岩殿満喫クラブ 岩殿 Day by Day

市民の森保全クラブ Think Holistically, Conduct Eco-friendly Actions Locally

植生管理

田中健太『上田の身近な自然の魅力~高原・ため池・山城の草原再生~』 2月28日

2月23日に開催されたSDGsフォーラムin信州上田「みんなで捉えろ!気候変動と生物多様性」(主催:上田市、共催:上田市環境衛生協議会、筑波大学山岳科学センター、長野県環境保全研究所)の午後の部の田中健太さん(筑波大学山岳科学センター)の講演「上田の身近な自然の魅力~高原・ため池・山城の草原再生~」です。上田市の塩田平のため池群は「日本のため池百選」(農水省HP)に選定されています。埼玉県内では比企丘陵地域が日本農業遺産「比企丘陵の天水を利用した谷津沼農業システム」(農水省HP)に認定されました。入山沼もGooglemapでは「入山沼(日本農業遺産)」としてマークされています。ため池の価値や維持管理、堰堤の植生、斜面崩壊について考えながら聴講しました。
上田の自然の魅力_41

身近な自然:人の利用・手入れ(放牧・採草・野焼き・刈払)によってできる自然
草原の歴史 菅平高原・峰の原高原 山城 農業用ため池
上田の自然の魅力_45上田の自然の魅力_46上田の自然の魅力_47

歴史の凄さ 古い草原の環境価値
上田の自然の魅力_48上田の自然の魅力_56上田の自然の魅力_62
 生物多様性 歴史が古いほど植物がゆたか
 遺伝資源 歴史の古い草原にある未知で膨大な遺伝資源

斜面防災 森林  vs 草原 どちらの斜面が崩れやすいか?
上田の自然の魅力_65上田の自然の魅力_66

 茅場の斜面は崩れないという経験則
 森林の脆弱性 根返り:根こそぎ倒れ地面がめくれる
 樹木は斜面を不安定化(河川法、1964年)
  植樹木の主根が堤防内に入らぬよう、安定性を損なうことがないよう十分留意すること

山城の土手の森林化、根返りの不安
上田の自然の魅力_67

全国で進むため池の防災工事
上田の自然の魅力_68
 東日本大震災や西日本豪雨で、多数の農業用ため池が決壊
 (能登半島地震でも、約4割の池で亀裂・崩壊等)
 ため池防災特措法(2020~30年)
  46都道府県の6160池で防災工事が計画(NHK調べ)
 土地改良法・指針による環境配慮が、ため池土手は見落とされていた
  堤体植生の掘削、張芝による植生改変

植生配慮工法の先行例
上田の自然の魅力_69
 表土戻し工法
 表土からの植生回復
 希少植物の移植活動
 課題 掘削しない植生保存帯の設置

歴史の凄さと歴史の怖さ
上田の自然の魅力_70
 失ったら取り戻せない(不可逆) 
 失った時に何か起きかねない

2018 水と巡る信州上田地域の旅 ~塩田ため池群~ 6:01
 

塩田まちづくり協議会
 ●みんなでため池の植物を守る 2023.12.3
塩田にたくさんあるため池。「日本のため池百選」にも選定されているのですが、塩田平土地改良区に登録されているため池の数は41。貯水量を合計すると300万トンにもなります。一般家庭が一年間に使う水の量が平均300トンだそうで、そうすると1万軒のお宅が使う年間使用量を賄える勘定に。そんなたくさんあるため池ですが、数年前から耐震工事が行われています。東日本大震災で福島県のため池が決壊し、大きな被害が出たことを契機に、全国的にため池の耐震工事が進められています。塩田平でも、ため池の耐震調査を行い、対策が必要な所で順次工事が行われています。工事で何をするのかと言うと、基本は堤を厚くすること。決壊しにくくするためです。堤を厚くするということは、工事する時はそこを削ったりするわけです。そうすると、そこに生えている植物はなくなってしまいます。工事が終わって、もしかしたら、何年か先にはまた生えてくるかもしれませんが、もう二度と見られなくなる可能性は高いですよね。……工事が始まる前に堤の植物を別のところに移植して、工事が終わったら堤に埋め戻す。これまで、工事が行われたため池で行われてきたのですが、今年後期は、塩吹池と浅間池、そして不動池で希少植物を移植しました。塩吹池と浅間池は、堤体に生えている植物を掘り取って別の場所に移す作業を行い、不動池は池の工事が完了したので、舌喰池のそばに移植してあった植物を堤体に戻す作業を行いました。筑波大学の田中准教授の指導を受けながら、地元自治会、水利組合が中心となり地元住民が協力して作業を行い、作業は無事に終わりました。……(F森)
 ●塩田のため池を写真で観る フォトギャラリーに40のため池写真 2021.4.28
 ●塩田のため池をドローンから視る ①砂原池 ②山田池 ③塩野池

ため池堰堤の造成後年数とともに希少植物種数が増えるか?ー83地点での検証ー
  日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨ESJ70 Abstract
人間の草原利用が減ることで半自然草原が近年急速に減少し、多くの草原性生物が絶滅の危機に瀕している。そのため生物多様性が高い草原を特定して保全する必要がある。先行研究では、継続年数が長い草原で植物の多様性が高いことが分かっているが、植物の多様性が増えるのに草原の継続年数がどれくらい必要なのかは分かっていなかった。そこで、様々な継続年数の草原が多数得られるため池堰堤を対象に、草原の継続年数が植物の多様性に与える効果を明らかにすることを本研究の目的とした。
長野県上田市塩田平周辺で、ため池堰堤の造成から1~450年が経過した計73か所と、対照区として、10~70年前に造成された公園等10か所を対象とした。2020~2022年のいずれかの年の5~10月に3回、各調査地に出現する維管束植物種を約300~8000㎡の範囲(広域調査)と、1×20 mトランセクト(トランセクト調査)で調べた。
広域調査では、計553種の植物種が出現し、スズサイコ・ノジトラノオ・キキョウなどの環境省指定絶滅危惧種といずれかの都道府県でレッドリストに記載されている希少種が、合計220種出現し、そのうち148種はため池堰堤でのみ見つかった。トランセクト調査では、草原の継続年数が増えるほど外来種数が減少し、約300年で最小値に漸近した。在来普通種数と草原性希少種数は継続年数によって増加し、それぞれ約100年、200年で最大値に漸近した。草原の継続年数によって種組成が異なり、マツバウンランのような年数の経過とともに減少する種群と、ツリガネニンジンやクサボケのような年数の経過とともに蓄積して歴史の古い草原の指標となる種群が認められた。
以上より、200年以上継続している草原は保全優先度が特に高く、ポスト2020年目標として国際的な注目を集めている民間保全地(OECM)の有力な候補になりうる。現在、ため池の耐震工事による植生破壊が全国的に進んでいるため、貴重な植生に配慮した工事が望まれる。
ため池に生える希少植物について学ぶ 小学校で授業  上田
 NHK『信州 NEWS WEB』 2023年12月11日 動画(1:47)
景観の美しさから、国の「ため池百選」に選ばれている上田市の塩田平のため池などに生えている希少な植物について学ぶ授業が、地元の小学校で行われました。雨が少ない上田市の塩田平では、江戸時代から多くのため池がつくられ、その景観の美しさから「塩田平のため池群」として農林水産省の「ため池百選」に選ばれています。11日は、ため池の土手などに生えている希少な植物について学ぶ授業が地元の塩田西小学校で行われ、5年生が参加しました。授業では、植物の研究をしている筑波大学山岳科学センターの田中健太准教授が、上田市内には、およそ100か所のため池があることや、学校の近くにある山田池には、「スズサイコ」など複数の希少な植物が生えていると説明しました。また、全国的にため池をめぐっては、決壊などを防ぐため防災工事が進められていますが、田中准教授は「工事を進めながらもため池の希少な植物を守っていくことが大切だ」と呼びかけていました。授業を受けた児童は「今にもなくなりそうな希少な植物が身近にあることを知りました。自然を守りたいと思いました」と話していました。

1. 管理作業の内容
 ① 水位の調整
 ② 水入れ(パイプライン方式、水入れ役方式)
 ③ 共同作業(草刈りや水路清掃)
 ④ 設備の点検・整備
 ⑤ お金の管理
 (1) 日常的な会計 人件費(草刈りや水入れに関わる人件費)
    水利費(水田への配水や集落から排水するために必要な水路の管理にかかる経費)
    軽微な改修費、電気代、など
 (2) 非日常的な会計
    大規模な改修工事に伴う手続きや費用の徴収
    ため池が売却された際の売却金の管理、用途の決定
 ⑥ その他(イベントの実施など)
2.  管理作業の主体
 水利組織:水位の調整やお金の管理、施設の点検・整備、,水入れなど
 水利組織に加えて,農家や住民が参加:草刈りや水路清掃
 住民・市民:イベント参加
3. まとめ


  
 
 ●狩野 仁慈・小原 悠太「長野県上田市塩田地域におけるため池群の維持管理と存続」
   筑波大学大学院生命環境科学研究科『地域研究年報』43、2021年
本研究の目的は、長野県上田市塩田地域におけるため池を事例とし、その維持管理と多面的利用の特徴を明らかにすることを通じて、ため池群として存続させるための望ましい維持管理の在り方を検討することである。産業構造の変化に伴う第一次産業の衰退や、地域の水利事情の改善により、農業用水としてのため池の需要は縮小している。それに伴い、地域において一様な管理体制は機能しなくなり、それぞれのため池に合わせた維持管理を行うことが望まれる。その際に重要となるのが、ため池群としての維持管理である。具体的には、人的資源が豊富な自治会やその他の民間団体、そして、今まで直接管理に携わることのなかった行政が、維持管理の難しくなったため池の管理者と連携・協働を通じて、その存続を担うような体制である。このような体制を築くことができれば、ため池群としての長期的な存続が期待できる。


牛久自然観察の森見学 10月24日

茨城県牛久市結束町【けっそくちょう】にある牛久自然観察の森を見学しました。牛久自然観察の森は、環境庁の「身近な自然活用地域整備事業」によって、1984 年から全国 10 ヶ所開設された自然観察の森のひとつです。1990年に開園しました。開園時は牛久市の直営でしたが、2006年度からは、自然観察の森(21.5ha)と「みどりの保全区」(7.4ha)はNPO 法人うしく里山の会が指定管理しています。
「みどりの保全区」は、自然観察の森と一体化した森林景観の保全のために、開発、樹木の伐採など各種行為を制限する区域です。


7705牛久自然観察の森園内マップ_1

PA180002PA180013


PA180017PA180021

PA180018PA180022

PA180033PA180036

神宮翔真・武正憲・佐方啓介・伊藤太一「牛久自然観察の森を事例とした農用林から公園緑地化した林野における管理の課題」(『ランドスケープ研究』81巻5号、2018年) 市民の森と入山谷津での市民の森保全クラブ、岩殿満喫クラブの活動に示唆するところが多い論文です。別稿を準備中。
…結束集落は、天正期(1573~1592 年)に成立したとされる。集落の面積は約 100ha であり、北方に位置する小野川、東西の谷津を他集落との境界とする。人口は、明治期より 70~90 人程度で推移している 。林野は台地の斜面に位置し、緩やかな傾斜の平地林である。本研究では、農用林として利用があった時代を 1960 年代までとし、その中でも 1950 年前後を「農用林時代」と定義し分析する。1960 年代には、牛久市の農村集落においてプロパンガスと化学肥料の普及が進んでおり 、その後、農用林の管理は放棄されたと考えられる。…また、得られる文献資料や、集落古老の記憶が 1940年代以降に限られることに加え、事例地を含めた現牛久市周辺の土地利用が都市的なものへと変化するのは 1950 年代以降と報告されている。従って、1950 年前後の状況に絞って調査を実施する。自然観察の森は 1990 年から開園しているが、開園から 20 数年が経ち、維持管理の作業行程や作業頻度が固定化した 2013 年前後を「公園緑地時代」と定義し分析する。(2.研究対象の概要から引用)

みどりの保全区
PA180005PA180007

ビートルズトレイル
PA180057

PA180062PA180063

  ニュースチャンネル・いばキラTV(215年4月18日に茨城放送で放送)
  


アカスジキンカメムシ
アカスジキンカメムシ(キンカメムシ科)の終齢(5齢)幼虫です。この姿で落葉や樹皮の下で越冬。白い部分は成長と共に拡がります。
PA180027



ホコリタケ(ハラタケ科)
PA180037PA180040
別名:タヌキノチャブクロ

帰途、つくば市まつの里にある森林総合研究所第1樹木園(3.28㏊)を見学しました。正門、本館の廻りに、「亜熱帯林」、「暖帯林」、「温帯林」、「亜寒帯林」など日本の各森林帯ごとに主な樹種が集められています。
PA180065

牛久自然観察の森ではナラ枯れが発生しています。ここではミズナラが枯れていました。
PA180070PA180066PA180069

------------------------------------------------------------

電子タグで「森のカタログ」(黒田慶子) 10月6日

大阪府立北野高校の同窓会(六稜同窓会)が毎月主催している生涯学習講座六稜トークリレー第202回、黒田慶子さんの「森林を巡る数々の誤解と本当のSDGs」(2022年6月11日ライブ配信 YouTube 1:44:47)の「SDGs 資源循環型社会につながる森林管理 実践編」のパートです。
7715

SDGs 資源循環型社会につながる森林管理 実践編
●長期計画:3つのステップ
7563
 1.目的にあった伐採…茂りすぎて暗い林は持続しない
 2.伐採したら資源を使う…売れる・使えると管理が進む
 3.再生させて次世代に渡す…安全管理と定期的な伐採

●里山資源の「今風」循環とは
  燃料ではなくカスケード利用とアップサイクル
    そのためには在庫管理が必要→森のカタログ
7564
・森林資源で儲ける→合わせ技→自発的管理
 1)樹木のカスケード利用→企業のマッチング
   小枝・葉:セルロースなどの成分利用
   枝・曲がり:チップ・燃料、キノコ生産
     捨てないで利用=Upcycle
      ダイセル:里山工房の構想 剪定枝を工業材料に
   小径部分:家具の小型部材・木工品 街路樹から家具
   通直部木材 板→家具・内装材 できるだけ高く売る
 2)グリーンツーリズムなどの無形の利用
 3)野生獣類…ジビエ普及
   木材販売だけでなく、様々な資源利用が可能

●データ電子化で資産の把握
7566
・資源把握と流通の革新
 1)電子タグで「森のカタログ」…伐る前に商談
  ・電子タグ供給 株)Andeco
 2)今後の技術改革:測量・計測の自動化…立木位置図、材積、樹種

●立木からデジタル管理で、売り手に有利な流通
7572

タグ付け目的① 国産木材の流通に必要な情報整理
7573

7574

●目的② 研究者・行政向けの学術的調査
7576

●無形の資源活用とは:グリーンツーリズム
7577

●野生獣類も森林資源
7579

●もっと自由な発想で
7580

●ステップ3 森林を再生させる…これができていない
7582
 放置しない。今後どんな林に誘導する?
 結局は「人」…誰がやるの?  

カリモク家具プレスリリース「カリモク家具 国産材活用をPR」(2021.09.22)
木工事例調査関西③(SHARE WOODS山崎正夫さん前篇)関西④(SHARE WOODS山崎正夫さん後篇)(『岐阜県立森林アカデミー』HP2021年12月15日記事)
Biomass Value Chain株式会社ダイセル) YouTube 5:24
 

Biomass Value Chain株式会社ダイセル) YouTube 1:33
 

トレーサビリティ(Traceability)
トレース(Trace:追跡)とアビリティ(Ability:能力)を組み合わせた造語で、「追跡可能性」と訳されます。その製品がいつ、どこで、だれによって作られたのかを明らかにするために、原材料の調達から生産、消費、廃棄まで追跡可能な状態にすること。

木材のトレーサビリティにNFCタグ(『NFC Tags』2022年2月16日記事 )

NFC(Near Field Communication)
約10cmの近距離範囲を「かざす」動作だけでデータ通信を可能にする近距離無線通信規格です。Suica、PASMO、Edyなどに採用される非接触型ICカードとの互換性を持ち、NFCを搭載したスマートフォン、デジタルカメラ、パソコン、家庭用電化製品など多岐にわたる製品に対応、双方向のデータ通信を実現します。通信を行う機器間において複雑な設定を必要とせず、電子マネー決済、画像データ転送、情報のやり取りをより簡単に行える、今最も注目されている通信技術です。(『NFC Tags』サイトから)

黒田慶子・早川慶朗・山崎正夫・松岡達郎・東若菜・谷内廉「NFCタグによる立木カタログ化で里山広葉樹材の活用を展開する(『第133回日本森林学会大会』発表データベース、2022年3月)
日本では広葉樹材の大半を輸入に頼ってきたが、価格高騰や流通の減少により、家具製造や住宅関連企業では国内での調達を進めている。従来の調達地は北海道や本州の山地で自然に近い林が多かったが、農村集落付近の里山二次林(旧薪炭林・農用林)でも、ナラ類やケヤキ、ヤマザクラ、カエデ類などの有用広葉樹が大径化し、木材として十分利用できる。ナラ枯れの被害拡大や森林荒廃を止めるためにも、里山資源の積極的利用と次世代林育成を急ぐ必要があるが、里山整備という事業では木材利用の視点が無く、流通させる方法が無かった。そこで、林内の立木に耐候性の電子タグ(NFC)をつけ、樹種、直径、通直部などのデータをスマートフォンアプリで記録し、立木のデジタルカタログ化を進めた。データは送信可能な場所からサーバに記録する。伐採時には樹幹基部にタグを残し、次世代の萌芽育成に利用する。玉切り段階で丸太にタグを追加し、製材過程でタグの追加またはQRコードに交換しつつ、トレーサビリティを保障する。2021年には北海道や兵庫県内で実証実験を行い、タグ付け、伐採、製材、販売へと一通りの作業を行って、里山材の流通に有用であることを確認した。

黒田慶子「里山広葉樹の木材資源化で循環型社会を実現する」(早生植林材研究会シンポ) 10月5日

2021年9月7日、産官学(日本木材加工技術協会関西支部早生植林材研究会・林野庁近畿中国森林管理局・平林会)共催で早生植林材研究会シンポジウムが開催されました。このシンポジウムは「生物多様性と里山の管理・活用」と題し、生物多様性と里山の管理や活用の可能性について考えるため4名の講師が発表し、森林の炭素循環から里山広葉材を資源として考える場合の問題点、活用の試みなどが紹介されました。
スクリーンショット (5460)
このシンポジウムはYouTubeのmaffchannelで見られます。


黒田慶子さんの発表「里山広葉樹の木材資源化で循環型社会を実現する」(0:33:07 ~  1:07:29)です。発表資料からスライドを紹介します。9月30日の記事にある2021年8月28日に開催された『第4回神戸大学SDGsフォーラム「地域循環・自然共生社会のリデザイン~グリーン成長のための産官学連携を考える~』(YouTube 3:58:05)黒田発表「森林分野における産学連携・社会実装の方向性」(0:44:03~)と合わせて利用してください。
プロジェクトとしてのアプローチ
a) 問題解決への期待
広葉樹の板材価格は全般的に針葉樹材より高価で、里山材が妥当な価格で販売できると森林所有者(農村集落)の管理意識が高まり、国土の持続的管理につながる。しかし、「どこに、どんな材が、どの程度あるか」という情報さえ無い。そこに焦点を定めて、森林産業として地域の収入を増やし、持続的管理によって循環型社会を実現させたい。
b) 新たな仕組み
里山材が流通しない理由は、所有者が資源の価値を知らないことが大きい。そこで、「有利に売る」ために、立木段階や出材時に資源カタログ化(電子記録)し、売手が優位に立てる仕組みを作っていく。クラウドサーバー上のデータ継承により、里山木材のトレーサビリティが確立できる。消費者には産地情報と木材を合わせて販売する。
c) 技術開発
国産材を購入したい業者は増えているが、必要量が入手できない。市場での対面販売、素材業者等による「符号・記憶」依存というアナログ的管理のためである。電子タグ、QRコード、クラウドサーバ利用による電子的管理に移行させると、立木段階から資源を把握して販売できる。また、山から購入社までのトレーサビリティを保証できる。この電子カタログ化技術はほぼ完成し、社会実装を開始したところである。
里山広葉樹林の「今風」循環を考える
●早生樹(黒田)_08
 ①所有者の意欲、②関連産業との連携、③支援システム

●きっかけは神戸大学農学部のエノキの大木
●見えてきた課題:森から家具までに多くの工程
●国産資源の活用と流通の課題
 ●早生樹(黒田)_10
●実は使える、里山の多様な広葉樹
●常識の変革~新たな動き
 ●早生樹(黒田)_11
●SDGs…資源循環型社会につながる森林管理とは
  植林イベント× 林床整備(単なる地面の掃除)×
  樹木を資源化しながらじぞくさせる3つのステップ
  1.目的にあった伐採
  2.伐採したら資源を使う
  3.再生させて次世代に渡す
●里山管理方法の選択…ボランティアに丸投げはあり得ない
 ●早生樹(黒田)_12
●1.伐る環境譲与税を活用した材の利用
●1.伐る:現場のアバウトな判断を変える
●2.使う:家具用材への利用は有望
●2.使う:立木からデジタル管理で売り手有利な流通
 ●早生樹(黒田)_14.Ajpg
 ●産学協同から社会実装へ
 ●早生樹(黒田)_14B
 ●デジタル記録で加速する「循環型社会」化とSDGs
 ●街や農園にも使える樹種が…
 ●もっと自由な発想で
●3.林を再生させる…できていない
  SDGsの「持続的は発展・循環」を意識
   補助金では伐採後に放置されやすい
   ・次世代樹木を育てる植栽も
   ・行政・地元で情報管理子の世代に渡す
  問題点
   ・補助金(税金)で整備すると伐採後に放置
   ・広葉樹林は勝手に再生するという勘違い
  検討が必要なこと
   ・環境整備が目標では資源にならない=得にならない
   ・売れる広葉樹の林に誘導したい
     ①自然生えから育林、②植林
  次世代が使うための森林管理
   →持続的で健康な森林に育つ
    =循環型社会への転換
  結局は「人」…誰がやるの?
 ●デジタルカタログから始まる変革
 ●早生樹(黒田)_17A
 ●無形の資源化 グリーンツーリズム
 ●早生樹(黒田)_17B

青木ノ入の除草 8月25日

修理が終わったスパイダーモアを軽トラに載せて青木ノ入に来たら、須田さんが一足先に畑の除草をすませていました。ありがとうございます。
P8250035P8250036P8250041

学びの道沿いを除草しました。道沿いはシバで緑化を目指して草刈り回数を増やしたいです。
P8250043P8250047P8250048

岩殿入山谷津の植生調査 第13回 5月30日

二宮さん、坂田さん、小野さんで岩殿F地区の植物調査枠と入山谷津の植物調査をしました。
P5300025P5300014

休憩時に話題になっていた「群集」と「群落」。『改訂版ビオトープ管理士資格試験 公式テキスト』22頁(日本生態系協会、2016年)では、「群集と群落:動物も植物も、個体が集まると個体群のレベルになる。個体群が集まると動物は動物群、植物は群落となる。単に「群集」という場合は、一般に、動物と植物を合わせた生物群集を指す。植物は動物に比べ移動が難しいため、その地域の気候や地質の特性に影響を受け、固有の群落を形成する。それを餌やすみかとする動物は、その影響を受けて特色ある動物群集となる場合が多い。」(22頁)。「植物調査:植物は生態系の基礎であり、環境把握のためには欠かせない調査項目です。目的によって様々な手法がありますが、一般的には、何が生育しているかを調べる植物調査(フロラ調査)と、植物群落の組成を記載するための植生調査(植物群落組成調査)などがあります。」(176頁)。同書4.1 ビオトープ計画のために (166~178頁)のまとめとして、「ビオトープを計画するには、その地域の生物相や自然環境に関する知識、特に代表的な生物についての基本的な知見(種名、生態)が必要となる。生物調査には、目的に応じた様々な種類と手法がある。調査結果(生物種リストなど)を理解するには、調査手法を理解している必要がある。種種の生物の生息状況だけでなく、生物環境の全体像を理解する。そのためにはGISなどが有効である。」(178頁)とあります。
古典的な書物に、沼田真編『図説 植物生態学』(朝倉書店、1969年)、沼田真編『植物生態 野外観察の方法』(築地書館、1962年、1966年改訂再版、増補改訂第3版)があります。これまでの岩殿入山谷津の植物調査(フロラ調査)で植物種のリストはほぼできていると思っていますが、現在すすめている植物調査枠の群落調査において座右の書として活用していきたいと考えています。

   沼田真編『植物生態 野外観察の方法』目次
    はしがき
    改訂再版にさいして
    第1部 野外観察の方法
    野外観察のねらい
    1 校庭内外の雑草の生活
    2 田畑の雑草
    3 帰化植物の生活
    4 日本の草原
    5 森や林のつくり
    6 竹林のつくり
    7 山を調べる
    8 水辺の植物の生活
    9 湿原を調べる
    10 河原の植物
    11 海岸の植物
    12 磯の潮だまり(タイドプール)
    13 植物季節を調べる
    14 環境の調べ方
    15 生活型を調べる
    第2部 指導計画と生態教材
    1 中学校の生態教材
    2 高校の生態教材
    3 観察のための学校園
    4 生物クラブの活動とその方法
    あとがき
    索引


キショウブが咲く 4月15日

岩殿I地区でキショウブが早くも咲いていました。明日、刈り取ります。
IMG_6650IMG_6646

IMG_6651IMG_6652





生きものの隠れ場 12月5日

青木の入の谷津から出てきたキジに出くわしたら、慌てて畑の傍の藪に隠れました。秋にはセイタカアワダチソウ、チガヤ、ワレモコウが目立っていた場所でそろそろ刈ろうかなと思っていたところです。ここはきれいに刈り払いしますが、生きものの隠れ場、待避場も残しておいてやりたいですね。
PC050012PC050010
近づくと九十九川の方向に逃げていきました。




赤城自然園 11月14日

埼玉県民の日。関越自動車道赤城I.Cで降りて、久しぶりに赤城自然園に行きました。
PB140049

PB140015PB140026PB140025

PB140017PB140023

PB140020PB140021

PB140032PB140018

岩殿の紅葉始まる(11月13日)
PB130008PB130011

岩殿入山谷津の植物調査 第29回 2月5日

二宮さん、坂田さん、渡部さんでフィールド全体を回り、微地形などの確認をしました。午後は、CAFE BLUEPIECEで、2020年度発行を予定している岩殿入山谷津植物調査目録について、今後の取り組み、段取り等を相談しました。
P2050005P2050003

岩殿F地区のニワトコ(スイカズラ科)の全周が剥皮されていました。シカの採食によるものと思われます。入山谷津でこれまでシカを見たことはありませんが、愛弘園の東側道路付近で数年前に目撃しています。
P2050001

埼玉県が2016年にまとめた「埼玉県第二種特定鳥獣管理計画(ニホンジカ)の概要」(文献1)によれば、埼玉県内でもシカの生息域拡大、生息頭数増加により食害が拡大しています。
(1) 生息域は、昭和50年代までは秩父地域と飯能市(旧名栗村)に限られていたが、平成の始め頃から急激に拡大し、現在では、外秩父山地やその周辺の丘陵部でも生息が確認されている。
(2) 生息域の66.7%の地域では生息密度が0.5頭/㎢以上、特に秩父山地の都県境から山麓にかけての17.2%の地域では5頭/㎢以上、最大13.52頭/㎢と推定された。
(3) 平成元年度の捕獲頭数は99頭であったが、平成27年度は2,532頭と約25倍に増加している。
(4) 草本類や低木類など林床植生が衰退又は消失した区域が急速に拡大し、土砂の流出や崩壊、森林生態系への影響が懸念されている。(文献1)
また、崎尾均・久保満佐子・川西基博・比嘉基紀「秩父山地におけるニホンジカの採食が林床植生に与える影響」(文献2)(『日緑工誌』39(2)、2013年)では、
秩父山地においてはニホンジカの採食による森林への様々な影響が見られる。埼玉県秩父市中津川の渓畔林の林床植生の植被率は、1983年には90%程度であったが2004年にはわずか3%にまで減少した。各種の個体数・被度も、ハシリドコロなど一部の有毒な植物を除いては全体的に減少した。調査地の周辺を含む秩父山地では2000年以降にニホンジカの個体数の増加が報告されていることからも、本調査地の林床植生の減少は2000年以降のニホンジカの急激な個体数密度の増加と関係していると考えられる。また、草丈が低い植物や生育期間の短い植物が比較的残存しており、植物種の生活史や形態によってもシカの採食の影響は異なる傾向が確認された。(文献2)
とあり、シカの採食による林床植生への深刻な影響とともに、採食されやすいものとされにくい植物があることが示唆されています。

橋本佳延・藤木大介「ニホンジカの採食植物・不嗜好性植物リスト」(文献3)(『人と自然Humans and Nature 』25、2014年)によれば、シカの採食植物リストにニワトコをあげている文献は『哺乳動物学雑誌』6(1975年)に掲載されている丸山直樹・遠竹行俊・片井信之「表日光に生息するシカの食性の季節性」と御厨正治「放飼下におけるホンシュウジカの食性」(文献4)です。
採食習性については、最初からこれら全部の種類に亘って摂取することはなく、最も嗜好度が高いと考えられる数種類、すなわち,ウワバミソウ・シシウド・ハナイカダ・ニワトコ等にまず集中的に採食の跡が認められた。これらの美味な部分(新葉・新条を含む末梢部)を食い尽くすにつれて、次第に採食範囲が広がり、ヤマジノホトトギス・ヤマグワ・アカソ・ミズヒキ・カラマツソウ・チダケサシ・キンミズヒキ・ダイコンソウ・ヤマブキ・キイチゴ類・ミズキ・クサギ・キバナアキギリ・ノブキ・アザミ類等に食痕が及ぶ。フタリシズカ・サンショウ・ミツバウツギ・トチバニンジン等は、脱出直前の調査の際にようやく食痕を認めた程度であるから、これらについては試食的に採食されたものであろう。樹皮が食害された樹種はヤマグワ・ウワミズザクラ・ツリバナ・オオモミジ・ウリハダカエデ・ミヤマホウソ・ミズキ・ヤマウルシ(きわめて微量)の8種だけであった。構内に生育するその他の大多数の樹種については、樹皮に食痕は認められなかったので,モミ・ヒノキ等有用樹種を含む多種類の樹皮が鹿に食害されるのは、従来の諸説同様,多汁質の草本類が欠乏する冬季間に特に集中的な現象であろうと考えられる。また,オオイトスゲや、アズマネザサ等のカヤツリグサ科及びイネ科植物の大部分に食痕を認めなかった(ミヤコザサを除く)ので、これらも主に冬季問だけの食餌植物と見做し得るようである。構内に自生する有毒植物のうち、採食された種類はキッネノボタンとツリフネソウだけであり、タケニグサ・ムラサキケマン・レンゲツツジには食痕はなかった。また、帰化植物ではエゾノギシギシやヒメジョオンは採食されたが、ハルジョオンやハキダメギクには食痕を認めなかった。以上のほか、構内に普通に自生しながら、食餌植物として利用されなかった主な種類は次のとおりであった。スギナ・イヌシダ・コウヤワラビ・マムシグサ・コバギボウシ・ヤマハタザオ・イヌガラシ・ツタウルシ・キヅタ・オオチドメ・ヤブジラミ・オカトラノオ・クリンソウ・カモメヅル・ナギナタコウジュ・カキドオシ・ウツボグサ・オオバコ・ヤエムグラ・ヘクソカズラ・アマチャヅル(文献4)
また、シカの不嗜好性植物リストにニワトコをあげている文献として、高槻成紀「植物および群落に及ぼすシカの影響」(『日本生態学会誌』39、1989年)と安藤行雄「シカの被害が分かる図鑑」(日本森林林業振興会熊本支部、2012年)があり、ニワトコは採食植物、不嗜好性植物の両方のリストに掲載されています。ニワトコはガマズミ、ウツギなどとともにスイカズラ科の植物ですが、スイカズラ科19種での分布は採食16種、不嗜好1種、両判定2種となっています。文献3で取り挙げられている植物143科900種のうち、114科646種がシカの採食植物です。

※採食植物と判定した文献が多かった上位10種(文献3)
採食植物と判定した文献が多かった上位10種

昨年10月22日に東松山市で開催された第8回関東森林学会大会で森田厚さんの「堂平鳥獣保護区を中心としたニホンジカの行動圏について」を聴講しましたが、東松山市域でのシカの行動はどうなっているのでしょうか、気になります。


※『神奈川県 シカ不嗜好性植物図鑑』(神奈川県自然環境保全センター、2016年)


生田緑地植生保全エリア見学 8月12日

神奈川県川崎市の生田緑地に行きました。川崎市が所有し東急グループが運営している川﨑国際生田緑地ゴルフ場、藤子・F・不二雄ミュージアム、生田緑地ばら苑、川﨑市立日本民家園、かわさき宙【そら】と緑の科学館、岡本太郎美術館等の施設があり、計画区域を含めて179.3ヘクタールという広大な面積の総合公園です。
雑木林の植生管理、更新がどのように行われているのか? 8月6日の都立小宮公園に続いて、今日は生田緑地の植生保全エリアを見学しました。植生保全エリアはNPO法人かわさき自然調査団植生管理をしている区域です。
P8120046P8120039P8120077

ikuta-conservation-mapmap-ikuta-A06

A06萌芽更新地区の目標植生、植生管理方法(HP)
A06-1a地区
 目標:伝統的な里山管理を観察できる雑木林(クヌギ・コナラ林)
 管理:萌芽更新
A06-1b地区
 目標:明るい雑木林(クヌギ・コナラ林)
 管理:間伐により林床を明るくしてクヌギ、コナラを育成
A06-2地区
 目標:暗い混交林
 管理:当面、植生管理をせずに放置
A06-3地区
 目標:明るい雑木林(クヌギ・コナラ林)
 管理:下草刈り、選択的に樹木育成
1998年から現在まで20年間の植生管理の経過は活動日毎に写真付きでしっかりと記録されていますので各地区のページからリンクをたどってご覧ください。例えば「2018年7月7日の萌芽林保護のためのアズマネザサ刈り」。

P8120070P8120071

P8120073P8120076
林内に立ち入らないで園路から雑木林を観察するのは下草が生い繁っている夏場は不適です。小宮公園も含めて、冬季に再訪したいと思います。


都立小宮公園 8月6日

2月18日、環境基本計画市民推進委員会主催「環境学習会2018」の第2回学習会『市民参加による里山林の保全・管理を考える』で講師の島田和則さんに、雑木林の皆伐更新を実施している公園として紹介された都立小宮公園を見学しました。
UTR不動産さんのブログ『八王子見て歩記』の「八王子の公園第10話小宮公園」と、2010年10月26日に実施されたNPO法人かわさき自然調査団生田緑地植生管理協議会市民部会里山倶楽部の都立小宮公園での萌芽更新の勉強会の記録をあらかじめ読んででかけました。

P8060036P8060045

P8060030P8060031

P8060034P8060035

P8060038P8060043

P8060047P8060050P8060053

P8060057P8060059P8060061

P8060064P8060065P8060066

小宮公園については、東京都建設局『小宮公園マネジメントプラン - 小宮公園の管理運営、整備等の取組方針- 』が2015年3月に出されています。公園の指定管理者は2016年度に公益財団法人東京都公園協会から西武・多摩部の公園パートナーズ(西武造園株式会社/西武緑化管理株式会社/NPO法人 NPO birth/一般社団法人防災教育普及協会)に替わっています。

※追加資料:「小面積皆伐更新が行われてきた都立小宮公園における雑木林の更新の現状」(『関東森林研究』66-2、2015年)

QRコード
QRコード
岩殿満喫クラブ・市民の森保全クラブからのお知らせ
    記事検索
カテゴリ別アーカイブ
月別アーカイブ