7月2・3日の経産省、石炭火力発電100基休廃止(削減)方針に対する評価です。

7月4~9日の報道記事
  (中日新聞Web 2020.07.04 05:00)
  (Sustainable Japan 2020.07.04)
 まず、日本経済新聞の報道では、「高効率の新型発電所は維持・拡充する」との記載があり、石炭火力発電の中で高効率石炭火力発電を推進してきた経済産業省の方針と今回の発表が、必ずしも矛盾してはいないという点。具体的な方針は、「有識者会議を立ち上げて休廃止を促す具体的な手法を詰める」ということから、高効率石炭火力発電まで含めた削減に踏み込むかどうかは今後の議論に委ねられることになる。このように今は「固い鉄が溶けた」とも言える状態で、今後の政策についての柔軟性が大幅に上がった。「鉄は熱いうちに打て」と言われるように、将来どのような形状で再度固まるのかという極めて大事な局面となる。
 石炭火力の輸出の公的支援については、今年に入り、環境省と経済産業省の間で鍔迫り合いが続いている。環境省では、小泉進次郎環境省のリーダーシップにより、「石炭火力発電輸出への公的支援に関する有識者ファクト検討会」を設立し、政府政策が時代錯誤になっているというファクトを整理してきた。一方の経済産業省は、「インフラ海外展開懇談会」を設立し、石炭輸出継続の理論武装を行った。環境NGOの気候ネットワーク、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、350.org、Friends of the Earth(FoE)、メコン・ウォッチの5団体は7月3日、現状でも低効率石炭火力発電は政府のインフラ輸出の対象外となっており、今回の方針が低効率にとどまるのであれば進展はなにもないと警告している。
 系統での再生可能エネルギー発電所の出力抑制については、現状のルールでも、再生可能エネルギーは火力発電よりも優先されており、原子力発電、水力発電、地熱発電のみが太陽光発電・風力発電よりも優先順位が高い状況にある。そのため、再生可能エネルギーの優先順位を上げるためには、現在原子力発電用に確保されている系統を開放し、再生可能ネルギーが出力抑制をしなくてよくなる状況にするしかない。これができるかどうかが「進歩」と呼べるかのメルクマールとなる。
  (ブログ『化学業界の話題 knakのデータベースから』 2020.07.06 08:17)
経済産業省は低効率な石炭火力発電所の休廃止に乗り出す。現在約140基ある石炭火力のうち、低効率とされる約110基のうち9割にあたる100基程度を対象とし、2030年度までに段階的に進める。
具体的には、電力会社が発電できる量に上限を設けて、古い発電所を休止や廃止するなどして、段階的に引き下げていく方法などが検討されている。災害などの際に大規模な停電を防ぐためにすべてがすぐに廃止されないような仕組みも検討する。
一方、二酸化炭素の排出を抑えた効率がよい石炭火力発電所は新設も認める。
2019年に改定した政府の「エネルギー基本計画」では、2050年に向けた対応として非効率な石炭を段階的に削減するとしているが、その取り組みを加速する。
国際社会の強い批判に応える狙いだが、高効率型の発電所は維持する方針で、欧州の全廃路線とは一線を画すことになる。
2018年7月のエネルギー基本計画では2030年度の電源構成に占める石炭の割合を26%としている。
今回の方針変更で、旧型火力の休廃止と高効率型の新増設を差し引いて、2030年の石炭火力の比率は20%程度まで低下すると見られる。
原子力については再稼働は今後も難航が必至で、再生エネルギーも多くの問題を抱える。
当面はLNG火力の拡大でしのぐしかない。
大手電力からは「基準が決まっていないので何とも言えないが、9割の石炭を廃止するのは困難だ」との声や、「石炭を廃止する以上、国が原発の新増設を後押しすべきだ」との声が聞こえる。
梶山経産相、非効率石炭火力の早期削減へ方針表明 送電線利用も見直し
  (電気新聞 2020.07.13 掲載:2020.07.06)
 梶山弘志経済産業相は3日、超臨界圧(SC)以下の非効率な石炭火力発電所を減らすため、新たな規制的措置の導入などを検討すると表明した。大手電力に加え、共同火力、鉄鋼などの自家発を含め、非効率プラントの早期退出を誘導する仕組みなどについて、7月から有識者会議で議論を始める。加えて、再生可能エネルギーの導入加速に向けた送電線利用ルールの見直しも表明した。ただ、達成への時間軸や供給力確保とのバランス、立地自治体との関係などを巡って慎重な検討が求められそうだ。
 現行の第5次エネルギー基本計画では、石炭火力は2030年度の電源構成のうち26%を占めるとされている。「非効率石炭のフェードアウトに取り組む」とも明記されていたが、これまで具体的な手法は検討されてこなかった。
 経産省・資源エネルギー庁によると、18年度の石炭火力による発電量は、約3300億キロワット時で、石炭火力が全発電量に占める割合は32%。このうち、超々臨界圧(USC)や石炭ガス化複合発電(IGCC)の高効率型が13%、SCや亜臨界圧(SUB-C)などの非効率型が16%、自家発自家消費分は3%に上る。
 今回の検討では、国内に114基存在する非効率型のフェードアウトを目指すほか、大半が非効率型とみられる自家発も俎上(そじょう)に載せる。建設中の最新鋭石炭火力の運転開始も見据え、非効率型による発電をできる限りゼロにする。
 これまで政府はエネルギーミックス(30年の電源構成)の実現に向け、発電事業者や小売電気事業者に省エネルギー法やエネルギー供給構造高度化法で規制を講じてきた。電力業界も低炭素社会実現行動計画などの自主的取り組みを推進してきた。
 それらに加え、梶山経産相は「規制や税でどんなものが必要か、あらゆる条件を排除せずに検討する」と強調。エネ庁の小川要・電力基盤整備課長は「関係者が多いため、丁寧に議論する。明確な期限を区切った検討はしない」と話した。
 この他、梶山経産相は非効率な石炭火力のフェードアウトとともに、再生可能エネ導入拡大に向けた送電線利用ルールの見直しも表明。千葉県などで試行的に実施している「ノンファーム型接続」は21年度中に全国展開する。また、送電線混雑時、再生可能エネが出力制御を受けないようルールを見直し、主力電源化を推進する。先に接続していた火力発電は石炭だけでなく、他燃料も対象となる見通しだ。
小泉環境相を意識? 旧式石炭火力の削減に乗り出す経産省(安藤毅)
  (日経ビジネス電子版 2020.07.06)
「CO2ゼロ」へ技術開発 有識者会議が初会合-経産省
  (朝日新聞社の言論サイト『論座』 2020.07)
「石炭火力発電100基休廃止」報道、政府は”脱石炭”に向かう!?
  ( 『Don’t go back to the 石炭〜石炭火力発電に反対』 2020.07.07)
2020年7月2日の報道で、「政府は、二酸化炭素(CO2)を多く出す非効率な石炭火力発電所の9割弱を、休廃止の対象とする方針を固めた」ことが報じられた。これまで日本政府は、既存の石炭火力発電所を廃止するという方向性を全く打ち出してこなかった。今回の方針ははじめて廃止に踏み込んだ方針転換ともとれる”脱石炭”への小さな一歩だ。
しかし、パリ協定の目標とする「地球の平均気温の上昇を産業化前に比べて2℃を十分に下回り、1.5℃の上昇にとどめる」という要請にこたえるためには、先進国における石炭火力は2020年以降の新規稼働を禁じ、既存を含め遅くとも2030年までに全廃することが求められる。その意味では、この方針では全く不十分だ。
自然エネ財団、経産省の「石炭火力の休廃止方針」に3つの懸念を表明
  (『環境ビジネス』 2020.07.07)
自然エネルギー財団は7月3日、梶山 弘志経済産業大臣が同日の記者会見で低効率な石炭火力発電所の休廃止を進めると表明したことを受けて、コメントを発表し、3つの懸念を示した。
2018年に策定されたエネルギー基本計画において、「非効率な石炭火力発電のフェードアウト」とともに、「石炭火力発電の高効率化・次世代化の推進」「2030年に石炭火力で26%を供給」という方針が明記されている。
梶山経済産業大臣は、同日の記者会見で、この「非効率な石炭火力発電のフェードアウト」に向けた具体的な方策と、再生可能エネルギーの主力電源化に向けた、基幹送電線の利用ルールの抜本見直しについて、7月中にも検討を開始し年内を目途に具体策をまとめる方針を示した。資源の少ない日本において、様々な選択肢を検討しながら、エネルギーのベストミックスを検討すること、また、高効率な火力発電は調整力や災害時の立ち上げ電源としても重要であり、現時点で「2030年に石炭火力で26%を供給」は維持することとしている。
その後に記者会見した小泉進次郎環境大臣は、この発表について、「パリ協定で掲げる脱炭素社会に実現に向けて、日本のゆるぎない姿勢を国際社会に示す大きな一歩になる」と評価した。
一方、自然エネルギー財団は、今回の梶山経済産業大臣の発表は、「非効率な石炭火力発電のフェードアウト」の既定方針を具体化したもので、新たな方向性を提起したものではないと指摘。各種の報道を踏まえ、今回の方針について、以下のような3つの懸念を示した。
   1.「100基休廃止」でも、2030年時点で3000万kWの石炭火力を利用
   2.CO2排出がほとんど変わらない高効率石炭火力推進路線の維持
   3.26%維持のためさらに長期の排出ロックインの危険性

  「石炭火力の完全なフェーズアウトを」を呼びかけ
自然エネルギー財団は、「気候危機回避に必要なCO2大幅削減を確実に実現するためには、エネルギー効率化の徹底と自然エネルギーの大幅拡大を進める以外にはない」とした。
同財団では、2030年の持続可能なエネルギーミックスの姿とその可能性を示すため、近日中に提言を公表する予定。2021年にはエネルギー基本計画の改定が行われると見込まれている。この改定において、石炭火力発電を完全にフェーズアウトし、自然エネルギー発電を中心とするエネルギー転換の方向性を明確にすることが、今回の経済産業省の方針を、気候危機に立ち向かう世界の努力と整合するものに発展させる道だとした。同財団は、今後とも、関係省庁、電力会社との建設的な意見交換を進めていくとしている。
(社説)石炭火力削減 温暖化防ぐ道筋を描け
  (朝日新聞デジタル 2020.07.08 5:00)
   (Diamond Online 2020.07.08 05:35)
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  (環境ビジネスオンライン 2020.07.09日)
公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES:アイジェス)は7月3日の経済産業省「非効率石炭火力の段階的廃止」方針を分析し、「方針はパリ協定と整合的ではなく、発電部門全体での排出ネットゼロ化を目指した措置が必要」というコメントを発表しました。
  「非効率石炭火力の段階的廃止」方針に対するコメントの主要メッセージ
非効率石炭火力の休廃止を具体的に促すことは歓迎される。
しかし、今回の方針は、大型で高効率な石炭火力設備へのリプレースを進めるという従来のエネルギー政策の抜本的な転換を意味するものではなく、パリ協定の長期気温目標に向けても不十分な内容である。
休廃止が見込まれる設備は小規模なものが多い一方で、建設中・計画中の大規模石炭火力が稼働することで、2030年時点では50基、3,328万kW程度の石炭火力が残ると推計される。これは、日本の2030年排出削減目標(NDC)が想定する石炭火力発電量よりも約44TWh~102TWh少なく、CO2排出量では約3,700万トン~8,700万トンの削減となる。しかし、パリ協定と整合性のある日本の削減目標についての統合評価モデル/エネルギーモデルシナリオにおける数値と比べると不十分である。
50基のうち21基は2030年時点での稼働年数が20年以下であり、2050年まで稼働する可能性がある。この21基(約1,452万kW)のうち、炭素回収技術と相性がよいとされる石炭ガス化複合発電(IGCC)は4基(約150万kW)であり、残りは炭素回収技術の追設を想定しておらず、電力部門から長期的にCO2が排出される状態(ロックイン)が懸念される。
今回の方針は、『パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略』に明記された、パリ協定の長期目標と整合的な火力発電からのCO2排出削減や非効率石炭火力のフェーズアウトに向けた取り組みとしては不十分である。非効率石炭火力の廃止を促すだけではなく、発電部門全体での排出ネットゼロ化を目指した措置が必要となる。
  全文

時事公論「石炭火力削減 電源構成の抜本見直しを」(水野倫之)
  (NHK解説委員室 2020.07.09)
 今回の削減方針はエネルギー政策の方針転換のように見えるかもしれないが、そうではない。
 エネルギー基本計画にはおととしの改定の段階で、「非効率な石炭火力にフェードアウトを促す仕組みなど具体的な措置を講ずる」ことがすでに盛り込んであった。しかし政府はどう減らすのか具体策を打ちださないまま2年が過ぎ、国際的な批判をきっかけにようやく重い腰を上げたわけ。対応が遅いと言えるが、脱炭素に向けてもう旧式の火力を使い続けるべきではなく、削減方針を示した点は一定の評価ができる。
 ただ今回方針転換ではないため政府は、石炭火力の基幹電源としての位置づけや2030年に26%賄う方針は見直さず、効率が比較的よい石炭火力は今後も新設を認めることに。
効率が良いとは言っても天然ガスの2倍のCO2を排出するわけで、国際社会から不十分だと批判が高まる可能性も。政府はCO2などの排出を2050年に80%削減し、今世紀後半のできるだけ早い段階で実質ゼロにすることを国際的に約束しているわけで削減だけでなく一歩踏み込んで廃止に向けた道筋についても今回あわせて検討しておく必要があると思う。
 また、今回削減する分の電力について政府は、再エネと原発で賄う方針。しかしいずれも課題が多く、賄いきれなければ石炭火力削減自体に影響が出る可能性もあり、この際、電源構成を抜本的に見直していく必要。
 このうち原発については2030年に20~22%賄う方針を掲げ、30基程度再稼働させる方針。しかし信頼の回復は進まず、これまで再稼働したのは9基で、電源の割合も6%。しかも裁判所が運転停止を命じたり、テロ対策施設の完成が遅れて原子力規制委員会から事実上強制停止させられるなど、原発はいまや不安定電源に。業界団体が原子力関係各社に行ったアンケートでも半数が20~22%の達成は困難と回答。このまま目標が達成できなければその分をまた石炭火力で賄うということになりかねず、原発比率の見直しは不可欠。
 その分、政府が主力電源化を目指す再エネが期待されるが、現状17%と主要国の中でも最低レベル。普及が進まない理由の一つに送電線の空きが少なく、新規の再エネがなかなかつなげない問題が。送電線の利用は、先に建設された火力や原発が優先的に利用できる仕組み。このため、発電量が増えて送電線の容量がいっぱいになると、あとから再エネを入れようとしてもできず、送電線を設置する莫大な費用が請求され、再エネ事業を断念せざるを得ないケースも。こうした状況が続く限り再エネの拡大は困難。この点政府は再エネが優先的につなげるよう、送電線接続のルールを変える方針。再エネ事業者の意見を丁寧に聞いて、より多くの事業者が参入できるようなルールを早急に整備するのと同時に、普及を加速させるためにも2030年に22~24%となっている再エネの導入目標についてもより高く見直していくことも必要。
 政府はエネルギー基本計画を当初予定の通り、来年改定するとしているが、世界の脱炭素化への動きは早い。状況に合わせて素早く見直していかないと世界の流れに乗り遅れることになりかねない。