岩殿I地区下段と学びの道の間の斜面の笹苅りと土水路の泥上げをしました。
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土水路に生えているキショウブを掘り出してみました。
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根茎が横に広がっているのが判ります。岩殿では毎年開花前に花茎を切り取って種子散布による分布拡大を防止してきましたが、いまだ眼にみえるような効果は出ていません。

2022茂林寺沼
退治方法
掘り出す :土の中に太い根っこ、根茎(こんけい)が横に長く埋まっている(生姜に少し似ている)。種から育ったばかりの若い株であれば葉の部分を持って引き抜ける。大抵はしっかり根付いているので葉だけがちぎれてしまう。根から引き抜くのはコツが必要だが、駆除及び根絶のためには欠かせない作業。
花を落とす :湿原全体に広がってしまった外来種を全て短期間で抜くのは困難。よって、これ以上の拡大を防ぐために花を鋏などで切り落とす。その個体は種子を残せないので、新しく増えることがない。もちろん根茎は残っているため、来年も花を咲かせる可能性はある。しかし外来種とのイタチごっこを終わらせるためには必須の作業である。鋏で手軽にできることもポイントが高い。
中嶋佳貴「外来水生植物キショウブの繁殖特性と適切な管理法(『岡山大学農学部学術報告』111巻、2022年)
はじめに
キショウブについて
キショウブ(Iris pseudacorus L.)はアヤメ科アヤメ属の多年生抽水植物で、自然高は0.4~1.5 m に達し、 4 ~6 月に鮮黄色の美しい花を咲かせて、湖沼や河川の沿岸帯に美観を創出する)。岡山市民の憩いの場である西川緑道公園のキショウブ群落も、開花期には散歩する市民の目を癒している。朔果は断面がほぼ三角形をした4.0~7.5 ㎝程度の長楕円形をしており、 9 ~11月に成熟して裂開し、種子を散布する。秋季には新しい分蘖が出現し、越冬後、春季には一部の分蘖から花茎が伸長し始める。繁殖力は旺盛で、高い窒素要求性を有するため、富栄養化の進んだ水域環境下でも多く見出される。
ダム貯水池のように貯水量の増減に伴って大きく水位変動が生じ、冠水条件や乾燥条件が繰り返される水辺環境でも生育することが可能である。耐乾性や、水中の窒素・リン除去及び重金属除去などの水質浄化能にも優れた特性を有している。地下部は直径 1 ~ 4 ㎝の根茎を有し、不定根を地表面付近でマット状に発達させるため護岸の土壌浸食も抑制できる。
原産はヨーロッパから中央アジアであり、日本には明治時代に園芸植物として導入され、現在では全国各地の湖沼、ため池、河川、水路などに帰化している。世界ではヨーロッパ全土に分布し、特にイギリスやアイルランドでは河川や湖沼の水辺緑化に利用されている事例が多い。また、北アメリカ全土、アジアではコーカサス地方、シリアやシベリア地方、さらに北アフリカや、南半球のニュージーランドまで分布が広がっている。これらの地域の大部分が日本と同じように、当初は園芸用として導入された経緯がある。
我が国では植生護岸を始めとした水辺緑化において、景観形成を特に期待する場合、花の美しさを水辺のアクセントとして盛んに利用されてきた。しかし、2005年に制定された外来生物法において、重点対策外来種(旧要注意外来生物リスト)にリストアップされた。
キショウブの開花特性
キショウブの種子繁殖特性
キショウブの栄養繁殖特性
キショウブの耐冠水性
お わ り に
既に日本全土に分布が拡大している現在、制定された法律上、注意すべき存在とはいえ、修景効果などのメリットを尊重しなくてよいのでしょうか。今後、キショウブ群落が他の生物に対して与える生態的影響については継続的に評価を続けます。それを踏まえて、これまでに得た繁殖特性の知見を活用することで、適切な管理によってその場で許容される群落が維持されることを期待しています。……[注番号は略]