田口一成『9割の社会問題はビジネスで解決できる』(PHP、2021年6月)を読みました。
ボーダレス・ジャパン
ボーダレスマガジン特別号「ソーシャルビジネスの本を出版!『9割の社会問題はビジネスで解決できる』制作秘話を初公開!」ボーダレスジャパン、2021.05.28 )に、「これまで取材や講演で良く聞かれてきた、ボーダレスグループの仕組みとソーシャルビジネスのつくり方を余すところなく紹介しています。本当は2冊に分けるべき内容かも(笑)あとは、ボーダレスグループの社員もあまり知らない創業期の話。まとまった形ではどこにも出ていないので、読み物としても楽しんでもらえると思います」とありますが、第3章「社会問題を解決するビジネス」のつくり方はメモをとって読みました。

本書の構成と主な項目(Amazonの商品の説明から)
■第1章 「社会問題を解決するビジネス」を次々と生み出す仕組み
 ・資本主義の本質は「効率の追求」。そこから取り残される人がどうしても出てくる
 ・非効率を含めてビジネスをリデザインする
 ・社会起業家の数=解決できる社会問題の数
 ・ソーシャルビジネスをたくさんつくる仕組み(起業家採用など)
 ・世界に広げていく仕組み(恩送りのエコシステムなど)
 ・ソーシャルインパクト─売上・利益よりも重要な独自の指標
僕たちは社会問題を解決するために事業をしているので、その目的を果たすために自分たちが追いかけるべき成果を明確にした独自の指標を持っています。
それが、解決したい社会問題に対してどれだけインパクトを与えられたかを数値で表した「ソーシャルインパクト」です。
 ・【Q&A】ボーダレスグループの「リアル」。よくある質問・疑問に答えます!
■第2章 この“仕組み"がどうやって生まれたのか。その実験の歴史
 1.ソーシャルビジネスにたどり着くまで
 ・起業するも、寄付できたのはたったの7万円
 ・「ビジネスそのもので社会問題を解決できる! 」という気づきが大きな転機に
 2.ソーシャルビジネスしかやらない会社へ
 ・本当に「助けたい人」のためになっているか
 ・ソーシャルビジネスは、失敗できない闘い
 3.社会起業家のプラットフォームへ
 ・「1年に1事業」のペースでは遅すぎる!
 ・グループ外からも社会起業家を募るように
■第3章 「社会問題を解決するビジネス」のつくり方
 ・大原則「ビジネスモデルの前に、まずソーシャルコンセプト
 ・テーマ選びに原体験はいらない
 1.ソーシャルコンセプトを考える
 ・社会問題の「現状」「理想」「対策」を徹底的に考える
 ・当事者ヒアリングのコツは「行動」を聞くこと
 2.制約条件を整理する
 3.ビジネスモデルを考える
 ・ソーシャルインパクトを設定する
■第4章 ビジネス立ち上げ後の「成功の秘訣」
 ・「勝ちシナリオ」が見つかるまでは、仮説・検証をひたすら繰り返す
 ・成長期に入るまでは、絶対に社員を雇ってはいけない
 ・事業が成功するかどうかは、続けるかどうかにかかっている
 ・ボーダレスグループ6社の事例
■終 章 一人ひとりの小さなアクションで、世界は必ず良くなる
 ・まずは一人ひとりが「ちゃんとした消費者」になる
 ・みんなが「ハチドリのひとしずく」の精神で

第3章 「社会問題を解決するビジネス」のつくり方(書き抜き)
 プランニングのゴールは「1枚のシート」を完成させること
1.ソーシャルコンセプト:誰のどんな社会問題を、どのように解決して、どのような社会を実現していくのか
2.制約条件:ソーシャルコンセプトに当てはまるビジネスアイデアを考えるうえで押さえておくべき条件
3.ビジネスモデル:誰に・何を・どのように提供するのか。制約条件を満たした商品やサービスをビジネスに落とし込んだもの
 大原則「ビジネスモデルの前に、まずソーシャルコンセプト」
 ソーシャルコンセプトがなぜそんなに重要なのか
社会問題の原因に対する「対策」を忠実に体現した商品・サービスをつくり、それをビジネスモデルに落とし込んでいく
この順番でなければ、ピントの外れたビジネスモデルになってしまい、社会問題を解決する社会ソリューションになりません
ソーシャルコンセプトという社会作りの設計図=「幹」がしっかりあるからこそ、ビジネスアイデアという「枝葉」の部分はどんどん変えていける
 テーマの「ベスト探し」をやめて、まずは動いてみよう
ベターな選択肢の中から、最もベターな選択肢を一つ選らんで、まずそれをやってみる
一つに決めようとするから、先に進めなくなる
まずは一つをしっかり形にしてこそ、次の挑戦にいける
実際にやってみないことには、本当にやりたいことかどうかもわからない
 テーマ選びには原体験はいらない
原体験が邪魔することもあるので注意が必要
1.ソーシャルコンセプトを考える
 社会問題の「現状」「理想」「対策」を徹底的に考える
 1-1【現状】のチェックポイント-対象者の顔が見えるか?
どこの誰の話なのかを明確にしない限り、彼らが直面するリアルな課題や、その裏にある本質的な原因にはたどり着けない
地球温暖化はどうでしょう。こういう地球環境の問題は、対象者の「顔」が見えにくいと思うかもしれませんが、そんなときは「この問題を引き起こしているのは誰か」という視点で対象者を捉えます。そう考えると、地球温暖化の原因である二酸化炭素(CO2)を排出している対象者が企業であり、一般生活者である私たちでもあります。どういう産業が一番CO2を排出しているのか。また一般家庭で一番CO2を出しているのは何なのか。車か?電気か? そう考えていくことで、地球温暖化という大きな問題であっても、具体的な対象者を定め、その「原因」と「対策」を考えていくことができるのです。
 こうやって、対象者を定めていくと、社会問題にはたくさんの当事者がおり、それを引き起こしている原因もたった一つではなく、様々な原因がいくつも絡み合って起こっていることが分かってきます。いきなり課題に対して対策を考えても的外れになるよ、という理由はこういうところにあります
対象者を定めていくと、社会問題にはたくさんの当事者がおり、それを引き起こしている原因もたった一つではないし、様々な原因がいくつも絡み合って起こっていることが分かってきます
社会問題を引き起こしている原因が複数あらからといって、たった一つの対策でそのすべての原因を解決しようと慌ててはいけません
一つひとつの原因を丁寧につぶしていくのが、結果的に一番の近道
できるものから一つずつ確実の解決していくことが大切
多種多様な社会問題があり、そして多種多様な原因がある。その一つひとつに対して、たくさんの対策を講じていかなければいけない

 1-1【現状】のチェックポイント-課題は明確か?
課題を考える時は、「誰のどんな課題か」をセットで考える
 1-1【現状】のチェックポイント-課題の本質的原因か?
なぜその課題が起きているのかという「課題の本質的な原因」
表面に見える課題を掘り下げていくことでしか、本質的な原因を見極めることはできません。その際、常識や規制概念にとらわれないことが大切
 1-2【理想】のチェックポイント-景色として目に浮かぶか?
「具体的な姿」とは、「景色」として目に浮かぶ姿であること。変化したあとの対象者の暮らしが、まるで景色を見るように鮮明にイメージできることが大切
みんながそれいいね!という「みんなの夢」となる理想を描く
 1-3【HOW】のチェックポイント-原因に対する対策になっているか?
ソリューションとは、すなわち現状と理想のギャップを埋めるための対策
シートの書き方の注意点 原因と対策を太字にしましょう
箇条書きではなく、必ず文章で
箇条書きで書くと、いろいろな課題・いろいろな原因の列挙になりがちで、各要素の因果関係がよく分かりません
因果関係をはっきりさせるために、1~2文の文章で書くことをルールに
イケてないソーシャルコンセプトにならないように、「本当のようなウソ」に気をつける
ソーシャルコンセプトをつくる時に必要なのは、「それって本当?」と常に疑う姿勢
概念で考えるのではなく、リアルな現場に行く、当事者に会いに行く
そうしてはじめて、「自分はこういう人たちのために頑張りたいのだ」と当事者の顔がありありと浮かんでくる
 社会問題の本質的原因に対する独自の切り口が、独自の社会ソリューションへ
「これが本質的な原因だ」という唯一の正解があるわけではない
同じ社会問題を解決するのにも、社会起業家が3人いたら、三様の捉え方があります。実際には三様どころか、もっとたくさんの原因があるでしょう
その中で、自分はどの原因に対して対策を講じていきたいのか。それを追求していくことが大切です
みんなが同じことをする必要はないのです。もし、まったく同じソリューションをすでにやっているところがあればそこにジョインするのが一番です。ソーシャルビジネスというのは、みんなで社会の「穴」を埋めていく作業です。誰か一人で社会の穴を埋めきることはできません。だから、社会起業家に必要なのは、同じ穴を競争して取り合うことではなく、まだ放置されたままの隣の穴を埋める役割分担です。これからのビジネスに必要なのは、「競争」ではなく「協創」なのです
 当事者ヒアリングのコツは「行動」を聞くこと
アンケート調査はやらなくていい
ヒアリングでは、当事者に何を聞くかが重要
「では、今の状況から抜け出すために具体的に何をしていますか?」
聞いてもあまり有効な回答を得られないと思っているのが、ソリューション(解決策)に関する質問
「何があれば助かりますか?」という質問
いきなり、解決策を探そうとせず、当事者のおかれた状況、その課題が起こっている本質的な「原因」をつかむことに集中する
「いいと思いますか?」ではなく、「あなたは参加しますか?」と行動を聞く
 最低でも10人に話を聞く
3人程度の少人数では絶対にダメ
2.制約条件を整理する
ビジネスモデルを考える前にやるべきことがある
3.ビジネスモデルを考える
 制約条件をクリアするビジネスモデルを考える
この価格で売るのに、どんな付加価値をつけて誰に売るのか。ここではじめてビジネスアイデアが必要になってくる
 ビジネスモデルを考える上でのポイント(3-1~5それぞれのポイント)
  3-1 商品サービス
今すでにあるもののモノマねはいけません。同じようなものをつくっても、価格競争になるだけです。単純な価格競争は、消耗戦になり、コストを切り詰める戦い、つまり効率の追求にまっしぐらです。非効率を含めて成り立たせようとするビジネスには不利な領域です。また、単なるモノマネは、相手にとっても失礼なのでやめましょう。どうせやるなら、すでにあるものよりも圧倒的にいいものをつくる覚悟でいきましょう
  3-2 顧客と課題
どんな優れた商品であっても、全員が買ってくれるものはありません。「その商品・サービスを利用してくれる人は誰なのか? 顧客は誰で、どんな課題を持っているのか?」を明確にします
  3-3 今ある選択肢との違い
ビジネス用語でいうところの「差別化」
既存の商品・サービスと比べてどのような違いがあるのかを明らかにする
  3-4 顧客ベネフィット
顧客はただその商品を買いたいのではなく、その商品・サービスを利用することで何らかのベネフィット(便益)を得ようとしている
  3-5 価格/販売チャンネル/プロモーション方法
 ビジネスモデルの良し悪しを見極めるチェックポイント
「自分が顧客の立場だったら本当に利用するか?」
「自分が顧客だったらこの値段で本当に買うだろうか?」
 ビジネスモデルは、修正、修正を繰り返す
ソーシャルコンセプトさえ決まれば、制約条件が明確になるので、あとはそれを満たすビジネスアイデアを、いろいろな人の知恵を借りながら探すだけ
 ソーシャルインパクトを設定する
ソーシャルインパクトは、その社会問題がどれだけ解決されているかを測定するための指標
社会問題の解決を目的とするからには、その目的がどれだけ達成できたのかという結果を追うことは必須
なぜソーシャルインパクトの設定にこだわるのかというと、これがなければいつの間にか売上・利益重視のビジネスになりかねない
理念・ビジョンだけで、事業のソーシャルインパクトを設定していない、またはそれを数値として追っていない会社は、本気でそれを追いかけていない