森廣信子『ドングリの戦略』(八坂書房、2010年)を読みました。
ドングリの気持ちで森を見る! 食べ尽くそうとする動物との攻防、木と木の間の駆け引き、一本一本の木の個性的なふるまいなど、森の営みを象徴する「ドングリ」のすべて(書籍の帯より)。

森廣信子『ドングリの戦略』目次
1章 人はなぜドングリを拾うのか
 雑木林にて
 栄養としての魅力
 人、ドングリを食べる
 ドングリの謎

2章 ドングリとは何か
 クリもドングリの仲間
 どこで出会える?
 【コラム】分類と種
 日本のドングリ
  コナラ属
  マテバシイ属
  シイ属
  クリ属
  ブナ属
 世界のドングリ
  北半球
  南半球
 ドングリの誕生
 ドングリの形と大きさに見られる個性

3章 奥多摩のドングリ
 奥多摩の森
 ドングリの個性が気になる
 落下量を調べる
 【コラム】ドングリの数を調べる方法
 調査の始まり
 さまざまな落下物
 落下パターン
 気象の影響
 ドングリの重さが変わる
 枯死する母樹たち
 間伐の影響
 実のなる年ならない年
 結実変動の大きさを比べるには
 木と木は同調しているか
 同調の広がり
 種間同調

4章 ドングリをめぐる動物たち
 動物に狙われるドングリ
 樹上の昆虫
  ハイイロチョッキリ
  コナラシギゾウムシ
 樹上の哺乳類と鳥
  ツキノワグマ
  ニホンザル・ニホンリス・ムササビ・ヒメネズミ・カケス
 地上の動物たち
  ツキノワグマ
  ニホンジカ・イノシシ・ニホンリス
 夜の森の動物たち
 食物の貯蔵
 貯蔵の仕方
 貯蔵食糧の量
 哺乳類のことはわからない

5章 タネをまく木々-生き残り戦略-
 果実がおいしい理由
 種子散布
  風の利用
  水の利用
 動物の利用
  その1~4
  自動散布
 散布によって種子が動く範囲
 ドングリは転がらないほうがいい
 結実変動は、動物にどんな影響を及ぼすか
  コナラシギゾウムシの場合
  コナラシギゾウムシの休眠期間
 大型動物はどうか
 野ネズミには影響が大きいか
 選ばれるために
  八王子の森のリス
  八ヶ岳の森のリス
  奥多摩のリス
 苦いドングリは体に悪い
 動物はドングリを味で選ぶか
 味と大きさで動物をあやつる
 選ばれやすさが変わる?
 ブナ科の祖先の種子散布
 ブナ科の果実の進化
 【コラム】ブナ科の分類と分布
 形の経済
 ドングリが大きくなったわけ
 東アジアの森のドングリの進化
 栄養と渋味の多様化

6章 結実変動があるのはなぜか
 結実変動が起こる原因を探る
 結実変動の多様性
  熱帯林の一斉開花
  タケの一斉開花・結実
  同調繁殖
  同調繁殖の広がり
  結実変動の周期性
 結実変動の要因は何か
  仮説①風媒花の受粉効率
  仮説②捕食者飽食
  仮説③環境予測
  仮説④資源適合
  仮説⑤動物送粉者
  仮説⑥ 動物散布
  仮説⑦繁殖の付帯コスト
  仮説⑧大型種子
  風媒花の受粉効率仮説の検討
  捕食者飽食仮説の検討
 植物によって異なる事情
 同調繁殖を導く要因

7章 個性的な木々
 「ドングリの背比べ」はほんとうか
 ドングリの重さを比べる
 野生の樹木が持つ豊かな個性

8章 駆け引きする木
 豊凶を作る個体
 風媒花の受粉効率仮説に関する「井鷺モデル」
  エネルギーの蓄積と消費に関する仮定
  不作は受粉失敗によって起こるか
 樹木の生長とドングリ作り
 樹木の死
 間伐からの再生過程でのドングリ作り
 ドングリを作る意味

9章 ドングリをめぐる複雑な関係性
 一対一の関係
 第三者の介入
 貯蔵をめぐる争い
 結実変動の大きさの解釈
 失われた関係性
  東京都最奥の森のドングリ
  共存するドングリの関係

あとがき

※奥村みほ子「堅果-森のネズミの冬の食料-」(大日本山林会『山林』2008年1月号)

※林典子・井上真理子・大石康彦「アカネズミの食性調査手法の簡易化と環境教育における利用の試み」『森林総合研究所研究報告』10巻3号、2011年)