2023年04月
岩殿谷津田自然くらぶが4月1日に発会。今日は初の活動日です。二宮さん(代表)、小野さん(事務局)と入山谷津の植物調査をしました。
岩殿満喫クラブの岩殿グループでは、2016年から岩殿丘陵入山谷津とその周辺で70回、植物調査を実施してきました。フロラ調査では500種の植物をリストアップし、コドラート調査では入山谷津の谷底に10m×50mの帯状のエリアを置き、5m×5mの正方形20個の調査枠で、枠内の植物の種類や分布を調査しています。活動の様子はこのブログのカテゴリー「植物調査」、「岩殿グループ写真館」でご覧ください。今日からの記事はカテゴリー「岩殿谷津田自然くらぶ」です。
岩殿谷津田自然くらぶは今年度の事業として、①入山谷津の四季折々の植生変化を学ぶための定点観察会開催。②耕作放棄地、休耕田の植生変化を記録するための湿地コドラート調査。③谷津田の林縁のそで群落、マント群落は希少なつる性植物や生きものの棲息地なので、保護のための記録調査を実施し、名札付け、マーキング、名板、支柱などを設置。
④ブログなどで情報発信、観察の栞などの発行を計画しています。自然観察会や会の活動について関心のある方はお知らせください。
自然観察会を通じて、これまでの植物調査の成果を市民共有のものとし、さらに参加者が自然観察の楽しさ、大切さを学びながら、自然を守る活動、豊かな自然を次世代につなぐ活動に取り組んでいく機会を提供します。九十九川の源流である岩殿谷津は都市近郊に残された希少な緑の空間です。この谷津の魅力を東松山市民はもとより、広く市外、県外の人たちにも発信して、共感、理解者を増やすための活動をすすめていきたいと考えています。
ナラ枯れ枯死木は伐採後35㎝に玉切りして岩殿C地区に運び、斧や薪割り機で割って、カシノナガキクイムシの幼虫が蛹になる前に駆除します。
大橋章博「被害木を薪にしてナラ枯れを防除する」(『ぎふ森林研究情報』№81、2012年2月)
大橋章博「被害木を加工するだけでナラ枯れを防除できるか」(『ぎふ森林研究情報』№86、2017年3月)
今晩~明日は雨が降りそうなので、玉切り木や割材に作業シートやブルーシートをかけておきました。


市民の森保全クラブ追加作業日。新井さん、金子さん、木庭さん、細川さん、鷲巣さんとHikizineの6名と公社2名でチッパー作業。午前中は鳥取さん(指導者)・小松さんと渡部さん(指導者)・斉藤さん、新倉さんの2グループ、午後は渡部さん(指導者)・小松さん、新倉さんでチェンソー講習会を実施しました。
チッパー作業
入山沼下の下段の草刈りと市民の森南斜面休憩所のベンチ周辺の裾刈りをしました。
※ナラメリンゴフシ
ナラメリンゴタマバチが寄生してできる虫えい(虫癭)[虫こぶ(虫瘤)]
⇒井手竜也(国立科学博物館陸生無脊椎動物研究グループ)「小さくたっておもしろいハチの研究」(国立科学博物館私の研究-国立科学博物館動物研究部の研究者紹介ー)

TAMABACHI JOHO-KAN タマバチ科のハチ類の分類や生態に関する特徴を一般向けに解説

TAMABACHI JOHO-KAN タマバチ科のハチ類の分類や生態に関する特徴を一般向けに解説
市民の森保全クラブ追加作業日。江原さん、片桐さん、新倉さん、丸山さん、渡部さんとHikizineの6名と公社2名でチッパー作業をしました。作業地点は岩殿C地区から山腹作業路を上った尾根上の鞍部(コル)の西側です。チッパーは共立のKCM125DXで最大処理径125㎜です(⇒KCM125DXA取扱説明書)。



次回は、21日(金曜日)です。
※C地区のティピーテントの床にスギ丸太のスライスが敷かれていました。鳥取さんありがとうございます。
※冬を越したオオスズメバチの女王蜂がいました。
市民の森保全クラブ定例作業日。参加者は芦田さん、新井さん、江原さん、木庭さん、小松さん、斉藤さん、鳥取さん、細川さん、丸山さん、鷲巣さん、渡部さんとHIkizineの12名。
南向き斜面のナラ枯れ枯死木の伐採、北向き斜面の下刈り、尾根のアカマツ林床の坪刈りをしました。



ティピーテントは常設なので雨対策や排水対策を万全にして完成、次は簡易トイレとしての機能向上が課題です。
尾根の道の上り口にあるテーブルとベンチ。ベンチの座板が取り替えられて新しくなりました。
伐採したコナラをチェンソーで縦引きして半割りにし、製材しました。渡部さんありがとうございます。6日に作業したそうです。
※チェンソー縦引き/横引き(『きこりやろう』2020年6月13日記事) 縦挽き/横挽き
※チェンソー縦引き/横引き(『きこりやろう』2020年6月13日記事) 縦挽き/横挽き
車堀公園の西側、市の川小学校寄りの一帯に群生しているはヤマハゼ(ウルシ科)の若木を刈払機と鋸で伐りました。ヤマウルシと同類で日当たりの良い場所のパイオニアプランツなのでしょう。ヤギが放し飼いされていたヤギ園内でも1年間で人の背より高く伸びています。


※ヤマハゼ(ウルシ科ウルシ属)(『葉と枝による樹木検索図鑑』)
※ヤマハゼ・ミツバチの友は漆黒(『つるの織部屋 染織家おつるの糸へんの日々、ひきこもごも。』2018年7月21日記事)ヤマハゼの枝・葉を煮出すとアルミで濃い辛子色、銅で鶯茶、鉄では漆黒
※ヤマハゼ・ミツバチの友は漆黒(『つるの織部屋 染織家おつるの糸へんの日々、ひきこもごも。』2018年7月21日記事)ヤマハゼの枝・葉を煮出すとアルミで濃い辛子色、銅で鶯茶、鉄では漆黒
金子さんが午前中、薪棚づくりを始め、土台を試作しました。こんな感じかなということで、これで行くということではありません。「薪棚の作り方」をGoogleで検索すると約278,000件もヒットし、設計図も色々あります。設置場所や工程をイメージしながらどういうものが良いのか、納得できるものを見つけて、組立てていきましょう。
入山沼下のI地区は、ヤナギ・ハンノキの伐採・更新とキショウブの抑制が課題です。キショウブは毎年、これ以上は増やさないことを目指しいますが、掘りあげ等の作業時間を確保できずに、花を落とすことだけの手ぬきになっています。
下段
市民の森保全クラブ金曜日の定例活動日、23年度初回です。参加者は芦田さん、新井さん、江原さん、金子さん、木庭さん、木谷さん、斉藤さん、鳥取さん、新倉さん、細川さん、鷲巣さん、渡部さんとHIkizineの13名。
活動エリアのコナラ枯死木を2本伐採し、玉切りして岩殿C地区の運びました。
木谷さんがナラ枯れ枯死木を初伐採しました。この間のトレーニングの成果です。1月27日の写真・動画と比べて下さい。
市民の森保全クラブ(20230127) 0:41
鷲巣さんは岩殿C地区で杉丸太の皮むき。
杉丸太を使ってチェンソー講習会を再開しましよう。
割材するとカシノナガキクイムシの幼虫が孔道から這い出してきます。
薪割りだけでは蛹になる前の幼虫を完全に駆除できないので、薪棚に積み上げて乾燥化をすすめ、殺虫効果を高めます。
5日、カシナガトラップ102基が文化まちづくり公社から配達されました。
※小林正秀「ナラ枯れの媒介昆虫(カシノナガキクイムシ)の生態はどこまで解明されたのか?」 YouTube 20:10
小林正秀(京都府農林水産技術センター森林技術センター)「ナラ枯れの媒介昆虫カシノナガキクイムシの生態はどこまで解明されたのか?」:カシナガのような Platypus 属が Raffaelea 属菌を媒介してブナ科樹木を枯らせる被害が世界中で発生している。日本のナラ枯れは、1980 年代以降に拡大、現在は関東で深刻化している。ナラ枯れが抑えられないのは、カシナガの生態が理解されていないためである。無被害地の健全木の幹に穴をあけて殺菌剤を注入したり、無被害地にフェロモン剤を設置するなど、カシナガを無被害地に引きずり出す対策が行われている。カシナガは、枯死して間もない樹木を利用する二次性昆虫であるが、数が増えると健全木にも攻撃して枯死させる一次性昆虫に転化する。カシナガは、枯死して間もない樹木という量的に少ない寄主を探し当てるため、飛翔力が高く、嗅覚が鋭い。また、希な繁殖材料に運良く辿り着く幸運な個体は少ないため、一旦、繁殖に成功した場合、多数の子供を育て上げる。飼育実験では 2頭の親から 500 頭以上が育った例があり、野外では 1000頭以上が育った記録がある。ここでは、透明のビンによる飼育で判明した木の中での生活を中心に、カシナガの驚くべき生態を動画で紹介する。そして、この虫が一気に増えるメカニズムについて考察する。(『第134回日本森林学会大会学術講演集』118頁)
※二井一禎「ナラ類の萎凋病(ナラ枯れ)をめぐる生物関係」 Kazuyoshi Futai
“ナラ枯れ” が世間の耳目を集めるようになったのは比較的最近のことで、そのため、地球温暖化との関連が取り沙汰されたり、侵入病害虫として、問題視されたりすることが多い。しかし、昭和の初め(1930 年代)に既に鹿児島県と宮崎県から本病の発生が報告されているほか、最近になって、明治期の発生記録が見つかっており(高畑 2010)、この森林病は地球温暖化が問題になる遥か以前から日本の森林に発生していたことが明らかになった。この病気の病原体は不完全菌類の一種、Raffaelea quercivora(以後ナラ菌)で、この病原菌をナガキクイムシ科の甲虫、カシノナガキクイムシ Platypus quercivorus(以後カシナガ :図 1)が枯死木から健全木に伝播することにより被害が拡大する。その際、ナラ菌は体長 5 mm 足らずのカシナガの前胸背部にある 10 個前後の円形の凹み(これを菌嚢 : マイカンギアと呼ぶ)に格納されて運ばれるが、この菌嚢には本来、カシナガの餌となるべき酵母類が蓄えられている。いわば、ナラ菌は餌の酵母に紛れて運ばれていると言える。このように、樹体内に酵母を持ち込み、そこでこの酵母を育ててこれを餌とする一群のキクイムシのことをアンブロシアビートルと呼ぶ。
カシナガは 6 月下旬頃から羽化脱出し、健全なブナ科の樹木に飛来する。これまでに、ミズナラ、コナラなどブナ科の中でもコナラ属の樹種を中心に、その他クリ属、シイ属、マテバシイ属など、15 種以上のブナ科の樹種への加害が知られている。もちろん、これらの樹種間にもカシナガの選好性に差があり、加害された場合の感受性(枯死率)にも大きな違いがあることが知られている(村田ら、2011)。宿主樹木には最初オスが飛来し、年輪に直角の方向に短い坑道(穿入孔)を上向き 20 度の傾斜をつけて掘った後、樹幹表面に出て集合フェロモンを放出する。これに誘引された雌雄のカシナガが飛来し、この樹を一斉に穿孔加害する(マスアタック)。宿主樹木は、キクイムシ等に穿孔加害されると、樹液分泌などにより、侵入者を除去するなど、防御反応を示す。マスアッタクは一本の宿主に同時に攻撃を加えることにより、一つの孔道当たりの樹液量を低減させ、宿主の防御力を弱める働きがある。
いったんメスが孔道の掘削を始めると、オスは穿入孔の入り口付近に陣取り、外敵の侵入から孔道を守り、内部の幼虫の落下を防ぎ、さらには、幼虫が内部から運搬して来るフラス(孔道掘削によりできる木屑と幼虫達の排泄物が混じったもの)を孔から外部に放出する。ここで、穿入孔道を上向き 20 度(孔道内部から見ると下向き 20 度)に付けた傾きは侵入者を外部に押し出したり、排泄物を廃棄したりするのに有利である(Tarno et al. 未発表 : 図 2)。
以後オスは孔道掘削作業には関与しない。オスに続いて飛来したメスは、一連の求愛行動を経て、孔道の入り口でオスと交尾した後、穿入孔に入り、自ら年輪に沿って水平の孔道(水平毋孔)を掘る。そして、メスが孔道内を移動するときマイカンギアに潜んで運ばれて来た酵母は、充分な湿度条件の孔道内部でマイカンギアから噴出し、孔道内壁に塗り付けられる(Endoh et al. 2011)。メスはそれまで掘り進めた孔道の端部にいったん産卵し、さらに孔道を延長して行く。孔道壁に産みつけられた卵はやがて孵化し、メスが作った水平母孔から分岐孔を掘削する。こうして、終令幼虫がいったん孔道掘削作業を始めるとメス成虫は最早孔道掘削に関わらなくなる。終令幼虫はメスに代わって専ら孔道を掘り進め、その掘削屑をオスの待つ孔道入り口に運び、メス親の産んだ弟、妹卵を適所に 運搬し、さらには幼虫どうしで栄養交換しながら小さな社会を営んでいる(このような集団生活を営むカシナガは亜社会性昆虫と見なされている)。樹体内奥深くで繰り広げられる微小なカシナガの社会生活は多くの研究者の努力で一つ一つ明らかにされて来たのだが、幼虫の社会性が明らかになったのは、人工培地中で孔道を作らせビデオ撮影による連続観察に成功した小林の功績(小林 2006)によるところが大きい。樹体内奥深くで繰り広げられる微小なカシナガの社会生活は多くの研究者の努力で一つ一つ明らかにされて来たのだが、我々はこの問題に全く別の方法で取り組んだ。それは、彼らが宿主樹体から排出するフラスに 2 つのタイプがあると言うことに気づいたのがすべての出発点であった。その後の実験でこのフラスについて重要な特性が 2 つ明らかになった。それは、(1)成虫が孔道を掘削する時にできるフラスの形状は繊維状で、幼虫のものは粉状になる(図 3)。この違いは両者の口器の違いにより説明出来る。他の一点は(2)排出されるフラスの量は孔道の長さに比例すると言う点である(Tarno et al. 2011)。
これだけのことが確かめられれば、排出されるフラスを連続的に観察するだけで樹体内の彼らの行動はかなり明らかに出来る。メスと幼虫の掘削作業の交代などという現象もフラスの観察から明らかになった。
カシナガがマスアタックする樹を選ぶ場合、彼らができるだけ多数の子孫を残せるような樹が好適であるに違いない。多数の子孫の繁殖が可能かどうかは餌である酵母の量に依存する。ところで、上にも述べた通り、酵母はメスのカシナガにより孔道の壁に塗り付けられ、そこで繁茂し、幼虫の餌となる。従って、長い孔道ほど酵母の繁殖量も多くなり、多くの幼虫の繁殖が可能になる。ここで、酵母が繁殖出来るのは、タンニンや他のポリフェノールの量が比較的少ない辺材に限られる。従って、カシナガが孔道を掘り進めるのも、辺材部分に限られる樹種が多い*。こうして見ると、カシナガにとって好ましい宿主樹木がどのようなものかが見えて来る。それは、酵母の繁殖に好適な辺材の材積が多い樹と言うことになる。
それは、太い木で、しかも材積に占める辺材部分の比率が多い木と言うことになる。ミズナラやコナラの大径木が好まれ、しかもその地際部が集中的にか害されるのは当然のことなのだ。
(* : マテバシイやアラカシの場合は、孔道が心材まで達することが多い。恐らく、コナラやミズナラの場合と、心材成分の量や質に大きな違いがあると思われる)。
ナラ枯れのもう一つの主役である病原体、ナラ菌は酵母と共にカシナガのマイカンギアに潜んで孔道内に運ばれ、この孔道から周囲の材組織に広がる。それに対し、樹木側は防御のため、菌の感染部位周辺にポリフェノールなどの二次代謝産物を集積させる。この過程は、辺材組織が心材に移行する現象(心材化)に良く似ている。いわば、本来の辺材組織の中に、にわかに心材が形成されるような現象で、ナラ菌に感染した材の断面は異常な変色域が広がる(図4)。本来の心材がそうであるように、この変色域は水の通導機能を失っている。したがって、変色域の拡大は樹の萎凋をもたらし、最終的には枯死に至る。以上述べたように、ナラ枯れという森林流行病は複雑な生物の相互関係により生じている樹病で、未解明な問題が山積している。特に、カシナガの食餌源である酵母と病原菌の関係には不明な点が多い。現在、ナラ枯れと同様、Raffaelea 属の菌とカシナガのようなアンブロシアビートルの組み合わせで樹が枯れる病気が世界の各地で問題になっている。例えば、合衆国の南東部のフロリダやジョージアなどの諸州ではクスノキ科のアボガドなどの樹種が R. lauricola とアンブロシアビートルの一種 Xyleborus glabratus により枯死するローレルウィルトが問題化しているし、ポルトガルでは カシナガと同属の P. cylindrus が Raffaelea 属の一種を運んでコルク樫を枯らしている。さらに、お隣の韓国ではカシナガに近縁の P. koryoensis が Rafaelea 属の病原菌を運んで、ミズナラにごく近縁のモンゴリナラ を枯死させている。このように見て来ると、近年これらの病気が拡大している原因を探るためには、ナラ枯れに限らず、世界的に Raffaelea 属菌とアンブロシアビートルの組み合わせが引き起こしている流行病に共通の環境要因(誘因)をつきとめることが必要とされている。本来土着病的な病気であったナラ枯れがなんらかの誘因によって激害化しているとするなら、地球温暖化も誘因の一つとして考慮すべきかもしれない。(文献は略。太字と下線引用者)
※タンニンについて(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科天然物化学研究室HP)
カシナガは 6 月下旬頃から羽化脱出し、健全なブナ科の樹木に飛来する。これまでに、ミズナラ、コナラなどブナ科の中でもコナラ属の樹種を中心に、その他クリ属、シイ属、マテバシイ属など、15 種以上のブナ科の樹種への加害が知られている。もちろん、これらの樹種間にもカシナガの選好性に差があり、加害された場合の感受性(枯死率)にも大きな違いがあることが知られている(村田ら、2011)。宿主樹木には最初オスが飛来し、年輪に直角の方向に短い坑道(穿入孔)を上向き 20 度の傾斜をつけて掘った後、樹幹表面に出て集合フェロモンを放出する。これに誘引された雌雄のカシナガが飛来し、この樹を一斉に穿孔加害する(マスアタック)。宿主樹木は、キクイムシ等に穿孔加害されると、樹液分泌などにより、侵入者を除去するなど、防御反応を示す。マスアッタクは一本の宿主に同時に攻撃を加えることにより、一つの孔道当たりの樹液量を低減させ、宿主の防御力を弱める働きがある。
いったんメスが孔道の掘削を始めると、オスは穿入孔の入り口付近に陣取り、外敵の侵入から孔道を守り、内部の幼虫の落下を防ぎ、さらには、幼虫が内部から運搬して来るフラス(孔道掘削によりできる木屑と幼虫達の排泄物が混じったもの)を孔から外部に放出する。ここで、穿入孔道を上向き 20 度(孔道内部から見ると下向き 20 度)に付けた傾きは侵入者を外部に押し出したり、排泄物を廃棄したりするのに有利である(Tarno et al. 未発表 : 図 2)。
以後オスは孔道掘削作業には関与しない。オスに続いて飛来したメスは、一連の求愛行動を経て、孔道の入り口でオスと交尾した後、穿入孔に入り、自ら年輪に沿って水平の孔道(水平毋孔)を掘る。そして、メスが孔道内を移動するときマイカンギアに潜んで運ばれて来た酵母は、充分な湿度条件の孔道内部でマイカンギアから噴出し、孔道内壁に塗り付けられる(Endoh et al. 2011)。メスはそれまで掘り進めた孔道の端部にいったん産卵し、さらに孔道を延長して行く。孔道壁に産みつけられた卵はやがて孵化し、メスが作った水平母孔から分岐孔を掘削する。こうして、終令幼虫がいったん孔道掘削作業を始めるとメス成虫は最早孔道掘削に関わらなくなる。終令幼虫はメスに代わって専ら孔道を掘り進め、その掘削屑をオスの待つ孔道入り口に運び、メス親の産んだ弟、妹卵を適所に 運搬し、さらには幼虫どうしで栄養交換しながら小さな社会を営んでいる(このような集団生活を営むカシナガは亜社会性昆虫と見なされている)。樹体内奥深くで繰り広げられる微小なカシナガの社会生活は多くの研究者の努力で一つ一つ明らかにされて来たのだが、幼虫の社会性が明らかになったのは、人工培地中で孔道を作らせビデオ撮影による連続観察に成功した小林の功績(小林 2006)によるところが大きい。樹体内奥深くで繰り広げられる微小なカシナガの社会生活は多くの研究者の努力で一つ一つ明らかにされて来たのだが、我々はこの問題に全く別の方法で取り組んだ。それは、彼らが宿主樹体から排出するフラスに 2 つのタイプがあると言うことに気づいたのがすべての出発点であった。その後の実験でこのフラスについて重要な特性が 2 つ明らかになった。それは、(1)成虫が孔道を掘削する時にできるフラスの形状は繊維状で、幼虫のものは粉状になる(図 3)。この違いは両者の口器の違いにより説明出来る。他の一点は(2)排出されるフラスの量は孔道の長さに比例すると言う点である(Tarno et al. 2011)。
これだけのことが確かめられれば、排出されるフラスを連続的に観察するだけで樹体内の彼らの行動はかなり明らかに出来る。メスと幼虫の掘削作業の交代などという現象もフラスの観察から明らかになった。
カシナガがマスアタックする樹を選ぶ場合、彼らができるだけ多数の子孫を残せるような樹が好適であるに違いない。多数の子孫の繁殖が可能かどうかは餌である酵母の量に依存する。ところで、上にも述べた通り、酵母はメスのカシナガにより孔道の壁に塗り付けられ、そこで繁茂し、幼虫の餌となる。従って、長い孔道ほど酵母の繁殖量も多くなり、多くの幼虫の繁殖が可能になる。ここで、酵母が繁殖出来るのは、タンニンや他のポリフェノールの量が比較的少ない辺材に限られる。従って、カシナガが孔道を掘り進めるのも、辺材部分に限られる樹種が多い*。こうして見ると、カシナガにとって好ましい宿主樹木がどのようなものかが見えて来る。それは、酵母の繁殖に好適な辺材の材積が多い樹と言うことになる。
それは、太い木で、しかも材積に占める辺材部分の比率が多い木と言うことになる。ミズナラやコナラの大径木が好まれ、しかもその地際部が集中的にか害されるのは当然のことなのだ。
(* : マテバシイやアラカシの場合は、孔道が心材まで達することが多い。恐らく、コナラやミズナラの場合と、心材成分の量や質に大きな違いがあると思われる)。
ナラ枯れのもう一つの主役である病原体、ナラ菌は酵母と共にカシナガのマイカンギアに潜んで孔道内に運ばれ、この孔道から周囲の材組織に広がる。それに対し、樹木側は防御のため、菌の感染部位周辺にポリフェノールなどの二次代謝産物を集積させる。この過程は、辺材組織が心材に移行する現象(心材化)に良く似ている。いわば、本来の辺材組織の中に、にわかに心材が形成されるような現象で、ナラ菌に感染した材の断面は異常な変色域が広がる(図4)。本来の心材がそうであるように、この変色域は水の通導機能を失っている。したがって、変色域の拡大は樹の萎凋をもたらし、最終的には枯死に至る。以上述べたように、ナラ枯れという森林流行病は複雑な生物の相互関係により生じている樹病で、未解明な問題が山積している。特に、カシナガの食餌源である酵母と病原菌の関係には不明な点が多い。現在、ナラ枯れと同様、Raffaelea 属の菌とカシナガのようなアンブロシアビートルの組み合わせで樹が枯れる病気が世界の各地で問題になっている。例えば、合衆国の南東部のフロリダやジョージアなどの諸州ではクスノキ科のアボガドなどの樹種が R. lauricola とアンブロシアビートルの一種 Xyleborus glabratus により枯死するローレルウィルトが問題化しているし、ポルトガルでは カシナガと同属の P. cylindrus が Raffaelea 属の一種を運んでコルク樫を枯らしている。さらに、お隣の韓国ではカシナガに近縁の P. koryoensis が Rafaelea 属の病原菌を運んで、ミズナラにごく近縁のモンゴリナラ を枯死させている。このように見て来ると、近年これらの病気が拡大している原因を探るためには、ナラ枯れに限らず、世界的に Raffaelea 属菌とアンブロシアビートルの組み合わせが引き起こしている流行病に共通の環境要因(誘因)をつきとめることが必要とされている。本来土着病的な病気であったナラ枯れがなんらかの誘因によって激害化しているとするなら、地球温暖化も誘因の一つとして考慮すべきかもしれない。(文献は略。太字と下線引用者)
※タンニンについて(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科天然物化学研究室HP)
種子を守るためのタンニン
渋柿を食べたことありますか。あの強烈な渋味のもとがタンニンです。柿は種子が未熟な間、多量のタンニンで守っています。しかし、種子が充分成長したら種子を遠くに運びたい。日の当たらない親の根本では子供は育ちません。だから熟柿になると人やカラスに食べてもらえるように軟らかくなり、渋味がなくなります。渋柿を風呂に一晩つけたり、焼酎(エタノール)や二酸化炭素で処理すると人工的に渋抜きすることができます。渋が無くなるのではなく、水に溶けなくなるために渋味を感じなくなります。これはいずれの処理でも嫌気的呼吸によりアセトアルデヒドができて、それがタンニンを重合させるために起こります。甘柿はもともとタンニンが少ない種類を人間が選抜したものです。
木材における細胞の死と防御物質としてのタンニン
クリは果実を食用にするので広く栽培されますが、その木材は非常に耐久性が強いことから建築土木資材としても重要なものです。その耐久性はタンニンを含んでいることによると言われています。タンニンにはカビなどを防ぐ効果があります。木材の細胞は樹が太くなるにつれ内側に取り残され、ついには樹皮からの栄養の供給がとだえて、すべて死んでしまいます。細胞は死ぬまぎわに最後の力をふりしぼり、大量のタンニンを作ります。大樹を支える樹の中心部はこうやってカビから守られます。タンニンがあると普通カビは生えませんが、シイタケ菌はタンニンを分解する能力を持っていて、木材のセルロースを栄養源として成長します。他のカビが利用できない資源をシイタケは独占できるのです。ちなみに、クリの渋皮のタンニンは樹皮や材のものとは全く違う構造をしており、柿のものと似ています。多くの植物が組織によって作り分けをしていますが,理由はまだ分かっていません。
※植物のポリフェノール 抗ウイルス性にも注目も(奈良県農業研究開発センター『奈良新聞』シリーズ「農を楽しむ」掲載、
2022年03月14日記事)
近年、食への健康志向が高まり、食品の機能性成分に関心が集まるようになっています。緑茶のカテキンやブルーベリーのアントシアニンというと、なじみがあるかもしれません。これらはすべてポリフェノールと呼ばれ、機能性研究が最もよく進められている植物の成分のひとつです。そこで今回は、ポリフェノールの種類や効果についてのお話です。※NHK2022年11月11日放送番組『チャコちゃんに叱られる』「ポリフェノールとは」内容紹介記事
ポリフェノールは、「たくさんの(poly)フェノール(phenol)」という意味で、フェノール基のついた化学構造をもつ成分を総称して名付けられたものです。フェノール基には有害な活性酸素を消去する働きがあるため、ポリフェノールのもつ強い抗酸化作用が機能性成分として注目されるようになったのです。さらに細かい化学構造の違いにより、抗菌作用や抗炎症作用をもつものなどもあります。そもそも植物がポリフェノールを作る理由は、それぞれが生育する環境下で紫外線などのストレスから身を守り生き抜くための生存戦略のひとつで、作られるポリフェノールも植物の種類によって様々です。ほとんどの植物がポリフェノールをもっており、自然界には8000種類以上あるといわれています。
代表的なものをいくつかご紹介しましょう。緑茶で有名なカテキンは殺菌作用があり、風邪予防に効果的といわれています。大豆に含まれるイソフラボンは、女性ホルモンと似た化学構造をもっています。そのため、更年期症状の緩和など女性にとってうれしい効果が期待されます。また、柿に含まれるタンニンはポリフェノールの中でも特に強い抗酸化作用があるといわれています。最近では、タンパク質と結合しやすいというタンニンの性質が新型コロナウイルスの不活性化に効果があるとの研究結果が発表され、その抗ウイルス性に注目が集まっています。……
ポリフェノールって何なの?→植物の苦味や渋味成分全般をひっくるめてポリフェノール
ティピーテントとは、アメリカの先住民が移動用の住居として使用していた「ティピー」を元に作られたテントです。市民の森のトイレはボッシュ林の四阿にバイオトイレがあるだけなので、市民の森保全クラブ・岩殿満喫クラブ共催でイベントを実施する際には仮設トイレを設置してきました。今回、鳥取さんの設計でティピーテントを作り、その中に簡易トイレを置くことにし、4日は整地、5日はテントの骨組みをたてました。
4月4日
4月6日
簡易トイレは21年12月に金子さん設計で作ったスタイロフォームのイベント用トイレハウス内においた木庭さんからいただいたものを使います。
4日・5日は他の作業も併行しておこないました。参加者は新井さん、江原さん、片桐さん、金子さん、木庭さん、木谷さん、鳥取さん、新倉さん、細川さん、丸山さん、渡部さんとHikizineです。
入山沼下の畑づくり
池の擁壁に板を入れて土留めにして、池から浚った泥を貯めます。
4月4日
池の生きものがカモやサギに食べ尽くされないようにいれていた魚礁用ヘチマロン(ポリエチレン系樹脂を植物のヘチマの乾燥繊維の様な立体網目形状に成型した製品⇒新光ナイロン株式会社サイト)を移動しました。
岩殿D地区の下段とA地区の田んぼの間の西向き斜面にクサボケが咲いています。ススキの両側に昨年よりも多く咲いていました。E地区上段との間の南向き斜面のクサボケの花はこれからです。斜面の草刈りの時期が影響しているのかもしれません。昨年、西向き斜面は12月29日に刈っています。
西向き斜面
青木ノ入※クサボケ(バラ科)『在来野草による緑化ハンドブック~身近な自然の植生修復』(朝倉書店、2020年)214頁生存年限:落葉低木生育期間:4~10月花期:3~4月生育地:日当たりの良い土手、野草地など。生育環境:日当たりと風通しの良い場所。日当たりの良い場所でなければ開花しない。刈り取り頻度が高くてもよく再生する。砂質の土壌を好むが、丈夫で特に土質を選ばずに育つ。
ワレモコウは入山沼下の管理地の処々に育っています。
A地区の池とB地区の下の田んぼとの間、冬にきれいに刈り取りました。みどりが鮮やかです。


※ワレモコウ(バラ科)『在来野草による緑化ハンドブック~身近な自然の植生修復』朝倉書店、2020年) 220頁生存年限:多年草生育期間:4~10月花期:7~9月生育地:野草地、土手など、時に群生する。ススキクラス標徴種初夏までの刈り取りであれば残った茎から再生・開花する。年間2回の刈り取りでも再生可能。
3月24日の岩殿B地区の上の池に続いて、今日はA地区下の池の泥浚い[どろさらい]を始めました。
東側の排水口を開いて、浚渫を始めました。
中程まで泥をあげたら、西側の狭くなっている場所に移動。
下の写真の部分は明日にします。
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