小林正秀・清水広行・藤下良夫・矢尾尋子・吉井優「京都府向日市におけるナラ枯れ対策奮闘記」(『森林防疫』62巻5号 №698 2013年9月を読みました。向日市[むこうし](以下、下線は引用者)
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1.はじめに
2.被害の発見と1年目の対策
3.2年目(2009年)の対処法
4.3年目(2010年)の対処法
5.4年目(2011年)以降の対処法
6.考察
 今回の対策によって新知見が得られた。まず、カシナガは樹幹部よりも根株部での繁殖数が多い場合があることが判明した。フラス排出量が多い樹木ほどカシナガの繁殖数が多く、穿入生存木でも、1本から10万頭近くが脱出する場合があることが判った。……
今回の対策は、ナラ枯れ対策において何が重要かも示唆している。京都府では、枯死木の伐倒くん蒸とシート被覆の併用で防除に成功している事例が多い。このため、はりこ山でも、同じ対策を実施すべきであったが、予算がなく、シート被覆ができなかった。また、薬剤も使用できなかった。結局、2008~2010年には、実績のない方法で対応せざるを得ず、被害を抑えることができなかった。……この間に要した経費は、人件費や資材費など合計1000万を超えたであろう。もし、初年度に徹底した対策を実施していれば、経費も被害量も低く抑えられたと考えられる。ナラ枯れ対策として、これまでに多くの防除法が開発されているが、新しい防除法を単独で用いて防除に成功した例は報告されていない。……
ナラ枯れを抑えるためには、2つの方法がある。1つは「カシナガの数を減らすこと」であり、もう1つは「カシナガの餌を減らすこと」である。先人達がやっていた餌木誘殺法は、餌である立木を伐倒して、カシナガを穿入させて燃やす方法であり、カシナガの数と、カシナガの餌を減らすことを同時に行う優れた方法である。しかし、木を燃料として使わなくなった現在では、大径木の伐倒や、餌木の利用が困難である。
[向日市のナラ枯れ対策 ①カシナガの数を減らす方法:ペットボトルトラップ、②カシナガの餌を減らす方法:シート被覆)

7.おわりに
 向日市でのナラ枯れ対策は、奮闘記というタイトルにふさわしいほど、向日市職員などが予算のない中、現場で奮闘した。こうしたやり方は、一見、経費節減になるように見えるが、かえって膨大な経費をつぎ込むことになった。現在の日本では、ナラ枯れに対して、被害の初期段階で多額の経費が投入されることは少ない。大被害になってから予算が確保されることが多いが、それでは被害拡大は止まらない。ここで紹介した事例は、最終的には被害を抑えたが、成功例とは言い難い。新たに被害が発生した市町村や、被害が迫っている市町村は、この奮闘記を参考にして被害の初期段階で徹底した対策を講じていただきたい。