日本統制地図株式会社発行の「赤沼林道より岩殿山笛吹峠へ」(家族向・第2集・丘陵編)のハイキングコースです。発行年はありません。東武東上線の坂戸駅から鳩山町の今宿までバスで来て歩き始めるコースです。
○赤沼林道・岩殿山・笛吹峠(表)
赤沼林道より岩殿山・笛吹峠へ
 徒歩行程:18キロ、5時間18分
 費用概算:2円35銭
 コース:池袋駅-(東上線1時間)-坂戸町駅ー(バス20分)ー今宿ー(0㎞ 13分)ーおしゃもじ山ー(2㎞ 30分)ー氷川神社ー(3㎞ 1時間)ー赤沼国有林を経てー物見山(岩殿山正法寺)ー(3㎞ 1時間)ー神戸越往還ー(1㎞5 25分)ー笛吹峠ー(2㎞ 30分)ー将軍沢ー(2㎞ 30分)ー(2㎞ 30分)ー鎌形八幡ー(1㎞5 30分)ー武蔵嵐山ー(3㎞ 50分)ー武蔵嵐山駅ー(東上線 1時間10分)ー池袋駅
 
 眺望に富むおしゃもじ山を振出しに岩殿山脈の尾根伝ひに赤沼林道を物見山へ行き、そこから笛吹峠を越えて武蔵嵐山へ下るコースはやゝ強行ではあるが、静かな一日の家族連れの歩行に好適である。
 バスで今宿橋を渡り小学校前で下車、坂を登ると右側におしゃもじ神社がある。おしゃもじ山は標高100米の丘ではあるが、西に笠山、堂平山を見、雲取、武甲、大嶽は指呼の間で、東南には入間川平野が遙かに望まれる。こゝから赤沼国有林につけられた快いプロムナードを辿って物見山へ、物見山三角点の北に坂東十番の札所として知られた岩殿山正法寺がある。本尊は千手観音と聞く。物見山からは遠く東京湾まで一眸憚るものもない。笛吹峠は正平の昔武藏野合戦の砌、新田義貞が屯した遺跡である。鎌形八幡の境内に湧く泉は木曽義仲産湯の井戸と伝へられる。武蔵嵐山は槻川の渓流がコの字形に屈曲した場所にある名勝地である。
 尚、笛吹峠へ降らずに、物見山から岩殿部落或は望月部落を経て高坂駅へ降りる径もあり、山から南へ石坂部落へ降って小山へ出てバスで坂戸駅へ戻る事も出来るから、疲れた場合の近路として覚えておいてよい。

ブログ『GO! GO! 嵐山』に「戦勝祈願とハイキングは池袋から東上線で 1930年代後半」 という記事があり、「戦勝祈願とハイキングは池袋から!!」という東武東上線のパンフレットを紹介しています。 1930年代はハイキングが世界的に流行した時代です。日本では1937年(昭和12)7月7日の盧溝橋事件以降、日中戦争が拡大し長期化する中で、38 年厚生省設置、39年体力章検定(スポーツテスト)、40年国民体力法公布。戦争に勝つための「体位向上」「心身鍛練」が叫ばれます。鉄道各社は国策に便乗し、割引運賃をセットして沿線の行楽地を健康と鍛練のハイキングコースとして宣伝します。こういった社会風潮になる前にこのハイキングコースは発行さ れたものなのではと推測しています。

※1930年代後半の比企郡内のハイキングコースの一例「武蔵嵐山、百穴・農士学校・嵐山・鍾乳洞ハイキングコース」、この時代風潮がわかる「体力向上、まず歩こう!」(『東京中心徒歩コース七百種』序文)などの資料もブログから見られます。