草地の生態学的な植生管理
井手久登・亀山章編著『緑地生態学』(朝倉書店、1993年) 4.生態学的植生管理 4.2草地の植生管理(前中久行)から
 草地は多種類の植物の集合体である。この中の好ましい植物をふやして、好ましくない植物を抑制することが植生管理の一つの目的である。目的とする植物の生育に最適な条件を施肥や灌水でつくり出し、好ましくない植物は雑草として除去するという従来の農耕的な手法を草地に適用することも可能である。現実にゴルフ場、公園、競技場、庭園内の芝生はこのような方法で管理されている。しかし、草地の構成種間の性質の違いを利用して、好ましい種に対しては成長を促進させ、好ましくない種に対しては抑制する作用を加える生態学的な手法で植生管理を行う方法もある。このような手法としては刈取り、放牧、火入、などがある。
 これらの手法はかつて放牧や採草の目的で行われたものであるが、アメニティ草地では生産が目的ではないので、従来の方法にとらわれることなく、種の選択や刈取り時期、高さなどについて自由に行うことができる。(151頁)
刈取りによる植生管理(同上書)
b. 刈取り
 刈取りは遷移を進行させる植物を刈取りによって取り除き、草地を維持する手法である。刈り取る時期、間隔、刈取高を工夫することで、与える影響を草種ごとに調整して、目的とする種組成や形態の草地をつくり出すことができる。……(152頁)
 刈取り後に刈り草を放置すると、下敷きになった植物への日照が阻害されて、刈取り後の成長が遅れ、特に種子からの新しい植物の侵入が抑制される。一方、刈取り後の再成長に必要な物質を地下部に蓄積している多年生植物は、比較的影響を受けないので、刈取り後の初期成長が速い植物のみが優占して種組成が単純化する。
 ある程度以上の広さの草地では、その草地全体を均一な状態で管理する必要はなく、ある部分については常に刈り草を除去し、これを別の部分に敷きつめて処分して、この部分については種組成の単純化をはかり、同一敷地内での植生型の多様化をはかる手法もある。
 葉群の垂直的な分布は植物によって異なるので、刈取りの高さを変えると、その後の植物の成長は種間で異なってくる。ある植物にとって最も有利な刈取り高は、その植物が影響を受けず、かつ競争相手が多く取り除かれる高さである。刈取り高を調節して、特定の植物の増殖を意図する場合には、その時点での生育高よりやや上部が適正刈取り高となる。
 刈取りの時期や間隔の効果は植物季節と関連する。たとえば一年生の好ましくない植物については、種子が成熟する以前に刈り取ることで防除できる。
 多年生の草本植物は一般に次のような生活サイクルをもつ。すなわち、前の生育期間に地下部に蓄えた貯蔵物質を用いて春に急激に葉や茎を増大させて初期成長を行う。この期間においては地下部の重量は減少する。その後、展開した葉によって光合成を行い、皇后生産物を地上部器官の拡大に振り向ける。地上部の拡大に必要以上の光合成が行われた場合は、これを地下部に回収蓄積して次の成長期間に備える。これよりも短い間隔で刈取りを繰り返せば、その植物は持続されず、より短期間に貯蔵物質を回収できる植物種と置き換わることになる。(152~153頁)
耕作放棄地の藪を全面的に刈払ったあと、植生をどのように管理していくのか。年1回、草刈りするとすれば、いつがよいのか、先行する事例を参考にしながら、時間をかけてシナリオを見つけていきたいと考えています。

今日は、AT限定解除と更新を鴻巣の免許センターでしたので作業は休みました。