岩殿G地区のヤナギの近くと市民の森作業道寄りで群生しているオオブタクサを引き抜きました。
P5030018P5030019

P5030026P5030029
芽生えの99%を5年間除去しないと除去できないそうですが、拡大は防ぎたい!

鷲谷いづみ『オオブタクサ、闘う 競争と適応の生態学』(平凡社・自然叢書34、1996年10月)
「まえがき」にかえて
 「種」を語るということ
 「闘い=競争」が支配する植物の世界
 闘いにどう対処するか
1章 オオブタクサの素性
 オオブタクサ、日本の河原に住み込む
 豆腐とゴミが助けた侵入
 大きくとも一年草-キク科の異端児
2章 故郷(北アメリカ)でも勇名をはせる
 植生遷移を止めてしまう草
 雑草としても超一流
 花粉の煙幕・迷惑
3章 巨大化をもたらすもの
 植物が生きるための糧(資源)
 資源は必ず枯渇する
 環境要因の影響はほかの要因次第
 肥沃な土地で不足する光
 光を求めて上へ上へ
4章 植物の技はほかにもいろいろ
 融通無碍な体
 資源が一様に分布していれば不精を決め込む
 柔軟に環境に対処する能力
 込み合う前に察知する鋭い「感覚」
 闘いはいつも「備えあれば憂いなし」
 オオブタクサが草であって木にならないわけ
5章 強さのヒミツ総点検
 多年草とも闘える-オギ原への侵入
 ブタクサと比べてみる
 植物の成長は複利の貯金?
 大きな種子と早い発芽-母の強い支配
 高成長だ、生産工場は使い捨て
6章 仲間うちでの競り合い
 不公平社会の最たるもの、ジニ係数は語る
 競争は対称/非対称
 大富豪になるのは誰だ?-コーホート追跡調査
 まず因果関係をモデルの形に
 芽生えの身になって環境をみる
 成功は、能力・環境・運次第
 母も悩む、大きさと数のジレンマ
 母はあくまでも強く賢し、格差も母がつくる
7章 性と繁殖成功
 虫媒花と風媒花の損得勘定
 下手な鉄砲の玉と的の数
 種子をつくらずに遺伝子が残せる雄が得か、それとも雌が得か?
 トレンドは「小さければ雄」なのに
8章 ヒトに助けられスーパースピーシスへの道を歩む
 競争力と分散力のトレードオフ
 スーパースピーシスと地球生物相の均質化
 生物の世界には、さまざまな形のトレードオフが認められる。それによって、競争力の強い種による競争排除が抑えられ、多くの種が共存できるのだとも考えることができる。しかし、もし、天に二物を与えられた種、つまりスーパーマンならぬスーパースピーシスが現れれば、たちまち圧倒的に優占して、資源を独占してしまうであろう。ヒトが改変した環境のもとでは、競争に強く、しかも分散能力もそれほど足枷にはならないようなスーパーピーシスが現れることがあるらしい。実際に、生物学的侵入はときとして、そのような人為的スーパースピーシスを生むようである。オオブタクサは本来、競争には強いが種子の分散力が小さい植物であった。しかし、種子の分散における足枷をヒトが種子の混ざった農作物あるいは土を運搬することによって外してしまった。そのため、本来ありえないような分布の拡大をなしとげ、出会うはずのない植物と出会って、それを競争によって排除してしまう可能性が生まれたのである。
 ヒトによるすさまじい環境改変は、農地や都市などヒトがこの地球上に出現するまではほとんどそんざいしなかったタイプの生育場所を、広大な面積でつくり出した。そこには、それまで氾濫原や荒地などでっつましく生きていた植物が、やはりヒトの手を借りて進出した。ヒトの活動によって広大な生育適地が用意され、しかも分散まで保証されるとなれば、もしその植物が大きな競争力をもってさえいるなら、もはやその蔓延を抑制するものは何らない。そうなった時その種は、やはりスーパースピーシスの道を歩むことになるであろう。それは、古くから存在する生態系における侵入生物の影響などによる在来生物の絶滅とともに、この地球上の生物相の均質化の主要な原因の一つとなっている。少数のスーパーピーシスだけが景観をつくっている世界でのヒトの生活は、ずいぶん味気ないものとなるであろう。というよりは、そのような環境におかれたら私たちヒトには、もっと深刻な精神面・身体面の変調が現れないとも限らない。
 残念ながらオオブタクサは、そのような問題さえ提起する可能性のある植物なのである。
参考文献
あとがき

 (植調)外来生物防除マニュアル暫定版_1(植調)外来生物防除マニュアル暫定版_2
石川真一『大型一年生外来種 オオブタクサの脅威(2008年3月24日に群馬大学社会情報学部主催で開催された『群馬県の自然環境と人間生活-迫り来る外来植物の脅威-』の報告資料)
石川真一『大型一年生外来種オオブタクサの脅威』2008_1石川真一『大型一年生外来種オオブタクサの脅威』2008_2石川真一『大型一年生外来種オオブタクサの脅威』2008_3

※石川 真一・吉井弘昭・高橋和雄「利根川中流域における外来植物オオブタクサ(Ambrosia trifida)の分布状況と発芽・生長特性」(『保全生態学研究』8巻1号、2003年)
 
※鷲谷いづみ「さとやまの恵みとヒトの持続可能なくらし」(2014年度東京大学公開講座「恵み」) YouTube 1:01:25
概要:縄文時代から里山とともに生き、植物の生態系を管理してきた日本人。 世代を超えて知識を蓄え、生態系の持続可能性に配慮することができるのは人間だけがもつ特性です。 自然の豊かな恵みを守り、伝えていくために、私たちは何ができるのでしょうか。保全生態学の視点から考えます。

01:30 保全生態学からみた「さとやま」
11:06 縄文時代のさとやま植生管理
25:51 「持続可能性へのまなざし」こそ人間の証
41:30 生物多様性が失われることはなぜ問題なのか?
54:18 ヒトの対環境戦略のモデル