2013年12月に国土交通大臣から社会資本整備審議会会長に対して「水災害分野に係る気候変動適応策のあり方について」が諮問され、同会長より河川分科会長あてに付託された。これを受け、「社会資本整備審議会河川分科会気候変動に適応した治水対策検討小委員会」を2014年1月に約5年ぶりに開催した。その後計12回開催し、水災害分野における気候変動適応策の基本的な考え方などを明らかにし、答申をとりまとめた。 答申では、特に施設の能力を大幅に上回る外力に対しては、「命を守り」、「壊滅的被害を回避」することを目指すこととされている。

20150828概要20150828概要_01

1 はじめに
2 地球温暖化に伴う気候変動による水災害分野の主な影響
 2.1 気候や水災害の状況
 2.2 将来の気候や水災害
3 諸外国での水災害分野における気候変動適応策等の動向
4 水災害分野における気候変動適応策の基本的な考え方
 4.1 現状と課題
 4.2 基本的な枠組み
5 水災害分野における気候変動適応策の具体的な内容
 5.1 災害リスクの評価
 5.2水害(洪水、内水、高潮)に対する適応策
  5.2.1 比較的発生頻度の高い外力に対する防災対策
  5.2.2 施設の能力を上回る外力に対する減災対策
   1) 施設の運用、構造、整備手順等の工夫
   2) まちづくり・地域づくりとの連携3)避難、応急活動、事業継続等のための備え
 5.3 土砂災害に対する適応策
 5.4 渇水に対する適応策
  5.4.1 比較的発生頻度の高い渇水による被害を防止する対策
  5.4.2 施設の能力を上回る渇水による被害を軽減する対策
 5.5 適応策を推進するための共通的事項
  5.5.1 国土監視、気候変動予測等の高度化
  5.5.2 地方公共団体等との連携、支援の充実
  5.5.3 調査、研究、技術開発の推進等
  5.5.4 技術の継承等
6 おわりに

答申参考資料(2015年8月28日版)
・日本における近年の降雨の状況
○時間雨量50mmを超える短時間強雨の発生件数が増加(約30年前の約1.4倍)
20150828参考資料

・日本における近年の降水の状況
○日降水量1.0mm以上の年間日数は100年間で約8%減少
20150828参考資料_01

・日本における気候変動の影響–海面水位
○日本沿岸の海面水位については、長期的(1906年以降)には明瞭な上昇傾向は見られないが、現在の観測体制となった1960年以降は上昇傾向が明瞭に現れており、2013年までの上昇率は年あたり1.1mm
20150828参考資料_02

・平成25年我が国における渇水
○吉野川水系では取水制限率が50%に及び、また、豊川水系の宇連ダムの利水貯水量がほぼ0%になるなど、全国18水系23河川の一級河川で取水制限
20150828参考資料_02

・IPCC第5次評価報告書
【観測事実と温暖化の要因】
 気候システムの温暖化については疑う余地がない。
 人間活動が20世紀半ば以降に観測された温暖化の主な要因であった可能性が極めて高く、温暖化に最も大きく効いているのは二酸化炭素濃度の増加。
 最近15年間、気温の上昇率はそれまでと比べ小さいが、海洋内部(700m以深)への熱の取り込みは続いており、地球温暖化は継続している。
【予測結果】
 21世紀末までに、世界平均気温が0.3~4.8°C上昇、世界平均海面水位は0.26~0.82m上昇する可能性が高い(4種類のRCPシナリオによる予測)。
 21世紀末までに、ほとんどの地域で極端な高温が増加することがほぼ確実。また、中緯度の陸域のほとんどで極端な降水がより強く、より頻繁となる可能性が非常に高い。
 排出された二酸化炭素の一部は海洋に吸収され、海洋酸性化が進行。
20150828参考資料_04

・IPCC第5次評価報告書
 ここ数十年、すべての大陸と海洋において、気候変動による自然及び人間システムへの影響が現れている。
 懸念の理由の説明気候変動のリスクのレベルに関する判断の根拠として、5つの包括的な懸念の理由(Reasons For Concern)が示された。1986-2005年平均気温から気温上昇と影響の関係は以下のように予測されている。
➢1°Cの上昇:熱波、極端な降水及沿岸域の氾濫のような極端現象による気候変動関連のリスクが高い状態となる
➢2°Cの上昇:適応能力が限られている多くの種やシステム、特に北極海氷やサンゴ礁のシステムは非常に高いリスクに曝される
➢3°Cの上昇:大規模かつ不可逆な氷床消失により海面水位が上昇する可能性があるため、リスクは高くなる

 8つの主要なリスク確信度の高い複数の分野や地域に及ぶ主要なリスクとして、以下の8つが挙げられている。
  i)海面上昇、沿岸での高潮被害などによるリスク
  ii)大都市部への洪水による被害のリスク
  iii)極端な気象現象によるインフラ等の機能停止のリスク
  iv)熱波による、特に都市部の脆弱な層における死亡や疾病のリスク
  v)気温上昇、干ばつ等による食料安全保障が脅かされるリスク
  vi)水資源不足と農業生産減少による農村部の生計及び所得損失のリスク
  vii)沿岸海域における生計に重要な海洋生態系の損失リスク
  viii)陸域及び内水生態系がもたらすサービスの損失リスク
20150828参考資料_05

・気候変動による外力(降水)の増大・頻発化
○今世紀末には現在気候と比べ大雨による降水量は増加傾向を示し、全国平均では温室効果ガスの排出量が少ない場合(RCP2.6)で10.3%増加、非常に多い場合(RCP8.5)で25.5%増加
○無降水日の年間日数は増加傾向を示し、全国平均では温室効果ガスの排出量が少ない場合(RCP2.6)で1.1日増加、非常に多い場合(RCP8.5)で10.7日増加
20150828参考資料_06

・中央環境審議会「日本における気候変動による影響の評価に関する報告と今後の課題について(意見具申)」
○中央環境審議会より平成27年3月に示された「日本における気候変動による影響の評価に関する報告と今後の課題について(意見具申)」では、気候変動は日本にどのような影響を与えうるのか、その影響の程度、可能性等(重大性)、影響の発現時期や適応の着手・重要な意思決定が必要な時期(緊急性)、情報の確からしさ(確信度)はどの程度であるかを科学的観点からとりまとめている。
20150828参考資料_07

・中央環境審議会「日本における気候変動による影響の評価に関する報告と今後の課題について(意見具申)」
20150828参考資料_08

・中央環境審議会「日本における気候変動による影響の評価に関する報告と今後の課題について(意見具申)」
20150828参考資料_09

・水災害分野の気候変動適応策の基本的な考え方
○これまでは、比較的発生頻度の高い外力に対し、施設の整備等により災害の発生を防止すること、浸水想定等の作成などによりできる限り被害を軽減することを目指していた。
○これからは、気候変動による外力の増大・頻発化を踏まえ、
 施設の着実な整備と適切な維持管理により、水害の発生を着実に防止する防災対策を進める
 これに加え、
  ・外力が増大した場合に、できるだけ手戻りなく施設の追加対策を講じられるように工夫
  ・施設の能力を上回る外力に対しても減災効果を発揮できるように工夫
施設では守りきれない事態を想定し、社会全体が災害リスク情報を共有し、施策を総動員して減災対策に取り組む
20150828参考資料_10


・水災害分野の気候変動適応策の基本的な考え方
20150828参考資料_11

・災害リスクの評価・災害リスク情報の共有
20150828参考資料_12

・想定し得る最大規模の降雨の設定
想定最大規模降雨(降雨量、降雨波形)の設定の基本的な考え方
20150828参考資料_13


・総合的な浸水対策
〇河川、下水道の整備を進めるとともに、その流域のもつ保水・遊水機能を確保するため、調節池などの整備により貯めること、浸透ますなどの整備により浸み込ませることなどを適切に組み合わせ、流域が一体となった浸水対策を推進
20150828参考資料_14


・各主体が連携した災害対応の体制等の整備(タイムラインの策定)
○施設の能力を大幅に上回る外力により大規模な氾濫等が発生した場合を想定し、国、地方公共団体、公益事業者等が連携して対応するため関係者一体型タイムライン(時系列の行動計画)を策定
20150828参考資料_15


・上流域の管理(里山砂防)
○従前の砂防堰堤の整備など渓流沿いでの対策に加え、山腹工や支障木の伐採・搬出などの面的対策について地域住民の参画を図りつつ推進することで、土砂災害からの安全を図るとともに、自然環境豊かで災害に強い地域づくりを推進。
20150828参考資料_16