第131回大会会(2020年)
●小林正秀「ナラ枯れの発生原因」
 ナラ枯れは、江戸時代以前から日本で発生しており、過去の被害は周辺に拡がらなかったが、1980年代以降、全国的に拡大するようになった。京都府では、1990年代に被害が発生し、2011年以降は終息に向かったが、被害が再発している地域も多い。
 ナラ枯れの発生原因についても、主因、誘因、素因に別けて考えるべきであろう。主因は、カシノナガキクイムシが媒介する糸状菌(Raffaelea quercivora)であることが証明された。誘因については、2005年の総説で、ブナ科樹木の大径化を指摘した。すなわち、燃料革命で化石燃料の利用が増え、薪炭林(里山よりも奥山に多い)が放置され、カシノナガキクイムシが繁殖しやすい大径木が増えたことを指摘した。この説が定説になってしまったが、総説では温暖化の影響も指摘した。しかし「温暖化を原因とする説が提唱されたこともあったが、60年以上前に冷涼な地域で発生しており、関連性を示すデータは得られていない」と反論され、科学的な検証を試みる人はなかった。そこで、演者は、温暖化がナラ枯れに与える影響について検証してきた。ここでは、温暖化がナラ枯れの要因であることを示す。

第132回大会(2021年)
●小林正秀「ナラ枯れに防除法はないのか?」

 カシノナガキクイムシの穿孔によるナラ枯れは、江戸時代以前から発生していたが、先人達は被害を抑えていた。ところが、1980年代以降は被害を抑えることができなくなり、京都府では、1990年代後半には日本一の被害量が続いた。その後、被害は徐々に南下し、2000年代に京都市内でも発生するようになった。
 京都府には社寺仏閣の庭園などの貴重な緑地が多く、現場から「ナラ枯れを抑えて欲しい」との強い要望があった。そこで、演者は、カシノナガキクイムシの飼育法を確立して生態を解明し、ビニール被覆やカシナガトラップなどの防除法を開発した。そして、これらの防除法を駆使して多くの現場で被害を抑えてきた。ところが、効果がない樹幹注入剤やフェロモン剤がもてはやされ、被害を抑えることができなくなり、「ナラ枯れには防除法はない」と考える人が増えてしまった。
 ナラ枯れと同様の被害(Platypus属の穿孔によるQuercus属の枯死)は、鳥インフルエンザや新型コロナのように世界で同時多発している。ここでは、ナラ枯れ対策に焦点を当て、日本で感染症が抑えられない要因について考察し、改善策を提言する。