栃木県那須烏山市にある猿久保田んぼ公園を見学しました。
2002~2003年度に栃木県荒川南部地区(県営ほ場整備事業・生態系保全型水田整備推進事業)が行われた場所です。谷津田(谷戸田)の生態系を保全する整備事業でした。
「ため池と谷戸際からのしみ出しを水源とする栃木県荒川南部地区の県営ほ場整備事業では、湿地状の耕作放棄地、水田、土水路、水田内水路(承水路兼排水路)および斜面林といった種々の環境構造の結合によって成立している水田生態系の保全方法について検討」が行われ、ホトケドジョウの遡上できる魚道が施工されたそうです。
「地域の生物生息場として重要と考えられた谷津田最上部のハンノキ林へと遷移が進んでいる耕作放棄田を生産から切り離して現状維持(保全区域:公園化)することで、湿地性動植物の生息場として担保した」という猿久保田んぼ公園がどんなところか確かめたいというのが、今回の訪問の動機です。

「 」内の引用は水谷正一編『農村の生きものを大切にする水田生態工学入門』(農山漁村文化協会、2007年)藤咲雅明「第5章事例に学ぶ環境保全工法 3.ホトケドジョウの保全工法-栃木県荒川南部地区(県営ほ場整備事業・生態系保全型水田整備推進事業)-」189~193頁。


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この場所は、JR烏山線小塙(こばな)駅から徒歩12分にあります(地図:栃ナビ)。

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「猿久保溜」の沼下です。猿久保溜は入山沼よりずっと大きいため池ですが、沼下は、岩殿A・B地区と上の耕作放棄地の湿地と似ています。かつて水田であった場所を湿田として復元し、ハンノキ林の湿地を木道をつけて保全しています。
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ミドリシズミ等生息域、カエル類越冬域のハンノキ林です。

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手が付けられていない場所もありますが、周囲の森は「とちぎの元気な森づくり県民税」で整備されました。

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主要樹種は違いますが、地質は入山沼近くの市民の森と似ています。
谷津田と隣接する雑木林、ため池を生かして豊かな生態系の保全をめざした「猿久保田んぼ公園」。岩殿満喫クラブのスタッフで再度、研修に訪れたい場所でした。

※承水路(しょうすいろ):背後地からの水を遮断し、区域内に流出させずに排水するための水路。岩殿B地区の上の耕作放棄地との境界の明渠がこれです。