宮下和喜『ニカメイガの生態』(1982年7月) 自費出版、136頁
まえがき
第Ⅰ章 ニカメイガは何処からきたか?
第Ⅱ章 研究のエポック
第Ⅲ章 生態に関する研究の進展
 1.発育と繁殖
  1卵の発育、2幼虫の発育と令、3蛹の発育、4成虫と繁殖、5成虫の発育
 2.幼虫と成虫の習性
  1幼虫の習性、2成虫の羽化と交尾、3産卵習性、4走光性
 3.発生の経過とイネの栽培条件
  1発生の経過とイネの栽培条件、2越冬と休眠、3発生数の変動
第Ⅳ章 イネの被害と防除のうつり変り
 1.イネの被害の特徴
 2.防除のうつり変り
第Ⅴ章 なぜ最近になって勢力が衰えたか?
あとがき

日本応用動物昆虫学会誌 26(2)(1982年)に掲載されている釜野静也さんの新刊紹介によれば、「1章は、食草としてのマコモやイネの分布とニカメイガの分布・拡大との関係を考察している。2章は、明治以後のニカメイガ研究の概要を解説している。3章は、発生・繁殖・習性・発生経過などニカメイガの生態をイネの栽培との関連で取扱い、本書の中心の章である。4章は、ニカメイガ幼虫の加害によるイネの複雑な被害の現れ方およびその防除の歴史が述べられている。5章は、最近ニカメイガが著しく減少しているが、その原因をいろいろの角度から考察している。」

ニカメイガの発育経過 昆虫が1年間に何世代を繰り返すかを化性といいますが、ニカメイガ(二化螟蛾)は、北海道・東北のような寒冷地では年1回、ほかの地域では初夏と晩夏の年2回、沖縄では年4回発生するので、「ニカメイガあるいはニカメイチュウという名は科学的にみて正しいとはいえない」(日本大百科全書ニッポニカ)と書かれていたりします。

「 幼虫は、イネの藁や株内で越冬し、5月ごろに蛹(さなぎ)となり、第1回目の成虫が6月ごろに現れる。夜行性でよく灯火に飛来する。ガは、苗代や田植の終 わった水田のイネに産卵する。一匹の雌は約300粒の卵をイネの葉先に産み付ける。約1週間で幼虫が孵化(ふか)し、若いイネの葉鞘(ようしょう)に孔 (あな)をあけて中に食入する。そして葉鞘や茎の内壁を食べ、5回ほど脱皮し約40日で蛹となる。蛹期間は1週間余りで、8月下旬から9月上旬に第2回目 のガが現れ、ふたたびイネに産卵する。第2回目の幼虫も茎に食入して内壁を食い荒らす。株分けが終わり、穂の出る茎に被害を与えるので、米の収量に直接影 響を及ぼす。イネの刈り取りのころには、幼虫が成熟し、刈り取られた稲藁や切り株の中で越冬する。」(日本大百科全書ニッポニカ)

ニカメイガの世代の呼び方 日本応用動物昆虫学会では、第1世代(1化期 蛹-成虫-卵ー幼虫)、第2世代(2化期 蛹-成虫-卵-幼虫ー老熟幼虫で越冬)。宮下さんは「春世代」、「夏世代」と表現(5~6頁)。