3月19日(日曜日)に開催される環境学習会『健康・快適で電気代も安心な新しい家づくりと暮らし方~今、住宅用太陽光発電が必要な理由~の講師、前真之さんの『エコハウスのウソ[増補改訂版]40の誤解と1つのホント』(日経BP、2015年12月)を読みました。2020年8月に『エコハウスのウソ 2』(詳細な目次は当ブログ記事を見て下さい)が出版されていますが、併せて読んでおくとよいでしょう。
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前真之『エコハウスのウソ 増補改訂版  40の誤解と1つのホント』目次
はじめに

プロローグ 省エネ基準義務化
 欧米では省エネ基準がとっくに義務化され、省エネ基準か「任意」の日本は遅れているといわれてきた。ついに日本でも、2020年までに全ての住宅で省エネ基準がぎむかかされるらしい。義務化というと、全ての家がエコハウスになるビッグなことが熾きそうな気がしてしまうが、実際のところはどうなのだろう。
Q.1 2020年以降、全ての家がエコハウスに?
 2020年に省エネ基準が義務化されるが、レベルは低く設定されている。「クリア」できて当たり前」。
 エネルギーを規制していなかった「外皮のみ」H11基準
 H25基準は消費エネルギー量そのものを規制
 1次エネを「漠食」する電気生焚設備は永久追放
 H25基準は「15年前の外皮」+「時代遅れの設備」
 なぜ基準値は低レベルになってしまうのか?
 H25基準は「ミニマム」、さらに上を目指すべき
 
Q.2 新省エネ基準を守るだけで暖かい家になる?
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 H25基準には断熱の規定はあるが、特に温暖地では最低限レベル。さらに上を目指すべき。
 気候区分は6区分⇒8区分に
 断熱性が「Q値」⇒「外皮平均熱貫流率UA」へ変更
 日本の断熱基準は温暖地で緩すぎる
 まずは民間規格「HEAT20」のG1・G2レベルを目指そう
 暖房時熱負荷のザックリ見積もりは意外と簡単
 気密なき断熱は無力なり!

Q.3 地域の気候は「8区分」でバッチリ?
 省エネ基準の8区分は気候の一要素を取り出して決めたもの。日射量なども考慮した総合的な気候分析がエコハウス実現のカギ。
 ケッペンの世界気候区分では日本は「温帯湿潤」
 夏は地域間で大差なし、冬は寒冷地と温暖地で大きな差

Q.4 家なんてどこに頼んでも同じ?
 選び方を間違うと、「寒い」「増エネ」な家になる。建築主の勉強が不可決。
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 大手メーカーは「H25基準」をほぼクリア
 建築課ルートでは「一点突破」型に要注意
 ハイレベルな「スーパー工務店」が続々登場
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 「安かろう悪かろう」の建売事業者も侮れない?
 信頼できる会社を見つけられれば「8割成功」

第1章 人と気候
 エコハウスの第一歩は、敷地の気候を丁寧に読み解くこと。そして、建物の中に暮らす我々人間の体の特徴をしっかり認識することが欠かせない。ところが、気候や人間を素直に理解することは結構難しい。思い込みやイデオロギーは横に置いて、いま一度この日本の気候と我々の体を見つめ直してみよう。
Q.5 人間は暑さに弱い?
 人間は動物のなかでも「暑さにめっぽう強い」。弱点は「寒さ」。
 恒温動物は「熱を捨てる」宿命を負った生き物
 人間は1時間に1500グラムの汗をかける
 乾燥した気候を「持久力」で生き延びた人類の祖先
 アフリカ育ちの体で世界に広がった人類
 
Q.6 湿度はパーセント(%)が当たり前?
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 湿度にはいろいろな表現があり、「相対湿度(%)」よりも「湿球温度(℃)」の方が実感に近いこともある。
 湿度は「髪の毛」や「水」で計測できる
 1日のなかで湿球温度はほとんど変わらない
 「暑さ指数」の主役は湿球温度

Q.7 エアコンなしでも日本の夏は大丈夫?
 人間は暑さに強い動物だが、それは「汗が乾く」から。湿度の高い日本の夏に、「冷房なし」は熱中症の危険。
 アメリカでは湿球温度の快適上限21℃
 湿球25℃では汗をかいても乾かない
 日本の夏と冬はどちらも結構厳しい
 日本の夏、「温度を下げる」「湿度を下げる」どちらかは必要
 高齢者は熱中症のリスクを忘れずに
 
Q.8 温暖地は冬の朝も温暖?
 気温は「日平均」の値だけ見ていてはダメ。一番冷え込む明け方の「日最低」のチェックが肝心。
 気温は「時々刻々」変化している
 明け方の冷え込みは「日最低の月平均」でチェック
 冬の昼に晴れる地域ほど明け方の冷え込みに注意

Q.9 日ノ本の国はどこでも太陽サンサン?
 冬の日射量は地域差が大きい。冬に開口部から日射を入れるには高性能なガラスの選定が必要。
 年間の水平面日射量は地域差が小さい
 冬の南垂直面への日射は地域差3倍!
 晴れと曇の日射量をチェック
 ダイレクトゲインの損得は地域とガラス次第
 
Q.10 結局、住まいは夏を旨とすべし?
 「夏旨(なつむね)」は通風偏重・断熱気密軽視の言い訳に使われていることが多い。日本の家はまず「冬旨(ふゆむね))でつくっておくべし。
 夏は大事、されど「夏旨」にはご用心
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 快適性モデル「PMV・PPD」で「快・不快」を知る
 温度と湿度の関係をオルゲーとPMV・PPDで比較
 通風でどこまで涼しくできる?
 日本では外気そのままで快適な時間はごく短い
 本当に備えが必要なのは、やはり冬
 夏冬どちらかとすれば、まずは「冬を旨とすべし」
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第2章 建物の外皮性能
 高効率エアコンや太陽光発電に比べて、地味な感じのある外皮性能。家を買うときに、建物の「皮」まで気にする人は少ないかもしれない。けれども、外皮の断熱・気密は建物の温熱環境や省エネ性を支える基礎体力。建物の「足腰」を鍛えることが、真のエコハウスへの王道なのだ。
Q.1 1 離れた壁や窓、天井の温度は快適性に無関係?
 人間の体は離れた物体と放射で熱をやりとりしている。周辺放射温度は快適性に影響大。
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 熱の伝わり方は3通り[伝導・対流・放射]
 室内での人体放熱は「対流」と「放射」がメーン
 快適に空気温度と放射温度の組み合わせを探す
 一番不快なのは「熱い天井」、次に「冷たい壁」
 
Q.12 ローイーガラスって日射を遮蔽するガラスでしょ?
 ローイー(Low-E)は「低放射」の意味で、主目的は放射による熱ロスのカット。日射に関しては「透過型」と「遮蔽型」がある。
 日本の「ガラス障子」は窓にあらず
 熱ロスの3ルート[伝導・対流・放射]を遮断せよ!
 ローイーガラスは当たり前に、でもその選び方は?
 「目に見えない」太陽光を入れるべきか防ぐべきか?
 南窓には透過型、東・西窓には遮蔽型がセオリー

Q.13 日本の窓はずっと世界サイテー?
 アルミサッシの成功体験で、高断熱窓の普及が遅れたのは事実。しかし、日本でも世界水準の高断熱窓が続々登場している。
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 アルミサッシの成功体験が裏目に出た?
 「アルミ死守」(?)のサッシ業界
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 ドイツではUw値1.3超の低断熱窓はは禁止されている
 窓が進化すると家は「明るく」「暖かく」?

Q.14 断熱材と構法にこだわれば断熱はバッチリ?
 あらゆる断熱材・断熱構法には長所・短所がある。丁寧な施工が性能確保のカギ。
 住宅着工は激減するも断熱材の売り上げは堅調
 断熱材は小さな穴で空気をフリーズさせる
 それぞれに一長一短、「完璧な断熱材はない」
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 断熱の種類と構法は「適材適所」で

第3章  冷房
 「節電」が最大の関心事になるなかで、目の敵にされているのが「エアコン冷房」。しかし、住宅からエアコンをなくせば全ての問題は解決するのか。そもそもエアコンで冷房することは、そんなに「イケナイ」ことなのだろうか。
Q.15 家のエアコンは節電の敵?
 まず頑張るべきはオフィス。住宅はエアコンで賢く冷房できるように工夫すべし。
 夏の昼に電力ピークをもたらす真犯人は?
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 オフィスこそ「冷房中毒」、節電はこっちから
 ついに減り始めた夏の昼間の電力ピーク
 PV[太陽光発電]普及しつつある今、夏の冷房は恐るに足らず!
 太陽光発電と相性抜群のエアコン冷房
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Q.16 冷房が最大?
 給湯や照明、家電のエネルギー消費の方がはるかに多い。
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 一番エネルギーを使うのは?イメージと実際のズレ
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 給湯、照明、家電の消費エネはなぜ多い?
 誤解の原因は前月との比較偏重、通年での消費を見逃すな

Q.17 選ぶならハイパワーのエアコン?
 「能力過大」は効率に難。小さなエアコンで効率良く冷やせる工夫を。
 まずは年間エネルギー効率APFが高いエアコンを
 エアコンの効率向上はもはや限界に
 「○○畳」の目安は断熱等級3の貧弱な建物を想定
 つつましい冷房ができるプランを

Q.18 除湿は冷房よりもエコ?
 きちんと気密防湿がされていない家で除湿すると、膨大なエネルギーが必要になる。
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 温度を下げるか湿度を下げるか?それが問題だ
 空気が持つ熱量「エンタルピー」は顕熱・潜熱の2種類
 夏の炎天下、1時間の電気代はいくら?
 「冷房」と「除湿」、エアコンの効率にも大きな違いが
 冷房を毛嫌いせず、温度・湿度の制御を真面目に考えよう
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