2021年04月
イヌシデメフクレフシ ソロメフクレダニというダニの一種によって芽が変形するえいで、頂芽の鱗片が肥大し、1つの芽が松かさ状に大きく膨らんだもの。芽の幅は28mm、長さ25mmで褐色になる。鱗片の外側は黄白色の長毛を密生した堅い皮殻となり、内側は柔組織が縦の方向に多数ひだ状に突出し、たがいにからみ合ったもので、その間に無数のダニが見られる。(『松江の花図鑑』から)
人工栽培に関してキンランの人工栽培はきわめて難しいことが知られているが、その理由の一つにキンランの菌根への依存性の高さが挙げられる。
園芸植物として供させるラン科植物の、菌根菌(ラン科に限ってはラン菌という言葉も習慣的に用いられる)はいわゆるリゾクトニアと総称される、落ち葉や倒木などを栄養源にして独立生活している腐生菌である例が多い。 ところがキンランが養分を依存している菌は腐生菌ではなく、樹木の根に外菌根を形成するイボタケ科、ベニタケ科(担子菌門)などの菌種である[2][3]。外菌根菌の多くは腐生能力を欠き、炭素源を共生相手の樹木から得、一方で樹木へは土中のミネラル等を供給し共生している。キンランはその共生系に入り込み、養分を収奪し生育している。
ラン科植物は多かれ少なかれ菌類から炭素源(糖分など)や窒素源(アミノ酸など)を含め、さまざまな栄養分を菌根菌に依存している[4]。菌への依存度はランの種類によって異なり、成株になれば菌に頼らなくても生きていける種類(独立栄養性種=栽培できる有葉ラン)から、生涯を通じてほとんどすべての栄養分を菌に依存する種類(菌従属栄養性種=一般に‘腐生ラン’と総称される)までさまざまな段階がある。本種の菌依存度は独立栄養植物と菌従属栄養植物の中間(混合栄養性植物)で、坂本らの調査[5]によれば本種は炭素源の34~43%、窒素源の約49%を菌から供給されており、同属のギンランでは炭素源の48~59%、窒素源の90%以上と、さらに高い依存度を示している。
このような性質から、キンラン属は菌類との共生関係が乱された場合、ただちに枯死することは無いが長期的に生育することは困難になる。そのため、自生地からキンランのみを掘って移植しても5年程度で枯死してしまう。外生菌根菌と菌根共生するラン科植物は多くあり、キンランと同様に里山に生育するオオバノトンボソウ(ノヤマトンボソウ)も同様の性質を持つ[6]。
理論上は菌根性樹木・菌根菌・キンランの三者共生系を構築すれば栽培が可能である。実際Yagame and Yamato(2013)[7] は、キンランからイボタケ科の菌根菌を分離培養後、外生菌根性の樹種であるコナラの根に分離株を接種し菌根を形成させ、そこへ無菌培養条件下で種子発芽から苗まで育てたキンランを寄せ植えし、30ヶ月育成させることに成功している。この実験では、植え付けたキンランの多くの苗が地上部を形成せず、根のみを伸長させ生育する様子が観察されている。この現象から、キンランが高い菌従属栄養性を有することがわかる。しかし、このキンラン・菌根菌(イボタケ科)・樹木(コナラ)の3者共生系の構築は①菌根菌の分離・培養、②菌根菌の樹木への接種、③安定した共生系の維持(ほかの菌根菌のコンタミネーションの防止)といった技術上解決しなければならない問題点が多く、一般家庭で行うことは困難である。自然環境中に外菌根菌は6000種程度存在し[8]、キンランが生育する環境下にも多様な外生菌根菌が共存していると考えられる。その中でキンランに養分を供給する菌種は限られているため、単純にキンランと樹木を寄せ植えにしても、その樹木にキンランと共生関係を成立させうる外菌根菌が共生していなければ、キンランを生育させることはできない。
※「里山のランラン[前編]キンラン・ギンラン」(『サカタのタネ園芸通信』連載の小杉波留夫さん『東アジア植物記』の2017年4月18日記事)
※長谷川啓一・上野裕介・大城温・井上隆司・瀧本真理・光谷友樹・遊川知久「キンラン属 3 種の生育環境と果実食害率:保全に向けての課題」(『保全生態学研究』22巻2号、2017年)
要旨:キンラン属は、我が国の里山地域を代表する植物種群であり、菌根菌との共生関係を持つ部分的菌従属栄養植物である。全国的に、里山林の荒廃や樹林の減少に伴って生育地が減少しつつある。本研究では、キンラン、ギンラン、ササバギンランの 3 種を対象に、(1)樹林管理の有無とキンラン属の分布にどのような関係があるか、(2)キンラン属が生育するためにどのような環境整備が必要か、(3)ハモグリバエ類の食害はどの程度生じているのか、を明らかにし、今後、キンラン属の保全のためにどのような方策が必要かを検討した。……
キンラン属の生育地保全のための樹林管理手法
本研究の結果、3 種とも樹林管理を行っている区域に生育地が集中し、同所的に出現していた一方で、種ごとの生育環境にはほとんど違いが見られなかった(図 3)。このことは、保全上、2 つの重要な示唆を含んでいる。第 1 に、キンラン属の生育地の保全には、樹林管理がきわめて重要であること、第 2 に、管理手法を種ごとに検討することは必須ではなく、共通の対策で 3 種の共存が可能なことである。……一方、本研究では、5 月の開花期の環境条件を基に検討を行っているが、下草刈りの時期や実施内容については、キンラン属植物の年間の生活史を踏まえて検討する必要がある。通常の樹林管理では、草本が繁茂する初夏~秋に雑草の繁茂抑制を目的とした下草刈りが行われるが(例えば、川崎市(2010))、この時期はキンラン属の果実の成長・成熟期にあたり、草刈りにより多くの株が消失してしまう危険性が高い。また、初夏~秋は翌年の開花期に向けて個体に栄養を蓄える時期であり、十分な光を受けて光合成を行える環境が重要と考えられる。そのためキンラン属の生育エリアでは、キンラン属のフェノロジーにあわせ、4 ~ 5 月の花期に生育位置を確認し、初夏~秋には光環境の種間競争を手助けするための生育箇所周辺の部分的な草刈等が必要である。その上で、種子散布後の 1 ~ 2 月に全面的な樹林管理を行い、生育エリア全体としてアズマネザサの繁茂抑制を行う等、持続的に明るい林床環境を維持するための対応が必要であろう。……
キンラン属3種の環境ごとの生育株数の違いと樹林管理
生育株数を目的変数とした GLMM の結果から、本調査地のように成立年代や地質、気候、植生的によく似た樹林であっても、微環境の違いによって生育株数が異なることがわかった。すなわち、キンランとギンランは樹冠が開け、草本被度の小さい、明るい林床環境ほど株数が多くなる傾向があったのに対し、ササバギンランは植生や光環境に対する増減傾向は検出されなかった(表2)。他方、ギンランとササバギンランは、土壌硬度が高いほど(山中式土壌硬度計の目盛りで 15 mm 以上)、株数が減少する傾向が確認されたのに対し、キンランは土壌硬度よりもリター厚が厚くなるほど株数が少なくなる傾向が確認された(表 1)。これらのことから、キンラン属 3 種の生育株数を増加させるためには、光条件やリター厚、高木層や草本類との相互作用(例:光や空間をめぐる競争)がキンラン属の生育に適した状態に近づくように、枝打ちや下草刈り、落ち葉かき等の樹林の人為的管理が重要であることが示唆された。その際、踏みつけなどによって土壌硬度が高まらないよう配慮が必要である。
生育地点近くの樹種についても、キンランとギンランでは違いが見られた。キンランは、落葉・常緑問わずにブナ科樹木の近くで生育株数が多く、ギンランは、アカマツまたはクヌギやコナラ等の落葉性のブナ科樹木の近くほど生育株数が多いことがわかった(表 2)。この理由として、樹種ごとの共生する菌種の違いが考えられる。土壌中の菌根菌の把握は、播種試験法(辻田・遊川 2008)を用いることで局所的な菌根菌の種や分布を把握可能であるが、広域的に把握する手法はない。他方、分子生物学的手法の急速な発展により、これら土壌中の菌とキンラン属との関係性も明らかにされつつある(例:Sakamoto et al. 2016)。さらに近年、土壌中の菌類の調査技術が急速に発達しており(谷口 2011)、これまでブラックボックスであった土壌中の菌根菌と外生菌根性の樹木、キンラン属の 3 者の相互関係の解明が期待されている。将来的には、それらの成果を活用することで、地上部の樹種の違いだけでなく、菌根菌の分布も考慮した保全手法の開発につながるだろう。
3種間での袋がけの効果とハモグリバエ類の影響の違い(略)
※【コラム】スマート農業 研究第一人者に聞く「スマート農業最前線」(SMART AGRI
農業とITの未来メディア)
●「菌根菌」とタッグを組む新しい農法とは? 〜理化学研究所 市橋泰範氏 前編
日本の農業に貢献するための微生物研究施設
植物と微生物の関係性がやっと見え始めた
●「アーバスキュラー菌根菌」とは何者か?〜理化学研究所 市橋泰範氏 中編
無機成分の土壌診断だけでは通用しなくなっている
リン酸を植物に“供給”してくれる菌根菌という存在
日本は貴重なリン肥料を無駄に使いすぎている
●「フィールドアグリオミクス」により微生物と共生する農業へ 〜理化学研究所 市橋泰範氏 後編
土壌、植物、微生物を解析する「フィールドアグリオミクス」とは
世界の土壌は病んでいる。では、日本は?
微生物と共生する、21世紀型の緑の革命を
マジックスタートは、リコイルロープを一定の位置までゆっくり引き、戻すだけでエンジンがかかる、始動がとてもラクな新リコイル方式です。Rスタートは、従来のスタータにスプリングの力を利用するリコイル方式です。スプリングがアシストするので、引き力が軽くエンジン始動がスムーズにできます。これまで刈払機をお使いいただいている方にお奨めです。【丸山製作所刈払機カタログから】
鷲巣さんは落葉掃き下ろし作業の続き、鳥取さんは物置の屋根の点検をしました。






午後は別用があり、午後7時過ぎに再訪すると、須田さんが午後、果樹にプレートを付けていました。散策者が何の樹だろうと咲いている花の写真をとったり眺めたりしている光景をよくみるので、重宝することでしょう。写真は明日、掲載します。今晩はイタチが出没していました。センサーカメラを設置してモニタリングしたら面白そうですね。