岩殿の田んぼの写真を撮っていると、ボッシュ林からチェンソーの音がしてきました。業者の人が松の枯損木を伐倒していたのです。
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先日の市民の森保全クラブの作業日に、「近いうちに松の枯損木を伐る」という話を業者から聞いていたので、園路を歩いて見ると、青いテープがついたアカマツを伐っているようです。伐ったものは玉切って丸太にして積んでありました。
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何ヶ月か前に、市民の森全域で松くい虫の被害調査をしているということを知りました。伐木作業を行う前に、松くい虫の被害木の見落としがないかどうか、先日はチェックしていたのかもしれません。市民の森のマツ林を全体として保全するということは素晴らしいことです。

業者の人は今回、どういう方法で、あるマツが松くい虫に感染しているのかどうか判断していたのでしょうか。
①葉が赤く枯れだしてから、ナイフ等で樹皮に傷をつけても傷口からは樹脂(松ヤニ)が出なくなっている。
②松くい虫による被害の場合、先に古い葉(2~3年目)が、その後新しい葉(当年生)が赤く変色し垂れて枯れる。乾燥が原因の場合は新しい葉が先に、また、大気汚染等の場合は同時に枯れる。
③材(径3㎝程度の枝)を削り、材線虫を抽出して顕微鏡で確認する。
③は現場での判断はできませんから、葉が赤く枯れているものをチェックしたのでしょう。

伐倒木の処理として、森林総合研究所の森林被害対策シリーズ№1『「松くい虫」の防除戦略 マツ材線虫病の機構と防除』(2006年発行)には、
①焼却 駆除残しを防ぐには、伐倒した枯損木をすぐに処理することが重要です。焼却が望ましいですが、多くの地域では場所の確保が難しいことや、ツチクラゲという病気が発生しやすくなるために林内焼却ができません。また焼却自体、多くの理由で困難になってきています。材の表面から2㎝程度まで炭化すれば、マツノマダラカミキリの幼虫はすべて死亡します。
②破砕(チップ化) チップ化は、材内のマツノマダラカミキリ幼虫を確実に殺す点で、焼却と同様に効果が高い方法です。火を使わないので、焼却が不可能な場合の代替手段として用いることができます。粉砕機は自走式で直径15cm程度までの枯損木の処理が可能です。
③燻蒸 薬剤による燻蒸処理を適切に行ううえで最も重要なことは、被覆の密閉を保つことです。
④薬剤処理 越冬幼虫を殺虫するために行います。丸太の裏側も丁寧に行う必要があります。
とあります。マツノマダラカミキリとマツノザイセンチュウとが相互に協力しあって松の集団枯れを引き起こしているので、マツ林を守るには人間による介入が必要です。伐倒木からカミキリを飛び出させないために、被害木を伐倒するだけでなく、すみやかに伐倒木の中にいるセンチュウとカミキリの幼虫の殺虫作業を開始することを要望します。