2021年9月7日、産官学(日本木材加工技術協会関西支部早生植林材研究会・林野庁近畿中国森林管理局・平林会)共催で早生植林材研究会シンポジウムが開催されました。このシンポジウムは「生物多様性と里山の管理・活用」と題し、生物多様性と里山の管理や活用の可能性について考えるため4名の講師が発表し、森林の炭素循環から里山広葉材を資源として考える場合の問題点、活用の試みなどが紹介されました。
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このシンポジウムはYouTubeのmaffchannelで見られます。


黒田慶子さんの発表「里山広葉樹の木材資源化で循環型社会を実現する」(0:33:07 ~  1:07:29)です。発表資料からスライドを紹介します。9月30日の記事にある2021年8月28日に開催された『第4回神戸大学SDGsフォーラム「地域循環・自然共生社会のリデザイン~グリーン成長のための産官学連携を考える~』(YouTube 3:58:05)黒田発表「森林分野における産学連携・社会実装の方向性」(0:44:03~)と合わせて利用してください。
プロジェクトとしてのアプローチ
a) 問題解決への期待
広葉樹の板材価格は全般的に針葉樹材より高価で、里山材が妥当な価格で販売できると森林所有者(農村集落)の管理意識が高まり、国土の持続的管理につながる。しかし、「どこに、どんな材が、どの程度あるか」という情報さえ無い。そこに焦点を定めて、森林産業として地域の収入を増やし、持続的管理によって循環型社会を実現させたい。
b) 新たな仕組み
里山材が流通しない理由は、所有者が資源の価値を知らないことが大きい。そこで、「有利に売る」ために、立木段階や出材時に資源カタログ化(電子記録)し、売手が優位に立てる仕組みを作っていく。クラウドサーバー上のデータ継承により、里山木材のトレーサビリティが確立できる。消費者には産地情報と木材を合わせて販売する。
c) 技術開発
国産材を購入したい業者は増えているが、必要量が入手できない。市場での対面販売、素材業者等による「符号・記憶」依存というアナログ的管理のためである。電子タグ、QRコード、クラウドサーバ利用による電子的管理に移行させると、立木段階から資源を把握して販売できる。また、山から購入社までのトレーサビリティを保証できる。この電子カタログ化技術はほぼ完成し、社会実装を開始したところである。
里山広葉樹林の「今風」循環を考える
●早生樹(黒田)_08
 ①所有者の意欲、②関連産業との連携、③支援システム

●きっかけは神戸大学農学部のエノキの大木
●見えてきた課題:森から家具までに多くの工程
●国産資源の活用と流通の課題
 ●早生樹(黒田)_10
●実は使える、里山の多様な広葉樹
●常識の変革~新たな動き
 ●早生樹(黒田)_11
●SDGs…資源循環型社会につながる森林管理とは
  植林イベント× 林床整備(単なる地面の掃除)×
  樹木を資源化しながらじぞくさせる3つのステップ
  1.目的にあった伐採
  2.伐採したら資源を使う
  3.再生させて次世代に渡す
●里山管理方法の選択…ボランティアに丸投げはあり得ない
 ●早生樹(黒田)_12
●1.伐る環境譲与税を活用した材の利用
●1.伐る:現場のアバウトな判断を変える
●2.使う:家具用材への利用は有望
●2.使う:立木からデジタル管理で売り手有利な流通
 ●早生樹(黒田)_14.Ajpg
 ●産学協同から社会実装へ
 ●早生樹(黒田)_14B
 ●デジタル記録で加速する「循環型社会」化とSDGs
 ●街や農園にも使える樹種が…
 ●もっと自由な発想で
●3.林を再生させる…できていない
  SDGsの「持続的は発展・循環」を意識
   補助金では伐採後に放置されやすい
   ・次世代樹木を育てる植栽も
   ・行政・地元で情報管理子の世代に渡す
  問題点
   ・補助金(税金)で整備すると伐採後に放置
   ・広葉樹林は勝手に再生するという勘違い
  検討が必要なこと
   ・環境整備が目標では資源にならない=得にならない
   ・売れる広葉樹の林に誘導したい
     ①自然生えから育林、②植林
  次世代が使うための森林管理
   →持続的で健康な森林に育つ
    =循環型社会への転換
  結局は「人」…誰がやるの?
 ●デジタルカタログから始まる変革
 ●早生樹(黒田)_17A
 ●無形の資源化 グリーンツーリズム
 ●早生樹(黒田)_17B