昨日参加した「農」と里山シンポジウムでの、津布久隆さんのお話しに触発されて、茂木町有機物リサイクルセンター美土里館を見学しました。
この施設は、茂木町内からでる一般家庭の生ゴミ、家畜のふん尿、フレコンバック1袋(20㎏)400円で買い上げている落ち葉、処理に困っていたもみがら、粉砕した間伐材を原料にして、美土里堆肥、液状肥料を作っています。さらに、廃食用油からバイオディーゼル燃料、竹を微粒子化し竹由来の乳酸菌により発酵させて、「美土里竹粉」を製造しています。
里山の落ち葉掃きは「仲間と楽しみながらいい汗かいて、山はきれいになるし、環境にもいい」と、町民の収入源の1つになるだけでなく、将来的には社会保障費の軽減にもつながるのではと期待されているそうです。
施設内を案内してくださったセンター長さん、ありがとうございました。
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堆肥の原料
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廃材、間伐材(直径18㎝以下)を集めて粉砕し、おが粉を製造し、堆肥の副資材とする。
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スクリュー式円形発酵装置・臭気捕集ルーフ・送風ダクト
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 バイオマスタウンとは?
域内において、広く地域の関係者の連携の下、バイオマスの発生から利用まで効率的なプロセスで結ばれた総合的利活用システムが構築され、安定的かつ適正なバイオマス利活用が行われているか、今後行われることが見込まれる地域のことです。
バイオマスタウンについては、「バイオマス・ニッポン総合戦略」(2002年12月閣議決定、2006年3月改訂)に基づき公表されてきましたが、2010年12月に総合戦略に代わるものとして、バイオマス活用推進基本法(平成21年法律第52号)に基づく「バイオマス活用推進基本計画」が閣議決定されたことから、バイオマスタウン構想の募集を2010年度をもって終了しました。2011年4月末で318地区がバイオマスタウン構想を公表していました(埼玉県内では秩父市のみ)。
→「バイオマスタウンレポート~茂木町~

※文献追加:田中美香「栃木県茂木町の「美土里館」における「美土里たい肥」での落葉買取の実態』(『ランドスケープ研究』78巻5号、2015年 )
旧・日本専売公社は,茂木町九石地区にて落葉を主原料とした腐葉土の製造工場も運営していた。原材料である落葉を収集する担い手は,葉たばこを生産・加工する農家であった。旧・日本専売公社は,農家が里山にて収集した落葉を有料にて買い上げしていた。
旧・日本専売公社は,2000 年に腐葉土の製造工場も閉鎖した。それに伴い,腐葉土の製造工場は旧・日本専売公社から茂木町役場へ譲渡された。それを受けて,茂木町役場は落葉以外の有機物も原材料とするたい肥の製造を可能にするため,増設工事を開始し 2003 年に完了した。なお,この増設工事は,1999 年施行された「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」にそくして,茂木町での酪農家の家畜排せつ物を処理する目的も存在した。
たい肥を製造する「茂木町有機物リサイクルセンター美土里館」(以下,「美土里館」)は,2003 年 4 月より製造を開始し,2014年現在も茂木町役場の施設として稼動している。なお,茂木町は「美土里館」での取り組みにより,2004 年度農村振興局長賞(バイオマス利活用優良表彰)を受賞した。
  (1)「美土里たい肥」の概要、(2)落葉収集の実態

4.まとめ
本研究は,少子高齢化が進行している中山間地域での地域資源である有機物リサイクルの利活用において,行政が主導し行政区の住民が担い手となって持続しているたい肥製造,特に落葉買取・収集システムを明らかにした。
旧・日本専売公社の腐葉土製造工場が所在地行政へ譲渡されたことにともない,行政は町内の多様な地域資源を活用するたい肥製造工場へと増設した。良質な地域資源から製造するたい肥は高品質となり,製造分は完売する小売状況が持続している。そのため,たい肥製造工場は製造設備を最大限に稼動させて,小売へのたい肥供給を支えている。
高品質なたい肥製造の発酵促進剤として,地域資源である里山の落葉は必要不可欠となる。そのため,たい肥製造工場は行政区内にて落葉収集者を募集登録した後,管理している。落葉収集者の登録条件は,一冬に乾燥した落葉 375kg 以上をたい肥製造工場に納入することである。たい肥製造工場は,落葉収集者が収集した落葉を買い上げ,落葉収集者の指定口座へ 1 年に一度落葉収集代金を振り込んでいる。すなわち,地域資源を有償化することにより,高品質なたい肥の製造は可能となり,里山も保存される。
落葉収集地区と落葉収集者は,年々減少傾向にある。これは,落葉収集者が加齢による体調不良や体力減少を理由に落葉収集を休止するためである。この対策として現在主流となっている各戸が保有する里山での落葉収集システムから,既に稼動している各戸が保有する里山以外での落葉収集システムへの移行が急がれる。
今後の課題は,たい肥の購入者が生産する農作物の実態調査とその農作物生産の持続システムを明らかにすることにある。