能條歩編『人と自然をつなぐ教育Ⅱ -自然体験教育の実践-』(NPO法人北海道自然体験活動サポートセンター、2015年)を読みました。「自然体験活動」を実践している方や関心のある皆さんには購入をお勧めします(1,080円)。

能條歩編『人と自然をつなぐ教育Ⅱ -自然体験教育の実践-』目次
はじめに
第1章 自然を読み解こう ~「自然解説」から「自然が先生」へ~
  1.モノの名前を知る=自然を知る?
 「自然について学ぶ」あるいは「自然の中で学ぶ」という活動には、多かれ少なかれ「自然のしくみやなりたち」「自然の利用・活用」などについての解説的な時間が含まれます。解説的な時間そのものが目的になっている場合もそうでない場合もありますが、従来の自然解説(自然ガイド)には「総花的な単なる知識や名称の羅列にすぎない」「分類学的な側面だけにとどまり、事前の事象どうし、あるいは自然事象と自分(人)との関係性がわからない」「自然との関係性において紡がれてきた文化や歴史的側面が見えない」などの反省がありました。
 例えば、森林散策という自然体験教育を企画するような場合を考えてみましょう。せっかく季節や土地柄といったその場所で体験できる自然との関わりを重要視するといる視座を持っていても、企画内容が動植物の名前や特徴を羅列的に紹介するような「単なる自然観察」になっていないでしょうか。こうした解説は新しい知識の獲得には繋がるものの、悪く言えば指導者の「知識のひけらかし」や「知識の切り売り」だけになりかねませんので、こういう学習が好きな人以外にとっては「押し付け」になってしまい、むしろ自然への興味が失われる場合もあります。いろいろな体験型ツアーに参加する人たちへのアンケートの結果をみると、こうした学習体験型ツアーに参加している人たちは、「ガイドしてくれる人に知識や経験の豊富さを期待してはいるものの、高度の知識の習得は望んでいない」ように読みとれます。その一方で、「語り口のユーモラスさや専門的で面白い情報の提供」にはかなりの期待があり、そうしたことの充実による「楽しい体験」を期待していると考えられます。これらのことから、体験型ツアーのような学習に参加してくる人は、必ずしもたくさんの知識を「教えられること」を望んでいるわけではなく、専門的な内容に基づく“面白さ”を求めているように見えます。では、この“面白さ”とはどのようなコトなのでしょうか。……

   コラム①ゲシュタルト転換
  2.インタープリテーションとは
 前述のように、自然体験教育が「これは○○です。こんな分類的特徴があり、▽▽とはこの点が違います」といった、生物の分類や特徴を羅列的に説明する“自然解説”に偏っていたという反省から、インタープリテーション(以下IPと表記)という教育方法の有効性が指摘されるようになって、もうずいぶん長い年月がすぎました。IPはもともとは“通訳”・“解釈”などの意味ですが、自然体験教育や環境教育の領域では、「個別の名前を知ったり特徴を覚えたりするだけでは見えてこない、自然の事象のもつ背景や意味合いなどを感じとること、いわばコトバを持たない自然が私たちに語りかける価値や文化を学ぶような活動やその技能」を指します。……今日では、「環境保全地域、公園、博物館など、社会教育の場における持続可能な社会づくりのための教育的コミュニケーション」で「参加者の興味や関心を引き出しながら、ものごとの背後にある本質に迫ろうとする、体験を重視した教育活動」と説明されています。このように社会教育に限定した教育活動としてIPを紹介する場合もありますが、本書では学校教育も含めて、自然と人をつなぐ教育活動における解説活動をIPと呼ぶことにします。

  3.インタープリテーションの原則
  4.興味を起こさせる・意味を伝える ~発問の工夫~
   コラム②和名と学名
  5.インタープリテーションのプランニング
   コラム③太陽ばんざい
  6.インタープリテーションに必要な自然についての知識
   コラム④特殊化と進化
第2章 自然体験教育アクティビティ事例集&知識のセルフチェックリスト集
  1.雨天や地域の自然・文化を活かす実践
     自然体験教育アクティビティ事例集
   コラム⑤幽霊と妖怪
  2.読み解きのためのセルフトレーニング
     知識のセルフチェックリスト集
第3章 自然への配慮 ~畏敬の念と環境倫理の教育~
  1.自然への畏敬の念はどうやったら育めるか?
  2.自然の中にある共通性
  3.科学の限界
   コラム⑥木のシルエット
  4.自然との一体感と自然への畏敬の念
   コラム⑦気配・・・
  5.自然への配慮と体験活動-Leave No Trace 実践例-
  6.LNT誕生の背景と歴史
  7.LNTの7原則
   コラム⑧LNT講習会のタイプと内容
  8.日本におけるLNT
   コラム⑨直火禁止!
第4章 自然との距離を縮めるネイチャークラフト ~教育の方法と実践例~
  1.自然体験教育の切り札 ~ネイチャークラフト~
  2.クラフト指導の心得
  3.テーマの設定
  4.評価と励まし
     ネイチャークラフト実践例
第5章 体験を学びに ~参加型授業・自然体験ワークショップ運営法~
  1.行動主体を育てる教育
  2.学習のながれ
   コラム⑩「ふりかえり」と「わかちあい」
  3.参加型学習実践例
   コラム⑪這い回る経験主義
第6章 資料から実践へ ~情報の読みこなしから活用へ~
  1.身近な自然での野遊び実践
  2.地域の中での自然体験教育プログラム
  3.計画時に活用した地域の資料
  4.地域の活動から生まれた新たな資料
   コラム⑫数えきれない数って?
第7章 安全管理と応急手当 ~危険への予知・回避・対策~
  1.自然体験教育で最も大切なこと
  2.安全管理の基本
  3.危険予知トレーニング
  4.ファーストエイド
   コラム⑬感覚をとぎすまそう!
  5.現場の安全、DOTS と SAMPLE
  6.手当てと RICE
  7.身近な病気や怪我
  8.安全管理体制&セルフチェックリスト
おわりに
※能條歩『自然体験活動を学校で』(2009年)(印刷用pdf.-26.2Mb)(閲覧用pdf.-1.6Mb)
   (NPO法人北海道自然体験活動サポートセンター関連資料データベースより)