池の工事が完了したので、舌喰池のそばに移植してあった植物を堤体に戻す作業を行いました。筑波大学の田中准教授の指導を受けながら、地元自治会、水利組合が中心となり地元住民が協力して作業を行い、作業は無事に終わりました。……(F森)●塩田のため池を写真で観る フォトギャラリーに40のため池写真 2021.4.28
●塩田のため池をドローンから視る ①砂原池 ②山田池 ③塩野池
※ため池堰堤の造成後年数とともに希少植物種数が増えるか?ー83地点での検証ー
日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨ESJ70 Abstract
人間の草原利用が減ることで半自然草原が近年急速に減少し、多くの草原性生物が絶滅の危機に瀕している。そのため生物多様性が高い草原を特定して保全する必要がある。先行研究では、継続年数が長い草原で植物の多様性が高いことが分かっているが、植物の多様性が増えるのに草原の継続年数がどれくらい必要なのかは分かっていなかった。そこで、様々な継続年数の草原が多数得られるため池堰堤を対象に、草原の継続年数が植物の多様性に与える効果を明らかにすることを本研究の目的とした。※ため池に生える希少植物について学ぶ 小学校で授業 上田
長野県上田市塩田平周辺で、ため池堰堤の造成から1~450年が経過した計73か所と、対照区として、10~70年前に造成された公園等10か所を対象とした。2020~2022年のいずれかの年の5~10月に3回、各調査地に出現する維管束植物種を約300~8000㎡の範囲(広域調査)と、1×20 mトランセクト(トランセクト調査)で調べた。
広域調査では、計553種の植物種が出現し、スズサイコ・ノジトラノオ・キキョウなどの環境省指定絶滅危惧種といずれかの都道府県でレッドリストに記載されている希少種が、合計220種出現し、そのうち148種はため池堰堤でのみ見つかった。トランセクト調査では、草原の継続年数が増えるほど外来種数が減少し、約300年で最小値に漸近した。在来普通種数と草原性希少種数は継続年数によって増加し、それぞれ約100年、200年で最大値に漸近した。草原の継続年数によって種組成が異なり、マツバウンランのような年数の経過とともに減少する種群と、ツリガネニンジンやクサボケのような年数の経過とともに蓄積して歴史の古い草原の指標となる種群が認められた。
以上より、200年以上継続している草原は保全優先度が特に高く、ポスト2020年目標として国際的な注目を集めている民間保全地(OECM)の有力な候補になりうる。現在、ため池の耐震工事による植生破壊が全国的に進んでいるため、貴重な植生に配慮した工事が望まれる。
景観の美しさから、国の「ため池百選」に選ばれている上田市の塩田平のため池などに生えている希少な植物について学ぶ授業が、地元の小学校で行われました。雨が少ない上田市の塩田平では、江戸時代から多くのため池がつくられ、その景観の美しさから「塩田平のため池群」として農林水産省の「ため池百選」に選ばれています。11日は、ため池の土手などに生えている希少な植物について学ぶ授業が地元の塩田西小学校で行われ、5年生が参加しました。授業では、植物の研究をしている筑波大学山岳科学センターの田中健太准教授が、上田市内には、およそ100か所のため池があることや、学校の近くにある山田池には、「スズサイコ」など複数の希少な植物が生えていると説明しました。また、全国的にため池をめぐっては、決壊などを防ぐため防災工事が進められていますが、田中准教授は「工事を進めながらもため池の希少な植物を守っていくことが大切だ」と呼びかけていました。授業を受けた児童は「今にもなくなりそうな希少な植物が身近にあることを知りました。自然を守りたいと思いました」と話していました。
① 水位の調整
② 水入れ(パイプライン方式、水入れ役方式)
④ 設備の点検・整備
⑤ お金の管理
(1) 日常的な会計 人件費(草刈りや水入れに関わる人件費)
(2) 非日常的な会計
2. 管理作業の主体
水利組織:水位の調整やお金の管理、施設の点検・整備、,水入れなど
水利組織に加えて,農家や住民が参加:草刈りや水路清掃
3. まとめ
筑波大学大学院生命環境科学研究科『地域研究年報』43、2021年
本研究の目的は、長野県上田市塩田地域におけるため池を事例とし、その維持管理と多面的利用の特徴を明らかにすることを通じて、ため池群として存続させるための望ましい維持管理の在り方を検討することである。産業構造の変化に伴う第一次産業の衰退や、地域の水利事情の改善により、農業用水としてのため池の需要は縮小している。それに伴い、地域において一様な管理体制は機能しなくなり、それぞれのため池に合わせた維持管理を行うことが望まれる。その際に重要となるのが、ため池群としての維持管理である。具体的には、人的資源が豊富な自治会やその他の民間団体、そして、今まで直接管理に携わることのなかった行政が、維持管理の難しくなったため池の管理者と連携・協働を通じて、その存続を担うような体制である。このような体制を築くことができれば、ため池群としての長期的な存続が期待できる。