国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所(森林総研)から3年間の共同研究の成果をまとめたクビアカツヤカミキリの防除マニュアル『クビアカツヤカミキリの防除法』(2022年3月)とリーフレットが発行されました。「クビアカツヤカミキリは大変にたちが悪い害虫です。知らない間に新たな地域へと分布を拡げて木を食い荒らし、気が付いたときにはどこから手を付けたらいいのかという位に果樹園や街路樹の木が衰弱してしまうことがしばしばです。しかし、被害の初期から丁寧に防除をすると、その土地のモモやサクラを守ることができます。」(1頁)。第3章地域での総合防除への提言(24~26頁)では、早く見つけてしっかり伐るが強調されています。
(3)侵入間もない被害先端地域~オンラインマッピングの活用~
クビアカツヤカミキリの分布が拡大しつつある地域近辺で、被害がまだ確認されていない箇所では、注意深く警戒することにより、被害木が少数のうちに被害の発生を発見し、防除活動を行うことができます。そのような被害先端地域では、被害の初期に積極的な防除を行い、局所的に根絶させることによって、長期的に見ると最も防除コストを小さくすることができます。そのため、この段階では被害木全てを伐倒駆除することを強く推奨します。伐倒以外の防除方法では、 100%の駆除はできません。長い間丁寧に排糞孔の処理を重ねても、本種は産卵数が非常に多いので、低密度のままで保つことはとても難しいです。早期に被害を発見ができた地域では、後顧の憂いを断つよう次の夏までに全被害木を地域から無くしてしまうのが一番です。実際に、海外で外来種対策が進んでいる国では、穿孔性の外来害虫の侵入をひとたび発見すれば被害木を即伐採し、その周辺地域での被害モニタリングを何年も継続して行うことが対策の基本とされています。
被害先端地域での被害の早期発見には、周辺地域での被害状況に基づく侵入警戒が重要です。そのためには、行政区を超えた情報共有が重要となります。情報共有には、リアルタイムオンラインマッピングができるクビアカツヤカミキリアンケートのサイト (27ページ)を活用していただきたいと考えています。自治体等の対策担当者は、被害地図を閲覧可能な団体である「クビアカツヤカミキリ被害リアルタイムオンラインマッピングシステム閲覧管理協議会」にご加入の上、情報共有のプラットフォームとしてご利用いただくことをお勧めしています。この協議会はクビアカツヤカミキリによる被害情報を共有することによって、被害対策の効率化をめざすオンラインのバーチャルな組織です。(26頁)[下線引用者]
終わりにクビアカツヤカミキリの被害は瞬く間に全国的な問題となってしまいました。被害の深刻な場所では少し街中や園地を見回るだけで、オレンジ色のフラスにまみれた、この先の枯死を防ぐことが難しそうな木を見つけることができます。しかし、難防除の外来種であっても、科学的に効果が高いと認められた防除方法を用いて、計画と検証をしっかりしながら対策を進めることで、被害の進行を食い止めていくことが十分可能になってきました。……
本種の対策は、被害地に直接関係する一部の人だけで進められるものではありません。被害エリアを正確に把握するための探索や幼虫・成虫の駆除活動に、本種の被害の恐ろしさを知る様々な立場の人が継続的に関わっていくことで、はじめて有効な対策が可能になっていきます。……(28頁)[下線引用者]
7月17日(日曜日、11:00~12:30)、東松山市・環境基本計画市民推進委員会主催2022年度第1回市民環境会議 が開催されます。『東松山市の桜が危ない
クビアカツヤカミキリの脅威と対策』をテーマに埼玉県環境科学国際センターの三輪誠さんの講演「サクラの外来害虫クビアカツヤカミキリの生態と防除」、東松山市環境政策課から「東松山市のクビアカツヤカミキリ駆除奨励品交付事業」の紹介があります。(7/12市民環境会議案内(2022年6月15日記事)