昨年9月5日の記事ナラ枯れ文献・『薪ストーブライフ』42号 9月5日)で紹介した『薪ストーブライク』42号(発行:沐日社、発売:星雲社、2021年7月、1870円)の特集・ログショックを乗り越えろ! 薪を使う暮らしが地球を救うから「ナラ枯れの真の原因は何だろう?」(24~25頁)です。

msl-0042
ナラ枯れの真の原因はなんだろう?
主因、誘因、素因に分けて考えてみよう
地球温暖化によってカシナガが増えやすい環境になった現代。
日本だけでなく世界的にもナラ枯れと同様の被害が増えているのだ。
薪炭林の放置による大径木の増加が原因か
人間の病気でも、原因は、主因、誘因、素因に分けて考えるべきです。ナラ枯れの主因はカシナガが運ぶナラ菌です。カシナガは、繁殖に適した大径木に穿入するので、大径木から先に枯れます。薪や炭をつくるための薪炭林では、木は15年程度のサイクルで伐採され、萌芽更新(切り株から出る芽を育てる方法)されていました。しかし、1960年代に本格化した燃料革命によって、電気やガスが普及し、薪や炭は使われなくなりました。そして、薪炭林は放置され、日本中で、大径木が増えたのです。
そこで、私は、「薪炭林の放置によってカシナガの繁殖に適した大径木が増加したことがナラ枯れの要因である」と主張しました。「海外から侵入したカシナガが、温暖化で分布を拡げ、ナラ菌に抵抗力がない木と出会ったことが要因である」との説もありました。しかし、江戸時代にもナラ枯れが発生していたことを示す文書が見つかりました。また、DNA分析の結果、カシナガが古くから日本に生息していたことが判明しました。そのため、カシナガが海外からの移入種だとする説は棄却され、カシナガを在来種とみなす私の説が残ったのです。
化石燃料に頼る現代人は、奥山が薪炭林であったことを知らないし、里山でナラ枯れが多発するようになったこともあり、「里山の放置がナラ枯れの原因」と考える人が増えてしまいましたが、大径木の増加がナラ枯れの原因であることに異を唱える人は減りました。しかし、私の説は、火災で例えるなら、「可燃物が多いから火災が拡がった」と主張しているのと同じで、ナラ枯れの出火原因は説明していません。
暖かくなると動き出す 温暖化でかなり活動的に
林野庁が集計したナラ枯れ被害量によると(図[略])、2006年は全国的に被害量が減少しています。また、2010年は、全国的に被害量が増加し、伊豆諸島や屋久島でも初めて確認されました。このように、広範囲で被害の増減が同調する原因としては気象条件以外には考え難いのです。実際に、被害量と気象との関係を解析した結果、冬の気温が高いほど被害量が多くなっていました。ナラ枯れが流行し始めた1980年代後半以降、温暖化でクリの凍害も多発するようになりました。氷点下になると真水は凍りますが、砂糖水は凍りません。クリなどの落葉広葉樹は樹液を砂糖水のように甘くすることで耐凍性を獲得しています。しかし、温暖化で冬の気温が高いと、クリは春が来たと勘違いして水を揚げて耐凍性が低下し、その後、氷点下の気温に曝されても枯れるのです。同じことが、森のブナ科樹木で起こっていれば、ナラ枯れが増えるのは当然です。
カシナガトラップでの捕獲数と気象との関係を解析した結果、カシナガは温度が高い梅雨時や秋雨期に飛翔しやすいことが判りました。また、気温が20℃以下だと活動が鈍くなることも判りました。温暖化以前は、梅雨期や秋雨期の気温が低く、カシナガの活動が制限されていたのに、温暖化以降は、梅雨期や秋雨期の気温が高くなりカシナガが活発に活動できるようになったことがナラ枯れの流行の要因かもしれません。
温暖化が原因だと考えられる理由は、他にもあります。カシナガが関与しないナラ枯れが、各地で多発しているのです。また、ナラ枯れと同様の被害が、韓国、欧州、北米、オセアニアでも発生しています。いずれも温暖化による気温上昇率が大きい中緯度地域で、温暖化傾向が顕著になり始めた頃から拡大しています。
台風の影響も無視できません。風倒木で増えたカシナガが、周囲の健全木に穿入してナラ枯れが発生することがあります。1994年以降、本州の日本海側でナラ枯れが拡大したのは、1991年に日本海を縦断したリンゴ台風[1991年台風第19号、NHK for School 台風19号(1991年)のひ害 ]による倒木の発生が原因かもしれません。
大径木が温暖化で衰弱しその衰弱木に穿入
樹木の枯死に関与する環境ストレスには、生物的ストレス(昆虫や微生物など)と非生物的ストレス(気候条件、土壌条件、大気汚染など)があります。樹木の枯死は、複合害の場合が多く、欧州で発生しているナラ類の衰退(oak decline)では、凍害、多雨、高温、乾燥などの関与が指摘されています。ナラ枯れも複合害なのでしょう。
 薪炭林の放置によって大径木が増えている状況下で、温暖化や大気汚染などで樹木が衰弱したり、台風や人為的伐採による倒木が発生すると、衰弱牧野倒木を利用して増えたカシナガが立木に穿入してナラ枯れが発生し、周辺にも大径木が多いので、どんどん拡大しているのでしょう。
「ナラ枯れから樹木を守ろう 薪を使い続けるためにカシナガの穿入を阻止する方法」(26~27頁)もあります。小見出しだけ紹介すると「殺菌剤の樹幹注入は待った! ナラ枯れを助長する危険性が」、「25㎞以上飛翔するカシナガ 皆伐でなく択伐を推奨」、「カシナガは針葉樹が嫌い 樹木自身もタンニンで防護」。穿入生存木を増やしてナラ枯れを抑える方法として、大きなブナ科樹木にカシナガトラップを3基ずつ設置、ヒノキのペレット、地上高4mまでビニールで被覆、樹木保護用コーティング剤メイカコートで穿入防止など紹介されています。

P7210025

P7210021P7210013P7210015

7月21日にボッシュ林四阿近くで撮影した穿入木です。地面すれすれの箇所でのカシナガの穿入をどう阻止したものかと思案していましたが、メイカコートを塗布する(効果1年位、高額)、ヒノキペレットを敷くなども使えそうですが、ヒノキペレットの効果は2週間程度(『森林防疫』701号、2014年。5~6頁)です。
カシナガはヒノキが嫌いなら、樟脳のとれるクスノキはもっと嫌いなのではと調べて見たら、クスノキでは効果がないそうです(←「単管パイプ・クスノキ削屑(2022年3月19日記事)。『森林防疫』に京都府立植物園で試した結果、忌避効果がなかったと書かれています。

カシノナガキクイムシ防除用商品(JA東京都植木農業協同組合)