桶川市川田谷生涯学習センター・道の駅べに花の郷おけがわで開催された『明治・大正いも万博』で、歴史民俗資料館展示室では「おけがわ甘藷奇譚」を実施していました。展示資料の中に1903年(明治36年)に報知新聞で連載され熱狂的な人気を博し、単行本として刊行されるや空前の大ベストセラーとなった村井弦斎『食道楽』がありました。『食道楽』は春・夏・秋・冬の4部構成で和洋中の600数十種の料理が登場しています。同書冬の巻巻末の付録『食道楽料理法索引」を整理した岩波文庫『食道楽』(2005年、解説:黒岩比佐子)下巻末の「料理法索引」には薩摩芋の料理として、「薩摩芋入りの餅、薩摩芋の梅干しあえ、薩摩芋の粥、薩摩芋の酢煮、薩摩芋の西洋料理、薩摩芋のセンの煮物、薩摩芋のソフレー、薩摩芋の茶巾絞り、薩摩芋のプデン、薩摩芋のフライ、薩摩芋のマッシ、薩摩芋の蒸物、薩摩芋のロース、薩摩芋飯」が挙げられています。
『食道楽』春の巻口絵「大隈伯爵邸台所の図」
……妻君まず芋の大なるものを択び「お登和さん、何から先へ致しましょう。」お登和「そうですね。何に致すにも一旦先へ茹でますから茹でるように皮を剥いて裁って下さい。私が今こちらのを繊に截ります。」と自分は庖丁を取りて芋の繊を截り始む。その内に妻君と下女は芋を適度に切りて鍋に入れつつ妻君フト顧りみ「お登和さん、大層マア長いセンが出来ましたね。二尺も三尺もどこまでも切れないのが不思議です。よくそう綺麗に平に出来ますね」と打驚く。お登和なお手を停めず「イイエ私は下手でございます。上手な人はモット綺麗にモット細くどこまでも切れずに致します。全体薩摩芋より里芋の方が繊にすると綺麗に出来ます。……
岩波文庫版『食道楽』(上・下、2005年)では、この部分は上巻62頁です。
……妻君先ず芋の大なるものを択び「お登和さん、何から先へ致しましょう」お登和「そうですね、何に致すにも一旦 先へ湯煮 ますから湯煮るように皮を剥 いて截 って下さい。私が今此方 のを繊 に截ります」と自分は庖丁 を取りて芋の繊を截り始む。その内に妻君と下女は芋を適度に切りて鍋に入れつつ妻君フト顧りみ「お登和さん、大層マア長い繊が出来ましたね。二尺も三尺も何処 までも切れないのが不思議です。よくそう綺麗 に平 に出来ますね」と打驚 く。お登和なお手を停めず「イイエ私は下手でございます。上手な人はモット綺麗にモット細く何処までも切れずに致します。全体薩摩芋より里芋の方が繊にすると綺麗に出来ます。……
「繊に截る」とは、「二尺も三尺もどこまでも切れない」とありますので、包丁で薩摩芋を細く糸状に切る(千切りする)のではなく、茹でた薩摩芋を回しながら包丁で長く「桂剥き」して、それを「繊に截る」(千切りする)ということなのでしょう。
YouTubeで薩摩芋を包丁で桂剥きしている動画は見つけられませんでしたが、包丁で長芋・大根を桂剥きしている動画や「業務用スライサー」で桂剥きしている動画はありました。
※業務用かつらむきスライサー ピールS 3:25 千葉工業所
※明治最大のベストセラー作家 村井弦斎














