7月1日から、レジ袋有料化がスタートしました。国立環境研究所資源環境・廃棄物研究センターの森朋子さん(司会・進行、特別研究員)、寺園淳さん(副センター長)、田崎智宏さん(室長)の3名の研究者が解説している『どうするプラごみ問題(前編)~レジ袋有料化だけじゃ終われない~』です。10月21日にYouTubeで配信されました。
どうする?プラごみ問題~レジ袋有料化だけじゃ終われない~(30:00)
①なぜ今、レジ袋有料化なのか?
Q1 レジ袋の有料化はあまり意味がない?
日本のレジ袋の使用枚数
年間 500~700億枚
LとLLサイズとして算出
(昔の推計では約300億枚)
・一人1日に1~2枚使っている計算
・2006年頃にレジ袋有料化の動き 業界の反対で自主的な取組へ
「有料化」には優れた効果がある
①容器包装の有償提供(有料化)
②景品等の提供
③繰り返し使用が可能な買物袋等の提供
④容器包装の使用について消費者の意思を確認
⑤容器包装の量り売り
統計的に有意に効果が検出できたのは、①のみ
他は、効果が検出できるほどの効果はなかった
ただし、「効果がない」とまではいえない
一番「有料化」が重要だという結果
レジ袋辞退率(コンビニ業界の場合)
有料化前 約25%
有料化後 セブンイレブン 75%
ファミリーマート 77%
ローソン 76%
有料化が意味がない(やめるべき)、効果が小さい(他を優先させるべき)
もっと効果的なものに取り組むなら、やめてよいが……
レジ袋以外に、他に何をやったらいいか
レジ袋は薄くて、軽くて、量的に効かない?
プラごみ問題は、重量だけの話ではない
・海洋生物がプラごみを呑み込んだり絡まるケース
→重量ではなく容積や表面積がより重要
・取り組みやすさは重量では表現されない
・取組の波及効果も重量では表現されない
・クリーンアップの邪魔:レジ袋の泥は除去しにくい
回収しづらく、リサイクルにも影響
・多くの国が有料化あるいは禁止を実施している事実
逆に、やらない理由を説明できるのか?
何に対策すべきか?→無駄に使っているものから
どっちを減らしたらいいか?
使い捨てプラスチック>繰り返し使うプラスチック
無料のプラスチック>有料のプラスチック
容器包装プラスチック>製品プラスチック
レジ袋が一番最初の取り組みに
Q2 レジ袋は、ごみ袋として有効に使えばよい?
ごみ袋は30L以上のものが多い
コンビニやスーパーのレジ袋は小さい
→レジ袋はごみ袋の中のごみになる
→レジ袋をごみ袋として出すと、ゴミ収集作業者の手間が増す
一定の大きさのごみ袋に入れて出された方が作業は楽
ごみ袋を無駄にたくさん使ってよいのか?
親袋(=排出容器)、小袋、孫袋、曾孫袋、……
小袋としてレジ袋4.2枚、孫袋として1.1枚使われている
親袋の中にレジ袋が計5.4枚使われている
こんなに使う必要があるのか考える
“無料の袋”だと、減らす動機づけがない
無料の袋はたくさん使ってしまう
②プラスチックは何が問題か?
Q3 日本人が、1日に廃棄するプラスチックはどのくらい?
プラスチックは、家庭ごみの重量で約10%、容積で約45%
プラスチックはごみ問題で重要なターゲットのひとつ
日本のプラスチックの廃棄量(家庭と家庭以外の産業からでる)
日本全体で1人1年間70㎏
35gの厚めのペットボトルが2000本で70㎏
35gの厚めのペットボトルが1人1日5.5本
Q4 日本は、適正にリサイクルしており、海洋流出はあまりない?
世界のプラスチックの海洋流出量は、年間480万トン~1200万トン程
日本からの海洋へのプラスチック流出量 年間2~6万トン
(プラスチック廃棄量の約0.5%)
日本は2050年までに海洋プラスチックの追加汚染ゼロを提出
2019年6月29日、G20大阪サミットで「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が首脳宣言に盛り込まれた
2050年までに、海洋プラスチックの追加汚染をゼロにするには
環境への流出量<クリーンアップ量(清掃活動)
①回収量の増加(ペットボトルは既に9割回収)
②利用量の削減
③クリーンアップ活動の拡大(10倍)
努力と気合でやるにしては①では限界、②と③に頼るしかない
回収され、リサイクルされている?有効利用量(84%)リサイクル(マテリアル、ケミカル)とエネルギー回収(燃料化、焼却)
焼却施設の発電効率は12~13%
マテリアルリサイクルではペットボトル60数万トン
容器包装に使われたプラスチックは焼却にまわされているものがかなり多い
マテリアルリサイクルの3分の2位は産業廃棄物のプラスチック
産業廃棄物のプラスチックは国内よりは中国でのリサイクルが多かった
2017年末以降、中国が輸入しなくなった(→リサイクルが難しくなっている)
③技術でプラスチックごみ問題は解決できるのでは?
Q5 バイオマスプラスチックが普及すればOK?
バイオマス起源のプラスチック
生物(サトウキビなど)からつくられるでん粉・セルロースなどを原料とする
耕作面積や水が多く必要
コストが高い?から今まで普及しなかった
リサイクルで普通のプラスチックと一緒に処理できるか?
分解されやすい生分解性プラスチック
※バイオマス起源のプラスチックが、生分解性プラスチックというわけではない。
プラスチックの4つの問題:解決策との対応関係
海洋プラスチック汚染・マイクロプラスチック問題地球温暖化問題
非再生資源依存(石油依存問題)
大量生産・大量消費社会
技術で解決できるのは問題の一部分にすぎない
バイオマス起源プラスチック カーボンニュートラル
生分解性プラスチック 海洋プラスチック汚染
リデュース(全ての問題解決に貢献)
プラスチックの使用を考え直す
プラごみを減らすためにはどうしたらいい?
施用量を減らすことが大事
要らないものはもらわないで済む社会
必要なものを大切に使い続ける
リデュースの難しさを乗り越えるために〈注意点〉
1)極論に走りがち
ゼロイチの議論で思考停止しやすい。
国の目標=使い捨てプラスチック25%減
個人にできることは限界
企業などと本当に必要なのか議論することが重要2)過剰性(使い過ぎ)は自らは気がつきにくい日本のプラスチック資源循環戦略の概要
(図・表は『生活協同組合研究』2020年9月号掲載の田崎論文から)
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プラスチックは低コストで大量に生産され私たちが快適で便利な暮らしをするためにかかせないものとなっている。プラスチックの世界生産量は3.8億トン(2015年)に達し、その4割程度が包装に用いられている。確かに、プラスチック包装は品質の維持に適し商品が破損しにくく陳列しやすい。
この包装用のプラスチックについては、今年7月より日本でもレジ袋が有料化され関心が高まった。また、女子高校生がお菓子の外袋・トレイ・個包装にプラスチックが使われるといった過剰包装を無くしてほしいという署名を集め製菓会社に届けたこともニュースになった。
プラスチックは優れた点も多いが生分解せず廃棄物として河川や海洋に流出してしまうとマイクロプラスチック等として長期にわたり環境を汚染し生態系に悪影響を及ぼすという問題がある。さらに、プラスチックごみの多くは最終的に焼却処理され CO2等を発生し地球温暖化の要因となっている。プラスチックの原料である原油は数億年前の生物の遺骸が堆積し生成されたといわれているが、人類はこの原油を急速に消費し10~15㎞程度しかない大気層に CO2等として放出し続けている。
また、プラスチック問題は大量生産・大量消費・大量廃棄社会という構造的な問題でもある。脱プラスチックを進めるためには個々人や企業の努力も必要ではあるが、プラスチックごみの回収や処分に対し生産者責任を拡大していくといった経済的手法も含めた構造的な対策が必要となる。EU は2018年の「欧州プラスチック戦略」で2030年までに使い捨てプラスチック包装を域内で無くし、すべてを再利用またはリサイクルすることを掲げた。国内では2019年5月の「プラスチック資源循環戦略」で2030年までに使い捨てプラスチックを25%排出抑制する等の目標が掲げられた。
本特集ではこのようなプラスチックを取り巻く問題について、プラスチックの生産と消費の実態、プラスチック汚染の現状、脱プラスチックにむけた国際的な動向、欧州の生協の取り組み、国内の動向と企業や生協の取り組み、「プラなし生活」といった新たなムーブメント等を論じていただいた。プラスチック問題の理解と、脱プラスチックの取り組みへの示唆となれば幸いである。(渡部博文)
特集:プラスチック汚染・脱プラスチック世界で広がる脱プラスチックの動き(原田禎夫)
プラスチック問題に関する国内外動向と俯瞰的理解
─混乱する議論の解きほぐしから始める問題との向き合い方─(田崎智宏)
欧州の生協におけるプラスチック削減の取り組み(佐藤孝一)
トッパンのサステナブルパッケージソリューション(川田 靖)
脱プラスチック社会の実現に向けたコープこうべの取り組み(鬼澤康弘)
生活クラブのグリーンシステム(山本義美)
プラスチックがもたらす生活革命 いかに仕組みをつくれるか(小松遥香)
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※生分解性プラスチック入門(『日本バイオプラスチック協会』サイト)
生分解性プラスチックを取り巻く環境:世界のプラスチック生産は1960年代から2019年では約20倍の4億トン/年となり、20年後にさらに2倍の予測がされています。このうちリサイクルされているものは10%弱に過ぎず、回収されたプラスチックごみの約80%が埋め立てや自然界(海洋等)へ投棄されています。ここまでは2050年までに海洋中のプラスチックが魚の重量を上回ると言われており、環境汚染が深刻化しています。これに対して、EUをはじめ世界各国ではプラスチックの資源循環への関心が高まっています。
生分解性プラスチックの定義:生分解とは、単にプラスチックがバラバラになることではなく、微生物の働きにより、分子レベルまで分解し、最終的には二酸化炭素と水となって自然界へと循環していく性質をいいます。「グリーンプラ」の生分解度は、国際的に規定された試験方法と、定められた基準により審査されます。さらに、重金属等の含有物、分解過程(分解中間物)での安全性などの基準をクリアした製品だけが、グリーンプラマークをつけることができます。
生分解性プラスチックの用途:生分解性プラスチックは、通常のプラスチックと同様に使うことができ、使用後は自然界に存在する微生物の働きで、最終的に水と二酸化炭素に分解され自然界へと循環するプラスチック。食品残渣等を生分解性プラスチックの収集袋で回収、堆肥化・ガス化することにより、食品残渣は堆肥やメタンガスに再資源され、収集袋は生分解されるため、廃棄物の削減に繋がる。また、マルチフィルムを生分解性プラスチックにすれば、作物収穫後にマルチフィルムを畑に鋤き込むことで、廃棄物の回収が不要となり、発生抑制に繋がる。
主要用途
農業・土木資材(マルチフィルム、燻蒸フィルム、獣害対策忌避ネット等)
食品残渣(生ごみ)収集袋(堆肥化・メタンガス発酵施設へ)
食品容器包装(食品容器包装・カトラリー・ストロー等)
※『みんなで減らそうプラスチック』(日本消費者連盟)(2020年9月25日記事)
※沖縄県「環境にやさしい買い物キャンペーン」ポスター(2020年9月5日記事)