「荒川水系河川整備基本方針」(国土交通省河川局、2007年3月)にもとづき、国土交通省関東地方整備局では「荒川水系河川整備計画」の策定に向けて検討を進め、「荒川水系河川整備計画【大臣管理区間】」を2016年3月18日に策定しました。「河川整備計画」とは、「河川整備基本方針」に基づき今後20~30年間の具体的な河川整備の目標や内容を定めたもので、各河川管理者が定めることになっています。
「荒川水系河川整備計画【大臣管理区間】」(国土交通省関東地方整備局)目次
1. 荒川の概要
1.1 荒川の流域及び河川の概要2.2 河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持に関する現状と課題
2.3 河川環境の整備と保全に関する現状と課題
2.4 河川維持管理の現状と課題
2.5 今後取り組むべき課題
3. 河川整備計画の対象区間及び期間
3.1 計画対象区間
3.2 計画対象期間
4. 河川整備計画の目標に関する事項
4.1 洪水、津波、高潮等による災害の発生の防止又は軽減に関する目標
4.2 河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持に関する目標
4.3 河川環境の整備と保全に関する目標
5. 河川の整備の実施に関する事項
5.1 河川工事の目的、種類及び施行の場所並びに当該河川工事の施行により設置される河川管理施設の機能の概要
5.1.1 洪水、津波、高潮等による災害の発生の防止又は軽減に関する事項5.1.2 河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持に関する事項
5.1.3 河川環境の整備と保全に関する事項
5.2 河川の維持の目的、種類及び施行の場所
5.2.1 洪水、津波、高潮等による災害の発生の防止又は軽減に関する事項
5.2.2 河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持に関する事項
5.2.3 河川環境の整備と保全に関する事項
6. その他河川整備を総合的に行うために留意すべき事項
6.1 流域全体を視野に入れた総合的な河川管理
6.2 地域住民、関係機関との連携・協働
6.3 ダムを活かした水源地域の活性化
6.4 治水技術の伝承の取組
附図1 計画諸元表附図2 堤防断面形状図
附図3 洪水対策等に関する施行の場所
意見募集期間:平成27年11月25日(水)~12月24日(木)
●4.1 洪水、津波、高潮等による災害の発生の防止又は軽減に関する目標
基本高水流量について
河川整備計画の目標となる流量の算出方法について
河川整備計画の目標となる流量の規模について
基本高水流量について
基本高水流量が過大である・ 基本方針の検討以降、合角ダムと滝沢ダムの完成により流出計算モデルに使用する定数等の検討が可能となる流量観測地点が増え、新たな洪水データの取得ができるようになり、比較的規模の大きい洪水である平成19年9月洪水を経験しており、これらを踏まえ、流出計算モデルを構築して再現性を確認し、精度が向上する結果を得ています。
・ 荒川の基本高水のピーク流量においては、このモデルを用いて総合確率法により年超過確率1/200となる流量として算出を行い、内水参加量を含めて岩淵地点で14,800m3/sとなることを確認したものです。
・ 計算結果については、「荒川における新たな流出計算モデルについて」としてとりまとめ、公表しています。http://www.ktr.mlit.go.jp/river/shihon/river_shihon00000290.html
河川整備計画の目標となる流量の算出方法について
カスリーン台風は戦後間もない頃であり、山が荒れていた時の洪水のため、この洪水は用いない方がよい・ 流出計算モデルは昭和56年以降の洪水データの中から比較的大きな22洪水のデータを用いて設定しており、森林を含め近年の土地利用状況が反映されているものと考えています。近年の洪水データのみを使用すべき・ なお、この流出計算モデルにより昭和22年9月洪水の降雨分布を用いて流出計算を行った結果、岩淵地点の流量が11,900m3/s(内水参加量を見込む)となったものです。カスリーン台風は、利根川では1/200程度であり、荒川でも同様の確率となる・ 計算結果については、「荒川における新たな流出計算モデルについて」としてとりまとめ、公表しています。http://www.ktr.mlit.go.jp/river/shihon/river_shihon00000290.html計画論の一貫性を保つために3日雨量が妥当であるが、時刻雨量データの蓄積による適切な時間単位の検討を進めるべき・ 荒川においては、昭和22年9月洪水(カスリーン台風)の基準地点岩淵における流量の年超過確率は総合確率法により評価して概ね1/100程度です。
・ 時刻雨量データを蓄積し、検討を進めてまいります
河川整備計画の目標となる流量の規模について
目標流量は過大である・ 全国のいわゆる直轄管理区間の河川整備計画においては、戦後最大の洪水を安全に流下させることを目的として目標流量を設定していることが多く、荒川の重要性を考慮して、戦後最大洪水である昭和22年9月洪水(カスリーン台風)と同規模の洪水を目標としたものです。目標は平成11年洪水で十分である・ なお、支川入間川については、近年の洪水で大規模な浸水被害をもたらした平成11年8月洪水[1999年]を目標としています。


※荒川の流出計算モデルについて(国土交通省 関東地方整備局、平成27年12月24日)
・荒川の流出計算モデルについて
・流出解析法は、我が国における洪水流出に対し高い再現性を有し、広く利用されている貯留関数法を用いた。
・荒川の流出計算モデルは、「利根川の基本高水の検証について」(平成23年9月)と同様の考え方とした。
・過去のデータを点検した上で、近年の主要な洪水による新たなダム地点での観測データ等も追加して、必要な定数等を設定した。
・この流出計算モデルを用いて、荒川河川整備計画の目標(案)の検討を行った。
・流出解析法は、我が国における洪水流出に対し高い再現性を有し、広く利用されている貯留関数法を用いた。
・荒川の流出計算モデルは、「利根川の基本高水の検証について」(平成23年9月)と同様の考え方とした。
・過去のデータを点検した上で、近年の主要な洪水による新たなダム地点での観測データ等も追加して、必要な定数等を設定した。
・この流出計算モデルを用いて、荒川河川整備計画の目標(案)の検討を行った。
・流域分割
・流域定数の設定
・流域定数の設定
・流出計算モデルの再現性の検討(1999年8月洪水)
・流出計算モデルの再現性の検討(2007年9月洪水)
・流出計算モデルの再現性の検討(2007年9月洪水)
(国土交通省 関東地方整備局、2016年2月10日)
●荒川調節池群改修事業を含む荒川における治水対策の計画段階評価
●荒川調節池群改修事業を含む荒川における治水対策の計画段階評価
(2016年2月10日)
・荒川における過去の主な災害実績、河川整備の経緯
・荒川における治水対策の計画段階評価
複数案の提示、比較、評価
複数案の提示、比較、評価
・埼玉県回答(2016年3月2日)
※「国交省、「荒川水系河川整備計画(案)」を公表」(八ッ場あしたの会HP、2016年2月17日記事)
荒川河川整備計画原案の主要な問題点の一つは、中流部に第二、三、四洪水調節池を造ること、もう一つは荒川下流部で両岸合わせて52キロメートルのスーパー堤防が計画されていることです。
荒川下流部は東京の都心部を貫流しており、もし堤防の決壊が起きれば、凄まじい被害になります。地下鉄が縦横に走っているので、荒川が氾濫した場合の影響は極めて深刻です。ところが、河川整備計画案では、荒川下流部はスーパー堤防を整備することになっているため、堤防強化対策がありません。
荒川のスーパー堤防の現在までの進捗状況を見ると、何百年経っても、スーパー堤防の整備が終わることはなく、都心部が堤防決壊で壊滅的な被害を受ける危険性が続くことになります。
治水対策として効果が出るのに莫大な費用と気の遠くなるような年月を要するこうした事業によって成り立つ荒川の河川整備計画の案は、国交省の河川行政の愚かしさを示す象徴的な事例です。