6月12日、2020年版「環境・循環型社会・生物多様性白書(環境白書)」が閣議決定されました(本文PDF概要PDF)。「災害頻発の恐れ/「気候危機宣言」/環境省 環境省は12日、地球温暖化によって、今後、豪雨災害などのさらなる頻発化・激甚化が予測されるとして「気候危機宣言」を出した。同日閣議決定した2020年版環境白書で初めて「気候危機」という言葉も明記した。/オーストラリアでの大規模な山火事や欧州の記録的な熱波、台風19号による大きな被害など気象災害が相次いでいる。これらは地球温暖化と関係するとみられ、白書は「気候危機」と表現して強調した。/家庭で消費されるものが生産時に排出する温室効果ガスが国内排出量の約6割に達することも指摘し、生活の脱炭素化も求めた。エネルギーの地産地消や食品ロスの削減などライフスタイルの転換事例も紹介している。」(『朝日新聞』夕刊 2020/06/12)
環境白書2020表紙環境白書2020(概要版)
環境白書2020(概要版)_01環境白書2020(概要版)_02
環境白書2020(概要版)_03環境白書2020(概要版)_04

気象災害の頻発を予測、環境省が「気候危機宣言」(朝日新聞デジタル)
 地球温暖化に伴う豪雨や熱中症などのリスクが危機的状況にあるとして、小泉進次郎環境相は6月12日、記者会見で「気候危機宣言をしたい」と述べた。環境省単独の宣言で、他省庁や自治体、企業と危機感を共有し、温暖化対策を強化することを目指す。(福岡範行)
 この日閣議決定した2020年版「環境・循環型社会・生物多様性白書(環境白書)」でも初めて「気候危機」に言及した。
 小泉氏は、深刻な気象災害について「解決には経済を持続可能なものにする社会変革が不可欠だ」と強調。新型コロナウイルスによる社会経済活動の自粛で、温暖化を引き起こす二酸化炭素(CO2)の排出量が減ったことを念頭に、「経済再開でCO2排出がリバウンド(再増加)してはならないという危機感が宣言につながった」と説明した。
 宣言に伴う新たな具体策は示さず、「政府全体が危機感を高め、取り組みを強化することにつなげたい」とした。
 「気候危機」の著書がある山本良一・東京大名誉教授(環境経営学)は「宣言は良いこと。ただ、世界はもっと早く進んでいる。欧米の自治体などはCO2排出を実質ゼロにする計画を続々と出している」と指摘した。
 4月にインターネットで「#気候も危機」と訴えた若者グループ「Fridays For Future(未来のための金曜日)」のメンバー奥野華子さん(18)は「宣言を歓迎します。各省庁と連携して未来を守る具体的な行動を期待します」とコメントした。

環境白書2020では、気候変動の影響とみられる災害が激化していることから、人類を含む全ての生き物の生存基盤を揺るがす「気候危機」が起きていると強調しています。
地球温暖化が進展すると気象災害のリスクは更に高まると予想されています。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書をはじめ科学者たちにより繰り返し警鐘が鳴らされています。また、2019年だけでも欧州をはじめ世界で記録的な熱波を経験するととともに、我が国でも令和元年房総半島台風、令和元年東日本台風等の激甚な気象災害に見舞われました。このような深刻な気象災害は、気候変動の緩和や気候変動に適応する社会の必要性を私たちに突き付けています。世界の主要なリーダーたちの間でもリスクとしての認識が高まっています。また草の根レベルでも海外を中心に若者による気候変動への対策を求めるデモや、自治体等が「気候危機」を宣言する動きが広がるなど、今や私たちは「気候危機」とも言える時代に生きています。環境問題は気候変動だけではありません。海洋プラスチックごみ問題や生物多様性の損失なども深刻です。気候変動、海洋プラスチックごみ、生物多様性の損失といった今日の環境問題は、それぞれの課題が独立して存在するのではなく、相互に深く関連しています。そしてこれらの問題は今の私たちの経済・社会システムとも密接に関わっています。(『環境白書』はじめに 3頁)
(3)気候非常事態宣言の広がり
海外の都市を中心に気候非常事態を宣言する動きも広がっています。2016年12月に宣言をしたオーストラリアのメルボルンにあるデアビン市を皮切りに、世界各地で国、自治体、大学等が気候変動への危機感を示し、緊急行動を呼びかける「気候非常事態宣言」を行う取組が広がっています。世界各地での気候非常事態宣言の取りまとめを行っているClimate Emergency Declaration and Mobilisation in Actionによれば、2020年4月2日時点で28か国の1,482の自治体等(8億2,000万人の人口規模に相当)が宣言しています。なお、このうち、我が国の自治体は、2020年3月18時点で長崎県壱岐市など15自治体となっています。
(4)「気候変動」から「気候危機」へ
気候変動問題は、私たち一人一人、この星に生きる全ての生き物にとって避けることのできない、緊喫の課題です。先に述べたように世界の平均気温は既に約1℃上昇したとされています。近年の気象災害の激甚化は地球温暖化が一因とされています。今も排出され続けている温室効果ガスの増加によって、今後、豪雨災害等の更なる頻発化・激甚化などが予測されており、将来世代にわたる影響が強く懸念されます。こうした状況は、もはや単なる「気候変動」ではなく、私たち人類や全ての生き物にとっての生存基盤を揺るがす「気候危機」とも言われています。(『環境白書』第1章 20頁)
コラム 気候変動問題に関する若者の動き(『環境白書』第1章 21頁)
環境白書2020

「地球環境の危機への対応のためには、地球環境に係る課題を同時解決し、環境・経済・社会の統合的向上を図る「環境・生命文明社会」が実現できるよう、経済・社会システムや日常生活の在り方を大きく変えること(=社会変革)が不可欠」です。
第4節気候変動をはじめとする環境問題の危機にどのように対応していくか(『環境白書』第1章 35~36頁)
環境白書2020_02環境白書2020_03