岩殿A地区下の田んぼにシュレーゲルアオガエルの白色の泡に包まれた卵塊が浮いていました。畦の高さがあり畦塗りしていない北側の畦の土中に産卵したものでしょう。シュレーゲルアオガエルは、水田や湿地と樹林地や草地がセットで存在する環境に生息するカエルで、水田の畦や湿地に産卵します。
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シュレーゲルアオガエルの成長
大日本図書の昆虫などの生物や植物の成長を鮮明な写真や動画で追うことができる「おおきくなあれ」(写真・解説:八木澤薫さん)のページから(15巻2号、4号、6号 2015年度)。
 シュレーゲルアオガエル1(15巻2号、2015年)
  オスとメス、産卵、卵のう、卵、オタマジャクシ
 シュレーゲルアオガエル2(15巻4号、2015年)
  オタマジャクシ、顔アップ、足出る、前足でる、オタマガエル、子ガエル
 シュレーゲルアオガエル3(15巻6号、2015年)
  子ガエル、顔正面、食事、オスの親、オス2匹、オスガエル鳴く

物子「アマガエルよりもずっと少ないんだ。土屋の方にしかいないみたいね。」
探偵「シュレーゲルアオガエルの場合は、田んぼのあぜの土の中に泡にくるまれた卵を産む。産卵の時期もアマガエルよりも早くて4月から5月にかけてだ。だから、その頃におたまじゃくしが暮らせるような水のある水田が必要なんだ。そういう場所が、今では丘陵地の谷戸田(やとだ)にしか残されていないということだね。」
博「じゃあ、減ってきているカエルっていうこと。」
探偵「その通りだ。シュレーゲルアオガエルの美声をいつまでも聞きたいものだけどね。」

※大澤啓志・勝野武彦「多摩丘陵南部におけるシュレーゲルアオガエル生息の環境条件の把握と保全に関する考察」(『ランドスケープ研究』63巻5号、2000年)
抄録:都市域におけるカエル類の保全を検討するため、多摩丘陵南部においてシュレーゲルアオガエルの鳴き声による個体数把握を行い、各生息地の環境条件との関係を調べた。生息地点は全域で77地点であり、そのうち30個体以上の計数個体数が得られたのは10地点のみであった。水田タイプ毎の個体数密度は過湿田>湿田>乾田の順であり、都市緑地における過湿田・湿田の重要性が示された。また、分散能を考慮した地域個体群としての評価を加えることにより、多くの地点が不安定な状態の個体群であることが示された。得られた結果を基に、本種の生息に必要な整備・管理指針および丘陵全体でのメタ個体群の保全について考察を加えた。
個々の生息地に求められる環境の質
今回の結果において各生息地の個体数密度に最も強く関与しているのは水辺タイプであった。本種は卵塊の乾燥を防ぐため柔らかい土中に穴を掘って産卵するため、毎年くろ塗りが行われる畦や荒起こしをした水田は良好な産卵場所を提供していることになる。特に湿田・過湿田区において面積と計数個体数に正の相関が見られ、過湿田区(2.27個体/0.01ha)が湿田区(0.97個体/0.01ha)よりも高密度に生息していた。
湿田区は圃場整備は行われていないが、山際の水路(素掘りや矢板止め)が水田面より深く掘られて冬季の水田はやや乾いた状態であり、乾田区および過湿田区の中問的な性質を示している。
しかしながら、湿田区において耕起・水入れが季節的に遅くなっても、部分的に湿っているか水田の周囲に水路や湿地が存在する等、湿った環境が残されている場合が多く、乾田区に見られるような負の影響は少ないものと考えられる。このため、湿田区においては過湿田区ほど多くはないが個体数密度はある程度安定している。
過湿田・湿田区(写真1、2)に見られる本種の生息密度の高さは、伝統的な水田耕作が本種の水田における繁殖を安定したものとしてきたことを示している。多摩丘陵南部に残された過湿田・湿田の確保・保全に加えて、伝統的な水田耕作スタイルの維持が都市域における本種の生息に不可欠な要素といえる。
一方、乾田区では生息しないか、個体数密度は非常に低かった。湿地については水域の状態により個体数密度に違いがみられ、「過湿田〉湿田〉乾田」の個体数密度の違いがそれぞれの湿地の状態に対応するものと考えられる。すなわち、個体数密度が高い地点は自然湧水の多い過湿田状の湿地であり、逆に低い地点は湿田から乾燥状態に向かっている湿地といえる。
都市域における本種の保全を考える場合、現状の過湿田・湿田の維持に加えて、新たな生息地としての各種の環境改善や復元・創造が必要となってくる。この場合、湿田(春季の畦塗り、春~夏季の開放浅止水域の確保)あるいは過湿田(加えて冬~春季の湛水:それほど水深をとる必要はなく、薄く水が覆う程度でよい)の状態を水辺の整備あるいは管理指針にすることにより、少ない面積でも高い個体数が確保されるものと考えられる。また、圃場整備が行われ乾田化された水田地区においては、一区画でも早春季から水が入るエリアを設けることが望まれる。これは、乾燥状態に向かっている湿地についても同様である。さらに、水際に沿って浅水域~湿地状の環境を持たせた池(修景池、ため池等)においても、先に示した整備・管理を行うことにより本種の生息地としての利用は可能と考えられる。
生息に必要な樹林規模については、少数の個体数であれば1ha程度の小規模な樹林地でも生息していた。また、3ha未満の樹林地でも30個体以上が得られた地点もみられた。このため、ある一定量以上が確保されればそれ以上の樹林規模は生息数には関与してないものと考えられる。このことは、本種が生息に広い緑地を必要とするような生物(アンブレラ種)ではないことを示しており、都市緑地における本種の生息には有利に作用している。
すなわち本種の非繁殖期の樹林地利用という面からは、中継地(スポット)のような小規模な生息地においては少なくとも1ha程度の樹林地が確保されれば生息は可能であると考えられる。一方で、樹林地の存在は過湿田・湿田を保っのに必要な自然湧水の維持という面も持っている。今回、過湿田・湿田の多くの地点は丘陵斜面(谷戸を含む)と組合わさって存在しており、丘陵樹林地の保水能と斜面下部からの湧水が本種の生息を安定したものにしている。一般に都市域では湧水地背後の自然的土地利用(特に保水力の高い樹林地)と湧水量は正の関係があるため'6'、過湿田・湿田との結びつきから、丘陵地地形(谷戸地形を含む)と斜面樹林地の保全が重要となってくる。すなわち、個体数密度の高い水辺タイプと丘陵地地形および樹林地の組み合わせ(谷部:過湿田・湿田一斜面:樹林地)として保全することが、本種の安定した生息に求められる環境の質といえる。(497~498頁)
過湿田、湿田
冬季にも水が抜けない過湿田は、タガラシ、ムツオレグサ、ミズハコベ等が見られ、スズメノテッポウ-タガラシ群集に対応する。山際の水路によりやや乾燥している湿田では.ノミノフスマ-ケキツネノボタン群集に近い群落組成となる。(498頁)

※真保忠治・岸しげみ・柳楽秀治「茅ヶ崎市芹沢柳谷に生息するシュレーゲルアオガエルの繁殖期における生態」(神奈川県立生命の星・地球博物館『神奈川自然誌資料』29号(神奈川県立生命の星・地球博物館、2008年3月)
「くろぬりの有無と産卵の関係」、「産卵と畦の形状、土の硬さ、湿り気、植生の関係」、「産卵位置の調査」等、今後の岩殿入山谷津の活動に活かしたい。