岩殿F地区の市民の森作業道寄りの岩殿1383(863㎡)の4つの小区画でセイタカアワダチソウの抜き取りをしました。
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セイタカアワダチソウは1個体で4万個もの種子をつけると言われています。岩殿F地区のセイタカアワダチソウについては、蔓延を抑えるために当面、年間複数回の刈り取りを行って草丈を抑えることを目指しています。ブログの記事では草地の刈取り管理(2016年9月27日)セイタカアワダチソウの刈取り時期の検討(2016年10月3日)で引用している文献に沿って実行しています。
『河川における外来植物対策の手引き』(国土交通省河川環境課、2013年12月)
 Ⅲ 対策を優先すべき主な外来植物10種の生態的特徴と対策手法
  セイタカアワダチソウの生態的特徴と対策手法
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   [『草と緑』 2巻 (緑地雑草科学研究所、2010年)]
刈り取りに対する反応と光合成生産
 多くの地下茎を発生し増殖する多年草の管理には、地上部だけでなく地下部に対する考慮も必要です。選択的に防除できる除草剤としては、移行吸収型処理剤の asulum が効果的です。asulum処理した根茎自体は数カ月枯死しませんが、茎葉から吸収された asulum は地下部に移行して腋芽や先端に集積することで、結局シュートを出せずに餓死させてしまうようです。薬剤の使用に問題のある場面では、根茎の掘り取りも有効ですが困難な場合が多いため、方法としては刈り取りが挙げられます。
 セイタカアワダチソウは刈り取ると、残存部分から萌芽を出したり地下茎から新しい茎を作るため、刈り取った群落は刈り取らない場合よりも茎数が多くなります。刈り取った 1 本の茎からでる萌芽の数は 1~3 本ですが元の茎よりも細く、1 本 1 本の茎の頭花数は減り着花率も減少するため、群落全体としての種子生産量は刈り取りによって減るようです。草丈も小型化します。小型化の程度や翌年の生長などの刈り取りの効果には、時期によって異なる刈り取り前後の光合成産物の振り分け先が関係します。
 生長パターンや光合成生産の観点から、セイタカアワダチソウの生育期間は次の 3 つに分けられます。
 第 1 期(4 月):葉が活発に生育します。乾物生産の 60%以上が新しい葉の生産に利用され、根茎に蓄積されている養分が地上部の生長に利用され消耗されます。
 第 2 期(5~8 月):光合成生産が増加し、茎が活発に生長します。
 最終期(特に 10 月):8 月以降になるとこれを地下部へ転流させて、地下茎の伸長とエネルギーの蓄積が始まり、娘根茎発生がみられます。シーズンの終わりには地上部から地下部への物質の転流が盛んになり娘根茎が迅速に生長し 10 月の純生産の約 70%がこの生長で占められます。
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 8 月に地上部を刈り取ると、地下部への養分の蓄積が出来なくなりシーズン終了時の地下部の残存量は最も小さくなります。また 8 月以前に光合成器官が取り除かれた場合には、地下部に残された貯蔵養分を用いて光合成器官を再生するため地下部重は減少します。このことから、刈り取り後の地上部の再生長に使用した地下部の貯蔵物質が補填される前に再び刈取りが行われると、地下部の貯蔵物質の収支はマイナスとなります。すなわち群落の消滅を目的とする場合には、6月に一度刈取り、その後地上部の再生によって地下部の蓄積養分を消費させ、さらに地下部への養分の蓄積が始まる 9 月頃に再度刈取ることを毎年行うのが効果的と思われます。観賞的に見苦しくない程度に群落を維持する場合には、6~7 月の刈り取りが良いようです。
農環研生物多様性研究領域 平舘俊太郎・森田沙綾香・楠本良延「セイタカアワダチソウの蔓延を防ぐ 土壌環境を考慮した新しい考え方」(『農環研ニュース』 No. 96 2012年10月)
セイタカアワダチソウの意外な弱点
 セイタカアワダチソウの繁殖力のすごさを目の当たりにした人は、「日本の国土がセイタカアワダチソウに占領されるかもしれない」と感じるかもしれません。しかし、よく観察すると、セイタカアワダチソウが入らない場所もあることに気づくと思います。このような場所にはどんな特徴があるのか調査を行ったところ、(1)刈り取りなど伝統的な管理手法によって継続的に維持されてきた場所である、(2)土壌中の有効態リン酸含量が低く貧栄養的である、(3)土壌の酸性が強い、といった特徴が共通して浮かび上がってきました。実は、上記の 3 点は別々に独立した現象ではなく、お互いに関連しています。つまり、刈り取りなどの伝統的な管理手法が続けられている場所では、肥料成分が過度に投入されることはないため、結果的に土壌は貧栄養的になり、また酸性化されていきます。どうやら、セイタカアワダチソウはこうった土壌環境が不得意なようです。逆に、大規模な土地改変などを行った場所や肥料成分が多量に混入した場所では、土壌が富栄養的になると同時に土壌の酸性が弱まります。セイタカアワダチソウは、こういった場所を選んで蔓延していることがわかってきました(図 2)。
セイタカアワダチソウの蔓延を防ぐ(農環研)_2
 セイタカアワダチソウは、なぜ貧栄養的で酸性の強い土壌環境が不得意で、なぜ富栄養的で酸性の弱い環境に限って蔓延するのでしょうか。この疑問に対する答えを見つけるため、植物体内に含まれる必須栄養元素の濃度を調べてみました。必須栄養元素とは、植物が正常に生育するために必要な栄養元素のことで、植物はその多くを土壌から吸収しなければなりません。調査の結果、セイタカアワダチソウは、必須栄養元素であるリン、カリウム、カルシウム、マグネシウムの体内濃度が、他の一般的な植物に比較して 2~3 倍も高いことがわかりました。セイタカアワダチソウは、これらの必須栄養元素の供給能力が低い土壌では栄養不足になってしまい、十分に生育できない可能性が考えられます。これに対して在来植物であるススキは、これらの必須栄養元素の体内濃度は低く、より貧栄養的な環境に適応していると考えられます。このように、植物は種によって栄養元素の必要量が異なり、このことが植物の分布に影響を及ぼしている可能性があります。次に、酸性度が違う土壌で栽培実験を行ったところ、セイタカアワダチソウは酸性が強いと生育が著しく阻害されることもわかりました。土壌の酸性が強くなると、土壌中に固体成分として含まれていたアルミニウムが溶出しアルミニウムイオンとなりますが、セイタカアワダチソウはこのアルミニウムイオンの生育阻害作用の影響を強く受けやすいと考えられます。
 このように、セイタカアワダチソウが蔓延できるのは富栄養的で土壌酸性が弱い場所に限られるようで、意外にも日本の土壌環境には適していないと言えそうです。