雨降りで今日予定していた籾ガラくん炭づくりは中止になったので、年末の餅搗き日の禁忌について調べてみました。「九日餅(クンチモチ)」といって29日にはモチを搗くなといいますが、「福餅(フクモチ)」といって喜んで搗くところもあるそうです。29日のほかに餅を搗かない日として31日の「一夜餅(イチヤモチ)」があるので28日・30日に餅を搗くことが多いですが、「申の日」(人が去る・死ぬ)、「卯の日」(憂いの日)には搗かないという伝承もあるようです。旧暦の時代には12月の晦日(みそか)は31日ではなく30日ですので、「一夜餅」を気にすれば28日に搗くということになりますが、30日にも餅を搗いていたようなので「一夜餅」のタブーは時代的には新しいものかもしれません。

餅搗き 『滑川村史 民俗編』1984年 202頁
一二月二八日、三〇日 二九日は「苦餅(くもち)」、三一日は「一夜餅(いちやもち)」といわれて嫌われ、二八日か三〇日に餅つきを行う。

餅つき 『大井町史 民俗編』1985年 242頁
餅つきは二五日頃から始めるが、九のつく日は九と苦の連想から苦労するといって、クンチモチはつくなという。また申の日は、人が去る(死ぬという意味)からといって避けた。三一日はイチヤモチといって、縁起が悪いといい、餅をつくことを避けた。

餅搗き 『鳩ヶ谷市史 民俗編』1988年 295頁~296頁
餅搗きは、ほとんどのところが二十七日~三十日の間に行い、三十一日は餅切りをしたようである。……
二十九日を、福と読み、これを福餅といって喜んで搗くという……もあるが、多くのところは二十九日はクンチ餅といって嫌い、三十一日は、一夜餅といってこれを嫌って避けている。

餅つき 『三芳町史 民俗編』1992年 372頁~373頁
煤払いが終ると餅つきをした。日取りはだいたい定められていて、今はつく餅の量も少ないのでたいてい家ごとにつくが、かつては親しい親戚や近隣同士モヤイでつくことが多かった。餅をつく日が毎年決まっていたのはモヤイでつくため、どこの家は何日と決まっていたほうが暮の忙しい時期、日程を立てやすかったからだという。……
禁忌 餅つきの場合にクンチモチ(二九日)。一夜モチ(三一日)、申の日(火早い)はきらう。しかし、モヤイでつく場合に二九日でもついた。

餅搗き 『伊奈町史 民俗編』2002年 307頁~308頁
正月用の餅搗きは、暮れの二八日か三〇日に行うのが一般的である。二九日に搗くことをクンチ餅、三一日に搗くことを一夜餅といって嫌うので、必然的にこの二日付近になるのだという。クンチ餅は「九」が「苦」につながるので嫌うのだといわれる。また、申の日の餅搗きも嫌う。「火にたたる」といって火事になるから嫌うという伝承や、「申は餅をカンマス(かき回す)」から嫌うという伝承がある。