岩殿D地区
学びの道と岩殿D地区・I地区下段との間の広い法面の裾刈りを須田さんがました。このエリアは年2、3回の草刈をして、低木まじりのチガヤ優先の草地を目指します。
ニワウルシ(シンジュ、ニガキ科)の萌芽木も再度伐採しました。
※シンジュについては、23年6月5日記事、22年11月14日記事参照。
今日は学びの道の斜面下を岩殿D地区に下る土水路(東縁水路)の掘り下げをしました。
学びの道斜面のクワの大木の下のカラーコーンまでできました。
I地区下段に降った雨水をどこから入山沼用水に流すのかは昨年からの課題です。6月3日にB地区上段に漏れ出しているのを見つけました。
岩殿B地区の草刈り。金属刃とナイロンコードで刈りました。
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
※スイバ(タデ科)にいたアヤモクメキリガ(ヤガ科)の幼虫(岩殿D地区)岩殿D地区の下段とA地区の田んぼの間の西向き斜面にクサボケが咲いています。ススキの両側に昨年よりも多く咲いていました。E地区上段との間の南向き斜面のクサボケの花はこれからです。斜面の草刈りの時期が影響しているのかもしれません。昨年、西向き斜面は12月29日に刈っています。
西向き斜面
青木ノ入※クサボケ(バラ科)『在来野草による緑化ハンドブック~身近な自然の植生修復』(朝倉書店、2020年)214頁生存年限:落葉低木生育期間:4~10月花期:3~4月生育地:日当たりの良い土手、野草地など。生育環境:日当たりと風通しの良い場所。日当たりの良い場所でなければ開花しない。刈り取り頻度が高くてもよく再生する。砂質の土壌を好むが、丈夫で特に土質を選ばずに育つ。
ワレモコウは入山沼下の管理地の処々に育っています。
A地区の池とB地区の下の田んぼとの間、冬にきれいに刈り取りました。みどりが鮮やかです。
※ワレモコウ(バラ科)『在来野草による緑化ハンドブック~身近な自然の植生修復』朝倉書店、2020年) 220頁生存年限:多年草生育期間:4~10月花期:7~9月生育地:野草地、土手など、時に群生する。ススキクラス標徴種初夏までの刈り取りであれば残った茎から再生・開花する。年間2回の刈り取りでも再生可能。
岩殿D地区中段と学びの道の間の斜面で刈り残っていたアズマネザサを刈り、下の土水路の泥上げをしました。
萌芽しているコナラ
風が吹いていましたが、入山沼下は午前中は陽当たりがよいので、快適に作業できます(鳩山アメダスの日最高気温9.6℃、日最大風速9.2m/s。12:00では気温8.7℃、風速6.8m/s。昨日9日の日最高気温14.5℃、日最大風速4.4m/s。12:00では気温12.5℃、風速1.2m/s)。入山沼下と違って、岩殿C地区は午前中は日影、午後になって陽が差してきます。
岩殿D地区のセイタカアワダチソウも刈り取りました。
タコノアシ(ユキノシタ科→タコノアシ科)
今年は花を付けるまで生き残ったタコノアシが少ない!
※小山内朝香・亀山章・佐伯いく代「水位と競争種の有無がタコノアシの成長・繁殖に 与える影響:生育地復元の基礎情報として」(日本湿地学会『湿地研究』1巻、2010年)
……タコノアシのような湿生植物の復元におい ては、水分環境をどのように設定するかによって、ターゲットとなる種の生育状況や競争種との関係が 大きく変化する。(33頁)
タコノア シはこれらの高茎の植物と光や生育場所をめぐる競 争が少なく、攪乱の起こりやすい水際部に定着しや すいものと推測される。また水際部において高茎の 多年生草本がタコノアシと同所的に生育する場合も みられたが……、タコノアシはこれらが繁茂していない場 所に局所的なパッチをつくって生育しており、著し く被圧されているという状態ではなかった。(40頁)
実生の生育は、……競争種の被陰やリターの堆積の影響を強く受 けるため、[水面からの比高]20cm 区内の土砂が堆積してできた裸地 のような環境でないと生育は困難であると考えられ る。被陰とリターの影響については,タコノアシが 暗黒下で発芽しないことが報告されている。そのため、高茎草本やリターに厚 く覆われた場所では実生個体そのものが出現しにく いと推測される。(41頁)
野生環境下でタコノアシが 定着し、群落を維持していくためには、(1)水位変 動による攪乱が起こる生育地において水辺と陸地の 移行帯の部分を確実に保全していくこと、(2)生理 生態的特性をふまえた上で,本種が成長・繁殖でき る環境を創出する技術を確立していくことの 2 点が 重要である。本研究で創出した実験環境下では、水 面からの比高 0 ~ 20cm 区がタコノアシの成長・繁 殖に最適であった。このような生態的情報や高茎多 年生草本との競争関係、ならびに生育地基盤設置の 技術は、新たな生育地を創出する際に応用できると 考えられる。(41頁)
D地区の下段のセイタカアワダチソウは抜き取りをしました。土が硬くてスッとは抜けず、力任せの引きちぎり状態で、大半は根がわずかに付いている程度です。残念。
岩殿E地区の南側は一面、セイタカアワダチソウ群落になりました。ここは除草機を使う予定です。
6月1日に刈ったワレモコウ復活
岩殿D地区、I地区のキショウブを刈りました。昨年は4月22日に実施しています。
今年は冬場に水路を掘って排水しているので、地面が乾いていて刈払機で刈り取りやすくなりましたが、I地区下段とD地区中段は分布が拡大気味なのが気になります。刈り取り条件(時期、高さ)、冠水条件(深さ)の組み合わせで、キショウブ群落の拡大を抑制することをめざしていますが、試行錯誤の繰り返しで長期の取り組みにになりそうです。←キショウブの花の切り取り(2021年5月20日記事)
ハンマーナイフモアでD地区(下段~上段)の草刈りをしました。
※「ハンマーナイフモア新品購入!使い方や草刈り速度比較・紹介:2021年11月14日」16:33(YouTube『ちょこっと自然農 -try natural farming-』チャンネル)
※「ハンマーナイフモアで田んぼの除草と耕作放棄地の開墾整備:2022年3月25日」10:38(YouTube『ちょこっと自然農 -try natural farming-』チャンネル)
岩殿D地区上段の土水路(東縁水路)の泥あげをしました。中段は楽に作業できたのですが、今日は覆土に10㎝位の細根層(水平根、ヤナギorクワ)がある場所があり、掘りあげるのに手こずりました。
岩殿B地区の田んぼとの境界の土手周りの草刈りをし、D地区上段の湿地化を食い止めるための段取りをしました。
最初にすることは、学びの道下の斜面に接する土水路(東縁水路)の掘り下げ作業です。昨年2月に下段で実施して効果がありました。
昨日のB地区上段に続き、隣にあるD地区上段の草刈りを始めました。
D地区上段とB地区上段ののカヤは刈ってシイタケのホダ木の仮伏せの時に使う予定です。
今日は学びの道下の土水路(東縁水路)の部分を刈りました。D地区上段を入山沼方面に向かって進むとI地区との高低差がなくなって、どこがD地区とI地区との境界になるのかわからなくなります。水路の標柱があるところまで刈っておきました。
枯れたタコノアシが目に付くところはD地区中段~I地区
※米村惣太郎「絶滅危惧植物タコノアシの保全と再生に関する生態学的研究」(清水建設技術研究所『研究報告』90号、2,013年1月)
6.1 タコノアシの生態的特性
個生態に関する実験および自然環境下における生育状況の調査結果から次のように考えられる。
6.1.1 生活環
種子は主に春季に発芽し、その年の夏季~秋季に開花・結実するとともに地下茎による栄養繁殖体を形成する。栄養繁殖体は、春季に伸長開始し、種子からの生育と同じく、夏季~秋季に開花・結実し、栄養繁殖体を形成する。冬季にはその年に生育した個体は枯死し、種子および栄養繁殖体から新たな個体ができる。
6.1.2 繁殖特性
タコノアシは種子と地下茎による繁殖を行う。種子繁殖では、多くの種子を生産し、水流などで広い範囲に散布しておき、発芽に適した裸地的環境であれば発芽・生育するが、適さない場合はシードバンクを形成し、攪乱によりギャップが生じた場合に発芽・生育する戦略を持つ種と考えられた。また損傷を受けても再生可能であり、栄養繁殖により個体数が 8 倍に増えたことから高い栄養繁殖能力を有していると考えられた。
6.1.3 生活史戦略
植物の生活史戦略を知ることはその種に適した生育環境を推定する有効な方法である 9)。Grime は植物の進化を支配した重要な淘汰圧として、競争、ストレス、撹乱の 3 つがあり、この作用のもとに、3 つの主要な戦略型、即ち、競争種、ストレス耐性種、撹乱依存種が進化したと考えた10)。これらの特性はトレードオフの関係にあり、現実の植物は 3 つの戦略をそれぞれ異なる程度で兼ね備えていると考えられている。…………耕田では、ストレスとして降雨による冠水があるがその度合は小さい。休耕田では耕起や刈取りなどの農的管理が撹乱として機能し、それによりタコノアシの生育が継続できるが、管理が行われないと他種との競争に負けて消失する。調整池では、ストレスとして同様に冠水があるが、比較的度合は小さいため、休耕田と同様に競争的環境になり、短期間で消失する。ただし刈取りや耕起を行うことで個体数の増加や再出現が確認された。
このような各生育地での生育状況および個生態学的特性から、タコノアシは撹乱のない競争的環境では他種に負けて消失するが、冠水ストレスと撹乱に対する高い耐性を有しており、また大量の種子生産量やシードバンク形成などにより撹乱条件下でいち早くニッチを開拓できると考えられることから、総括的にはストレス耐性を兼ね備えた撹乱依存種と位置付けられる。[165~166頁]
6.2 タコノアシの保全と再生のための方法6.2.2 休耕田における保全
休耕田の土壌分析および継続的な生育地の観察の結果、タコノアシの生育場として湿田状態が維持されていることが重要であった。また耕起、刈取りによる農的管理が行なわれている休耕田ではタコノアシの継続的な生育が見られたが、管理が行われなくなると、数年のうちに消失したことから、河川での洪水による撹乱を代替するような農的管理の実施が必要である。
6.2.3 タコノアシの再生のための方法
1) 発芽・生育適地
実験結果から、タコノアシはギャップ検出機構を有する撹乱依存種であり、また調整池の植栽基盤では冠水あるいは土壌水分が適である場所より、過湿状態の場所で最も長く生育が維持されていた。これらから裸地であり、常時は冠水していない、過湿な土壌状態が維持されるような植栽基盤を構築する必要がある。
2) 導入方法
播種およびポット苗での導入が可能である。ポット苗と同様に現地生育個体の移植も全て活着したことが確認されている。またシードバンクからの再出現も確認されており、これら 4 つの方法が現地の状況に応じて利用可能である。種子の生産量が多く、長期の保存も可能なため、再生や復元に際しては、種子を採取し、それを保存しておき、ポット苗を育成し、現地に導入する方法が最も確実性が高いと考えられる。
3) 維持・管理方法
タコノアシは撹乱が起きずに植生遷移が進むと消失する。また調整池で起こるような水位変動だけでは遷移を戻すような作用は期待できない。そのためタコノアシを継続的に生育させるためには、休耕田で行われていたような耕起や刈取りのような農的管理、即ち、撹乱依存種が好む裸地的環境を創出・維持することを念頭においた順応的な管理の実践を行う必要がある。[166頁]
学びの道から見た入山沼下と市民の森の眺め(景観)です。眺めは視点(見る場所)で違ってきます。この写真では、帯状に入山沼堰堤まで続く学びの道下の斜面が大きく写っています。
この場所からアズマネザサの大藪が消えたのは2019年4月です。「放っておけばこの景観はこれからどうなっていくのか?」、「景観をよくするというのはどういうことなのか?」、「法面緑化をどうすすめるのか?」問いを共有して考えていきましょう。
入山沼近くの学びの道下の草刈りを須田さんがしました。
刈っていた場所の近くにコガタスズメバチの巣が落ちていました。巣に付いていた枝を動かしたときに一部が欠け、警戒した働きバチ(雌)が外に出てきました。
※スズメバチの種類の見分け方(『ルイワン蜂・害虫駆除センター』HP記事)
STEP1 腹部末端節の色から
1.腹部末端節が黒色の場合
チャイロスズメバチ、ヒメスズメバチ、ツマグロスズメバチ
● 腹部全体が黒色、頭部と胸部は赤褐色・・・チャイロスズメバチ
● 腹端より1-2節まで黒色・・・ヒメスズメバチ
● 腹端より4節まで黒色・・・ツマグロスズメバチ(八重山諸島に生息)
2.腹部末端節が黄色または赤褐色の場合オオスズメバチ、コガタスズメバチ、キイロスズメバチ、モンスズメバチSTEP2 単眼の周囲の色から
1.単眼の周囲が赤褐色の場合
● 頭部中央にある頭楯(とうじゅん)の突起の数?
● 2個の場合は・・・オオスズメバチ(雌)
● 3個の場合は・・・コガタスズメバチ(雌)
2.単眼の周囲が黒色の場合
● 腹胸部の後ろにある1対の小楯板(しょうじゅんばん)の色は?そして、腹部の斑紋の特徴は?
● 小楯坂は黄色または赤褐色・・・キイロスズメバチ(北海道産はケブカスズメバチ)
● 小楯坂は黒色で腹部の斑紋が波打つ・・・モンスズメバチ
巣が見える所にある場合 概ねコガタスズメバチかキイロスズメバチのどちらか
巣が見えない場所にある場合
木の根元(地面)から出入りしている⇒オオスズメバチ
木の幹などに空いた穴や建物の通気口など外部に空いた穴から出入りしている
巣が見えない場所にある場合
木の根元(地面)から出入りしている⇒オオスズメバチ
木の幹などに空いた穴や建物の通気口など外部に空いた穴から出入りしている
⇒モンスズメバチ キイロスズメバチ ヒメスズメバチ
岩殿D地区と田んぼの間の土手の草刈りをしました。毎年4月には赤いクサボケ(バラ科)の花が咲いています。クサボケは日当たりと風通しの良い場所が生育に適しています。シカの大好物だそうですが、実(シドミ)を採取して増やせればと考えています。
学びの道から岩殿D地区に除草機を下ろす道の草刈りをしました。
坂を下りたところにコナラの実生稚樹があって、半分ほど刈ってしまってから気づいて、保護のための目印に竹で囲っておきました。
D地区には1月5日に伐採したヤナギやコナラ、ヤナギ等の切株があって、コナラ2本は萌芽していました。
入山沼下のキショウブはこれ以上、分布が拡大しないように刈り取りや花茎の摘み取りをしています。今日はD地区とI地区で花茎29本を切除しました。
※中嶋佳貴・沖陽子「重点対策外来種キショウブの異なる刈取処理による耐冠水性の差異」(『雑草研究』62巻3号、短報、2017年)(下線は引用者)
緒言
外来生物法により、重点対策外来種としてリストアップ(環境省 2016)されているキショウブ(Iris pseudacorus L.)はアヤメ科アヤメ属の多年生抽水植物である。ヨーロッパから中央アジア原産で、日本には明治時代に園芸植物として導入され、現在では全国の湖沼や河川などの沿岸帯に帰化している(角野 1996)。キショウブは、4月~6月に鮮黄色の美しい花を咲かせて美観を創出する(Alaska 2010)。草高は1.5 mに達し、朔果は秋季に成熟して裂開し、種子を散布する(角野 1996)。同じ頃、分げつの側芽として越冬芽が出現し、翌春には一部の分げつから花茎が伸長する。繁殖力は旺盛で、冠水や乾燥が繰り返される水辺環境でも生育が可能である(Alaska 2010)。近年まで水辺の緑化にもキショウブは積極的に植栽されてきた(桜井 1989)。しかし、外来生物法により、重点対策外来種として総合的な対策が必要とされている現状では、植栽されてきた既存群落や、野生群落を適切に管理する必要性がある。これまでに、キショウブと同じ多年生抽水植物のヒメガマ(Typha angustifolia L.)やヨシ(Phragmites australis (Cav.) Trin. ex Steud.)の防除及び管理については、刈取処理による機械的防除法が検討されている(Nelson 1966; 桜井 1991)。これに対し、キショウブにおいては機械的防除法に関する知見は未だ報告されていない。そこで本研究では、重点対策外来種であるキショウブが過繁茂することなく適切に管理できる方策を模索する目的で、時期の異なる刈取処理後の耐冠水性を検討した。(134頁)
考察
キショウブと同じ抽水植物のヒメガマを刈取りによって機械的に防除するには、生育盛期の複数回の刈取処理が必要とされる。米国では、生育盛期の夏季にシュートを地際の0 cmで2回刈取り、冠水深を7.6 cm以上にすると、刈取後翌年の夏季には100%の防除に成功した(Nelson 1966)。ヨシも水面下で複数回刈取れば再生が防げられる(桜井 1991)。そこで本研究では、生育盛期に刈取高と冠水深を段階設定した結果、キショウブは生育盛期に刈取高を1 cm以下とし、冠水深を4 cm以上に設定すれば、1回の刈取処理で再生を防げることが明らかとなった(第4表 )。ヒメガマのシュートの刈取後に枯死に至るメカニズムとして、Sale(1983)やSojda(1993)は、シュートを水面下で刈取ると地下部への酸素供給が困難となり、地下茎の生長力が低下することを述べている。本研究において、キショウブも刈取高より冠水深が深い場合、分げつの刈取面が冠水し、酸素獲得が困難となって、再生が妨げられたと考えられる。耐冠水性を有する植物は、冠水に伴う嫌気的な環境に代謝経路の変化(Fitter et al. 1992; ハルボーン 1981)や、通気組織を離生的もしくは破生的に発達させることで酸素不足に適応している(Fitter et al. 1992)。キショウブは嫌気的条件下においてSOD(Superoxide Dismutase)活性の上昇(Monk et al.1987)、AEC(Adenylate energy charge)によるAT Pの生産(Hanhijarvi et al. 1995)によって冠水条件に耐えることが確認されている。また、嫌気的条件によって誘導される有害なエタノールや乳酸を生成する発酵過程を回避するために、無害なシキミ酸を生合成する代謝経路に変化してAT Pを獲得している(ハルボーン 1981)。しかし、このシキミ酸の集積は休眠期である冬季の湛水状態でのみ確認されており(Mcmanmon et al. 1971)、この代謝経路のAT Pの生産量は非常に少ない(Fitter et al. 1992)。秋季の越冬芽出現期以降は冬季の生育停止期に近づくため、AT Pの生産が少なくて済むことに加え、湛水状態で生育する条件でも徐々に温度が低下するため、夏季ほど嫌気的になりにくい環境下にあると考えられる。ゆえに、本研究において9月の越冬芽出現期に地上部を刈取って酸素の供給が抑制されても、代謝経路の変化で適応が可能な範囲であり、生育盛期と比較して良好に再生したと推察される。また、越冬芽出現期の刈取処理は、刈取高が2 cm以上では翌年の分げつ数を減少させなかったが、花茎の発生については著しく抑制させることが明らかとなった。ゆえに、9月上旬の越冬芽出現期における刈取処理は、キショウブが重点対策外来種として懸念されている近縁種との遺伝的攪乱や、種子散布による分布拡大を防ぐ意味で重要である。本研究は、キショウブに対する刈取りと冠水の効果を分げつ数のみで評価したことから、キショウブの管理については直接、言及できないものの、生育盛期及び越冬芽出現期の刈取処理と冠水条件を組み合わせて活用すれば、様々な状況に応じてキショウブ群落を適切かつ効率的に維持することが可能である。(137~138頁)
※中嶋佳貴・沖陽子「管理指針に必要なキショウブの繁殖特性の解明」(『日本緑化工学会誌』43巻2号、2017年)(下線引用者)
キショウブの自然条件下における分布域拡大には根茎断片の拡散及び種子散布が大きく寄与している。根茎断片は波浪等の自然攪乱、刈取などの管理作業による人為的攪乱によって既存群落から発生し、水流にのって拡散後、漂着して新たに群落を形成する。水位変動等により干陸地に漂着する場合もあるが、根茎断片は大気中に根茎が露出した乾燥条件下でも3ヶ月間生存が可能とされ、再び水位変動や降雨等によって生育に好適な水分条件下におかれると、定着する可能性も十分にある。定着時は1個体の根茎断片であっても翌年は旺盛に抽苔して開花結実するため、開花に至る個体の外部形態を把握しておくことは重要である。(373頁)
外部形態から春季に新鮮重が重く、緑葉数の少ない分蘖は花芽である割合が高く、逆に新鮮重が軽く、緑葉数が多ければ葉芽である確率が高いことが明らかとなった。また、開花に至らない個体は旺盛な生育を示す傾向にあるため、分蘖を刈取れば翌年の生殖生長を抑制することが可能である。
既に日本全土に分布が拡大している現在、根絶を望む考えは現実的ではない。キショウブ群落が他の生物に対して与える生態的影響については今後も検討する必要があるが、環境圧の高い場所において修景を目的とした緑化が期待される場合、キショウブは有用種である。ゆえに、今後の水辺の景観形成の場面では、本研究で明らかにした花芽を有する割合の高い分蘖を活用して、春季に植栽後、開花による美観を速やかに創出することを推奨する。開花後は花茎を切除して種子散布を防ぐとともに、地上部を夏季から秋季に1回刈取って、翌年の稔実朔果数を5割~8割まで減少させる。更なる生殖生長を抑制するためには、刈取り回数を増加するなど検討して、群落の拡大を抑制し、その場で許容される群落を適切に維持することが望ましい。(374頁)
※キショウブを抜きとる(2018年10月月6日記事)
QRコード
記事検索
最新記事
カテゴリ別アーカイブ
月別アーカイブ
タグクラウド