『森林応用研究』29巻1号(応用森林学会、2020年2月)に掲載されている小林正秀さんの「カシノナガキクイムシの飛翔に及ぼす気象の影響。(下線引用者)
抄録
 三重県の鈴鹿青少年の森でカシナガトラップを設置し、6~10月の間、毎日、カシノナガキクイムシを捕獲した。捕獲数と気象条件との関係を解析した結果、降水量が多い日にも捕獲されたことから、本虫は、木から脱出後は速やかに寄主木に飛来すると考えられた。また、気温が低い日だけでなく、気温が高い日にも飛翔しにくいことが判明した。さらに、日照時間が長く降水量が少なくなる7月下旬~8月下旬に捕獲数が減少したこと、また、前日の降水量が多い日に捕獲数が急増する場合が多かったことから、本虫は高温で乾燥しやすい盛夏期には飛翔しにくく、梅雨時期(6月)や秋雨時期(9月)の湿度が高い時期に飛翔しやすいと考えられた。その他、無風や強風の日よりも微風の日に飛翔しやすい傾向も認められた。雌の菌嚢の円孔数によって太平洋型と日本海型とを区別した結果、本調査地には両タイプが混在していることが確認された。9月の捕獲虫を対象に太平洋型と日本海型とに別け、太平洋型の占める割合と気象条件との関係を解析した結果、両タイプ間で、飛翔しやすい気象条件に大差がないことが示唆された。これらのことから、温暖化によって雨期の気温が上昇したことで、雨期にカシノナガキクイムシの活動が活発になったことが、ブナ科樹木萎凋病が拡大した要因の一つであると考えられた。
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おわりに
 本研究の結果、カシナガは荒天の日にも飛翔しており、曇天または小雨で、たまに日差しがあるような湿度の高い日に飛翔しやすいことが判明した。また、低温の日だけでなく、高温の日にも飛翔しにくいことが判明した。さらに、微風に乗って移動していることも示唆された。カシナガのような養菌性キクイムシにとって、共生菌が寄生木中繁茂することは重要である。また、カシナガの寄生木は、衰弱木や枯死直後の木であるが、その量は少ないことから、遠くまで移動する必要がある(小林2010)。カシナガが高温・乾燥する盛夏期を避け、梅雨や秋雨の湿度が高い時期に風に乗って飛翔するのは、この時期の気象条件が共生菌の繁茂のとっても、長距離飛翔による体力の消耗を避けるためにも有利なためと考えられる。……
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※京都府林業試験所資料(京都府林業試験場)

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