ナラ枯れ対策に現場で奮闘する研究者がナラ枯れの原因や対策をどのように解明していったのか。小林正秀さん達の研究を全国森林病虫獣害防除協会森林保護機関誌『森林防疫』バックナンバーから辿ってみました。
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小林正秀・上田明良「京都府内におけるナラ類集団枯損の発生要因解析」(『森林防疫』51巻4号 №601 2002年4月)を読みました。(以下下線は引用者)
1.はじめに
 ナラ類集団枯損の発生要因
  ①ならたけ病
  ②残雪中の酸性物質による根の障害
  ③温暖化の影響
  ④風倒木の発生
  ⑤伐採の影響
  ⑥樹の老齢大径化
2.ならたけ病
3.残雪中の酸性物質による根の障害
 枯損木は、樹幹上部が萎凋した後も、地際から萌芽することが多く、根の障害で枯損したとは考えられない。
4.温暖化の影響
 燃料革命以前と現在との違いは、現在の被害はどんどん周辺に拡大することである。つまり、温暖化によるミズナラの衰弱や、カシナガのミズナラへの侵入、病微進展の促進は、被害発生の要因ではなく、被害拡大要因と考えられる。
5.風倒木の発生
 カシナガは風倒木に非常に高い密度で穿入することが確認されている。
 地形解析で、傾斜角5度ごとのナラ林面積に対する被害面積の割合(危険率)を算出して、被害が発生しやすい傾斜角を求めた結果、急傾斜地ほど被害が発生しやすい傾向が認められた。これは急傾斜地で風倒木が発生しやすいことと関係しているのかもしれない。
6.伐採の影響
 ミズナラやコナラの倒木を放置することは、以下に示す3つの理由から被害発生の引き金になると考える。
 ①倒木の発生により林冠の閉鎖が破られ、微気候が変化することで、残されたナラ樹の抵抗力が失われる。
 ②雄が穿入した倒木にカシナガが誘引され、周辺立木の被害が誘発される。
 ③倒木自体がカシナガの繁殖源になり、翌年のカシナガ個体数が増加する。
 しかし、風倒木の発生や伐採が行われば必ず被害が発生するのではない。被害地には、必ず老齢大径化したミズナラが存在する。此の事から、被害発生の根本原因は、次に述べる樹の老齢化大径化と著者らは考えている。
7.樹の老齢大径化
8.おわりに
被害発生要因を解析するため、被害発生初期林での実態調査と被害地の地形解析を行った。その結果、風倒木の発生や伐採が行われた場所で最初の被害が発生している場合が多かった。また、カシナガはコナラやミズナラの大径木を好み、ミズナラ大径木が枯損しやすいことが確認できた。さらに、低地のミズナラ林で被害が発生しやすいことが判った。以上のことから、ナラ類集団枯損は、カシナガが運ぶナラ菌が主因であるが、薪炭林の放置によるナラ樹の老齢大経木化が最も重要な要因であり、老齢過熟林における風倒木の発生や伐採が、被害発生の引き金になっていると推察される。また、温暖化によるナラ樹の衰弱やカシナガ分布域の拡大、病微進展の促進は被害の拡大要因であり、1980年代以降、被害が 急速に拡大しているのは、温暖化の影響もあると考える。
 ナラ類集団枯損は、被害が蔓延すると防除が困難であり、予防が重要である。北海道でのヤツバキクイムシによる針葉樹被害も、風倒木の発生や伐採が被害発生の引き金になることが知られており、被害を発生させない注意点として以下のことが指摘されたいる。
 ①伐倒木はなるべく早く林外に搬出する。
 ②伐倒木の周辺には大径木を残さない。
 ③何本かのグループをなしている場合、その内の1本を伐るとか、1本を残すとかしない。
 ④単木的択伐よりも小群状の伐採をする。
 ⑤伐木枝条を残さない。
 この方法は、カシナガを発生させない注意点として利用できるであろう。