田野大輔さんの『ファシズム教室 なぜ集団は暴走するのか』(大月書店、2020年4月)を読みました。
ファシズム教室

田野大輔『ファシズム教室 なぜ集団は暴走するのか目次
ほじめに
第1章 ヒトラーに従った家畜たち?
 1 小さな権力者たちの暴走
  「大衆運動」としてのナチズム
  ブロパガンダ論の限界
  末端の権力者を突き動かすもの
  権威への服従がもたらす「自由」
  ユダヤ人迫害のメカニズム
  「水晶の夜」の暴動
 2 「民族共同体」という理想郷
  階級のない「公正」な社会
  「喜び」を通じて「力」を
 3 統合の核としての指導者
  『意志の勝利』に見るにヒトラー
  「アイドル」としてのヒトラー
  「普通の人間」のイメージ
 4 大量殺戮への道
  「異分子」の排除とホロコースト
  「悪の陳腐さ」
  「彼らは自由だと思っていた」
 コラム 水晶の夜
 コラム 悪の陳腐さ
第2章 なぜ「体験学習」なのか?
 1 「体験学習」が生まれるまで
  『ウェイブ」の衝撃
  授業化にあたっての課題
  暴走の疑似体験
 2 「社会意識論」のテーマ
  普通の人間の残虐行為
  ミルグラム実験
  「権威への服従」がもたらすもの
 3 「体験学習」の概要
  投業の流れ
  授業のねらい
 コラム ミルグラム実験
第3章 ファシズムを体験する
 1日目
  受講にあたっての注意
  独裁とは?
  独裁に不可欠なもの
  拍手で指導者を承認
  ナチス式敬礼
  独裁を支える団結
  共同体の力
  ここまでのまとめ
  席替えで受講生を分断
  制服
  ロゴマーク
  集団の目的
 2日目
  ほぼ全員が制服を着てくる
  再び糺弾の練習
  前回の復習
  柄シャツ登場
  ワッペン作成
  グラウンドに整列
  隊列行進
  リア充の糺弾
  意識の変化を書かせる
 コラム ナチ党大会の実態
第4章 受講生は何を学んだのか?
 1 受講生のレボートからわかること
  高い参加意欲
  レポートの概要
  典型的な感想
 2 デブリーフィングで学ぶこと
  3つの論点
  ①集団の力の実感
  ②責任感の麻痺
  ③規範の変化
  日常の間い直し
  危険性の認識につなげる
 3 ファシズムの正体とは?
  ファシズムの「魅力」
  集団行動の快楽
  ファシズムが生まれるとき
  「正義」の暴走
 コラム ホロコースト
 コラム ナチ体制は全体主義国家なのか?
第5章 「体験学習」の舞台裏
 1 「体験学習」の工夫と注意点
  ①主体的な関与を促す指示
  ②共通の制服とワッペン
  ③ナチス式の呼称と敬礼
  ④ネタの過剰演出
  ⑤事前の入念な準備
  ⑥状況に応じた適切な指示
  ⑦実習の場所の設定
  ⑧実習の期間の限定
 2 「体験学習」の教育的意義
  主体的な学び
  座学の重視
  台本の役割
  集団行動の危険性を学ぶ
  民主主議育の限界
 3 「体験学習」が直面する課題
  否定的な価値を学ばせる
  「寝た子を起こすな」論
  意義をを理してもらうこと
 コラム 青い目、茶色い目

第6章 ファシズムと現代
 1 ポビュリズムの時代
  現代に蘇るファシズム
  生の実感を取り戻す
  ポピュリズムの危険性
  「正論」の限界
 2 日本の不寛容な空気
  「HINOMARU」騒動
  「右も左もない愛国心」
  「政治的正しさ」への反発
  ヘイトの動機
  ファシズムに抗するには?
  「責任からの解放」
 コラム ネット右翼
 コラム ヒトラーは社会主義者なのか?
おわりに


※永月「ファシズムの体験学習に行ってきた話」(『九月の断章』ブログ、2018年9月6日)
 

 3 結果
 授業実施後に受講生に課したレポートから、彼らの多くがこの体験学習を通じて次の3点を驚きをもって認識したことが明らかになった。①集団の力の実感。集団で一緒に行動すると、自分の存在が大きくなったように感じ、集団に所属することへの誇りやメンバーとの連帯感、非メンバーに対する優越感を抱くようになること。制服やシンボルマークといった単純な仕掛けによって、そうした意識が強まること。②責任感の麻痺。指導者から指示されたから、あるいは他のメンバーもみんなやっているからという理由で、普段ならけっしてやらないようなことでもやってしまうこと。個人としての判断を停止して、指示されるまま集団にあわせて無責任に行動してしまうこと。③規範の変化。最初は恥ずかしかったり、こんなことをやるのはおかしいと思っていたのに、集団にとけ込むことで恥ずかしさを感じなくなり、ちゃんとやっていないメンバーに苛立ったりするなど、集団で一緒に行動することを義務のように感じはじめること。

田野大輔研究業績リスト(Daisuke Tano′s Website『dTANo.Mac』から)