環境省は7月14日、2019年度の電気事業分野における地球温暖化対策の進捗状態について、電力業界の自主的枠組みと政府の政策的対応の2つの柱で評価した結果(「電力レビュー」)を発表した。
 2016年2月、環境大臣・経済産業大臣は、電気事業分野の温暖化対策における2030年度のCO2排出係数を0.37kgCO2/kWhとする目標達成に向けて、①目標達成に向けた電力業界(電気事業低炭素社会協議会)による自主的枠組み(取組みのPDCA 等)に対し、引き続き実効性・透明性の向上等を促していく、②政府による政策的対応として、省エネ法やエネルギー供給構造高度化法等に基づく基準の設定や運用の強化等により、電力業界全体の取組の実効性を確保する、③これらの目標達成に向けた取組については、毎年度、進捗状況を評価する。目標が達成できないと判断される場合には、施策の見直し等について検討することを合意し、環境省は毎年度、この合意に基づく取組の進捗状況の評価を実施して来ている
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電気事業分野における地球温暖化対策の進捗状況の評価結果について(評価結果の総括)(環境省 2020.07.14)
1.評価の背景及び目的

2.電気事業分野における現状分析と今後の方向性
電気事業を取り巻く情勢
電気事業分野の低炭素化・脱炭素化に向けて
○電気事業分野における 2030 年度目標や上記政府方針の達成に向けた進捗については、以下の点が注目される。
・現在の石炭火力発電の新増設計画が全て実行され、ベースロード電源として運用されると、仮に既存の老朽石炭火力発電が順次廃止されたとしても、2030年度の削減目標やエネルギーミックスに整合する石炭火力発電からのCO2排出量を約5,000万トン超過する可能性がある。現時点でこそ、電気事業分野全体のCO2排出係数は改善傾向にあるものの、環境省の試算によれば、2030 年度の目標達成は困難であり、パリ協定で掲げる脱炭素社会の実現も視野に入れ、更なる取組の強化が不可欠である。中長期的な脱炭素化に向けて、脱炭素社会への現実的かつ着実な移行に資する「脱炭素移行ソリューション」を目指すことが必要である。
・石炭火力発電について現状で明らかになっているところでは、新増設計画がある一方で、休廃止計画は少なく、石炭火力発電の設備容量は大きく純増する。環境省の試算では、2019年度における非効率な石炭火力発電(超臨界(SC)以下の設備)設備容量は石炭火力発電(自家発自家消費設備を除く。)の約5割、2030年度においては約4割を占める。CO2削減目標の達成に向けて、こうした非効率な石炭火力発電のフェードアウトに向けた取組を着実に進めることが必要である。今般、経済産業省から、フェードアウトに向けた新たな取組の検討に着手するとの発表があった点も踏まえ、環境省として、非効率な石炭火力のフェードアウトに向けた取組を厳しく注視してまいりたい。
・CO2排出削減をパリ協定の長期目標と整合的に実現するためには、高効率な火力発電設備についても、更なる高効率化・次世代化を進める必要がある。再生可能エネルギーによる出力変動への柔軟な対応、燃焼に伴ってCO2を排出しないエネルギーであるバイオマス・水素・アンモニア等の混焼、排出されるCO2を回収して有効利用・貯留するCCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)の活用など、火力発電のゼロエミッション化が重要である。これらに向けたイノベーションを総合的に後押しし、「ゼロエミッション火力」の実現可能性を追求すべきである。このような「脱炭素移行ソリューション」を通じて、脱炭素社会への現実的かつ着実な移行を目指す必要がある。
再生可能エネルギーの主力電源化は、「脱炭素移行ソリューション」の一環としても重要である。エネルギーミックスで掲げる22~24%という水準を着実に達成しなければならない。さらに、これにとどまらない一層の導入拡大が必要である。2019年4月に発足した環境省・経済産業省の連携チームによる取組等を通じ、地域の再生可能エネルギーを活用した分散型エネルギーシステムの構築等、更なる取組の加速化が求められる
・併せて、再生可能エネルギーの導入拡大に伴う系統制約の克服に向け、系統増強に加え、既存系統の最大限の活用(日本版コネクト&マネージ)の取組の一つである「ノンファーム型接続」の2021年中の全国展開に向けた着実な取組とともに、地域における再生可能エネルギーの需要に応じた系統整備・活用が進むことを期待する。
○脱炭素社会の実現に向けては、脱炭素な調整力としても活用でき、新たなエネルギーの選択肢となり得る水素や、CCUS 等の脱炭素技術等について、その商用化や社会実装の見通しを具体的に示すことが必要である。

3.電力業界の自主的枠組み及び政府の政策的対応に関する進捗状況の評価
(1)電力業界の自主的枠組みの現状について
○今般、協議会は、2030年度のCO2排出係数に係る目標の達成に向け、その取組の自主的枠組みにおいて、協議会のCO2排出係数の妥当性を定量的に評価・分析する仕組みを新たに導入した。
○これは、取組の実効性を向上させ得る努力として高く評価したい。しかし、こうした自主的枠組みも、PDCAサイクルの実効性確保の点で万全とまでは断言しがたく、目標達成への具体的な取組の道筋は今なお明らかでない。引き続き、会員事業者数の増大も含め、更なる努力に期待したい。
(2)政府の政策的対応の現状について
省エネ法関係
○省エネ法の下、発電事業者に対し、火力発電設備の効率として達成すべきベンチマーク指標が設定されており、2019年度実績では目標の水準を上回っている。
○一方、この指標の達成に向けた複数事業者の共同による取組(いわゆる共同実施)の在り方等を巡る議論については、未だ結論が得られていない
○火力発電の着実な低炭素化に向けては、ベンチマーク指標の継続的な達成が必要である。ベンチマーク指標やその達成の在り方を巡る議論の進展は引き続き注視すべきである。非効率な石炭火力発電のフェードアウトは、今なお道半ばにある
エネルギー供給構造高度化法関係
○エネルギー供給構造高度化法の下、小売電気事業者等に対し、2030年度に達成すべき非化石電源(再生可能エネルギー等)の比率の目標が設定されている。また、目標達成のための仕組みとして、非化石価値取引市場も創設・運営されている。
○この目標に関しては、2030年度に至るまでの途中の期間における中間評価の基準として、2022年度までの期間に係る定量的な基準が策定されたことは評価したい。
○一方で、今後の非化石電源比率の目標の達成状況については、非化石市場の在り方や各事業者の取組と合わせて、引き続き注視すべきである。2023年度以降の期間に係る中間評価の基準についても、より野心的な目標値の早急な策定が望ましい
(3)電力業界の自主的枠組み及び政府の政策的対応の全体について
○電力業界の自主的枠組み及び政府の政策的対応には、一定の改善・進捗もあり、評価に値する一方で、上記のとおり、今なお多くの課題が残存している。電気事業分野における2030年度の目標達成に向けた道筋は不明瞭であり、早急に示す必要がある
4.今後に向けて~コロナからの復興とこれからの地球温暖化対策~
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電気事業分野における地球温暖化対策の進捗状況の評価結果について(参考資料集) 2020.07.14
 1.評価の背景及び目的
  (1)はじめに
  (2)電力の低炭素化・脱炭素化を巡る潮流
  (3)電気事業を取り巻く環境の変化
  (4)評価に関する基本的考え方
 2.電気事業分野の低炭素化・脱炭素化に向けて
  (1)CO₂排出量及びCO₂排出係数の状況等
  (2)火力発電の低炭素化
  (3)再生可能エネルギーの主力電源化
  (4)長期的な脱炭素社会の実現に向けたイノベーション
 3.電力業界の自主的枠組み及び政府の政策的対応に関する進捗状況の評価
  (1)電力業界の自主的枠組みの評価
  (2)政府の政策的対応等の評価
 4.今後に向けて ~コロナからの復興とこれからの地球温暖化対策~

 1.評価の背景及び目的
  (1)はじめに
   ●2018年度の日本の温室効果ガス排出量(確報値)
   ●部門別CO₂排出量(電気・熱配分前)
   ●電気事業分野における地球温暖化対策について
    電気事業温暖化対策評価資料集_1

  (2)電力の低炭素化・脱炭素化を巡る潮流
   ●パリ協定の目標
   ●2℃目標に整合する緩和経路
   ●1.5℃目標に整合する緩和経路
   ●残余カーボンバジェットについて
   ●化石燃料可採埋蔵量の座礁資産化リスク
   ●(参考)石炭火力発電の座礁資産化リスク
    電気事業温暖化対策評価資料集_2
   ●ESG金融の国際的な広がり
   ●脱炭素経営に向けた取組の広がり
   ●国内金融機関の石炭火力発電事業に対する方針
    電気事業温暖化対策評価資料集_3
   ●国内大手商社の石炭火力発電事業に対する方針
     電気事業温暖化対策評価資料集_4
   ●パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略(2019年6月11日閣議決定)
     電気事業温暖化対策評価資料集_5
 
  (3)電気事業を取り巻く環境の変化
   ●電力システム改革の動向
   ●新たな市場の整備動向
   ●プッシュ型系統整備への転換
   ●災害に強い分散型電力システムの促進に向けた環境整備

  (4)評価に関する基本的考え方
   ●進捗状況の評価にあたっての基本的考え方
    電気事業温暖化対策評価資料集_6

 2.電気事業分野の低炭素化・脱炭素化に向けて
  (1)CO₂排出量及びCO₂排出係数の状況等
   ●火力発電からのCO₂排出量及びCO₂排出係数について
    電気事業温暖化対策評価資料集_7
   ●2018年度における発電設備容量・発電電力量について
    電気事業温暖化対策評価資料集_8
   ●環境省RE100を通じた再エネ導入に積極的な小売電気事業者の発信
   ●排出係数・電源構成に関する情報開示

  (2)火力発電の低炭素化
   ●石炭火力発電の設備容量とCO₂排出量について
    電気事業温暖化対策評価資料集_9
   ●(参考)石炭火力発電の稼働率について
    電気事業温暖化対策評価資料集_10
   ●非効率な石炭火力からのフェードアウトについて
    電気事業温暖化対策評価資料集_11
   ●火力発電所の新増設・休廃止計画について
    電気事業温暖化対策評価資料集_12
   ●メリットオーダーについて
    電気事業温暖化対策評価資料集_13
   ●(参考)燃料種ごとのCO₂排出係数(発電量あたりのCO₂排出量)
    電気事業温暖化対策評価資料集_14
   ●(参考)発電技術の高効率化、低炭素化の見通し
    電気事業温暖化対策評価資料集_15

  (3)再生可能エネルギーの主力電源化
   ●再生可能エネルギーの導入状況
    電気事業温暖化対策評価資料集_16
   ●地域での再エネ拡大に向けた経産省との連携チームについて
   ●地域での再エネ拡大に向けた経産省との連携チームでの取組例について
   ●既存系統の最大限の活用(日本版コネクト&マネージ)

  (4)長期的な脱炭素社会の実現に向けたイノベーション
   ●各種計画等におけるイノベーションについての記載
    電気事業温暖化対策評価資料集_17
   ●環境省におけるCCSの取組例
   ●環境省におけるCCUの取組例
   ●環境省における再エネ由来水素サプライチェーン構築に向けた取組例
   ●「地球温暖化対策に係る長期ビジョン」(電気事業低炭素社会協議会)

 3.電力業界の自主的枠組み及び政府の政策的対応に関する進捗状況の評価
  (1)電力業界の自主的枠組みの評価
   ●電気事業低炭素社会協議会について
   ●協議会におけるCO₂排出削減実績
   ●CO₂排出量・排出係数の改善要因について
   ●目標達成に向けた協議会のPDCAサイクルについて
   ●協議会会員企業のカバー率について
   ●取引所取引における電源構成の把握について

  (2)政府の政策的対応等の評価
   ●省エネ法に基づく火力発電の判断基準について
    電気事業温暖化対策評価資料集_18
   ●省エネ法に基づくベンチマーク指標の実績について
   ●エネルギー供給構造高度化法について
   ●高度化法における非化石電源比率の実績
   ●定量的な中間評価の基準について

 4.今後に向けて ~コロナからの復興とこれからの地球温暖化対策~
  ●新型コロナウイルス感染症によるエネルギー需要への影響
  ●新型コロナウイルス感染症のエネルギー需要に対する影響
   電気事業温暖化対策評価資料集_19
  ●新型コロナウイルス感染症による石炭への影響
   電気事業温暖化対策評価資料集_20
  ●新型コロナウイルス感染症によるCO₂排出量への影響
  ●電力の安定供給とクリーンエネルギーへの移行に関する示唆
  ●新型コロナウイルス感染症の我が国の電力需要への影響
  ●ゼロカーボンシティの拡大
  ●経団連による「チャレンジ・ゼロ」
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小泉大臣記者会見録2020.07.14 10:31~11:03 於:環境省第1会議室)   会見動画 
 2019年度の電力事業分野における地球温暖化対策の進捗状況の評価の結果、いわゆる電力レビューを取りまとめましたので、ここに報告をしたいと思います。電力レビューは2016年2月の環境大臣と経産大臣の合意に基づいて、2030年度の削減目標やエネルギーミックスと整合する電力の排出係数0.37kg-CO2/kWhという目標の達成に向けて、電力業界の自主的取組や省エネ法や高度化法といった政策的対応が継続的に実効を上げているか進捗状況を評価するものです。それが電力レビューです。
 2019年度の電力レビューでは、各種機関が公表しているデータや分析レポートなどのファクトをベースに評価を実施して、評価結果としては、現時点では電力事業分野のCO2排出量、排出係数は改善傾向にあり、高度化法においても2020年度までの期間に係る定量的な基準が策定されるなどの一定の進展もあり、評価に値するものの、このままでは2030年度の目標達成は困難であり、脱炭素社会の実現も視野に更なる取組の強化が不可欠であると総括をしています。
 ……中長期的な脱炭素化に向けて、脱炭素社会への現実的かつ着実な移行に整合的な脱炭素移行ソリューションを目指すことが必要だと考えています。ポイントは大きく3点です。
 まず、一つ目のポイントは、再生可能エネルギーの主力電源化を一層加速化すべきということであります。2018年度の発電電力量に占める再生可能エネルギー比率は16.9%であります。再生可能エネルギーの主力電源化に向けて、エネルギーミックスで掲げる22から24%の着実な達成と、それにとどまらない一層の導入拡大が必要であります。このため、分散型エネルギーシステムの構築に向け、昨年4月に発足した環境省、経産省の連携チームの取組を一層推進していきます。また、千葉県などで試行的に実施されているノンファーム型接続の2021年中の全国展開や、地域における再生可能エネルギー需要に応じた検討・整備・活用に向けた取組が重要であり、経産省や関係業界による一層の推進を期待したいと思います。
 次に、二つ目のポイントは、非効率な石炭火力発電の休廃止、稼働抑制といったフェードアウトに向けた取組を着実に進めるべきということであります。環境省の試算によると、石炭火力発電所の新増設計画が予定どおり実行されると、2030年度の削減目標を約5000万トン超過することになります。これは2030年度の我が国全体の削減目標に整合する排出量の約5%に相当します。削減目標の達成に向けて、非効率な石炭火力発電のフェードアウトに向けた取組を着実に進めるとともに、火力発電全体からのCO2排出削減に向けて石炭火力発電の高効率化、そして次世代化、これを進める必要があります。
 今般、梶山経産大臣により、非効率な石炭火力のフェードアウトを目指していく上で、より実効性のある新たな仕組みを導入すべく、今月中に検討を開始して取りまとめるように事務方に指示したという御発言がありました。改めて、梶山大臣のリーダーシップに敬意を表したいと思います。この発表によって、国内において非効率な石炭火力発電のフェードアウトに向けた取組の具体化が進んでいくことになります。
 足元において非効率な石炭火力発電は約2400万キロワット、石炭火力発電の全体の約5割存在しており、地球温暖化対策を所管する環境省として、こうした非効率な石炭火力発電のフェードアウトに向けた取組を厳しく注視していきたいと思います。
 最後に、三つ目のポイントは、将来的なゼロエミッション火力の可能性を追求すべきということであります。パリ協定の長期目標と整合的に火力発電からのCO2排出削減を実現するためには、火力発電の更なる高効率化、これを進めて、究極的には火力発電でありながらCO2の排出が実質的にゼロである火力発電、いわゆるゼロエミッション火力、この可能性を追求する必要があります。ゼロエミッション火力を目指すに当たって、排出削減を円滑かつ着実に実現するため、これまで培ってきた経験、知見も生かして既存の石炭火力発電、LNG火力発電でのバイオマス、水素、アンモニアなどの混焼を促進して、さらにその割合の段階的な向上を図って、それでもなお避けられない排出分については、排出されるCO2を回収して有効利用、貯留するCCUSの活用を検討する、こうしたゼロエミッション火力に向けたイノベーションを関係省庁、関係業界と連携しながら、総合的に後押しをして世界に先駆けたゼロエミッション火力の実現の可能性を追求していきます。
 電気事業分野は我が国全体のCO2排出量の約4割を占める最大の排出源であり、他部門での排出削減努力にも大きく影響を及ぼすことから、電気事業分野の地球温暖化対策は非常に重要であります。今回の評価結果や気候変動問題とエネルギー問題の関連性が一層高まってきていることも踏まえて、今後ともエネルギー政策を所管する経産省と密接な意思疎通を図りながら、2030年度の削減目標の確実な達成、そして2050年にできるだけ近い時期での脱炭素社会への実現に向けて取組を進めていきます。なお、評価結果の詳細については、後ほど事務方から説明をさせていただきます。……
質疑応答
(記者)[時事通信] 地球温暖化対策計画の見直しに関連してですが、NDCについて26%の水準にとどまらない削減努力と、更なる野心的な削減努力を反映した意欲的な数値を考えていくということなんですが、大臣はどのような数値にしていきたいとお考えでしょうか。
(大臣)それはやってみた上で出るものがまさに数字ですから、今からここだというふうに決めることは、現段階では言うことではないなと思います。いずれにしても、大事なことは、石炭火力の海外輸出、この公的信用の政策の見直しが実現をした背景にはファクトをベースに議論したと、このファクト検討会の役割は相当大きかったと私は思います。今後、このファクトをベースに議論するということが霞が関、そして政治の中での常識となっていくように、この両審議会の合同会議、この場でもしっかりとファクトに基づく議論を積み上げていただければ、NDCときに日本からお約束をした更なる野心的な削減努力を反映した意欲的な数値につなげていけると、私はそう確信をしています。この両審議会の精力的な議論に期待をしています。
(記者)[朝日新聞] 温対計画の見直しなんですけれども、先ほど、ポストコロナというところを最初に議論しなければいけないということでおっしゃっていて、コロナによって、特に温暖化対策という点で大臣はどういう点を視点として加えなければいけない、あるいは変更が迫られるだろうと現時点で考えているか、教えてください。
(大臣)ポストコロナによって相当な行動変容が起きていますよね。テレワーク、リモートワークなどは代表的な一つかもしれません。それはやはり移動というものが根本的に変わってきている新たな社会が今、日々つくり上げられている過程だと思います。その移動が変わってくることによって、最近でも様々なところから、例えば石油の需要が減っているとかいろんな声が起きていますが、こういったことがどのように今後この中でも反映されていくのか、その議論もしなければいけないだろうと。そういったことがまさにコロナ後の社会を見据えた対策、この在り方を議論するということでもあります。それに加えて、これまで毎年実施してきた計画の進捗、これを点検することも大事ですし、この点検を反映した対策の強化や深掘り、これも大事だと思います。そして、脱炭素社会の実現を見据えた、目の前のことだけではなくて中長期の対策の方向性、こういったことも改めて議論されるべきですし、今、石炭火力の海外の公的信用の付与、これを原則やらないと、支援をしないということから、まさにドミノが倒れるように国内の石炭も含めてエネルギー政策全体がうねりを上げて今動き出している中ですから、この合同の審議会の議論を、おのずとそういったことをしっかりと受け止めた上での議論になると私は期待をしているし、環境省としてはしっかりとウォッチしていきたい、また貢献をしていきたいと思います。
(記者)[毎日新聞] 私から2点質問させていただきます。1点目は温対計画の見直しについてです。まず、開始時期というのはいつごろ始められて、今後どういうふうに取りまとめるかという見通しについてお聞きしたいということと、今後特に気候変動絡みで言うと、経産省の石炭火力の見直しとか、エネルギー基本計画の見直しについても来年あると思うので、その辺との兼ね合いをどうするか。まず温対計画の位置付けとして、例えばエネミやエネ基の見直しに向けた弾みにしたいのか、どういう意味合いで捉えていらっしゃるのかということについてお聞かせください。……
(大臣)まず、1点目ですが、この合同会合のスケジュール、そしてアウトプット、これについては、今後、審議会の議論を踏まえて決定していきたいと思います。そして、先ほど[朝日新聞記者]さんからの質問でもあったように、このポストコロナ、そして進捗の確認、点検、対策の強化や深掘りとか中長期の方向性、こういったものも重要な論点になると考えていますので、こういった議論を踏まえた上で温対計画を見直して、来年のCOP26まで追加情報を国連に提出していきたいと思います。そして、今まだ具体的な日時は私は確認していませんが、官邸の方で未来投資会議、ここで環境エネルギーの場ができると聞いています。そういった場で大きな柱となるような、またエネルギー政策の全体像のような議論がされるのではないかなと。そこには経団連の中西会長の思いも相当あると思いますが、そういった場で自由闊達にこのコロナを踏まえて、そしてまた最近の石炭政策の見直しも含めて、最新のファクトに基づく議論が大いになされるべきだろうというふうに思います。温対計画の見直しは、そういったことも含めて同時進行的に進んでいく。そういったことを考えれば、まさに石炭の輸出に原則、支援をしないというところから始まったことが、ドミノが倒れるようにこのエネルギー政策全体が動き出したと、そういった大きな捉え方をして一つ一つのことを動かしていきたいし、よく見ていきたいというふうに思います。……
(記者)[エネルギージャーナル]
(大臣)……私が大臣になってから言っている経済社会の再設計(リデザイン)、そして脱炭素社会、循環経済、分散型社会への移行、この三つの移行も着実に進めて、環境省が社会変革担当省だと、そういった省庁により成長していくべく環境行政の課題に向き合ってくれるのではないか……
(記者)[日刊工業新聞] 再生可能エネルギーの主力電源化の話がありましたので、その関連で質問させてください。大臣は新宿御苑の電気が再生可能エネルギーに切り替わっても従来の電力料金と遜色がなかったという報告をされていますが、電力を大量に使う大規模な事業所はもともと安い電気を使っているので、それに見合う価格の再エネ電気がなくて困っているという話を企業から聞きます。この間の経団連との会談でも、経団連の幹部の方から再エネをもっと安くしてほしいという要望があったかと思いますが、エネルギーの所管はエネ庁ですが、環境省でも再エネの価格を下げていくような施策を考えていらっしゃったら、教えてください。
(大臣)再エネは高いという、この固定観念を覆していきたい。これは環境省がRE100を宣言して、そして自ら一つ一つできるところはRE100、これを進めていて、再エネは必ずしも高くない、安い場合もある。この実現例として自分たちがまず実践をする、社会にその姿を見せたいという思いでやっています。御紹介があったとおり、新宿御苑は30%から100%まで一気に再エネの導入を上げた上で、電力単価は17.1円で変わらない、これを示すことができました。ただ、今御指摘があったとおり、一般的に再エネが安いというところに行くには、更なる努力が必要なのは間違いありません。じゃ、そのために何ができるかというと、間違いないことはマーケットを大きくすること、この再エネの市場の拡大をやる上で環境省が何ができるかと言えば、やはり需要サイドに働き掛けて、その市場を大きくしていく環境をつくっていくこと。私が就任以来、なぜゼロカーボンシティ、この宣言自治体を増やすことに血道を上げているかと言えば、この市場拡大を自治体レベルから、住民レベルから底上げをしていく、こういったアプローチというのは環境省は経産省と違って業界から行くわけじゃないですから、まさに国民側から、需要側からそこの環境をつくっていく。こういったことに加えて、様々個人の再エネの切り替えの促進とか、今それを具体的に進めようとしている企業などとの意見交換をしています。そして、間違いなく、企業の方からも相当声が変わってきたと思うのは、この前の経団連との意見交換もそうですが、石炭が安いから石炭をもっとやってくれなんて言ってくるところは全くありません。再エネをもっと導入しやすい環境をつくってくれと。そして、グローバルで活躍をしている企業にとっては、再エネを導入できなければ、国際的な産業競争力に大きな影響が出る、その環境をつくってもらうような政策的な後押しをやってほしいという、ここの思いというのが相当に強い状況が出てきているので、私はこういった取組を一つ一つ後押しすることで、再エネの需要の拡大が再エネのコストを下げる、そういったところにつなげていきたいと思います。そのためにできることは環境省、あらゆる方策を通じてやっていきたいと思います。
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NDC: Nationally Determined Contribution(国が決定する貢献)[一般社団法人海外環境協力センター OECCサイトから]
 2020年以降の温室効果ガス(GHG)排出削減等のための新たな国際枠組みであるパリ協定は、協定第2条(目的)に世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求することを明記しています。その目的を達成するために、協定はその第4条(緩和)にて国内措置(削減目標・行動)をとることを各国に求めています。
 NDCとは、協定第4条に基づく自国が決定するGHG削減目標と、目標達成の為の緩和努力のことを指します。これは締約国がパリ協定批准前に国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局へ提出した「各国が自主的に決定する約束草案」(Intended Nationally Determined Contribution:INDC)が原案となっており、パリ協定批准により正式にNDCとして国連に登録され、各国に対して実施が求められます。
 2020年以降に実施が求められるNDCに対し、2020年まではカンクン合意(第16回締約国会議にて決定)に基づいたGHG排出削減による2℃目標達成への努力が進められています。開発途上国においても資金・技術・能力構築等の支援を受けながら、「途上国における適切な緩和行動(Nationally Appropriate Mitigation Action: NAMA)」を自主的に策定し、国連へ実施報告をしています。NDC並びにパリ協定実施の準備が急務となっている中、途上国においてはこのようなNAMAでの経験が十分に活かされています。

エネルギーミックスとは、「社会全体に供給する電気を、さまざまな発電方法を組み合わせてまかなうこと」をいいます。日本語で「電源構成」と呼ぶこともあります。
適切なエネルギーミックスによって、電気の安定的な供給が実現します。
単一の発電方法ではなく、エネルギーミックスが必要な理由は、完全無欠な発電方法が存在しないためです。

エネルギー政策基本法EICネット(一般財団法人環境イノベーション情報機構]サイトから]
エネルギーが国民生活の安定向上並びに国民経済の維持及び発展に欠くことのできないものであるとともに、その利用が地域及び地球の環境に大きな影響を及ぼすことにかんがみ、エネルギーの需給に関する施策に関し、基本方針を定め、並びに国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに、エネルギーの需給に関する施策の基本となる事項を定めることにより、エネルギーの需給に関する施策を長期的、総合的かつ計画的に推進し、もって地域及び地球の環境の保全に寄与するとともに日本及び世界の経済社会の持続的な発展に貢献することを目的として2002年6月に制定された法律。「安定供給の確保」、「環境への適合」、「市場原理の活用」などの基本理念が掲げられ、国の責務、地方公共団体の責務、事業者の責務、国民の努力、相互協力などが定められている。また政府は「エネルギー基本計画」を定めなければならないこと、国際協力の推進、知識の普及についても規定されている。
2018年7月には第5次エネルギー基本計画が発表され、エネルギーの「3E+S」原則(エネルギーの安定供給・経済効率性の向上・環境への適合+安全性)をさらに発展させ、より高度な「3E+S」を目指すため、(1)安全の革新を図ること、(2)資源自給率に加え、技術自給率とエネルギー選択の多様性を確保すること、(3)「脱炭素化」への挑戦、(4)コストの抑制に加えて日本の産業競争力の強化につなげることという4つの目標が掲げられた。(2018年11月改訂)

[第5次]エネルギー基本計画 2018.07.03
エネルギー基本計画は、エネルギー政策の基本的な方向性を示すためにエネルギー政策基本法に基づき政府が策定するものです。
今回の[第5次]エネルギー基本計画では、常に踏まえるべき点として「東京電力福島第一原子力発電所事故の経験、反省と教訓を肝に銘じて取り組むこと」等を原点として検討を進め、2030年、2050年に向けた方針をお示ししています。
2030年に向けた方針としては、エネルギーミックスの進捗を確認すれば道半ばの状況であり、今回の基本計画では、エネルギーミックスの確実な実現へ向けた取組の更なる強化を行うこととしています。
2050年に向けては、パリ協定発効に見られる脱炭素化への世界的なモメンタムを踏まえ、エネルギー転換・脱炭素化に向けた挑戦を掲げ、あらゆる選択肢の可能性を追求していくこととしています。[「新しいエネルギー基本計画が閣議決定されました」 2018.07.03 経産省のサイトから]
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第5次エネルギー基本計画ファクトチェック!!
  (eシフト 脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会 2019.03.14)
昨年7月に政府が閣議決定した第5次エネルギー基本計画は、日本のエネルギー・温暖化政策の方向性を示すもので、「エネルギー・温暖化政策の憲法」とも言える非常に重要な計画です。しかし、その内容は、「まず石炭・原発推進ありき」というストーリーのもとに作られており、事実関係も含めて様々な問題があります。
私たち「eシフト」(脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会)は、この第5次エネルギー基本計画についてファクト・チェックを行い、その結果をまとめたウェブページ(http://www.eshift.club/energyb_fc.html)を作成しました。本ファクト・チェックでは、第5次エネルギー基本計画には104か所の問題記述があると指摘し、それぞれに対して下記の5つの評価をおこない、具体的な問題点とその理由を詳細にコメントしました。
矛盾(エネルギー基本計画の他の箇所あるいは現行のエネルギー・環境政策と矛盾)
意味不明(文意が不明)
半分間違い(部分的な情報は正確だが、重要な詳細情報が不足している。または文脈から逸脱して歪曲)
ほぼ間違い(若干の正確な情報を含むが、重大な事実を無視して印象操作)
間違い(不正確な情報)
現在、残念ながら、このような問題が多い第5次エネルギー基本計画に沿って、多くの企業は事業計画をたて、政府は容量市場などの石炭・原発推進につながる新たな政策を十分な国民的議論がないままに導入しようとしています。
私たち「eシフト」は、このファクトチェックが、政府のエネルギー・温暖化政策の矛盾や間違いについて知るきっかけとなり、同時に建設的な議論のプラットフォームにもなることを期待します。
   エネルギー基本計画ファクトチェック
    
   
小泉環境相の「正直、開き直り、アクション」(明日香壽川)
  (Energy Democracy 2020.02.25)
小泉進次郎環境大臣の誕生から、まもなく半年になる。ここでは、エールの思いも込めて、彼のこれまでの環境大臣としての言動、特に温暖化問題に関する認識や発言を分析評価する。
正直だけど/同情もするけど/自虐的な「石炭中毒」/開き直り?/責任転嫁?/記者の質問に答えず/大臣としてとるべきアクションとは
WEB論座「小泉環境相の「正直、開き直り、アクション」(2020年2月7日)」の改稿。