市民の森保全クラブ
【背景・目的・これまでの活動】
市民の森保全クラブは、2012年に結成された市民ボランティア団体。高坂地区岩殿にある市民の森で、生きもの豊かな里山づくり、里山と暮らす知恵、里山文化、良好な自然環境を次世代に継承することを目的にした里山保全活動を実施。市民の森32ヘクタール中2ヘクタールのコナラ林・アカマツ林を作業エリアとして維持・管理活動をしている。
コナラ林では16年度から「市民の森のコナラ林若がえりプロジェクト」を、アカマツ林では19年度から「アカマツ林育成プロジェクト」を実施してきたが、昨年度後半、市民の森内でカシノナガキクイムシによるナラ枯れがまん延する事態となった(コナラのフラス木は判明しているだけで139本、その内、立ち枯れした枯死木は33本)。枯死木中16本は市民の森保全クラブが伐倒・玉切り。その後、業者の手で10本は年度内に搬出・チップ化、残りの6本は5月に現場でくん蒸処理される予定。
【今年度の活動目標】
市民の森でのナラ枯れまん延を防止・ナラ枯れ防除を最優先活動目標とする。
年度前半はナラ枯れ枯死木の発生を抑えるための予防活動。穿孔が始まったコナラの樹幹にカシナガトラップとクリアファイルトラップを設置してカシナガの大量捕殺を目指す(マスアタック防止のための成虫捕殺)。年度後半はコナラ枯死木内のカシナガの幼虫や成虫を殺すための駆除作業を実施。市民の森を管理する文化まちづくり公社、市役所各課、市民団体と連携して予防・駆除作業を実施し、ナラ枯れ後の市民の森づくりについても検討を進める。
【今年度の活動概要・スケジュール等】
4月~5月:伐採残材の片付け、枯損木伐採
5月~10月:トラップによる流れナラ枯れ予防作業。併行して下刈り、林床管理
11月~3月:コナラ枯死木伐採によるカシナガ駆除作業
10月:産業・環境フェスタ参加
11月:文化まちづくり公社10周年イベント参加
12月:落葉掃き&焼き芋イベント(岩殿満喫クラブと共催、2回)
3月:キノコの駒打ち体験(岩殿満喫クラブと共催)






しいたけなどの原木栽培をする時、無菌状態で原木栽培をするわけではありませんので、雑菌の発生は、よくあります。タネを植え付けた原木に菌糸が早くまん延するような環境を人工的に作ってやり、早く菌糸をまん延させれば、こうした雑菌の付着を少なくすることが出来ます。
接種作業を11~2月頃までに行い、接種する種駒の量を通常の2~3倍(80~100個/本)にすると、菌のまん延が早くなるため、害菌の侵入を防いだり、接種後、最初の秋や翌年の春に発生し易くなります。
雑菌が原木内に侵入し繁殖してしまったら、それだけを処理することは不可能です。
■雑菌(ゴムタケ、クロコブタケ、ダイダイタケ、カワラタケ、カイガラタケ)が高温多湿のために発生している場合1 風通しをよくする。木を粗く組む、隙間をつくる。木を高く組む。周囲を囲っているものがあれば外す。2 遮光する(上部をヨシズなどで遮光する)。3 雨よけする(木に直接雨が当たらないように板状のものを上部に乗せる)。■雑菌(ヌルデタケ、胴枯菌、スエヒロタケ)が過乾燥のため発生している場合1 湿度を高くする(木も密に組む。木を低く組む。水を多めにかける)。2 遮光する(上部をヨシズなどで遮光し明るさを抑える)。




~ GRCSとポータラップによるリギング技術研修 ~
(『Tree Climbing Japan』HP 2010年6月15日記事)
はじめに
1.カシノナガキクイムシとは
……雌が飛翔して来ると雄は孔から出て来て交尾し、その後に雌と一緒に孔の中に戻って、雌が持参したラファエレア菌(アンブロシア菌)を培養して酵母を食料とします。
……カシノナガキクイムシは「養菌性キクイムシ」と呼ばれ、樹木の木部に孔道(トンネル)を掘って、孔道壁面で栽培して酵母を摂食します。3.カシノナガキクイムシの生態
カシノナガキクイムシが培養する菌はラファエレア菌(Raffaelea またはナラ菌)と呼ばれ、雌が運ぶこの菌が繁殖すると辺材部で通水機能が低下して樹木が枯死します。
……昆虫の多くは卵を産む親と、卵から孵った子供が同居することは殆どありません。しかしキクイムシは人間と同様に一夫一妻制や一夫多妻制などの結婚生活を営み、子育てをします。
この世代交代(繁殖)に成功した集団が加害した樹木は、夏に水分不足で枯損します。仮にカシノナガキクイムシに侵されても、繁殖に成功しなければその樹木は枯れません。このカシノナガキクイムシに対する予防および駆除手法として1) ケルスケットなど殺菌剤を樹幹注入する方法、2) 殺虫剤と粘着剤の混合液を樹幹に散布する方法、3) ビニールシートで幹を皮膜する方法、4) NCSくん蒸剤処理、5) 伐倒粉砕処理などがあります。
枯死した個体からは翌年の6~7月に大量のカシノナガキクイムシが脱出して、周辺の樹木を侵します。胸高直径30cm、樹高15mのミズナラの場合、1本の枯死木から2万匹の成虫が脱出し、これらが10本の枯死木を発生させると考えられています。
森林内や伐採した現場にカシノナガキクイムシしか存在しないのであれば、殺菌剤注入や殺虫剤散布、NCSくん蒸剤処理有効かもしれません。しかし一方的に薬剤処理したり、環境に良くない処理をしたりするよりも、効果が少なくても少しでもカシノナガキクイムシの生息密度を低下させることが重要と考えます。
そこで、カシノナガキクイムシが幼虫である状態の時、枯死木を伐採して薪状に割材することにより、ラファエレア菌の増殖を抑えて幼虫が死んで行くと同時に、周辺のアリ(蟻)類による食餌行動による駆除を実施しました。
なお、この方法であれば、割材した木材を「薪材」として有効利用することが出来ます。
おわりに
……また、カシノナガキクイムシ被害木は、伐採してNCS燻蒸剤処理するのが一般的ですが、今回の伐倒木はすべて割材して薪に利用しました。キクイムシがサナギになる前に、割材すると木材が乾燥して幼虫のある程度が死んでしまいます。また、割材して積み上げると、どこからともなく何種類かのアリ(蟻)が寄ってきて幼虫を補食してしまいます。
割材はカシノナガキクイムシの完全防除には至りませんが、環境に対する影響は低く、かつ薪材として有効利用で木など、それなりの利点があります。
自然界ではキクイムシは衰弱木を早く枯死させたり、腐りにくい材部を分解してくれたり、物質循環を促進するという重要な役割を担っているのですが、単に密度が高くなり過ぎたのが問題のようにも考えます。
循環型社会が提唱される昨今、カシノナガキクイムシだけが悪者のように捉えられるような考え方では、新しい時代は見えてこない気(木)がします。(副代表 川尻秀樹)
※GRCS(グッドリギングコントロールシステム)
グレッグ・グッドによって開発されたグッド・リギング・コントロール・システム(GRCS)。重量物を安全確実に吊り下ろすプロ用のツール。
(『Tree Climbing Japan』HP 2010年1月15日記事)
1.カシノナガキクイムシで木が枯れる経緯
カシノナガキクイムシはコウチュウ目ナガキクイムシ科の昆虫で、成虫の体長は4~5mmの円筒状、雌の前胸背板には共生菌を貯蔵する器官(マイカンギア)である円形の小孔があります。
この昆虫は本州、四国、九州、沖縄に分布しており、一夫一妻性で親が子どもの世話をする家族生活を営んでいます。繁殖期を迎えた雄成虫は午前中に繁殖場所から脱出して飛翔し、繁殖場所にふさわしい樹木を見つけて幹に穴(孔)を開けて、集合フェロモンを発散します。
孔を開けた時に発生する木屑と集合フェロモンに誘引された雄が次々に飛来して集合フェロモンを発散するため、多くの雌雄成虫が飛来して幹に多数の孔を掘る集中加害が引き起こされます。集中加害はマスアタックと呼ばれ、樹木の抵抗力(樹液などを出す能力)を回避する方法です。カシノナガキクイムシは同時に多数の成虫がマスアタックするために、気温20℃以上で日差しがある二条件が揃う午前中に飛翔します。
雌が飛翔して来ると雄は孔から出て来て交尾し、その後に雌と一緒に孔の中に戻って、雌が持参したラファエレア菌(アンブロシア菌)を培養するため、木部の水分移動が阻害されて木が枯れるのです。
3.キクイムシの食べ物(ラファエレア菌)
キクイムシは名前の通り、樹木の木材部分や内樹皮を食べる種類が多いのですが、他にはドングリなどの種子を食べる種類や菌類を培養して餌にする種類がいます。 カシノナガキクイムシは菌類を食べる養菌性キクイムシと呼ばれ、樹木の奥深くに孔道(トンネル)を掘って、孔道壁面で栽培して摂食します。 1836年にキクイムシが白い物を食べていることを発見した研究者は、この食べ物をアンブロシア(ギリシャ神話に登場する不老不死をもたらす神の食べ物)に例えたため、養菌性キクイムシが食べる菌類はアンブロシア菌と総称されています。4.カシノナガキクイムシの生態
カシノナガキクイムシが培養する菌はラファエレア菌(Raffaelea またはナラ菌)と呼ばれ、雌が運ぶこの菌が繁殖すると辺材部で通水機能が低下して樹木が枯死します。培養するため、木部の水分移動が阻害されて木が枯れるのです。
5.対策はあるのか?
1)万能な殺菌剤は無い。ラファエレア菌の殺菌は極めて困難である。
2)ラファエレア菌を運ぶカシノナガキクイムシも樹幹内にいて殺虫は難しい。
・薬剤注入による防除方法
1.生き残っている樹木にドリルで穿孔し、NCSくん蒸剤を2ml注入してカシノナガキクイムシとラファエレア菌を殺す。
2.加害木を伐倒してNCSくん蒸剤処理するかチップ工場等へ搬出破砕処理、残った伐根部分はNCSくん蒸剤処理する。
・その他の防除方法
1.着剤と殺虫剤の混合剤を樹幹に散布して駆除する。
2.シイタケ菌など、きのこ菌とラファエレア菌と拮抗させてカシノナガキクイムシを殺虫する。
3.ベンレートなど殺菌剤を樹幹注入して菌類の繁殖を抑制する。
以上の方法などがとられていますが、現時点で画期的な手法はありません。またキクイムシは衰弱木を早く枯死させたり、腐りにくい材部を分解してくれたり、物質循環を促進するという重要な役割を担っているとも言えます。
循環型社会が提唱される昨今、カシノナガキクイムシだけが悪者のように捉えられるような考え方では、混乱の時代は乗り切れないような気(木)がします。
ポット苗による緑化は活着率が高く、草本との競争力も高いので優秀な植栽工法の1つであることは確かである。しかしながら、土壌の安定性に貢献することを求める場合や風などが強い場所では問題が発生する可能性がある。自然に戻すことを目的とするならば、時間がかかっても種子を播種すべきである。場所と目的に応じて慎重な選択と対応が必要であろう。
ドングリは、親から大量の栄養分をもらい、まずは、無駄とも思えるほどのすばらしい根を発達させる。しかし、直根を発達させるのは、三年までで、それ以降は、主に横に広がる根を発達させるようである。移植された樹木は、横に広がった、栄養分を吸収する根のみを発達させ、もはやその木のあるべき姿の根を形成できないと思われる。樹木の場合も、「三歳児の魂、百まで」なのである。
みどりの日には、各地で植樹祭などのイベントが行われる。しかし、樹木の側から見れば、移植ではなく、種をまいて育ててほしいと思っているに違いない。特に災害に対して強い抵抗性を要求される斜面の樹林化では、種をまくか、三年までの幼い苗を植栽すべきである。樹木の遺伝子には、移植されることを想定した対応策は準備されていない。本来の森は、「植樹」ではなく、地元の種から発芽した樹木からのの「育林」が望ましい。
落ち葉はゴミではありません!
掃いて捨てるものではなく、土地を育て、生命を育む「宝物」です。
このプロジェクトをきっかけに、土中環境を育む菌糸のネットワークに欠かせない落ち葉の役割、そして葉を落とす木々をあたたかく見守るまなざしを、多くの方と共有できればうれしいです!

さらに、3月に実施する春の里山でキノコのこま打ち体験を3月12日(土曜日)、雨天の場合は26日(土曜日)に実施とすることを決めました。コナラ原木(90㎝)100本にシイタケの駒を打ちます。参加費は大人1人600円、子どもは無料です。
