畦畔
静岡県の『小山町史 第9巻 民俗編』(小山町、1993年)92頁~93頁から引用します。静岡県の最北東に位置し、神奈川県・山梨県と接しています。富士山の裾野にあり景観のよい棚田があるそうです。
……大胡田の田は雨が降ると犂ははとんど引けなかった。ここでは田土に粘りがあり水持ちが良く、雨が上がってもすぐには水が引かなかった。水が引かないうちに犂ですくと、さらに田土が粘りをもつ。一方、一色の正倉あたりの土は砂まじりのため乾きぎみで、雨が上がればすぐ犂をいれて耕起できた。……(同書92頁)
土質と畦つくりの方法 三月から四月にかけて畦作りがはじまる。これにはいく通りかの方法があったが、いずれもかなりの重労働であった。現在はブロック畦の田が多くなっているが、かつては皆土畦であった。畦は毎年、前年の畦を崩して練り直し、鍬で新しく作り直した。どの田もみな畦をこしらえ、水持ちを良くした。大胡田では畦を鍬で羊羹のように丁寧に塗り上げた。この畦の作り方をネリアゼあるいはヌリアゼという。小山町では畦の作り方にこの他にフミアゼという方法があった。これは後でふれる。畦作りは鍬で塗っていく。これも大胡田ではほど良い加減に水が乾き、おおよそ固りかけたという時に仕上げをしていくが、前述の正倉[まさぐら]あたりでは作るはしから仕上げていかないとすぐ固くなってしまうという。※大胡田、正倉の土質
畦作りはまず前年の冬にアゼッカームキといって畦土のうわ皮の雑草を削り落としておく。これは畦に付かないように外に出してしまう。春に畦土の中のきれいなところを鍬でこなして柔らかくする。ここまではヌリアゲもフミアゼも同様である。ここまではヌリアゼもフミアゼも同様である。ここからネリアゼの場合は足で踏みつけ畦の形を作ると、そこに水を掛けて鍬でこねながら三回くらい畦をたたいては押し、又水を掛けては叩き、羊羹のように塗り上げた。大胡田の他に菅沼の原向[ハラムキ]でもネリアゼを行っていたというが、同じ菅沼でも坂下はフミアゼを行った。また湯船においてもフミアゼが主だったという。フミアゼは田土を鍬で畦に載せ、練らないで畦の両側面と上を三回ほど足で踏み付けて仕上げた。土に力のある田ではフミアゼでももつ。大胡田の田の場合は、フミアゼを行うと水をかけた際に畦がくずれるという。代かき後畦ぬりを行う。
……大胡田の田は雨が降ると犂ははとんど引けなかった。ここでは田土に粘りがあり水持ちが良く、雨が上がってもすぐには水が引かなかった。水が引かないうちに犂ですくと、さらに田土が粘りをもつ。一方、一色の正倉あたりの土は砂まじりのため乾きぎみで、雨が上がればすぐ犂をいれて耕起できた。……(同書92頁)
クロヌリ 『東松山市史 資料編第5巻 民俗編』(東松山市、1983年)61頁~62頁
田に水を保持させるため、畦の側面に土を塗ることをクロヌリと言う。クロヌリは田ウナイが終り、田かきをする前に行うのが普通である。この作業はクロ根切りから始まる。鍬かスキで畦の側面を切り落とすことをクロ根を切ると言う。次に畦に添って約30センチメートルの幅に土を寄せ、足で水と土とをこねる。これを手で壁を塗るように畦の側面に張りつけ、後で鍬を使って仕上げる。クロヌリの後は水を入れておき田かきになる。天水場や棚田ではクロは厚く、高く塗るので大変な仕事である。又天水場ではクロツキと言ってキネで畦の中央をたたいて固め水のもれるのを防いだ。
クロ 横浜市・港北ニュータウン郷土誌『都筑の民俗』(港北ニュータウン郷土誌編纂委員会、1989年)86頁~87頁
クロ ここでいうクロとは田の畦のことである。これは田の境であり、田の水の漏水をふせぐ土手であり、さらには田の歩道でもあった。そのため、それらの役目にたえるため、十分に仕上げておかなければならなかった。※風呂鍬とは(ウィキペディア「鍬」より)
作り方には二つの方法がとられた。一つはモトグロと称される旧年のクロをクワ(風呂鍬)でもって完全に崩し、その土をクロネカシといって、水分をふくませるように一日放置した後で、新規に台形状のクロを築く方法である。他の一つは、モトグロの表面に生えた草をクサカリガマでもって刈り取ったのち、クワでもって、表面の土を削りとり、そこに十分に水分をふくんだ土をクロツケといって貼りつけていく方法である。
その仕上げはクワでクロの傾斜面を強く押圧しながら形成していくが、このクロヌリができれば一人前と評価された。なかでも段差のある谷戸のヒャッタでのそれはむずかしく、かなりの技術を要求され、百姓の腕のみせどころとされていたが、初体験のころは、仕上がったと思い後を振向くと、クロは直線ではなく曲がったり凹凸[おうとつ]があったりして、さんざん笑いの種にされたという。
なお、クロのなかに、麦藁を入れてより正確な田境の証とした話も伝わっている。
鍬 ……昔は鉄が高価で貴重であったので、木の板で刃を作り、刃先のみに鉄を接合した。刃の木製部分を風呂と言い、風呂鍬と風呂なし鍬との2種類があった。
風呂鍬は、風呂、刃、柄の3部を明確に区分でき、平鍬、台鍬ともいう。打引鍬に属し、整地、中耕などに用いられる。京鍬、江戸鍬、野州鍬、南部鍬、相馬鍬などが属する。構造が堅牢であり、砂質壌土地に適する。
風呂なし鍬は、金鍬(かなぐわ)ともいい、風呂と刃とが鉄板1枚でできている。打ち鍬に属し、開墾や重粘土地の耕耘に適する。……
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