あれこれ
国民的SDGs:「持続可能な開発目標(SDGs)」は、政府や大企業などの一部の組織が向き合うべき問題ということではありません。しかしながら多くの中小企業ではSDGsは自らが取組むべき課題であると認識されていません。[関東経済産業局・日本立地センターの2018年12月の「中小企業のSDGs認知度・実態等調査結果概要」(WEBアンケート調査)によれば、98%の企業が「(詳しく)知らない」「対応を検討していない」と回答している]
「国民的SDGs」は、SDGsが「日常的」「身近な」存在となり、国民一人ひとりがSDGsを「知り」「考え」「行動」する社会とすることを目指しています。そのような社会を実現するためには日本社会を支える何百万社の中小企業によってSDGsが発信され、コミュニケーションが生まれ、価値観が移り変わるような環境がつくられていくことが重要だと考えています。[『kokumin SDGs.com by 経営革新等支援機関連合会』サイトから]
みんなで考えるSDGsの日:総合PR会社である共同ピーアール株式会社の総合研究所(PR総研)が制定。国連が定めた持続可能な開発目標であるSDGs(Sustainable Development Goals )についてのさまざまな企業の取り組みをより多くの人に伝えることが目的。また企業だけでなくひとり一人がSDGsについて考える日にとの思いも込められている。日付はSDGsに持続可能な世界を実現するために掲げられている17のゴールから「みんな(3)」で「17」のゴールを実現しようという意気込みで3月17日に。
●樹木の葉を食べる
ヤママユガ科の蛾は、すべての種類で幼虫が樹木の葉を食べることが知られています。主な食樹としては、ブナ科、クスノキ科、ニガキ科、ミカン科、カバノキ科、ニレ科、カエデ科、ウルシ科、ミズキ科、クルミ科、エゴノキ科、バラ科などに属する樹木が挙げられ、多くの場合、何種類もの樹木をエサとする「多食性」で、「単食性」の種類は少ないと言われています。
市内で記録されている7種類は、いずれもクヌギ、コナラ、クリといったブナ科の樹木を好み、そのため、それらが多く生育する雑木林で多く見られます。針葉樹を食べる種類は知られておらず、実際、スギの植林地などではヤママユガ科の蛾を見ることはありません。
●雑木林が生活の場
ヤママユガ科の蛾は、成虫になるとエサを取ることがなく、口も退化します。ということは一生の間でエサを取るのは幼虫の時期だけということになりますから、生活の場所も必然的に幼虫のエサがある場所ということになります。市内の場合、雑木林がその場所にあたります。
市内のヤママユガ科の一生は、そのほとんどを雑木林に依存しています。卵を産み、幼虫が育ち、マユをつくってサナギになるのは雑木林で、成虫だけが時に林の外に出て街燈などに飛んで行きますが、それでも卵を産む時は再び雑木林に戻ります。雑木林という場所は、それだけでひとつのまとまった環境と見ることができ、雑木林だけで見られる動植物が多く知られていますが、市内のヤママユガ科の蛾もそんな動植物のひとつとして見ることができるわけです。
●市内のヤママユガ科の今後
かつては、市の中部の住宅街でも、街燈に飛来する大きなヤママユガ科の蛾が見られたといいます。最近では、そういうこともなくなってしまいましたが、その理由は、やはり雑木林の減少に求めることができそうです。
今でも大町や大野町、柏井町一帯にはまとまった雑木林がありますが、市の中部に近いあたりでは、雑木林は少しずつ姿を消し、あるいは分断されたり規模が小さくなったりしています。翅があって飛ぶことができるとはいっても、ヤママユガ科の蛾の移動能力など知れています。生活の場となる環境が失われれば、ひとたまりもありません。
広範囲に林が残っている大町公園でも、ヤママユガ科の蛾を見る機会は、年をおうごとに減ってきています。かつては、夏になると動物園の建物に、毎朝のようにヤママユガ科の蛾がペタッと止まっている姿が見られました。大町公園の施設自体が林を切り開いてつくられたものなのであまり大きなことは言えませんが、この数年、減少傾向にあるという感じは否めません。ヤママユガ科の蛾には、ただ「大きい蛾」というだけではなく、雑木林という環境を指標する指標生物としての役割も期待できそうです。
(Yahoo!ニュース 2018.07.24 18:04)
●異常気象の増加は地球温暖化のせいか
●地球温暖化が続く限り、豪雨も猛暑も増え続ける
(Yahoo!ニュース 2018.08.06 07:01)
●大規模水害への防災にともなう社会的難問
●気候変動適応法の下で自治体レベルの議論を
●日本人は「脱炭素」の必要性を実感できるか
●「脱炭素」を前向きに志すとき
(Yahoo!ニュース 2020.07.20 07:00)
1. 「豪雨が地球温暖化の影響だ」とはどういう意味か?
[傾向・一因]:近年の大雨の増加傾向は、地球温暖化が少なくとも一因だ
[傾向・主因]:近年の大雨の増加傾向は、地球温暖化が主な原因だ
[今回・一因]:今回の大雨は、地球温暖化が少なくとも一因だ
[今回・主因]:今回の大雨は、地球温暖化が主な原因だ
[傾向・一因]:近年の大雨の増加傾向は、地球温暖化が少なくとも一因だ
これは科学的に妥当だ。気温の上昇傾向により水蒸気も増加傾向にある。それが、大雨が増加していることの少なくとも一因であることは間違いない。
[傾向・主因]:近年の大雨の増加傾向は、地球温暖化が主な原因だ
これは現時点でいえないだろう。降水量の変化は自然変動が大きい、つまり、気圧・風パターンの発生の仕方が非常にランダムなので、実際のデータから地球温暖化の効果を取り出すのが難しい。
[今回・一因]:今回の大雨は、地球温暖化が少なくとも一因だ
これも筆者の考えでは妥当である。仮に温暖化していないときにまったく同じ気圧・風パターンが発生したら、水蒸気が少ない分だけ雨量が少なかったのは間違いない。この意味において、地球温暖化は今回の大雨の少なくとも一因といえる。
[今回・主因]:今回の大雨は、地球温暖化が主な原因だ
これはいえないとしておこう。今回の大雨の主な原因は気圧・風パターンやそれに影響を与えた海面水温パターン(インド洋の高温など)であるというのが普通だろう。
まとめると、増加傾向についても一回のイベントについても、地球温暖化が一因というのは妥当で、主因とはいえない、というのが筆者の見解である。
3. 報道では何と言っていたか
近年の気象災害の激甚化は地球温暖化が一因とされています。(令和2年版 環境白書)と書いてあり、安心した。
4. 温暖化のせいか、せいでないかは、なぜもめるのか?
「温暖化のせいではない」に同調しがちな人には、ぜひそのリスクを一度よく考えて頂けたらと思う。
●付録1. 大雨の増加傾向は本当にあるか?
●付録2. 水蒸気が増えると降水量が増えるといえるか?
●付録3. 日本の水害死者数は減り続けているか?
件の記事では、防災能力の向上により日本の水害による死者数は大幅に減少してきたことを強調している。
これはもちろん過去には正しいが、示しているグラフは2001年までである。死者数の減少は近年下げ止まっており、2004年には200人を超える死者、2011年と2014年には100人を超える死者が出ている。2018年の西日本豪雨でも死者は200人を超えた。
防災インフラが整備された先進国であるはずの日本において、未だに100人を超える水害死者が出ることが防災関係者に危機感をもたらしてきた。先日、国土交通省の委員会から発表された「気候変動を踏まえた水災害対策のあり方について」では、「施設能力を超過する洪水が発生することを前提に」した水災害対策の転換が謳われている。
この文脈において、「これからもインフラが守ってくれる」と受け取れるような過度に楽観的なメッセージを発することは不適切と思われる。
段丘崖にはケヤキの大木が多数あります。


新型コロナウイルスの影響で、外出を控えた結果、運動不足になる人が増えています。そのなかで、懸念されるのが「健康二次被害」です。健康二次被害の詳細と、運動でコロナ予防の動画案内をチラシにまとめました。多くの皆様のご協力と本情報のシェアをお願い申し上げます(筑波大学久野研究室)。
【運動でコロナ予防】
①一人でできる体操編
②楽しく親子運動編
③テレワーク対策編
④詳しく解説編
⑤テレワーク対策応用編
免疫力は、食事(腸内環境を整えること)、十分な睡眠、体温を上げる運動(ウオーキングと筋トレ)、笑顔で維持・向上が可能です。


筑波大学の久野譜也教授(健康政策)の研究室が自治体や企業へのヒアリング調査を行ったところ、子どもから高齢者まで、外出しないことによる心身への悪影響が見られることが分かった。久野研究室では3 月9日、ウイルスから身を守る免疫力を高めるため、ウォーキングや筋トレなどの運動を勧めるチラシを作成し、「多くの皆さんに実行してほしい」と呼びかけている。
※自宅でできるおすすめ筋トレメニュー(PDF)
◆スクワット 下半身の筋肉をバランスよく鍛える
◆ひざ伸ばし 衰えやすい「大腿四頭筋」を鍛える
◆もも上げ 大腰筋+腹筋を鍛える筋トレ
※テレワークで1日の歩数30%減少、運動不足による健康影響懸念(NHK NEWS WEB 2020/04/16)
カロリン・エムケ『憎しみに抗って ―― 不純なものへの賛歌』目次人種主義、ファナティズム、民主主義への敵意――ますます分極化する社会で、集団的な憎しみが高まっている。なぜ憎しみを公然と言うことが、普通のことになったのだろう。
多くの難民を受け入れてきたドイツでも、それは例外ではない。2016年には、難民の乗ったバスを群集が取り囲んで罵声を浴びせ、立ち往生させる事件が起こった。それまでのドイツではありえなかったこの事件は、社会に潜む亀裂をあらわにした。
自分たちの「基準」にあてはまらない、立場の弱い者への嫌悪、そうした者たちを攻撃してもかまわないという了解。この憎しみの奔流に飲み込まれないためには、どうしたらいいだろう。
憎しみは、何もないところからは生まれない。いま大切なのは、憎しみの歴史に新たなページを加えることではなく、基準から外れたとしても幸せに生きていく可能性をつくることではないだろうか。
著者カロリン・エムケはドイツのジャーナリスト。自分とは「違う」存在を作りだして攻撃するという、世界的に蔓延する感情にまっすぐに向き合った本書は、危機に揺れるドイツでベストセラーになった。いまの世界を読むための必読書。(みすず書房HP「書誌情報」より)
はじめに※東京大学出版会・白水社・みすず書房の出版情報PR紙「パブリッシャーズ・レビュー」第26号(2018年3月15日号)より
1 可視‐不可視
恋
希望
懸念
憎しみと蔑視
1 特定の集団に対する非人間的行為(クラウスニッツ)
憎しみと蔑視
2 組織的人種差別(スタテンアイランド)
2 均一 ー 自然 ー 純粋
均一
根源的/自然
純粋
3 不純なものへの賛歌
原註
訳者あとがき
著訳者略歴
ドイツでベストセラーカロリン・エムケ
《憎しみに抗って 不純なものへの賛歌》浅井晶子訳
人道主義、ファナティズム、民主主義への敵意 ―― ますます分極化する社会で、集団的な憎しみが高まっている。なぜ憎しみを公然と言うことが、普通のことになったのだろう。
こうした現象は、世界中でみられる。多くの難民を受け入れてきたドイツでも、それは例外ではない。
2016年、ドイツのクラウスニッツで、難民の乗ったバスを百人以上の群集が取り囲んで罵声を浴びせ、立ち往生させる事件が起こった。多くは近所のごく普通の住民だったという。その様子はSNSで瞬く間に拡散し、おびえる難民の子どもや、手をこまぬく警官の様子も映っている。それまでのドイツはありえなかったこの事件は、社会に潜む亀裂をあらわにした[*1]。
「怒りは、なにものにも守られることなく目だっている者に向けられる」。自分たちの「基準」にあてはまらない、立場の弱い者への嫌悪、そうした者たちを攻撃してもかまわないという了解。この憎しみの奔流に呑み込まれないためには、どうしたらいいのだろう。
著者エムケは言う。憎しみは、何もないところからは生まれない。なぜ悪むべきかという「理由」は、誰かがつくらないと存在しない。憎しみは、いまに始まったことではなく、じつは長い歴史をもっている。
いま大切なことは、憎しみの歴史に新たな1ページを加えることではなく、基準から外れたとしても幸せに触れて生きる可能性をつくっていくことではないだろうか。
著者カロリン・エムケはドイツのジャーナリスト。自分とは「違う」存在をつくりだし攻撃するという、世界的に蔓延する感情にまっすぐに向き合った本書は、危機に揺れるドイツでベストセラーになった。いまの世界を読むための必読書。[現代社会・暴力・ポピュリズム](四六判・216頁・3600円)
憎しみに抗って―不純なものへの賛歌 [著]カロリン・エムケ
このところ「ヘイトスピーチ」や「ヘイトクライム」といった「憎しみ」を含む言葉を耳にすることが多くなった。実際、ネット上では憎悪表現が当たり前のように飛び交っている。その標的とされ、心身に深い傷を被っている人も少なくないはずである。
ようやくたどり着いたドイツで住民から罵声を浴びせられる難民[*1]、アメリカで警官の暴力的な取り締まりにさらされる黒人[*2]、国境での保安検査で屈辱的な扱いを受けるトランスジェンダー(「自然」とみなされる性別が本人の感覚と合致しない人)。本書が取り上げるのは、何を語ったか、何を行ったのかとはまったく無関係に、侮蔑や憎悪を投げつけられる人々である。
本書を読んであらためて重要と感じるのは、憎しみを引き起こす原因とそれが向けられる対象の間にはほとんど関係がない、ということである。難民や移民はいわば叩(たた)きやすいから憎しみの標的とされる。彼らをいくら叩いたところで、生活不安がなくなるわけではないのにもかかわらず。人に憎しみの感情を抱かせる原因は複雑で解消しがたい一方、標的の選択は単純で、感情の投射は容易である。
「彼ら」を締めだせば「われわれ」は安全や豊かさを取り戻すことができる。こうした考え方はなぜ執拗(しつよう)に現れるのか。「同質なもの」、「純粋なもの」は予(あらかじ)め存在せず、「異質なもの」、「不純なもの」を特定し、それを排除することを通じてつくりだされる。このメカニズムが、反ユダヤ主義とホロコーストの経験と記憶をしっかりと刻んだはずのドイツでいままた反復されようとしている。余所者(よそもの)は「少しくらい満足しておとなしくなるべきではないか」という感覚はすでに一部だけのものではなくなっている。
一昨年ドイツで上梓(じょうし)された原著は10万部を超すベストセラーとなり、12カ国語に翻訳されているという。移民を排除すべしという主張は、いまや多くの社会で公然と語られるようになり、それは、憤懣(ふんまん)の捌(は)け口を求める需要に応えている。この本がいま広く読まれているのも、多様な諸価値やそれらのハイブリッド(不純)な交流を肯定する規範が明らかに壊れつつあるという危機感ゆえであろう。
自身も性的マイノリティに属する著者は、文化的、宗教的、性的な多様性のなかでこそ落ち着くことができる、と言う。多様性ゆえの安定、排他的ではない安全性を構築しなおすために、どのような言葉や行為が必要なのか。私たちは「他者を傷つける能力」を併せもつだけに、そしてその能力はたやすく行使されるがゆえに、いかに憎しみに抗するかという問いをおろそかにするわけにはいかない。
◇
Carolin Emcke 67年生まれ。ジャーナリスト。「シュピーゲル」「ツァイト」の記者として世界各地の紛争地を取材。2014年よりフリー。16年にドイツ図書流通連盟平和賞。
1.はじめに
2018年8月末から9月はじめにかけての2週間、ドイツ社会はこの話題に揺れた。[8月26日]東部ザクセン州の都市ケムニッツでおこったある殺人事件をきっかけに、極右勢力が大規模なデモをおこない、街中で外国人を狩りたてて暴行したり、警察や反対する左派勢力と激しく衝突したりしたのだ。
日本でも、この事件は大手マスコミ各社が取りあげた。しかし、それらの報道は事件の概要を断片的に伝えるのみであり、この事件がドイツ社会にあたえた衝撃についても、またこの事件を近年のドイツ社会の動きに対してどのように位置づけるかについても、説明が不足している。……
2.ケムニッツ市記念祭での殺人事件
3.事件をめぐる数々の謎
4.なぜケムニッツだったのか
5.なぜドイツ東部なのか、なぜザクセン州なのか
6.「憂慮する」市民たちケムニッツをはじめとする外国人に対する暴力事件は、けっして一部の過激な極右の人間やならず者たちによって引き起こされたのではない。その背後に外国人に敵意を持ち、暴力に参加はしないまでも、それを容認する大勢の市民たちがいる。すでに上述のロストックの事件[*3]の際も、外国人労働者の宿舎が燃え上がると喝采を送った住民がいたし、なかには自宅にあった予備のガソリンを火炎瓶を作るためにネオナチたちに提供した者もいた。……7.極右政党とネオナチの結合
……難民であれ労働者であれ外国人に対して警戒的な人びとは一定程度いる。彼らは自らを「憂慮するbesorgt」市民たちと呼んでいる。
この言葉は、2018年の夏頃、ケムニッツの事件とちょうど相前後して盛んに取りあげられるようになった。その主張は、「われわれは外国人に反対しているわけではない、しかし……」というフォーマットに集約される。自分たちは人種主義者ではない、しかし今のところドイツには外国人が増えすぎている。このままではうまくいかない。ドイツで暮らすからには最低限われわれのやり方・流儀には従ってもらわねばならない、というわけである。
こうした「憂慮する」多くのひとびとが、数の上では少数である極右勢力によるあからさまな外国人排斥の活動を下支えし、その温床となっているのである。
ドイツの女性ジャーナリストのカロリン・エムケは、ヘイト犯罪に関する著書『憎しみに抗って』(2016年、邦訳みすず書房、2018年)のなかで、2015年夏のクラウスニッツの事件について詳細に分析している。彼女によれば、難民を乗せたバスが同地の収容センターに到着したとき、その行く手を阻んで「われわれこそが国民だ」と叫び、罵声を浴びせたり唾を吐きかける真似をしたのは、およそ100人ほどの住民たちだった。
しかし、エムケによれば、その場には、第2のグループとして大勢の傍観者たちがいた。誰ひとり騒ぎを止めようとせず、その場を立ち去りもしない。傍観者がいることによって、バスのなかにいる人たちに対峙する群衆はその分、数が増えたことになった。彼らの存在は、暴徒たちをさらに勢いづかせることになったとエムケは主張する。「彼らはただそこに立って、わめく者たちを注視する場を形成している。その注視をこそ、わめく者たちは必要とするのだ。自身を『国民』だと主張するために」(同訳書51頁、一部改変)。
エムケによれば、「憂慮する」市民たちは、自分たちは人種差別や極右と一線を画しているように見せかけているが、その仮面の下にあるのは「異質なものへの敵意」である(同訳書38頁)。この考えは、経済的好況の影で格差が広がりつつあることへの不満と結びつき、難民受け入れを進めるメルケル政権に対する批判へと、さらに大手マスコミが事実を伝えていないというメディア批判へとつながっていく。
ドイツ東部には、このようなメンタリティがドイツの他の地域よりも強固に根を下ろしつつある。2017年7-8月の世論調査では、「連邦共和国は外国人によって危険な度合いにまで過剰に外国化(überfremdet)されつつある」という見方に賛成の意見が、ザクセン州では回答の56%にのぼった。62%が「当地で暮らしているイスラム教徒はわれわれの価値を受け入れていない」と考えており、38%が「イスラム教徒の移民を禁止すべきだ」という意見である。
8.ドイツ社会の和解のレジリエンス現在のドイツでは、「憂慮」に覆い隠されたかたちで他者に対する憎しみが横行しており、それは「権利を奪われ、社会から取り残され、政治的対応からも置き去りにされる人間の集団が生まれる前触れ」ではないのか、とカロリン・エムケは問うている(同訳書40頁)。9.レジリエンスの動揺?
あるいはそうなのかもしれない。予断は許されない。しかし、状況はそこまで危機的ではないと思わせる要素もまた存在している。
それは、ドイツ社会には、和解のレジリエンスとも言うべきバランス回復の機能があるからだ。レジリエンスとは、元来は物質が外的な力を受けた際に元に戻ろうとする力を意味し、転じて心理学用語として個人の内面がストレスに抗して回復する能力として用いられていたが、最近では社会の危機的状況や災害からの機能回復や復興をさして使われるようになっている。
1990年代前半以来くり返されてきた外国人に対する暴力事件は、たしかにドイツ社会のなかに大きな傷を開けた。しかし、その傷口をただちに閉じ、苦痛を癒やし、社会の統合を再構築する動きが、随所で即座に自発的に出現するのだ。……ケムニッツの事件に対して、ドイツ社会はこのような和解のレジリエンスを機能させることで、傷口を閉ざし、危機を乗り切ったかに見える。ドイツ社会の統合とコンセンサスはいま一度守られ維持されたのだろうか。レジリエンスは、万能のものとして機能しているのだろうか。10.おわりに――レジリエンスと「憂慮する」市民たちの今後
残念ながら、現実はそう簡単ではない。ケムニッツの事件とその顛末には、ドイツ社会のレジリエンスが動揺し変化しつつある兆候を見て取ることが可能である。これは、とくに事件に対する政治家の発言に見て取ることができる。暴力が振るわれたことに対しては、断固たる拒絶の意思を示すものの、外国人への連帯や共生社会への賛成を示す力強い言葉はそこにはほとんど聴かれず、むしろ難民を厄介者扱いし、非難するような発言が目立った。…………「憂慮する」ことが当たり前になりつつあるドイツ社会では、外国人に対する大小の暴力事件は、残念ながら今後も完全にはなくならないだろう。ケムニッツのような感情的な暴発もまた予期されるところである。(11.2019年3月21日加筆)
しかし、そうした事件のあと、今後も和解のレジリエンスが発動されることもまた確実である。多くの人が自発的に立ち上がり、街頭に出て、あるいはネット上で暴力にノーを叫ぶだろう。多くの抗議声明が出され、評論家は口角泡を飛ばして論じ、政治家は美辞麗句をちりばめた名調子で事件を非難し、今後の再発防止を誓うだろう。
しかし、もしかすると、和解のレジリエンスは、ひとびとの善意と真心を借りて、外国人への暴力事件がひとたびあったとしても、その衝撃を緩和し、社会を何事もなかったかのように修復してしまう魔法の道具、一種の通過儀礼にすぎなくなっていくのかも知れない。そうなれば、やがてはAfDや極右さえ、何食わぬ顔でレジリエンスに参加していくようになるかも知れない。
とはいえ、このようなドイツ社会のレジリエンスのあり方は、何かの事件が起こるたびに、お茶の間の賞味期限が過ぎるまではさんざんにマスコミが取りあげ、プライヴァシーを無視した取材をおこない、面白おかしく報道し、話題を独占しておいて、その後何の反省もなく完全に忘れ去られる社会より、どれほどいいか知れない。それはドイツ市民社会の本領発揮であり、精華である。2019年3月18日、ドレスデンのザクセン州立裁判所で、ケムニッツ殺人事件の容疑者の裁判が始まった。これをきっかけに、昨年夏の事件はもう一度ドイツ世論の注目を浴びることになった。……
危機にこそ、人間の真価がわかる。今この時代に読み直したいまったく新しい「論語」。
本書は、私自身が、この世界を生きるためのよすがを求めて、論語の言葉の響きを聞き取った、その報告である。
論語という、二千数百年という時間を越えてこの私に届いた奇跡の言葉には、人々の心を響かせてきた、何かがあるはずだ。
私はその何かを聞こうとして、多くの知識を蓄えつつ、耳を澄ませてきた。
その響きを本書ではお伝えしたいと思う。もちろん本書は、徹底して客観的たらんとしつつ、同時に、徹頭徹尾、主観的な書物である。
それゆえ、ここに書かれていることを、決して鵜呑みにしないで頂きたい。
一つ一つの言葉が、役に立てば役に立て、役に立たなければ、捨てて欲しい。
そして、論語について何かを誰かに言いたい、と考えたなら、必ず原文に当たり、
本当に私が聞き取った響きが聞こえるかどうか、読者自ら確認してほしい。
もし違った響きが聞こえたら、それがあなたにとっての論語なのであり、その響きを大切にして欲しい。
本書はそのための手がかりに過ぎないのである。(「序」より 著者よりコメント)
「仁」の基礎は「孝」であり、「孝」の基礎は親が子に与える「三年の愛」である。
「仁」たりうる人は、心の平安を得ている人である。それは自らに対する信頼がなければ不可能である。人が自分を信頼しうるようになるには、幼少期に無条件に「三年の愛」を両親から与えられている必要がある。そうすると、その子もまた自然に両親を愛するようになる。これが「孝」である。それゆえ「孝」が仁の元だ、と言われるのである。
「孝」は、親から子へと与えられる慈愛を基礎としており、そこから自然に生まれる感情であり、それが社会秩序の基礎となる。親が子供を愛することができず、子供が「孝」とならない社会は崩壊してしまう。「孝」たりえない者が無理に孝行しても、それはやっているフリに過ぎず、そのようなものは、社会秩序の基礎たり得ない。
「学習」回路を開いている者同士の間でコミュニケーションが成り立つ。
対話者の双方が学習回路を開いていると、双方は共に学び合いながら成長していく。このようにして達成される調和を「和」という。「和」であることによってはじめて、本当のコミュニケーションは成立する。そのとき、両者のやりとりのありさまを、「礼」にかなっている、と言う。「礼の用は和を貴しとなす」という言葉はこのことを意味している。
学習回路を閉じた者が、いくら礼儀作法に叶ったことをしても、それは慇懃無礼なだけであって、「礼」とは言えない。「礼」が横溢している場で人々が言葉を発するとき、その言葉に偽りはなく、それぞれの心と一致している。言葉と心とが一致している状態が「信」である。
君子は「和」を実現する相手とは仲良くするが、誰とでも仲良くするのではない。君子は、学習回路を停止させようとする者には敢然として立ち向かい、悪[にく]むことができる。それゆえ、善人からは好まれるが、悪人からは嫌われる。
君子は他人と意見を対立させることを恐れず、激しい「乱」を生みだすが、それは「義」にもとづく本気の応答であって、それゆえ最終的に相手と心を通わせて、高次元の「和」を生みだすことができる。
学習回路の閉じている状態が「悪」であり、そういう者を「小人」と呼ぶ。
論語では「仁」ではなく、学習回路の閉じている状態を「悪」と呼ぶ。そして君子とは逆に、学習回路が閉じている者を「小人」と呼ぶ。
小人は情報収集に余念がなく、情報や知識をかき集めて保身をはかろうとする。小人には「道」が見えないので、いくつもの選択肢の中から最適な道を選ぼうとして「惑」う。しかし、自分の選択が本当に最適かどうかは、人間にはわからないので、必然的に怯え、うまくいかないと僻[ひが]んだり、拗[す]ねたりする。自分自身を信じることが出来ないので、常に評価を気にしており、人と自分とを比べようとする。
君子は過[あやま]てば改めるが、小人はそれができないので、過つと言い訳や隠し事をする。小人は誰か力のある者からひどい扱いを受けると反発ができないので我慢し、腹いせに、弱い者に八つ当たりをする。小人は対立が苦手であって、「乱」をおそれる。それゆえ何らかの記号や意見や形式や規則を共にすることで同調し、「乱」を防ごうとする。これを「同」という。「君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず」というのはそういう意味である。こういう同調は長続きしないので、やがて亀裂が生じ、小人は仲間を裏切ることになる。これを「盗」という。
私は、このような論語の思想は、現代のに本社会でなんとなく「正しい」と考えられていることをことごとく否定し、まったく異なった倫理を体系的に提示しているように思える。『論語』は、古臭い保守的な書物ではなく、衝撃的で前衛的な革命の書だと、私には思えるのである。
私は論語の思想を、次のように捉えている。
「学習」という概念を人間社会の秩序の基礎とする思想である。
論語の冒頭は、「学んで時にこれを習う、亦たよろこばしからずや。」という言葉である。この言葉に、論語の思想の全ての基礎が込められている、と私は考える。
人間にはなにかを学びたい、という好奇心がある。その好奇心によって外部から知識を取り入れても、その段階で自分自身のものになっておらず、そればかりか、とり入れたものに自分自身を譲り渡す格好になっており、「振り回され」ている。
それが習練を重ねていると、あるときふと、しっかりと自分のものになる瞬間が訪れる。このとき、学ぶ者は学んだことに振り回されるのをやめて、主体性を回復する。これを「習う」という。
そうなったとき、人は、大きな喜びを感じる。人間は、そういう生き物である。この「学習」のよろこびに孔子は、人間の尊厳と人間社会の秩序との根源を見た、と私は考えている。
学習回路を開いている状態が、「仁」であり、仁たり得る者を「君子」と呼ぶ。
このような「学習」の作動している状態が「仁」であり、それができる人を「君子」と呼ぶ。君子は、自分の直面する困難を学ぶ機会と受けとめて挑戦し、何か過[あやま]ち犯せば、すぐに反省して改める。このような学習を通じて変化し、成長するのが、君子のあり方である。
もちろん君子は、他者の過ちに寛容であり、そこからの学びを促そうとする。しかし世間は往々にして、人間を型に嵌[は]めて「器」として使おうとして圧力を掛けてくる。それに負けて固定した「器」になってしまうと、もはや学習回路を停止し、君子ではなくなってしまう。「君子は器はならず」という言葉はそういう意味である。
それゆえ君子には、如何なる圧力にも屈しない「勇」が必要である。どんな状況でも、命を脅かされたとしても、自分自身を見失わず、学習過程を守りぬき、自らの心の中心にいる状態が「忠」であり、心のままに偽らない姿が「恕」である。「忠恕」の状態にあるときに、君子の前に進むべき「道」が広がっているので、道の「選択」を迫られることがない。その道を進むなかで見えてくる成すべきことが「義」である。
序章 人類史のルール
エマニュエル・トッドとは何者か
トッド理論のあらましを知る ~4つの家族類型といでおろぎー~
トッド理論で世界の謎が解ける ~人類史のルール~
第1章 トッドに未来予測を可能にする家族システムという概念
①絶対核家族 「イングランド・アメリカ型」
トランプ政権誕生は民主主義の理にかなっている
トランプ当選をもたらした「絶対核家族」
金銭解決に傾きやすい親子関係
『リア王』と『ハムレット』は財産をめぐる相続劇
過剰なグローバリゼイションによる疲弊
イギリスのEU離脱を促した隠された理由
②直系家族 「ドイツ・日本型」
EUの覇者ドイツ
イエの支配者としての父親の権威
東日本大震災でモラルの高さが賞賛された日本
③平等主義核家族 「フランス・スペイン型」
土地よりも家具が大事
フランス人がおしゃれになった理由
④外婚性共同体核家族 「中国・ロシア型」
大帝国が誕生する条件 ~権威ある父親と平等な兄弟~
大帝国が崩壊する兆し ~ソ連崩壊と乳児死亡率が語る~
家族類型とイデオロギーの相関関係
第2章 国家の行く末を決める「識字率」
トッドの家族理論はこうしてつくられた
古い様式はいつでも辺境に保存される
「土地の所有」が家族のかたちを変える
人の運命はあらかじめ決められているのか?
歴史を動かす最大の要素「識字率」
第3章 世界史の謎
①秦の始皇帝が焚書坑儒を行ったのはなぜ?
②ヴァイキングがブリテン島とフランスを襲撃したのはなぜ?
③十字軍エルサレム奪還が行われたのはなぜ?
④英仏百年戦争が起きたのはなぜ?
⑤ルイ14世が中央集権国家を築くことができたのはなぜ?
⑥フランス革命が起きたのはなぜ?
⑦イギリスで産業革命が起きたのはなぜ?
⑧ヒットラーが誕生したのはなぜ?
⑨世界初の共産主義国ソ連が誕生したのはなぜ?
⑩イギリスが失速し、ドイツがナンバー1になったのはなぜ?
⑪第二次世界大戦後、ドイツと日本が復興できたのはなぜ?
第4章 日本史の謎
①平安時代に藤原一族が権勢を誇れたのはなぜ?
②織田信長が延暦寺を焼打ちしたのはなぜ?
③「いざ鎌倉」の精神はどこから?
④徳川幕府が250年間も安定したのはなぜ?
⑤幕末の動乱が西南の地方から始まったのはなぜ?
⑥ヒーロー坂本龍馬が誕生したのはなぜ?
⑦海援隊や新選組が誕生したのはなぜ?
⑧明治政府が天皇を頂点に置いたのはなぜ?
⑨二・二六事件が起こったのはなぜ?
⑩太平洋戦争を始めたのは誰か?
⑪どんな占領軍でもしなかったのに、マッカーサーだけが行ったのは?
第5章 21世紀 世界と日本の深層
①2033年、中国が崩壊する日
②ロシアの安定はプーチンが独裁者だから?
③EUにとっての移民問題とは?
④EUは二つに分けるべきなのか?
⑤アメリカ平等主義は見せかけか?
⑥アメリカの黒人差別は終わらないのか?
⑦アフリカが近代化するためのカギは?
⑧最も近代化が遅れるのはイスラム圏?
⑨フランスでイスラム系テロが頻発するのはなぜ?
⑩日本の核武装の可能性は?
⑪日本会議はなぜ誕生したのか?
⑫直系家族・日本の人口減少社会に未来はあるのか?
第6章 こらからの時代を生き抜く方法
現代日本の新たな葛藤
下流スパイラルはなぜ起こるのか?
「学歴はもはや収入に結びつかない」に騙されるな!
日本の唯一の問題は少子化である
教育費は無料に、そして教育権を親から奪え!
シングルマザー救済運動のすすめ
2100年以後の世界 ~幼年期の終焉vs資源の枯渇~
あとがき


かつてはモルガン学説のように人類は昔は大家族だったものが時代が経つにつれて核家族に変わってきたと考えられていた。しかし近年ケンブリッジ大学のグループによる調査で、英国では12世紀までさかのぼっても核家族しか見られないことが判明し、人類の家族は最初から核家族だったと主張されるようになった。ところがトッドの調査によりドイツやロシアには昔は複合家族・大家族が存在していたことが分かり、トッドはケンブリッジ大のグループと袂を分かつことになる。
このようにトッドの学問は家族形態に関するものなのであるが、そのスタートにあったのは別の疑問だった。つまり人類の人口の変遷である。人類は長らく多産多死型社会だったけれど、やがて少産少死型社会へと移行する。ふつうに考えれば、栄養が悪くて医学も未発達だった時代には多産多死型社会になるしかなく、栄養が良くなり医学も発達すれば少産少死型社会に移行するという図式が思い浮かぶ。ところが、実際は少死になってもしばらくは多産のままに社会は続くのだという。その時に人口の大幅な増加が起こるのであり、今でもアフリカはそのような状態にある。
ではいつ(なぜ)少子化が始まるのか。トッドによれば、子供の数を左右しているのは女性の識字率である。女性の識字率が50%を超えると少子化が始まる。また、男性の識字率が50%を超えると革命や大変革など大きな社会的変動が起こるという。
さらに、女性識字率を決めるのは、家族システムだという。
そこで家族システムの話となる。従来は家族というと核家族か大家族かという区別しか考えられていなかったが、トッドはそこに遺産相続システムという要素を導入した。つまり兄弟の平等・不平等ということである。これによって家族は4つのタイプに分類される。
1.絶対核家族(イングランド・アメリカ型)
結婚した男子は親と同居せずに独立。相続は1人だけで、兄弟平等ではない。子は早く独立するから親子関係は権威主義的ではない。教育には不熱心(子供の早期独立を促すから)だが、女性の識字率は比較的高い(兄弟の不平等は姉弟・兄妹にとっては平等を生みやすい)。
2.平等主義核家族(フランス・スペイン型)
1と同じく子供は早くに独立するが、相続は兄弟間で平等である。親子関係は権威主義的ではない。教育には不熱心で、兄弟が平等である分、女性(姉妹)の地位は低い。
3.直系家族(ドイツ・日本型)
結婚した子供の一人(多くは長男)が親と同居するのが原則。親子関係は権威主義的。教育熱心で女性の識字率も高い。
4.外婚制共同体家族(ロシア・中国型)
男子は長男・次男を問わず結婚後も親と同居。したがってかなりの大家族となる。父親の権威は大きいが、財産は平等分与なので、父の死後息子たちは独立して家を構える。マルクス・レーニン主義による共産主義国家を生んだのはこの家族型である。教育には不熱心。女性の地位は低く、識字率も低い。
以上の、例えば4を見れば分かるように、家族の形態は共産主義革命の成否ともつながっており、それだけ大きな、単なる家族類型にとどまらない影響力を持つ、というのがトッドと著者の主張である。また、「そんなこと言っても先進国は今は核家族が主流でしょ」という異議に対しては、こうした家族パターンは、組織を作るときにも影響を及ぼすとされる。つまり社会のあり方そのものを規定しているということである。(後略)
エマニュエル・トッド氏は、世界の家族構成は、大きくは四つの類型に分かれるとしている。親子関係が「権威主義的」か「非権威主義的」か、つまり「子どもが結婚後にも同居する」か「結婚後は別居する」か、ということと、(子である)兄弟関係が遺産相続において「平等」か「不平等」かである。「この二つの変数をX軸Y軸に配すると、一見似たものどうしに見える家族の違いが、すっきりと四つに分類される」という。
親子関係が「権威主義的」で、(子である)兄弟関係が遺産相続において「平等」なのがロシア、中国、フィンランドなどの外婚制共同体家族である。男子は長男、次男の区別なく、結婚後も両親と同居する。このためかなりの大家族になる。父親の権威は強く、兄弟たちは結婚後もその権威に従う。ただし、父親の死後は、財産は完全に兄弟同士で平等に分割され、兄弟はそれぞれ独立した家を構える。トッド氏は、こうした父親の強い権威と兄弟間の平等がロシア・中国型の共産主義(スターリン型共産主義、一党独裁型資本主義)を生んだと考える。このような家族形態では、男の兄弟は平等でも、女性はそこから排除されるため地位は低く、多くの場合、女性の識字率は低い。教育への関心も低いという。なぜ(子である)兄弟が平等かというと、彼らはもともと遊牧民であったためだという。遊牧民は家畜を伴って草原を移動し、短期間の定着を繰り返すため、父親がリーダーとなり、兄弟が平等で協力することが合理的であった。戦争の際には大人数のため有利であった。遊牧民は土地を持たず、家畜や移動用のテント、家財、武具などが財産のため、分割は容易である。そうであるなら、このような家族形態の中国やロシアが民主主義的な国になる可能性は低いことになる。
同じように親子関係が「権威主義的」でも、(子である)兄弟関係が遺産相続において「不平等」なのが日本、韓国、北朝鮮や、ドイツ、オーストリア、スイス、ベルギーなどの直系家族である。親の権威は永続的で、親子関係は権威主義的、兄弟は不平等で、財産はその中の一人(多くは長男)に相続される。次男以下と女子は相続に与れないか、財産分与を受けて家を出る。長男の嫁は、未婚の兄弟姉妹に対して権威を持つことが求められるため、結婚年齢が高く、長男とあまり年の差がない女性が選ばれる。なぜ、(子である)兄弟が不平等になるかというと、農耕とそのための土地所有が関係していた。ドイツの例で言うと、ドイツの中南部の地方は山間で、平地が少なく、農地が限られていた。そこで農業を始め二代、三代と続くと農地の分割相続が難しくなる。このため、1000 年頃には一子相続という方法がはじまったという。
直系家族は教育熱心で、代々施される知育、教育は主として長男の嫁をキーパーソンとして、家庭内に蓄積されてきた。鹿島教授の言葉を借りれば「ドイツが、二度の世界大戦で敗者となり、また、再統一という試練があったにもかかわらず、さして間を置かずにヨーロッパの覇者となりえたのは、直系家族が大切にしてきた教育熱心さ、知識への信頼」にあったという。
親子関係が「非権威主義的」な形態でも、(子である)兄弟関係が遺産相続において「平等」か「不平等」か、で2つに分かれる。前者が平等主義核家族、後者が絶対核家族である。
平等主義核家族においては、子どもは早くから独立傾向を示し、結婚後に親と同居することはまずない。親の権威は永続的でないため、識字率は低く、教育への関心も低い。遺産は兄弟間で完全に平等に分けられる。フランスのパリ盆地一体、スペイン中部、ポルトガル南西部、イタリア南部、中南米などがこの家族形態で、ルイ 16 世王政に反対したフランス革命は、平等主義核家族のパリ盆地の民衆が起こした。「人間は生まれながらにして自由かつ法の前で平等である」との人権宣言はこのような家族形態がフランスにあったから実現した。フランスのパリ盆地は肥沃で平坦な地域だが、広大な耕地は領主貴族や大ブルジョワが保有し、農民は小作料を払って土地を借りていた。このため財産としての土地を子に受け継がせることができなかった。そこで農具、工具、家畜、食器、家具、衣服などが遺産として平等に分割された。これらの動産を平等に分割するためのオークションも古くからあったという。フランス人がおしゃれなのも、衣服や靴、帽子などが換金性の高い商品であったことと無縁でないというから面白い。
親子関係が「非権威主義的」で、(子である)兄弟関係が「不平等」なのが絶対核家族で、イングランド、アメリカ、オランダ、デンマーク、オーストラリアなどがこの形態だという。結婚した男子は親とは同居せず、別の核家族をつくる。このため、親の権威は永続的でない。親の財産は兄弟の中の誰かに相続されるが、遺産などで明確にされないときには相続をめぐってしばしば争いが起きる。不平等が前提のため、競争意識が強く、それが資本主義、自由主義を生み出すエネルギーになった。子供の早期独立が推奨されるため、教育には熱心でなく、識字率も低い。イギリスが生んだ偉大な劇作家・シェイクスピアの「リア王」「ハムレット」「リチャード三世」などが財産相続をめぐる親子、兄弟間の争いをテーマにしているのも絶対核家族ゆえだという。イギリスで産業革命が起き、最初の資本主義国家になったのも、農地を持たない国民が簡単に農村を離れて工場労働者として賃金を得ることに抵抗感がなかったためだという。
なお、この点は全ての家族形態に言えることであるが、たとえば地方に行けば直系家族が中心かもしれないが、東京に住む核家族の家庭では日本古来の直系家族の原理は働いてはいないのではないかというと、そうではないという。なぜなら、政府、官僚組織、政党、会社、學校、宗教団体、町内会、部活といったあらゆる集団が古くからある価値を保っているからだという。家では核家族でも、一歩外に出れば日本やドイツなどの場合には直系家族を前提にした仕組みや考え方に、ロシアや中国などでは外婚制共同体家族が前提の仕組みや考え方になっているという。
このような分類を基準にすると、世界で起きている最近の出来事の多くも説明できるという。
たとえば、アメリカでアングロサクソン系の白人労働者が中南米からの移民と対立し、トランプ大統領が当選したのも説明が可能だという。絶対核家族は教育に対して熱心でなく、低学歴、低収入になる傾向が強い。メキシコなどからアメリカにきた移民の多くはヒスパニックと呼ばれる人たちで、スペイン、ポルトガルの流れをくむ平等主義核家族である。彼らもまた教育に熱心でなく、低学歴、低収入になる傾向が強い。このため、労働市場で両者が完全に衝突してしまった。鹿島教授の言葉を借りれば「絶対核家族に内在する教育不熱心という要因がプア・ホワイトの社会的上昇を妨げ、更なる貧困の連鎖を生んでいるということがトランプ当選の真の理由」だという。
イギリスのEU離脱も似たような話である。イギリスの白人労働者階級も教育に熱心でなく、移民との競合が起きてしまった。加えてEUは、経済的にも政治的にもドイツに握られている。ドイツは直系家族のためEU議会の運営も直系家族型にならざるを得ない。それは自由を大事にしてきた絶対核家族のイギリスには我慢がならないのだという。
日本がかつてアメリカとの戦争に突き進んだのも、最近話題となっている「忖度」(そんたく)も直系家族と関係があるという。直系家族は父親に権威があることになっているが、実際には主体的な判断はほとんど行わず、皆が権威者である父親の意をくんで(忖度して)、それぞれがその意を実現する方向に向かって一斉に行動する。日本が太平洋戦争に突き進んだのも、大企業でさまざまな問題が相次いでいるのも、「最終的な意思決定者の不在」「意思決定機関の不能」にあり、「直系家族的組織の欠陥」であるという。
エマニュエル・トッド氏が説く4つの家族形態にはそれぞれにメリットとデメリットがある。大切なことは、それぞれのメリットとデメリットを正しく理解したうえで、当面するさまざまな課題を考え、解決する際の「考えるツール」として上手く利用していくことではないだろうか。鹿島教授の著書「エマニュエル・トッドで読み解く世界史の深層」は、膨大なトッド氏の研究成果をわかりやすくまとめた好著である。
はじめに 人は土のふしぎな力を知っていた
人と土との長いつきあい
土の性質とふしぎな力
1 土ってなんだろう
やってみよう 土は何からできている?
土は小さな粒の集まり
土をふるってみよう
土を水に溶いてみよう
行ってみよう 崖へ行って地層を観察しよう
あなを掘ってみよう
崖を見に行こう
観察 あなを掘って観察してみよう
やってみよう 黒土はミミズが作った
腐葉土って何だろう
ミミズの生活
黒土はミミズが作った
腐葉土を燃やしてみよう
ミミズの糞を探そう
ミミズを解剖してみよう
コラム 落ち葉で堆肥を作ろう
やってみよう 黒土は燃える?
黒土の下に赤土がある
赤土から黒土へ
黒土は燃えるだろうか?
観察 土壌動物を採集しよう
手順と観察
発展
ツルグレン装置の作り方
調べてみよう 黒土を作るもうひとつの主役
「パイ」のような落ち葉
落ち葉とカビやキノコ
倒木や切り株も黒土になる
キノコが生えた倒木や切り株を調べてみよう
バクテリアのはたらきを調べよう
やってみよう 赤土はどうやってできたか
火山の爆発と火山灰
火山灰が赤土になる
火山灰と溶岩は兄弟
赤土から鉱物の結晶を取り出そう
行ってみよう 山では岩から土ができる
山ができるまで
山は岩でできている
山に土ができる
花こう岩を粉々にしてみよう
2 土のもつ力を調べてみよう
やってみよう 水はけのよい土、水はけの悪い土
粒と粒のすき間と水はけ
土の水もち
いろいろな土の水はけを調べよう
実験のための装置を作ろう
土の毛管力と水もちのよさを調べてみよう
実験1:土の毛管力を確かめる
実験2:土の水もちのよさを調べる
ねった土を乾かしてみよう
やってみよう 肥えた土ってどんな土?
植物と肥料
肥料として重要な原子
いろいろな土でハツカダイコンを育ててみよう
調べてみよう 植物は電気を帯びた原子を吸収する
根は原子をイオンの形で吸収する 陽イオン、陰イオン
粘土の粒も電気を帯びている
作物は酸性の土に弱い
結晶粘土鉱物が電気を帯びていることを確かめよう
土の酸性度を調べよう
3 土がくらしを支えている
行ってみよう 畑の土にさわってみよう
畑はどこにある?
畑を見学に行こう
コラム 明治時代の1年間の農作業
考えてみよう 畑を耕すのはなぜ?
ふかふかした土
団粒構造とは
団粒構造を育てる
コラム はだしでイモ掘りに挑戦しよう
作ってみよう 有機肥料をみなおそう
化学肥料を大量に使う現代の農業
どんな問題があるのか?
昔は肥料をどうしていたのだろうか?
堆肥や厩肥の効果
江戸の都市と農村のリサイクル
有機肥料でダイコンを育ててみよう
コラム 郷土史で人間の糞尿の売買を調べてみよう
考えてみよう 作物の作り方と土との関係は?
野菜の単作・連作が増えている
単作・連作で野菜の病気が増える
かつておこなわれていた輪作
コラム ヨーロッパで発達した輪作
コラム 焼畑農業と輪作
行ってみよう 畑で土壌侵食がおきている
肥えた土が失われる
日本でも土壌侵食が大きな問題に
土壌侵食と防風林
収穫が終わったあとの畑を観察しよう
雨あがりの小川や畑を観察しよう
行ってみよう 単作・連作がおこなわれる水田
水田はどこにあるのか?
水田はいつも水をはっているの?
水田の土の特徴
水田の褐色の土を青色の土(グライ)に変えてみよう
コラム 水田の水はどこから引くのか?
低地の水田の場合
大きな川の近くの水田
棚田の場合
谷津田の場合
おわりに
すすむ砂漠化
砂漠とは、どんなところ?
砂漠が広がっている
世界の砂漠化に日本も関係している
都市も「砂漠化」している
畑や水田を見なおそう
はじめに 日本は森林の国
木と草
日本の気候と森林の関係
地図 地球上の森林の分布
地図 日本の植生の分布
1 原っぱへ出かけてみよう
身近な原っぱ
人工的な植物の世界
調べてみよう 草原はどこにあるの
ごくわずかな自然の草原
木が育たないきびしい環境
砂丘に草原ができる
水辺にも草原ができる
自然の草原はもろい自然
山の草地は人間が管理
やってみよう 原っぱで寝ころがってみよう
原っぱで寝転がってみよう
1 見あげると何が見える?
2 どんなにおい
3 小動物を探してみよう
4 服に何がついた?
コラム 原っぱの草で遊んでみよう
1 草相撲で遊ぼう
2 茎で何か作ってみよう
3 「ひっつき虫」で遊ぼう
4 音を楽しもう
5 風車を作ってみよう
6 そりで遊ぼう
行ってみよう タンポポを探してみよう
タンポポはどんな花?
タンポポの茎はどこにある?
いろいろな草の茎 生育形
1 まっすぐで長い茎 直立形
2 なんども枝分かれする茎 分枝形
3 地面すれすれの短い茎 ロゼット形
4 葉のもとで包まれた茎 叢生形
5 地面をはいまわる茎 ほふく形
6 つるになる茎 つる形
植物にも競争がある つる形>直立形>分枝形、叢生形>ロゼット形
タンポポの生える場所
タンポポが生えている環境
帰化植物が生活する土地
コラム 草の体 根、茎、葉
帰化植物と在来植物
作ってみよう タンポポ地図を作ってみよう
セイヨウタンポポと日本タンポポ
タンポポ地図を作ってみよう
コラム タンポポの開花前線
調べてみよう 原っぱの植物の世界は移り変わる
原っぱの草の種子
種子の数をかんがえてみよう
種子は芽をだすの?
空き地で種子を探そう
移り変わる原っぱの草の世界 一年草、越年草、多年草
考えてみよう 原っぱから環境を考える
明るい緑の自然が大好き
森を出たサル
草の緑を維持するには
2 身近な森や林を探検しよう
人が森は林を切り開いた
森や林が残ったところ
鎮守の森
調べてみよう 鎮守の森を訪ねてみよう
鎮守の森のつくり
鎮守の森の気温を調べてみよう
気温の測定
まとめ
温度計の工夫
鎮守の森の明るさを調べてみよう
明るさの測定
まとめ
やってみよう 鎮守の森は動物の隠れ家
小動物を探してみよう
お堂の縁の下の小さなすり鉢
庭木の根元の袋
お堂に張られた大きなクモの巣
アニマル・トレッキングに挑戦しよう!
かじられたドングリの殻
ずばっと切られたジャノヒゲ
甲虫の羽のかたまり
この抜け殻はどんなセミになるの?
行ってみよう 雑木林の四季を見てみよう
春先の雑木林
夏の雑木林と樹液
秋の雑木林
糖蜜で昆虫を採集しよう
糖蜜の作り方
昆虫の採集
落ち葉の布団に座り、まわりの音を聞いてみよう
冬の雑木林と落ち葉の布団
1 落ち葉がつながっている
2 落ち葉のスポンジ
3 土壌動物の世界
コラム ドングリでミニ雑木林を育ててみよう
行ってみよう 雑木林の木は自然に生えたの?
きれいに並んだ木
再生可能なエネルギー資源
雑木林の維持
3 森のはたらきを知ろう
植林された山の林
スギ・ヒノキ林の手入れ
枝打ち
つる切り
間伐
放置されるスギ・ヒノキ林
豊かな自然が残るブナ林
減少するブナ林
大型野生動物と人間とのトラブル
観察 手入れされたスギ林を観察しよう
1 植林された証拠を探そう
2 枝打ちのあとを探そう
3 つる切りのあとを探そう
4 間伐のあとを探そう
調べてみよう 森林は生きたダム
雨の日の森
森はダムになる
枝葉がとらえる雨の量を調べよう
幹を流れる雨水の量を調べよう
腐植が含んでいる水の量を調べてみよう
おわりに 森のネットワークをつくろう
森のさまざまなはたらき
森の価値をみなおそう
自然の権利
分断された森林
森のネットワークを作ろう
森の土の仕組み
縁の下の力もち?
森の土の表面の住民たち
森の土の4つの層
森の土の豊かな生態系をつくる
森の植物連鎖は、森の土があってこそ
底辺がせまいピラミッドは、背も低くなる
栄養豊かな森の土は
有機物とねん土や砂とのミックス
いちばん豊かな土をもつ森は温帯林
豊かな農地は森のめぐみ
人のくらしのために森は減っていく
降った雨のゆくえは土の表面しだい
森は天然のかさ
土の表面の穴がつぶされると、水たまりになる
地表流が、豊かな土を流してしまう
地表流の威力
道路わきの土を流し出さないために
地表流を防ぐのは、落ち葉と草
森と川の切っても切れない関係
土にしみこんだ水は地下水になる
おいしい水は森がつくる
わたしたちのくらしにうるおいをあたえてくれる森
北海道襟裳岬の植林
300haの植林で水あげ高は17倍
洪水と緑のダム
川の水の増加は時間差こうげき
おそろしい洪水
洪水が起こる仕組み
森は川の水が増えるのをおくらせる
森の土は少しずつ水を流し出す
日本は川の水の量が一定していない
森とダムがそろってこそ、水をむだなく使える
森も水を使う
森が受け止めた雨がそのまま蒸発する「遮断蒸発」
土の中の水を吸い上げて蒸発させる「蒸散」
森がないと気温を上がる
都会の中の森は「クールアイランド」
森は水を使う
水をあまり使わない森をつくるには
自然災害に立ち向かう森
日本は世界中で最も大地の動きがはげしいところ
日本は台風の通り道
山くずれは2通り
森は土がくずれるのを防ぐ
山くずれを防ぐ工事
災害を防ぐ力が期待されている「保安林」
水は世界をめぐり、森は気候を安定させる
命の水はほんのわずか
地球上の水は循環する
森がない大陸は、おく地に雨が降らない
森は「海」
森の土を大切にしよう
はじめに
第1章 「弱さ」とは何か?
生きものにとっての「強さ」とは
弱肉強食?
ナマケモノとの出会い
「弱肉強食」を超えて
ナマケモノの低エネ生活
ライオンとシマウマはどっちが強い?
生き残ったものが強い!?
自然から学ぶ
オンリーワンの場所
ナマケモノになろう
棲み分けて共存
世界に一つだけの花
第2章 動物たちに学ぶ
ナマケモノから学ぶこと
肝心なことは目にみえない
「ナマケモノになる」ということ
ナマケモノの弱さに寄り添う
ナマケモノのメッセージ
この世界はだれのもの?
ナマケモノとシャーマンが来てくれた
人間だけが人間とは限らない
人間の方が「上」なのか?
「動物人間」たちとのつき合い方
ビーバーになる
人はかつて樹だった
第3章 野生との和解に向けて
「人間が上」が当たりまえか
注文の多い料理店
きさまらのしたことはもっともだ
何がほしくておれを殺すんだ
非対称性の住人
自然界へと通じる道
あらゆるものの共有地
二元論を超えて
山猫からの葉書を受けとるには
第4章 「弱さ」が輝き始めるとき
自然は人間に何を求めているのか?
野生へと通じる小道
文明vs自然という二元論
世界は耳を澄ましている
牛は神さま
ニワトリへの暴力と人間同士の暴力
「民主主義」を定義し直す
自然と女性
「ほんとに魚はかわいそう」
「みんなちがって、みんないい」
アース・デモクラシー(地球民主主義)
「進化」を定義し直す
ゴリラのイシュマエル
そして最後に人間が登場した
扇形の生命史
生物に優劣はつけられない
どれも甲乙つけがたい
物と心の二元論
生きものの知性
みんな巧に生きている
勝ち負けなし!
ゴリラにとって弱さとは?
勝ち負けのない社会への進化
分かち合いと弱さ
人間がサル化している!?
第5章 弱虫でいいんだよ
人は愛なしには生きられない
生物としての人間
「遅さ」という「弱さ」からの出発
弱さを引き受ける
生きることは愛すること
ちょうどいい小ささ・ちょうどいい遅さ
「進歩」という思考方法
進歩の罠
スモール・イズ・ビューティフル
スロー・イズ・ビューティフル
競争を超えて
競争原理
ブータンからの問いかけ
競争という“常識”を疑う
競争の“土俵”を降りる
祈りの装置
「フェア」な世界へ!
「フェア」が人間をつなぐ
「フェア」の可能性
声なき声に耳を澄ます
「弱さ」のジャングル
おわりに

※群馬県道255号群馬県道255号下久屋渋川線についてはヨッキれんさんの『山さ行がねが』(略称:やまいが)の道路レポート〈5〉の頁の道路レポ-96群馬県道255号下久屋渋川線(全4回)が素晴らしい。ありがとうございます。ねが
群馬県道255号群馬県道255号下久屋渋川線 第2回
群馬県道255号群馬県道255号下久屋渋川線 第3回
群馬県道255号群馬県道255号下久屋渋川線 最終回
地質
1.埼玉県東松山市の地質
1.1概要
1.2東松山市の地質図
1.3東松山市大字神戸鞍掛山の地質図
2.東松山市の基盤岩類
2.1吉見変成岩類
2.2柏崎の頁岩
2.3基盤岩類から供給された神戸層の礫
3.東松山市の新生代 新第三紀の地層と化石
3.1新生代新第三紀の地層(海成層)の対比
3.2 1回目の海の時代(約1600~1500万年前)
3.2.1荒川層
3.2.2市ノ川層
3.2.3野田層
3.2.4福田層
3.3隆起して陸化した時代(約1500万年前)
3.4 2回目の海の時代(約1500~1100万年前)
3.4.1神戸層
3.4.2根岸層
3.4.3将軍沢層
3.4.4葛袋の岩石、鉱物
3.4.5葛袋の化石
3.5陸の時代(約1000~300万年前)
3.6東松山市の新第三紀までの深度
4.東松山市の新第三紀末~第四紀の地層と化石
4.1河川の時代(約300~100万年前)
4.2やや冷涼な次代(約73~13万年前)
4.3台地形成の次代(約13~1万年前)
湧泉
5.東松山市の湧泉
5.1新第三系と段丘礫層の境界から湧出するパターン
5.2中位段丘の段丘崖から湧出するパターン
5.3武蔵野段丘の段丘崖から湧出するパターン
5.4武蔵野面の窪みや谷から湧出するパターン
5.5立川段丘の段丘崖から湧出するパターン
地層・岩石の利用
6.東松山市の地層や岩石の利用
参考文献
協力者・協力団体
執筆者略歴
ごあいさつ
もくじ埼玉県の自然を一望してみよう第1章 博物館と秩父の自然
1 日本地質学発祥の地と博物館
2 長瀞の自然
3 ジオパーク秩父
4 埼玉県立自然の博物館第2章 地質
日本列島の中の埼玉
埼玉県の歴史
1 大洋の時代 石灰岩・チャート・緑色岩の形成
古生代石炭紀~中生代三畳紀(3億年~2億100万年前)
大洋の時代の岩石と化石
武甲山の地質と石灰岩採掘
コラム:放散虫革命
2 大陸の時代 付加体の形成
中世ジュラ紀~新生代古第三紀(2億100万年から2500万年前)
秩父帯・四万十帯
三波川帯
コラム:国会議事堂に使用されている埼玉県石材
領家帯と跡倉ナップ
山中層群
3 古秩父湾の時代 日本列島の原型形成
新生代新第三紀(約2500万年~約1000万年前)
秩父盆地の地層と化石
古秩父湾堆積層及び海棲哺乳類化石群
丘陵の地層と化石
4 列島の時代 現地形の形成
新生代新第三紀中新世(約1000万年前)~第四紀(現在)
秩父トーナル岩と秩父鉱山
ゾウが来た道
ヒトの時代へ
コラム:平野の地形
日本一広い関東平野
気候変動と河岸段丘
関東造盆地運動 沈降する埼玉北部
秩父盆地の川成段丘
コラム:埼玉県産の鉱物第3章 生物
埼玉県の生物相
気候と植生帯
埼玉県のシンボル
1 低地
冬鳥のたたずむ池や沼
コラム:河川敷の生きもの
コラム:外来生物
2 台地・丘陵
冬枯れの雑木林
コラム:人の暮らしと生きもの
緑の濃い夏のアカマツ林
3 山地
彩られる秋のブナ林と渓流
コラム:ニホンジカの増加による影響
コラム:水滴散布
石灰岩に刻まれた自然の造形
4 亜高山
シャクナゲ咲く初夏の原生林
コラム:林床をかざる 美しいコケの世界
様々な生きものの暮らす原生林
コラム:針葉樹林の更新
コラム:森をささえる 菌類の役割
岩場に生きる
コラム:不思議な生きもの 地衣類
参考文献
施設案内
利用案内
知って!埼玉 ~化石でたどる2000万年~(埼玉県立自然の博物館発行、2019年7月)
ごあいさつ
プロローグ 埼玉県のトリセツ
日本そして埼玉県の誕生
埼玉県の基本データ
日本の、そして埼玉の生物はどこからやってきたのか
化石からたどる生物相の成り立ち第1章 古秩父湾の時代 ~秩父の海の誕生から消滅~
秩父の海の盛衰と化石
比企丘陵の化石 ~他地域に見られる古秩父湾の時代の化石~
荒川河床の化石 ~寄居・深谷~
荒川から大発見 73本の巨大ザメの歯
古秩父湾の時代の海の王者 史上最大の魚類メガロドンとは
埼玉にサイがいた!? ~埼玉の海の時代の終焉~
サイがいた森 楊井層の植物化石第2章 ゾウの時代 ~大陸との接続と分断
大陸からの分析 ~仏子層の化石と古環境~
日本を代表するアケボノゾウ化石産地
大陸との接続第3章 巨獣の時代 ~古東京湾の時代~
関東平野を広く覆う海 ~古東京湾の時代~
ナウマンゾウが連れてきた!? 日本の生物たち第4章 人類がやってきた ~変わりゆく生物相~
奥東京湾の時代 ~人類の時代のはじまり~
本州最古の縄文人前身骨格 妙音寺洞窟埋葬人骨
現代型生物相の形成と崩壊
消えゆく生物と露頭資料篇展示資料一覧
研究ノート
埼玉県産パレオパラドキシアから分かること
菅沼標本からわかること
日本のサイ化石 カワモトサイの重用性
小型化したゾウの謎に挑む
根小屋産出哺乳類化石群
ツキノワグマはいつからツキノワグマか?
鳥獣被害を知ってほしい鳥獣被害はなぜ問題化するのか鳥獣被害はヒューマンエラー「地域ぐるみ」の取り組みが重要現場では 飯能市の取り組み現場では 毛呂山町の取り組みJAの取り組み取材を通じて



保科百助の「百助」は「ひゃくすけ」なのか「ももすけ」か。協和村(現・佐久市望月)で生まれた比田井天来との交わりの有無について本当のことを知りたいと願っている岩上さんは、保科百助という人物を大きく4点から評価しています。
①体験型教育の実践者であり、差別の愚[ぐ]なることを力説し、差別撤廃[てっぱい]のために尽力[じんりょく]した謹厳実直[きんげんじっちょく]な教育者。
③自己本位で、悟[さと]らんとして悟りきれない煩悩[ぼんのう]の世界に住んだ鬼才[きさい]。
④奇行[きこう]と毒舌[どくぜつ]の人という半面、シャイで、心優しいユーモリスト。
保科百助という人物についてさらに図書を紐解いて学んでみたくなりました。

両親の位牌を見ては思ふかな 線香立つるかゝをほしなと

山梨県峡東地域の果樹農業システムが日本農業遺産に認定(2017年3月、全国8地域初認定)
●峡東地域の果樹農業システムの特徴
峡東地域はわが国におけるブドウ栽培発祥の地とも云われており、地形や気候を巧みに利用しながら、長い年月をかけて高品質な果実を生産するための高度な栽培技術を作り上げてきました。
例えば甲州式と呼ばれる江戸時代に考案されたブドウの棚式栽培や、手間ひまをかけた、きめこまかい栽培管理は世界的にも独特の技術であり、生産された果実は国内はもちろん海外でも高く評価されています。
また、800年あるいは1300年前から栽培されてきたブドウの「甲州」をはじめ、本地域で栽培している果樹の品種・系統はモモやスモモ、オウトウ、カキなど[この5品目だけでも]300種以上にのぼるなど、他に類をみない多様性を有しています。
こうした歴史ある果樹農業は、400年の歴史をもつ枯露柿(ころがき)生産やワイン醸造、農業の観光利用などと組み合わされ、現在でも地域の暮らしを支える産業として重要な役割を果たしています。
●盆地に適応した山梨の複合的果樹システムとは
扇状地の傾斜地を中心に多くの品目・品種を栽培し、品質の高い果実の生産をするとともに、果実加工や農業の観光利用などを組合わせ、地域の暮らしを支える産業の維持と生態系との共存を図ってきた持続的かつ独創的な農業システムです。
多様な果樹栽培
地形、気候に適応した栽培技術
多様な遺伝資源、品種開発
四季折々の美しい景観
生物多様性
里山と平地をつなぐ緑のネットワーク
動植物の生息環境の提供
雑草を利用した草生栽培
果実加工と果樹農業の観光利用
地域独自の加工技術
多面的な生計保障による農家経営の安定
地域経済への貢献と雇用の創出
峡東地域の農地の多くは扇状地にあり、不整形で狭く、傾斜や起伏、土壌などの立地条件は様々です。
農家は、扇状地という立地条件や多雨・湿潤な自然条件に適応できる作物としてブドウ、モモなどの落葉果樹の栽培を行ってきました。
適地・適作により、扇状地の条件に適応し効率的に利用する独特の土地利用を行うことで、世界トップレベルまで果実の高品質化・高付加価値化を進めることにより、収益性の高い農業経営を実現しています。
長い歴史の中で、峡東地域の農家の知恵と工夫、努力により、小規模な家族経営農家の暮らしを安定的に支えることが可能な、優れた果樹農業システムが築き上げられています。
●将来にわたり守り継承しなければならない峡東地域の果樹農業システム
「果樹の農業生物多様性」
多品目、多品種・系統の果樹栽培
地域に自生する草種を利用した草生栽培
「扇状地に適応した独特なランドスケープ」
複雑な立地条件に適応した巧みな土地利用
「伝統的な知識システム」
甲州式ブドウ棚
きめ細かな管理による世界最高水準の高付加価値化
果実加工や観光利用
●世界的に重要な課題、現代的な課題への貢献
「持続可能な開発目標(SDGs)との関連」
1 貧困をなくそう
2 飢餓をゼロに
5 ジェンダー平等を実現しよう
7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに
8 働きがいも 経済成長も
10 人や国の不平等をなくそう
12 つくる責任 つかう責任
13 気候変動に具体的な対策を
15 陸の豊かさを守ろう(峡東地域世界農業遺産推進協議会パンフレット)
次に資源の活用についてです。1年間に1000tもの松葉や枯れ枝が落ちてきているという調査結果があります。ボランティアの参加者数が急増し、集められる松葉や枯れ枝も増加し、処分費用が高額となり、松原の中に放置され、景観の低下や松くい虫(害虫)の温床となる問題がでてきました。そこで、これらを資源として活用するための検討を行ってきました。
- 松葉に関しては、たばこ農家が苗床としたり、油粕と混ぜて堆肥として活用されています。
- 枯れ枝に関しては、活用方法がなく、多額の費用をかけて処分をしていました。そこで、2011年からは木質ペレットに、2014年からは、企業と連携してフルボ酸を抽出しシャンプーに、2016年からは、里山で困っている竹に松葉を詰めて薪にして薪ストーブの燃料として活用、さらに、農業用の炭もつくりました。この時に焼き芋をつくって参加者にふるまうと、大変喜んでいただきました。この様に、色々と試してきましたが、「生産効率の問題」や「消費先の課題」もあり実用化には至っていません。
要約:虹の松原の衰退につながる松葉の堆積の対策として、松葉を屋上緑化の土壌代替材として利用することを試みた。保水性・軽量性を比較するために、「松葉」「松葉炭」「粉砕松葉」「粉砕松葉炭」「木炭」「マサ土」の6種類を用意した。保水性は芝生が無濯i既で、枯れない期間と可能蒸発最・蒸発散量の関係を調べることにより検証した。その結果、松葉、マサ土、松葉炭、粉砕松葉炭、水炭、粉砕松葉の順に枯れ、松葉以外はマサ土より保水性が高いことがわかった。 HYDRUS-2Dによるシミュレーションを行った結果も、完全には一致しなかったものの実験通りの順番に蒸発散比が減少し始めた。軽量性についてはマサ土以外で、飽和密度が約 1(g/cm3)と屋上緑化に利用できる数値であった。保水性・軽量性を考えると粉時松葉、粉砕松葉炭については屋上緑化の土壌代替材として利用できることがわかった。
要約:堆積松葉の有効利用法の一つとしての松葉炭の水質浄化能力を明らかにするため、備長炭および砂を比較対象として検討、考祭した。その結果、松葉炭のCOD[化学的酸素要求量]に対する浄化能力は備長炭と比べて低く、砂と同程度であり、さらに、微生物を付着させることで高い硝酸イオン除去能力を示すことが確認された。
摘要:近年、佐賀平野ではクリークの水質環境の悪化が顕著になっている。また、佐賀県内では松原の堆積松葉や水路に繁茂するホテイアオイの処理が問題となっている。本研究では、これらの課題を同時に解決する方法として、これらの植物を炭化物にし、それをクリーク水の浄化に利用することについて検討した。実験の結果、松葉炭、ホテイアオイ炭ともに、溶解性成分の溶出を施した場合、リン成分に対して高い浄化能力を示すことが明らかとなった。
現在、虹の松原のほとんどの堆積マツ葉は葉タバコ農家によって、温床や堆肥として利用されています。しかし、その葉タバコの生産量も減少傾向にあり、今後は他の用途についても検討することが急務となっています。
そこで、堆積マツ葉の有効利用の一つとして、マツ葉を炭化させた「松葉炭」の水質浄化剤や土壌改良材としての可能性について検討されています。
マツ葉炭の作り方 研究材料としての松葉炭を使用する場合は、炭化温度、炭化時間を一定にする必要がありますが、そうでない場合は簡単にたき火を利用して作ることができます。同じ方法で松かさも炭化でき、唐津市の東唐津小学校では環境教育の一環として、炭化した松かさで消臭剤も兼ねた置物を製作しており、生徒達に好評です。
佐賀大学の研究では一定の温度にした電気炉の中に、マツ葉を詰めた鉄製の缶(直径7.5㎝、高さ15㎝)に30分間入れて炭化させました。この時、炭化に伴って発生するガスを逃がすために缶に直径3~5㎜程度の穴をあけておくことが大切です。発生するガスによって蓋がはずれないように針金などでしばっておきます。
虹の松原は国有林であるから、西九州たばこ耕作組合玄海支所は森林管理署との間で毎年、松原250ha中180haにおいて一定分量の松葉の採集契約を結んでおり、その中でゾーニングによって同耕作組合所属の各地区での利用が行われている。各地区にゾーニング配分された区域での松葉採集方法は地区ごとに異なっており、呼子町、唐津市、肥前町の各地区では所属する葉タバコ栽培農家全員、あるいはその中の一定メンバーによる共間作業による採集が行われている。また、個人での採集作業も少なくない。ともに年末、年始の休みを削つての忙しい作業である。


タバコ農家による松葉の利用
25年ほど前から、虹の松原では全面積230haのうち180haの松葉が 唐津市周辺のタバコ農家によって収集され利用されている。
その方法は以下のとおりである。
まず12月頃に松葉を収集しやすくするために除草しておく。次に1月頃に松葉を採取する(写真)。採取後1年間は苗床(子床)として使用し(写真2略)、その後1年かけて堆肥化して土壌改良材として利用している。
時々 ボランテイア活動で松葉かきをしてたまった松葉を収集に行くこともあるが、多忙な時は行けないこともある。
苗床は20~25℃程度にする必要があるので、電熱線を利用することもあるが、松葉で苗床を作ると、昼間の太陽からの輻射熱を吸収、蓄熱して、夜間の温度の低下を防ぐ作用によって、適温に保つことができる。
次年度は、苗床から松葉を出し、それに油かすや草、カヤ、アシ、麦わら、常緑樹の落ち葉などを混ぜて、発酵させて堆肥を作る(このとき40℃近くになることもある)。
ゴルフ場の松葉には芝も混じっているので、発酵がすすむが、これだけでは良い堆肥はできないので、油かすや牛糞を加えると3ヶ月早く、良い堆肥ができる。
注1.松葉1トンにつき油粕を20kg入れて、水を加える。ビニールシートをかけて15回ほど切り返すと良い堆肥が早くできる。
注2.松葉を利用するようになる以前は、カヤ、わら、ヨシなどを刈り取って、使用していたが、採取場所も少なくなったために、今は安定的に採取できる松葉を利用している。
注3.松葉に何も加えずに3年間自然条件下に置いたものは肥土(ラン栽培に適している)として利用している。
注4.地表面に樹木、草、こけなどがあると、松葉かきが困難であるので、松葉だけが砂地に堆積していれば、容易に採取できる。また 一カ所に収集してあれば、非常に助かるとのことであった。
注5.松葉のC/N比は50~60あり、炭素成分が多く、堆肥になるのが遅い、また松葉でつくった堆肥は酸性であるので、注意すること。
目的
三保の松原は、富士山が世界文化遺産として登録された中に含まれた景勝地です。その景観をなす約5万本の松の保全には、将来にわたっても大きな課題となっています。落ちた枯れ松葉の清掃も松の生育には必要な作業でありボランティアなどの協力により実施しておりますが、落ち葉の収集にも大変な労力を費やしているのが現状です。収集された松葉を処理し地域で活用できれば、収集作業の労力軽減にも役立ち、地域の環境にも貢献できるものと考え、松葉の再利用の一つとして堆肥化させて肥料として利用する方法も報告されているので、三保の松原で実証することにしました。
※『三保の松原の松葉を有効利用した環境保全への取り組み』概要報告書成果
■松葉堆肥の作成方法
市販の回転型コンポスターを用いて、乾燥松葉3~7kgに対して1kgの堆肥化促進剤を加え、2ヶ月間撹拌しながら生ごみ類(乾燥松葉の1~10倍程度)を入れて、その後1ヶ月間熟成させることで、AとBの二種類の堆肥を作製しました。(A:羽衣ホテル生ごみ、B:一般家庭生ごみ) なお、堆肥化時の注意点として、
- コンポスターを屋外に設置するため、気温が低下する冬季は、発酵速度が低下するため、熟成期間をより長くする必要がある。
- 堆肥化終了時前の降雨により水分量が多くなった場合には、使用前に適度に乾燥させる。
- 使用前に、pH(6~8)とEC値※(5mS/cm以下)をチェックする。 (※EC値とは、堆肥に含まれるイオンの量)
■松葉堆肥の使用方法
コマツナを用いて幼植物試験を行ったところ、今回作製した松葉堆肥AとBは、容積割合で40%も施用してもコマツナの発芽率、生育並びに葉色が抑制されることなく、むしろ育成と葉色が対照よりも優れる傾向が認められ、良質な堆肥であることが確かめられました。今回作製した松葉堆肥AとBを容積割合で20%土壌に混入した場合、それぞれ農地10a当たりの投入量は現物重で約1.2tと約0.9tとなりました。豚糞堆肥の施用上限値は、畑作物や野菜で10a当たり2~2.5tです。また、堆肥に使用する生ごみの種類により科学的な性質が異なることや、作製する時期により腐熟度が異なる点を考えると、松葉堆肥の投入量は、現物1~2t程度とするのが妥当であると思われます。なお、実際に農地に投入する場合には、松葉の大部分がその形状を保っているので、少量ずつ使用し、農作業に支障を与えないかを含めて、適正な使用量を決めるのが望ましいです。
・マニュアル本の制作
②学校教育活動
・小中学校の教育プログラム導入による若い世代の関心向上
③堆肥化活動
・松葉堆肥づくりとできた堆肥の地域での活用(花壇・農地)
※NPO法人循環生活研究所理事長たいら由以子さんの「暮らしと松林をつなげる松葉堆肥のすすめ」が『グリーン・エージ』523号(日本緑化センター2017年7月)に掲載されています。

煙樹ヶ浜松葉堆肥ブランド研究会
煙樹ヶ浜の松葉堆肥で育ったブランド作物。 黒潮からの風と太陽をいっぱいに育った煙樹ヶ浜の松葉。 この松葉(落ち葉)を集めて堆肥化し、キュウリやトマト、いちごの栽培に利用し「松」ブランドとして出荷している。 松葉かきによる松林の保全と地域の農作物のブランド化による地域農業の活性化を目指している。
こうした取組は、これまで不用物として放置されていた松葉が循環型資源として活用されるだけでなく、松葉かきによる松林の環境保全や周辺の防災対策のほか、松葉かき作業を通じた住民交流や農家の活性化等、多面的な効果がもたらされています。
しかし、年々農作物の生産拡大を図ってきている一方で、この取組を安定的なものとするには、さらに販路を広げることが必要不可欠となってきます。このため、近時、美浜町では、ブランド価値向上による販売促進を目指し、「まつりん&ぼっくりん」という愛称の煙樹ヶ浜松林イメージキャラクターを作成し、農作物のパッケージへのシール貼付や、大阪、名古屋等の県外イベントに着ぐるみで参加するなど、積極的な広報活動が行われているところです。 こうした PR 効果が表れ、今後、一層の活性化に繋がることが期待されます。
「一部地域ではバイオマス発電に利用されている。たばこ農家の苗床や、川の浄化に少量使われている。燃料としては早く燃え尽きてしまい、堆肥としても使いづらく、事業規模では成立していない」と聞きました。調べてみると、、思っていた以上に事例だけはたくさんありました!!
昔は主に燃料として活用されていたそうですが、現在は燃料としてだけではなく、松野菜・松酒・松葉茶・サイダーといった食料・飲料品からシャンプー・薬といった日用品にまで本当に幅広く活用されているのです。他にも松脂(マツヤニ)の成分から、粘着剤、香料、滑り止め、紙の添加物にまで使用されています。
ちなみに、松野菜は和歌山県美浜町で作られているもので、マツの枯れ葉と籾殻が発酵されてできた、松堆肥から栽培されたトマト、キュウリ、イチゴなどのことを指しています。このように、一部地域ではマツは堆肥としても活用されているのですね。一方、松葉茶やサイダーは、マツを香料として使用されています。
驚いたことに、海外でもいろいろな国で使われているのです。例えば、韓国の松餅(ソンピョン)と言われる、マツの香りのついた蒸し餅は、お盆の時期に食べる風習のあるお菓子だそうです。他にも、フランスではマツヤニ入りのキャンディーが販売されています。フランスでは昔から、マツヤニには肺の浄化作用がある事が知られているそうです。(A)
マツの落ち葉の有効活用方法の主な使い道として、燃料・肥料が挙げられます。実は、マツの落ち葉は昔から人々の生活の暮らしに身近なものなのですよ~。ガスや灯油が普及する1940年代~1950年代の半ば頃までは、薪や炭が庶民の暮らしを支えていました。特に松の落ち葉は火がつきやすく、かまどや風呂の焚きつけに重宝されていました。固めて縄で縛った松葉を売り歩く商売もあった程だそうです。現在では、家庭からかまどが消えつつありますが、夏の京都の風物詩、五山の送り火には松の薪と松葉が使われているそうです。他にも、陶磁器を焼き上げる登り窯としても使われています。マツは、他の木材と比較しても単位重量当りの燃焼熱量が高いんですね~。
他にも、マツの落ち葉が燃料・肥料として有効活用されている事例があります。例えば以前の記事でもご紹介した、松野菜です。松野菜は和歌山県美浜町で作られているもので、マツの枯れ葉と籾殻が発酵されてできた、松堆肥から栽培され、松トマト、松キュウリと呼ばれています。煙樹ヶ浜松葉堆肥ブランド研究会事務局は、「松葉は環境にも優しいバイオマス資源であり、その堆肥を撒いた土壌は通気性、保水性に優れ、植物の根に良好な環境を作り出す」と述べています。他にも、ガーデニングなどでよく使用されている、クロマツペレットが挙げられます。クロマツペレットは熱量が高く、灰分1パーセント以下の燃料用として非常に優れた特徴があるそうです。(B)
- ECOM
- じゃがいも
- めんこ
- アズキ
- アライグマ
- イノシシ
- エンドウ
- エン麦
- オタマジャクシ
- カリフラワー
- カルガモ
- ガ
- キショウブ
- キノコ
- クモ
- コマツナ
- ゴマ
- サツマイモ
- サトイモ
- シカ
- シュレーゲルアオガエル
- ジャガイモ
- スイカ
- ソバ
- ソラマメ
- タヌキ
- ダイズ
- チョウ・ガ
- トウモロコシ
- トマト
- トンボ
- ニンジン
- ニンニク
- ハチ
- ブルーベリー
- ヘビ
- ホタル
- マルバヤナギ
- ムギ
- モチキビ
- ライ麦
- ラッカセイ
- レンゲ
- 九十九川
- 代かき
- 入山沼
- 出穂・開花
- 千葉県
- 台風9号の被害(2016年8月22日)
- 埼玉県グリーン・ツーリズム推進協議会
- 堆肥
- 堆肥・ボカシ
- 小麦
- 山口県
- 山梨県
- 岩殿丘陵の生きもの
- 市民の森
- 市民の森保全クラブ
- 新潟県
- 東京都
- 柳絮
- 栃木県
- 桜
- 棚田
- 槻川
- 水質調査
- 無名沼イ号
- 無名沼ロ号
- 狭山市
- 環境みらいフェア
- 田んぼの学校
- 田んぼオーナー制度
- 田植え
- 畦畔
- 石坂の森・市民の森の生きもの
- 神奈川県
- 稲刈り
- 稲架
- 空中写真
- 籾摺り
- 精米
- 緑肥
- 緑肥栽培
- 群馬県
- 耕作放棄地
- 脱穀
- 茨城県
- 落ち葉はき
- 藍
- 裾刈り
- 谷津・谷戸・谷
- 農支度
- 都幾川
- 里山保全
- 里山再生
- 長野県
- 除草
- 食品ロス
- 麦刈り
- 麦打ち