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気候変動・脱炭素社会

川崎市が太陽光パネル設置義務化条令を可決(3月17日) 3月20日

川崎市議会は2023年3月17日、定例会本会議で、新築建物に太陽光パネル設置などを義務づける「川崎市地球温暖化対策推進条例改正案」を可決。太陽光パネルの設置義務化は東京都、京都府・京都市(2022年)、群馬県(2023年予定)に次いで4例目。設置の義務化については2025年4月に開始を予定している。
★川崎市・太陽光発電設備等に関するQ&A_01

川崎市・太陽光発電設備等に関するQ&A
(仮称)建築物太陽光発電設備等総合促進事業 編
  更新日:23年1月17日 作成日:22年11月15日

  Q&A目次
1 よくあるご質問
1.1 経済メリット・コストなど
 Q1-1 太陽光発電システム(4kW)の支出と収入は?
  ★川崎市・太陽光発電設備等に関するQ&A_05
 Q1-2 太陽光発電システム(2kW)の支出と収入は?
  ★川崎市・太陽光発電設備等に関するQ&A_07
 Q2 太陽光発電設備の初期費用は?
  ★川崎市・太陽光発電設備等に関するQ&A_08
 Q3 太陽光発電設備の初期費用を抑える方法はありますか?
 Q4 FIT価格が大幅に下落しているため、経済的なメリットは無いのでは?
 Q5 太陽光発電設備設置により固定資産税といった負担が上がるのではないか?
 Q6 義務に伴う補助制度はありますか?
1.2 建築的な課題・メンテナンスなど
 Q7 太陽光パネルやパワーコンディショナーの寿命はどれくらいですか?
 Q8 太陽光発電のメンテナンスは何をすればいいのでしょうか?
 Q9 雨漏りのリスクをどのように考えていますか?
 Q10 太陽光発電設備を設置すると外観が悪くなりませんか?
 Q11 屋根のメンテナンスはこれまでどおりできるのか?(一旦パネルを取り外すのか)
 Q12 屋根に重いものが載っているので建物に悪影響が出ないでしょうか?
 Q13 屋上が使えなくなりますか?
 Q14 壊れたらどうするのですか?
1.3 災害への備えなど
 Q15 太陽光発電設備のある場合、水による消火で感電のリスクはありますか?
 Q16 台風、地震、ひょう等の自然災害で壊れるリスクに対してどのように考えているのか。
 Q17 落雷を受けやすいのではないでしょうか?
 Q18 水没・浸水した際の対応は?
 Q19 自然災害で太陽光パネルが破損した場合、火災保険の対象になりますか?
1.4 廃棄・環境問題など
 Q20 太陽光モジュール(パネル)は何で構成されてますか?
  ★川崎市・太陽光発電設備等に関するQ&A_29

 Q21 太陽光発電設備のリサイクル費用はどの程度かかるのでしょうか?
  ★川崎市・太陽光発電設備等に関するQ&A_30

 Q22 太陽光発電設備のリサイクルや廃棄はしっかりとできているのですか?
  ★川崎市・太陽光発電設備等に関するQ&A_31

 Q23 太陽光発電設備のリサイクル時に有害物質が漏出しませんか?
  ★川崎市・太陽光発電設備等に関するQ&A_32

 Q24 反射光で近隣からの苦情の原因になりませんか?
  ★川崎市・太陽光発電設備等に関するQ&A_33
1.5 国際・人権問題など
 Q25 海外製品を使うのは不安ですが大丈夫でしょうか?
  ★川崎市・太陽光発電設備等に関するQ&A_35

 Q26 太陽光パネルの生産は中国に集中しており、ウイグル自治区における人権問題が心配ですが、社会的な問題はないのでしょうか?
  ★川崎市・太陽光発電設備等に関するQ&A_36

1.6 電力系統問題など
 Q27 電気料はなぜ高騰しているのでしょうか?
  ★川崎市・太陽光発電設備等に関するQ&A_38

 Q28 太陽光発電設備を設置すると社会全体として再生可能エネルギー発電促進賦課金の負担が増加するのでは?
  ★川崎市・太陽光発電設備等に関するQ&A_39

 Q29 普及が進むと出力制御により売電できなくなれば、コストメリットが出ないのではないでしょうか?
1.7 太陽光発電設備の機能など
 Q30-1 そもそも、太陽光発電設備とは何ですか?①
  ★川崎市・太陽光発電設備等に関するQ&A_42

 Q30-2 そもそも、太陽光発電設備とは何ですか?②
  ★川崎市・太陽光発電設備等に関するQ&A_43

 Q31 太陽光ではどの程度の発電ができるのですか?夜間や悪天候時は?
  ★川崎市・太陽光発電設備等に関するQ&A_44

 Q32 現在の国内における太陽光発電の導入状況は?
  ★川崎市・太陽光発電設備等に関するQ&A_45

 Q33 太陽光発電によるCO2削減効果は?
  ★川崎市・太陽光発電設備等に関するQ&A_46

2 制度に関するご質問
 Q34 市民に義務が課されるのですか?
 Q35 発電量が少ないと想定され、メリットが少ない(日射量、屋根面積が小さいなど)場合でも必ず設置しなければならないのか?
 Q36 義務を履行できない場合はどうなるのでしょうか?
 Q37 省エネの取組みは必要ないのですか?
 Q38 市の公共施設には太陽光発電設備を設置しないのか?
3 なぜ、川崎市がこれをやる?
 Q39-1 なぜ、川崎市が新たな制度をはじめるのか?①
 Q39-2 なぜ、川崎市が新たな制度をはじめるのか?②
4 その他
 Q40 太陽光パネルの製造、廃棄時のエネルギー(CO2排出量)が大きく、逆に環境問題を悪化させる原因となるのではないか?
  ★川崎市・太陽光発電設備等に関するQ&A_57
川崎市『太陽光発電設備について(Q&A(よくある質問)、導入シミュレーション、補助制度等)』(2023年2月9日)
  


市民環境会議(3/19)参加者募集 2月1日

健康・快適で電気代も安心な新しい家づくりと暮らし方をテーマにした3月19日に開催される市民環境会議のチラシ(環境基本計画市民推進委員会『ひがしまつやまニュースレター』13号)が市広報とともに各戸配布されました。
表_ニュースレターNo.13市民環境会議

テーマ:健康・快適で電気代も安心な新しい家づくりと暮らし方
       ~今、住宅用太陽光発電が必要な理由~
基調講演:東京大学大学院工学系研究科 前真之 准教授
日時:3月19日(日)10:00 ~ 11:30
   東松山市総合会館3階303会議室・オンライン(Zoom)
参加費:無料
申込方法:KANKYOSEISAKUKA@city.higashimatsuyama.lg.jp
問合せ:東松山市役所環境政策課(0493-63-5006 直通)

『都市の脱炭素化』解説動画・ウェビナー 4月22日

小端拓郎編著『都市の脱炭素化』(大河出版、2021年10月、2750円)の各章執筆者の解説動画19本・資料、第1~5部のウェビナー・質問の回答が国立環境研究所 社会対話・協働推進オフィスのサイトで公開されています。(YouTube国立環境研究所動画チャンネル 『都市の脱炭素化』講演動画シリーズ
都市の脱炭素化都市の脱炭素化オンラインイベント

はじめに
第1部.都市生活の脱炭素化
 1.1 家庭での脱炭素化
 1.2 家庭生活に伴う直接・間接CO2 排出と脱炭素型ライフスタイル
 1.3 食システムの脱炭素化に向けた食行動
 1.4 電化とデジタル化が進む都市の脱炭素化を担う送電網
 1.5 都市地域炭素マッピング:時空間詳細なCO2排出量の可視化
 ウェビナー①「食や住、ライフスタイルでCO2をどう減らす?」
第2部.再生可能エネルギーの活用
 2.1 進化を続ける営農型太陽光発電
 2.2 都市におけるバイオエネルギー利用の方向性 
 2.3 デンマークの風力主力化モデル
 2.4 地熱エネルギーの活用
第3部.公平で速やかな都市の脱炭素化に向けた課題
 3.1 都市の中の太陽光―導入拡大に向けた法的・制度的課題
 3.2 公平なエネルギー転換:気候正義とエネルギー正義の観点から
 3.3 脱炭素都市・地域づくりに向けたNGOの取り組み
 3.4 資源ネクサスと行政計画―京都市のケースを中心として
 ウェビナー③「公平な都市の脱炭素化に向けた課題-法や制度、協働の視点から」
第4部.地方自治体の脱炭素化に向けた役割と取り組み
 4.1 脱炭素社会に向けたフューチャー・デザイン
 4.2 1.5℃に向けた京都市の挑戦
 4.3 小田原市におけるシェアリングEVを活用した脱炭素型地域交通モデル
 4.4 脱炭素社会の実現に向けた地方公共団体の取組について
第5部.自動車の電動化からSolarEVシティー構築に向けて
 5.1 自動車の電動化
 5.2 V2Hシステムとエネルギーマネジメント
 5.3 分散協調メカニズムの活用による都市の脱炭素化実現の可能性
 5.4 SolarEVシティー構想:新たな都市電力とモビリティーシステムの在り方
 ウェビナー⑤「自動車の電動化からSolarEVシティー構築に向けて」

10 New Insights in Climate Science 2021 2月21日

21年10月31日~11月12日にイギリス・グラスゴーで開催されたCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)で、Future Earth、 the Earth League 、the World Climate Research Programme (WCRP) による報告書 10 New Insights in Climate Science 2021 が公表されました。
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2021年 気候変動について今伝えたい10の重要なメッセージ
 

 日本語版
 

 1.温暖化を1.5℃で安定させることはまだ可能だが、世界中で早急かつ基本的な行動が必要である
 2.メタンと亜酸化窒素の排出量が急速に増加しており、地球は2.7℃の温暖化に向かっている
 3.大規模な森林火災ー気候変動によって、火災の規模が新たな時限に達し、甚大な影響を及ぼしている
 4.貴報変動のティッピング・エリメント(地球環境の激変をもたらす事象)がインパクトの大きなリスクをもたらす
 5.グローバルな気候変動対策は公正でなければならない
 6.家庭の行動変化への支援は、気候変動対策において重要だが見落とされがちである
 7.政治的課題がカーボンプライシングの有効性を阻害する
 8.自然に根ざした課題解決はパリ協定達成のために重要だが、細かい点にも注意が必要である
 9.海洋生態系のレジリエンスを高めるには、気候変動に適応した保全と管理、そしてグローバルなスチュワードシップが必要である
 10.気候変動の緩和策は、人々の健康と健全な環境にとって複数の直接的なメリットがあることから、必要なコストを正当化することができる

10 New Insights in Climate Science 2020 2月20日

気候変動に関する最新かつ重要な科学的知見をまとめたFuture Earth、The Earth League、World Climate Research Programme(世界気候研究計画)による報告書 10 New Insights in Climate Science 2020 です。
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2020年 気候変動について今伝えたい10の重要なメッセージ


 1. パリ協定達成のためには、野心的な排出削減が必要なことが、モデルの改良によって強調された
 2. 融解する永久凍土からの排出量が、これまでの予想よりも多くなるおそれがある
 3. 森林伐採が熱帯の炭素吸収源を劣化させている
 4. 気候変動は水の危機を著しく悪化させる
 5. 気候変動はメンタルヘルスに著しく影響を与える
 6. 政府はCOVID-19からのグリーンリカバリーの機会を活かせていない
 7.  COVD-19と気候変動は、新しい社会契約が必要なことを証明した
 8. 成長に焦点を当てた景気刺激策は、パリ協定を危機に陥れる
 9. 公正で持続可能な社会への転換には、都市の電化が極めて重要である
 10. 気候訴訟は人権擁護のための重要な気候行動である

※日本語版の出版を記念してオンラインセミナーが2021年6月9日に開催されました。
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10 New Insights in Climate Science 2019 2月19日

2019年12月2~15日、COP25(気候変動枠組条約【UNFCCC】第25回締約国会議)がスペインのマドリードで開催され、12月6日、Future EarthとEarth Leagueによって 10 New Insights in Climate Science 2019(「2019年 気候科学からの10の新たな考察」)が公表されました。これは気候科学の2019年における最新で最も重要な科学的知見をまとめたものです。
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 1. 世界は気候危機の回避に向かっていない
 2. 気候変動は予測よりも速く進行し、影響も大きくなっている
 3. 気候変動はあらゆる山々の氷河・氷雪・永久凍土に影響を及ぼす
 4. 世界の森林は気候変動の脅威にさらされ、大きな影響が出ている
 5. 2019 年、異常気象は「新たな常態(the new normal)」になった
 6. 生物多様性―地球のレジリエンス(回復力)の支えが脅かされている
 7. 気候変動は、何億人もの食料安全保障と健康を脅かす
 8. 最も脆弱で貧しい人々が、最も気候変動の影響を受ける
 9. 気候変動の影響に対する緩和と適応を成功させるには、公正さと平等が鍵となる
 10. 気候変動に対して、社会が動き出そうとしている(Social Tipping Point)

亀山康子「COP25の概要と残された課題」(『国立環境研究所社会システム領域』2019年12月27日記事)

最重要KPIはカーボンバジェット 2月7日

昨年11月、日本経済新聞出版から発行された気候変動が企業価値に影響する背景・経路・ロジックを解説した初の入門書、松尾雄介著・日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)協力『脱炭素経営入門 気候変動時代の競争力』出版されました。本日実施されたウェビナー『気候変動時代に求められる企業行動』(YouTube 1:59:52)を視聴しました。「なぜ、海外の企業・投資家と、日本企業や投資家との間に、取り組みレベルの大きなギャップがあるのか」、「なぜ、一部の日本企業は、脱炭素化に逆行する投資や意思決定を行ってしまうのか」。最重要KPI(重要業績評価指標)はカーボンバジェットです。効率的で効果的な気候リスクマネジメントの最善手が選択されているのか。現在の取り組みだけでは1.5℃達成は不可能です。
松尾雄介さんの基調報告「『脱炭素経営入門 気候変動時代の競争力』の概要」は、YouTubeの6:28~29:50、スライド資料はこちらです。

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自動車を動かすのに投じる燃料エネルギー投入100に対して、どれだけ動力になっているか。
熱効率(エネルギー変換効率):BEV(充電式電気自動車)77、FCV(水素燃料電池自動車)30、PtL(合成燃料自動車。CO2と水素を合成して製造される燃料。人工原油 Syncrude)13。
ウェビナーIGES松尾21
上図の出典:“Response to stakeholder consultation on an ‘EU strategy for Smart Sector Integration’”, Transport and Environment, 2021.

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上図の出典:T&E (2018) Roadmap to decarbonising European cars
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A clean shift for EU transport fuels? T&E recommendations for the RED review November 2021
  TE Briefing REDⅡ review Autumn 2021  Final 2021.11.22
   REDⅡ:2018年に改正された再生可能エネルギー指令.。
    2021年7月から完全施行を迎えるタイミングで、次の改定案(以下、REDⅢ)が示された
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REDの「水素」は「グリーン水素」
 丸田昭輝「欧州「Fit for 55」政策パッケージにおける水素・合成燃料の位置づけと今後の展開」(京都大学大学院経済学研究科再生可能エネルギー経済学講座コラム№273)
2021年7月に欧州委員会(EC)は、2030年にGHG排出量55%削減(1990年比)の達成のために「Fit for 55政策パッケージ」を発表した。パッケージというのは、特定の目的のために複数の政策を同時に策定・改正するもので、今回は12の政策の策定・改訂が提示されている(現状では案であり、今後、欧州議会・欧州理事会での議論を経て、数年かけて制度化される)。 ……欧州の「再生可能エネルギー指令(RED)」は、当初2009年に策定され、その後2018年に改正されている(RED II)。2018年当時の欧州連合のGHG削減目標は1991年比40%であったが、今回の改正案(以下「RED III案」とよぶ)ではこれを55%にかさ上げし、再エネ分野で欧州のリーダーシップ確立と雇用拡大に寄与することを目指している(なおREDはあくまでも再エネ拡大の政策であるので、水素でも「グリーン水素」に特化した政策である)
水素には「グレー」「ブルー」「グリーン」がある!
       (資源エネルギー庁HP2021年10月12日記事)
    グレー・ブルー・グリーン水素
※資源エネルギー庁「2050年カーボンニュートラルどうやって実現する?」(YouTube 4:05)
 

※相模原市立環境情報センター「2050年カーボンニュートラル
  NPO法人アース・エコ製作(YouTube 9:22)  NPO法人アース・エコ作成
 

年末・年頭のラジオ番組 1月3日

大晦日の19時30分~20時15分まで放送大学(ラジオ)リスク社会における市民参加』第14回・熟議と市民参加の場の設計を聴きました。気候市民会議については、東松山市環境基本計画(第3次)市民策定委員会に参加する中で、その必要性を痛感してきました。1月3日07:16まで利用出来たので聴き直しました。

科目の概要:現代社会はリスク社会である。食の安全をめぐる問題や、先端情報技術によるプライバシー侵害の懸念、各種の事故や災害、さらには気候変動問題への対処に至るまで、さまざまな損害と災難を自分(たち)自身の意思決定の帰結、すなわち「リスク」として捉え、行動する社会に、私たちは生きている。そこで焦点となる問題の多くは、不確実性が高く、多様な利害と価値観が絡むことから、科学技術の専門家だけでは「正解」を導き出すことができない。この状況に対処すべく、ここ約四半世紀の間に、リスクをめぐる社会的意思決定への市民参加が求められ、それを具体化する数々の方法論が生み出されてきた。本科目ではこうした動向を科学技術への市民参加という切り口で捉え、その経緯と理論的背景について理解を深めつつ、豊富な具体例をもとに、リスク社会における市民参加のあり方を学習する。
   

※三上直之「気候変動と民主主義 ~欧州で広がる気候会議~」(『世界』2020年6月号)
※三上直之「欧州の市民が議論した「新型コロナと気候変動」」(『科学』2020年12月号)
江守さんが強調していたとおり、気候市民会議の参考人は、「情報提供者」なのか「意見表明者」として呼ばれているのか、その場の役割を混同しないことが肝要です。選択肢を提示する情報提供者であっても「やるっきゃない」という態度変容を迫る信条がついつい出てしまいますね。

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新春トーク 若者たちが語る「アフターコロナ」
 NHKラジオ第1 2022年1月2日(日)午後5時05分~午後5時55分、午後6時05分~午後6時40分
コロナの先にはどんな未来がやってくるのか?
資本主義を否定し、「人新世」の新たな世界を提唱する斎藤幸平、現場主義で様々な社会問題に挑む安部敏樹、“若者の政治参加が日本を変える”と活動する能條桃子、各分野で活躍する2~30代の若者3人が、気候変動、格差・貧困などをテーマに激論を交わす。2022年の幕開け、未来を大きく展望する激アツの新春トーク番組をお届けする。
岩殿からの帰宅途中に軽トラ車中で聞き、帰宅後に続きを聴きました。NHKラジオらじる☆らじるで1月9日まで聴き逃し配信をしています。
  

要求項目

エクスティンクション・レベリオンの掲げる目標はウェブサイトにおいて、以下のように述べられている: [1][12][13]

  • 「政府は気候とより広範な生態学的な緊急事態について事実を語り、矛盾する政策を撤回し、メディアと協力して市民に情報伝搬する。
  • 政府は2025年までに炭素排出量をゼロとし一般物品の消費量を減らすべく、法的拘束力のある政策措置を講じる。
  • これらの変化を監督するための国民の議会を設立し、正しく機能する民主主義を確立する。」
基本方針

エクスティンクション・レベリオンはウェブサイト上で次の内容を説明している:[14][15]

  1. 「XRは後世代の人々が暮らしていける世界を作るため、変革を起こすという理念を共有している。
  2. XRが変革に必要として挙げる使命は、集団の推進力を活用した運動を実行するべく、総人口に対する3.5%の市民の参加を目指す。
  3. 人類は、健康的で対応性と再生力を備えた、循環的な文化体質を確立する必要がある。
  4. XRは自らの在り方も含め、現状に安住せず、既存の有害な社会構造に対して明白な疑問を投じ、変革を進めるべく活動を行っていく。
  5. XRは自らの経験、自己反省から学び、外部からの情報を吸収して常に活動内容の改善と開発に努める。
  6. XRはいかなる人々のいかなる規模の参加も歓迎し、積極的に安全で敷居の低い活動環境を提供する。
  7. XRは意図的に権力を握ることを避け、内部の上下関係を排除し、より公平な参加体制を築く。
  8. XRは非難や侮辱と言った手法を避ける。社会構造は有害であるが、その中の個人に責任を課し責めることはしない。
  9. XRは非暴力の組織であり、変化を起こすには非暴力の作戦・手段が最も有効であると考える。
  10. XRは自立的で拡散型の活動スタイルを基盤とし、既存の権力体制に挑戦するための手法・構造は集合的に創造していく。この基盤を用いた、いかなる市民活動も "RisingUp!" の名の下に実行することが出来る」[16]
※XR日本(HPTwitter
 

※鐙麻樹「派手な演出デモをする彼らは何者か ノルウェーの石油政治を批判」(『Yahoo!ニュース』2021.08.31 17:06)

eシフト「各党の気候エネルギー政策(選挙公約比較) 10月22日

地球温暖化対策計画・第6次エネルギー基本計画が改定され、閣議決定されました(経済産業省『第6次エネルギー基本計画の概要』)。また、今日は世界のFridays for Futureが呼びかける「世界気候アクションデー」でもあります。eシフト「あと4年、未来を守れるのは今」キャンペーン『各党の気候エネルギー政策「選挙公約比較」』を視聴(YouTube 33:30)しました。
1

7月にeシフト・原子力市民委員会が社会民主党、れいわ新選組、立憲民主党、自由民主党、日本維新の会、日本共産党、国民民主党、公明党に要望書を提出し、各党の政策担当者と面談して意見交換をしています。今回、衆院選挙に向けて各政党の公約が発表されていますが、気候・エネルギー政策にかかる選挙公約を比較、検討し、×××の5段階で評価しコメントしました。取材者との質疑応答部分はYouTubeでは配信されていません。


234
選挙公約比較の画像にある[評価基準]の表をよく見て下さい。

eシフト要望書
1)原発を停止し、再稼働はしない。新増設・リプレース計画および実用化の可能性が乏しい次世代炉の開発も中止する。原発事故被害者の生活再建の施策を具体化する。
2)送配電網の運用ルールなどの問題を解決し、遅くとも2050年までに電源では再生可能エネルギー(*)100%を目指す。 *環境・社会影響に配慮し持続可能な形で
3)石炭火力発電は例外なく全てを2030年までにフェーズアウト(停止)し、新設・リプレースは認めない。
4)エネルギー効率の向上、建築物の断熱の義務化他、省エネ施策を進め、2030年までの温室効果ガス削減目標を2013年比で60%以上とする。
5)エネルギー政策関連の審議会委員の中立性・多様性を確保する。またパブリックコメントだけでなく市民参加の機会を複数設定する。
原子力市民委員会要望書
1)福島原発事故の原因究明と被害救済に対する政府の責任を果たすとともに、 東京電力が原因者としての責任を果たし、被害者への誠実な謝罪と十分な賠償を行うよう指導力を発揮すること
2)国民の多くの声に正面から向きあい、真に開かれたプロセスでエネルギー政策を策定すること
3)早期に原発ゼロを実現するために、原発の再稼働を行わないこと
4)東京電力福島第一原発の廃炉ロードマップの抜本的見直しを行うこと
5)処理汚染水の海洋放出を撤回し、処分方法においては代替案の検討も含めた開かれた議論を行うこと
6)原子力災害発生時の広域避難計画の実効性担保および被害者の救済を法的に位置づけること

各党の気候エネルギー政策「選挙公約比較」発表プログラム(主催:eシフト、「あと4年、未来を守れるのは今」キャンペーン 協力:Fridays For Future Japan、原子力市民委員会)

・各党の気候エネルギー政策「選挙公約比較」発表:吉田明子(eシフト/FoE Japan)
・各論点と全体に関するコメント
 気候変動目標: 鈴木かずえ(グリーンピース・ジャパン)
 原子力政策: 松久保肇(原子力資料情報室)
 石炭火力と化石燃料: 桃井貴子(気候ネットワーク)
・全体に関するコメント
 若い世代から: 阪田留菜(Fridays For Future Japan/Tokyo)
 原子力市民委員会より: 大島堅一(座長/龍谷大学政策学部教授)

  スクリーンショット (1748).png
・質疑応答 (*配信なし)



「将来世代×各政党 気候変動対策討論会」視聴 10月17日

FFF Japan(Fridays For Future Japan)とATO4NEN(あと4年)共催「衆院選までもうすぐ!将来世代×各政党 気候変動対策討論会」を視聴しました。自民党、公明党、立憲民主党、日本共産党、日本維新の会 、国民民主党、れいわ新選組の7党が出席(社会民主党欠席)し、「党の環境政策はパリ協定に整合し、将来世代や社会的に脆弱な人々に対して責任を果たす政策となっているか」、「2030年以前の石炭火力廃止を目指すか」、「原発を廃止する予定はあるか、廃止の場合は何年を計画しているか」、「現在の政策決定の方法は、若者など一般市民の意見を取り入れているか」の質問に各党が○×で答え、意見を述べました。
スクリーンショット (1741).png

YouTubeで見られます。

「日本の政治にがっかり」。気候変動を止めるため、いま必要なアクションは?(WWFジャパン山岸尚之氏インタビュー、『読むりっけん』2020年4月4日記事)
  天気が変わる、どころじゃない。地球環境をまるごと変える「気候変動」
  画期的な「パリ協定」。COP25の現地で感じた世界と日本の温度差
  日本の気候変動対策を足踏みさせる、ネガティブなエネルギー
  世界に比べて、日本の若者は気候変動に関心がない?
  「コツコツCO2削減」よりもはるかに大きな力を持つ、一人ひとりの声
コロナ禍からのグリーンリカバリー、自然エネルギー立国で日本を元気に(明日香壽川氏出席、『りっけんチャンネル』YouTube2021年10月9日配信)「楽しみながら自然エネルギー社会の実現に向かいたい」再生可能エネルギーへのシフトについて意見交換(2021年10月11日記事

おしえてハカセ!(5~8) 7月18日

YouTubeの国立環境研究所動画チャンネルで公開された【おしえてハカセ!①~⑧】(国立環境研究所社会システム領域)の⑤~⑧です。(①から④はこちら

⑤電気自動車をみんなが使うようになったら脱炭素社会になるの?(高校生)
 重要なのは①自動車で使う「電気をつくる」ときと、②「電気自動車をつくる」ときのCO2を減らすこと
  ①「電気をつくる」とき
   太陽光発電や風力などの「再生可能エネルギー」での発電を広めるのも効果的
   太陽光があたっている昼間や風が吹いている時間帯に充電
  ②「電気自動車をつくる」とき
   ライフサイクル全体(①原料の採掘・輸送、②材料製造、③電池・部品の製造、④車両の組み立て、⑤電力走行、⑥廃棄)でCO2排出量を減らし、脱炭素するのが重要

 2035年頃には販売される新車が電気自動車になる必要がある
 電気自動車をみんなで使うカーシェアリング
 電気自動車を持っている人に乗せてもらう
 バイクや自転車を使う人、電気で動くバスや鉄道を使う人も増える
 燃料電池自動車やバイオ燃料自動車にも可能性
 安く、長距離走れて、充電や充填がしやすい脱炭素の自動車が広まるのでは?
 自動車産業全体で一生懸命に対応

⑥飛行機はどうなるの?もう乗れなくなっちゃうの?(小6・中3・会社員)
 飛行機は鉄道の約5倍のCO2を排出
 重い機体・高い所・高速で移動→多くのエネルギーが必要
 バッテリーは重くてかさばるので、電気の飛行機を作ることは簡単ではありません
 植物やプランクトンを使った「バイオ燃料」が考えられている
 バイオ燃料はまだコストが高い
 飛行機の運賃がかなり高くなることも考えられます
 飛行機は特別な時だけの乗り物になってしまうかも
  フランスでは「鉄道で2時間半以内のフライトを禁止する動きも
 飛行機がなくなったり、乗れなくなったりするわけではありません

⑦なぜ日本は温室効果ガス排出量を2030年までに2013年度と比べて46%削減しようとしているの?10年もないのに本当に達成できるの?(中3)
 
 パリ協定の長期目標(2015年合意)
  「世界的な平均温度上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求する」
 NDC:「国別約束」「国が決定する貢献」 2013年比26%削減(日本 2015年)
 IPCC:「気孔変動に関する政府間パネル」 気候変動を多面的に評価する機関

 IPCC「1.5℃特別報告書」(2018年)
  気温上昇を1.5℃に抑えるためには、世界の二酸化炭素排出量を2050年までに実質ゼロにすることが必要

 日本の長期戦略(2019年)
  2050年 80%削減
  21世紀後半の早期脱炭素社会の実現
 2050年脱炭素社会の実現(2020年10月)
  2050年に80%削減→2050年に脱炭素社会(実質ゼロ)
 2030年46%削減(2021年4月)

 私たちも今から何ができるか、周りの人たちと考えてみましょう

⑧個人ができることで一番効果のある対策って何?(小4)
 効果的な対策につながるヒントを3つ
 ヒント1 太陽光発電などの再生可能エネルギーを使用
  契約する電気会社を選びなおすという手も
  自然エネルギーを使用している電気会社と契約
 ヒント2 古い家電製品の買い替え
  冷蔵庫やテレビの買い替えで大きな削減効果の可能性
 ヒント3 生活の見直し
  窓を開けっぱなしにしてエアコンをつけない
  服装でも温度調節を
  節水シャワーに交換
  モニターの明るさ調整
  (温水洗浄便座)季節に合わせた温度設定や必要がなければスィッチをoffに
  (ドライヤー・炊飯器)短時間使用ですむ工夫を

 効果的な対策をするには自分の生活を知ることが大切

おしえてハカセ!(1~4) 7月17日

国立環境研究所の『夏の大公開2021』が17日、オンラインで行われました。「ハカセ!これって、だつたんそ?」(7月17日限定公開)というコーナー(地球温暖化につながる温室効果ガスの排出を実質的にゼロにする 「脱炭素社会」や、地球温暖化にまつわる、みなさんの素朴な疑問にハカセたちが答えます。ミニゲームを楽しみながら、脱炭素社会への理解を深めてください。ハカセの解説動画は、普段は入れない研究所内の秘密(?)の場所からお届けする予定です)がありましたが番組は見ていません。YouTubeの国立環境研究所動画チャンネルで公開されている【おしえてハカセ!①~⑧】(国立環境研究所社会システム領域)が番組で使われていた動画です。番組では9問あったらしいですが8問が配信されています。

①最近よく聞く「脱炭素社会」ってどういうこと?(小5、中1)
 脱炭素社会 温室効果ガス排出量=温室効果ガス吸収量
       温室効果ガスの排出量「実質ゼロ」の社会
 温室効果ガスの種類 二酸化炭素 メタン 亜酸化窒素 ほか
 二酸化炭素を出さないようにすることが地球温暖化を食い止めるのに有効

 石油や石炭などの化石燃料に頼らずに、再生産エネルギーでまかなう
 省エネの取組を積み重ねてエネルギー消費量を減らす

 
 落ち葉、木を燃したときもCO2が出る
 もともと大気中にあったCO2が大気中に出てくる
 小枝や落ち葉を燃やさない
  土の中に埋めてみては?
  CO2を土の中に貯めておく
  大気中のCO2の量を減らすことにつながる

 石油や石炭といった化石燃料は燃やすと温暖化の大きな原因
 何億年も土の中にとじこめめられていたCO2をたった数十年で大気中に出してしまう
 化石燃料を燃やすことは温暖化の大きな原因

 たき火の煙には体に良くない成分も含まれているので気を付けて
 たき火をする場合はルールとマナーを守って

 電気オーブンで焼きいもを作る場合
  電気がどんなほうほうで作られたかが大事
  火力発電で作られた電器を使うとたくさんのCO2を出すことになる
  太陽光や風力発電で作られた電気ならCO2はほとんど出ない

③使っている家電製品を長く大事に使うのと新しい製品に買い替えるのでは、どちらがいいの?(中3)
 冷蔵庫では2003年製と2013年製とではエネルギー消費量が3分の1
 買い換えにより、エネルギー消費量が大きく下がる可能性
 家電製品を作るときにもエネルギーや資源を使います
 買ってすぐ捨ててしまうのはエネルギーや資源の無駄遣い
 10年以上使っている家電製品であれば買い替えを検討してもよい
  1. 今、使っている製品の確認を 年間エネルギー消費量を参考に
  2. 新しく買い替えるときも省エネ性能の比較を
  3. 大きな製品に買い替えると省エネ効果が下がってしまうことも
 15年以上使っている冷蔵庫やテレビは買い替えで諸費電力の大幅減ができるかも

④大人が外に行かないで、家でめちゃめちゃスマホをするのは、やっぱり脱炭素になるの?(小5)
 クルマの利用を控えた方が脱炭素に近づく
 在宅勤務で通勤をなくして移動を減らすのは脱炭素に有効
 自宅でスマホを使う時は、自宅の照明や空調を使用しているので注意
 サーバーセンターでも大量の電力を消費
 運動する量がへってしまうと、健康にもよくありません
 何事もほどほどに

⑤から⑧はこちら


原子力市民委員会オンライン「原発のコスト」聴講 7月5日

原子力市民委員会(CCNE)の連続オンライン企画『原発ゼロ社会への道』第9回「原発のコスト」(大島 堅一さん「原発のコスト」、金森絵里さん「原発コストをめぐる素朴な疑問」)を聴講しました。イベントの録画はYouTubeから見ることができます。


資料:(PDF)大島資料(1.原発のコスト計算 2.エネルギー基本計画と原発のコスト 3.経産省腹案で計算すればどうなるか 4.経産省想定の問題点 5.既設炉のコスト 6.まとめ)、金森資料
大島資料22010705_1原発ゼロ社会への道2017表紙
※CCNE『原発ゼロ社会への道2017』(目次PDF

※CCNE連続オンライン企画『原発ゼロ社会への道』(2021年3月~)


ウェビナー視聴 6月19日

雨でブルーベリーの朝摘みは中止。田んぼの見廻りをして、午前中はウェビナーを視聴しました。
第25回環境法政策学会第五分科会企画セッション
石炭火力発電所をめぐる民事訴訟・行政訴訟における法的論点
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「労働者協同組合法」成立特別企画

『どう生かす?誰が活かす?ワーカーズ法 こんなに広がる!協同労働運動』

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カノコガ(ヒトリガ科)
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岩殿D地区のセイタカアワダチソウにとまっていました。

『気候変動の危機から世界を守るために立ち上がろう!』第2回 1月24日

国際環境NGOのFoE Japan[FoE:Friends of the Earth International]は若者向けオンライン連続セミナー『スクール・オブ・サステナビリティ〜気候変動の危機から世界を守るために立ち上がろう!〜 』を企画しています。
スクール・オブ・サステナビリティ


ゲストスピーカーは、亀山康子さん(国立環境研究所、資料)と能條桃子さん(NO YOUTH NO JAPAN)でした。

亀山康子「政治の世界で気候変動はどのように語られてきたのか資料
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亀山さんのお話の前半は米国元副大統領アル・ゴア氏のチームが作成したものを使用していました。背景が黒のもので資料には入っていません。
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能條桃子「若者が声を届け、その声が響く社会を目指して資料
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※亀山さんも能條さんも昨年11月10日、国立環境研究所のオンラインセミナー『気候危機withコロナ』-その先にある未来のカタチは?に参加しています。資料などは当ブログの11月11日の記事からご覧下さい。



※若者向けのウェビナーにはFFF Japan気候変動は「どのくらい」「どう」ヤバイのか?(2021年1月8日記事)もあります。


FFF Japan 気候変動は「どのくらい」「どう」ヤバイのか? 1月8日

1月8日19:30-21:00、FFF JAPAN(Fridays For Future Japan)がzoomで行ったウェビナー『気候変動は「どのくらい」「どう」ヤバイのか?』を視聴しました。

気候変動×生物多様性への影響をテーマに、森林総合研究所の大橋春香さん、共同通信社の井田徹治さんが解説し、質問に答えます。

Fridays For Future Japan とは?
FridaysForFuture(未来のための金曜日)は、2018年8月に当時15歳のグレタ・トゥーンベリが、気候変動に対する行動の欠如に抗議するために、一人でスウェーデンの国会前に座り込みをしたことをきっかけに始まった運動です。彼女のアクションは、多くの若者の共感を呼び、すぐさま世界的な広がりを見せました。この世界的なムーブメントに共感する若者は、ここ日本にもたくさんいました。2019年2月、日本でのFridaysForFutureの運動が東京から始まります。発足以来、学生たちを中心に、徐々に全国各地に活動が広がっています。(FFF Osakaサイトから)

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オンラインセミナー『気候危機withコロナ』 11月11日

11月10日、国立環境研究所のオンラインセミナー『気候危機withコロナ』-その先にある未来のカタチは?(1:35:55)が開催されました。「気候危機コロナ危機。今世界を襲っているこの2つの危機から、私たちが学ぶべき教訓は何でしょうか。また、この危機をどのように乗り越え、どんな社会へと移行していくべきなのでしょうか。」ということで、5人のパネリストが議論に参加しています。このイベント開催のきっかけとなったのは、2020年5月に国立環境研究所で行われた気候危機とコロナ危機についての所内公開意見交換会だそうです。
 

今回のテーマは、みんながそれでいい!と思える新しい社会のカタチを、視聴者と一緒に考えると言うことで、前半は江守正多さん、西廣淳さん、亀山康子さんの話題提供、後半は視聴者アンケートや意見・質問を取りあげてパネリストが議論しました。
江守正多さんの話題提供
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西廣淳さんの話題提供
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亀山康子さんの話題提供(32:43~37:10)
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Climate tipping points — too risky to bet against(Nature Vol 575 2019年11月28日)

気候変動の複合的リスクに備える(国立環境研究所、2020年9月)
著者:シヴァプラム・プラバカール、田村堅太郎、池田まりこ
編者:亀山康子
出版日:2020年9月
出版者:国立環境研究所
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『みどりのススメ』(埼玉県みどり自然課) 10月23日

埼玉県環境部みどり自然課の作成した46頁の冊子『みどりのススメ~これから緑化工事を行う方へ~』(2019年版)です。屋上緑化壁面緑化駐車場緑化樹木植栽などの緑化手法が紹介されています。
  緑の効果~なぜ緑が必要なのか~
 身近な緑は、人々に潤いと安らぎを与え、美しい街なみを創るうえで欠かせない要素です。
 また、近年では自然環境が持つ防災・減災機能やコミュニティ醸成の場の創生機能といった多様な機能を活用して持続可能なまちづくりを進める取り組み(=グリーンインフラ)も注目されており、緑に期待される効果は環境面だけでなく社会面・経済面にも広がっています。
 一つ一つの施設には美しい緑を生み出し、緑のネットワークとして広げていくことが、その施設にみならず地域全体の価値向上に繋がります。
環境改善生物多様性の保全ヒートアイランド現象の緩和
安全・防災避難路等の安全性向上火災の延焼防止
景観形成都市の魅力向上不動産価値の向上
潤いと安らぎ自然との触れ合いの場地域のコミュニケーションの促進

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  優良な緑化計画を立てるためのポイント
〈維持管理を見据えた植栽〉
 植物の生育要件には「日当たり」や「降雨量」、「風当たり」などがありますが、植物によって重視するポイントは異なります。
 植物を選ぶ上で植物の生育環境も踏まえて検討すると、その後の維持管理が容易になります。
 また、地域に元々ある植物の多くは、その地域の環境に合ったものです。そういった地域の緑との連続性を意識すると、まとまりのある、より保ちやすい植栽になります。
〈接道部における緑の活用〉
 接道部には生け垣などの植栽を設けることで、圧迫感を抑えつつ施設と道路の間を分離することができます。ブロック塀などの人工物に比べ、安全性が高いこともメリットのひとつです。
 その際、手前に低木、更にその手前に草花や芝などで緑化すると、見通しが良く、奥行きのある緑化になります。
〈緑の効果が十分に発揮される緑視率〉
 国土交通省が実施した調査で、景色の中で緑が見える量(緑視率)が高まるにつれ、潤い感、安らぎ感、さわやかさなどの心理的効果が向上するということが分かりました。
 緑視率は、25%以上で「緑が多い」と感じることも分かっています。 公開空地など人の目につきやすい場所を緑化する場合などは、高木などを活用し緑視率を高めることで、緑の効果が十分に発揮できます。
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  緑化樹木としてよく使われている在来植物(抜萃)
埼玉県生物多様性の保全に配慮した緑化木選定基準(在来植物による緑化推進のために)』(埼玉県環境部みどり自然課、2016年3月)からの抜萃です。
1 はじめに
(1) 在来種を使用した緑化の重要性
 生物の種は、将来世代に伝えなければならない人類共通の資産としてかけがえのないものですが、現在地球上で多くの動物や植物が絶滅しつつあります。このようなことから、生物多様性の保全の必要性が叫ばれ、日本を含む各国の努力により生物多様性条約が発効し、この条約の精神に基づき、生物多様性国家戦略が策定されています。
 生物多様性の保全とは、野生動植物が人間の生活や生産活動の影響を受けて絶滅したり、生息範囲を狭めたり減ったりしないように、それぞれの地域に固有な様々な生物全体を保全することです。
 このような考え方を受け、緑化に用いられる樹木についても地域固有の自然環境を損なわないよう配慮が必要と考えられるようになってきました。
 2013年6月には、「景観三法」の公布にあたり、国会で「地域在来の植物等の活用による緑化の推進に努めること」についての付帯決議があり、在来植物活用による緑化の推進は今や国の方針となっているのです。
 埼玉県においても、自然環境と調和した県土づくりを推進するため、2015年3月に生物多様性保全県戦略の第1弾として丘陵編を策定しました。
 この戦略の内容は、一般県民、企業・団体、地方公共団体などの多くの人々が生物多様性保全の取組に参加し、その活動の輪を広げることにより、保全を図ろうとするものです。生物多様性保全県戦略では、天然林や里山の保全や希少種の保護、外来種対策まで様々な保全のための取組を提案していますが、家庭をはじめ、公共施設、学校、事業所で行われている「緑化」についても、在来植物を用いて進めていくことが重要と考えています。

(2) 在来種を使用した緑化を推進するために
緑化木というと、その地域で見られない珍しいものを植えた方がよいという考え方や、見栄えがよい、病虫害に強く管理しやすいなどの理由で、これまで長い間外来種や移入種が多く植えられてきました。
 外来種又は移入種による緑化には、生態系に様々な問題を引き起こす可能性がありますので、使えるところには出来るだけ在来植物を使うようにしていただきたいと考えております。
 そのためには、様々な立場の方々が、「在来種を使用した緑化」の必要性を理解し、出来るところから取り組んでいただくことが重要です。
 今後、国や地方公共団体ばかりではなく、県内の事業体や一般家庭においても、在来種による緑化を積極的に取組んでいただくよう期待いたします。

  外来種又は移入種による緑化が生態系に引き起こす問題
    (ア) 緑化木の根に昆虫などの幼虫がついて移動し、本来の生息地ではない地域に生息するようになっている例があり、本来の自然の姿を攪乱することがある。
    (イ) 外来種や移入種による緑地では、在来の昆虫が生活できなかったり、逆に天敵がいないことなどから外来昆虫が蔓延する危険性もある。
    (ウ) 在来種であっても、他地域で生産されたものでは、遺伝的形質が異なる場合が多い。(ブナの例では、日本海側と太平洋側における積雪量の差による春季葉が開く時期の水分条件が異なることから、葉の大きさ等の遺伝的形質も異なるとされている。)
    (エ) 植栽した場所だけではなく、種子が鳥や風に運ばれて自然界に定着し、今まで生育していた種を駆逐したり、交雑による遺伝的特性を変えてしまうことなどにより、固有な生態系を変質させてしまうおそれのある種類(侵入的外来種)も多い。

(3) 生物多様性の保全に配慮した緑化木選定基準の作成
 在来種を使用した緑化を推進するといっても、「何が在来種かわからない」、「何をどのような所に植えるのが適当かわからない」ということもあり、在来植物の使用はなかなか進んでいません。
 今回作成した基準では、実際緑化に使用されている樹木はどのようなものがあるか、埼玉県の在来樹木はどのような種類があるか、在来樹木の種類ごとの植栽に適する環境等について明らかにしています。
 地域固有の生物に対する悪影響を防止しようとする「生物多様性の保全」の見地から、どのような種を選ぶことが適当かを判断する基準として作成しました。[下線引用者]

(4) 今後の課題
 今後、在来種の緑化を推進していくためには、県緑化関係部局のそれぞれの事業分野で環境条件や必要な緑化木の性質等が異なるため、この基準を参考にしながら、各担当部局の事業特性を反映した「緑化指針」を作成してい
ただくことが望ましいと考えます。

2 緑化木の種類
 実際緑化に使用されている主な樹木を選び、それぞれの種を、在来種、移入種、外来種・園芸種に区分し明らかにしました。
(1) 在来種
 埼玉県内で自生している種とする。ほとんど緑化や植林に使われていない種も含む
 希少種や分布が極めて限定される種は、なるべく除外した。
(2) 移入種
 国内に自生するが埼玉県内では自生していない種、中には森林内に定着しつつある種を含む。
(3) 外来種
 国内に自生していない種とする。すでに、自然生態系内に定着している種も数多く、外来種といっても、モウソウチク、マダケ、ハチク、セイヨウハコヤナギ(ポプラ)、シダレヤナギなど、人里や都市景観の重要な構成要素になっている種類も少なくない。
(4) 園芸種
 品種改良が行われている種であり、原種が外来種・移入種・在来種であるかは問わない。
(5) 侵入的外来種
 植栽した場所だけではなく、種子が鳥や風に運ばれて自然界に定着し、今まで生育していた種を駆逐したり、近縁の在来種との交雑により地域の個体群の遺伝的特性を変えてしまうことなどにより、固有な生態系を変質させてしまうおそれのある種類をいう。
 外国から入ってきた植物だけではなく、移入種で上記のような問題を引き起こす恐れのある植物を含む。
 侵入的外来種に該当する種は「侵入的外来種」と表示した。[1~3頁]
※『駐車場緑化ガイド~広げよう緑の駐車場~』(東京都環境局自然環境部計画課)
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埼玉県地球温暖化対策の検討に関する専門委員会資料② 10月17日

『埼玉県地球温暖化対策実行計画(第2期)策定に当り2019年3月20日に開催された地球温暖化対策の検討に関する専門委員会配布資料です。

「平成30年度 第3回埼玉県地球温暖化対策の検討に関する専門委員会」配付資料
  (埼玉県環境部温暖化対策課、2019年3月20日)
はじめに
1 削減目標について
 削減目標の基本的考え方(第2回委員会までの整理)
 削減効果をBAUから積み上げる方法(第2回委員会提示)
 他の都道府県の目標設定の方法
 経済成長率の設定
 削減措置による削減量の算定①
 削減措置による削減量の算定②
 削減措置による削減量の算定③
 各部門における削減措置① 産業部門
 削減対策を推進するための県の施策① 産業部門
 各部門における削減措置② 業務部門
 削減対策を推進するための県の施策② 業務部門
 各部門における削減措置③ 家庭部門
 削減対策を推進するための県の施策③ 家庭部門
 各部門における削減措置④ 運輸部門
 削減対策を推進するための県の施策④  運輸部門
 各部門における削減措置⑤ 廃棄物部門 工業プロセス部門
 各部門における削減措置⑥ その他の温室効果ガス
 削減対策を推進するための県の施策⑤ 廃棄物部門 その他ガス
 部門別の温室効果ガス排出量削減見込み
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2 次期計画について
 現行計画の構成
 現行計画の重点施策
 現行計画の施策構成(7つのナビゲーション)
 次期計画の基本的考え方
 次期計画検討事項①(目指すべき将来像・重点施策)
 次期計画検討事項①(目指すべき将来像・重点施策)
 次期計画検討事項②(施策指標)
 次期計画検討事項③(適応策) 1 適応策とは
 次期計画検討事項③(適応策) 2 気候変動適応法
 次期計画検討事項③(適応策) 3 地域気候変動適応計画
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第3回資料20190320_9第3回資料20190320_10
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県政サポーターアンケート調査結果
 質問1 あなたは、地球温暖化に対してどの程度関心を持っていますか。
 質問2 地球温暖化防止のための取組は、手間がかかったり、ある程度の我慢をしなくてはならない面もありますが、多くの方々が取り組むことでより大きな効果をもたらします。このことについて、あなたはどのように考えますか。
 質問3 温暖化対策として、あなたが現在、家庭で取り組んでいることは何ですか。(あてはまるものすべてを選択)
 質問4 本県では、家庭で手軽にできて効果の高い省エネルギー対策として、LED照明(LEDシーリングライトや電球形LEDランプなど)の普及を推進しています。現在、あなたの家庭の照明は、以下のどれに近いですか。
 質問5 家庭からの二酸化炭素排出量は、県全体の約1/4と大きな割合を占めています。また、家電製品の多様化や世帯数の増加等により、排出量は近年大きく増加しています。今後、家庭からの二酸化炭素排出量を削減するために、どのような取組が必要だとあなたは考えますか。(3つまで選択)
 質問6 自動車の利用によって排出される二酸化炭素は、県全体の約1/4と大きな割合を占めています。また、その排出量は、県内の自動車台数の増加などにより削減が進んでいない状況にあります。今後、自動車からの二酸化炭素排出量を削減するために、どのような取組が必要だとあなたは考えますか。(3つまで選択)
 質問7 今後、温暖化を抑えるために本県が実施する対策として、どのような取組を重点的に進めていくべきであるとあなたは考えますか。(5つまで選択)
 質問8 地球温暖化は、猛暑日・熱帯夜や大雨の頻度の増加など、気象及び気候の極端な現象の発生頻度を増加させることが科学的に証明されつつあります。このような温暖化の影響により、本県でも異常高温によるコメの品質不良や熱中症救急搬送者数の増加などの被害が発生しています。温暖化の影響について、あなたはどのようなことに関心がありますか。(あてはまるものすべてを選択)
 質問9 今年の6月に「気候変動適応法」が成立し、各自治体においては地域に応じた適応策への取組が求められています。「適応策」として、本県ではどのような分野を重点的に進めていくべきであるとあなたは考えますか。(3つまで選択)

埼玉県地球温暖化対策の検討に関する専門委員会資料① 10月17日

『埼玉県地球温暖化対策実行計画(第2期)策定に当り、2017年11月30日、2018年7月18日、11月14日、2019年3月20日、9月4日、11月13日に地球温暖化対策の検討に関する専門委員会が開催されています。

「平成30年度 第2回埼玉県地球温暖化対策の検討に関する専門委員会」配付資料
  (埼玉県環境部温暖化対策課、2018年11月14日)
はじめに
1 基準年度の検討
 計画の概要
 方向性の検討に際して(前回の課題)
 基準年度について
2 削減目標案の検討
 方向性の検討に際して
 削減目標の設定方法
  案1 削減効果を目標年度BAU排出量から積み上げる方法(スライド12~35)
 削減目標の設定方法
  案2 より長期の目標からバックキャストで設定する方法(スライド36~37)
第2回資料20181114_1
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2 削減目標案の検討
案1「削減効果を目標年度BAU排出量から積み上げる方法」による試算
 Step1:BAU排出量を推計
  現状趨勢(BAU:BusinessAsUsual)とは
  BAUの算定(1) エネルギー起源CO2排出量のモデル
  BAUの算定(2) エネルギー起源CO2排出量
  BAUの算定(3) 人口シナリオ
  BAUの算定(4) 経済成長シナリオ(1)
  BAUの算定(5) 経済成長シナリオ(2)
  BAUの算定(6) 自動車保有台数シナリオ
  BAUの算定(7) 鉄道輸送需要シナリオ(旅客)
  BAUの算定(8) 鉄道輸送需要シナリオ(貨物)
  想定する2030年度のすがた
  2030年度エネルギー起源CO2の推計結果
  BAUの算定(非エネ起+その他)
  2030年度非エネルギー起源CO2及びその他ガスの推計結果
  BAUの積算結果
 Step2:対策・施策を設定し、削減効果を積上げ
  2030年度削減措置に見込む対策について
  2030年度削減措置に見込む対策① 産業部門
  2030年度削減措置に見込む対策② 業務部門
  2030年度削減措置に見込む対策③ 家庭部門
  2030年度削減措置に見込む対策④ 運輸部門
  2030年度削減措置に見込む対策⑤ エネルギー起源CO2以外のガス
  供給側対策の見込み(電力排出係数)
  供給側対策の見込み(電源構成と電力排出係数)
案1による試算の結果
第2回資料20181114_2第2回資料20181114_3第2回資料20181114_4

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案2「より長期の目標からバックキャストで設定する方法」による試算
 バックキャストで毎年度一定量の削減(線形)を想定
第2回資料20181114_14第2回資料20181114_15
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2 削減目標案の検討
 国のマニュアルに基づく試算結果
 削減目標の検討の目安
 削減目標を達成するためには(削減量)
 削減目標を達成するためには(対策)
 現在の国の温室効果ガス排出量の状況
 (参考)計画の目標年度を2030年度とした都道府県の状況
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埼玉県地球温暖化対策実行計画(第2期) 10月17日

埼玉県では、計画期間を 2020(令和2)年度から 2030(令和 12)年度までの 11 年間とする『埼玉県地球温暖化対策実行計画(第2期)を策定しています。
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『埼玉県地球温暖化対策実行計画(第2期)』策定に当り、今後追加的な対策を見込まないまま推移した場合の2030年の温室効果ガス排出量(現状趨勢[BAU:Business As Usual])を推計し、その上で、各部門で対策を行った場合の 2030 年度時点の削減見込量を算出し、2030 年度 BAUから差し引くことにより、県全体の総量目標(2030 年度に 2013 年度比 26%)を設定しています。

NHKの大学生とつくる就活応援ニュースゼミ「1からわかる」シリーズ 10月9日

NHKの大学生とつくる就活応援ニュースゼミ・目指せ!時事問題マスター「1からわかる」シリーズ。

1からわかる!地球温暖化(1)パリ協定って何?
 
”グレタ現象” 関心は若い世代へ/パリ協定って何?
(土屋敏之解説委員、聞き手:伊藤七海 井山大我 西澤沙奈、編集:水上貴裕)

 
はじまりは28年前/パリ協定は緩い?/気温上昇を抑えることは・・・

 
そもそも「地球温暖化」とは?/温暖化を取り巻くさまざまな説/温暖化が進んだ先にある未来とは?

 
温暖化対策、進捗状況は?/なぜアメリカはパリ協定から離脱するの?/アメリカの温暖化対策、今後どうなる?/世界第1位の排出国・中国は/世界第3位の排出国・インドは/ヨーロッパ各国は?

1からわかる!地球温暖化(5)日本の対策、どうなってる!?
 
なぜ批判される?日本の温暖化対策/批判集める「石炭火力発電」とは?/日本の目標は?

 
再生可能エネルギーの可能性は/どんな社会を目指すべき?/就職先にも実は関係!?企業の温暖化対策は/私たちにできることとは
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1からわかる!プラスチックごみ問題(1)
 
本当はとっても怖い…? プラスチックごみ/日本のプラごみ処理の実情は
(土屋敏之解説委員、聞き手:高橋薫 田嶋あいか)

 
まだ間に合う?日本はどうするの?
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1からわかる!「ESG」
 
「ESG」ポイントは“投資家”と“取引先”/「ESG」なぜ注目されるように?/「ESG」これだけは押さえておこう!
(みずほ情報総研株式会社アナリスト大谷舞、聞き手:鈴木マクシミリアン貴大 伊藤七海)
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1からわかる!「SDGs」
 
「SDGs」って、何のこと?/なぜ広まってきたの?/企業には浸透しているの?/17の目標にはストーリーがあった!
(みずほ情報総研アナリスト、聞き手:鈴木マクシミリアン貴大 伊藤七海)

シリーズ「気候危機の解決に向けて、私にできることは?」 10月9日

WWFジャパンのサイトにあるシリーズ「気候危機の解決に向けて、私にできることは?」です。

 

 

 



小西雅子「温暖化の進んだ世界はどうなる?防ぐことはできるのか?」 10月9日

9月25日の”Global Day of Climate Action”に合わせ、公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)は、オンラインイベント『温暖化が進むとどうなる?未来の人道危機を抑えるために今、私たちにできること』を開催しました。
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このイベントは、根本かおる(国連広報センター所長)さん「SDGsアクション・気候行動の文脈で、私たちにできること」、小西雅子(WWFジャパン気候変動グループ専門ディレクター)さん「温暖化の進んだ世界はどうなる?防ぐことはできるのか?」倉橋功二郎(公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパンプログラム部)さん「自然災害がもたらす女の子への影響、フィールドで今起きていること」吉田拓(日本赤十字社ルワンダ代表部首席代表)さん「もっとも弱い立場に置かれた人々と、災害に立ち向かう」の4本のプレゼンと座談会「変化の今を生きる、私たちにできること」で構成されており、YouTubeで聴講することができます。

小西雅子さんの講演「温暖化の進んだ世界はどうなる?防ぐことはできるのか?」は24:27~39:10のほぼ15分間です。
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気候危機で地元どうなる? 未来47景WWFジャパン

※5年前の2015年9月25日は、国連総会で国連加盟国の193ヵ国すべての賛同で、国際目標 SDGs が誕生した日でもあります。蟹江憲史さんは「 Sustainable Development Goals 」は「持続可能な開発目標」と訳されることが多いが、「持続可能な成長目標」とか、「持続可能な発展目標」と訳した方が、日本人には受け入れられやすいのではないかと、中公新書2604『SDGs(持続可能な開発目標)』(2020年8月)で述べています。

資料「新型コロナウイルス感染症による影響を踏まえた今後の気候変動対策について」 10月8日

日本政府は2020年3月30日、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」における国が決定する貢献「NDC」を、現在の「2030年度に13年度比26%削減」するという目標をそのまま据え置き「確実に達成」するとともに「さらなる野心的な削減努力を反映した意欲的な数値を目指す」と閣議決定し、31日に国連に提出しました。
小泉環境相は、「環境省がこれだけ頑張らなければ、26%で変えずというままで終わっていた可能性がある」と指摘。他省庁との調整もあるが、小泉環境相としては、21年11月に延期された第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)までに新たな削減目標(NDC)を出したいという意欲があることについて「間違いない」と野心的な削減目標設定への強い意思表明をしています(記者会見)。
環境省では8月4日、オンラインで中央環境審議会地球環境部会(第145回)を開催しています。以下の資料は配付資料3「新型コロナウイルス感染症による影響を踏まえた今後の気候変動対策について」です。気候変動対策の最新の動向、新型コロナウイルスと脱炭素社会に係る動向、今後の進め方、参考資料から構成されています。

新型コロナウイルス感染症による影響を踏まえた今後の気候変動対策について
1.気候変動対策の最新の動向
 NDC及び地球温暖化対策計画の見直しについて
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○環境省脱炭素社会移行推進室長資料説明(議事録から 下線引用者)
NDC及び地球温暖化対策計画の見直しについてということですけれども、これは冒頭の局長のご挨拶にもありましたとおり、温対計画の見直しに着手いたします。この背景といたしまして、今年の3月、NDCを我が国として提出いたしましたけれども、これを契機として行うということでございます。また、その後の削減目標の検討につきましては、エネルギーミックスの改定と整合的に行うと。さらなる野心的な削減努力を反映した意欲的な数値を目指し、次回、パリ協定の5年ごとの提出期限を待つことなく実施するということでございます。
NDCの中で、この概要というところに記載がありますが、2030年度26%削減目標を確実に達成するということを目指すということを確認するとともに、さらなる削減努力を追求していくという方針を表明しております。これに基づいて見直しに着手をするということでございます。
この見直しの小委員会の設置等々については、後ほどまたご説明をいたしたいと思います。
 (参考) NDCの提出の背景
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 石炭火力発電輸出の方針変更について
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 国内の石炭火力発電に関する動き
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 2018年度の日本の温室効果ガス排出量
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 温室効果ガス排出量の推移
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 部門別CO2排出量の推移(電気・熱配分後)
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 「気候変動×防災」について
 気候危機時代の「気候変動×防災」戦略(共同メッセージ)概要 令和2年6月30日

2.新型コロナウイルスと脱炭素社会に係る動向
 新型コロナウイルス感染症のエネルギー需要に対する影響
 新型コロナウイルス感染症によるCO2排出量への影響
 エネルギー転換部門におけるコロナ禍の影響
 産業部門におけるコロナ禍の影響
 業務部門におけるコロナ禍の影響
 家庭部門におけるコロナ禍の影響
 運輸部門におけるコロナ禍の影響①
 運輸部門におけるコロナ禍の影響②
 (参考)テレワークのCO2排出量への影響
 (参考)IEAによる在宅勤務のエネルギー消費、CO2排出に関する影響分析
 新型コロナウイルスの影響による経済社会の変化
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 新型コロナウイルスの影響による変化と社会の脱炭素化
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 新型コロナウィルス感染症を踏まえた対応(緊急経済対策)
 「成長戦略実行計画」「成長戦略フォローアップ」及び「経済財政運営と改革の基本方針2020」

3.今後の進め方
 地球温暖化対策計画の見直しを含む中長期の気候変動対策の検討について
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○環境省脱炭素社会移行推進室長資料説明(議事録から 下線引用者)
それで、最初のほうにも少しご説明しましたとおり、今後、地球温暖化対策計画を含みます中長期の気候変動対策の検討をしてまいりたいと思います。先ほど冒頭申し上げたとおり、NDCの提出を契機としまして計画の見直しに着手する予定でございます。
今後、温対計画の見直しを含む気候変動対策について検討を行うために、この地球部会の下に「中長期の気候変動対策検討小委員会」を設置いたしました。これについては、先日、各委員の皆様方には書面で協議をさせていただきまして、ご了解いただきました。誠にありがとうございます。今後、産業構造審議会にも同様の小委員会を設けまして、合同で検討を進める予定でございます。少し人数を絞る必要があろうということもありまして、両審議会・小委員会で合計20名程度という体制を考えておりますが、委員の構成については現在まだ調整中ということでございます。
検討に当たりましては、温対計画の見直し、中長期の両面でさらなる削減努力の検討を深めてまいりたいと思います。

 合同会合の議論の進め方
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○環境省脱炭素社会移行推進室長資料説明(議事録から 下線引用者)
次、お願いします。この議論の進め方でございますが、8月中に何とか、これは先ほどの議題にもあった9月3日のオンライン・プラットフォームより、できれば前に開催できるといいなというふうに思っておりますが、これから日程調整をいたします。第1回開催の後、専門家へのヒアリング等を順次実施していきたいと思います。
恐らく議論することになる主要なポイントとしては、ポスト・コロナ時代の社会変化を見据えた対策、さらには、毎年これまでやってまいりました計画の点検進捗を反映した対策の強化、深掘りと、さらには脱炭素社会の実現を見据えた中長期の対策の方向性と、こういったことを議論してまいることが決まっております。
(参考資料)
 (参考資料1-1)近年の異常気象
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 (参考資料1-2)世界的なリスクと認識される気候変動・異常気象
 (参考資料1-3)環境省の「気候危機」宣言
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 (参考資料2-1)パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略(2019年6月閣議決定)(1)
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 (参考資料2-1)パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略(2019年6月閣議決定)(2)
 (参考資料2-2)革新的環境イノベーション戦略
   (2020年1月21日統合イノベーション戦略推進会議決定)(1)
 (参考資料2-2)革新的環境イノベーション戦略
   (2020年1月21日統合イノベーション戦略推進会議決定)(2)
 (参考資料2-3)グリーンイノベーション戦略推進会議
 (参考資料2-4)統合イノベーション戦略2020 地球環境局関連部分 (1)全体概要
 (参考資料2-4)統合イノベーション戦略2020 地球環境局関連部分
   (2)経済社会の再設計に向けて~重点的に取り組むべき課題の例~
 (参考資料2-4)統合イノベーション戦略2020 地球環境局関連部分
   (2)経済社会の再設計に向けて
 (補足:温室効果ガス排出推定精度の向上(都市炭素マッピング)
 (参考資料2-4)統合イノベーション戦略2020 地球環境局関連部分
   (3)戦略的に取り組むべき応用分野
 (統合イノベーション戦略:環境エネルギー分野)
 (参考資料3-1)経団連「チャレンジ・ゼロ」
 (参考資料3-2)脱炭素経営に向けた取組の広がり ※2020年7月20日時点
 (参考資料3-3)グリーンファイナンスを通じた環境と成長の好循環
 (参考資料3-4) 2050年 二酸化炭素排出実質ゼロ表明 自治体
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 (参考資料3-5)環境省RE100達成のための行動計画
 (参考資料3-6)地域での再エネ拡大に向けた経産省との連携チームについて
 (参考資料3-7)地域での再エネ拡大に向けた経産省との連携チームでの取組例について
 (参考資料3-8)再エネ情報提供システム「REPOS(リーポス)」を6/26にリリース
 (参考資料3-8)REPOSの主な特徴
 (参考資料3-9)災害にも強い地域づくり
 (参考資料4-1)我が国の実質GDPと温室効果ガス排出量の推移
 (参考資料4-2) CO2の部門別排出量(2018年度)
    20200804_18
 (参考資料4-3) 2018年度温室効果ガス排出量(確報値)の2013年度からの増減について
    20200804_19
 (参考資料4-4) 2018年度の地球温暖化対策計画の進捗状況について
    20200804_20
 (参考資料4-5)総合エネルギー統計における電源構成の推移
    20200804_21

 (参考資料4-6)全電源※の発電に伴う燃料種別のCO2排出量
 (参考資料5-1)世界のエネルギー起源CO2排出量の推移(IEA資料より)
 (参考資料5-2)主要先進国の温室効果ガス排出量の推移
    20200804_22
 (参考資料5-3)主要先進国の実質GDP注当たり温室効果ガス排出量の推移
 (参考資料5-4)主要国のエネルギー起源CO2注1排出量の推移(IEA推計注2)
    20200804_23
 (参考資料6-1)気候変動×防災の主流化
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 (参考資料6-2)脱炭素で防災力の高い社会の構築に向けた包括的な対策の推進
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 (参考資料6-3)個人、企業、地域の意識改革・行動変容と緊急時の備え、連携の促進
 (参考資料6-4)国際協力、海外展開の推進

※委員総数28名で三村信男さん(茨城大学地球・地域環境共創機構特命教授)が部会長です。議事録から3名の委員の発言を掲載しておきます。
小西雅子委員(公財)世界自然保護基金(WWF)ジャパン  専門ディレクター(環境・エネルギー) 昭和女子大学グローバルビジネス学部特命教授]
手短に3点、お話しさせていただきたいと思います。
まず1点目は、資料の6ページなんですけれども、排出量が5年連続で減っていると、COPでもいつもこれは出されるんですけれども、1990年に比べると、3%減くらいにすぎないので、結局、1990年から地球温暖化対策をしようというふうになってきて、約30年間で3%しか減少できていないということを、もう少しグラフの上にある四角いところで分析として、現実を直視した分析になったほうがいいかなと思います。
ここから言えることとして、これまでのやり方では効果がなかった。すなわち、例えば産業部門の排出削減の施策が自主行動計画がメインだったということが、やはり、それでは功を奏さなかったんじゃないかということがここから導き出されてくるかと思いますので、やはり、カーボンプライシングとかそういったもの、新しい施策が必要なんだということを、ここで分析結果として出てくるみたいなことをしっかり現実として見たほうがいいのではないかなと思っています。
ここから、やはりグリーンリカバリーが非常に重要になってきますけれども、そのときにやっぱり過去を検証して、リーマン・ショックの後、日本は急増していることがここからも分かります。2013年過去最高となっています。そのときの増加要因として、火力発電の増加による化石燃料消費量の増加によってエネ起源CO2の排出量が増加したみたいな分析がなされていますので、今回はそれを防いで、いかに、今まさに環境省さんがおっしゃっておられるような脱炭素化とSDGsに沿った形のリカバリーが果たしていけるかといったような視点で、まず、過去の経緯からの今回の違いというものを見せていけばいいのではないかなと思います。
その三つ目として、今の経済復興策、井田さんもさっきおっしゃっておられましたけれども、日本の中で、脱炭素とかSDGsとか、どの程度一緒に検討されているか。EUとかでは例えば3割を気候変動対策にみたいに言われていて、Do no harmで全体として脱炭素化がかかっており、少なくとも環境に害をなすものはやらないみたいなことになっていますので、そういった形での整理が日本でも問われているのではないかなと思っております。

江守正多委員[国立環境研究所地球環境研究センター副センター長]
2点、コメントを申し上げたいと思います。
一つは、今日、オンライン会合ということで、これがYouTubeで放送されているわけですけれども、これは非常によかったというふうに思っています。今まで環境省の会議というのはあんまりYouTubeで放送することはなくて、経産省の会議は放送しているのが多くて、非常に経産省のほうがいいなというふうに思っていたところです。それで、もし今後、集まって会合するのが普通になるにしても、今後このYouTubeの放送というのは続けていただきたいと。特にそう思いますのは、今、若い人が、いわゆるFridays For Futureの高校生、大学生とかがNDCの引上げに非常に強い関心を持って、どのように彼らの意見というのを表明していこうかということを考えていて、こういう審議会とかも結構ウオッチをしています。ぜひ彼らに見ていただきたいと。我々としては、そういう若い人が見ているんだと、我々が見られているんだという、そういう意識を持って恥ずかしくない議論をしていかなくちゃいけないと思います。そのためにもYouTubeというのは続けていただきたいというのが1点です。
2点目は、浅野委員からもご発言があったんですけれども、カーボンプライシングについてなんですが、これはちょっと、最近ネットを見ていますと、とあることをきっかけにしてカーボンプライシング、特に炭素税に対する反発的なコメントが非常によく見られるようになっているということが起こっています。これは、一つはコロナとの関係があると思っていまして、今これだけ経済がダメージを受けているのに増税するのかと、そういうリアクションというのが当然あるわけですよね。もちろん新しい税金の話をすると、そういう反発が来るのは世の常だろうと思いますけれども、カーボンプライシングというのは、僕の理解では、単に税金を増やして高くするからみんな我慢してくださいとか、そういう話ではなくて、むしろ脱炭素の商品とかサービスについては追い風になるような、そちらが相対的に経済的な優位性が上がって、選択されるし、投資が来るし、イノベーションも進むと、そういう、経済に対してブレーキではなくて、その向きを変えるのであるというところは僕から見ると本質に見えますので、そういったことを含めてカーボンプライシングについても堂々とこれから議論していく必要があるのではないかと思います。

髙村ゆかり委員[東京大学未来ビジョン研究センター教授]
私からは、ほかの委員がご指摘にならなかった点を特に2点、申し上げたいというふうに思っております。
一つは、三村部会長が最初におっしゃいましたけれども、感染症の拡大というこの状況の中で気候変動対策、脱炭素化に向かう対策も適応策も非常に重要性が増しているというのはそのとおりだというふうに思います。足元の感染症と災害の複合リスクを抑えるという意味でも適応策は非常に重要ですし、将来の気候変動リスクを低減するという意味でも脱炭素化の政策というのは非常に重要になっていると思います。
その意味で、今回始まる温暖化対策計画の見直しについては、もちろん足元の2030年をどうするのかという点もそうですけれども、同時に、これは下田委員がおっしゃいましたが、長期的な視点から、どういう将来の社会をめざすのか、それを支えるインフラはどのようにあるべきか、こうしたものをきちんと書いていくような、そういう作業を期待いたします。特に、インフラ形成にかかる時間を考えると、今ここで始めないといけないというふうに思います。
先ほどから何人かの委員からイノベーションについて議論がありました。長期戦略の中でも非常に重視をしていますけれども、しかしながら、長期戦略に関するイノベーションの議論は企業さんの中にイノベーションのシーズを作り出す力はあるけれども、それを普及して、コストを下げて実装していくためのインフラや社会の制度にむしろ課題があるという認識でした。
そういう意味では、将来を見据えて、まさにイノベーションを作っていくための政策の議論をやっていただきたいというふうに思います。
それに関わって、今「長期的な」と申し上げましたが、このことは地域の脱炭素化にとっても、これは中島委員がおっしゃった点ですけれども、長期的な政策の一貫性や見通しを示すということが具体的な補助と合わせて非常に重要だというふうに思います。特に、今日ご紹介がありました150もの自治体が、しかも7,000万人をカバーした自治体が50年ゼロを目指したいという意思を持っているということの重さをふまえて、国は、その方向で、どういう見通し、政策の方向性を出せるのかということをきちんと議論ができる温対計画の見直しにしていただきたいというふうに思っております。
2点目でありますけれども、コロナ後の在り方として、どの方も多分否定をしないのは、分散型の国土、地域づくりの重要性ということだと思います。これは日本のこの50年間の都市集中、あるいは一極集中の課題にどう対応するかという問題です。恐らくいろいろな手だてを取ってきて、なお解決できないでいるこの課題に対処をするには、地方が住民にとってより魅力的な場にならないといけない。これを作り出す地方のエンパワーメントが今、非常に重要になっていると思います。恐らく、雇用であったり、生活環境や教育環境といったものを統合的に地域が向上させていくという、そういう仕組み、政策が必要で、これもどなたかおっしゃいました、地域循環共生圏という取組はそれにつながってくると思います。
脱炭素の観点からいきますと、欧州などもいろんな戦略の柱を立てておりますけれども、例えば建築物のリノベーションですとか、クリーンエネルギーですとか、クリーンな持続可能なモビリティの実現、いずれも経済復興、雇用創出をしながら、脱炭素、クリーンな社会を創っていける、そういうポテンシャルを持った施策があるということだと思います。
中でもやはり強調したいのが、再生可能エネルギー、クリーンエネルギーの積極的な導入、活用で、これは特に地方のエンパワーメントという点では非常に重要な施策だと思います。経産省も再エネ主力電源化に向けて政策パッケージの検討を開始していますし、さらに再エネ型経済社会の創造というビジョンを今、打ち出して議論をし始めています、そういう意味では、環境省でも経産省のこうした検討と連携をして、ゼロ・カーボンシティ、あるいは2050年ゼロエミッションを目指す地域や企業の支援をする、再エネ導入の促進策というものを検討実施していただきたいと思っております。

公益財団法人自然エネルギー財団「2030年エネルギーミックスへの提案(第1版)自然エネルギーを基盤とする日本へ」(2020年8月6日)
 はじめに
 概要
 第1章求められるエネルギー転換の加速
  福島から10年-原発ゼロの実現へ
  脱炭素社会への転換を加速する必要の高まり
  政府エネルギーミックスの破
  2030年に自然エネルギーを基軸とする電力供給を
 第2章エネルギー需給をめぐる現状
  第1節エネルギー需給構造
   一次エネルギー需給
   電力需給
  第2節CO2排出の状況
  第3節エネルギーコストの状況
  第4節自然エネルギーをめぐる状況
 第3章2030年における自然エネルギーの導入可能性
  第1節太陽光発電の導入可能性
   1.利用可能な土地面積の制約
   2.経済的制約
   3.2030年度の導入可能性
  第2節風力発電の導入可能性
   1.環境アセスメントの状況
   2.系統接続検討・申込の状況
   3.2030年度の風力発電の導入可能性
   4.2030年度の風力発電の発電電力量
  第3節バイオエネルギー発電の導入可能性
   1.売電用バイオエネルギー
   2.自家用バイオエネルギー(再エネ特措法外)
   3.転換促進ケース
  第4節水力発電の導入可能性
  第5節地熱発電の導入可能性
  第6節自然エネルギー電力の導入可能性(まとめ)
 第4章持続可能なエネルギーミックスのあり方
  第1節化石燃料の時代から自然エネルギーの時代へ
  第2節エネルギー需要の見通し
   1.需要の推計の考え方
   2.エネルギー需要推計の前提条件と結果
  第3節持続可能なエネルギーミックスの姿
   1.原子力発電の想定
   2.火力発電の想
   3.2030年エネルギーミックスの姿
   4.CO2排出量の算定
   5.持続可能なエネルギーミックスの意義と課題
  第4節脱炭素社会への展望
 第5章持続可能なエネルギーミックスへの政策課題
  第1節電力システムの改革
  第2節脱炭素への市場メカニズム:カーボンプライシング
  第3節土地利用規制の再検討
  第4節企業の自然エネルギー利用の拡大
  第5節自治体の実行力の強化
 第6章エネルギー政策の選択の時
  パンデミックからの緑の回復
  この10年で日本を変える

浅岡美恵(気候ネットワーク)「ポストコロナと日本の気候変動対策~それでも世界は動いている~」(気候ネットワークWebセミナー、2020年7月9日)
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地球環境研究センター設立30周年記念オンラインイベント 10月1日


国立環境研究所地球環境研究センター設立30周年記念オンラインイベント『気候変動研究と脱炭素社会(これまでの30年、これからの30年)』があり、第2部を聴きました。
設立30周年プログラム_1設立30周年プログラム_2設立30周年プログラム_3
第2部世代横断パネルディスカッション「脱炭素社会に向けた世代間大討論(これからの30年をどーする)」は、ファシリテーターを江守正多さん(地球環境研究センター副センター長)、パネリストは5名、堅達京子さん(NHKエンタープライズ・エグゼクティブプロデューサー)、三枝信子さん(地球環境研究センター長)、高橋大輝さん(東京大学教養学部2年、Friday for Future Tokyoオーガナイザー)、西岡秀三さん(IGES参与、元NIES理事)、宮﨑紗矢香(株式会社大川印刷、Friday for Future Tokyo元オーガナイザー)でおこなわれました。

ファシリテーターを江守正多さんのスライドから
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地球環境研究センター設立30周年オンラインイベント第2部20201001_5地球環境研究センター設立30周年オンラインイベント第2部20201001_3

堅達京子さんのスライドから
地球環境研究センター設立30周年オンラインイベント第2部20201001_6



西岡秀三さんのスライドから
 低炭素から脱炭素へ変わるということは
   低炭素社会 京都議定書型 現状から何%減
   脱炭素社会 パリ協定型 すべての国がゼロ排出へ
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※(公財)SOMPO環境財団、損保ジャパン、(公社)日本環境教育フォーラム(JEEF)の3者が協働で開催する「市民のための環境公開講座」(全9回)が今年は無料のオンライン講座として開催されています。9月7日には江守正多さんの「気候危機・コロナ危機と社会の大転換」(→講座概要)、9月23日には堅達京子さんの「真のパラダイムシフトで地球環境を守ろう!」(→講座概要)が実施され、講座概要が公開されています。
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※9月3日、新型コロナウイルスからの復興に関連する気候変動・環境対策に関する具体的な行動や知見を共有するため、9月3日にオンラインの閣僚級会合(小泉環境相が全体議長)が開催され、日本(議長国)及び気候変動関連条約事務局(共同議長)、英国(COP26議長国)並びに、46か国の大臣・副大臣が発言したほか、書面での情報提出等を含め計96カ国が参加しました。またオンライン・プラットフォーム「Platform for Redesign 2020」が立ち上げられています。(環境省報道発表資料2020.09.11


※小西雅子「小泉大臣リード!国連のオンライン温暖化会議が開催されました」(WWFスタッフブログ2020.09.04

江守正多『地球温暖化のリアル』圧縮版②、③ 9月20日

6月23日「最終確認 地球温暖化は本当なんですよね?」で紹介した国立環境研究所動画チャンネル、江守正多さんの『ともだちに話したくなる!地球温暖化のリアル』①~③と20分の圧縮版①。今回は地球温暖化のリアル圧縮版②「【20分でわかる!】温暖化ってヤバいの?」と③「【20分でわかる!じゃあどうしたらいいの?」。全編字幕つきです。











映像教材『かながわ環境スクール(中高生版)』A 9月12日

かなチャンTV(神奈川県公式)の『かながわ環境スクール(中高生版)』は、地球温暖化、エネルギー、資源循環、生物多様性の4テーマに関わる環境問題について学べる映像教材です。A、の2回に分けて掲載しています。

●かながわ環境スクール(中高生版) プロローグ 2:11


●かながわ環境スクール(中高生版)1-1 地球温暖化ってなに? 4:19


● かながわ環境スクール(中高生版)1-2 地球温暖化で私たちの生活にどんな影響があるのかな? 4:53


●かながわ環境スクール(中高生版)1-3 どのくらい二酸化炭素を出しているのか? 4:53


●かながわ環境スクール(中高生版)1-4 地球温暖化防止のための具体的な活動は? 5:44


●かながわ環境スクール(中高生版)2-1 生活の中のエネルギー 3:17


●かながわ環境スクール(中高生版)2-2 電気はどうやって作るの? 7:29


●かながわ環境スクール(中高生版)2-3 家庭ではどのくらい電気を使っているの? 3:16


●かながわ環境スクール(中高生版)2-4 未来のまちとエネルギー 4:04


3、4はこちら

廃棄物処理施設探検隊(栃木県チャンネル) 9月6日

とちぎインターネット放送局県の番組「廃棄物処理探検隊」は栃木県の廃棄物処理施設に対する県民理解促進事業です。廃棄物処理施設にはさまざまな施設がありますが、それらの施設でどのような廃棄物をどのように処理・再資源化しているか、動画で紹介しています。

1 堆肥化施設編 6:47 2013.07.31



3 焼却施設編 5:36 サーマルリサイクル 2013.07.31


4 廃油再生施設編 5:13 2013.07.31


5破砕施設編 5:24 2016.03.31


6 家電リサイクル施設編 6:02 2016.08.31


7 最終処分場編 6:43 2016.08.31


8 ペットボトルリサイクル施設編(1) 6:50 2017.04.27


9 ペットボトルリサイクル施設編(2) 6:14 2017.04.27


10 自動車リサイクル施設(解体・破砕)編 6:48 2018.05.18


11 自動車関係(廃エンジンオイル)リサイクル施設編 5:40 2018.05.18


12 木くずの再生施設(建設リサイクル関係)編 6:48 2019.07.16


13 廃コンクリート・廃アスファルトの再生施設(建設リサイクル関係)編 5:40 2019.07.16


14 選別施設編 6:03 2020.06.19



一般家庭から週一回、所定のゴミ集積所(クリーンステーション)に出される「プラスチック類」は2種類(プラマーク付のプラ①とプラマークなしのプラ②)です。今日はプラ①(プラスチック製容器包装物)資源化の行方を訪ねてをテーマに、市内集積所から運搬回収された「プラスチック類」を一時保管する西本宿不燃物等埋立地と栃木県下野市の西坪山工業団地にあるリサイクル事業者(再生処理事業者)ウィズペットボトルリサイクル株式会社栃木工場を見学しました。栃木工場では西本宿からトラックで搬出されてきたゴミ袋を破いて中身を抜き出し、異物を取り除いてリサイクルできるものとできないものとを選別し、圧縮・梱包した「ベール品」を一時保管する中間処理工場です。



エコプロ2018に参加(2018年12月8日)





連載「平田仁子と読み解く、パリ協定後の気候変動対策」 8月29日

7月28日、気候変動イニシアティブ(Japan Climate Initiative: JCI)は、「石炭火力」をテーマにウェビナー(オンラインセミナー)を開催しました。平田仁子さん(気候ネットワーク 国際ディレクター/ CAN Japan 代表)が講演「国内の石炭火力フェーズアウトの必要性」をしています。平田さんは日報ビジネス社発行の「低炭素社会実現」を目指す提言誌『地球温暖化』(隔月刊)に「平田仁子と読み解く、パリ協定後の気候変動対策」を2016年5月号から連載しています。最新号(2020年9月)は「第27回 変わる株主総会」で、この連載は全回を気候ネットワークの「【隔月刊 地球温暖化】平田仁子と読み解く、パリ協定後の気候変動対策」から読むことができます。
第27回 変わる株主総会(2020/09)
第26回 「ゼロ」の意味を考えるとき(2020/7)
第25回 新型コロナウイルスは、気候変動対策にどのような意味をもたらすのか?(2020/5)
第24回 今年、各国の行動はどこまで引き上げられるのか?(2020/3)
第23回 2020年、パリ協定の本格始動~未来を決定づける10年へ (2020/1)
第22回 石炭火力の建設ラッシュ 本当に建てるの!? (2019/11)
第21回 子どもたちの訴えに応えられるのか 9月20〜27日は気候ウィーク (2019/9)
第20回 CCS・CCUへの危うい期待〜未来の選択肢になり得るのか (2019/7)
第19回 どうなる?日本の長期戦略〜脱炭素社会への「道すじ」の描き方 (2019/5)
第18回 仕事が変わる〜脱炭素社会への移行が伴う労働・雇用の移行 (2019/3)
第17回 COP24、パリ協定の実施指針に合意〜これからは本格実施ステージへ (2019/1)
第16回 これから10年の行動が地球の未来を左右する~IPCC特別報告が私たちに問いかけるもの~ (2018/11)
第15回 脱炭素社会を牽引する市民・NGO (2018/9)
第14回 脱炭素社会の実現に向けた長期戦略を描くとき (2018/7)
第13回 ダイベストメントはもう止まらない (2018/5)
第12回 気候変動対策をとらないと訴えられる? (2018/3)
第11回 COP23からマクロン・サミットへ (2018/1)
第10回 再エネ100%イニシアティブ「できる」「できない」の議論を乗り越えて (2017/11)
第9回 運用始まる「緑の気候基金(GCF)」 日本はどう役割を果たせるか (2017/9)
第8回 トランプ大統領にも止められないー率先して動き出す企業イニシアティブ (2017/7)
第7回 企業にとっての気候リスク〜リスクの情報開示が常識に! (2017/5)
第6回 日本はどこへ向かうのか〜迷走中、それとも逆走中? (2017/3)
第5回 それでも世界が動いていく〜トランプ・ショックを乗り越えて (2017/1)
第4回 祝!パリ協定発効〜世界はなぜこれほど早く動いたのか? (2016/11)
第3回 政策と市場の両方で加速する「脱石炭」の動き (2016/9)
第2回 パリ協定は2016年中に発効する!? (2016/7)
第1回 ポスト・パリ協定:脱炭素化へ向けた新時代の幕開け (2016/5)
   
 

「卒石炭火力が日本でも合理的である5つの理由」 8月5日

 7月3日以来、経済産業省がエネルギー政策の転換を思わせる方針を次々に打ち出している。旧式の石炭火力発電所の大部分を2030年までに休廃止、再エネ拡大のために送電網の利用ルールを見直し、また、政府の方針として石炭火力の輸出支援を厳格化、といった具合だ。2018年に定められた第5次エネルギー基本計画を具体化しているだけだというが、筆者には潮目の変化のように感じられる。
 気候変動対策の緊急性の認識が世界で高まり、CO2排出量の大きい石炭火力への風当たりが強くなっている。ほとんどの先進国が脱石炭に向かう中で、日本政府が石炭火力を維持する姿勢は世界から強い批判にさらされてきた。
 日本の言い分は、日本には国内資源が乏しい、面積に比して人口密度が高くエネルギー需要が大きい、隣国とつながる送電網が無い、といった理由でエネルギー安定供給のための火力発電、とりわけ資源調達の容易な石炭火力をある程度維持したいということだろう。
 環境NGOなどはこれを言い訳と見ており、今回の方針に対しても批判的な姿勢を崩していないが、筆者はある程度もっともな言い分だと思っている。しかし、それでも遠からぬうちに日本も石炭火力を卒業するのが合理的だと思う。筆者はエネルギーの専門家ではないので技術や経済の詳細な議論には立ち入らず、大局的な観点からその理由を5つ述べたい。
1. 脱炭素は待ったなし

2. 世界が脱炭素した暁には日本は「勝ち組」
 やはり昨年発表されたノルウェー等の研究者による論文で、世界のエネルギー転換による(つまり、いつの日か世界のエネルギーが化石燃料から再エネに完全に置き替わった場合の)各国の地政学的な損得を分析したものがある。
 その結果によると、日本は明らかな「脱炭素勝ち組」なのだ。資源量のみに注目した場合、人口密度に比して再エネ資源がそれほど豊富ではないので評価は中程度になるが、貿易への影響を考慮するとぐっと評価が上がる。化石燃料輸入のために国外に流出していた年間20兆円前後が国内で回るようになるのだから当然だ。国内秩序の安定性を考慮に入れるとさらに評価が上がる。
 国益を考えるならば、日本は全力で世界の脱炭素化を目指すのが合理的なのである。
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3. 日本の再エネポテンシャルは十分にある
 そんなことをいっても、日本国内の再エネで日本のエネルギー需要がまかなえないと仕方がないじゃないかと思うだろうが、どうやらその点は大丈夫である。
 環境省による最新の調査によれば、日本の再エネ導入ポテンシャルは年間発電電力量にして73,000億kWh、そのうち経済性を考慮した導入可能量は26,000億kWh程度と見積もられている。その内訳は洋上風力が6割、陸上風力と太陽光が各2割程度である。この導入可能量は日本の現在の消費電力量の2倍以上であり、熱量換算すると9.4エクサジュールで、最終エネルギー消費量の13エクサジュールにせまる数字である。

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 日本の再エネポテンシャル(発電電力量)。環境省資料より。

 つまり、単純計算では、日本の電力をすべて再エネでまかなうことは十分に可能である。火力発電も原発も必要ない。さらに、技術進歩等により経済性が少し改善されれば、燃料等を含む一次エネルギー全体を再エネでまかなうことも視野に入るといえるだろう。
 もちろんこれが可能になるためには、送電網の増強や、需給バランスを確保するための蓄電設備やデマンドレスポンス(需要側の調整)などへの投資や制度整備が必要なので、すぐにできると言っているのではない。究極的に(といっても30年で、できればもっと早く)これを目指すという話である。
 ここで、メガソーラーの自然破壊などの心配も出てくると思うが、環境アセスメントも廃棄費用の積み立ても義務化されたので、乱開発は是正されるだろう。

4. 石炭火力でもうかりますか?
 経産省の方針では高効率の石炭火力は維持、拡大するといわれており、環境NGOはこの点を特に批判している。しかし、石炭火力を新設しようとする事業者がどんなふうに経済的な合理性を見込んでいるのかが、筆者にはわからない。
 再エネのコストはどんどん安くなっており、世界の多くの地域(英国のシンクタンクCarbon Trackerの報告によれば日本も含む)で既に新設の石炭火力よりも新設の再エネの方が安い。この傾向は今後さらに拡大していくだろう。また、再エネが増えるほど、火力発電は出力制御をしなければいけなくなるので、稼働率が落ちて収益性が下がる。
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 本格的なカーボンプライシング(炭素税や排出権取引)が日本でも導入されれば、石炭火力のコストはさらに上がる。すぐに導入されるかはわからないが、10~20年にわたって導入されないと想定する事業者はさすがに楽観的すぎるだろう。CCSを後付けできればカーボンプライシングはかからないが、もちろんCCSのコストがかかる。
 もしも筆者が石炭火力を計画中の事業者の立場であったならば、全力で引き返す判断をするだろう。既に投資してしまった額によっては辛い判断になるかもしれないが。
5. やがて常識が変わるだろう
 ……やがて技術的にも経済的にも脱炭素が可能だと誰もが思うようになり、CO2を出さずにエネルギーを作ることが世界の常識になる時代が来るだろう。そのときの新しい常識から現在をみると、「あの頃はひどいことをしていた」と評価されるにちがいない。特に、脱炭素の選択肢があるのを知りながら、CO2を多く排出するインフラを新たに作ることは、きわめて悪質な行為として後世の人たちから厳しい倫理的な批判にさらされるだろう。

 石炭は嫌いじゃなかった。小学生だった1960年代、冬場になると、当番はみんなより早く登校して、教室のだるまストーブに火をつけた。なかなか火がつかないが、赤々とした炎は「エネルギーの塊」を感じさせた。だがそんな石炭の時代も、終わりが見えかけてきた。さて、どう石炭と別れよう。
 身の回りの燃料は石油やガスに替わり、石炭を手にする機会はなくなった。57歳の私は、石炭に触れた最後の世代ではないかと思う。ただ、目の前から消えたからと言って、石炭の時代が終わったわけじゃない。世界ではいまも主要なエネルギーの一つだし、日本ですら、電気の3割は石炭が担っている。
 ところが、その石炭にもついに終わりの兆しが見えてきた。地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)を大量に出すことが理由だ。流れは2015年のパリ協定で決定的になった。
 簡単じゃないことは分かっている。けれど、どうせ別れるなら、きっぱりと別れたい。
インド 石炭電力が余り出した
イギリス 産業革命からの卒業
ドイツ 別れるには時間がかかる
時代に逆行、依存強める日本
 日本では石炭の時代はすでに終わったと思っている人は多いが、とんでもない。国内の石炭消費量は、2度の石油ショック以降再び増加に転じ、2015年は1960年代の倍以上の約1億9000万トンになっている。6割が発電などで4割が鉄鋼関連で使われている。99%以上がオーストラリアなどからの輸入で、世界3位の輸入大国だ。
 日本経済の変わり身の早さには、ある意味で感心する。戦後の増産政策で、国内には50年代に1000以上の炭鉱があり、45万人以上が働いていた。
 それが、海外炭が安いと見るや、軸足を移す。70年には国内炭との割合が逆転。国際競争力がないという理由で合理化の嵐が吹き荒れ、閉山が相次いだ。現在残る炭鉱は、北海道の坑内掘りの1炭鉱と、露天掘りの7炭鉱だけだ。
 しかも、閉山は突然だった。82年10月に閉山した北海道夕張市の北炭夕張新鉱の閉山発表は1カ月半前だった。約2000人の従業員は全員解雇された。97年3月に閉山した福岡県大牟田市の三井三池炭鉱も1カ月半前で、1200人の全従業員が解雇された。閉山の決定から実施までに10年をかけて
 準備を進めたドイツの炭鉱との違いを感じざるを得ない。
 事実上財政破綻(はたん)した北海道夕張市の鈴木直道市長(36)が「産炭地はどこも苦しんでいる。国策でやってきたことなのだから、もっと国のサポートがあってもいい」とぼやくのも分かる。
 世界が石炭と別れようと動き出している中で、国内炭をあっさり見切った日本は石炭火力発電に固執している。福島原発事故後、建設計画が相次いでいるのだ。環境NGOの調査では、2012年以降、全国で49基(計2300万キロワット)が計画された。4基は事業リスクなどを理由に中止を決めたが、まだ相当数が生きている。
 日本には、エネルギー構造を化石燃料から自然エネルギーに変えていくための強い政策がない。電力会社や産業界は、自分たちの力が及ばない自然エネルギーのような小規模分散型電源より、原発や火力発電のような大規模集中型電源が根本的に好きなのだ。
 海外の石炭への投融資についても、各国が控える動きを見せている中で、日本は「高効率石炭火力発電技術で世界の温暖化防止に貢献する」という姿勢を変えていない。世界自然保護基金(WWF)などの調査では、07~14年の国際的な石炭関連事業(採掘、発電など)への公的金融機関による投融資額は、日本が1位だった。
念入りに準備をして別れよう
 「化石燃料時代の終わり」を示したパリ協定には、すべての国が合意した。唯一の超大国である米国の大統領が離脱を表明しても、協定が揺らぐ兆しはない。
 今回の取材で改めて思い知ったのは、エネルギーの主役はコストが決めるということだ。自然エネルギーのコストは、火力や原子力を下回るようになった。今後はさらに安くなっていくだろう。温暖化や原発のリスクを第一の理由に、世界が脱炭素へと動いているわけではない。自然エネルギーが安くなったから、一斉に走り出したのだ。
 化石燃料との別れは不可避だ。であれば、仕事がなくなる人たちのことも考えて、各国の状況に応じた準備を急ぐべきだろう。
 心配なのは、日本だ。国内炭鉱の閉山の時と同じように、ぎりぎりまで別れないそぶりを見せていて、急に態度を変えるのではないか。そうなると、これまでの化石燃料への投資を回収することが難しくなり、出遅れた日本経済は大きな打撃を被ることにならないか。
 どうせ別れるのだから、きっちりと準備して、これまで世話になったことに感謝して別れたい。後腐れや恨みっこは、なしで。
◆石炭とは ◆石炭から逃げる投資 ◆温暖化の現状

JCIウェビナー「石炭火力を考える」パネディス・質疑 8月4日

JCIウェビナー「石炭火力を考える」(7月28日)の2本の講演の後のパネルディスカッションと質疑です。YOUTUBEでの開始時間を入れておきます。

JCIウェビナー「石炭火力を考える」
 (2020年7月28日 zoomウェビナーおよびYouTubeライブ配信 10:30~12:00)
 4.パネルディスカッション
   高村ゆかり 東京大学未来ビジョン研究センター教授
   平田仁子 気候ネットワーク国際ディレクター/CAN Japan 代表
   大野輝之 自然エネルギー財団常務理事
 5.質疑応答(司会:田中健)


 4. パネルディスカッション 46:35~1:17:03
  ●高村ゆかり  48:10~57:19 1:04:10~1:10:53
  ●平田仁子 57:30~1:01:53 1:11:25~1:15:22
  ●大野輝之 1:01:55~1:01:30 1:15:22~1:17:03

 5.質疑 1:17:05~1:40:54
  ●脱石炭で生じる問題 平田仁子 1:18:22~1:22:55
  ●再エネを普及していく上での課題 滝澤元 1:23:05~
  ●日本政府が石炭火力に固執する理由 高村ゆかり 1:24:41~1:28:50
  ●再エネの価格 大野輝之 1:28:57~1:30:50
  ●まとめの質問:様々な意見を政策に反映するには? 1:31:00
   平田 1:31:50~1:34:14
   瀧澤 1:34:20~1:35:06
   高村 1:35:10~1:38:28
   大野 1:38:36~1:40:17

  

JCIウェビナー「石炭火力を考える」講演②(瀧澤元) 8月4日

JCIウェビナー「石炭火力を考える」(7月28日)の講演②「石炭火力輸出の中止と自然エネルギー支援への転換が必要な4つの理由」(瀧澤元 自然エネルギー財団 上級研究員)です。資料スライドと、YOUTUBEでの開始時間を入れておきます。

講演2 瀧澤元「石炭火力輸出の中止と自然エネルギー支援への転換が必要な4つの理由」 資料PDF 28:25~[YouTube
●2020年 動き出したが、不十分な日本の脱石炭火力 29:21~
 2/18 小泉環境大臣、石炭火力輸出の見直し表明 
 2/12 自然エネルギー財団 「日本の石炭火力輸出政策5つの誤謬」発表
 4/1 環境省、石炭火力輸出ファクト検討会発足
 4/21 自然エネルギー財団 「アジアで進む脱石炭火力の動き」環境省ファクト検討会へ提出
 5/14 環境省「石炭火力輸出ファクト集」取りまとめ
 5/21 経産省「インフラ海外展開懇談会」中間取りまとめ
 7/3 梶山経産大臣、国内非効率石炭火力の削減を表明
 7/9 経協インフラ戦略会議、石炭火力”原則”輸出しない
  【インフラ輸出戦略】「我が国が相手国のエネルギーを取り巻く状況・課題や脱炭素化に向けた方針を知悉(ちしつ)していない国に対しては、政府としての支援を行わないことを原則とする」➡現在進行中のプロジェクトや”高効率”と位置付ける石炭火力の輸出は継続
 7/9 自然エネルギー財団 「石炭火力輸出の完全な中止と自然エネルギー支援への転換を」公表
 [7/22「石炭火力輸出の中止と自然エネルギー支援への転換が必要な4つの理由」(自然エネルギー財団)] 7月22日
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石炭火力輸出の完全な中止と自然エネルギービジネスへの転換が必要な4つの理由 31:34~
1 「日本の石炭火力発電効率は世界でトップ」という主張は、もはや通用しない
  ■ 経産省報告書、環境省検討会への電力会社提出資料でも、石炭火力輸出政策の最大の根拠だった「日本の石炭火力発電効率は世界でトップ」という主張が、もはや通用しないことが明確に。
  ■ 鈴木外務副大臣は「日本が生産をしている1段再熱のUSCよりも、中国のみで生産できている2段再熱のUSCのほうが効率がよく、費用的にも日本のものに比べて高くはないという記述がある。もし、この記述が本当だとすれば、日本の技術が優れているという輸出の前提が変わってしまう」との見解を表明(環境省検討会第3回発言)
2 「石炭火力と脱炭素化の両立」の非現実性
  ■ 経産省報告書が提唱するIGCC、CCSなどの「脱炭素化」技術は、削減効果が小さく、高コスト、技術も未確立。事業者自身の資料によっても、現在の輸出プロジェクトに利用できるものではないことが明らか。
3 東南アジアには自然エネルギー開発、送電網整備など大きなビジネスチャンスが存在
  ■ 東南アジアには、電力需要を満たすために十分以上の大きな自然エネルギーポテンシャルがある。
  ■ 太陽光などの発電コストは急速に低下し、石炭火力に対して価格競争力を有するようになっている。
  ■ 既にインドシナ半島には国際送電網が存在。島しょ部でも建設・計画が進む。その促進こそインフラ輸出のビジネス機会。
4 多くの企業・金融機関が既に石炭から自然エネビジネスへの転換を進めている
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●1 競争力を失った日本の石炭火力プロジェクト 32:16~

●2 「石炭火力と脱炭素化の両立」の非現実性①IGCC 33:59~

●2 「石炭火力と脱炭素化の両立」の非現実性②CCS 36:16~

●3 東南アジアの自然エネルギービジネスの大きな可能性 太陽光・風力のコスト低下 38:25~
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●3 東南アジアの自然エネルギービジネスの大きな可能性①開発ポテンシャル 40:27~

●3 東南アジアの持続可能な未来 ■東南アジアの未来3つのシナリオ:日本はどの未来を支援するのか 41:50~
 •「世界エネルギー見通し2019(WEO2019)」は、東南アジアの「現状政策(CPS)」、「公表政策(SPS)」、「持続可能政策(SDS)」の3つのシナリオを描く。
 •石炭火力発電量は、現在より現状政策で3倍、公表政策でも2倍になる。
 •公表政策でも、2040年までの設備容量の増加は、自然エネルギー電源が石炭火力の2倍程度。しかし、このシナリオでも、エネルギー起源CO2は、60%増加する。
 •日本が、世界の気候変動対策に貢献するためには、パリ協定に整合する持続可能政策に沿った電源開発を支援すべき。
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●4 多くの企業・金融機関が既に石炭から自然エネビジネスへの転換を進めている 43:15
 ■環境省検討会に提出された各企業の資料からは、金融機関、商社は脱石炭の方向に舵を切っており、電力会社も、石炭火力の必要性は言いつつ東南アジアでは新規開発を予定していないことが明らかになった。
 ■ごく一部の企業以外、日本のビジネスは脱炭素への選択を行っている。

石炭火力輸出の中止と自然エネルギー支援への転換が必要な理由まとめ 45:15~46:25
1. 日本政府はパリ協定にコミットしており、「世界の脱炭素化を牽引するとの決意の下、高い志と脱炭素化のための取組を積極的に推進していく姿勢を力強く内外に示」すとしています(パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略)。
したがって、政府のインフラ輸出戦略もパリ協定の実現に向けた戦略と整合的であることが必要です。
2. 経産省報告書は、IEAの公表政策シナリオに依拠して「2040年には、化石燃料発電の割合は相対的に減少するが、例えばアジア太平洋地域では依然5割を占めることが見込まれ」るとし、これを石炭火力支援を継続する理由としています。
しかし、公表政策シナリオでは、2040年の東南アジアのエネルギー起源CO2排出量は2018年より60%も増加してしまい、パリ協定の目標と整合しません。公表政策シナリオを前提として日本のインフラ輸出戦略を決めるのでは、パリ協定に対する政府のコミットメントと矛盾してしまいます。
3. 石炭火力輸出を合理化する最大の根拠であった「日本の石炭火力発電効率は世界でトップ」という主張が根拠を失う一方で、東南アジアにおける自然エネルギー開発、送電網整備には、大きなビジネスチャンスが存在しています。
4. 環境省検討会においても、経産省報告書においても、多くの日本企業が自然エネルギー拡大とその関連ビジネスに積極的に乗り出していることが示されています。
5. 世界の気候変動対策に貢献するためにも、日本のビジネス展開の促進のためにも、「インフラ輸出戦略」を見直し、石炭火力輸出政策を完全に中止し、自然エネルギービジネス支援に転換すべき時です。
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JCIウェビナー「石炭火力を考える」講演①(平田仁子) 8月4日

JCIウェビナー「石炭火力を考える」(7月28日)の講演①「国内の石炭火力フェーズアウトの必要性」 (平田仁子 気候ネットワーク国際ディレクター/CAN Japan 代表)です。資料スライドと、YOUTUBEでの開始時間を入れておきます。

講演1 平田仁子「国内の石炭火力フェーズアウトの必要性」 資料PDF  8:37~[YouTube
●気候危機の回避に求められること パリ協定との整合性(1) 2050年ネットゼロ 9:18~ 9:39~
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●気候危機の回避に求められること パリ協定との整合性(2) 石炭火力の利用抑制 9:35~ 9:38~ 10:38~
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●これからの経済再生策が決定的に重要 9:36~ 12:27~
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●発電電力量の推移 13:42~
 
●2012年以降の石炭火力発電所の新増設 多数の石炭火力発電所が建設・運転開始している 14:38~

●廃止計画を持たない日本 石炭火力の発電容量が急増している 16:01~

●日本の石炭火力発電に関する対策・政策はG7で最低ランキング 16:29~

●[化石賞] 17:35~
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●国の石炭火力政策① ー東日本大震災後 18:28~
  石炭火力発電の開発へのゴーサイン
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●国の石炭火力政策② 19:28~
  エネルギー基本計画での位置付けと、それとの整合を図る施策
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●電気事業者の供給計画とりまとめ 20:48~
  2029年に石炭火力37%にまで増えてしまう
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●経済産業省 石炭火力の抑制:非効率石炭休廃止(100基・9割) 21:38~
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●“非効率石炭火力の9割(100基)休廃止”の意味 22:15~
  古いものは閉じるが、新しいものは今後も延命方針
  基数で9割・100基は大きく思えるが設備容量ではわずか2まる割減
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●Climate Action 2019 23:21~
 各国の行動を引き上げを要請
 ●国連気候行動サミット2019(UN Climate Action Summit 2019)

●目標を立て毎年計画的に削減 23:51~
 「2030年石炭火力フェーズアウト」の道筋が不可欠

●「2030年石炭火力フェーズアウト」の実現に向けた市民・NGOの動き 24:36~

今、求められること ー政策 25:13~
 • 2030年目標(エネルギーミックス)の見直し
   • 「2050年CO2ネットゼロ」とともに石炭火力全廃を目標として掲げ、パリ協定との整合性を図ること
 • ロードマップ策定と政策対応
   • 既存発電の全廃への道筋を策定すること
   • 新規計画の中止
 • エネルギー転換を進める政策を経済再生の軸に
   • カーボン・プライシング(経済的手法)
   • 再生可能エネルギー大幅拡大策(優先再生可能エネルギー大幅拡大策(優先給電・系統強化・市場設計))
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日本に求められることー需要側 26:19~27:55
 • パリ協定の目標と整合させるビジョン・戦略と計画策定
    • TCFDの勧告に沿ったリスク把握とシナリオ分析
 • 電力の脱炭素化の行動実践
    • 目標設定
    • イニシアティブ参加・コミットメント
    • 電力購入基準設定
    • 再エネ導入・自家消費
 • 政策・社会への波及への貢献
    • 取り組み共有
    • 対話
    • 支援
    • 政策要請
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IGES気候変動統合チーム「ネット・ゼロという世界 -2050年 日本(試案)」定量的データで描き出す脱炭素社会の姿[公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)サイト 20200604
本報告書は、日本において、どのようにネット・ゼロ社会の実現を図るのかということについて、問題提起を行うことをねらいとしている。第1章では、目標年として2050年を掲げ、ネット・ゼロ社会におけるエネルギー需要の動向を中心に定量的な分析を試みた。その結果、広範な社会変化を伴いながらネット・ゼロ社会を実現していくトランジションシナリオでは、ネット・ゼロの達成時には、CO2貯留に関するリスクの低減、及び化石燃料依存脱却によるエネルギー・セキュリティー向上に大きく貢献することが示された。第2章では、トランジションシナリオにおける社会全体の変化を都市と地域、暮らし、産業、適応という観点から展望した。第3章では、ネット・ゼロ社会に向けた主要な課題や論点を概観した。

TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)[環境省サイト]

JCIウェビナー「石炭火力を考える」 8月3日

気候変動イニシアティブ(Japan Climate Initiative: JCI)は7月28日、「石炭火力を考える」をテーマに、ウェビナー(オンラインセミナー)を開催しました。ウェビナーでは2本の講演(国内・国外の石炭火力の動向について)とディスカッション、質疑応答が行われました。zoomウェビナーとYouTubeでライブ配信で600名が参加したそうです。
日本は、CO2排出量の大きい石炭火力発電について、国内での新増設を進めるとともに、東南アジアなどの海外への輸出を支援し続けており、国際的にも大きな批判が寄せられてきました。
7月3日、梶山経済産業大臣は、国内の「非効率な石炭火力発電を2030年までにフェードアウトする」という方針を公表しました。しかしこれは、「高効率」と称する石炭火力を、2030年時点で30GW以上も温存するものだという批判が寄せられています。
また、石炭火力の輸出については、7月9日に政府が発表した新たなインフラ輸出戦略の中で、「支援しないことを原則とする」と定められました。しかし、支援の要件は厳格化された一方で、進行中プロジェクトの支援は継続されるとともに、いまだ新規の輸出を可能とする含みは残されています。
  プログラム  
  1.開会あいさつ(気候変動イニシアティブ(JCI)代表末吉竹二郎)
  2.講演1「国内の石炭火力フェーズアウトの必要性」(平田仁子)
  3.講演2「石炭火力輸出の中止と自然エネルギー支援への転換が必要な4つの理由」(滝澤元)
  4.パネルディスカッション(高村ゆかり・平田仁子・大野輝之)
  5.質疑応答(zoomのQ&A機能を利用)
  司会:田中健(WWFジャパン 気候・エネルギーグループ)

  YOUTUBE(1:40:54)
      


『週刊東洋経済』特集・脱炭素待ったなし 8月1日

『週刊東洋経済』(8月1日号)は「脱炭素待ったなし」の特集です。
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地球温暖化の影響から自然災害が深刻化しています。そこに新型コロナウイルスが直撃。人々の移動が止まり石油需要が低迷し、多くのエネルギー企業が危機に瀕しています。
その一方で再生可能エネルギーシフトが世界主要国における経済復興政策の中心として浮上。日本でも非効率石炭火力発電所の停止など、踏み込んだ政策が動き出しました。
「脱炭素」に向けた規制はどこまで進んだのか。これから、どこまで強化されるのか。企業が意思決定を行ううえで不可欠な情報を盛り込んだ特集をお届けします。
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特集:脱炭素 待ったなし目次
Part1 石油の終焉
 世界で相次ぐ巨額損失と破綻 石油・ガス企業の瀬戸際
 「技術覇権争いで 日本は存在感保て」
    日本エネルギー経済研究所専務理事・首席研究員小山堅
 「エネルギー問題の世界的権威が警鐘 創造的破壊に備えよ」
    IHSマークイット副会長ダニエル・ヤーギン
 コロナ禍と原油価格急落で経済が苦境に 不安定化する産油国政治
 独仏はEV購入に100万円以上補助 政策頼みのEVシフト
Part2  脱炭素化への奮闘
 重い腰を上げた日本政府 「非効率石炭」退場の衝撃
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 グリーンリカバリーに向け世界が動く コロナ禍を脱炭素で克服
 不況対策に内燃機関車への補助金はない ドイツ人の強い環境意識
 再エネ大量導入や森林破壊ゼロへ動き出す 日本企業・ESGの本気度
 イオン、セブンーイレブンの挑戦 再エネ店舗は普及するか
 ヤマト運輸 独社製のEVを首都圏で約100台稼働
 「発電コストが下がれば “電気使い放題”も」
    丸紅 電力・インフラグループCEO横田善明
 CO2大量排出産業の宿命 鉄鋼が挑む脱炭素の壁
Part3  前進する再エネ
 ついに日本も導入目標を策定 動き始めた洋上風力
 「日本政府の目標設定に期待」
    MHIヴェスタス アジア太平洋地域リージョナルマネジャー山田正人
 脱炭素の切り札となりうるか 水素とアンモニアに脚光
 欧州が野心的な水素戦略に着手した 日本の30倍の導入目標を掲げ投資を促す
 「現実味乏しい電源構成 実態に即した見直しを」
    国際大学大学院教授橘川武郎
 強靱で環境性に優れたエネルギー 東電と東ガスが真っ向勝負
 「水力と洋上風力を柱に 数兆円の投資を実施へ」
    東京電力リニューアブルパワー社長文挾誠一
 「日本企業も脱炭素に本腰 電力に投資呼び込む必要」
    日本経済団体連合会会長中西宏明



この間の石炭火力の削減方針評価③(7月24~30日) 7月30日

6月13日にeシフト(脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会)が発表したリーフレット『STOP! 原発・石炭火力を温存する新たな電力市場』の7月22日版が公開されています。「容量市場」、「非化石価値取引市場」、「ベースロード市場」など新たな電力市場制度が大手電力に有利で石炭火力を温存する所以を明らかにしていますが、別記事で扱います。。
  

太陽光発電に負ける石炭火力(文谷数重)
  (Japan In-depth 2020.07.24)
  ・経産省による石炭火力の整理は太陽光にコストで敗北した結果である。
  ・石炭火力は十余年でなくなる。ガス火力も原発もなくなる。
  ・発電関連業界は今後様相を一変する。
経済産業大臣が石炭火力発電の見直しを発表した。3日の記者会見で脱炭素社会の実現を目指すため石炭火力は2030年に向けてフェードアウトさせる旨を明言した。だが、同時に石炭火力を残存させたい希望もにじませている。まず「非効率石炭[火力発電]の早期退出」とフェードアウトの対象を限定している。そして質疑では「高効率の石炭火発」や「償却が終わりに近づいているとか終わったプラント」を残したい本音を示唆している。石炭火力は将来どの程度残るのだろうか?まずは残らない。なぜなら石炭火力の縮小決定はコスト敗北の結果だからだ。それからすれば石炭火力は遠くないうちに絶滅するのである。
  ■フェードアウトはコスト敗北の結果
   文谷1
    ①は新設火力と新設太陽光のコスト逆転(2016年)
    ②は減価償却が完了した既存火力と新設太陽光の逆転(2024年)
    ③は新設火力と再エネ+蓄電池の逆転(2026年)
    ④は既存火力と再エネ+蓄電池の逆転(2026年)

  ■石炭火力はなくなる
  ■原発も天然ガス火力もなくなる
  ■電力関連業界は一変する

  旧式だが高収益の石炭火力発電に不適格の烙印
  (東洋経済ONLINE 2020.07.27 5:50)
原子力発電所の再稼働が遅れている現在、石炭火力発電が生み出す発電量は全体の32%を占めている(2018年度実績)。今回やり玉に挙げられた旧式の石炭火力は、その約半分を占める重要な電源だ。
環境性能では劣る反面、設備が簡素であるためメンテナンスが容易で、減価償却が進んでいることもあり、「競争力では非常に優位にあった」(JERA(ジェラ)の奥田久栄常務執行役員)。つまり電力会社にとっては「非効率」ではなくむしろ「高収益」の設備だった。
それだけに、電力各社への衝撃は大きい。虎の子の資産に対して経産省から環境性能の面で“不適格”の烙印が押されたからだ。方針発表後、電力各社には投資家からの問い合わせが相次いだ。
日本ではこれまでエネルギーの制約から脱炭素化は絵空事と見なされてきた。それが今や企業のビジョンや成長戦略の柱として語られるようになってきた。日本経済団体連合会が音頭を取る形で、脱炭素化を目指す企業連合の「チャレンジ・ゼロ」が動き出したのも危機感の表れだ。脱炭素化の潮流を理解し、自らを変革できた企業だけが生き残る。[記事末結論]
  特例措置がなければ追い込まれる電力会社も
  旧式石炭火力のフェードアウト方針は2年前に決定
  温暖化対策で、はるか先を行く欧州
世界に目を転じると、日本とは違った光景が広がる。先端を走るのは欧州連合(EU)だ。エネルギー面での取り組みや、環境などに配慮したESG(環境・社会・企業統治)投資の状況を比較すると、日本より欧州のほうがはるかに踏み込んで対応していることがわかる。
2015年9月の国連SDGs(持続可能な開発目標)と、同12月の地球温暖化対策のためのパリ協定採択をきっかけに、欧州委員会は「サステイナブル金融に関するハイレベル専門家グループ」(HLEG)を設立。2018年1月のHLEG最終報告書において「タクソノミー」の導入が提言された。
タクソノミーとは、一般に「分類」を意味する。ここでは地球温暖化対策を進めるうえでの投資対象として、各産業分野における技術や製品の適格性を分類する。
今年3月にまとめられた「サステイナブル金融に関するテクニカル専門家グループ」(TEG)の最終報告書によれば、環境に優しいとされる「グリーン」に分類された投資対象に石炭火力発電は含まれていない。
  欧州委員会が明らかにした「水素戦略」

自然エネルギーが世界で急拡大、日本は後進国に 飯田哲也さんに聞く(吉田昭一郎)
  (西日本新聞 2020/7/28 11:30 更新:2020/7/29 16:18 更新)
  ●「太陽光と風力が世界のエネルギーの中心に」
  ●石炭火力を下回る発電コスト
  ●送電線接続ルール、再生エネ普及を妨げ
 飯田さんによると、日本では石炭火力発電の原価は1キロワット時当たり4円~8円程度。これに対し、最新型の太陽光は10円を切るところまで来ている。日本の再生エネが比較的高いのは、初期の高い固定単価で稼働する太陽光がまだ残っていることと、大手電力会社が新規の再生エネ事業者に求める高額な送電線接続負担金の影響もあるという。
 飯田さんたちは「日本と再生」で、再生エネの発展を妨げる壁として、その接続負担金とともに、大手電力会社の送電線運用の問題を指摘した。
 「電力会社は系統の全発電所が最大限発電していると想定して送電線の空き容量を計算するので、実際には送電線にほとんど電気が流れていないのに『空き容量はゼロ』として事実上、新規事業者を締め出し自然エネルギーの普及を妨げています。しかも送電線の使用は先着優先としており、自分のところの原発や石炭火力などの電気を優先して流す。電力量が多すぎると、『出力抑制』と称して自然エネの電気から排除して買い取らず、その補償もしない。そうした不明朗、不公正な運用を見直して、FIT(固定価格買い取り制度)法の本来の目的『自然エネの優先接続・優先給電』を実現しないと、日本の遅れは取り戻せません」
  ●送配電の分離、完全独立こそ1丁目1番地
 欧州など各国が脱炭素化へ本腰を入れる中、石炭火力になお依存し新増設計画も抱える日本への海外の批判は厳しさを増す。政府は今月3日、CO2排出量が多い旧型の石炭火力発電所114基のうち100基程度を30年までに休廃止させる方針を発表。新型の石炭火力は残し、新増設も認めるとした。
 これに対し、飯田さんは「ある意味で、フェイクまがい」と厳しい。「『114基のうち100基程度の廃止』とは大胆な決定に聞こえますが、『やっているフリ』ではないか。旧型の石炭火力は小型が多く、建設・計画中の大型石炭火力を加えれば正味の電力量は基数ほどには大きく減らず、国のエネルギー基本計画を維持したまま、2030年の化石燃料の電源構成比率56%を温存するわけですから」
 政府は同時に、再生エネ推進を掲げ送電線への優先接続など、今のルールの見直しも進めるとしている。飯田さんの提案はこうだ。
 「1丁目1番地は大手電力会社の発電と送電の分離をきちんと実行すること。電力各社は今春、法改正に伴い分社化していますが、送電会社を子会社にしたり持ち株会社の傘下に入れたりしただけ。それでは、送電会社は親会社や持ち株会社の利害に沿って送電線を運用してしまい、中立・独立からはほど遠い」
 「各地の送電会社を資本面で完全に独立させたら国内一つの公益会社に統合。北欧の国際電力市場『ノルドプール』など欧州の先進地の人材を招いて、自然エネルギーの優先接続・優先給電原則のもとで電力市場を一から設計し直し、最新のソフトウエアを導入する。そこまで踏み込まないと、送電網の運用も含めて市場運営上の透明性、公平性が担保できず、自然エネルギーは広く普及できないと思います」
石炭火力見直し エネルギー戦略、原発も逃げず議論を(松尾博文)
  (日経電子版 Nikkei Views 2020.07.29 2:00)
エネルギー政策の長期指針となる「エネルギー基本計画」は、30年度に実現する3つの政策目標を掲げる。(1)欧米に遜色ない温暖化ガス削減を実現する(2)電力コストを現状より引き下げる(3)エネルギー自給率を東日本大震災前を上回る25%程度に引き上げる――だ。
エネルギー指標を国際比較すると、日本が気候変動の対応以上に劣後する2つの数字がある。自給率と電気料金の水準だ。17年の自給率は9.6%と、経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国中(17年時点)で34位だ。東日本大震災以降、最下位のルクセンブルクに次いで下から2番目が定位置になっている。米国93%、英国68%、フランス53%、ドイツ37%などと比べて、日本は主要国の中で際だって低い。
経産省によれば、17年度の電気料金は震災前と比べて家庭用で16%、産業用で21%高い。産業用で38%高となった14年のピークから下がったとはいえ、高止まりが続く。国際エネルギー機関(IEA)によれば、16年の発電コストは米国や東南アジアの2倍、欧州連合(EU)の1.5倍だ。
低い自給率は国家安全保障の、割高な電気料金は国際競争力の観点から放置できない。エネルギーを1割も自国でまかなえず、電気料金が2倍の国に誰が投資しようとするだろうか。温暖化問題に隠れがちだが、日本は深刻な弱点を抱える。
低い自給率は化石燃料への依存度が高いことに起因する。電源の約8割を占める、石炭や液化天然ガス(LNG)、石油はほぼすべて輸入に頼る。戦前、戦後を通じて日本がエネルギー安保の呪縛に捕らわれてきた理由はここにある。自給率引き上げへ、国産エネルギーである再生エネの拡大に注力することは正しい。
ただし、石炭が担ってきたエネルギー供給の役割を、すぐに再生エネで代替できると考えるのは早計だ。日本では再生エネのコストは地理的な条件や送電網の制約などから、まだ石炭火力より高い。時間や天候で変動する再生エネの供給を平準化する技術の定着には投資と時間が必要だ。
原発は温暖化ガスを出さない脱炭素の有力手段であり、国産エネルギーに位置付けられる。安全対策費用が一定に収まる限り、既存原発を再稼働できれば化石燃料よりも発電コストは安い。エネルギー基本計画で掲げる3つの政策目標の達成には原発が必要なのだ。
しかし、様々な世論調査では、福島第1原発事故から9年が経過しても原発への不信感は根強く、必要だとする回答はむしろ下がっている。エネルギー政策の大前提である安全問題を克服できていない。
原発比率20~22%の実現には30基程度の原発が必要だが、再稼働は9基にとどまる。政府は50年に温暖化ガス排出の8割削減の目標も掲げる。この実現には、ほぼすべての火力発電が現状の形では使えない。
原発の運転を40年ですべて停止した場合、49年に国内の原発はゼロになる。運転期間を60年に延長しても50年代には数基となり、69年にはゼロになる。こうなることは早くからわかっていたはずだが、国は議論の先送りを続けてきた。
国民の不信感が強い状況で、原発に触れないのはある意味、政治の当然の選択でもある。しかし、エネルギーをめぐる環境変化は速度を上げる。これ以上、時間を空費するわけにいかない。原発を日本のエネルギー戦略にどう位置付けるのか。新増設をどうするのか。そのために国民の理解をどう得るのか。得られなければどうするのか。この議論から逃げない胆力が問われる。
小泉進次郎氏が異例のテレビ出演 石炭火力輸出厳格化に「前代未聞だ」
  (SankeiBiz 2020.07.30 01:29)
 小泉進次郎環境相は29日夜、BSフジ番組に出演した。自身が主導した石炭火力発電の輸出支援の要件厳格化について「凍り付いたエネルギー政策が解凍され始めた。(政府方針に)『(輸出)支援しないことを原則とする』と書いたのは前代未聞だ」と述べた。小泉氏のテレビ出演は、選挙番組をのぞけば極めて異例だ。
 小泉氏は、政府が石炭火力の削減に取り組む一方で、地元の神奈川県横須賀市で石炭火力発電所の新設が進められていることに関して「批判はあるが、地元のことをやめれば済むのではない。日本全体を動かす政策の変化につなげられるかに力を入れている」と強調した。
 原子力発電の推進の是非は「脱炭素社会をつくるカギは原発と国際社会で認識は共有されている。ただ、日本は原発事故を起こした。そのリスクを国民とどう議論するかだ」と言葉を濁した。
 首相への意欲を問われると、「首相が決めればできることはいっぱいある」と述べつつも「就けるかどうかは別だ。首相になるにはこの人を支えたいという仲間がいなければならない」と述べた。
  (BSフジLIVE「プライムニュース」7月29日放送 2020.07.31 19:30)


石炭火力の削減方針評価②(7月15~20日) 7月29日

7月25日に掲載した「石炭火力削減方針評価①(7月4~9日)」に続く、その後の通産省、環境省、電力業界の対応、その評価について触れているネット記事です。

電気事業の地球温暖化対策、「30年度目標達成に向けた道筋が不明瞭」と評価
  (環境ビジネスオンライン 2020.07.15)
 環境省は7月14日、2019年度の電気事業分野における地球温暖化対策について、電力業界の自主的枠組みと政府の政策的対応の2つの柱で、進捗状況を評価した結果を発表した。
 この評価レポートでは、電力業界の自主的枠組みと政府の政策的対応の全体として、「一定の改善・進捗もあり、評価に値する一方で、今なお多くの課題が残存している」と指摘し、「電気事業分野における2030年度の目標達成に向けた道筋は不明瞭であり、早急に示す必要がある」とした。
  ●経済産業省との合意に基づき評価を実施
  ●現状で2030年度のCO2削減目標達成は困難
  【参考】電気事業分野における地球温暖化対策の進捗状況の評価結果について(環境省)

【単刀直言】小泉進次郎環境相 環境先進国・日本の逆襲始まる(奥原慎平)
  (産経新聞 2020.7.15 21:13)

電力各社の脱石炭、市場が見つめる切り替えコスト(森国司)
  (日本経済新聞電子版 2020.07.17 2:00)

アングル:既定路線の「脱石炭火力」、温暖化対応へ さらなる切り込み必要(清水律子)
  (Reuters 2020.07.17 18:37)
  <輸出支援、「しない」のか「厳格化」か
  <世界への貢献
  <100基廃止でも残る石炭火力
 一方、国内では、140基ある石炭火力発電のうち、発電効率が低い114基の発電を「できる限りゼロに近づけていく」という方針を打ち出した。全発電量に占める石炭火力は2018年度で32%。内訳は、高効率26基で13%、非効率の114基で16%、化学メーカーや鉄鋼メーカーなどの自家発電分が3%となっている。
 この比率からわかる通り、旧型の非効率な石炭火力は小型なものが多く、今後新設される高効率の最新の石炭火力は大型なものが多い。「140基中100基が休廃止」という数字の印象と実態とは異なる。地球環境戦略研究機関(IGES)は「2030年時点では50基の石炭火力が残る」とし、設備容量で見た場合「今回の方針による削減は3割程度」と推計している。
 CO2排出についても「高効率な石炭火力でも、CO2排出量は、非効率なものより数%しか減らない」(自然エネルギー財団)と指摘。今回、高効率なものを日本が継続するという姿勢を示したことに懸念を示している。
 一方、東京電力グループと中部電力が出資するJERAの小野田聡社長は「事業の予見性が高まる」と評価するとともに、日本が資源の少ない国であることを考えると、経済、環境、安定供給をバランスしたものが必要だとし「そのなかで石炭火力は一定程度の役割をもつ」との認識を示している。
 梶山経産相も、非効率な石炭火力のフェードアウト方針は、2018年に決めたエネルギー基本計画で示した2030年度の石炭火力比率26%の達成を確実にするためとしており、さらなる石炭火力発電の比率引き下げを意味するものではないと説明している。
  <原発の再稼働困難、さらなる対応は

石炭火力の輸出 「抜け穴」をふさがねば 
  (中日新聞 2020.0718 05.00 (05:01更新)
 石炭火力大国日本。国際社会の批判が高まる中で、ようやく古い発電所の休廃止にかじを切る。だが、新設や途上国への輸出は、続けていくという。温暖化対策の「抜け穴」が、大き過ぎないか。
 日本政府は、主要七カ国(G7)の中で唯一、国際協力銀行(JBIC)の低利融資や政府開発援助(ODA)などにより、途上国に対する石炭火力発電所の輸出支援を続けている。
 国際エネルギー機関(IEA)によると、石炭火力は世界の発電・熱供給部門の二酸化炭素(CO2)排出量の約七割を占めており、国際社会から、地球温暖化の元凶と見なされている。
 温暖化対策の新たな国際ルールであるパリ協定は、温暖化による破局的な影響を回避するために、産業革命前からの世界の平均気温上昇を1.5度に抑えるよう求めている。
 そのためには、2050年にはCO2排出量を実質ゼロにしなければならず、国連のグテレス事務総長は昨年来、「20年以降は、石炭火力の新設は禁止すべきだ。さもなくば大災害に直面する」と訴えている。“凶暴化”する豪雨の被害にあえぐ日本にとっても、身に迫る指摘であるはずだ。
 欧米の国々や自治体、温暖化の影響が深刻な小島しょ国などが「脱石炭国際連盟」を結成して石炭火力の全廃に向かう中、コロナ禍が「脱炭素」に拍車をかけた。
 経済活動が停滞し、電力需要が減少したのをきっかけに、化石燃料から再生可能エネルギーへ電源の転換を図る企業が増えている。
 しかるに日本は、国内にある低効率の旧型火力を段階的に廃止する一方で、CO2排出をある程度抑えた新型火力の新設は続けていくという。
 輸出支援は環境性能の高いものに限るなど、要件を厳格化するとは言うものの「禁止」には踏み込まない方針だ。
 だが最新鋭の設備といえども、CO2の排出量は天然ガスの二倍に上り、温室効果ガスの大量排出源であることに変わりはない。
 新設の発電所を四十年稼働させるとすれば、その間はCO2を出し続けることになる。パリ協定の要請に見合わない。
 CO2の回収貯留や再利用の設備を併設すれば、そこに膨大なエネルギーと費用がかかる。
 国内では「全廃へ」、輸出は「禁止」。再生可能エネルギーへの切り替えを加速させないと、世界の理解は到底得られない。

インタヴュー:「石炭火力休廃止」宣言の真意、エネルギー専門家の橘川氏が読む(中山玲子)
  (日経ビジネス 2020.07.20)
経済産業省は7月3日、二酸化炭素(CO2)の排出量が多い低効率な石炭火力発電所の休廃止を進めると表明した。13日には削減に向けた制度設計の議論を始めた。背景には何があったのか、石炭火力の休廃止は今後、国のエネルギー政策にどのように影響していくのか。エネルギー産業論を専門にする国際大学国際経営学研究科の橘川武郎教授に聞いた。
-梶山弘志経済産業相が、二酸化炭素(CO2)を多く排出する低効率な石炭火力発電所の休廃止を進めると表明しました。
橘川武郎氏(以下、橘川氏):石炭火力をフェードアウトするという部分が注目されていますが、同時に、高効率の石炭火力については続けていくということを経産省が宣言したとも言えます。私はむしろ、高効率の石炭火力維持が本質ではないかとみています。……
-多くの人が「経産省が石炭火力をやめる方向に舵(かじ)を切った」とみているのではないかと思います。
橘川氏:効率の悪い石炭火力を休廃止して高効率なものに変えていくという方針を、経産省は2018年に出した第5次エネルギー基本計画でも示してきました。今回もその通りのことを言ったにすぎない。政策転換とは言えないでしょう。
  ●原子力のポジションが後退
-再稼働が進まない原発は新設や増設も停滞しています。国が示した30年度の電源構成では原子力を20~22%としていますが、実現は難しそうです。
橘川氏:私は総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)の基本政策分科会の委員を務めていますが、7月頭にあった会合では、以前に比べて原子力のポジションが非常に後退しているような印象を受けました。……
-原子力のポジションが後退したのはなぜでしょうか。
橘川氏:打開策を見いだせず、手の打ちようがないのでしょう。原子力政策は国策民営です。これまで政府は、まず電力会社が手を挙げて、その後に国が支援、応援するという形を取ってきました。福島第1原発事故の例が分かりやすいのですが、福島を訪問して謝罪したのは東京電力で、その支援に回ったのが国でした。……
 同じベースロード電源という位置付けの中、石炭火力を減らすことと原子力を増やすことはセットの議論になってきました。ところが、今回は石炭火力だけの議論になっている。そこには、高効率の石炭火力だけでも守らなければならないという考えがあるように思います。
  ●地方の電力会社への影響大きい
-とはいえ、多くの電力会社が低効率な石炭火力発電所を持っています。大きな影響が出るのではないでしょうか。
橘川氏:電力会社を十把ひとからげにしないことが大切です。保有する石炭火力の種類とその電力会社の組み合わせをよく見ると、大きい電力会社ほど影響はありません。……
 影響が大きいのが、低効率の石炭火力が多い東北電力や中国電力、北陸電力といった地方の電力会社です。原発再稼働ができない中で、古い石炭火力に頼らざるを得ない状況なのです。これらの電力会社が持つ石炭火力が休廃止の対象になると、経営にも影響してくるでしょう。
-日本の石炭火力に対する海外からの批判は、これで少しは落ち着くでしょうか。
橘川氏:世界から見れば、「高効率のUSCといえども、石炭火力はまだ残っているではないか」という厳しい評価になると思います。また日本に「化石賞」が贈られるかもしれません。……
 だから、今回もそんなに簡単にすべての石炭火力をフェードアウトすることなんてできない。……。
 海外に目を向ければ、フランスや英国は石炭火力を止める方針ですが、原子力は推進します。ドイツも石炭火力をやめる方向ですが、2038年とまだ先の話です。世界の大国で、原子力も石炭火力もやらないと言っている国はほとんどありません。……

環境省19年度電力レビュー発表(7月14日) 7月28日

 環境省は7月14日、2019年度の電気事業分野における地球温暖化対策の進捗状態について、電力業界の自主的枠組みと政府の政策的対応の2つの柱で評価した結果(「電力レビュー」)を発表した。
 2016年2月、環境大臣・経済産業大臣は、電気事業分野の温暖化対策における2030年度のCO2排出係数を0.37kgCO2/kWhとする目標達成に向けて、①目標達成に向けた電力業界(電気事業低炭素社会協議会)による自主的枠組み(取組みのPDCA 等)に対し、引き続き実効性・透明性の向上等を促していく、②政府による政策的対応として、省エネ法やエネルギー供給構造高度化法等に基づく基準の設定や運用の強化等により、電力業界全体の取組の実効性を確保する、③これらの目標達成に向けた取組については、毎年度、進捗状況を評価する。目標が達成できないと判断される場合には、施策の見直し等について検討することを合意し、環境省は毎年度、この合意に基づく取組の進捗状況の評価を実施して来ている
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電気事業分野における地球温暖化対策の進捗状況の評価結果について(評価結果の総括)(環境省 2020.07.14)
1.評価の背景及び目的

2.電気事業分野における現状分析と今後の方向性
電気事業を取り巻く情勢
電気事業分野の低炭素化・脱炭素化に向けて
○電気事業分野における 2030 年度目標や上記政府方針の達成に向けた進捗については、以下の点が注目される。
・現在の石炭火力発電の新増設計画が全て実行され、ベースロード電源として運用されると、仮に既存の老朽石炭火力発電が順次廃止されたとしても、2030年度の削減目標やエネルギーミックスに整合する石炭火力発電からのCO2排出量を約5,000万トン超過する可能性がある。現時点でこそ、電気事業分野全体のCO2排出係数は改善傾向にあるものの、環境省の試算によれば、2030 年度の目標達成は困難であり、パリ協定で掲げる脱炭素社会の実現も視野に入れ、更なる取組の強化が不可欠である。中長期的な脱炭素化に向けて、脱炭素社会への現実的かつ着実な移行に資する「脱炭素移行ソリューション」を目指すことが必要である。
・石炭火力発電について現状で明らかになっているところでは、新増設計画がある一方で、休廃止計画は少なく、石炭火力発電の設備容量は大きく純増する。環境省の試算では、2019年度における非効率な石炭火力発電(超臨界(SC)以下の設備)設備容量は石炭火力発電(自家発自家消費設備を除く。)の約5割、2030年度においては約4割を占める。CO2削減目標の達成に向けて、こうした非効率な石炭火力発電のフェードアウトに向けた取組を着実に進めることが必要である。今般、経済産業省から、フェードアウトに向けた新たな取組の検討に着手するとの発表があった点も踏まえ、環境省として、非効率な石炭火力のフェードアウトに向けた取組を厳しく注視してまいりたい。
・CO2排出削減をパリ協定の長期目標と整合的に実現するためには、高効率な火力発電設備についても、更なる高効率化・次世代化を進める必要がある。再生可能エネルギーによる出力変動への柔軟な対応、燃焼に伴ってCO2を排出しないエネルギーであるバイオマス・水素・アンモニア等の混焼、排出されるCO2を回収して有効利用・貯留するCCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)の活用など、火力発電のゼロエミッション化が重要である。これらに向けたイノベーションを総合的に後押しし、「ゼロエミッション火力」の実現可能性を追求すべきである。このような「脱炭素移行ソリューション」を通じて、脱炭素社会への現実的かつ着実な移行を目指す必要がある。
再生可能エネルギーの主力電源化は、「脱炭素移行ソリューション」の一環としても重要である。エネルギーミックスで掲げる22~24%という水準を着実に達成しなければならない。さらに、これにとどまらない一層の導入拡大が必要である。2019年4月に発足した環境省・経済産業省の連携チームによる取組等を通じ、地域の再生可能エネルギーを活用した分散型エネルギーシステムの構築等、更なる取組の加速化が求められる
・併せて、再生可能エネルギーの導入拡大に伴う系統制約の克服に向け、系統増強に加え、既存系統の最大限の活用(日本版コネクト&マネージ)の取組の一つである「ノンファーム型接続」の2021年中の全国展開に向けた着実な取組とともに、地域における再生可能エネルギーの需要に応じた系統整備・活用が進むことを期待する。
○脱炭素社会の実現に向けては、脱炭素な調整力としても活用でき、新たなエネルギーの選択肢となり得る水素や、CCUS 等の脱炭素技術等について、その商用化や社会実装の見通しを具体的に示すことが必要である。

3.電力業界の自主的枠組み及び政府の政策的対応に関する進捗状況の評価
(1)電力業界の自主的枠組みの現状について
○今般、協議会は、2030年度のCO2排出係数に係る目標の達成に向け、その取組の自主的枠組みにおいて、協議会のCO2排出係数の妥当性を定量的に評価・分析する仕組みを新たに導入した。
○これは、取組の実効性を向上させ得る努力として高く評価したい。しかし、こうした自主的枠組みも、PDCAサイクルの実効性確保の点で万全とまでは断言しがたく、目標達成への具体的な取組の道筋は今なお明らかでない。引き続き、会員事業者数の増大も含め、更なる努力に期待したい。
(2)政府の政策的対応の現状について
省エネ法関係
○省エネ法の下、発電事業者に対し、火力発電設備の効率として達成すべきベンチマーク指標が設定されており、2019年度実績では目標の水準を上回っている。
○一方、この指標の達成に向けた複数事業者の共同による取組(いわゆる共同実施)の在り方等を巡る議論については、未だ結論が得られていない
○火力発電の着実な低炭素化に向けては、ベンチマーク指標の継続的な達成が必要である。ベンチマーク指標やその達成の在り方を巡る議論の進展は引き続き注視すべきである。非効率な石炭火力発電のフェードアウトは、今なお道半ばにある
エネルギー供給構造高度化法関係
○エネルギー供給構造高度化法の下、小売電気事業者等に対し、2030年度に達成すべき非化石電源(再生可能エネルギー等)の比率の目標が設定されている。また、目標達成のための仕組みとして、非化石価値取引市場も創設・運営されている。
○この目標に関しては、2030年度に至るまでの途中の期間における中間評価の基準として、2022年度までの期間に係る定量的な基準が策定されたことは評価したい。
○一方で、今後の非化石電源比率の目標の達成状況については、非化石市場の在り方や各事業者の取組と合わせて、引き続き注視すべきである。2023年度以降の期間に係る中間評価の基準についても、より野心的な目標値の早急な策定が望ましい
(3)電力業界の自主的枠組み及び政府の政策的対応の全体について
○電力業界の自主的枠組み及び政府の政策的対応には、一定の改善・進捗もあり、評価に値する一方で、上記のとおり、今なお多くの課題が残存している。電気事業分野における2030年度の目標達成に向けた道筋は不明瞭であり、早急に示す必要がある
4.今後に向けて~コロナからの復興とこれからの地球温暖化対策~
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電気事業分野における地球温暖化対策の進捗状況の評価結果について(参考資料集) 2020.07.14
 1.評価の背景及び目的
  (1)はじめに
  (2)電力の低炭素化・脱炭素化を巡る潮流
  (3)電気事業を取り巻く環境の変化
  (4)評価に関する基本的考え方
 2.電気事業分野の低炭素化・脱炭素化に向けて
  (1)CO₂排出量及びCO₂排出係数の状況等
  (2)火力発電の低炭素化
  (3)再生可能エネルギーの主力電源化
  (4)長期的な脱炭素社会の実現に向けたイノベーション
 3.電力業界の自主的枠組み及び政府の政策的対応に関する進捗状況の評価
  (1)電力業界の自主的枠組みの評価
  (2)政府の政策的対応等の評価
 4.今後に向けて ~コロナからの復興とこれからの地球温暖化対策~

 1.評価の背景及び目的
  (1)はじめに
   ●2018年度の日本の温室効果ガス排出量(確報値)
   ●部門別CO₂排出量(電気・熱配分前)
   ●電気事業分野における地球温暖化対策について
    電気事業温暖化対策評価資料集_1

  (2)電力の低炭素化・脱炭素化を巡る潮流
   ●パリ協定の目標
   ●2℃目標に整合する緩和経路
   ●1.5℃目標に整合する緩和経路
   ●残余カーボンバジェットについて
   ●化石燃料可採埋蔵量の座礁資産化リスク
   ●(参考)石炭火力発電の座礁資産化リスク
    電気事業温暖化対策評価資料集_2
   ●ESG金融の国際的な広がり
   ●脱炭素経営に向けた取組の広がり
   ●国内金融機関の石炭火力発電事業に対する方針
    電気事業温暖化対策評価資料集_3
   ●国内大手商社の石炭火力発電事業に対する方針
     電気事業温暖化対策評価資料集_4
   ●パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略(2019年6月11日閣議決定)
     電気事業温暖化対策評価資料集_5
 
  (3)電気事業を取り巻く環境の変化
   ●電力システム改革の動向
   ●新たな市場の整備動向
   ●プッシュ型系統整備への転換
   ●災害に強い分散型電力システムの促進に向けた環境整備

  (4)評価に関する基本的考え方
   ●進捗状況の評価にあたっての基本的考え方
    電気事業温暖化対策評価資料集_6

 2.電気事業分野の低炭素化・脱炭素化に向けて
  (1)CO₂排出量及びCO₂排出係数の状況等
   ●火力発電からのCO₂排出量及びCO₂排出係数について
    電気事業温暖化対策評価資料集_7
   ●2018年度における発電設備容量・発電電力量について
    電気事業温暖化対策評価資料集_8
   ●環境省RE100を通じた再エネ導入に積極的な小売電気事業者の発信
   ●排出係数・電源構成に関する情報開示

  (2)火力発電の低炭素化
   ●石炭火力発電の設備容量とCO₂排出量について
    電気事業温暖化対策評価資料集_9
   ●(参考)石炭火力発電の稼働率について
    電気事業温暖化対策評価資料集_10
   ●非効率な石炭火力からのフェードアウトについて
    電気事業温暖化対策評価資料集_11
   ●火力発電所の新増設・休廃止計画について
    電気事業温暖化対策評価資料集_12
   ●メリットオーダーについて
    電気事業温暖化対策評価資料集_13
   ●(参考)燃料種ごとのCO₂排出係数(発電量あたりのCO₂排出量)
    電気事業温暖化対策評価資料集_14
   ●(参考)発電技術の高効率化、低炭素化の見通し
    電気事業温暖化対策評価資料集_15

  (3)再生可能エネルギーの主力電源化
   ●再生可能エネルギーの導入状況
    電気事業温暖化対策評価資料集_16
   ●地域での再エネ拡大に向けた経産省との連携チームについて
   ●地域での再エネ拡大に向けた経産省との連携チームでの取組例について
   ●既存系統の最大限の活用(日本版コネクト&マネージ)

  (4)長期的な脱炭素社会の実現に向けたイノベーション
   ●各種計画等におけるイノベーションについての記載
    電気事業温暖化対策評価資料集_17
   ●環境省におけるCCSの取組例
   ●環境省におけるCCUの取組例
   ●環境省における再エネ由来水素サプライチェーン構築に向けた取組例
   ●「地球温暖化対策に係る長期ビジョン」(電気事業低炭素社会協議会)

 3.電力業界の自主的枠組み及び政府の政策的対応に関する進捗状況の評価
  (1)電力業界の自主的枠組みの評価
   ●電気事業低炭素社会協議会について
   ●協議会におけるCO₂排出削減実績
   ●CO₂排出量・排出係数の改善要因について
   ●目標達成に向けた協議会のPDCAサイクルについて
   ●協議会会員企業のカバー率について
   ●取引所取引における電源構成の把握について

  (2)政府の政策的対応等の評価
   ●省エネ法に基づく火力発電の判断基準について
    電気事業温暖化対策評価資料集_18
   ●省エネ法に基づくベンチマーク指標の実績について
   ●エネルギー供給構造高度化法について
   ●高度化法における非化石電源比率の実績
   ●定量的な中間評価の基準について

 4.今後に向けて ~コロナからの復興とこれからの地球温暖化対策~
  ●新型コロナウイルス感染症によるエネルギー需要への影響
  ●新型コロナウイルス感染症のエネルギー需要に対する影響
   電気事業温暖化対策評価資料集_19
  ●新型コロナウイルス感染症による石炭への影響
   電気事業温暖化対策評価資料集_20
  ●新型コロナウイルス感染症によるCO₂排出量への影響
  ●電力の安定供給とクリーンエネルギーへの移行に関する示唆
  ●新型コロナウイルス感染症の我が国の電力需要への影響
  ●ゼロカーボンシティの拡大
  ●経団連による「チャレンジ・ゼロ」
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小泉大臣記者会見録2020.07.14 10:31~11:03 於:環境省第1会議室)   会見動画 
 2019年度の電力事業分野における地球温暖化対策の進捗状況の評価の結果、いわゆる電力レビューを取りまとめましたので、ここに報告をしたいと思います。電力レビューは2016年2月の環境大臣と経産大臣の合意に基づいて、2030年度の削減目標やエネルギーミックスと整合する電力の排出係数0.37kg-CO2/kWhという目標の達成に向けて、電力業界の自主的取組や省エネ法や高度化法といった政策的対応が継続的に実効を上げているか進捗状況を評価するものです。それが電力レビューです。
 2019年度の電力レビューでは、各種機関が公表しているデータや分析レポートなどのファクトをベースに評価を実施して、評価結果としては、現時点では電力事業分野のCO2排出量、排出係数は改善傾向にあり、高度化法においても2020年度までの期間に係る定量的な基準が策定されるなどの一定の進展もあり、評価に値するものの、このままでは2030年度の目標達成は困難であり、脱炭素社会の実現も視野に更なる取組の強化が不可欠であると総括をしています。
 ……中長期的な脱炭素化に向けて、脱炭素社会への現実的かつ着実な移行に整合的な脱炭素移行ソリューションを目指すことが必要だと考えています。ポイントは大きく3点です。
 まず、一つ目のポイントは、再生可能エネルギーの主力電源化を一層加速化すべきということであります。2018年度の発電電力量に占める再生可能エネルギー比率は16.9%であります。再生可能エネルギーの主力電源化に向けて、エネルギーミックスで掲げる22から24%の着実な達成と、それにとどまらない一層の導入拡大が必要であります。このため、分散型エネルギーシステムの構築に向け、昨年4月に発足した環境省、経産省の連携チームの取組を一層推進していきます。また、千葉県などで試行的に実施されているノンファーム型接続の2021年中の全国展開や、地域における再生可能エネルギー需要に応じた検討・整備・活用に向けた取組が重要であり、経産省や関係業界による一層の推進を期待したいと思います。
 次に、二つ目のポイントは、非効率な石炭火力発電の休廃止、稼働抑制といったフェードアウトに向けた取組を着実に進めるべきということであります。環境省の試算によると、石炭火力発電所の新増設計画が予定どおり実行されると、2030年度の削減目標を約5000万トン超過することになります。これは2030年度の我が国全体の削減目標に整合する排出量の約5%に相当します。削減目標の達成に向けて、非効率な石炭火力発電のフェードアウトに向けた取組を着実に進めるとともに、火力発電全体からのCO2排出削減に向けて石炭火力発電の高効率化、そして次世代化、これを進める必要があります。
 今般、梶山経産大臣により、非効率な石炭火力のフェードアウトを目指していく上で、より実効性のある新たな仕組みを導入すべく、今月中に検討を開始して取りまとめるように事務方に指示したという御発言がありました。改めて、梶山大臣のリーダーシップに敬意を表したいと思います。この発表によって、国内において非効率な石炭火力発電のフェードアウトに向けた取組の具体化が進んでいくことになります。
 足元において非効率な石炭火力発電は約2400万キロワット、石炭火力発電の全体の約5割存在しており、地球温暖化対策を所管する環境省として、こうした非効率な石炭火力発電のフェードアウトに向けた取組を厳しく注視していきたいと思います。
 最後に、三つ目のポイントは、将来的なゼロエミッション火力の可能性を追求すべきということであります。パリ協定の長期目標と整合的に火力発電からのCO2排出削減を実現するためには、火力発電の更なる高効率化、これを進めて、究極的には火力発電でありながらCO2の排出が実質的にゼロである火力発電、いわゆるゼロエミッション火力、この可能性を追求する必要があります。ゼロエミッション火力を目指すに当たって、排出削減を円滑かつ着実に実現するため、これまで培ってきた経験、知見も生かして既存の石炭火力発電、LNG火力発電でのバイオマス、水素、アンモニアなどの混焼を促進して、さらにその割合の段階的な向上を図って、それでもなお避けられない排出分については、排出されるCO2を回収して有効利用、貯留するCCUSの活用を検討する、こうしたゼロエミッション火力に向けたイノベーションを関係省庁、関係業界と連携しながら、総合的に後押しをして世界に先駆けたゼロエミッション火力の実現の可能性を追求していきます。
 電気事業分野は我が国全体のCO2排出量の約4割を占める最大の排出源であり、他部門での排出削減努力にも大きく影響を及ぼすことから、電気事業分野の地球温暖化対策は非常に重要であります。今回の評価結果や気候変動問題とエネルギー問題の関連性が一層高まってきていることも踏まえて、今後ともエネルギー政策を所管する経産省と密接な意思疎通を図りながら、2030年度の削減目標の確実な達成、そして2050年にできるだけ近い時期での脱炭素社会への実現に向けて取組を進めていきます。なお、評価結果の詳細については、後ほど事務方から説明をさせていただきます。……
質疑応答
(記者)[時事通信] 地球温暖化対策計画の見直しに関連してですが、NDCについて26%の水準にとどまらない削減努力と、更なる野心的な削減努力を反映した意欲的な数値を考えていくということなんですが、大臣はどのような数値にしていきたいとお考えでしょうか。
(大臣)それはやってみた上で出るものがまさに数字ですから、今からここだというふうに決めることは、現段階では言うことではないなと思います。いずれにしても、大事なことは、石炭火力の海外輸出、この公的信用の政策の見直しが実現をした背景にはファクトをベースに議論したと、このファクト検討会の役割は相当大きかったと私は思います。今後、このファクトをベースに議論するということが霞が関、そして政治の中での常識となっていくように、この両審議会の合同会議、この場でもしっかりとファクトに基づく議論を積み上げていただければ、NDCときに日本からお約束をした更なる野心的な削減努力を反映した意欲的な数値につなげていけると、私はそう確信をしています。この両審議会の精力的な議論に期待をしています。
(記者)[朝日新聞] 温対計画の見直しなんですけれども、先ほど、ポストコロナというところを最初に議論しなければいけないということでおっしゃっていて、コロナによって、特に温暖化対策という点で大臣はどういう点を視点として加えなければいけない、あるいは変更が迫られるだろうと現時点で考えているか、教えてください。
(大臣)ポストコロナによって相当な行動変容が起きていますよね。テレワーク、リモートワークなどは代表的な一つかもしれません。それはやはり移動というものが根本的に変わってきている新たな社会が今、日々つくり上げられている過程だと思います。その移動が変わってくることによって、最近でも様々なところから、例えば石油の需要が減っているとかいろんな声が起きていますが、こういったことがどのように今後この中でも反映されていくのか、その議論もしなければいけないだろうと。そういったことがまさにコロナ後の社会を見据えた対策、この在り方を議論するということでもあります。それに加えて、これまで毎年実施してきた計画の進捗、これを点検することも大事ですし、この点検を反映した対策の強化や深掘り、これも大事だと思います。そして、脱炭素社会の実現を見据えた、目の前のことだけではなくて中長期の対策の方向性、こういったことも改めて議論されるべきですし、今、石炭火力の海外の公的信用の付与、これを原則やらないと、支援をしないということから、まさにドミノが倒れるように国内の石炭も含めてエネルギー政策全体がうねりを上げて今動き出している中ですから、この合同の審議会の議論を、おのずとそういったことをしっかりと受け止めた上での議論になると私は期待をしているし、環境省としてはしっかりとウォッチしていきたい、また貢献をしていきたいと思います。
(記者)[毎日新聞] 私から2点質問させていただきます。1点目は温対計画の見直しについてです。まず、開始時期というのはいつごろ始められて、今後どういうふうに取りまとめるかという見通しについてお聞きしたいということと、今後特に気候変動絡みで言うと、経産省の石炭火力の見直しとか、エネルギー基本計画の見直しについても来年あると思うので、その辺との兼ね合いをどうするか。まず温対計画の位置付けとして、例えばエネミやエネ基の見直しに向けた弾みにしたいのか、どういう意味合いで捉えていらっしゃるのかということについてお聞かせください。……
(大臣)まず、1点目ですが、この合同会合のスケジュール、そしてアウトプット、これについては、今後、審議会の議論を踏まえて決定していきたいと思います。そして、先ほど[朝日新聞記者]さんからの質問でもあったように、このポストコロナ、そして進捗の確認、点検、対策の強化や深掘りとか中長期の方向性、こういったものも重要な論点になると考えていますので、こういった議論を踏まえた上で温対計画を見直して、来年のCOP26まで追加情報を国連に提出していきたいと思います。そして、今まだ具体的な日時は私は確認していませんが、官邸の方で未来投資会議、ここで環境エネルギーの場ができると聞いています。そういった場で大きな柱となるような、またエネルギー政策の全体像のような議論がされるのではないかなと。そこには経団連の中西会長の思いも相当あると思いますが、そういった場で自由闊達にこのコロナを踏まえて、そしてまた最近の石炭政策の見直しも含めて、最新のファクトに基づく議論が大いになされるべきだろうというふうに思います。温対計画の見直しは、そういったことも含めて同時進行的に進んでいく。そういったことを考えれば、まさに石炭の輸出に原則、支援をしないというところから始まったことが、ドミノが倒れるようにこのエネルギー政策全体が動き出したと、そういった大きな捉え方をして一つ一つのことを動かしていきたいし、よく見ていきたいというふうに思います。……
(記者)[エネルギージャーナル]
(大臣)……私が大臣になってから言っている経済社会の再設計(リデザイン)、そして脱炭素社会、循環経済、分散型社会への移行、この三つの移行も着実に進めて、環境省が社会変革担当省だと、そういった省庁により成長していくべく環境行政の課題に向き合ってくれるのではないか……
(記者)[日刊工業新聞] 再生可能エネルギーの主力電源化の話がありましたので、その関連で質問させてください。大臣は新宿御苑の電気が再生可能エネルギーに切り替わっても従来の電力料金と遜色がなかったという報告をされていますが、電力を大量に使う大規模な事業所はもともと安い電気を使っているので、それに見合う価格の再エネ電気がなくて困っているという話を企業から聞きます。この間の経団連との会談でも、経団連の幹部の方から再エネをもっと安くしてほしいという要望があったかと思いますが、エネルギーの所管はエネ庁ですが、環境省でも再エネの価格を下げていくような施策を考えていらっしゃったら、教えてください。
(大臣)再エネは高いという、この固定観念を覆していきたい。これは環境省がRE100を宣言して、そして自ら一つ一つできるところはRE100、これを進めていて、再エネは必ずしも高くない、安い場合もある。この実現例として自分たちがまず実践をする、社会にその姿を見せたいという思いでやっています。御紹介があったとおり、新宿御苑は30%から100%まで一気に再エネの導入を上げた上で、電力単価は17.1円で変わらない、これを示すことができました。ただ、今御指摘があったとおり、一般的に再エネが安いというところに行くには、更なる努力が必要なのは間違いありません。じゃ、そのために何ができるかというと、間違いないことはマーケットを大きくすること、この再エネの市場の拡大をやる上で環境省が何ができるかと言えば、やはり需要サイドに働き掛けて、その市場を大きくしていく環境をつくっていくこと。私が就任以来、なぜゼロカーボンシティ、この宣言自治体を増やすことに血道を上げているかと言えば、この市場拡大を自治体レベルから、住民レベルから底上げをしていく、こういったアプローチというのは環境省は経産省と違って業界から行くわけじゃないですから、まさに国民側から、需要側からそこの環境をつくっていく。こういったことに加えて、様々個人の再エネの切り替えの促進とか、今それを具体的に進めようとしている企業などとの意見交換をしています。そして、間違いなく、企業の方からも相当声が変わってきたと思うのは、この前の経団連との意見交換もそうですが、石炭が安いから石炭をもっとやってくれなんて言ってくるところは全くありません。再エネをもっと導入しやすい環境をつくってくれと。そして、グローバルで活躍をしている企業にとっては、再エネを導入できなければ、国際的な産業競争力に大きな影響が出る、その環境をつくってもらうような政策的な後押しをやってほしいという、ここの思いというのが相当に強い状況が出てきているので、私はこういった取組を一つ一つ後押しすることで、再エネの需要の拡大が再エネのコストを下げる、そういったところにつなげていきたいと思います。そのためにできることは環境省、あらゆる方策を通じてやっていきたいと思います。
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NDC: Nationally Determined Contribution(国が決定する貢献)[一般社団法人海外環境協力センター OECCサイトから]
 2020年以降の温室効果ガス(GHG)排出削減等のための新たな国際枠組みであるパリ協定は、協定第2条(目的)に世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求することを明記しています。その目的を達成するために、協定はその第4条(緩和)にて国内措置(削減目標・行動)をとることを各国に求めています。
 NDCとは、協定第4条に基づく自国が決定するGHG削減目標と、目標達成の為の緩和努力のことを指します。これは締約国がパリ協定批准前に国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局へ提出した「各国が自主的に決定する約束草案」(Intended Nationally Determined Contribution:INDC)が原案となっており、パリ協定批准により正式にNDCとして国連に登録され、各国に対して実施が求められます。
 2020年以降に実施が求められるNDCに対し、2020年まではカンクン合意(第16回締約国会議にて決定)に基づいたGHG排出削減による2℃目標達成への努力が進められています。開発途上国においても資金・技術・能力構築等の支援を受けながら、「途上国における適切な緩和行動(Nationally Appropriate Mitigation Action: NAMA)」を自主的に策定し、国連へ実施報告をしています。NDC並びにパリ協定実施の準備が急務となっている中、途上国においてはこのようなNAMAでの経験が十分に活かされています。

エネルギーミックスとは、「社会全体に供給する電気を、さまざまな発電方法を組み合わせてまかなうこと」をいいます。日本語で「電源構成」と呼ぶこともあります。
適切なエネルギーミックスによって、電気の安定的な供給が実現します。
単一の発電方法ではなく、エネルギーミックスが必要な理由は、完全無欠な発電方法が存在しないためです。

エネルギー政策基本法EICネット(一般財団法人環境イノベーション情報機構]サイトから]
エネルギーが国民生活の安定向上並びに国民経済の維持及び発展に欠くことのできないものであるとともに、その利用が地域及び地球の環境に大きな影響を及ぼすことにかんがみ、エネルギーの需給に関する施策に関し、基本方針を定め、並びに国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに、エネルギーの需給に関する施策の基本となる事項を定めることにより、エネルギーの需給に関する施策を長期的、総合的かつ計画的に推進し、もって地域及び地球の環境の保全に寄与するとともに日本及び世界の経済社会の持続的な発展に貢献することを目的として2002年6月に制定された法律。「安定供給の確保」、「環境への適合」、「市場原理の活用」などの基本理念が掲げられ、国の責務、地方公共団体の責務、事業者の責務、国民の努力、相互協力などが定められている。また政府は「エネルギー基本計画」を定めなければならないこと、国際協力の推進、知識の普及についても規定されている。
2018年7月には第5次エネルギー基本計画が発表され、エネルギーの「3E+S」原則(エネルギーの安定供給・経済効率性の向上・環境への適合+安全性)をさらに発展させ、より高度な「3E+S」を目指すため、(1)安全の革新を図ること、(2)資源自給率に加え、技術自給率とエネルギー選択の多様性を確保すること、(3)「脱炭素化」への挑戦、(4)コストの抑制に加えて日本の産業競争力の強化につなげることという4つの目標が掲げられた。(2018年11月改訂)

[第5次]エネルギー基本計画 2018.07.03
エネルギー基本計画は、エネルギー政策の基本的な方向性を示すためにエネルギー政策基本法に基づき政府が策定するものです。
今回の[第5次]エネルギー基本計画では、常に踏まえるべき点として「東京電力福島第一原子力発電所事故の経験、反省と教訓を肝に銘じて取り組むこと」等を原点として検討を進め、2030年、2050年に向けた方針をお示ししています。
2030年に向けた方針としては、エネルギーミックスの進捗を確認すれば道半ばの状況であり、今回の基本計画では、エネルギーミックスの確実な実現へ向けた取組の更なる強化を行うこととしています。
2050年に向けては、パリ協定発効に見られる脱炭素化への世界的なモメンタムを踏まえ、エネルギー転換・脱炭素化に向けた挑戦を掲げ、あらゆる選択肢の可能性を追求していくこととしています。[「新しいエネルギー基本計画が閣議決定されました」 2018.07.03 経産省のサイトから]
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第5次エネルギー基本計画ファクトチェック!!
  (eシフト 脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会 2019.03.14)
昨年7月に政府が閣議決定した第5次エネルギー基本計画は、日本のエネルギー・温暖化政策の方向性を示すもので、「エネルギー・温暖化政策の憲法」とも言える非常に重要な計画です。しかし、その内容は、「まず石炭・原発推進ありき」というストーリーのもとに作られており、事実関係も含めて様々な問題があります。
私たち「eシフト」(脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会)は、この第5次エネルギー基本計画についてファクト・チェックを行い、その結果をまとめたウェブページ(http://www.eshift.club/energyb_fc.html)を作成しました。本ファクト・チェックでは、第5次エネルギー基本計画には104か所の問題記述があると指摘し、それぞれに対して下記の5つの評価をおこない、具体的な問題点とその理由を詳細にコメントしました。
矛盾(エネルギー基本計画の他の箇所あるいは現行のエネルギー・環境政策と矛盾)
意味不明(文意が不明)
半分間違い(部分的な情報は正確だが、重要な詳細情報が不足している。または文脈から逸脱して歪曲)
ほぼ間違い(若干の正確な情報を含むが、重大な事実を無視して印象操作)
間違い(不正確な情報)
現在、残念ながら、このような問題が多い第5次エネルギー基本計画に沿って、多くの企業は事業計画をたて、政府は容量市場などの石炭・原発推進につながる新たな政策を十分な国民的議論がないままに導入しようとしています。
私たち「eシフト」は、このファクトチェックが、政府のエネルギー・温暖化政策の矛盾や間違いについて知るきっかけとなり、同時に建設的な議論のプラットフォームにもなることを期待します。
   エネルギー基本計画ファクトチェック
    
   
小泉環境相の「正直、開き直り、アクション」(明日香壽川)
  (Energy Democracy 2020.02.25)
小泉進次郎環境大臣の誕生から、まもなく半年になる。ここでは、エールの思いも込めて、彼のこれまでの環境大臣としての言動、特に温暖化問題に関する認識や発言を分析評価する。
正直だけど/同情もするけど/自虐的な「石炭中毒」/開き直り?/責任転嫁?/記者の質問に答えず/大臣としてとるべきアクションとは
WEB論座「小泉環境相の「正直、開き直り、アクション」(2020年2月7日)」の改稿。

エネ庁第26回電力・ガス小委資料(7月13日) 7月27日


 1.本日ご議論いただきたいこと
  ●本日ご議論いただきたいこと
   26回総エネ調小委資料_1
   ●【参考】エネルギー基本計画(2018年7月3日閣議決定)における石炭の位置づけ等
    26回総エネ調小委資料_2
   ●【参考】7/3(金)閣議後会見における冒頭発言:大臣による「検討指示」
    26回総エネ調小委資料_3

 2.非効率石炭のフェードアウトに向けた検討の方向性について
  ●石炭の位置付け
  ●日本の石炭技術の高効率化・次世代化の推進
  ●CCUS/カーボンリサイクル
  ●非効率石炭火力のフェードアウト
 スライドA
   26回総エネ調小委資料_4
  ●非効率な石炭火力の設備容量の割合
 スライドB
   26回総エネ調小委資料_5
  ●旧一般電気事業者及び電源開発における非効率な石炭火力の発電電力量の割合
 スライドC
   26回総エネ調小委資料_6
  ●エネルギーミックスの実現に向けた取組
   26回総エネ調小委資料_7
  ●発電事業者に対する措置(省エネ法)
   26回総エネ調小委資料_8
  ●小売電気事業者に対する措置(高度化法)
   ●【参考】非化石価値取引市場
  ●石炭火力に関する海外の動向(1)
   26回総エネ調小委資料_9
  ●石炭火力に関する海外の動向(2)
  ●石炭火力に関する海外の動向(3)
  ●ESG投資やダイベストメントの動向
   26回総エネ調小委資料_10
  ●3メガ銀行の石炭火力発電向ファイナンスの方針
   26回総エネ調小委資料_11
  ●非効率石炭火力のフェードアウト・新陳代謝の必要性
   26回総エネ調小委資料_12
  ●災害リスクの高まりと安定供給の確保
   26回総エネ調小委資料_13
   ●【参考】過去5年の主な災害の規模等
   ●【参考】北海道胆振東部地震に伴うブラックアウトについて
   ●【参考】脱炭素化・レジリエンス強化のための電力インフラの在り方
  ●安定供給とエネルギーミックスの実現
  ●容量市場の創設
   26回総エネ調小委資料_14
   ●【参考】海外の容量メカニズム
    26回総エネ調小委資料_15

  ●今後の検討に当たっての論点(例)新たな規制的措置
   26回総エネ調小委資料_16
  ●今後の検討に当たっての論点(例)早期退出を誘導する仕組み
   26回総エネ調小委資料_17

 3.再エネの主力電源化に向けた送電線利用ルールの見直しの検討について
  ●日本の再生可能エネルギー発電量の現状(導入の伸び)
  ●「エネルギーミックス」実現への道のり
  ●再生可能エネルギー普及に係る送電線の問題と対策
   26回総エネ調小委資料_18
  ●日本版コネクト&マネージの進捗状況と残された課題
   26回総エネ調小委資料_19
   ●【参考】千葉エリアにおけるノンファーム型接続の先行実施
   ●【参考】北東北エリアにおけるノンファーム型接続の先行実施
   ●【参考】各一般送配電事業者の基幹系統(上位2電圧)の送変電等設備
  ●ノンファーム型接続の全国展開について
 スライドD
   26回総エネ調小委資料_20
  ●ノンファーム型接続における課題について
   26回総エネ調小委資料_21

   ●【参考】系統接続における先着優先ルール
  ●今後の検討に当たっての論点(例)基幹送電線の利用ルールの見直し
   26回総エネ調小委資料_22
  
 4.今後の検討の進め方について
  ●今後の検討スケジュール(案)

スライドA~Dの解説 (陰山遼将  スマートジャパン 2020.07.15 08:00
 ←非効率な石炭火力を廃止し再エネ導入を拡大
    経産省が新たな制度設計の議論をスタート 
 温暖化対策の観点から、国際的に逆風を受ける石炭火力発電。日本でも非効率な石炭火力の廃止を促し、再生可能エネルギーの導入拡大を促す新たな制度設計の議論がスタートした。
 経済産業省は2020年7月13日、梶山弘志経済産業大臣が打ち出した石炭火力の縮小方針を受け、具体的な政策内容について検討する有識者会議を開催。非効率な石炭火力の将来的なフェードアウトを実現する新たな規制措置の内容と、再生可能エネルギーの利用を広げる新たな送配電網の利用ルールを検討する-というのが大筋の目的だ。
 ただ、その実現に向けては、詳細な議論と綿密な制度設計が必要になりそうだ。非効率石炭を廃止とエネルギー安定供給の両立をどう実現するかという点も大きな議題の一つであり、廃止に向け事業者側にどのような経済的インセンティブを設計するかなど、検討すべき点は多い。エネルギーの安定供給という観点では、足元で再稼働がほぼ進んでいない原子力発電の将来の稼働率についてどう考えるのか、といった問題も大きく関係してくる。
   26回総エネ調小委資料_426回総エネ調小委資料_526回総エネ調小委資料_6
 現在、政府が掲げる2030年の日本の電源構成における石炭火力の比率目標は26%となっているが、足もとの2018年度における同比率は32%。2030年度の電源構成目標を達成するためには、さらなる石炭火力の削減が必要な状況にある。
 政府が廃止を目指す「非効率石炭火力」とは、主に発電効率が40%以下の亜臨界圧、超臨界圧と区分される火力発電を指す。2018年度の電源構成の32%を占める石炭火力だが、その約半分(電源構成に対して16%)が非効率石炭による発電となっている。台数ベースでみると、現在国内にある140基の石炭火力のうち、114基が非効率石炭に該当する。
 114基の非効率石炭について、地域ごとの設置設備容量を見ると、全国で大きなばらつきがある。そのエリアにおける全発電容量(出力ベース)に対し非効率石炭が占める割合では、関西は0%なのに対し、沖縄では34.8%である。また、発電電力量ベースでみると、地域間での差はより拡大する他、多くのエリアで出力ベースでみた比率以上に、非効率石炭への依存度が高い状況もうかがえる。これは原子力発電所の再稼働が進んでいないことも影響していると考えられる。
  26回総エネ調小委資料_20
 今回、梶山経済産業大臣が打ち出した「既存の非効率な火力電源を抑制しつつ、再生可能エネルギーの導入を加速化するような基幹送電線の利用ルールの抜本見直し」については、現在検討が進められている「ノンファーム接続」におけるルールを見直し、再エネを接続しやすくする制度に変更する方針だ。
 これまでの議論で送配電網の効率的な利用に向けては、従来の電力会社に認められた電源のみが系統に接続できる「ファーム接続」ではなく、系統の混雑状況によって出力制御を受けることを条件に新規接続を許容する「ノンファーム接続」の導入を進めていく、いわゆる「日本版コネクト&マージ」の実現を目指すという方向性が示されている。
 既に2019年9月に千葉エリアで、2020年1月には北東北および鹿島エリアでノンファーム接続が先行的に実施された。同時に東京電力パワーグリッドらが必要なシステムの開発に着手しており、経産省ではこ2021年中にはノンファーム接続を全国展開する目標を掲げている。
 ただし、これまでの議論で想定されていたノンファーム接続では、「先着優先ルール」を採用する方針となっていた。これは系統が混雑した場合、先にファーム接続していた電源を優先し、後から接続した電源に出力抑制を行うことで、系統の安定を保つというもの。低炭素化という観点から見た場合、この先着優先ルールでは、ファーム接続されたCO2排出係数の大きい非効率石炭が優先され、同係数が小さい再生可能エネルギーが抑制されるという矛盾が発生する可能性がある。 

石炭火力輸出支援しないを明記(7月9日) 7月26日

7月9日、第47回経協インフラ戦略会議(議長・菅義偉官房長官)[海外経済協力インフラ輸出戦略会議]で「インフラシステム輸出戦略」が改訂され、「今後新たに計画される石炭火力発電プロジェクトについては、エネルギー政策や環境政策に係る二国間協議の枠組みを持たないなど、我が国が相手国のエネルギーを取り巻く状況・課題や脱炭素化に向けた方針を知悉していない国に対しては、政府としての支援を行わないことを原則とする」(16頁)と明記されました。
  インフラシステム輸出戦略(令和2年度改訂版)
パリ協定を踏まえ、世界の脱炭素化をリードしていくため、相手国のニーズに応じ、再生可能エネルギーや水素等も含め、CO2排出削減に資するあらゆる選択肢を相手国に提案し、「低炭素型インフラ輸出」を積極的に推進。その中で、エネルギー安全保障及び経済性の観点から石炭をエネルギー源として選択せざるを得ないような国に限り、相手国から、我が国の高効率石炭火力発電への要請があった場合には、OECDルールも踏まえつつ、相手国のエネルギー政策や気候変動対策と整合的な形で、原則、世界最新鋭である超々臨界圧(USC)以上の発電設備について導入を支援<経済産業省、外務省、財務省、内閣官房、JBIC、NEXI> [41頁]
  インフラ海外展開に関する新戦略の骨子
(5)環境性能の高いインフラの推進
① パリ協定の目標達成に向け、世界全体の温室効果ガスの実効的な排出削減が必要不可欠となっている。再生可能エネルギーのコスト低下に牽引されたエネルギー転換など、エネルギー情勢が急速かつ大きく変化している中で、安価かつ安定的に調達できるエネルギー源が石炭に限られる国もあり、途上国などでは石炭火力を選択してきたという現実がある。石炭火力への資金を絞るダイベストメントのような方策もあるが、当該諸国の国民生活向上や経済発展にとって不可欠な電力アクセス向上・電力不足解消の選択肢を狭めることなく、世界全体の脱炭素化に向け現実的かつ着実な道を辿ろうとするのであれば、むしろ、こうした国々のエネルギー政策や気候変動政策に深くエンゲージし、長期的な視点を持ちつつ実現可能なプランを提案しながら、相手国の行動変容やコミットメントを促すことが不可欠であると考えられる。
このため、我が国は、関係省庁連携の下、相手国の発展段階に応じたエンゲージメントを強化していくことで、世界の実効的な脱炭素化に責任をもって取り組む。具体的には、世界の脱炭素化をリードしていくため、相手
国のニーズを深く理解した上で、風力、太陽光、地熱等の再生可能エネルギーや水素、エネルギーマネジメント技術、CCUS/カーボンリサイクル等も含めたCO2排出削減に資するあらゆる選択肢の提案やパリ協定の目標達成に向けた長期戦略など脱炭素化に向けた政策の策定支援を行う、「脱炭素移行政策誘導型インフラ輸出支援」を推進していくことを基本方針とする。
その上で、今後新たに計画される石炭火力発電プロジェクトについては、エネルギー政策や環境政策に係る二国間協議の枠組みを持たないなど、我が国が相手国のエネルギーを取り巻く状況・課題や脱炭素化に向けた方針を知悉していない国に対しては、政府としての支援を行わないことを原則とする。その一方で、特別に、エネルギー安全保障及び経済性の観点などから当面石炭火力発電を選択せざるを得ない国に限り、相手国から、脱炭素化へ向けた移行を進める一環として我が国の高効率石炭火力発電へ要請があった場合には、関係省庁の連携の下、我が国から政策誘導や支援を行うことにより、当該国が脱炭素化に向かい、発展段階に応じた行動変容を図ることを条件として、OECDルールも踏まえつつ、相手国のエネルギー政策や気候変動対策と整合的な形で、超々臨界圧(USC)以上であって、我が国の最先端技術を活用した環境性能がトップクラスのもの(具体的には、発電効率43%以上のUSC、IGCC及び混焼技術やCCUS/カーボンリサイクル等によって発電電力量当たりのCO2排出量がIGCC 並以下となるもの)の導入を支援する。
② ESG投資の増加にみられるように、世界的に環境・社会・企業内統治への関心も高まっている。こうした経営者や投資家の意識の変化を踏まえながら、環境性能の高いインフラの海外展開に取り組むことで、気候変動問題や海洋プラスチックごみ問題等の地球規模の課題を解決し、世界の環境と成長の好循環を一層推進する。これを踏まえ、これまでの日本の公害や廃棄物管理等の経験や技術、制度などを基に、展開国における環境汚染の低減や公衆衛生の向上、海洋プラスチックごみ問題の解決に向けて、環境インフラ海外展開プラットフォームの形成や、案件形成の上流からの関与の強化等により、社会的仕組み(ソフトインフラ)の整備と一体的に、廃棄物発電やリサイクル、大気汚染や水質汚濁、水銀処理の対策技術等の、質の高い環境インフラの導入推進に取り組む。 [15-16頁]
政府、石炭火力の輸出厳格化議論 インフラ戦略会議
  (東京新聞 TOKYO Web 2020.07.09 17:40 共同通信)
石炭火力の輸出支援厳格化 高効率設備に数値基準 脱炭素化へ政府新方針
  (SankeiBiz 2020.7.9 18:05)
環境省 小泉大臣記者会見録
  (環境省 2020.07.09 18:00~18:40)
   会見実況動画
今回文言一つ一つこだわって、それが実効性を高める形で成案を得られるように調整を進めてまいりました。その結果、今、このスライドでお示しをしたとおり、この本来の、柱でもある、いわゆる4要件の厳格化、これについて、改めて触れたいと思います。どのように、厳格化が変化されたのか。これまでは、支援する要件のみ書いてあった4要件を、一つ一つ見ていただければわかりますが、一つ目の要件。エネルギー安全保障と経済性の観点のみを求めていたのが今まででした。そのことに加えて今回何が変わったかというと、エネルギー安全保障と経済性の観点に加えて、脱炭素化だということが前提とならない限り駄目だという形を、さらに今回1点目に加えています。そして二つ目、我が国の高効率石炭火力発電への要請があればということでありますが、今回新しく加えたことは、仮に我が国の高効率石炭火力発電への要請であったとしても、脱炭素移行の一環でなければ駄目。そういったことであります。そして三つ目。相手国のエネルギー政策や気候変動対策と整合的な形であることという要件は、今の相手国のエネルギー政策や気候変動対策と整合的な形ではなくて、パリ協定の目標達成に向けた政策や対策が継続的に強化をされること。それを今回の要件にしました。そして最後の4点目は、原則、世界最新鋭であるUSCいわゆる超々臨界以上という今までの要件は、常に最新の環境性能とする要件、USCであっても、USCの中でも最高効率ではないものもありますので、そういったことも含めて、常に最高効率でなければならない。こういったところをしっかりと、4要件を今回変更することで、調整が決着をして、今までの4要件に加えて、相当、徹底した厳格化がなされることになりました。以上のように、相手国のエネルギーを取り巻く状況・課題や、脱炭素化に向けた方針をしっかり把握していない場合は、支援しないことを原則とするという転換をすることができました。今後、関係省庁と連携をしながら、世界の実効的な脱炭素化への取組を進めていきたいと思います。そして、最後になりますが、環境省では、今回の改正を絵にかいた餅にすることがないように、具体的なアクションとして、政策対話から案件形成に至るまで、途上国の脱炭素移行に向けた一貫支援体制を構築していきます。さらには、民間企業や自治体、金融機関などとも連携して、環境インフラの海外展開を推進するため、民間企業への情報共有やビジネスマッチング、案件形成支援に至るまで、トータルでサポートするための官民連携のプラットフォームを設立し、より日本の脱炭素技術やノウハウが活用されるように、官民一体となって取り組んでいきたいと思います。早速、ベトナムとは政策対話の実施に向けた調整を始めています。関係省庁や関係機関とも連携しながら、相手国のニーズに即して、脱炭素化に向けた政策策定支援からCO2削減に資する、あらゆる対策の提案、実施に取り組んでいくことで、世界の脱炭素化に貢献していきたいと思います。最後になりますが、私のような、手の焼ける大臣と、最後まで、向き合って調整に努力をいただいた梶山大臣をはじめ、経産省の皆さん、ありがとうございました。そして、関係省庁、ファクト検討会委員、及びヒアリングに御協力いただいた企業・団体など、これまでに、この議論に関わってきた関係者すべての皆さんに、心から感謝を申し上げたいと思います。うちの事務方も大変だったと思います。ありがとう。以上です。
日本政府、石炭火力の輸出支援を「厳格化」 脱炭素化へ誘導(清水律子)
  (ロイター 2020.07.09 19:20)
  政府は9日、二酸化炭素(CO2)の排出量が多く、批判が強い石炭火力発電の輸出支援について、これまでの支援要件を厳格化することを決めた。現状でも石炭火力発電を選択せざるを得ない国があるとし、そうした国への輸出支援も、脱炭素化に向けた誘導を行うことを条件としている。
 <新たな石炭火力、2国間協議持たない国「支援せず」
 政府が9日開催した「経協インフラ戦略会議」で決めた新たな輸出戦略では、再生可能エネルギーや水素、カーボンリサイクル等CO2排出削減に資するあらゆる選択肢の提案や、パリ協定の目標達成に向けた長期戦略など脱炭素に向けた政策の策定支援を行う「脱炭素移行政策誘導型インフラ輸出支援」を推進することを基本方針とした。
今後、新たに計画される石炭火力発電プロジェクトについては「エネルギー政策や環境政策に係る2国間協議の枠組みを持たないなど、日本が相手国のエネルギーを取り巻く状況・課題・脱炭素に向けた方針を知悉(ちしつ)していない国に対しては、政府として支援しないことを原則とする」とした。
 一方、石炭火力を選択せざるを得ない国に対しては、脱炭素化に移行する一環として、日本の高効率石炭火力へ要請があった場合には、その国が脱炭素化に向かい、行動変容を図ることを条件として、超々臨界圧(USC)以上であり、日本の最先端技術を活用した環境性能がトップクラスのものの導入を支援するとした。
 <梶山経産相「現実的な一歩」、小泉環境相「基本として原則支援しない」
 梶山弘志経済産業相は会見で「石炭火力発電の輸出支援の厳格化を決めた」と述べ「一足飛びにゼロというわけにはいかない。より現実的な一歩を踏み出すということ」と述べた。一方、小泉進次郎環境相は「最も重視してもらいたいのは、基本方針として原則、支援しないこと。今回、そういった結果になった」と述べ、こだわってきた「支援しないことを原則とする」という文言が入ったことを評価した。
 エネルギーを所管する経産省としては、日本の高い技術による石炭火力発電を必要とする国は多いという認識にある。一方で、脱炭素化は必然のものとなっており、関係省庁間でも、輸出相手国の行動変容を促すことが必要との認識は共有した。
 新興国に対し、石炭火力輸出支援を行っている日本への批判は高まっていた。昨年12月に気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)に出席した小泉環境相が問題を提起。今年2月下旬、石炭火力発電の輸出条件の見直しを話し合うことで環境省や経産省などの関係省庁が合意、協議を続けてきた。
 <エネルギーミックス見直しにつながるか
 小泉環境相は「来年のエネルギーミックス、ドミノが倒れるように、脱炭素化社会の実現に向け議論する素地ができたと思っている」とし「COP26はCOP25より、前向きなものを持っていけるのは間違いない」と述べ、来年予定されているエネルギーミックスの見直しにも自信を示した。
 石炭火力発電の海外輸出に関してはこれまで、1)エネルギーの安全保障及び経済性の観点から石炭を選択せざるを得ない場合、2)日本の高効率石炭火力発電への要請があった場合、3)相手国のエネルギー政策や気候変動政策と整合性があること、4)原則、世界最新鋭であるUSC(超々臨界圧発電方式)以上の発電設備の使用、という4要件を定めていた。
石炭火力発電 輸出支援は環境性能トップクラスに限定 政府
(NHK NEWS WEB 2020.07.09 19:37)
石炭火力、輸出支援「原則禁止」 脱炭素化へ条件厳格化-政府
  (時事ドットコムニュース 2020.07.09 21:05)

石炭火力の輸出支援を厳格化 政府方針、設備性能などに条件
  (中日新聞Web 2020.07.10 05:00 (11:54更新)
活動報告:石炭火力発電の輸出政策の見直しが正式に決定しました
  (小泉進次郎 Official Site 2020.07.10)
本日、大臣就任以来取り組んできた石炭火力発電の輸出政策の見直しが正式に決定し、今後は「原則支援しない」ことになりました。国際社会に対してもパリ協定に貢献する日本の揺るぎない姿勢が伝わる、画期的な政策転換が出来ました。……
  どのように厳格化が変化したのか
一つ目、「エネルギー安全保障と経済性の観点のみ」を求めていたのが今まででした。そのことに加えて今回何が変わったかというと、エネルギー安全保障と経済性の観点に加えて脱炭素化というのが前提にならない限りダメだとしています。
二つ目、「我が国の高効率石炭火力発電への要請があれば」、ということですが、今回新しく加えたことは、仮に我が国の高効率石炭火力発電への要請だったとしても、「脱炭素移行の一環」でなければダメとしました。
三つ目、「相手国のエネルギー政策や気候変動対策と整合的な形であること」、という用件は、相手国のエネルギー政策や気候変動対策と整合的な形ではなくて、「パリ協定の目標達成に向けた政策や対策が継続的強化をされること」、それを今回は要件にしました。
そして最後四点目は、「原則、世界最新鋭であるUSC(超々臨界)以上」、今までの要件は、「常に最新の環境性能とする要件」。USCであっても最高効率でないものもありますので、そういうことも含めて、常に最高効率でなければならない。
こういった4要件に変更することで、調整が決着。今までの要件に加えて相当徹底した厳格化がなされました。

石炭火力輸出 公的支援から撤退せよ
  (朝日新聞デジタル 2020.07.12 05:00)
 石炭火力発電の輸出に際し、政府は公的支援の要件を厳格化することを決めた。国際的な批判に押され、政策の転換にようやく一歩を踏み出す。
 ただ、公的支援の道は残されていて、世界的な脱石炭火力の潮流と歩調が合ったとはいいがたい。気候危機の脅威は増しており、日本も輸出から早急に手を引かねばならない。
 石炭火力は主な電源のなかで最も二酸化炭素(CO2)排出量が多く、欧州を中心に全廃をめざす国が増えつつある。地球温暖化対策を進めるパリ協定の下、国際社会は今世紀の後半に温室効果ガス排出の実質ゼロをめざしているからだ。
 そんななか日本は、いまだに石炭火力を国内の基幹電源と位置づけているうえ、主要7カ国(G7)で唯一、政府が輸出の後押しを続けている。相手国が発電効率のいい日本の設備を求めているといった4項目の要件を満たす必要があるものの、「日本は気候危機対策に後ろ向きだ」との批判が強い。
 そうした逆風を受け、今回、環境省や経済産業省などが公的支援の要件を見直した。
 輸出支援にあたっては、温室効果ガス削減の長期戦略づくりなどを手助けし、相手国の脱炭素化を促すことを基本方針とする。脱炭素政策の詳細がわからない国への輸出は原則的に支援しない、と明記した。4要件についても、脱炭素化の観点から従来よりも厳しくする。
 成長戦略として輸出支援してきた姿勢を改め、環境重視に軸足を移す点は評価できる。
 だが、見すごせないのは、相手国が脱炭素化へ移行するなかで日本の石炭火力を求めている場合、高効率の設備を輸出できるとしている点だ。
 高効率といっても、天然ガス火力の2倍ものCO2を出す。相手国の気候変動対策を促すという一方で、40年にもわたって温室効果ガスを排出し続ける設備の輸出を助けるのは矛盾している。太陽光や風力の輸出を進めるのが筋だろう。
 折しも、日本のメガバンクを含む世界の金融大手が石炭火力への投融資から撤退している。日本が公的支援の道を残していては「気候危機対策の足を引っ張っている」と批判されよう。
 石炭火力は相手国に、温暖化以外の問題をもたらす恐れもある。東南アジアでは、日本が建設に協力する発電所の地元住民らが、農業や漁業への悪影響や環境汚染への不安から反対運動をしている例もある。日本の支援が地元を苦しめることがあってはならない。
 政府に求められているのは、輸出支援の要件の厳格化ではない。完全な撤退である。

石炭火力削減方針評価①(7月4~9日) 7月25日

7月2・3日の経産省、石炭火力発電100基休廃止(削減)方針に対する評価です。

7月4~9日の報道記事
  (中日新聞Web 2020.07.04 05:00)
  (Sustainable Japan 2020.07.04)
 まず、日本経済新聞の報道では、「高効率の新型発電所は維持・拡充する」との記載があり、石炭火力発電の中で高効率石炭火力発電を推進してきた経済産業省の方針と今回の発表が、必ずしも矛盾してはいないという点。具体的な方針は、「有識者会議を立ち上げて休廃止を促す具体的な手法を詰める」ということから、高効率石炭火力発電まで含めた削減に踏み込むかどうかは今後の議論に委ねられることになる。このように今は「固い鉄が溶けた」とも言える状態で、今後の政策についての柔軟性が大幅に上がった。「鉄は熱いうちに打て」と言われるように、将来どのような形状で再度固まるのかという極めて大事な局面となる。
 石炭火力の輸出の公的支援については、今年に入り、環境省と経済産業省の間で鍔迫り合いが続いている。環境省では、小泉進次郎環境省のリーダーシップにより、「石炭火力発電輸出への公的支援に関する有識者ファクト検討会」を設立し、政府政策が時代錯誤になっているというファクトを整理してきた。一方の経済産業省は、「インフラ海外展開懇談会」を設立し、石炭輸出継続の理論武装を行った。環境NGOの気候ネットワーク、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、350.org、Friends of the Earth(FoE)、メコン・ウォッチの5団体は7月3日、現状でも低効率石炭火力発電は政府のインフラ輸出の対象外となっており、今回の方針が低効率にとどまるのであれば進展はなにもないと警告している。
 系統での再生可能エネルギー発電所の出力抑制については、現状のルールでも、再生可能エネルギーは火力発電よりも優先されており、原子力発電、水力発電、地熱発電のみが太陽光発電・風力発電よりも優先順位が高い状況にある。そのため、再生可能エネルギーの優先順位を上げるためには、現在原子力発電用に確保されている系統を開放し、再生可能ネルギーが出力抑制をしなくてよくなる状況にするしかない。これができるかどうかが「進歩」と呼べるかのメルクマールとなる。
  (ブログ『化学業界の話題 knakのデータベースから』 2020.07.06 08:17)
経済産業省は低効率な石炭火力発電所の休廃止に乗り出す。現在約140基ある石炭火力のうち、低効率とされる約110基のうち9割にあたる100基程度を対象とし、2030年度までに段階的に進める。
具体的には、電力会社が発電できる量に上限を設けて、古い発電所を休止や廃止するなどして、段階的に引き下げていく方法などが検討されている。災害などの際に大規模な停電を防ぐためにすべてがすぐに廃止されないような仕組みも検討する。
一方、二酸化炭素の排出を抑えた効率がよい石炭火力発電所は新設も認める。
2019年に改定した政府の「エネルギー基本計画」では、2050年に向けた対応として非効率な石炭を段階的に削減するとしているが、その取り組みを加速する。
国際社会の強い批判に応える狙いだが、高効率型の発電所は維持する方針で、欧州の全廃路線とは一線を画すことになる。
2018年7月のエネルギー基本計画では2030年度の電源構成に占める石炭の割合を26%としている。
今回の方針変更で、旧型火力の休廃止と高効率型の新増設を差し引いて、2030年の石炭火力の比率は20%程度まで低下すると見られる。
原子力については再稼働は今後も難航が必至で、再生エネルギーも多くの問題を抱える。
当面はLNG火力の拡大でしのぐしかない。
大手電力からは「基準が決まっていないので何とも言えないが、9割の石炭を廃止するのは困難だ」との声や、「石炭を廃止する以上、国が原発の新増設を後押しすべきだ」との声が聞こえる。
梶山経産相、非効率石炭火力の早期削減へ方針表明 送電線利用も見直し
  (電気新聞 2020.07.13 掲載:2020.07.06)
 梶山弘志経済産業相は3日、超臨界圧(SC)以下の非効率な石炭火力発電所を減らすため、新たな規制的措置の導入などを検討すると表明した。大手電力に加え、共同火力、鉄鋼などの自家発を含め、非効率プラントの早期退出を誘導する仕組みなどについて、7月から有識者会議で議論を始める。加えて、再生可能エネルギーの導入加速に向けた送電線利用ルールの見直しも表明した。ただ、達成への時間軸や供給力確保とのバランス、立地自治体との関係などを巡って慎重な検討が求められそうだ。
 現行の第5次エネルギー基本計画では、石炭火力は2030年度の電源構成のうち26%を占めるとされている。「非効率石炭のフェードアウトに取り組む」とも明記されていたが、これまで具体的な手法は検討されてこなかった。
 経産省・資源エネルギー庁によると、18年度の石炭火力による発電量は、約3300億キロワット時で、石炭火力が全発電量に占める割合は32%。このうち、超々臨界圧(USC)や石炭ガス化複合発電(IGCC)の高効率型が13%、SCや亜臨界圧(SUB-C)などの非効率型が16%、自家発自家消費分は3%に上る。
 今回の検討では、国内に114基存在する非効率型のフェードアウトを目指すほか、大半が非効率型とみられる自家発も俎上(そじょう)に載せる。建設中の最新鋭石炭火力の運転開始も見据え、非効率型による発電をできる限りゼロにする。
 これまで政府はエネルギーミックス(30年の電源構成)の実現に向け、発電事業者や小売電気事業者に省エネルギー法やエネルギー供給構造高度化法で規制を講じてきた。電力業界も低炭素社会実現行動計画などの自主的取り組みを推進してきた。
 それらに加え、梶山経産相は「規制や税でどんなものが必要か、あらゆる条件を排除せずに検討する」と強調。エネ庁の小川要・電力基盤整備課長は「関係者が多いため、丁寧に議論する。明確な期限を区切った検討はしない」と話した。
 この他、梶山経産相は非効率な石炭火力のフェードアウトとともに、再生可能エネ導入拡大に向けた送電線利用ルールの見直しも表明。千葉県などで試行的に実施している「ノンファーム型接続」は21年度中に全国展開する。また、送電線混雑時、再生可能エネが出力制御を受けないようルールを見直し、主力電源化を推進する。先に接続していた火力発電は石炭だけでなく、他燃料も対象となる見通しだ。
小泉環境相を意識? 旧式石炭火力の削減に乗り出す経産省(安藤毅)
  (日経ビジネス電子版 2020.07.06)
「CO2ゼロ」へ技術開発 有識者会議が初会合-経産省
  (朝日新聞社の言論サイト『論座』 2020.07)
「石炭火力発電100基休廃止」報道、政府は”脱石炭”に向かう!?
  ( 『Don’t go back to the 石炭〜石炭火力発電に反対』 2020.07.07)
2020年7月2日の報道で、「政府は、二酸化炭素(CO2)を多く出す非効率な石炭火力発電所の9割弱を、休廃止の対象とする方針を固めた」ことが報じられた。これまで日本政府は、既存の石炭火力発電所を廃止するという方向性を全く打ち出してこなかった。今回の方針ははじめて廃止に踏み込んだ方針転換ともとれる”脱石炭”への小さな一歩だ。
しかし、パリ協定の目標とする「地球の平均気温の上昇を産業化前に比べて2℃を十分に下回り、1.5℃の上昇にとどめる」という要請にこたえるためには、先進国における石炭火力は2020年以降の新規稼働を禁じ、既存を含め遅くとも2030年までに全廃することが求められる。その意味では、この方針では全く不十分だ。
自然エネ財団、経産省の「石炭火力の休廃止方針」に3つの懸念を表明
  (『環境ビジネス』 2020.07.07)
自然エネルギー財団は7月3日、梶山 弘志経済産業大臣が同日の記者会見で低効率な石炭火力発電所の休廃止を進めると表明したことを受けて、コメントを発表し、3つの懸念を示した。
2018年に策定されたエネルギー基本計画において、「非効率な石炭火力発電のフェードアウト」とともに、「石炭火力発電の高効率化・次世代化の推進」「2030年に石炭火力で26%を供給」という方針が明記されている。
梶山経済産業大臣は、同日の記者会見で、この「非効率な石炭火力発電のフェードアウト」に向けた具体的な方策と、再生可能エネルギーの主力電源化に向けた、基幹送電線の利用ルールの抜本見直しについて、7月中にも検討を開始し年内を目途に具体策をまとめる方針を示した。資源の少ない日本において、様々な選択肢を検討しながら、エネルギーのベストミックスを検討すること、また、高効率な火力発電は調整力や災害時の立ち上げ電源としても重要であり、現時点で「2030年に石炭火力で26%を供給」は維持することとしている。
その後に記者会見した小泉進次郎環境大臣は、この発表について、「パリ協定で掲げる脱炭素社会に実現に向けて、日本のゆるぎない姿勢を国際社会に示す大きな一歩になる」と評価した。
一方、自然エネルギー財団は、今回の梶山経済産業大臣の発表は、「非効率な石炭火力発電のフェードアウト」の既定方針を具体化したもので、新たな方向性を提起したものではないと指摘。各種の報道を踏まえ、今回の方針について、以下のような3つの懸念を示した。
   1.「100基休廃止」でも、2030年時点で3000万kWの石炭火力を利用
   2.CO2排出がほとんど変わらない高効率石炭火力推進路線の維持
   3.26%維持のためさらに長期の排出ロックインの危険性

  「石炭火力の完全なフェーズアウトを」を呼びかけ
自然エネルギー財団は、「気候危機回避に必要なCO2大幅削減を確実に実現するためには、エネルギー効率化の徹底と自然エネルギーの大幅拡大を進める以外にはない」とした。
同財団では、2030年の持続可能なエネルギーミックスの姿とその可能性を示すため、近日中に提言を公表する予定。2021年にはエネルギー基本計画の改定が行われると見込まれている。この改定において、石炭火力発電を完全にフェーズアウトし、自然エネルギー発電を中心とするエネルギー転換の方向性を明確にすることが、今回の経済産業省の方針を、気候危機に立ち向かう世界の努力と整合するものに発展させる道だとした。同財団は、今後とも、関係省庁、電力会社との建設的な意見交換を進めていくとしている。
(社説)石炭火力削減 温暖化防ぐ道筋を描け
  (朝日新聞デジタル 2020.07.08 5:00)
   (Diamond Online 2020.07.08 05:35)
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  (環境ビジネスオンライン 2020.07.09日)
公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES:アイジェス)は7月3日の経済産業省「非効率石炭火力の段階的廃止」方針を分析し、「方針はパリ協定と整合的ではなく、発電部門全体での排出ネットゼロ化を目指した措置が必要」というコメントを発表しました。
  「非効率石炭火力の段階的廃止」方針に対するコメントの主要メッセージ
非効率石炭火力の休廃止を具体的に促すことは歓迎される。
しかし、今回の方針は、大型で高効率な石炭火力設備へのリプレースを進めるという従来のエネルギー政策の抜本的な転換を意味するものではなく、パリ協定の長期気温目標に向けても不十分な内容である。
休廃止が見込まれる設備は小規模なものが多い一方で、建設中・計画中の大規模石炭火力が稼働することで、2030年時点では50基、3,328万kW程度の石炭火力が残ると推計される。これは、日本の2030年排出削減目標(NDC)が想定する石炭火力発電量よりも約44TWh~102TWh少なく、CO2排出量では約3,700万トン~8,700万トンの削減となる。しかし、パリ協定と整合性のある日本の削減目標についての統合評価モデル/エネルギーモデルシナリオにおける数値と比べると不十分である。
50基のうち21基は2030年時点での稼働年数が20年以下であり、2050年まで稼働する可能性がある。この21基(約1,452万kW)のうち、炭素回収技術と相性がよいとされる石炭ガス化複合発電(IGCC)は4基(約150万kW)であり、残りは炭素回収技術の追設を想定しておらず、電力部門から長期的にCO2が排出される状態(ロックイン)が懸念される。
今回の方針は、『パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略』に明記された、パリ協定の長期目標と整合的な火力発電からのCO2排出削減や非効率石炭火力のフェーズアウトに向けた取り組みとしては不十分である。非効率石炭火力の廃止を促すだけではなく、発電部門全体での排出ネットゼロ化を目指した措置が必要となる。
  全文

時事公論「石炭火力削減 電源構成の抜本見直しを」(水野倫之)
  (NHK解説委員室 2020.07.09)
 今回の削減方針はエネルギー政策の方針転換のように見えるかもしれないが、そうではない。
 エネルギー基本計画にはおととしの改定の段階で、「非効率な石炭火力にフェードアウトを促す仕組みなど具体的な措置を講ずる」ことがすでに盛り込んであった。しかし政府はどう減らすのか具体策を打ちださないまま2年が過ぎ、国際的な批判をきっかけにようやく重い腰を上げたわけ。対応が遅いと言えるが、脱炭素に向けてもう旧式の火力を使い続けるべきではなく、削減方針を示した点は一定の評価ができる。
 ただ今回方針転換ではないため政府は、石炭火力の基幹電源としての位置づけや2030年に26%賄う方針は見直さず、効率が比較的よい石炭火力は今後も新設を認めることに。
効率が良いとは言っても天然ガスの2倍のCO2を排出するわけで、国際社会から不十分だと批判が高まる可能性も。政府はCO2などの排出を2050年に80%削減し、今世紀後半のできるだけ早い段階で実質ゼロにすることを国際的に約束しているわけで削減だけでなく一歩踏み込んで廃止に向けた道筋についても今回あわせて検討しておく必要があると思う。
 また、今回削減する分の電力について政府は、再エネと原発で賄う方針。しかしいずれも課題が多く、賄いきれなければ石炭火力削減自体に影響が出る可能性もあり、この際、電源構成を抜本的に見直していく必要。
 このうち原発については2030年に20~22%賄う方針を掲げ、30基程度再稼働させる方針。しかし信頼の回復は進まず、これまで再稼働したのは9基で、電源の割合も6%。しかも裁判所が運転停止を命じたり、テロ対策施設の完成が遅れて原子力規制委員会から事実上強制停止させられるなど、原発はいまや不安定電源に。業界団体が原子力関係各社に行ったアンケートでも半数が20~22%の達成は困難と回答。このまま目標が達成できなければその分をまた石炭火力で賄うということになりかねず、原発比率の見直しは不可欠。
 その分、政府が主力電源化を目指す再エネが期待されるが、現状17%と主要国の中でも最低レベル。普及が進まない理由の一つに送電線の空きが少なく、新規の再エネがなかなかつなげない問題が。送電線の利用は、先に建設された火力や原発が優先的に利用できる仕組み。このため、発電量が増えて送電線の容量がいっぱいになると、あとから再エネを入れようとしてもできず、送電線を設置する莫大な費用が請求され、再エネ事業を断念せざるを得ないケースも。こうした状況が続く限り再エネの拡大は困難。この点政府は再エネが優先的につなげるよう、送電線接続のルールを変える方針。再エネ事業者の意見を丁寧に聞いて、より多くの事業者が参入できるようなルールを早急に整備するのと同時に、普及を加速させるためにも2030年に22~24%となっている再エネの導入目標についてもより高く見直していくことも必要。
 政府はエネルギー基本計画を当初予定の通り、来年改定するとしているが、世界の脱炭素化への動きは早い。状況に合わせて素早く見直していかないと世界の流れに乗り遅れることになりかねない。

石炭火力100基休廃止表明(7月3日) 7月24日

梶山弘志経済産業相は3日、二酸化炭素(CO2)を多く排出する非効率な石炭火力発電所100基程度を2030年度までに段階的に休廃止する方針を表明しました。

7月3日の報道記事
石炭火力、抑制姿勢に転換 欧州「全廃路線」と一線
  (日本経済新聞電子版 2020.07.03 02:00)
■■電力会社「困難」の声
 全国の大手電力各社は電力調達の多くを石炭火力に頼っており、経営に与える影響は大きい。
中国電力の場合、合計259万キロワットの石炭火力を持っており、顧客に販売する電力のうち47%が石炭由来の電力だ。北陸電力は同50%で、比較的石炭の依存度が低くなっている東京電力ホールディングスでも20%を占めている。
段階的に建て替えや廃止を進めているといっても、老朽化した発電所に頼っている地域も少なくない。中国電力の下関発電所1号機(山口県下関市)は稼働から53年が経過し、Jパワーの高砂火力発電所1号機(兵庫県高砂市)も52年たっている。
大手電力からは「基準が決まっていないので何とも言えないが、9割の石炭を廃止するのは困難だ」(東電関係者)との声があがる。西日本が地盤のある電力会社は「石炭を廃止する以上、国が原子力発電所の新増設を後押しすべきだ」と話した。
  (SankeiBiz 2020.07.03 05:00)
梶山経済産業大臣の閣議後記者会見の概要
  (経済産業省 2020.07.03 11:13~11:29)
非効率石炭火力のフェードアウトに向けた検討
まず1点目、資源の乏しい我が国において、エネルギー安定供給に万全を期しながら脱炭素社会の実現を目指すために、エネルギー基本計画に明記している非効率な石炭火力のフェードアウトや再エネの主力電源化を目指していく上で、より実効性のある新たな仕組みを導入すべく、今月中に検討を開始し取りまとめるよう、事務方に指示をいたしました。
具体的には、2030年に向けてフェードアウトを確かなものにする新たな規制的措置の導入や、安定供給に必要となる供給力を確保しつつ、非効率石炭の早期退出を誘導するための仕組みの創設、既存の非効率な火力電源を抑制しつつ、再エネ導入を加速化するような基幹送電線の利用ルールの抜本見直し等の具体策について、地域の実態等も踏まえつつ検討を進めていきたいと考えております。
また、系統の効率的な利用を促すことで、再エネの効率的な導入を促進する観点から検討が進められております発電側課金についても、基幹送電線の利用ルールの見直しとも整合的な仕組みとなるよう見直しを指示をいたしました。
詳細は、事務方から説明をさせたいと考えております。
質疑応答
Q: 大臣、小泉環境大臣と今日の発表は合意されているんでしょうか。
A: 合意はしていないが、政府としては合意していますよ。それは官邸も含めて。
Q: 小泉大臣と話し合っていますか。
A: 小泉大臣とは折に触れて話し合ってあります。閣議で席が隣ですので。
  (一般社団法人環境金融研究機構(RIEF) 2020.07.03 12:21:37)
 経済産業省が旧式石炭火力発電所を約100基休廃止の方針を打ち出す中で、2つの石炭火力が新たに営業稼働した。電源開発(Jパワー)が広島県竹原市と茨城県鹿嶋市で建設を進めてきた超々臨界圧石炭火力(USC)発電所が相次いで動き出した。USCは旧式石炭火力よりCO2排出量は少ないが、天然ガス火力の2倍の排出量で、EU等では廃止対象になっている。経産省の「100基休廃止」方針は、旧式からUSCへの転換策でしかなく、「石炭依存」を基本的に維持していることを示す。
 USC型の発電所は現在、国内に26基(2018年現在)あるほか、2019年の稼働分と現在建設中が16基ある。これらは建設時期が新しいので、ロックイン効果が続き、2030年以降も3000万kW以上の運転を続ける。USC42基のCO2排出量をJパワーの広島発電所と同等とすれば、合計で年間1億3270万㌧となる。これは日本の温室効果ガス排出量の1割を上回る。旧式石炭火力の休廃止でCO2排出量は約6400万〜1億600万㌧削減される見通しだが、その削減分を上回る排出を続けることになる。
 さらにKIKO[気候ネットワーク]は、今回、稼働を始めた両USC型火力発電所が立地する県が、いずれも温暖化の加速で深刻な気候災害が起きた県である点も指摘している。広島では2年前の西日本豪雨で、多くの人命が失われ、被害総額も過去最高となった。一方の茨城県でも、2015年の常総市周辺での記録的豪雨で、鬼怒川の堤防が決壊、甚大な被害が出た。
 石炭火力が主要な汚染源として、温暖化の影響を加速し、その被害を現実に受けた地域で、新たに「元凶」となる石炭火力を稼働させるという「暴挙」に映る。だが、事業主体はもちろんのこと、地元自治体も、まるで別問題であるかのように振る舞っている。
 もちろん、温暖化の影響は石炭火力の稼働地元だけではなく、グローバルに影響する。今夏はすでにロシアのシベリアで38℃の高温が記録され、永久凍土の溶融による建物事故のニュースも届く。南極の温度も、世界平均より3倍のスピードで上昇していることも科学的観測で確認されている。にもかかわらず、日本の行政と電力会社があくまでも石炭に固執するのはなぜなのか。エネルギー供給への不安か、変わることへの不安か、あるいは利権の維持か……
石炭火力「減らす仕組み作る」 経産相、輸出厳格化も
  (日本経済新聞電子版 2020.07.03 11:51)
  (東京新聞 TOKYO Web 2020.07.03 13:50)
   ◆政府が従来のエネルギー政策を転換
脱炭素化に向け再生可能エネの普及に本腰を
<解説> 梶山弘志経産相がエネルギー効率が悪い石炭火力発電所の休廃止を表明した。CO2排出を抑える脱炭素化に向けた一歩とはなるが、石炭火力の全廃方針を掲げる欧州各国に比べれば見劣りする。脱炭素化を進める上で重大事故のリスクがある原発に頼らず、CO2排出が少ない再生可能エネルギーの比率をどう高めるか。政府の本気度が問われる。
 日本は東日本大震災以降、原発の代替電源として液化天然ガス(LNG)や石炭火力の比率を高めた。石炭は価格が安く、安定的に調達できるとして、経産省や産業界は「石炭火力維持」の方針を崩さずにきた。
 一転、旧型の石炭火力休止に踏み切った背景には、世界で強まる脱炭素化の潮流がある。石炭火力はCO2の排出量が天然ガス火力の約2倍と多く、ドイツや英国などは石炭火力の全廃方針を掲げる。
 今後は石炭比率を下げながら、電力の安定供給をどう実現するかが課題となる。原発は安全対策コストがかさみ、地震大国の日本での再稼働は現実性に乏しい。再生エネの普及策に本腰を入れ、環境と暮らしを両立するエネルギー政策を立案する必要がある。(石川智規)
  (時事ドットコム 2020.07.03 18:34)
[社説]電源全体を見据えた石炭火力の休廃止に
  (日本経済新聞電子版 2020.07.03 19:05)
北陸電力、発電5割頼る石炭火力に暗雲 最安の源泉
  (日本経済新聞電子版 2020.07.03 19:30)
低効率石炭の休廃止、自家発電も対象 経産省方針
  (日本経済新聞電子版 2020.07.03 20:30)
WWFは、日本政府が石炭火力発電所を大幅に廃止する方針を歓迎する
  ただし、新規増設や原子力によってその廃止分を埋めてはならない
  (WWFジャパン[World Wide Fund for Nature] 2020.07.03)
石炭火力の完全なフェーズアウトを:経済産業省の方針では2030年に3000万kWの石炭火力を利用(自然エネルギー財団)
1.「100基休廃止」でも、2030年時点で3000万kWの石炭火力を利用
 休廃止の対象となる100基には10万~20万kW程度の小規模のものが多い。これに対し、2030年でも利用を予定している「高効率」石炭火力は、60万kW~100万kWクラスの大規模のものが中心であり、合計約2000万kWの発電設備が存在している。これに現在建設中の新設石炭火力を加えれば2900万kW程度となる。更に非効率石炭火力の1割は残されるので、全体では、2030年時点でも3000万kW程度の石炭火力が残存することになる。
 パリ協定のめざす二酸化炭素削減目標を実現するためには、先進諸国では2030年までに石炭火力発電の利用を全廃することが必要とされており、欧州各国をはじめ多くの国が2030年前後の全廃をめざしている。今回の方針は、こうした世界の努力とは全く異なる。
2.二酸化炭素排出がほとんど変わらない高効率石炭火力推進路線の維持
 エネルギー基本計画では、非効率な石炭火力のフェードアウトと同時に「石炭火力発電の高効率化・次世代化を推進する」と明記しており、今回の公表でも高効率と称する石炭火力を維持することを明確にしている。これらの高効率石炭火力も、二酸化炭素排出量は「非効率」なものより数%しか減らない。日本が批判されてきたのは、実際には排出削減に殆ど役立ない「高効率石炭火力」をクリーンコールと称して推進してきたからに他ならない。今回の発表はこの「クリーンコール」路線を継続することを明確にしたものである。
3.26%維持のため更に長期の排出ロックインの危険性
 エネルギー基本計画では「2030年に石炭火力で26%を供給」するという方針を示している。2030年に残存する3000万kWで供給可能なのは、20%程度と見込まれるため、26%を供給するためには、更に多くの石炭火力発電を新設することが必要になる。巨額の初期投資が必要な石炭火力は、いったん建設されれば40年程度の利用が目指される。このようなことが行われれば、今世の後半の長い期間にわたって大量の二酸化炭素の排出を続けることになる。
政府の海外石炭火力支援方針の改訂方向性を危惧 ~進行中案件も含めて支援中止を決定すべき~
(「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、気候ネットワーク、国際環境NGO 350.org Japan、国際環境NGO FoE Japan、メコン・ウォッチ)
7月3日付の報道に、「石炭火力発電輸出 支援厳格に 政府検討 非効率型を除外」と題する記事が掲載されました。これまで次期インフラシステム輸出戦略骨子において海外の石炭火力発電事業の公的支援中止を打ち出すよう要請してきた私たち環境NGOは、記事で伝えられる政府内における検討の方向性を非常に危惧しており、すでに進行中の案件も含め、海外石炭火力発電事業への公的支援の全面中止を改めて要請します。
記事では、「二酸化炭素(CO2)を多く排出する非効率な石炭火力発電の輸出は、原則として支援しない方針を政府文書に明記することも含めて検討している」と報道されています。しかし、現行政策(エネルギー基本計画に示されたいわゆる輸出支援の4要件)でも、「原則、世界最新鋭である超々臨界圧(USC)以上の発電設備について導入を支援する」としています。したがって、技術を限定し、条件付けを残すなら、単に言い回しを変えるだけで、実態には何も変化をもたらさない可能性があります。
また、「CO2の排出量が少ない高効率の発電所であっても、支援する条件を厳しくすることで、温室効果ガス削減に取り組む姿勢を示す」と報道されていますが、そもそも高効率であっても石炭火力はパリ協定の長期目標と整合しないことが明らかであることから、日本政府の現行方針が国内外から批判されています。石炭火力でも高効率なら支援するという姿勢を続ける限り、パリ協定の目標達成に後ろ向きであるとの日本に対する評価は覆らないでしょう。
さらに、記事では「進行中のプロジェクトについては、継続する」との方針も示されています。これは、国際協力銀行(JBIC)及び日本貿易保険(NEXI)が支援検討中のブンアン2(ベトナム)、国際協力機構(JICA)が支援を検討見込みのインドラマユ(インドネシア)及びマタバリ2(バングラデシュ)の3案件を指していると考えられますが、すでに今後の支援対象案件として実質的に残された案件はこの3案件しかないことから、これらを除外して方針を立てることは、今回の方針見直し自体の意義を損なうものに他なりません。加えて、これらの案件においても、パリ協定の長期目標との不整合性、支援対象国における電力供給過剰状態の深刻化、再エネのコスト低下に伴う経済合理性の欠如、現地の環境汚染や住民への人権侵害など、様々な問題があり、支援を行うべきではありません。
したがって、7月上旬にも閣議決定されると見込まれる次期インフラシステム輸出戦略骨子では、進行中の案件を含めたすべての海外石炭火力発電事業への公的支援を例外なく中止するという方針を掲げるべきです。

経産省の石炭火力発電削減方針(7月2日) 7月23日

7月2日、政府は古い非効率な石炭火力発電所の発電量を2030年度までに9割程度削減する方向で調整にはいりました。

7月2日の報道記事
  (ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト 2020.07.02 13:18)
  ( ロイターニュース 朝日新聞デジタル 2020.07.02 13:18)
  ( NHK NEWS WEB 2020.07.02 22:37)
  ヨーロッパなどは「脱石炭」加速
  日本では主力電源 エネルギー政策の見直しも課題に
   原発での代替は困難か 根本的な議論が必要に
  「日本は温暖化対策に消極的」国際的に批判も
  日商 三村会頭「バランスのとれた政策を」
  東電社長「引き続き国と連携して進める」
  専門家「温室効果ガスの排出をゼロにする道筋を」
  専門家「コストは覚悟しなければならない」

  (一般社団法人環境金融研究機構(RIEF) 2020.07.02 15:49:11)
旧式の石炭火力9割休廃止 CO2削減へ100基 30年度・政府
  (時事ドットコムニュース 2020.07.02 17:48)
政府は2日、国内にある約140基の石炭火力発電所のうち約110基を占める旧式発電所について、2030年度までに9割相当、100基程度を休廃止の対象とする方針を固めた。旧式は二酸化炭素(CO2)の排出量が多いため、削減方針を打ち出して脱炭素化の姿勢を国際社会にアピールする。石炭火力を重要な電源と位置付けてきた日本のエネルギー政策の大きな転換点となる。……
  (毎日新聞デジタル 
低効率の石炭火力、10年で9割削減 新型は推進の方針(伊藤弘毅、桜井林太郎) 
  (朝日新聞デジタル 2020.07.02 22:25)
経済産業省は、二酸化炭素(CO2)を多く出す低効率の石炭火力発電所による発電量を2030年度までに9割削減する方針を固めた。地球温暖化対策を重視する姿勢を打ち出したい考えだ。だが、高効率な石炭火力は引き続き利用、建設を認め、石炭火力を安定的な電源として重視する考えも変えない見通しだ。……
  (特定非営利活動法人気候ネットワーク 2020.07.02)
  (特定非営利活動法人気候ネットワーク 2020.07.06)
 1.石炭火力発電所の状況
 2.政府の「100基休廃止」の意味
  (1)基数と設備容量
  (2)各電力会社管内の全設備に関する非効率石炭火力が占める割合
  (3)CO2排出量と石炭消費量への影響
  (4)エネルギーミックスへの影響
  (5)2050年目標への影響
 3.政府方針の問題点と改善策
 参考資料


「石炭火力輸出の中止と自然エネルギー支援への転換が必要な4つの理由」(自然エネルギー財団) 7月22日

  自然エネルギー財団202006_01

  資料の趣旨
政府では石炭火力輸出政策の見直しが行われています。小泉環境大臣は、設置した有識者検討会の報告を踏まえ「脱炭素への移行が促進されない限り輸出しない」という脱炭素原則への転換を打ち出しました。一方、経産省の懇談会報告書は、自然エネルギービジネスの重要性を述べながら、依然として石炭火力発電の活用を合理化する議論を含んでいます。日本のエネルギーインフラ輸出が脱炭素化に貢献するものとなるよう、本資料では、石炭火力と脱炭素化両立論の誤り、東南アジアの自然エネルギービジネスの可能性の大きさに関するデータを提供し、輸出政策転換が必要な4つの理由を提起します。
〈目次〉
石炭火力輸出の中止と自然エネルギー支援への転換が必要な4つの理由
  ー「インフラシステム輸出戦略」見直し議論によせてー
  自然エネルギー財団202006_02
これまでの経緯と本資料の趣旨
自然エネルギー財団は本年(2020年)2月12日に、「日本の石炭火力輸出政策の5つの誤謬」を公表し、それまで、石炭火力輸出を正当化するために主張されてきた議論が全く誤ったものであることを、データを示して明らかにしました。
■ この報告書は小泉環境大臣の記者会見、国会質疑、新聞社説などでも扱われ、4月1日には小泉大臣の下に、「石炭火力発電輸出への公的支援に関する有識者ファクト検討会」(以下、「環境省検討会」と表記)が設置されました。
■ 環境省の求めにより、自然エネルギー財団はこのファクト検討会に対し、4月21日「アジアで進む脱炭素の動き」を提出し、日本とともに石炭火力輸出を進めてきた韓国・中国での変化、東南アジア各国での脱石炭の動きを紹介しました。環境省検討会のとりまとめは5月26日に公表され、小泉大臣は脱炭素化原則への転換をめざすと宣言しました。
売れるから売るではなく脱炭素への移行が促進されない限り輸出しない(脱炭素化原則)への転換
■ 一方、経済産業省も4月から「インフラ海外展開懇談会」を開催し、「エネルギー・電力を取り巻く社会情勢を踏まえた施策の検討に必要なファクトの整理・検証」を行いました。5月21日にはその中間とりまとめ(以下、「経産省報告書」と表記)が公表されました。この中でも「拡大する再エネ市場への日本の貢献の重要性」を指摘するなど、積極的な方向が提起されています。他方、残念ながら、依然として東南アジアでの自然エネルギーポテンシャルを過少評価したり、パリ協定とは整合しないIEAのシナリオを前提とするなど、石炭火力発電活用の合理化につながる様々な議論が含まれています。
■ こうした経緯を踏まえ、政府のインフラ輸出戦略の徹底した見直しが行われ、石炭火力輸出の完全な停止と自然エネルギー拡大を進める新たなエネルギービジネスへの転換が行われるよう、本資料を公表するものです。

  自然エネルギー財団202006_03
石炭火力輸出の完全な中止と自然エネルギービジネスへの転換が必要な4つの理由
1 「日本の石炭火力発電効率は世界でトップ」という主張は、もはや通用しない
■ 経産省報告書、環境省検討会への電力会社提出資料でも、石炭火力輸出政策の最大の根拠だった「日本の石炭火力発電効率は世界でトップ」という主張が、もはや通用しないことが明確に。
■ 鈴木外務副大臣は「日本が生産をしている1段再熱のUSCよりも、中国のみで生産できている2段再熱のUSCのほうが効率がよく、費用的にも日本のものに比べて高くはないという記述がある。もし、この記述が本当だとすれば、日本の技術が優れているという輸出の前提が変わってしまう」との見解を表明(環境省検討会第3回発言
2 「石炭火力と脱炭素化の両立」の非現実性
■ 経産省報告書が提唱するIGCC、CCSなどの「脱炭素化」技術は、削減効果が小さく、高コスト、技術も未確立。事業者自身の資料によっても、現在の輸出プロジェクトに利用できるものではないことが明らか。
3 東南アジアには自然エネルギー開発、送電網整備など大きなビジネスチャンスが存在
■ 東南アジアには、電力需要を満たすために十分以上の大きな自然エネルギーポテンシャルがある。
■ 太陽光などの発電コストは急速に低下し、石炭火力に対して価格競争力を有するようになっている。
■ 既にインドシナ半島には国際送電網が存在。島しょ部でも建設・計画が進む。その促進こそインフラ輸出のビジネス機会。
4 多くの企業・金融機関が既に石炭から自然エネビジネスへの転換を進めている
競争力を失った日本の石炭火力プロジェクト
環境省[84p]、経産省の報告書[3p、4p]、事業者自身の資料[JERA23p、電源開発33p]でも、石炭火力輸出の最大の根拠だった主張が崩れたことが明確に
  競争力を失った日本の石炭火力プロジェクトー長期性能の比較
■経産省報告書等では、スペック値に差がないことを認めつつ、「長期的な稼働期間での実績」「長期的品質の確保」では、日本の石炭火力発電に優位性があると述べている。
■しかし、電力会社、重電メーカー、商社などで実際に電力ビジネスを行ってきた専門家のネットワーク「電力情報技術ネットワーク(NEPIE)」は、「品質や耐久性も遜色がなくなりつつある」との見解を示している(環境省検討会第3回提出資料)。

2 「石炭火力と脱炭素化の両立」の非現実性①IGCC
■経産省報告書は、IGCCなどで「石炭火力発電の有効利用と脱炭素化を矛盾なく両立させる」方針を示している。
■しかしIGCC,CCSなどの技術は、削減効果が小さい、高コスト、技術未確立など、実用性のあるものではない。
  「石炭火力と脱炭素化の両立」の非現実性②CCS
■ 経産省報告書はCCSを石炭火力脱炭素化技術として提唱
■しかし、かつてCCS開発を進めたEUは実証プロジェクトの失敗、自然エネルギーコストの低下を踏まえ、2050脱炭素戦略では、電力部門の削減対策としてCCS技術は一切活用を予定していない。
■ 世界全体でも、これまで火力発電所に適用されたCCSは小中規模の2件だけ。それも石油の増産を狙うEORプロジェクトであり、 排出削減対策としてのみ実施されたものではない。
■ 発電コストも高い上に、CCSをつけても排出ゼロにはならない。
■ 今から、火力発電所の削減対策としてCCSを進めるのは、全くの誤り。政府の長期戦略はCCSを火力発電対策として提唱しており、日本政府の気候変動対策の誤りの代表例である。
  CSS付き石炭火力が使えない5つの理由

3 東南アジアの自然エネルギービジネスの大きな可能性①開発ポテンシャル
■経産省報告書は、東南アジアでは気候条件のため、太陽光・風力発電の大規模導入が難しいとしている。
■世界には、日照量、風況で東南アジアより良い地域は存在するが、東南アジアの導入ポテンシャルは十分に大きい。
 太陽光だけでも、東南アジアの2040年電力需要をはるかに上回るポテンシャル
● 環境省検討会ファクト集やJ-Power提出資料(第2回)が引用している東南アジアの分析報告書*によると、石炭火力(50~80ドル/MWh)と比較してもコスト競争力のある太陽光導入ポテンシャルは8TW以上と試算される。
● この場合、設備利用率を10%と低く見積もっても、太陽光だけでIEAの公表政策シナリオ(SPS)が見込む東南アジアの2040年電力需要(2,345TWh)の3倍の発電量になる。
● タイ、ベトナムでは、LCOEが50~100ドル/MWhの太陽光ポテンシャルが、最も制限された技術シナリオでも、2017年の電力供給実績の4倍以上、ミャンマー、カンボジアでは100倍以上あると試算されている。
なお、環境省ファクト集やJ-Power提出資料は「再エネで需要を満たす場合、国土の6割を占める可能性もある。」「所要敷地面積も大きい。」としている。しかしこれらが引用しているデータは、150ドル/MWh以下の発電コストで太陽光と風力を設置できる面積を表したものであり、電力需要を満たすのに必要な面積ではない。実際、ミャンマーやカンボジアで引用データの面積に太陽光発電を設置した場合、それぞれの国の2017年供給量の550倍、595倍も発電されることになる。
 東南アジア各国には、風力、地熱など多様で豊富な自然エネルギー資源が存在
● 東南アジアの風力資源は太陽光よりは限定的。しかし、ベトナムとミャンマーでは現在の全電力供給量の数倍のポテンシャルがある。フィリッピン、タイにも適地がある。
● インドネシアとフィリピンは地熱発電のポテンシャルが非常に高く、ミャンマー、ラオス、カンボジア、マレーシアでは水力発電の大きな可能性がある。地域に応じた自然エネ開発を進めることで、東南アジアの自然エネルギーポテンシャルを最大限に活用。
● 東南アジア各国の風力の設備利用率についてブルームバーグNEFは18-32%と見積もっている。
● 欧米には劣るものの、フィリピンやベトナムでは導入量世界一の中国と大きく変わらない。
● ミャンマー、ベトナムなどでは、海沿いや内陸で平均風速6~7m/秒の地域があり、場所によっては30%の設備利用率を見込め、低コストの導入ポテンシャルが大きい。
●台風の影響が大きい台湾は対策の知見を含めたノウハウを獲得し、ここを拠点としてアジア地域に展開する競争が始まっている。日本企業も参入。
 ●日立は台湾で5.2 MW風力発電システム21基(109.2MW)の機器製造からO&Mを一括で受注(2018年4月)
 ●JERAは台湾の洋上風力フォルモサ1,2に続き「フェルモサ3」への参画を決めた。出力は約200万キロワットと世界最大級(2020年3月)
 東南アジアの自然エネルギービジネスの大きな可能性②太陽光・風力のコスト低下
● 経産省報告書は「石炭資源が豊富かつ安価なASEANでは、石炭火力が当面コスト競争力を有する」としている。
● 実際には現時点でも、最もコスト競争力のよい石炭と自然エネプロジェクトどうしで比較すると、すでに同等の水準。
● 太陽光、風力発電のコストは低下し続けており、石炭火力がコスト競争力を有するのは2025年頃まで。
● また、経産省が脱炭素化のために必要とするIGCCやCCSを導入すれば、コスト増加を招き、更に競争力を失う。
 東南アジアの自然エネルギービジネスの大きな可能性③国際送電網
● 経産省報告書は、欧州と異なり「ASEANは地理的状況等の課題もあり、国・地域ごとの独立性が高い系統」と記述。
● 実際にはインドシナ・マレー半島には国際送電網が存在。タイは欧州並みに電力の13%を国際連系線で調達。
● 島しょ部でも建設・計画が進行中。2035年に向けた更に大規模な構想も公表されている。
● IEAも「アセアンの国際送電網を拡大することは、経済的、系統運用的、環境的な利益をもたらす」と指摘。
● 多様な自然エネルギー資源を広域的に活用するアセアン国際送電網は脱炭素化に貢献。今後のビジネスとして大きな可能性。

(参考)太陽光・風力発電と石炭火力発電の正しいコスト比較とは
● 経産省報告書は「再エネ発電は系統側コストまで勘案する必要がある」とするが、太陽光・風力発電の系統接続に関するIEAの報告書では、「変動型自然エネ発電シェア45%までは、長期的には費用コストの大きな増加なしで実現できる」としている。
● 概ね10%を超えると追加投資(系統増強、予備力、蓄電池、デマンドレスポンス等)が必要とするIEA報告書もあるが、蓄電池コストは急速に低下している。系統増強、デマンドレスポンスも経済的なメリットが大きい。
● 経産省報告書が依拠する化石燃料発電が2040年にも5割を占めるIEAシナリオでは、エネルギー起源CO2が60%も増加し、パリ協定と整合しない。
● 輸出政策の検討では、石炭火力コストは二酸化炭素増加の環境コストを加えて比較すべき。

4 多くの企業・金融機関が既に石炭から自然エネビジネスへの転換を進めている
■環境省検討会に提出された各企業の資料からは、金融機関、商社は脱石炭の方向に舵を切っており、電力会社も、石炭火力の必要性は言いつつ東南アジアでは新規開発を予定していないことが明らかになった。
■ごく一部の企業以外、日本のビジネスは脱炭素への選択を行っている。
■ 経産省報告書の参考資料にも、自然エネルギー拡大と電力系統の柔軟性確保を、今後のビジネスチャンスとして取り組む多くの日本企業が紹介されている。

石炭火力輸出の中止と自然エネルギー支援への転換が必要な理由まとめ

1. 日本政府はパリ協定にコミットしており、「世界の脱炭素化を牽引するとの決意の下、高い志と脱炭素化のための取組を積極的に推進していく姿勢を力強く内外に示」すとしています(パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略)。したがって、政府のインフラ輸出戦略もパリ協定の実現に向けた戦略と整合的であることが必要です。
2. 経産省報告書は、IEAの公表政策シナリオに依拠して「2040年には、化石燃料発電の割合は相対的に減少するが、例えばアジア太平洋地域では依然5割を占めることが見込まれ」るとし、これを石炭火力支援を継続する理由としています。しかし、公表政策シナリオでは、2040年の東南アジアのエネルギー起源CO2排出量は2018年より60%も増加してしまい、パリ協定の目標と整合しません。公表政策シナリオを前提として日本のインフラ輸出戦略を決めるのでは、パリ協定に対する政府のコミットメントと矛盾してしまいます。
3. 石炭火力輸出を合理化する最大の根拠であった「日本の石炭火力発電効率は世界でトップ」という主張が根拠を失う一方で、東南アジアにおける自然エネルギー開発、送電網整備には、大きなビジネスチャンスが存在しています。
4. 環境省検討会においても、経産省報告書においても、多くの日本企業が自然エネルギー拡大とその関連ビジネスに積極的に乗り出していることが示されています。
5. 世界の気候変動対策に貢献するためにも、日本のビジネス展開の促進のためにも、「インフラ輸出戦略」を見直し、石炭火力輸出政策を完全に中止し、自然エネルギービジネス支援に転換すべき時です。

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※経済産業省は5月21日、昨今の社会情勢を踏まえた上で、電力・エネルギー分野のインフラシステム輸出を推進していくための取り組みの方向性を示した「インフラ海外展開懇談会」の中間取りまとめ参考資料を公表した。

 
 小泉環境大臣のリードの下で設置された環境省の「石炭火力発電輸出への公的支援に関する有識者ファクト検討会」(以下、ファクト検討会)が本日、結果をとりまとめ発表しました。同検討会は、政府が「パリ協定の目標達成に向け、石炭火力も含め世界の脱炭素化を進めるための取組については、石炭火力輸出支援の4要件の見直しについて、次期インフラシステム輸出戦略骨子に向け、関係省庁で議論をし結論を得る」としていることを受け、石炭火力輸出への公的支援に関するファクトを整理し、その方向性の検討を行ってきました。
 ファクト検討会は、分析レポートの中で、石炭火力発電の公的支援について、エネルギー構造をロックインする恐れや座礁資産化するリスクがあるため長期的な視点が必要だということ、また政府が閣議決定したパリ協定長期戦略の規定、すなわち脱炭素社会の実現を目指すことやパリ協定の長期目標と整合的なインフラ国際展開を進めるという内容に反するということを指摘し、「今後の公的支援を、ビジネスへの支援という観点にとどまることなく、相手国の脱炭素化という長期的な視点を併せ持ち、脱炭素社会への現実的かつ着実な移行に整合的な『脱炭素移行ソリューション』提供型の支援へと転換していく重要性について、認識を共有した」と整理しています。
 一方、経済産業省下におかれた「インフラ海外展開懇談会」の5月11日の中間取りまとめでは、石炭火力発電についてはこれまでの既定通りに、高効率石炭火力を選択せざるを得ない国には支援を続けるとの方向性が示されています。しかし、そのような現行の方針を続けることの課題が、今回のファクト検討会で示されたと言えます。
 石炭火力発電所の新規建設は、たとえ次世代型の高効率技術であってもパリ協定との整合性がないことが明らかにされている上、経済面でも石炭火力発電の抱えるリスク評価が求められるようになっていることが指摘されています。また、対策の一つとされる次世代技術CCS(二酸化炭素回収・貯留)は、コスト・技術等の観点から、パリ協定の目標に資する時間軸での実現可能性は見い出せません。さらに、受け入れ国では大気汚染の悪化などを含む環境社会配慮面での問題が指摘されるなか、石炭火力への反対運動が高まっており、世界のエネルギー情勢は刻々と変化しています。もはや、石炭火力発電について技術や国の情勢から支援の是非の議論をする段階ではありません。
 この先、6月にも閣議決定されると見込まれる次期インフラシステム輸出戦略骨子では、ファクト検討会で示された方向性を踏まえ、政府として、新規計画および現在進行中・建設中を含めたすべての石炭火力発電所の建設および石炭火力発電技術の輸出に対する公的支援を止めるという方針を決定し、それを速やかに実行に移すべきです。

「アジアで進む脱石炭火力の動き」(自然エネルギー財団) 7月21日

自然エネルギー財団のインフォメーション・パッケージ「アジアで進む脱石炭火力の動き」(2020年4月)を読みました。
  自然エネルギー財団202004_01

  資料の趣旨
自然エネルギー財団の「日本の石炭火力輸出政策5つの誤謬」は、石炭火力輸出を合理化してきた議論の誤りを明らかにした。本資料では、石炭輸出政策の再検討に際し、考慮の必要な3つの動きを提示する。
1 韓国・中国の変化の動き
2 東南アジア各国で石炭火力脱却の動き
3 IEA「持続可能シナリオ」現実化の動き
日本政府が、石炭火力輸出政策を中止し、自然エネルギー拡大支援へ日本の力を集中することを期待する。

目次
石炭火力からの脱却が始まったアジア
  ー 石炭火力輸出を中止し、自然エネルギー拡大支援へ日本の力を
自然エネルギー財団202004_02
 ■日中韓の石炭火力輸出に対する国際的な批判
  ■日中韓3国が、海外石炭火力融資の大半を占める。
韓国・中国の石炭火力輸出政策に変化の動きー特に韓国は日本よりも先に脱石炭に転換する可能性
  ■韓国:国内石炭火力の「劇的な削減」、石炭火力輸出政策の見直しが進む。
  ■中国:石炭火力輸出は鈍化傾向
東南アジア各国で石炭火力から脱却の動き
  ■ベトナム:石炭より自然エネルギー優先を明確化(2020年2月)
  ■インドネシア:「20年以上経過した石炭火力を自然エネルギーに建て替える」(2020年1月)
  ■バングラデシュ:供給力過剰が表面化、電源開発を見直し(2019年5月)
  ■マレーシアとカンボジアのオークションでも、太陽光発電が石炭火力より安価に(2019年、2020年)
東南アジアの電力の95%は自然エネルギーと天然ガスで供給:IEA「持続可能シナリオ」現実化の動き
  ■自然エネルギーは2040年までの電力需要増の全てを供給し、現在の石炭火力の約半分を代替する。
  ■東南アジア各国で、自然エネルギー価格の低下が急速に進んでいる。

日中韓の石炭火力輸出に対する国際的な批判
日中韓3国が、海外石炭火力融資の大半を占める。

韓国・中国の石炭火力輸出政策に変化の動き
  ■韓国:国内石炭火力の「劇的な削減」をめざす
  ■韓国:石炭火力輸出見直しが進む
    国民の反感+石炭火力ビジネス不振の現実が見直しを迫る
  ■中国:石炭火力輸出は減少の方向

2 東南アジア各国で石炭火力から脱却の動き
  ■ベトナム:石炭より自然エネルギー優先を明確化(2020年2月)
  ■インドネシア:20年以上経過した石炭火力を自然エネに建て替え
  ■バングラデシュ:供給力過剰が表面化、電源開発を見直し
  ■マレーシアとカンボジアのオークションでも、太陽光発電が石炭火力より安価に

3 東南アジアの持続可能な未来
  ■東南アジアの未来3つのシナリオ:日本はどの未来を支援するのか
  ■東南アジアの電力の95%は自然エネルギーと天然ガスで供給可能
  ■東南アジアでの自然エネルギー電力の価格低下と導入加速

石炭火力発電輸出への公的支援に関する有識者 ファクト検討会」提出資料
 「アジアで進む脱石炭火力の動き」まとめ

自然エネルギー財団202004_14
1 これまで日中韓3か国が東南アジアなど世界への石炭火力輸出政策の大半を行ってきたが、韓国では石炭推進政策の見直しが進んでいる。中国の石炭火力輸出プロジェクトも頓挫する事例が発生しており、輸出規模が減少している。
2 ベトナム、インドネシア、バングラデシュ、マレーシア、カンボジアなど、東南アジア各国で、自然エネルギーの急速な価格低下、電力供給力の過剰などにより、石炭火力からの脱却が始まっている。
3 東南アジアの電力需要は2040年までに倍増する見込みだが、IEAは「世界エネルギー見通し2019(WEO2019)」の中で、増加分の全てを自然エネルギーが満たし、天然ガス火力とともに電力の95%を供給する、パリ協定と整合する持続可能シナリオを提示している。
4 日本がパリ協定を踏まえ世界とアジアの気候変動対策に貢献するのであれば、石炭火力輸出政策を中止し、各国の自然エネルギー拡大の支援に集中すべき。
5 残存する東南アジア各国の石炭火力プロジェクトも見直し・中止が加速していく。「落穂ひろい」ビジネスではなく、未来につながるエネルギービジネスへの転換が必要。
※この資料は、環境省の「石炭火力発電輸出への公的支援に関する有識者ファクト検討会」(座長:高村ゆかりさん)第2回(2020年4月21日)に提出されたものです。ヒアリングでの委員からの質問と回答、検討会のまとめ「石炭火力発電輸出ファクト集2020」に関する分析レポート」、『石炭火力輸出ファクト集2020』(2020年5月)もご覧下さい。
  質疑回答(4月21日)
  資料3-4自然エネルギー財団提出資料及び質疑回答_1資料3-4自然エネルギー財団提出資料及び質疑回答_2資料3-4自然エネルギー財団提出資料及び質疑回答_3

「日本の石炭火力輸出政策5つの誤謬」(自然エネルギー財団) 7月18日

自然エネルギー財団のインフォメーション・パッケージ「日本の石炭火力輸出政策5つの誤謬」(2020年2月)を読みました。
   自然エネルギー財団202002_01

   資料集趣旨
日本の石炭火力政策のもう一つの問題点は、東南アジアなど海外への石炭火力輸出政策 を続けていることです。政府や一部の企業などは、「日本の最新石炭火力は、高効率であり、世界の温室効果ガス削減に貢献する」など、あれこれの弁明をしています。しかし、これらの言い訳は、世界では全く通用せず、国際世論の中で厳しい批判にさらされています。この資料集は、石炭輸出政策を正当化する議論の誤りを事実にもとづいて明らかにするものです。気候危機との戦いにとって決定的に重要な2030年への10年が始まる今年、今後のエネルギー政策の議論が、正確なデータ・資料をもとに進められるよう期待して、この資料を発表します。
目 次
■日本の石炭火力輸出に対する国際的な批判の高まり 
■石炭火力輸出正当化論の5つの誤謬
 自然エネルギー財団202002_03
 
現実1 「高効率な石炭火力発電(USC)」でもCO2削減はわずか数% ガス火力の2倍の排出量
 自然エネルギー財団202002_04
現実2 高効率石炭火力に更新しても削減できるのは2割弱 8割以上の排出を長期間、固定してしまう
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現実3 今や中国の石炭火力発電は技術力で日本と同等 日本の60倍以上の建設実績
 自然エネルギー財団202002_06
現実4 (1) 石炭火力の公的輸出実績は、インフラ輸出目標30兆円の1%程度
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現実4 (2) 高効率石炭火力の価格競争で中国に完敗 日本の公的輸出案件でも中国・韓国の技術を採用
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現実5 東南アジア諸国でも自然エネルギーが拡大中 石炭火力からの転換支援こそ、日本の役割
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 (参考資料) アジアの石炭火力に融資する邦銀と外銀の動向

※「メガバンクが石炭火力に融資停止 環境団体は「海外に比べ周回遅れ」」(東京新聞TOKYO Web 2020年6月27日 16時57分 )


 東日本大震災以降、原子力発電の稼働停止による電力不足を補うことなどを理由に掲げ、約2,100万kWもの石炭火力新増設計画が発表されました。これまでに、約700万kWの建設計画が中止またはLNGやバイオマス発電等へ計画変更されましたが、未だに建設中、または着工前の新増設プロジェクトが20基、1,100万kW以上もあります。
 これらのプロジェクトの多くは、80%から90%という高い設備利用率を想定していますが、電力広域的運営推進機関の推計によっても、2028年の全国平均の設備利用率は70%以下になります。本報告書では、電力需要と設備利用率の低下、自然エネルギー発電の増加など市場環境が変化するとともに、気候変動対策の強化が進む中で、これらの新増設プロジェクトが採算割れを引き起こし、座礁資産化するリスクが大きいことを明らかにしています。
 ドイツやオランダでは新設直後の石炭火力発電所が市場環境や政策環境の変化で、運転停止に追い込まれる事例も生まれています。自然エネルギー財団は、本報告書が今後の日本のエネルギー政策の転換と電力ビジネスの発展に寄与する一助となることを期待します。


「石炭火力2030フェーズアウトの道筋」提言レポート 7月4日

気候ネットワークの「石炭火力2030フェーズアウトの道筋」提言レポートを読みました。2018年11月に発表されたもので、日本の石炭火力発電を2030年までに段階的に縮小して全廃すべきであるという提言です。
  プレスリリース(2018年11月9日)

 世界の温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目指す「パリ協定」の達成のためには、エネルギー起源のCO2の排出をいち早く削減し、脱炭素に向かう必要があります。
既出の研究によれば、そのなかでも石炭火力発電は、新規建設を中止すべきことはもちろんのこと、既存の発電所も優先的に廃止し、全廃する必要があり、なかでも先進国は、2030年には全廃が必要だとされています。
これに応え、2030年までに石炭火力発電の全廃を目指すと宣言する世界の国々や地方自治体が増えており、脱石炭は、国際潮流となりつつあります。

 こうした状況を踏まえ、このたび気候ネットワークでは、パリ協定を締結した先進国である日本においても、石炭火力発電について、現在ある発電所の新設計画および建設工事を全て中止するとともに、既存の発電所を2030年までに全て廃止する必要があるという考えに基づき、提言レポート「石炭火力2030フェーズアウトの道筋」を発表しました。

 本レポートでは、「石炭火力2030年フェーズアウト計画」を示し、2018年4月時点で把握できる日本の既存の石炭火力発電所117基について、運転開始年が古く、また発電効率の低い発電所から段階的に2030年に向かって全て廃止していくスケジュールを具体的に提示しています。

 LNGを含む他の発電方式を含む設備容量や、再生可能エネルギー電力の普及、さらに省エネの進展を考慮すれば、電力供給を脅かすことなく、原発に依存しなくても、本計画は十分に実現可能です。このことを踏まえ、本レポートでは、政府に対し、本提言書で提示するような石炭火力発電の全廃への具体的な道筋を描き、2030年フェーズアウト計画を策定し、それを長期低排出発展戦略に位置付けるべきであると提言しています。
そして、フェーズアウト計画を土台に、パリ協定の目標と整合する水準まで温室効果ガス排出削減目標を引き上げ、再生可能エネルギーと省エネの取り組みを加速度的に進め、脱炭素社会を早期に実現するべきであると示しています。
 さらに、現状では既存の発電所の全ての情報や設備毎の設備利用率が公表されておらず、実態に即した検討や検証が困難なため、政府及び各事業者がデータや情報を公開することも要請しています。

  要旨
■石炭火力発電は、最もCO2を多く排出する発電方式である。温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目指す国際合意「パリ協定」の達成のためには、エネルギー部門をいち早く脱炭素化させる必要がある。既出の研究によれば、そのなかでも石炭火力発電は、新規建設を中止すべきことはもちろんのこと、既存の発電所も優先的に廃止し、全廃する必要があると指摘されている。日本の石炭火力発電についても、現在ある発電所の新設計画を全て中止するとともに、既存の発電所を2030年までに全て廃止するべきである。
■政府統計や各種公開資料等を用いて2018年4月時点で把握できる日本の既存の石炭火力発電所は117基あり、古いものは運転開始から40年以上経過した低効率の発電所も多数残っている。
■本レポートで示す「石炭火力2030年フェーズアウト計画」では、117基の既存の石炭火力発電所について、運転開始年が古く、また発電効率の低い発電所から段階的に2030年に向かって全て廃止していくスケジュールを提示している。本計画は、LNGを含む他の発電方式を含む設備容量や、再生可能エネルギー電力の普及、さらに省エネの進展を考慮すれば、原発に依存しなくても、電力供給を脅かすことなく十分に実現可能である。
■また本計画の中では、2012年以降に計画された50基の新規建設計画のうち、2018年4月現在で既に運転を開始している8基の発電所については既存の発電所に加え、計117基としている。そして、2030年にはそれら全て廃止する計画を提示した。2018年4月時点でまだ運転を開始していない発電所は、運転開始前に計画を中止すべきという考え方に基づき、本計画には加えていない。
■政府は、本レポートで提示するような全廃への具体的な道筋を描き、石炭火力2030年フェーズアウト計画を策定し、それを長期低炭素発展戦略に位置付けるべきである。そして、パリ協定の目標と整合的に温室効果ガス排出削減目標を引き上げ、再生可能エネルギーと省エネの取り組みを加速度的に進め、速やかな脱化石燃料を通じ、脱炭素社会を早期に実現するべきである。なお、現状では既存の発電所の全ての情報や設備毎の設備利用率が公表されておらず、実態に即した検討や検証が困難な状況にあるため、政府及び各事業者がデータや情報を公開することが求められる。
  本論
1.石炭火力発電を巡る国内状況
 (1)1980 年以降、増加し続けてきた石炭火力
 (2)東京電力福島第一原発事故以降の石炭火力発電建設計画の乱立
 (3)100基以上ある既存の石炭火力発電所
 (4)石炭火力発電所の設備容量総計
2.石炭火力フェーズアウト計画
 (1)2030 年石炭火力全廃の必要性
 既出の分析によれば、パリ協定の1.5~2℃の気温上昇抑制目標の達成には、エネルギー起源CO2の排出は2050年にはゼロにしなければならず、IPCCの1.5℃特別報告書では、1.5℃に気温上昇を抑制するためには、石炭火力発電はいかなるシナリオでもほぼ全廃するしかないことが示されている。すなわち、パリ協定と整合するためには、新規の石炭火力発電は1基たりとも建設できず、既存の発電所も削減し、先進国は、2030年には完全にフェーズアウトを実現しなければならない。そして、2030年フェーズアウトが必要であるのは、先進国である日本もまた同様である。こうした現実を踏まえ、パリ協定の採択以降、石炭火力発電の全廃と海外支援を停止する方針を打ち出す国や地方自治体、そして企業が続々と増えている。
 脱石炭に向けた国際潮流が高まる中、日本は、既存の発電所の廃止計画を明確にしていないばかりか、今なお、多数の新規建設が進んでおり、すさまじい規模で石炭火力設備を増強しようとしている。この事態は、パリ協定に反し、気候変動対策の世界の取り組みに真っ向から逆行するのみならず、建設地域の大気汚染を悪化させてしまうものである。また、パリ協定の下で脱炭素社会を目指す流れの中で、将来的に稼動停止せざるを得ない設備を過剰に抱えることにもなり、経済的に大きなリスクをもたらしかねない。
 他の国々とともに2030年の石炭火力全廃を目指すことは、パリ協定の締約国としての日本の責任であり、石炭火力発電所の新規の建設・運転中止、既存の前倒し廃止の方針転換が直ちに求められる。
 (2)石炭火力フェーズアウト計画

 (3)電力供給への影響
 4000万kWを超える石炭火力発電設備を今後10年余でゼロにすることは、政府が言うところの「ベースロード電源」を失うことになり、電力の安定供給への影響を懸念する声も当然あるだろう。しかし、以下に示すとおり、大きな悪影響なくフェーズアウトすることは十分可能である。
 まず、日本では、LNG火力発電所もこのところ次々に建設が進められており、設備が増強されている。2014年以降、新規建設または増強が進められている大型のLNG火力発電所は約900万kWある。また、電力広域的運営推進機関(OCCTO)の供給計画のとりまとめによれば、現行の発電事業者の供
給計画は全体に設備過剰とみられ、2027年のLNG火力の設備利用率は2017年の55.3%から43%にまで下がる見込みとなっている。まだ余力のあるLNG火力発電の設備利用率を60〜65%に引き上げ、OCCTOの2027年の見通し通りに再エネの発電量が27%となれば、石炭火力発電設備の減少分の大部分をカバーできる。再エネの発電量27%の達成は適切な政策を講じることによりさらに前倒しで導入されることも十分考えられる。
 また、OCCTOの最大電力及び需要電力量の見通しは、2018年~2027年の10年間、年平均増加率は±0%と横ばいとなっている。この数値は、節電や省エネの進展状況、ピークカット対策などの要因を加味して、前年の予測(年平均増加率0.3%)を下方修正したものであるが、それでも2018年と同水準の需要はあると見込んでいる。しかし、今後、節電や省エネはさらに進めていくことが重要であり、IoTの活用などその可能性も十分にある。年率1.5%の省エネを進めていけば、石炭火力設備の喪失分は、原発の発電電力量はゼロのままカバーできる。
 本計画は、毎年200万kWから多い年でも約400〜500万kWの電源を段階的に廃止していくものとなっており、前もって計画を立て、段階的に対策を取っていくことで、これらは十分に実現可能だと言えるだろう。
3.フェーズアウト計画の実施に向けて
 (1)現行の政策方針の速やかな見直しの必要性
 以上に示した石炭火力2030年フェーズアウト計画は、現行の政策のままでは実行できない。これを実施するために、以下の政策方針の見直しと個別政策対応が必要である。
■パリ協定に準じた2030年ゼロ方針の明確化(エネルギー基本計画・地球温暖化対策計画)
 現行政策では、石炭火力発電は原子力発電とともに「重要なベースロード電源」と位置付けられ、重視されているが、まずこの認識を根底から改めなければならない。出力調整のしにくい石炭・原発を土台にするのではなく、変動型電源を含め再生可能エネルギーを土台に柔軟に需給調整を図って安定供給を確保する電力システムを基本方針とするべきである。
■脱石炭フェーズアウトの実施のための立法(脱石炭火力法(仮称)の制定)
 脱石炭火力は明確な意思に基づき、毎年着実に実施していかなければならず、既存法のいずれの枠組みでも対応することが難しいため、毎年の廃止スケジュールを定めた新法を制定して対応するべきである。これは脱原発法と抱き合わせ、脱原発と脱石炭を同時に進めることができるだろう。
■温室効果ガス排出削減目標とエネルギーミックスの見直し(エネルギー基本計画・地球温暖化対策計画)
 2030年に26%の石炭火力の発電電力割合を見込んでいる現行のエネルギーミックス、さらにそれを根拠にした2030年の温室効果ガス排出削減目標である2030年26%削減(2013年度比)は、2030年石炭火力2030フェーズアウトの計画に沿って改定しなければならない。2030年の電源構成における石炭火力比率は当然のことながらゼロとし、石炭火力の段階的廃止を前提に、温室効果ガス排出削減目標は少なくとも40~50%に引き上げるべきである。
■カーボンプライシング(地球温暖化対策税/国内排出量取引制度)の導入
 需給の両面で、石炭火力の利用を抑制するインセンティブを付与するため、2019年にはカーボンプライシングの導入を実現するべきである。カーボンプライシングは、脱石炭火力法による規制スケジュールを前提に、より効率よく、より低炭素な発電技術への選択を促す。本計画の実施には、当面の間、LNGガス火力の設備利用率が上昇することになるが、その際にも、より効率のよい発電所からの運転を促す。さらに需要側の幅広い省エネの促進にも効果が見込まれる。
■発電効率基準・非化石電源目標の見直し(省エネ法・エネルギー供給構造高度化法)
 省エネ法に基づく発電効率基準や、エネルギー供給構造高度化法に基づく非化石電源比率の目標は、温室効果ガス排出削減目標やエネルギーミックスの改定に準じた改正をすることが求められる。
■省エネ政策・電力平準化の強化
 省エネは、石炭火力フェーズアウトを実現する鍵を握る。あらゆる主体の省エネを加速させるカーボンプライシングを導入することと同時に、発電所の効率向上や電力平準化のより幅広い実施のための政策、需要側管理の促進のための仕組みを複合的に実施することが重要である。
■再エネの大量導入
 再エネの主力電源化は政府が目指すところでもあり、そのために、再エネを優先給電すること、そして柔軟な電力融通と系統連系の強化することにより、再エネの大量導入を促進することが必要である。
■情報・データの把握と公表
 最大の排出部門である発電所からの排出について着実な削減を実施する上で不可欠な情報を公開するべきである。特に、発電設備毎の設備利用率、発電電力量、排出量(CO2やその他の大気汚染物質)については、毎時ベースで公表するべきである。
 (2)議論の開始を

附属表Ⅰ 2012年以降の石炭火力発電所の新規建設計画

附属表Ⅱ 既存発電所数(電力調査統計と本レポートの比較)

  

※日本政府は、2019年4月23日に「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」(仮称)の案を発表しました。これについて書かれた江守正多さんの【気候変動】パリ協定に基づく日本の成長戦略の「本気度」(2019年5月6日)から、以下は引用です。
石炭低減の本気度

 この戦略の発表に先立って、有識者懇談会の座長案にあった「石炭火力は長期的に全廃する」という方針が、産業界の反対により「依存度を可能な限り引き下げる」といった表現に調整されたという報道があった

 筆者は率直に申し上げて、この調整は意味がわからない。期限を切らずに「長期的に」というだけならば、脱炭素を目指す以上、石炭火力はいつか全廃するに決まっているからだ。正確にいえば、CCS(CO2 Capture & Storage)技術を用いてCO2を地中に封じ込めるならば、その分は石炭火力(や他の火力)を使っても脱炭素と矛盾しないので、「CCSの無い石炭火力は長期的に全廃する」でよいのではないかと思う。

 おそらく、「長期的な全廃」を明示することが短中期的な石炭火力利用にも足かせになることを嫌がる人たちがいるということだろう。エネルギー価格の上昇が国際競争力に影響をもたらす製造業、高効率で「クリーンな」石炭火力の研究開発に注力してきたエネルギー産業、そして、新規の石炭火力を計画したり着工したりしている事業者などがそのように考えるのはよく理解できる。

 しかし、期限を切らない「長期的な全廃」も書き込めないほど腰が引けているようでは、この戦略の「脱炭素ビジョン」の本気度に、残念ながら疑いを差しはさまざるをえない。

日本社会が石炭と手を切るのは、経済的、技術的な問題にとどまらず、政治的、文化的な問題でもあり、想像以上に難しいことなのかもしれない。カナダのアルバータ州では、2030年までの脱石炭に先立ち、大手電力会社に補償金を支払っているそうだ。ちなみに、奴隷制が廃止された際も、奴隷所有者に補償があったという。日本の戦略は、そこまでの覚悟をもって石炭と手を切ろうという決断には程遠いものだ。

 なお、先ほど触れた「CCS付き石炭火力」を筆者は積極的に押しているわけではない。戦略の本文でも述べられているように、CCSは(石油増進回収をともなう場合を除き)単独では経済メリットが無い。経済メリットが生じるためには、「炭素に価格が付く」必要があるのだ。一方で、経団連は炭素税などのカーボンプライシング(炭素に価格が付くこと)に一貫して反対している。これはCCSの推進と矛盾するのではないだろうか。

 カーボンプライシングについての議論は経済学者に譲るが、今年1月に米国で27人のノーベル賞受賞者などを含む3500人以上の経済学者が、炭素税に支持を表明していることに留意しておきたい。


江守正多「コロナと気候変動、その共通点と相違点」③ 6月26日

みんな電力株式会社が運営するウェブサイト『ENECT(エネクト)』の「ひと(PEOPLE INTERVIEW))」に掲載されている江守正多さんと上田マリノさんの対話「コロナと気候変動、その共通点と相違点」(全3回)。第3回は2020年4月22日公開されました。
「これまで長く気候変動問題に関わってきた経験から、闇雲に不特定多数に問題を啓蒙するよりも、強い意志を持って動く3.5%の人々の可能性に辿り着かれたという江守先生。そういった思考の根底には、仮にコロナ騒動が世界を席巻しようが、その間だけ期せずして数%のCO2排出抑制が実現しようが、時間が限られている中、地球が危機に瀕しているという厳然たる事実はそのままそこにあるということがあります。再生可能エネルギーへの転換は、純粋にポジティブに社会をアップデートするもの。そしてリーマンショックでも実際に減った世界のCO2排出量は2%以下だったのが、今回のコロナ禍では年内で約8%下がると試算されています[世界エネ需要、20年は過去最大の減少幅に CO2排出も=IEA (ロイター[Reuters]2020年4月30日)]。ただそれは、世界各地でこれだけ経済を止めた結果であって、それが復活した時、社会はいったいどうなるか。問題は、ではそれをどう理解して、私たちがそこに関わることで、地球の破綻をどう抑止できるのか。」
 コロナで緊急事態宣言になったわけですが、それは非常にショッキングなことでした。でも同時に一方で、気候変動に関してもしばらく前から「非常事態宣言」が出ています。多くの海外の自治体、イギリスの議会まで含めて、日本でもいくつかの自治体が「気候非常事態」ということを宣言していました。
 国会議員も超党派で、「気候非常事態宣言を目指す議員連盟」ができて[2020年2月20日]、動き始めた矢先でした。問題は、その気候とコロナの「非常事態」はどう似ていて、何が違うのか?(笑)
 まずコロナの場合は、接触削減で医療システムを守ることを最優先課題としています。そのために「非常事態なので、お店は休んで、飲食店も20時まで」といった強硬措置がなされました。さらに財源のある東京のような自治体からは協力金も出て、「補償金を払うから、申し訳ないけど止めて」ということが起きています。
 気候についてそれと似ていることがあるかということで、石炭火力のことを考えました。今、日本の石炭火力の発電所新設問題が世界から批判され、それがようやく国内でも人々に少しずつ知られるようになってきました。この件は、僕は補償金を払ってでも止めるべきではないかと思います。
 いままでの常識で、しかも気候が非常事態でなければ、[石炭火力]投資を始めちゃって止めると大損だから「じゃあ建てて」となります。でも今は「非常事態なので、申し訳ないけど止めてください」と。ただ「その代わり、国が一部補償しますよ」と。
 これが一つ、非常事態下にあることの、わかりやすい例なんじゃないかと思うんです。
 ドイツは2038年までの脱石炭を決めて、石炭業界に補償金を支払うそうです。「これで変わってください」、「産業転換してください」ということです。そういうのが、本当なら気候非常事態を受けて起きなければいけないことなんだと思います。
 日本は今コロナの緊急事態をきっかけとして、社会において「ある課題を最優先させるということはどういうこと」か、そしてそれが「気候変動の場合、何をしなければいけないのか」ということを学ばなければなりません。それは我慢でなくて、「システムを変える判断において気候そのものの優先順位が上がる」という、そういうことなんじゃないかと思っています。
 僕は、気候変動に興味を持つためには、まず「対策=我慢」みたいなイメージを払拭することが大切な気がしています。
 ある国際的な社会調査で、世界平均で約2/3の人が「気候変動対策は生活の質を向上させる機会」と認識しているという結果があります。対して、日本人は約2/3が「生活の質に対する脅威である」と答えています。日本人はなぜか、気候変動対策は「我慢」だし、「コストがかかる」し、「便利さや快適さを諦めなければいけない」と捉えているんです。何よりまず、そのイメージを変えなくちゃいけないと思っています。
 それはもっとポジティブで、社会をアップデートするものであり、しかも日本がもし脱化石燃料ということを最終的に達成できた暁には、化石燃料の輸入に払ってきたお金が全部国内でまわるようになる。そういった大きな経済的なメリットもあるわけです。ただ、もちろん途中で投資は必要で、その時に誰が得する損するといった問題は出てきます。
 でもこれは最終的には、しごく前向きな「社会のアップデートである」と。
 そういう「我慢じゃない」という認識を広めることで、潜在的に気候変動に本質的な関心が持てるような方々に、もっとこの話に入ってきてもらいやすくなるということが、起きないといけない気がしています。
 今はまだ、気候変動の問題に関心がある人でも、「自分はすごく我慢します。だから皆さんも我慢しなさい」という感じの方々がいらっしゃるわけです。
 僕は環境省の管轄下にある研究所にいるわけですが、環境省はいわゆる「国民運動」という、10数年前に京都議定書が始まってクールビズが流行りだした頃から、環境省が普及啓発をして、国民一人一人に「できることで協力して欲しい」というメッセージを出してきて今にいたります
 それがある意味でうまくいってしまった。だから僕たちは、環境問題とは「一人一人が生活の中で気をつけること」という風に理解してしまっているのかもしれません。
 しかし本当は、そこには環境省が管轄していない、大きな「エネルギーの問題」があります。そこは経産省の管轄です。環境省は「気候変動対策として、皆さんエネルギーのチョイスをしましょう」ということを言わないんです。
 だから、学校での教育も、「こまめに電気を消しましょう」という話に終始しがちでした。それはそれでいいんですが、それだけで終わってしまうことがこれまで多かったんじゃないかなと思います。
上田 私はずっと、環境省が出してるCOOL CHOICEに「電気は再エネを選びましょう」というのがあればいいと思っていたし、できる時は提案もしてきました。それが今、「あ、だからないんだ」ってわかりました(笑)。
江守 だって、本来それは一番の大事なチョイスですよね。
 あとは、本当は「政治のチョイス」ってことを言いたいんですが、それは役所は当然そんなこと言えないので(笑)。だから僕も、それは個人の立場で発言する時に言うようにしています。

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江守正多「コロナと気候変動、その共通点と相違点」② 6月26日

みんな電力株式会社が運営するウェブサイト『ENECT(エネクト)』の「ひと(PEOPLE INTERVIEW))」に掲載されている江守正多さんと上田マリノさんの対話「コロナと気候変動、その共通点と相違点」(全3回)。第2回は2020年4月22日公開されました。
「コロナ対策である「接触削減」や「ステイホーム」の根底にあるのは、「我慢」という姿勢。しかし気候変動対策の本質はそうではないはず。CO2排出をより抑制することの理解で大切なのは、それがとても「前向きな社会システムのアップデート」にあること。ではそれには、広くあらゆる人に問題について語りかけることが有効なのか、または狙いを定め、ピンポイントの啓蒙活動が必要か。」以下は江守さんの発言部分から引用(アンダーラインは引用者)。
 最近BBCやガーディアンで紹介された論文[FUTURE By David Robson 14th May 2019]で、「社会の3.5%の人が参加すると、ムーヴメントは成功する」、「社会を変えることができる」というものがあります。
 逆に言うと問題は、「どうやって本質的な関心を持つ人を社会の中で3.5%つくるか」ということなのです。みんながちょっとずつ関心を持ち、ちょっとずつ省エネしたりプラスチックを使わないようにしても、この問題は本質的に解決されません。
 「本質的な関心を持つ人」というのは、例えば「気候変動が本当に、自分や大切な人の生命に関わるような脅威である」とすごく思った人。あるいは、「気候変動は将来世代や途上国の人々を、その人たちが全然CO2を出していないのにすごく苦しめるから、倫理的に許せない」と強く思った人。または、「気候変動を何とかするため、脱炭素化のためなら人生を賭けてその仕事をしよう」と思った人という、とにかく強烈なコミットメントを気候変動に持てる人口が3.5%になれば、社会は変わるんじゃないかと思うんです。
 例えばアメリカを見ていると、環境に特にアンテナを立てて強い発信をしているレオナルド・ディカプリオみたいな人がいます。またはイギリスでも、エクスティンクション・リベリオン[Extinction Rebellion、略称:XR]のデモで著名人が逮捕されたり、欧米ではそういうことがあります。でもそれは日本にはない。政治家も、そこまで強い関心を持っている方というのは、いるかどうかもわからない。
 環境NGOにそういう人はいますが、そもそも社会にあまり存在を知られていないし、知られていたとしても「自分とは関係のない、極端な考えの人たち」という風に思われてしまうんじゃないかということで、日本ではあまり広がっていません。
 去年はスウェーデンのグレタさんが広く知られましたが、学生のムーヴメントが起きて、世界で約700万人がグローバル・ストライキに参加したといいます。そのうちドイツでは百数十万人が参加したとのことで、それはドイツ人口の2%に近くて、3.5%も視野に入ってきます。
 対して日本では、参加者は5000人でした。全然足りてない(笑)。
 ですから3.5%の人たちがもし関心を持つと、政治システムに働きかけるでしょうし、経済システムに対しても然りで、そのことで制度やシステムが変わるでしょう。そうすると残りの96.5%の人たちは、別にそんなことに関心を持たなくても、仕組みが変わっちゃったので、もう勝手にC02を減らすしかなくなります。
 すべての電力会社が再エネ100%になれば、再エネを使う以外はなくなります。車も電気自動車しか売っていなければそれを買うことになるし、家を建てようと思ってZEH[ゼロ・エネルギー・ハウス]しかなければ、ZEHを建てることになります。
 そして、そういう社会システムにするために積極的に後押しをする、「本質的な興味を持った人」がある程度必要ということです。最近僕は、じゃあ「そこを目指すべきじゃないか」ということを考えています。
気候変動の話は単に「クリーンなエネルギーを使おう」でもなく、本質的な変化のためには、むしろそれとは関係のない。
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