岩殿満喫クラブ 岩殿 Day by Day

市民の森保全クラブ Think Holistically, Conduct Eco-friendly Actions Locally

2020年01月

金曜日の活動を定例化 1月31日

1月26日の市民の森保全クラブ新年会で、今季、追加活動日としていた金曜日を今後は定例活動日とすることにして、毎週、活動することにしました。当面は9時半作業開始とします。今日は初回で、参加者は新井さん、草間さん、澤田さん、細川さん、Hikizineの5名でした。

新井さん、草間さん、岩殿D地区の耕作放棄地のヤナギやアカメガシワを伐採
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細川さん、岩殿C地区奥の水たまり、泥濘(ぬかるみ)の排水対策
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澤田さん、新エリア南向き斜面のアズマネザサ刈り
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29日、30日に比べて風が強く気温も低いので、作業は大変だなと思いながら家を出ましたが、現場は地形的に風が遮られているため、日陰の寒さ以外は気になりませんでした。ドラム缶に火を燃すことができたので、細川さんが持ってきてくれた植木鉢を利用したピザ釜でピザを焼きおいしく食べました。

 鳩山アメダス  1月31日(1月30日)
  日最高気温11.2℃(17.8℃)
  日最低気温-2.0℃(3.8℃)
  日積算降水量0.0mm(0.0mm)
  日最大風速8.8m/s(4.1m/s)
  日積算日照時間9.0時(8.8時)

ブルーベリー園の土壌pHチェック 1月30日

ちご沢ブルーベリー園のpHを測ってみました。値は5.2~5.6と弱酸性でした。

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エザワフルーツランドの江澤貞雄さんの「ブルーベリーのど根性栽培」(日本プルーベリー協会HP)によれば、「ハイブッシュ種のpHは4.3~4.8が定説」とのことなので酸度調整が必要なのかもしれません。ネットで調べると、ハイブッシュ種4.5に対してラビットアイ種は5.0、また、ラビットアイ種はpH5.8前後でも大丈夫というのもあります。

青木ノ入の下の畑のブルーベリーの株元のpHは6.2~6.4なので、pHを下げる土壌改良が必要です。
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土壌診断サンプル採取 1月30日

29日、東松山生産者直売組合の生産者向け農業説明会がJA埼玉中央野本支店で開催されました。カネコ種苗「春・夏野菜の栽培について」、東松山農林振興センター「SーGAPについて」、JA埼玉中央担い手サポートセンター「土壌診断について」がありました。土壌診断に付いては、サンプルを持ち込めば分析するとのことなので、本日、ブルーベリー園と毛塚一反田の土を採取しました。
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雨後の滞水状態(2) 1月29日

青木ノ入の畑は果樹を植えているので、水はけをよくすることが課題です。先ずは排水用の溝掘りでしょうか。
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雨後の滞水状態(1) 1月29日

鳩山のアメダス記録(tenki.jpから)によれば、この3日間の最高気温、最低気温、日降水量は以下の通りです。
  27日(月曜日) 5.9度、-0.6度、6.0ミリ
  28日(火曜日) 8.2度、0.5度、36.5ミリ
  29日(水曜日) 19.7度、8.1度、25.0ミリ
27日の夜から29日の朝までにまとまった雨が降ったので、管理している区画の滞水状態がわかりやすくなりました。岩殿D、I、H、G、F地区では長年の耕作放棄で田んぼの畦が消滅して水路との差がなくなってしまっていることを再確認しました。

岩殿I地区
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岩殿H地区
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市民の森作業道
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1箇所だけ水たまりがありました。

シイタケのライフサイクル 1月29日

前記事に刺激されて、シイタケのライフサイクルについて書かれているものを読んでみました。先ず、森喜美男監修・日本きのこ研究所編『最新 シイタケのつくり方』(農山漁村文化協会、1992年)の第Ⅱ章上手に発生させるための基礎知識第2節シイタケの生活史(26~28頁)です。

シイタケの生活史
(1)胞子と胞子の発芽
 シイタケの一生は、キノコ(子実体)のひだの部分につくられる胞子(担子胞子)から始まる。胞子は植物でいえば花粉や胚のう、動物でいえば精子や卵子に相当し、種子ではない。胞子は、楕円桂、ゴマ粒のような形をしており、大きさは幅が3~5ミクロン、長さが6~8ミクロン(1ミクロンは1ミリの千分の1)くらいである。
 この胞子は厚い膜で覆われ、外からの刺激に保護されているから、乾燥した温度の低い場所に保存すると3ヵ月以上は生きている。しかし、70~80度の高温にあうと、4~5分で発芽力が弱くなるし、直射日光にさらされると、2~3分でほとんど発芽しなくなる。それが、適当な水分のある所に落ち、生育に適した温度が与えられると発芽して菌糸になる。
シイタケの生活環

(2)菌糸の接合
 胞子から発芽した菌糸は、ところどころ膜(隔膜という)で仕切られた細長い細胞からなり、1つの細胞に1個の細胞核をもつ。そのため、この菌糸を1核菌糸という(1次菌糸ともいう)。1核菌糸は、適当な水分と栄養と温度があれば分裂して増殖するが、通常はキノコをつくらない。キノコをつくるためには、「性」の異なった他の1核菌糸と接合、すなわち交配されなければならない。
 接合した菌糸は、両方の1核菌糸からそれぞれ核を受け取り、1細胞に2つの核をもつ状態になる。そのため、この菌糸を2核菌糸という(2次菌糸ともいう)。
 2核菌糸は細胞分裂によって増殖するが、2つの核は融合することなく特殊な方法で分裂していくので(図Ⅱ-3)、細胞と細胞の境にふくらみ(クランプコネクション、または、かすがい状突起という)ができる(図Ⅱ-3)。そのために顕微鏡で見ると、1核菌糸とは容易に区別できる。
各部呼び方・2核菌糸分裂模式図

(3)菌糸の増殖とキノコの形成
 2核菌糸は養分をとりながら増殖するが、この期間を栄養成長という。やがて、綿の繊維のようにばらばらに伸びていた菌糸は集合し、方向性をもって生育し菌糸の塊になる。これがキノコのもと(原基)である。このようにキノコになろうとして分化をはじめた菌糸を、3次菌糸とよぶこともある。そして、キノコになるために菌糸が集まってきてそれが生育し、完全なキノコの生育する期間を、栄養成長にたいして生殖成長とよぶ。
 菌糸が集まってできたキノコの原基は、適当な栄養と水分が与えられ、さらには低温刺激を受けると生育してキノコ(子実体)になる。若いキノコのひだの部分では、それまで2核のまま細胞分裂していた核は担子器の中で合体して2倍性核となる。それは、ただちに特殊な分裂(成熟分裂)を行って4個の半数性核になり、それらは1個ずつ若い胞子の中に移動する。キノコの生育にしたがって胞子も成熟し、再び胞子を飛散させるようになる。これがシイタケの一生である。

椎茸の生活と性質(宮さんのHP『あれこれ それなりクラブ』から)
(3)シイタケの一生
 笠の裏のヒダにつくられた胞子は、キノコが成熟すると飛び散り、風によって遠くまで運ばれる。シイタケはこのように、胞子によって繁殖する。木口や樹皮の割れ日に落ちた胞子は、適当な温度と湿度があると発芽して菌糸になる。
 胞子はかなり厚い膜に覆われ保護されていて、乾燥した温度の低い所に保存すると、3ヵ月以上も生きている。しかし70から80度の高温に会うと、4、5分で発芽力が弱くなる。また直射日光に曝されると、2、3分で発芽しなくなる。シイタケの胞子が風に飛ばされて適当な木に到着し、発芽して菌糸を伸ばすのはよほど運が良くなければならない。
 胞子から発芽した菌糸を顕微鏡でみると、ところどころ横に膜(隔膜)がある細長い枝分かれした管の様である。膜と膜の間が菌糸の細胞である。この細胞も高等植物と同じように、1個の核を持っている。この菌糸のことを一核菌糸という。しかし、その核は半数の染色体組しか持っていない。
 シイタケの場合、一核菌糸(一次菌糸)は、木材の中で増殖してもキノコを作らない。キノコを作るには、「性」の異なる他の一核菌糸と接合し、二核菌糸にならなければならない。この菌糸(二次菌糸)は細胞の中に、接合した両方の核を二つ持っている。
 二核菌糸は特別な分裂をする。細胞と細胞の間にふくらみ(クランプ・コネクション、またはかすがい状突起)が出来る。これにより、一核菌糸とはっきり区別することができる。
 二核菌糸は養分をとりながら増殖するが、やがて、綿の繊維のようにばらばらに伸びていた菌糸は集り方向性をもって生育する様になる。これがキノコのもと(原基)になるのである。このようにキノコになろうとして分化をはじめた菌糸を、三次菌糸と呼ぶこともある。
 キノコの原基は適当な条件があたえられると、生育してキノコになる。若いキノコのヒダでは、それまで二核のまま分裂した核は担子器の中で合体して二倍体核になり、すぐ特殊の分裂を2回繰り返し(成熟分裂)、4個の半数性の核を作る。
 それらは1つずつ若い胞子の中を移動して、キノコが生育するにつれて胞子も成熟し、飛び散るようになるのである。
椎茸の生活と性質

(4)シイタケの性
 草や木は雄ずいの花粉が雌ずいの柱頭について受精が行なわれる。これは有性生殖というが、シイタケも性の異なる一核菌糸が接合しなければ、キノコが出来る二核菌糸にならない、動物や高等植物の様に有性生殖をしているのである。
 一核菌糸すなわち胞子の性はどの様にして決まるのであろうか。1個のシイタケから沢山の胞子を取り、寒天培地に蒔くと2、3日で発芽する。これを単胞子分離といっている。
発芽した胞子を顕微鏡を使って、1個ずつ試験管の寒天培地に移す。これを単胞子分離と言っている。発芽した胞子は生育を続けて一核菌糸になる。
 一核菌糸のいくつかを、一対ずつの組になるよう組合せて一本の試験管に接種する。これは柱頭に花粉をつけてやるのと同じ交配である。しかし、組合せによってクランプ・コネクションが出来るものと、出来ない物がある。クランプ・ヨネクションは接合が行なわれ二核菌糸になったことを示している。
 このようにして調べてみると、一核菌糸を4つのグループに分けることが出来る。接合が行われるのは一定のグループ間だけである。
つまり1個のシイタケにつくられる胞子はAとBの二つの「性因子(不和合性因子とをもち、AB2つの因子の組合せによって4つのグループに分けられる。接合はAB二因子が異なるグループ間で起きるのである。この関係を「四極性」とよんで、シイタケでは昭和10年[1935年]に西門義一博士によって発見されたものである。
 ところが、系統の違ったシイタケから得た一核菌糸間で交配を行なうと、どの組合せもみな二核菌糸になる。系統の違うシイタケからの一核菌糸では、ABの性因子も違っているからである。
これらの発見によって、シイタケも農作物や草花と同じように、品種間の交配によって品種改良が出来るようになり、優良品種を種菌として原木に植える人工栽培が全国的に普及した。

キノコの話(井上均さんのHP『私編 雑科学ノート』から)
キノコの生活環
(1)胞子→(2)胞子の発芽→(3)菌糸の成長→(4)別種の菌糸と遭遇→(5)菌糸の接合→(6)2核細胞の成長→(7)キノコの形成→(8)胞子の基になる細胞の形成→(9)2つの核の融合→(10)減数分裂→(11)胞子の形成

キノコの生活環

 それでは、赤丸の番号順に見て行きましょう。
(1)胞子:まずはこれです。種類によって大きさや形はいろいろですが、だいたい5~10μm前後のものが多いようです。

(2)胞子の発芽:胞子から菌糸が伸びます。菌糸は細長い細胞が一列につながって糸状になったものです。

(3)菌糸の成長:菌糸の細胞が分裂を繰り返して大きな集団を作りますが、実はこれには性別があります。見た目には区別はつきませんが遺伝子レベルでは違っており、普通の動植物と同じようなオス、メス2種類のものや、4種類の性別を持っているものなどがあります。細胞分裂を繰り返してできた塊は、もちろん同じ性別です。

(4)別種の菌糸と遭遇:ある程度成長した段階で違う性別の菌糸が出会うと、そこで接合が起こります(4種類の性別を持つものでは、組み合わせによっては接合できないこともあります)。

(5)菌糸の接合:2種類の菌糸が接合すると、核を2個持った新しい細胞ができます。2核細胞です。核が2個あると聞くと妙な感じがするかもしれませんが、それは普通の動植物の感覚での話。細胞間の仕切り(隔壁)に孔が開いていて中身が移動したり、そもそも隔壁すらない多核体があったりする菌類の世界ですから、核が2個あるくらいは、別に不思議でもなんでもありません。

(6)2核細胞の成長:今度は接合でできた2核細胞が普通に分裂して、どんどん増殖して行きます。

(7)キノコの形成:2核細胞の菌糸が大きく成長し、やがてキノコ(子実体)を作ります。ですから、キノコの体は2核細胞でできていることになります。シイタケの裏側のヒダも、サルノコシカケの硬い殻も、全て2核細胞から成る菌糸が集まって作られたものなのです。

(8)胞子の基になる細胞の形成:キノコの特定の部分に、胞子を作る器官が準備され始めます。子嚢菌ならば子嚢、担子菌ならば担子器の原型です。ここに胞子の基になる細胞ができるのですが、当然ながらこの細胞も初めは2つの核を持っています。

(9)2つの核の融合:ずっとペアで来た2つの核が、ここで遂に一つになります。核の融合です。この段階で2種類の遺伝子が初めて本格的に混じり合うのです。

(10)減数分裂:いよいよ胞子を作る準備が整いました。融合した核を持つ細胞が分裂します。
 ここで、生物の時間に習った細胞分裂の話を思い出してください。普通の細胞分裂(体細胞分裂)では、遺伝情報を持った染色体がそっくりそのまま複製されて、新しくできた2個の細胞に分配されます。元と全く同じ細胞が2個できるのです。ところが精子や卵子などの生殖細胞ができる時には染色体が複製されませんから、染色体の数が半分の細胞ができます。これが減数分裂です(厳密に言うと、減数分裂では2回の分裂が連続して起こり、そのうちの1回で染色体の複製が起こりません。その結果、減数分裂を終えると、半数の染色体を持った生殖細胞が4個できます)。この半数の染色体を持った生殖細胞どうしが受精によって一つになって、また元の数の染色体を持った普通の細胞が作られるのです。
 それではキノコの場合はどうかと言うと、実は元の胞子や菌糸の時代が染色体数が半分の状態、と考えられます。普通の動植物では、染色体数が半分になるのは生殖細胞の間だけですが、キノコの場合は、その一世代の大部分を、染色体数が半分の状態で過ごすのです。(5)~(8)の間は核が2個ですから、染色体の数だけは足りていますが、やはり本来の状態ではありません。核が融合する(9)の段階になって初めて本来の(と言っても、どっちが本来の姿なのかよくわかりませんが)数の染色体を持つ核ができることになるのです。ところがこれがすぐに減数分裂してしまいますから、染色体数はまた半分に戻ります。このようにキノコの世界では、染色体がフルに揃うのは、核が融合してから減数分裂するまでのほんのわずかの間だけなのです。(この点ではコケ類とよく似ていますね)

(11)胞子の形成:減数分裂で作られた染色体数が半分の細胞が、やがて胞子になります。この胞子の染色体には、(5)で接合した2種類の菌糸からの染色体、つまり遺伝子が混ざっており、オス、メスの区別もあります。途中の過程は違いますが、普通の動植物の有性生殖と同じような結果になるわけです。

 以上が有性生殖の典型的なパターンですが、この他に、同じ細胞を胞子として切り離してどんどん増えて行く無性生殖もあります。先に出て来た不完全菌などは専ら無性生殖ですし、子嚢菌などでも、状況に応じて両方を使い分ける種類が多く見られます。ただし、人目を引くような大きなキノコを作る場合は、ほとんどが図5のような増え方をすると思ってよいでしょう。
※きのこのライフサイクル(東京地裁民事29部「育成者権侵害差止等請求事件」裁判資料から)
きのこのライフサイクル
キノコのライフサイクル1
きのこのライフサイクルは、図に示されるように、「生殖生長世代」と「栄養生長世代」とからなる。
「生殖生長世代」は、「担子菌」から「核融合」、「減数分裂1回目」、「減数分裂2回目」、「胞子形成」、「成熟子実体」に至るサイクルであり、「栄養生長世代」は、「胞子」から「胞子発芽」、「1次菌糸」、「接合:交配」、「クランプ形成」、「2次菌糸」、「菌糸集合体」、「原基形成」、「子実体」に至るサイクルである。

ナメコ栽培の問題点
ナメコでは2核菌糸が1核菌糸に戻る「脱2核化」現象がある。
キノコのライフサイクル2


小学校教科書「しいたけのさいばい」(1961年) 1月28日

1月26日にキノコの駒打ちをしました。シイタケ、ナメコ、ヒラタケの3種ですが、シイタケ、ナメコは森産業株式会社の種駒です。ナメコの種のパッケージには、「1942年、森喜作博士が世界で初めて種駒によるしいたけの人工栽培を発明したことで、今日、世界中で多くのきのこが食卓に並ぶようになりました。きのこを通じて健康の輪を世界に広げるという理念と情熱は、当社の製品作りに活かされています。」とあります。
ナメコ種駒パッケージ

日本きのこ研究所のサイトに森産業の創業者、森喜作さんを顕彰する「森喜作顕彰会」があって、森博士の「年譜」とともに小学校国語教科書(大日本図書株式会社、1961年)から「しいたけのさいばい」が掲載されていました。

しいたけのさいばい
1
 1933年のこと、大分県のしいたけさいばい地、阿蘇山の西ふもとにある山村のできごとである。この辺の農家は田畑に乏しいので、広葉樹・針葉樹の森林を利用して、炭焼きや、しいたけさいばいを副業にして、かろうじてくらしをたてていた。
 すぎ林の木立を通して朝日がきらきら光を投げている下に、1万本に近い、長さ1メートルほどのまるたぼうが組みならべてあった。その前に、みすぼらしい身なりのひとりの農夫が、手を合わせて拝みながらつびやいていた。
「なばよ出てくれ。おまえが出んば、おれが村から出て行かんばならんでな。」
 このいのりをふと聞きつけて、じっと見つめている大学生が会った。森喜作さんである。森さんは、農村経済の実態調査のためこの部落をおとずれ、海抜5、6百メートルの所で、リュックサックをおろした。額のあせをぬぐって、ふと林の中に目を移したとき、この情景を見たのであった。
 森さんは、ふしぎに思って農夫に事情をたずねた。
「しいたけのさいばい」(小学校教科書)memorial_002

2
 徳川時代の初め、九州の人、炭焼きげんべえが、炭材として切ったならの木にたくさんのいしたけがはえたのを見て、人工さいばいを思いついた。ならやくぬぎのまるたの表皮になたできざみ目を付け、数千本もならべてほうっておくのである。このまるたをほだという。すると、どこからともなく風に乗って飛んで来たしいたけの胞子がほだのきざみ目に付いて、2、3年もするとしいたけが出て来る。
 ところでほだ材は、直径5センチメートルから15センチメートルほどのならやくぬぎを、長さ1メートルに切ったまるたである。これを、そのままかまに入れて焼くと木炭になる。そこで、原木を焼いて木炭にするか、ほだにしてしいたけをさいばいするか、どっちがもうかるかが村民の頭をいためるところだ。原木1石からは木炭2俵半が焼ける。ねだんは木炭1俵が、ほししいたけにして380グラムくらいだ。ほだ材にして約1キログラム以上のしたけが採れればいいわけだ。しかし、木炭とちがって、ほだ材は数年たたないとしいたけが採れないから、資金をねかさなくてはならない。おまえけに、運は風にまかせろという、いわば危険な「かけ」である。
 実際には、原木1石から7.5キログラムのほししいたけが採れることがある。そのときは大もうけができるけれど、ほだに種が付かなかったらたいへんである。貧しい農夫は山のような借金で、税金はもちろん、米を買う金さえ無いようになる。村をにげ出し、一家がばらばらになるというような悲げきが起こるかもしれない。農夫がいのっていたのは、こうしたことがあるからであった。
 森さんはこれにむねをうたれた。一生をしいたけと共に生きようと決心した。そして、このような投機的な方法でなく、確実に収かくできる道を考え始めた。それが農民の貧しさを無くす、一つの方法と考えたからである。
 以来十年間、森さんは研究に熱中した。そして1943年、ついにその望みを達した。それはたねごまの製造出会った。たねごまをほだに打ちこみさえすれば、確実に、原木1石から5、6キログラム以上のほししいたけが採れるのである。

3
 では、たねごまとはなんであろうか。どうして作るのだろうか。
 にわか雨に会った小人が、あわててきのこの下に飛びこんで雨宿りをしているかわいらしいまん画がある。全く、きのこは太った雨がさのようだ。その太いえを持ってひっくり返してみると、厚いかさのうらにびらびらしたひだが、えを中心に、放射状にびっしりとならんでいる。そのおくにきのこの命の精がひそんでいる。しいたけの場合も同じである。そこには胞子という一個ずつの細胞がいく百万も育ち、やがて地上に子孫を残す種として、風に乗る日を待っている。
 開ききったしいたけのかさを軽くたたくと、目には見えない胞子が落ちる。これをシャーレに受け、かんてんで培養すると糸状にのびる。しかし、この胞子にはおすとめすがあって、かたほうだけではしいたけを作らない。多くの胞子のなかで、同性ははなれ、異性が引き合って結合する。この結合がなければしいたけははえない。だから、ほだにしいたけがはえるためには、おすとめすの二つの胞子が同じ場所に付かなくてはならない。ますますぐうぜんを待つことになる。
 森さんはこの結合した胞子をたくさん作り、その中にしょうぎのこまに似たくさび形のこまを入れ、そこに胞子を移した。これがたねごまである。だから、たねごまをほだに打ちこめば、必ずそこからしいたけがはえるわけだ。
 初め、種はおがくずに付けた。しかし、だれも相手にしてくれない。ほだにあなをあけ、いちいちおがくずをおしこむ手数をかけるのがいやなのだ。たねごまにすると、なた一丁でほだに切り口を付け、くさびを打ちこめばいいし、ふたの必要もない。これなら飛びつく。
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4
 1946年から、農林省はしいたけ増産5か年計画をたてた。その結果、1952年には、ほししいたけ2700トンを生産し、うち、1500トンを輸出し、売り上げは20億円に達した。
 しいたけは栄養素を多分にふくみ、特に保存のきく点は貴重である。むかしから、しいたけは日本食の栄養を補い、国民の保健に大きな役わりを果してきた。そして、このたねごまによるさいばいは、いく十万人の山村の貧しい農民に有利な副業を与えているのである。(101~107頁、ルビ省略)

※この国語教科書は小学校高学年用(6年?)と思われますが、胞子の発芽以降の説明が誤解されそうなので、森喜美男監修・日本きのこ研究所編『最新 シイタケのつくり方』(農山漁村文化協会、1992年)27頁掲載の図「シイタケの生活環」を付けておきます。→詳細は「シイタケのライフサイクル」を参照してください。
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一丁58円(外税)の豆腐 1月27日

草加市のマルエツ松原店で買った豆腐です。

豆腐日和ひより もめん
毎日美味しい豆腐

一丁58円(外税)の豆腐 → 19.3円(100グラムあたり)
名称:もめん豆腐
原材料名:丸大豆(カナダ、アメリカ)(遺伝子組換えでない)
添加剤:凝固剤(塩化マグネシウム化合物〈にがり〉)
内容量:300グラム
消費期限:20.02.02
使用上の注意:開封後は消費期限にかかわらずお早めにお召し上がりください。
保存方法:要冷蔵(10℃以下)
製造者:株式会社三和豆水庵
 茨城県古河市尾崎2647-1
お客様相談室:℡0120-59-30…
 受付時間:9:00~17:00(土・日・祝日・年末年始を除く)
プラ:フィルム・容器

栄養成分表示(100グラム当たり)
 エネルギー 80kcal
 たんぱく質 9.1g
 脂質 3.6g
 炭水化物 2.9g
 食塩相当量 0g

男前豆腐とジョニーを巡る経緯(←Wikipedia「三和豆水庵」から)

キノコの駒打ち実施(2) 1月26日

駒打ちしたホダ木を仮伏せし、カヤ類とワラビ刈草をかけました。明日は降雪の天気予報が出ているので、「駒打ちしたら散水」はクリアできそうです。
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夜は北坂戸駅前の中国料理店龍門で市民の森保全クラブの新年会を9名参加で実施しました。
新メニューにあった豆腐の料理は「百页豆腐(バイイエ豆腐)」を使ったもののようです(横山勉さんの「中国豆腐事情と腐乳」による)。→百頁豆腐干豆腐豆腐干絲(豆腐カンス)など検索してみて下さい。


キノコの駒打ち実施(1) 1月26日

キノコの原木栽培用にシイタケ(1000駒、コナラ29本)、ナメコ(400駒、サクラ10本)、ヒラタケ(400駒、ヤナギ19本、シデ2本)の駒打ちをしました。今年度は例年のイベントでの実施は見送り、芦田さん、新井さん、金子さん、草間さん、澤田さん、細川さん、鷲巣さん、渡部さん、Hikizineの市民の森保全クラブ会員9名と大東大学生サークルPlusの小野さんと佐川さんで取組みました。
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ヒラタケは初めての試みで、岩殿I地区で伐ったヤナギも運んで、追加して使いました。
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落ち葉の焼却 1月26日

市民の森保全クラブ新エリアで1月7日に裾刈りして掃き下ろした落ち葉を焼却しました。岩殿C地区との境目の水路を埋めているものは湿気っているので、まず水路から出して畑の上で乾燥させることから始めないと燃せないようです。
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一丁98円(外税)の豆腐 1月25日

鶴ヶ島市の関越道鶴ヶ島インター脇にある新鮮食材市場ビッグマーケット鶴ヶ島店で買った豆腐です。
新鮮食材市場ビッグマーケット鶴ヶ島店」は、本庄市にある鮮魚専門店「本庄鮮魚」が運営する、青果・鮮魚・精肉の「生鮮三品」のそれぞれの専門店が一堂に会した店です。

山形県産大豆
もめん

一丁98円(外税)の豆腐 → 28.0円(100グラムあたり)
名称:もめん豆腐
原材料名:大豆(山形県産)(遺伝子組み換えでない)
     凝固剤(塩化マグネシウム〈にがり〉)
     消泡剤(レシチン〈大豆由来〉、グリセリン脂肪酸エステル、炭酸マグネシウム)
内容量:350グラム
消費期限:20.01.25
 ※消費期限は未開封の状態での期限です。開封後はお早めにお召し上がり下さい。
保存方法:要冷蔵(1℃~10℃)
製造者:ヤシマ食品株式会社
 横浜市西区戸部町6の212
製造所:神奈川県藤沢市遠藤2005の18
℡0120-12-52…(無料)
 受付時間:9:00~18:00(日曜・祝日・年末年始を除く)
プラ:フィルム・容器

栄養成分表示(1パック350グラム当たり)[100g当たり]
 エネルギー 294kcal[84kcal]
 たんぱく質 26.3g[7.5g]
 脂質 16.8g[4.8g]
 炭水化物 9.5g[2.7g]
 食塩相当量 0.09g[0.026g]
サンプル品分析による推定値
この食品のアレルギー物質(特定原材料等) 大豆

刈笹の焼却終わる 1月25日

1月22日の続きで、岩殿B地区上段の刈笹を燃しました。
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上段にあったものはすべて燃し終わりました。

仮伏せ場の整備 1月24日

市民の森保全クラブ追加作業日です。26日のキノコの駒打ちに向けて、作業をする物置前の区画とホダ木の仮伏せをする岩殿C地区の奥の段周辺の整備をしました。参加者は芦田さん、澤田さん、細川さん、鷲巣さん、Hikizineの5名でした。
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ホダ木にかけるカヤ(ススキ、オギ)を岩殿D地区、B地区上段で刈って運びました。
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26日はいつものように、9時集合で作業を始めます。

落ち葉にヌカをふる 1月24日

市民の森南向き斜面の奥から2番目の堆肥箱の落ち葉にヌカをふり、その上に落ち葉を追加しました。
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切り返し作業はできませんが、ヌカをふらない箱と比較してみたいと思います。

12月22日の落ち葉掃きでブルーシートをかけておいた箱ですが、縁から10㎝ほど下がっていました。
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管理機入手 1月23日

毛塚の農家から管理機をお預かりしました。しばらく使っていないものです。
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「シバウラ RC700」、7馬力で、取扱説明書はありません。
キャブレターのオーバーホールなど修理が必要だそうです。

刈笹の焼却 1月22日

1月18日の続きで、岩殿B地区上段の刈笹を燃しました。あと1回で終わりそうです。
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太陽光発電の環境配慮ガイドライン(案)パブコメ 1月21日

2月5日追記)小川町プリムローズゴルフ場跡地(約86ヘクタール)にメガソーラー(発電設備容量 39,600kW)が計画されており、2020年1月18日には業者により環境影響調査計画書の説明会が開催されました。NPOおがわ町自然エネルギーファームは業者に対して意見書提出(2月21日まで)を呼びかけています

太陽電池発電事業の環境への影響が生じる事例の増加が顕在化している状況を踏まえ、2020年4月1日から大規模な太陽電池発電事業については環境影響評価法(平成9年法律第81号。以下「法」という。)の対象事業として追加されています。また、2019年4月の中央環境審議会答申「太陽光発電に係る環境影響評価のあり方について(答申)」において、法や環境影響評価条例の対象ともならないような小規模の事業であっても、環境に配慮し地域との共生を図ることが重要である場合があることから、必要に応じてガイドライン等による自主的で簡易な取組を促すべきとされています。
 これを受けて環境省では、法や環境影響評価条例の対象にならない規模の事業について、発電事業者を始め、太陽光発電施設の設置・運営に関わる様々な立場の方により、適切な環境配慮が講じられ、環境と調和した形での太陽光発電事業の実施が確保されることを目的としたガイドライン(案)を作成しました。

 小規模出力事業とはおおむね出力50㎾未満の事業
環境影響評価法や環境影響評価条例の対象とならない、より規模の⼩さい事業⽤太陽光発電施設の設置に際して、発電事業者、設計者、施⼯者、販売店等の関係主体が、地域に受け⼊れられる太陽光発電施設の設置・運⽤に取り組むための、環境配慮の取組を促すものとして作成
環境配慮ガイドラインチェックシート【小規模出力版】(案)環境配慮ガイドラインチェックシート【小規模出力版】(案)_01環境配慮ガイドラインチェックシート【小規模出力版】(案)_02

太陽光発電のトラブル事例
2.3太陽光発電のトラブル事例(10~12頁)
(1)トラブル事例太陽光発電に関するトラブルについては、平成27年度[2015年度]新エネルギー等導入促進基礎調査(再生可能エネルギーの長期安定自立化に向けた調査)や平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査(太陽光発電事業者のための事業計画策定ガイドラインの整備に向けた調査)で定義されたように、「安全性に関するトラブル」、「維持管理に関するトラブル」、「地域共生に関するトラブル」、「廃棄・リサイクルに関するトラブル」に分類される。(「廃棄・リサイクルに関するトラブル」については2.6FIT期間終了後の課題にて説明する)
ア)安全性に関するトラブル
発電設備の安全性に関するトラブル事例として、電気設備の事故、特に焼損事故や、台風等の強風に伴う太陽電池モジュールの飛散や架台の損壊等が生じている。平成27年度新エネルギー等導入促進基礎調査(再生可能エネルギーの長期安定自立化に向けた調査)では、地上設置型太陽光発電設備においてキュービクルや接続箱において火災が生じた事例(図2.6)や、強風によりモジュール飛散が生じている複数の事例(図2.5)を紹介している。
イ)維持管理に関するトラブル
太陽光発電を長期安定的に継続するためには、発電設備の性能低下や運転停止といった設備の不具合、発電設備の破損等に起因する第三者への被害を未然に防ぐため、発電設備の定期的な巡視や点検の実施が重要である。しかしながら、メンテナンス等の不足により、モジュール不具合等による発電電力量の低下やPCSの運転停止といったトラブルが報告されている。トラブルの原因としては設備の初期不良や施工不良の他、鳥獣害によるモジュール破損(図2.6)や、草木の成長による発電量低下・発電設備の破損(図2.7)という事例も見られる。対策にはモジュールやケーブルの定期的な目視点検の他、柵・塀の設置も検討が必要である。
ウ)地域共生に関するトラブル地域共生に関するトラブルについては、周辺への雨水や土砂の流出、地すべり等の防災上問題の他、景観問題や地域住民による反対運動など、立地・事業計画の段階で地方自治体や地域住民への説明・コミュニケーションが不十分であったことに起因するトラブルも多く見られるようになってきている(図2.8)。特に投資商品として流通する発電設備については、発電事業者自身が現地を確認しないことも想定されるため、地域共生に関するトラブルが起こりやすいと考えられる。

ア)設計・施工段階での不具合(23~24頁)
太陽光発電の多くは、FIT制度の開始後に導入されたものであるが、あまりにも短期間に導入が進んだため、各種ガイドラインの制定や、技術者の育成等が間に合わないまま、設計・施工されてしまった案件が多い。もちろん、優良事業者によって適正に設計・施工されている案件も多数存在するが、中には、急傾斜地など危険な場所への設置や、単管パイプによる架台の施工など、安全性について懸念がある案件も多数報告されている(図2.23)。
このように、設計・施工段階から問題を抱えている案件は、適正に保守点検を実施したとしてもトラブルが発生する可能性が高い。また、設計・施工状況を確認しようと思っても、正確な竣工図等が準備されておらず、コスト・時間のかかる検査が必要となる等、保守点検事業者にとっても、設計・施工段階での問題有無が確認できない案件に対し、保守点検サービスを提供することは大きなリスクとなる。実際、発電事業者から保守点検の依頼があったとしても、前述のように設計・施工段階での問題を確認できない状況の場合、保守点検事業者からサービス提供を断るケースも発生している。

ウ)土木に関する問題(30頁)
図2.13で示したように、設計・施工段階と保守点検段階の双方に関連するトラブルとして土地造成に関するトラブルがあげられる。設計・施工段階で地耐力等を緻密に計算していたとしても、地下水の流れや植栽の根付きなど想定が難しいケースが多いとのコメントが保守点検事業者からあった(表2-7)。

廃棄・リサイクルに関するトラブル
(3)放置・不法投棄への懸念(34頁)
発電事業者が適切な廃棄・リサイクル計画の策定、費用確保ができなかった場合、発電設備が放置・不法投棄されることが懸念されている。設置形態や設置場所の保有形態を考えると、特に自己所有地に設置される発電設備について、発電設備が放置される懸念が高いのではないかと想定されている(図2.35)。自己所有地に設置される場合、事業を終了した発電設備を有価物とするか、廃棄物とするか判断が難しいため、行政処分等で強制的な撤去等が可能かについては更に検討が必要である。ただし、適切な処理を実施せず、発電設備が放置された場合は、架台の倒壊やモジュールからの漏電、有害物質の漏洩等、地域住民の暮らしに危険を及ぼす可能性も考えられるため、事業終了した設備を確実な廃棄・リサイクルへと促す方策について、このような実態を踏まえた上で、経済産業省、環境省をはじめとした関係省庁と検討を進めなければいけない。

太陽光発電設備の景観コントロールに関する論点
5-3.太陽光発電設備の景観コントロールに関する論点の整理(80頁)
第1は、太陽光発電設備の立地に関する論点である。わが国では、再生可能エネルギー導入施策の推進によって、2012年以降に全国で一気に太陽光発電設備の立地や計画が進んだ。この結果、これまで太陽光発電設備の立地を全く想定していなかったエリアの景観に大きな変化が生じたり、大きな影響を受けることが想定されるエリアでは、住民等の反対運動などに発展した。
第2は、太陽光発電設備の景観影響の緩和に関する論点である。太陽光発電設備を実際に設置する際に、景観シミュレーションを実施したり、設置方法を工夫したりすることによって、景観に対する影響はある程度緩和できていた。
第3は、太陽光発電設備に関する住民・行政・事業者間の協議・調整に関する論点である。関係者間での協議が円滑に進まない場合、あるいは必要な協議がなされなかった場合、トラブルが生じやすかった。
第4は、景観法に基づく景観コントロールの実効性に対する認識に関する論点である。景観法に基づく景観コントロールの特性についての理解が進んでいないために、行政担当者や住民が景観計画や景観条例に基づく太陽光発電設備の景観誘導の実効性に対して疑義を抱いている状況が把握された。
第5は、都道府県と市町村等との連携に関する論点であり、1つは現状では広域景観の形成において、都道府県のような広域自治体単位で一体的に推進することが困難であること、もう1つは景観行政に対する知識・経験が豊富なスタッフが不足しており、小規模自治体では開発許可が必要なレベル以上の大規模な太陽光発電設備の設置においては、事業者との協議や景観影響の緩和策の検討等のプロセスに、広域自治体による支援が求められていることである。

論点1:新たに景観面の留意が必要な立地(81頁)
政府の再生可能エネルギーの導入推進施策によって、とくに2012年以降に全国で太陽光発電設備の設置が急速に進んだ。この結果、これまで太陽光発電設備の設置が想定されていなかった場所でも太陽光発電設備の設置や計画がなされることにより、住民等とのトラブルが生じているケースがあった。これらは従来の景観計画・条例等では景観面の課題の発生が想定されていなかったエリアである場合が多く、中でもとくに景観への影響が大きく、課題となっている特徴的な立地パターンが、沿道景観、広域景観、里山景観の3つであった。
沿道景観
駅周辺や観光地など、徒歩の観光客が多く通る沿道の景観や、良好な眺望を重要な資源としている観光道路沿いに太陽光発電設備が設置されることによって、景観の連続性が失われたり、背景となる自然景観への眺望が阻害されたりするケース。
広域景観
メガソーラーのような大規模な太陽光発電設備が設置されることによって、当該設備が立地している自治体だけでなく、広域の幹線道路や隣接自治体からの中景及び遠景に影響を及ぼしているケース。大規模な太陽光発電設備が存在することによって、自然景観の連続性が分断され違和感を生じている。
里山景観
これまで自治体の景観計画等で、景観上特に重要な地域等には位置づけられてこなかった里山など(都市計画区域外のケースも多い)が、大規模に造成されて太陽光発電設備が設置されることによって、周辺住民が日常的に接していた景観が激変する場合。なお、里山に大規模に立地するケースでは、下流域への土砂崩れや洪水等からの安全性の確保が不可欠であり、太陽光発電設備の設置によって直接的に影響を受けると考えられる範囲が広く、更には生態系などの地域の自然環境全体への影響に対する危惧等も大きいため、大規模な反対運動に展開しやすい。

論点3:住民・行政・事業者間の協議・調整の円滑な実施(83頁)
太陽光発電設備の設置が何らかのトラブルに発展しているケースでは、いずれも協議のプロセスにおいてトラブルを抱えていた。協議が不調となっているのは、住民と事業者、事業者と行政、住民と行政などいずれの組み合わせもあった。円滑な協議は景観に関するトラブルを抑制し、良好な景観を形成するうえで不可欠であると言える。
住民間における合意形成が困難なケース
別荘地などにおいて新住民と旧住民の双方が利害関係者となっている場合、地域の内部で合意形成が困難なケースがある。その場合、住民と行政や住民と事業者間についても建設的な協議が成立しにくくなる傾向が見られるため、住民間の協議方法の工夫が必要である。
住民が事業者の協議に応じないケース
住民が、太陽光発電設備が迷惑施設であるという認識を持ったり、事業者が住民の意見に十分に対応せず、住民との協議が形骸化している場合、住民が協議の実効性に疑問を持ち、協議に応じなくなることがある。
行政と事業者の協議時間が不足しているケース
住民と事業者間で十分な合意形成が出来ていない段階で事業者が景観法に基づく届出をした場合、30日以内に助言や勧告を行うことが時間的に困難であると行政側が認識し、必要な協議が十分に実施出来なくなる場合がある。また、90日間の協議延長制度については、前例がないために行政担当者は活用を躊躇していた。
行政が協議内容を把握できないケース
事業者が地元自治会や地権者と個別に交渉して合意形成を行った場合、協議内容について行政が把握できない。とくに里山等の大規模な太陽光発電設備の立地においては、下流域に対する安全面や環境面での影響も大きく、太陽光発電設備の設置による影響が地元自治会の範囲を超えて生じるため、行政が協議内容を把握できていないと調整が困難になる。


普及が進むにつれ増大する「軋轢」
一方、導入が進むことで、逆に普及を難しくする新たな課題も認識されるようになりました。自然エネルギー設備を送電線に接続できない、いわゆる系統線の「空容量ゼロ問題」[6]などがその代表例ですが、もう1つあまり認識がされていない、大きな問題が存在します。開発にともなう「地域との軋轢」です。
FITでの買取価格の低下や、系統接続の費用が増大するなかで、採算性が取れるよう自然エネルギー事業の開発規模が大きくなっていること。加えて、開発が進むほどに、開発容易な場所が減少していることなどが原因となり、地域の自然や社会環境に負担をかけてしまい、住民との間で軋轢が生じる結果になっているものと考えられます。

もし、今後もこのような事象が増えてしまえば、環境問題(温暖化問題)への切り札であるはずの自然エネルギーも、むしろ環境問題を引き起こす原因と認識され、そのさらなる普及にストップがかからないとも限りません。

こうしたリスクは杞憂ではありません。すでにその片鱗をうかがわせているためです。例えば、風力発電の紛争に関する先行研究では、総事業の約4割がこうした地域からの理解を得られないことによる反対を経験したとの報告があります[7]。太陽光についても、やはり大型事業で同様の事象が発生しているとの報告がなされています[8]。

とはいえ、温暖化の進行で受ける影響を考えれば、導入は避けては通れません。自然エネルギー100%という、大きな目標を実現していくためにも、今後の開発は、事業者が地域の納得を得られるような、十分な環境配慮を伴うものとしていかなければなりません。

[6]上記と同様の資料3では、2016年末時点での、FIT制度以降の太陽光(住宅用+非住宅用)の累計が3,201万kW、風力で64.2万kWとなっている。ここではFIT開始である2012年7月~12月も1年として、2016年末までを計5年間として、等価換算した。なお、実際には風力等は建設に長期間を有するため、導入済み数に表れない計画がこれとは別にあることに注意。
[7]畦地啓太・堀周太郎・錦澤滋雄・村山武彦(2014)「風力発電事業の計画段階における環境紛争の発生要因」『エネルギー・資源学会論文誌』35(2)
[8]山下紀明(2016)「研究報告メガソーラー開発に伴うトラブル事例と制度的対応策について」 ISEPウェブサイト
環境配慮のあり方について
それでは、具体的には、どのように環境配慮を実現していけばよいのでしょうか?じつはすでに、これに対する答えのひとつとなる取り組みが各地でスタートしています。「ゾーニング」と呼ばれる適地評価のプロセスです。
ゾーニングの役割(市川大悟)

従来は、事業者が主となって事業の立地場所を選定してきましたが、これを、事業計画の内容が具体的に固まる前の段階に、地域の住民や行政、有識者などが中心となって検討し、自分達の地域で、開発を受け入れられる場所、そうでない場所を仕分けて、公表するプロセスを言います。地域環境をよく知り、そこに住まう人達が話し合うことで、環境負荷の少ない、地元が納得できる持続可能な開発に誘導することができると考えられています。

現在、県レベルでは青森県、岩手県、宮城県など、市町村レベルでは10近くの基礎自治体が策定済み、あるいは取り組みを進めています。2018年3月20日に、環境省から自治体向けに取組みのためのマニュアルが配布されたこともあり、今後はさらに各地で広がっていくことが期待されています[9]。

今後、自然エネルギー100%という大きなチャンレジを乗り越えていくためにも、さらに多くの地域にこうした環境配慮を伴った開発を促せるような取り組みが広がることが望まれます。

[9]環境省報道発表(2018年3月20日)

太陽光発電事業者と住民とのトラブル
再エネで発電した電気をあらかじめ決められた値段で買い取る「固定価格買取制度(FIT)」が2012年に創設されて以降、日本各地でたくさんの再エネ発電事業者が誕生しました。太陽光発電については、FIT開始の前から住宅やビルの太陽光パネル設置が進んでいましたが、FITが始まった後では、野原や山などにずらりと並ぶ太陽光パネルを見ることも増えてきました。
そうした中で、地域住民とトラブルになる太陽光発電設備が現れています。
そもそも、太陽光発電事業に使う土地や周辺環境に関する調査、あるいは土地の選定や開発などにあたっては、
・土砂災害の防止
・土砂流出の防止
・水害の防止
・水資源の保護
・植生(ある地域で生育している植物の集団)の保護
・希少野生動植物の個体および生息・生育環境の保全
・周辺の景観との調和
など、さまざまなことに配慮する必要があります。また、太陽光パネルに反射する光が地域住民の住環境に影響をおよぼさないように配慮することも重要です。
太陽光発電事業の実施にあたって、もし、このような適切な配慮がされなかった場合、周辺への雨水や土砂の流出、地すべりなどを発生させるおそれがあります。そうなれば、発電設備が破損するだけでなく、周辺に被害があれば、その賠償責任が発電事業者に生じることもあります。
残念ながら、新しく太陽光発電事業に参入した再エネ事業者の中には、専門的な知識が不足している事業者もいて、そのため、防災や環境の面で不安をもった地域住民と事業者の関係が悪化するなど、問題が生じているのです。

地域との関係の構築
トラブルを回避するために、まず何よりも欠かせないのは、地域住民とのコミュニケーションをはかることです。
もちろん、自治体の条例などもふくめた関係法令を守ることは必須です。もし違反があれば、FIT認定が取り消される可能性があります。ただし、たとえ法令や条例を守り、適切な土地開発をおこなったとしても、事業者が住民に事前に周知することなく開発を進めると、地域との関係を悪化させることがあります。実際に、地域住民の理解が得られずに計画の修正・撤回をおこなうこととなったケースや、訴訟に発展したケースもあります。
そこで、2017年4月に施行された「改正FIT法」(「FIT法改正で私たちの生活はどうなる?」参照)にもとづく発電事業者向けの「事業計画策定ガイドライン」では、地域住民とコミュニケーションをはかることが、事業者の努力義務として新たに定められました。コミュニケーションをおこたっていると認められる場合には、必要に応じて指導がおこなわれます。

ガイドラインでは、発電事業の計画を作成する初期段階から、地域住民に対して、一方的な説明だけに終わらないような適切なコミュニケーションをはかるとともに、地域住民にじゅうぶん配慮して事業を実施するよう努めることが求められています。事業について地域の理解を得るには、説明会を開催することが効果的で、「配慮すべき地域住民」の範囲、説明会や戸別訪問など具体的なコミュニケーションの方法については、自治体と相談することをすすめています。
現在のガイドラインで、地域住民とのコミュニケーションが「努力義務」とされていることについては、「義務化すべき」との声もあがっています。ただ、地域住民とのコミュニケーションのありかたは一律ではなく、各ケースや地域の特性に応じた、きめこまやかな対応を必要とするものです。もし国が一律に義務化すれば、「説明会をおこなったか否か」などの形式的な要件を基準に、義務が果たされたかどうかを判断することになってしまう恐れがあります。そこで、現状では、地域住民とのコミュニケーションを「義務化」するのではなく、地域の事情に応じてつくられた条例を遵守するように義務付けることで、地域の問題に対応できると考えています。

大切な再エネだからこそ住民に配慮しトラブルをふせぐ
「地域との共生」は、事業の開発段階だけの問題ではありません。発電設備の運転を開始したあとも、適切に設備を管理し、地域へ配慮することが求められます。たとえば、防災や設備の安全、環境保全、景観保全などに関する対策が、計画どおり適切に実施されているか、事業者はいつも確認することが必要です。また、周辺環境や地域住民に対して危険がおよんだり、生活環境をそこなったりすることがないよう管理する必要もあります。
さらに、事業の終了時には、発電設備の撤去や処分をおこなわなければなりません。2040年頃には、FITの適用が終わった太陽光発電施設から大量の太陽光パネルの廃棄物が出ることが予想されており、放置や不法投棄の懸念ももたれています。

日高市太陽光発電設備の適正な設置等に関する条例 1月20日

日高市では昨年(2019年)8月、「日高市太陽光発電設備の適正な設置等に関する条例」を制定しました。太陽光発電設備の設置を規制する条令は埼玉県内初です。
日高市議会は昨年(2019年)6月定例会で、市内高麗本郷の山林約15ヘクタールに民間事業者が設置を計画している大規模な太陽光発電施設について、議会として反対の意思を示す「大規模太陽光発電施設の建設に対する反対決議」、国に対し太陽光発電施設の設置に関する法規制を求める「太陽光発電施設の設置に対する法整備等を求める意見書」を可決。8月22日の臨時会で、災害防止や環境・景観の保全を目的(第8条)に、市が提出した太陽光発電の大規模施設の建設を規制する条例案が全会一致で可決され、即日施行されました。事業区域が0.1ヘクタール以上、総発電出力が50キロワット以上の施設に適用(第3条)。事業者は事前に届け出て、市長の同意を得ることを義務づけられ、太陽光発電事業を抑制すべき「特定保護区域」が指定され、その区域では「市長は同意しない」としています。罰則はありませんが、従わない事業者は住所などが公表(第17条)されます。
市はメガソーラー(大規模太陽光発電施設)が計画されていた高麗本郷地区の山林を特定保護区域に指定、建設を差し止める法的拘束力はありませんが、事業者はより一層慎重な地元への対応が求められます。

※条例・規則・要綱:条例は地方公共団体がその事務について、議会の議決によって制定する法規。規則は地方公共団体の長等がその権限に属する事務について制定する法規。一方、要綱は行政機関内部における内規であって、法規としての性質をもたない。

※2019年6月26日、日高市議会定例会最終日に賛成多数で可決された「大規模太陽光発電施設の建設に対する反対決議」と全員一致で可決された「太陽光発電施設の設置に対する法整備等を求める意見書」は以下の通り(『文化新聞』 BUNKA ONLINE NEWS 2019年7月3日号より)
  大規模太陽光発電施設の建設に対する反対決議
 現在、日高市大字高麗本郷字市原地区にTKMデベロップメント株式会社が計画している大規模太陽光発電施設の建設について、以下のように判断する。

 ①建設予定地は、国道299号北側に位置する山の南斜面、面積は約15ヘクタールで東京ドーム約3個分に相当する。この建設によって緑のダムと言われる森林は伐採され、水源かん養機能が失われ、集中豪雨による土砂災害や水害の危険性が飛躍的に高まる。このことが建設予定地の下流域に住む市民の生命に対する重大な脅威となる。
 ②太陽光発電事業は参入障壁が低く、さまざまな事業者が取り組み、事業主体の変更も行われやすい状況にある。発電事業が終了した場合もしくは事業継続が困難になった場合においては、太陽光発電の設備が放置されたり、原状回復されないといった懸念がある。
 ③建設予定地には、埼玉県希少野生動植物種の指定を受けているアカハライモリや埼玉県レッドデータブックに掲載されている絶滅危惧種のトウキョウサンショウウオなどの希少動物並びにオオキジノオ、アリドオシなどの希少植物が生息している。大規模太陽光発電施設の建設工事が始まれば、これらの希少生物の行き場が無くなり、日高市の貴重な財産を失うことになる。

 日高市の財産である日和田山や巾着田を含む高麗地域の景観や周辺の生活環境を守り、防災並びに自然保護および自然調和に万全を期すことが必要である。このことから、今後、地域住民の理解が得られないまま大規模太陽光発電施設の建設が行われることになれば、日高市議会としてはこれを看過できるものではなく、大規模太陽光発電設備設置事業の規制等を含む対策に関する条例の制定等に全力で取り組む所存である。
 よって、日高市議会は大規模太陽光発電施設の建設に対し反対する。

  太陽光発電施設の設置に対する法整備等を求める意見書
 太陽光発電は、温室効果ガスを排出せず、資源枯渇のおそれが無い再生エネルギー源で、地球温暖化の防止や新たなエネルギー源として期待されている。特に平成24年[1912年]7月の固定価格買取制度(FIT法)がスタートして以来、再生可能エネルギーの普及が進み、中でも太陽光発電施設は急増している。また、埼玉県は快晴日数が全国一という特徴からか、本市においても太陽光発電施設が増加し、今後もさらに増えることが見込まれている。
 しかし、一方で、太陽光発電施設が住宅地に近接する遊休農地や水源かん養機能を持つ山林に設置され、周辺環境との不調和や景観の阻害、生態系や河川への影響が懸念されている。さらに傾斜地や土地改変された場所への設置は、土砂災害に対する危険性が高まり、地域住民との間でトラブルとなっている。
 このため本市は、「日高市太陽光発電施設の設置に関するガイドライン」その他関係法令に基づき事業者への指導を行っているが、直接的な設置規制を行えないことから、対応に苦慮しているのが実情である。
 よって、太陽光発電事業が地域社会にあって住民と共生し、将来にわたり安定した事業運営がなされるために、国においては次の事項を早急に講じられるよう要望するものである。

 ①太陽光発電施設について、地域の景観維持、環境保全及び防災の観点から適正な設置がなされるよう、立地の規制等に係る法整備等の所要の措置を行うこと。
 ②太陽光発電施設の安全性を確保するための設計基準や施行管理基準を整備すること。
 ③発電事業が終了した場合や事業者が経営破綻した場合に、パネル等の撤去及び処分が適切かつ確実に行われる仕組みを整備すること。
 ④関係法令違反による場合は、事業者に対し、FIT法に基づく事業計画の認定取消しの措置を早急に行うこと。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

高麗郷を乱開発から守るために

太陽光発電・メガソーラーに関わる当ブログ記事
「森林を脅かす太陽光発電を考える」講演会に参加①(2018.12.02)
 


 
 
 

智光山公園「飼い主のいない猫ゼロ」活動 1月20日

狭山市の智光山公園では、さやま猫の会と協働して園内の「飼主のいない猫ゼロ」を目指す取り組みをしています。
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さやま猫の会ブログ(→ http://sayamainuneko2014.blog.fc2.com/

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智光山公園は、総面積53.8ヘクタール、東京ドーム約11個分の広さ。東西1200m×南北450m。

市民環境会議『生物多様性とは』 1月19日

東松山市環境基本計画市民推進委員会『市民環境会議』が総合会館で開かれました。「生物多様性とは ~人と自然が共生する世界の実現に向けて~」というテーマで、(公財)日本生態系協会環境政策部長青木進さんの講演です。
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講演で取りあげられていた埼玉県「生物多様性保全戦略」(2018年2月)、環境省自然環境局「生物多様性地域戦略の策定手引き」(2014年3月)、地域生物多様性保全戦略の策定や、日高市「太陽光発電設備の適正な設置等に関する条例」(2019年8月)、太陽光発電設備設置適正化問題等、市民推進委員会で意見交換していければと思いました。

ヤナギの伐採 1月18日

岩殿I地区の下段のヤナギを新井さんが伐りました。12月26日にH地区でヒラタケ栽培用にヤナギを伐採しましたが、その追加です。26日にはまだ駒打ちできないと思いますが、芯は傷んでいません。樹齢20年位です。併行して昨日、須田さんがB地区上段に運んだ笹を焼却しました。3分の1程度です。作業途中からは小雪が舞いました。
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3月末までに岩殿I地区下段のヤナギはすべて伐採します。
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道路下の刈笹を移動 1月17日

入山沼に向かう道路下の刈笹を須田さんが岩殿B地区上段に移動しました。ありがとうございます。
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ホダ木つくり 1月17日

市民の森保全クラブ追加作業日。芦田さん、細川さん、鷲巣さん、渡部さん、Hikizineの5名参加。1月10日につづいてホダ木作りをし、40本強追加できました。
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北向き斜面の尾根の園路近く(左写真)と下の園路近く(右写真)のコナラの比較。
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両者共樹齢は50年ですが、直径は50㎝と20㎝です。

キノコ種駒を購入 1月16日

1月26日に実施するキノコの駒打ち用にシイタケ、ヒラタケ、ナメコの種駒を買いました。
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寒風の中、野菜も人も育つ 1月16日

児沢の畑、寒風の中、細川さんが作業していました。お疲れさまです。
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『科学』特集・河川氾濫の備えを考える 1月15日

『科学』第89巻第12号(岩波書店、2019.12)は、河川氾濫の備えを考えるを特集し、石崎勝義「堤防をめぐる不都合な真実 なぜ2015年鬼怒川堤防決壊は起きたか?」、まさのあつこ「千曲川決壊はなぜ起きたのか」、牧田寛「ダム治水と肱川大水害」、鈴木康弘「激甚災害に備えるハザードマップ そもそも誰が何のために作るか」を掲載しています。
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  隠されている「堤防強化」、放置されている「堤防沈下」
  堤防の効用の限界
  堤防の決壊を防ぐ技術の発想
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   福岡正巳氏の治水観
   福岡正巳氏の堤防観
   大型実験による耐越水堤防の開発研究
   耐越水堤防の原型が生まれた
  国を免責する水害裁判判決
   下館河川事務所長の「神話」発言
   国の責任を問わない大東水害最高裁判決
   近藤徹氏の「証言」
   長良川水害判決 堤防決壊まで国を免責
   河川技術者の「安心」
  河川管理施設等構造令の改正
  地方建設局で進んだ堤防強化の実用化研究
   加古川の堤防強化
   堤防強化対策委員会
   新しく開発された技術
    (1)裏のり尻の保護工:かごマットの登場
    (2)ドレーン工の開発
   アーマー・レビーの誕生
  現場で進んだ堤防強化の実施
   (1)石狩川水系美瑛川、4.6㎞
   (2)那珂川、9.0㎞
   (3)雲出川、1.1㎞
   (4)江の川水系、馬洗川、0.8㎞
  堤防強化整備事業(フロンティア堤防)の発足
   福田昌史氏の認識
   河川技術者水木靖彦氏の想い
   河川堤防設計指針第3稿
  政府が凍結し続ける堤防強化
   フロンティア堤防はなぜ中止になったか
   淀川水系流域委員会が堤防強化を提案
   近畿地方整備局の変身
  偽りの「コンクリート・アスファルト三面張り」
  土木学会の奇妙な報告書
   諮問内容が結論を誘導
   事実を調べないで結論
   専門家は報告書内容に得心していたか
   補足 スーパー堤防の耐越水効果への疑問には賛成だ
  起こるべくして起きた鬼怒川水害
   河川管理責任を問う裁判の提起
   氾濫が放置された若宮戸
   堤防の沈下が放置された上三坂
   堤防をめぐる社会通念の変化
  堤防の沈下
   鬼怒川・上三坂地区の堤防沈下の実際
   堤防沈下の原因
    (1)堤体自身の収縮
    (2)地盤の地下水くみ上げによる収縮
    (3)地盤の収縮 圧密沈下
   上三坂地区の堤防の沈下原因
    (1)鬼怒川の改修と上三坂堤防沈下の関係
    (2)上三坂地点の地盤
   堤防強化における堤防沈下の問題
   堤防の高さ管理を提唱した河川工学者
  堤防の設計思想を見直す
  補足 堤防の設計思想を見直す発言の例
   (1)大石久和氏(前木学会会長)
   (2)中尾忠彦氏(元土木研究所河川部長)
   (3)末次忠治氏(山梨大学大学院教授)
   (4)常田賢一氏(土木研究センター理事長)
   (5)福岡賢正氏(前毎日新聞熊本支局記者)
   (6)小池俊雄氏(東京大学名誉教授,現土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)センター長)


こちら特報部「突然消えた堤防強化策 鬼怒川決壊きょう1年」1)(2)(『東京新聞』2016.09.10) (水源開発問題全国連絡会HPから)
東京新聞茨城版石崎インタヴューPK2019110602100077_size0

※「台風19号強化予定堤防、10カ所決壊 危険は認識も整備遅れ」(『東京新聞』2019.11.27
東京新聞20191127越水による決壊のイメージ

「越水に対する耐久性の高い堤防」への想い(水木靖彦、20120417)「越水に対する耐久性の高い堤防」への想い(水木靖彦、20120417)02
「越水に対する耐久性の高い堤防」への想い(水木靖彦)_01

水木靖彦『洪水の話』(PDF)
洪水の話(水木靖彦)

洪水の話(水木靖彦)_01
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梶原健嗣「過大な基本高水と河川の管理瑕疵 大東基準が生みだす、「無責任の穴」(『経済地理学年報』64巻、2018年)

B地区上段の枯れ草刈り 1月13日

岩殿B地区上段の枯れ草を刈りました。
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18年11月ほどの量はありません。昨年2月末のように、入山沼に向かう道路下の斜面で刈った篠を移動して焼却する予定です。

斜面に捨てられていたものを再度まとめました。
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市民病院と医師会病院の統合案 1月13日

1月6日発売の『週刊東洋経済』は「病院が壊れる」を特集。再編を迫られる公立病院や、経営難に陥る民間病院の今を追っています。
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【第1特集】病院が壊れる
Part1 公立病院の苦悩
医師不足で「救急お断り」 市民病院の経営が危ない
今変わらなければ“突然死"も ニッポンの病院の正念場
「医療提供体制の見直しは必須だ」 厚生労働相 加藤勝信
無給医問題があらわにした医師の“超"長時間労働
毎年約400億円の赤字 都立8病院の経営難
中核病院建設に「待った」 財政難の新潟は大混乱
「点ではなく面で支える医療が必要」 慶応大学教授 印南一路
公立病院の赤字 累積欠損金ワースト150
[現地ルポ] 地域医療の牙城を守れる 日本赤十字病院の危機
「うそを重ねては再編が進まない」 日本病院会会長 相澤孝夫

Part2 民間病院の危機
東京の都心部でも安泰ではない 医療法人倒産はなぜ起きるのか
「地域密着では民間病院の出番」 医療法人協会会長 加納繁照
売却案件は引きも切らず 盛り上がる病院のM&A
「買収した東芝病院は3年で再建できる」 カマチグループ会長 蒲池眞澄
架空の売却話も飛び交う 病院に群がる怪しい人々
稼ぐ民間病院の実力! 医療法人ランキング150
債務超過の三井記念病院 外来患者が増える順天堂
厚生労働省は2019年9月末、「再編統合について特に議論が必要」として、自治体病院や日赤病院など424の病院名を公表しました(日本経済新聞電子版『424病院は「再編検討を」 厚労省、全国のリスト公表』2019/09/26 15:10)。埼玉県では、蕨市立病院、地域医療機能推進機構埼玉北部医療センター、北里大学メディカルセンター、東松山医師会病院、所沢市市民医療センター、国立病院機構東埼玉病院、東松山市立市民病院ですが、指名された病院や自治体に波紋が拡がっています。
特集PART1・公立病院の苦悩には、「再編・統合が進まぬ現実 医師不足で「救急お断り」 市民病院の経営が危ない」(井艸恵美記者)があり、東松山市立市民病院と東松山医師会病院がとりあげられています。
市民病院と医師会病院は「再編・統合を検討すべき」
 東京都内から電車で1間弱ほどに位置する埼玉県東松山市。東京のベットタウンにもなっているこの町で、2つの病院が揺れている。東松山市立市民病院(114床)と東松山医師会が設立する東松山医師会病院(200床)が、再編・統合を検討すべき病院の対象になったのだ。
 厚労省はがんや心疾患などの高度医療について「診療実績が特に少ない」、または「近くに類似した機能の病院がある」を基準に分析。2病院が再編対象になった理由は、病院同士の近さだ。人口9万人規模の東松山市だが、車で10分ほどの距離に総合病院が2つある。しかも複数の診療科が重複しているからだ。
 再編対象リストが病院への予告なしに発表されたことで、名指しされた全国の病院からは反発の声が上がっている。突然再編対象とされれば黙っていられないのは当然のはずだが、東松山市立市民病院の杉山聡院長からは「私としては納得した」と意外な答えが返ってきた。
 「赤字が膨らみ、このままでは当院の経営を続けていくことは厳しい。同じような機能を持つ2つの病院が統合再編か役割分担を検討しなければ共倒れになり、東松山市の医療体制は崩れてしまう」 
 東松山市立市民病院は慢性的な赤字体質で、2018年には1.8億円まで経常赤字が膨らんだ。経営が傾いた最大の原因は医師不足だ。日本大学の関連病院としてかつては多くの医師が送り込まれていたが、2004年から初期研修が行える施設が大学以外にも広がり、大学の医師が減少。同院への派遣は引き上げられ、2003年に30人ほどいた医師が4年後は半減。一時は診療時間外の救急診療を停止する事態に至った。
 現在は医師15人体制となり、時間外救急も再開しているが、体制は十分ではない。常勤医師の高齢化で、2人いる内科医は60歳を超えている。当直の半分は非常勤医師で賄うが、救急の要請があっても断らざるを得ないこともある。救急の受け入れ率は年々低下し、収益も右肩下がりだ。
 2019年4月に着任した杉山院長は経営改善策を講じているが、医師不足解決には見通しがつかない。「医師を派遣する大学へ人数を増やしてくれるよう要請したが、十分な供給は得られていない」。
 こうした苦境は東松山市立市民病院だけではない。東松山医師会病院も「医師の確保が課題だ」と答える。救急体制の整った中核病院がないことから、東松山市を含む比企地域は約3割の患者が他の地域の病院へ搬送されている。川越市や都内の大病院までは30分ほどかかるため、患者にとってのデメリットは大きい。
 医師不足と救急体制の手薄さを解決するには重複した診療科を整理するか、統合で医師を1つの中核病院に集めるしかない。こうした意見は市内の関係者の間でささやかれていたが、公言されることはなかった。しかし、「統合」についてパンドラの箱を開けたのは医師を派遣する埼玉医科大学総合医療センターの堤晴彦院長だった。
 厚労省の発表後初めて同市の医療関係者が会した会議の場で、堤院長は「2つの病院から医師を出してくれと言われても難しい。400床規模の大病院を作ってもらったほうが派遣しやすい」と語った。
統合は前途多難
 しかし、統合は前途多難だ。先の会議の場で前出の東松山市立市民病院の杉山院長は「医療体制を崩壊させないために再編の議論をうやむやにしてはいけない」と危機感を訴える。その一方、東松山医師会病院の松本万夫院長は、「(統合して)大きな病院をつくるのは地域にとってはいいことだと思うが、現実化するのかは希望が薄い。2つの病院の性格が明らかに違う」と口にした。
 一般的な外来診療を行う東松山市立市民病院に対し、東松山医師会病院は医師会が設置者で地域の医師会会員である開業医からの紹介により患者が来る仕組みだ。県内の医療関係者からは、「東松山医師会病院は病院長とは別に東松山を含む比企地域の医師会長がいる。誰が主導しているかあいまいで院長が手腕を振るのは難しい」と話す。
 経営主体が違う病院同士の話し合いが難航するのは目に見えている。しかし、現状を放置し続けても医師不足は解消されない。2つの病院とも立ち行かなくなれば、困るのは住民だ。
 こうした問題は東松山市だけではない。国は地域医療を充実させる「地域医療構想」を掲げ、地方自治体に対し病院再編や病床機能の転換を進めるように促しているが、一向に進んでいない。厚労省が再編を検討すべき病院を公表したのは、「(反発が起こることは)ある程度想定した上でのショック療法だった」(複数の医療関係者)という見方が強い。[以下略]
※東松山市立市民病院、東松山医師会病院については、
川越比企保健医療圏地域保健医療・地域医療構想協議会(埼玉県HP)の「第1回 川越比企保健医療圏地域保健医療・地域医療構想協議会」(2019.03.06)の資料1-1
「東松山市立市民病院 ~新公立病院改革プランと当院の将来像~」(森野正明院長)37~42
「東松山医師会病院2025プラン」(松本万夫院長)51~57

畑の枯れ草を燃す 1月12日

岩殿A地区の畑の枯れ草を燃しました。
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作業道下の裾刈り終わる 1月11日

市民の森作業道と岩殿G地区との間の斜面の裾刈りをしました。
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※今年度の市民の森作業道と岩殿C~F~G地区との間の斜面の裾刈りは今日で終了しました。



ホダ木の準備 1月10日

市民の森保全クラブ定例作業日。参加者は芦田さん、金子さん、草間さん、細川さん、鷲巣さん、渡部さん、Hikizineの7名でした。1月26日のキノコの駒打ちに向けて伐採現場で乾燥させてきた原木を玉切りして、ホダ木を岩殿C地区に運びました。コナラ、サクラ、シデと先日のヤナギにシイタケ、ヒラタケ、ナメコの駒を打つ予定です。
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細川さんがワラビ園に生えていたコウゾを刈りとりました。ありがとうございます。
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市民の森作業道に砂利を準備 1月9日

市民の森作業道の凹地用(19年11月1日24日12月5日記事)に砂利を土のう袋20袋用意しました。
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日本林業技術協会編『森と水のサイエンス』 1月8日

日本林業技術協会編『森と水のサイエンス』(東京書籍、1989年)を読みました。執筆者は中野秀章・有光一登・森川靖氏で、100不思議シリーズの1冊です。日本森林技術協会デジタル図書館に、PDF版がUPされています。

森と水のサイエンス』 目次
1 減りもせず増えもしない地球の水
   どこにどれだけの水があるか
   たえず循環する水
2 限りある貴重な資源
   すべての生命に不可欠な水
   限りある水資源
   地域と季節で異なる水の量
   水の循環と森林
3 森林に降る雨の行方
   森林に降り注ぐ雨
   林冠などによる降水の遮断
   浸透と流出
   森林植生による蒸散
   川の流れを調整する森林
4 土の中の水の動き
   森の土は水を吸い込む―土壌の種類と保水力
   地被や土壌による浸透能(水の吸い込み方)の違い
   土壌の保水力
   土壌のすき間と水の流れ
   森林の土は水をきれいにする

5 樹木の生育と水
   生命の井戸水
   植物の水吸収と土壌の水
   植物の水経済
   湿度を考える―湿度60%は乾いている
   蒸散量はどう測るのか
   蒸散―1日に30トン
   蒸散量の多い月は、年間の蒸散量は
   間伐や技打ちによって蒸散量は減るか
   蒸発と蒸散は本当に同じか
   水の吸収と移動― 100メートルも昇る
   水移動の経路―壁の中、管の中を水は流れる
   水と成長
6 森林の水保全上の役割
   森林の水保全機能とは
   水の流れをならす森林の土
   森林の状態と水の流れ
……河川流量の平準化をもたらす森林土壌の機能こそが、その森林土壌を生成し、維持する、森林のいわゆる水源かん養機能と治水機能の本質といえる。(119頁)
   うまい水もつくる森林の土
   森林による水の消費

7 水保全機能の高い森林
   単純より混交、若齢より高齢がものをいう
 水保全にかかわる森林の役割とは、自然の節理にさからわない範囲で、蒸発散量をなるべく少なくし、降水の流出を平準化するとともに流出する水の質を良好・安定に保つことといえる。
 この両機能を果たす中心舞台は森林土壌であり、浸透・透水性にすぐれ、かつ厚い土層を保持している森林こそ水保全機能の高い森林といえる。概念的には、すでにある森林土壌を確実に保全し、かつ将来に向けて、なお、着実に水に関する特性の改善を進めている森林といえる。言い換えれば、地表浸食や崩壊などから森林土壌を守る機能が大きく、かつ浸透・透水性を改善する機能の大きい森林植生、すなわち、強じんな根系を深くかつ偏りなく網のように張り、崩壊防止に対する杭効果とネットワーク効果が高く、林床には落葉層や低木・下草が豊かで安定しており、地表浸食防止に効果が高い森林である。同時に有機物の供給と土壌動物・微生物の生息促進によって土壌の団粒構造など、孔隙性を維持・改善する効果の高い森林が、将来性を含めて機能の高い森林といえよう。具体的には当該地域を適地とする複数の樹種・草種から成り、老齢に過ぎない範囲で高齢の大径木を主林木とし、樹齢・樹高もさまざまで、生態学でいう樹体の現存量が大きく、生態系として安定した生命活動の盛んな地域適応型の混交・複層林である。(126~127頁)

   混交社会の構成要員
 水保全に望ましい具体的樹種についていえば、個々の樹種に水保全面からみた特徴が認められることは事実である。まず、森林土壌の維持・改善にとって重要な根系についてみると、土壌条件などについての同じ比較条件下で、主たる根を垂直方向に張り、比較的深い土層にも根量のある深根性樹種と、主たる根を水平方向に張り、比較的深い土隔には根量の少ない浅根性樹種がある。前者の代表的樹種は、針葉樹ではアカマッ・クロマッ・スギ・モミ・ヒメコマッなど、広葉樹ではコナラ・ミズナラ・クヌギ・ケヤキ・クリ・トチなどである。後者の代表的樹種は、針葉樹ではヒノキ・カラマツ・サワラ・ツガ・トウヒ・エゾマツ・ヒバなど、広葉樹ではブナ・シラカシ、ニセアカシァ・ヤマハンノキなどである。同じ深根性・浅根性樹種といっても、根系の平面的張り方にも樹種による個性がみられ、一般に樹冠の投影面積の数倍程度に張るとみられる。例えば浅根性樹種でかなり広いものや、深根性樹種で相対的には広くないもの、あるいは斜面の上下、水平のいずれかの方向により広く張るものなどがあり、これも土壌保持の面で無視できない。
 土壌改良に重要な落葉などの有機物の供給能力についてみると、同じ比較条件下で樹種間に差が認められる。常緑針葉樹林は落葉樹林よりも多く、同じ常緑針葉樹林でもスギはマツやヒノキよりも多い。さらに、土壊改良に重要な土壌動物・微生物の生息についても、一般に針葉樹人工林は天然林より、若齢林は高齢林より、そして、構成樹種の単純な森林は複雑な森林より種類数も個体数も少ないといわれている。
 一方、降水遮断についてみると、細かい葉が小枝に密に着生して、単位面機当たりの葉量が大きく小枝が密にまとまった樹冠をもつ針葉樹類は、これらより比較的大きい平滑な葉を疎に着生する広葉樹類より一般に遮断作用が盛んである。また、同じ樹種でも、当然ながら、林冠の疎開した幼齢林や高齢林より、生育旺盛な青年期・壮年期の森林で大きい。さらに細かくみれば、例えば、ブナなどの広葉樹のうっ閉した壮齢林では雨水の一時保留作用が大きく、また樹体構造の関係などで樹幹流下雨量が多いため、激しい降雨の林床への衝撃的直達を避け、降水を穏やかに林床に導くといった働きにも特徴がみられる。蒸散作用についても降水遮断とほぼ同様なことがいえる。
 以上を総合すると、スギやブナなどは他に比べて一応水保全上すぐれた樹種と考えられるが、詳細に個々の特性についてみれば長所も短所も混じえており、すべての樹種についても同様なことが考えられる。結局、個々の特性について水保全に望ましい樹種があり、これを総合して相対的に優位な単独樹種を選定することはできるものの、絶対的な単独樹種はないといえよう。つまり、望ましい個別特性をもつ樹種の単純林ではなく、混交・複層林でそれぞれの個性が補強され合って全体機能が高くなる。(133~135頁)

 何よりも、健全で確実な生育を保持する森林でなければ、機能を発揮し得ない。したがって、当該地を本来適地とする複数の樹種の高齢木を中心とする混交・複層林で、地上部・地下部ともに充実し、活力ある生態系としての森林こそ、最も水保全機能が高い森林といえよう。(136頁)

8 降水による災害と森林
   洪水害
   山崩れ
   土石流
   地すべり
   なだれ
9 むすび

用語解説
混交林:2種類以上の樹種からなる森林で、単純林に対するものである。ただし、林業に関係のない下木の類は考えにいれない。また、数種類の林木からなる森林でも、その大部分が一樹種であるときは、単純林として取り扱う。混交林は性質の異なった樹種、例えば針葉樹と広葉樹、陰樹と陽樹、浅根性の樹種と深根性の樹種などが適当に配置されることによって、林地の生産力を十分に活用することができ、林木相互の競争が柔らげられるので、林木が健全に育ち、木材の生産量も多いと主張されている。害虫・菌類・暴風・山火事などに強い樹種が混ざることによって、これらの害が発生しても急激に広がることが防げ、天敵の繁殖にも好適であり、諸害に対する抵抗性も強い。(168~169頁)

複層林:人工更新により造成され、樹齢、樹高の異なる樹木により構成された人工林の総称。一斉に植栽され、樹齢、樹高がほぼ同じ森林に対する語。一部の樹木を伐採しその跡地に造林を行うことの繰返しにより造成される。(174頁)


新エリアの裾刈り 1月7日

市民の森保全クラブ作業エリアの裾刈りをしました。新エリア南向き斜面(岩殿C地区の無名沼イ号下の1番目・2番目の畑の上)です。
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急斜面なので刈払機だけでなく鋸(ノコギリ)も使い、慎重に作業し、落ち葉も掃き下ろしました。

2019年2月16日の記事に2月14日のこの現場の写真を掲載しています。
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振り返り:2018年11月の新エリア(南向斜面) 1月6日

2018年11月末、重機を入れて岩殿C地区に接している市民の森の南向き斜面下部のアズマネザサの大藪が業者により除去されました。現在、この南向斜面が市民の森保全クラブの新作業エリアとなっています。

2018年11月21日
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2018年11月22日
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無名沼イ号の堰堤付近は急斜面はユンボも使い、手間のかかる作業でした。

2018年11月23日
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2018年11月25日
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2019年2月16日
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18年11月~19年2月、無名沼イ号には水がありませんでした。

D地区下段の枯れ草刈り 1月5日

岩殿D地区下段の枯れ草刈りをしました。
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カロリン・エムケ『憎しみに抗って』 1月4日

カロリン・エムケ『憎しみにあらがって ―― 不純なものへの賛歌』(浅井晶子訳、みすず書房、2018年)を読みました。
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人種主義、ファナティズム、民主主義への敵意――ますます分極化する社会で、集団的な憎しみが高まっている。なぜ憎しみを公然と言うことが、普通のことになったのだろう。
多くの難民を受け入れてきたドイツでも、それは例外ではない。2016年には、難民の乗ったバスを群集が取り囲んで罵声を浴びせ、立ち往生させる事件が起こった。それまでのドイツではありえなかったこの事件は、社会に潜む亀裂をあらわにした。
自分たちの「基準」にあてはまらない、立場の弱い者への嫌悪、そうした者たちを攻撃してもかまわないという了解。この憎しみの奔流に飲み込まれないためには、どうしたらいいだろう。
憎しみは、何もないところからは生まれない。いま大切なのは、憎しみの歴史に新たなページを加えることではなく、基準から外れたとしても幸せに生きていく可能性をつくることではないだろうか。
著者カロリン・エムケはドイツのジャーナリスト。自分とは「違う」存在を作りだして攻撃するという、世界的に蔓延する感情にまっすぐに向き合った本書は、危機に揺れるドイツでベストセラーになった。いまの世界を読むための必読書。
   (みすず書房HP「書誌情報」より)
 カロリン・エムケ『憎しみに抗って ―― 不純なものへの賛歌』目次
はじめに
1 可視‐不可視
   恋
   希望
   懸念
   憎しみと蔑視
    1 特定の集団に対する非人間的行為(クラウスニッツ)
   憎しみと蔑視
    2 組織的人種差別(スタテンアイランド)
2 均一 ー 自然 ー 純粋
   均一
   根源的/自然
   純粋
3 不純なものへの賛歌

原註
訳者あとがき
著訳者略歴
※東京大学出版会・白水社・みすず書房の出版情報PR紙「パブリッシャーズ・レビュー」第26号(2018年3月15日号)より
 ドイツでベストセラー
  カロリン・エムケ
   《憎しみに抗って 不純なものへの賛歌》浅井晶子訳
 人道主義、ファナティズム、民主主義への敵意 ―― ますます分極化する社会で、集団的な憎しみが高まっている。なぜ憎しみを公然と言うことが、普通のことになったのだろう。
 こうした現象は、世界中でみられる。多くの難民を受け入れてきたドイツでも、それは例外ではない。
 2016年、ドイツのクラウスニッツで、難民の乗ったバスを百人以上の群集が取り囲んで罵声を浴びせ、立ち往生させる事件が起こった。多くは近所のごく普通の住民だったという。その様子はSNSで瞬く間に拡散し、おびえる難民の子どもや、手をこまぬく警官の様子も映っている。それまでのドイツはありえなかったこの事件は、社会に潜む亀裂をあらわにした[*1]。
 「怒りは、なにものにも守られることなく目だっている者に向けられる」。自分たちの「基準」にあてはまらない、立場の弱い者への嫌悪、そうした者たちを攻撃してもかまわないという了解。この憎しみの奔流に呑み込まれないためには、どうしたらいいのだろう。
 著者エムケは言う。憎しみは、何もないところからは生まれない。なぜ悪むべきかという「理由」は、誰かがつくらないと存在しない。憎しみは、いまに始まったことではなく、じつは長い歴史をもっている。
 いま大切なことは、憎しみの歴史に新たな1ページを加えることではなく、基準から外れたとしても幸せに触れて生きる可能性をつくっていくことではないだろうか。
 著者カロリン・エムケはドイツのジャーナリスト。自分とは「違う」存在をつくりだし攻撃するという、世界的に蔓延する感情にまっすぐに向き合った本書は、危機に揺れるドイツでベストセラーになった。いまの世界を読むための必読書。
   [現代社会・暴力・ポピュリズム](四六判・216頁・3600円)

齋藤純一さんの書評「多様性ゆえの安定、再構築を」から(『好書好日』2018.06.02>『 朝⽇新聞』2018年04月21日)
憎しみに抗って―不純なものへの賛歌 [著]カロリン・エムケ
 このところ「ヘイトスピーチ」や「ヘイトクライム」といった「憎しみ」を含む言葉を耳にすることが多くなった。実際、ネット上では憎悪表現が当たり前のように飛び交っている。その標的とされ、心身に深い傷を被っている人も少なくないはずである。
 ようやくたどり着いたドイツで住民から罵声を浴びせられる難民[*1]、アメリカで警官の暴力的な取り締まりにさらされる黒人[*2]、国境での保安検査で屈辱的な扱いを受けるトランスジェンダー(「自然」とみなされる性別が本人の感覚と合致しない人)。本書が取り上げるのは、何を語ったか、何を行ったのかとはまったく無関係に、侮蔑や憎悪を投げつけられる人々である。
 本書を読んであらためて重要と感じるのは、憎しみを引き起こす原因とそれが向けられる対象の間にはほとんど関係がない、ということである。難民や移民はいわば叩(たた)きやすいから憎しみの標的とされる。彼らをいくら叩いたところで、生活不安がなくなるわけではないのにもかかわらず。人に憎しみの感情を抱かせる原因は複雑で解消しがたい一方、標的の選択は単純で、感情の投射は容易である。
 「彼ら」を締めだせば「われわれ」は安全や豊かさを取り戻すことができる。こうした考え方はなぜ執拗(しつよう)に現れるのか。「同質なもの」、「純粋なもの」は予(あらかじ)め存在せず、「異質なもの」、「不純なもの」を特定し、それを排除することを通じてつくりだされる。このメカニズムが、反ユダヤ主義とホロコーストの経験と記憶をしっかりと刻んだはずのドイツでいままた反復されようとしている。余所者(よそもの)は「少しくらい満足しておとなしくなるべきではないか」という感覚はすでに一部だけのものではなくなっている。
 一昨年ドイツで上梓(じょうし)された原著は10万部を超すベストセラーとなり、12カ国語に翻訳されているという。移民を排除すべしという主張は、いまや多くの社会で公然と語られるようになり、それは、憤懣(ふんまん)の捌(は)け口を求める需要に応えている。この本がいま広く読まれているのも、多様な諸価値やそれらのハイブリッド(不純)な交流を肯定する規範が明らかに壊れつつあるという危機感ゆえであろう。
 自身も性的マイノリティに属する著者は、文化的、宗教的、性的な多様性のなかでこそ落ち着くことができる、と言う。多様性ゆえの安定、排他的ではない安全性を構築しなおすために、どのような言葉や行為が必要なのか。私たちは「他者を傷つける能力」を併せもつだけに、そしてその能力はたやすく行使されるがゆえに、いかに憎しみに抗するかという問いをおろそかにするわけにはいかない。
    ◇
 Carolin Emcke 67年生まれ。ジャーナリスト。「シュピーゲル」「ツァイト」の記者として世界各地の紛争地を取材。2014年よりフリー。16年にドイツ図書流通連盟平和賞。
*1:2016年2月18日、ドイツのクラウスニッツで、難民の乗ったバスを百人以上の群集が取り囲んで罵声を浴びせ、立ち往生させる事件が起こった。多くは近所のごく普通の住民だったという。その様子はSNSで瞬く間に拡散し、おびえる難民の子どもや、手をこまぬく警官の様子も映っている。それまでのドイツはありえなかったこの事件は、社会に潜む亀裂をあらわにした。[前掲「書誌情報」より引用]

*2:2014年7月17日にニューヨークのスタテンアイランドで警察官が逮捕にあたって禁じられている絞め技で黒人男性エリック・ガーナーを死亡させた事件。(「エリック・ガーナー窒息死事件」>Wikipedia)
1.はじめに
2018年8月末から9月はじめにかけての2週間、ドイツ社会はこの話題に揺れた。[8月26日]東部ザクセン州の都市ケムニッツでおこったある殺人事件をきっかけに、極右勢力が大規模なデモをおこない、街中で外国人を狩りたてて暴行したり、警察や反対する左派勢力と激しく衝突したりしたのだ。
日本でも、この事件は大手マスコミ各社が取りあげた。しかし、それらの報道は事件の概要を断片的に伝えるのみであり、この事件がドイツ社会にあたえた衝撃についても、またこの事件を近年のドイツ社会の動きに対してどのように位置づけるかについても、説明が不足している。……
2.ケムニッツ市記念祭での殺人事件
3.事件をめぐる数々の謎
4.なぜケムニッツだったのか
5.なぜドイツ東部なのか、なぜザクセン州なのか
6.「憂慮する」市民たち
ケムニッツをはじめとする外国人に対する暴力事件は、けっして一部の過激な極右の人間やならず者たちによって引き起こされたのではない。その背後に外国人に敵意を持ち、暴力に参加はしないまでも、それを容認する大勢の市民たちがいる。すでに上述のロストックの事件[*3]の際も、外国人労働者の宿舎が燃え上がると喝采を送った住民がいたし、なかには自宅にあった予備のガソリンを火炎瓶を作るためにネオナチたちに提供した者もいた。……
……難民であれ労働者であれ外国人に対して警戒的な人びとは一定程度いる。彼らは自らを「憂慮するbesorgt」市民たちと呼んでいる。
この言葉は、2018年の夏頃、ケムニッツの事件とちょうど相前後して盛んに取りあげられるようになった。その主張は、「われわれは外国人に反対しているわけではない、しかし……」というフォーマットに集約される。自分たちは人種主義者ではない、しかし今のところドイツには外国人が増えすぎている。このままではうまくいかない。ドイツで暮らすからには最低限われわれのやり方・流儀には従ってもらわねばならない、というわけである。
こうした「憂慮する」多くのひとびとが、数の上では少数である極右勢力によるあからさまな外国人排斥の活動を下支えし、その温床となっているのである。
ドイツの女性ジャーナリストのカロリン・エムケは、ヘイト犯罪に関する著書『憎しみに抗って』(2016年、邦訳みすず書房、2018年)のなかで、2015年夏のクラウスニッツの事件について詳細に分析している。彼女によれば、難民を乗せたバスが同地の収容センターに到着したとき、その行く手を阻んで「われわれこそが国民だ」と叫び、罵声を浴びせたり唾を吐きかける真似をしたのは、およそ100人ほどの住民たちだった。
しかし、エムケによれば、その場には、第2のグループとして大勢の傍観者たちがいた。誰ひとり騒ぎを止めようとせず、その場を立ち去りもしない。傍観者がいることによって、バスのなかにいる人たちに対峙する群衆はその分、数が増えたことになった。彼らの存在は、暴徒たちをさらに勢いづかせることになったとエムケは主張する。「彼らはただそこに立って、わめく者たちを注視する場を形成している。その注視をこそ、わめく者たちは必要とするのだ。自身を『国民』だと主張するために」(同訳書51頁、一部改変)。
エムケによれば、「憂慮する」市民たちは、自分たちは人種差別や極右と一線を画しているように見せかけているが、その仮面の下にあるのは「異質なものへの敵意」である(同訳書38頁)。この考えは、経済的好況の影で格差が広がりつつあることへの不満と結びつき、難民受け入れを進めるメルケル政権に対する批判へと、さらに大手マスコミが事実を伝えていないというメディア批判へとつながっていく。
ドイツ東部には、このようなメンタリティがドイツの他の地域よりも強固に根を下ろしつつある。2017年7-8月の世論調査では、「連邦共和国は外国人によって危険な度合いにまで過剰に外国化(überfremdet)されつつある」という見方に賛成の意見が、ザクセン州では回答の56%にのぼった。62%が「当地で暮らしているイスラム教徒はわれわれの価値を受け入れていない」と考えており、38%が「イスラム教徒の移民を禁止すべきだ」という意見である。
7.極右政党とネオナチの結合
8.ドイツ社会の和解のレジリエンス
現在のドイツでは、「憂慮」に覆い隠されたかたちで他者に対する憎しみが横行しており、それは「権利を奪われ、社会から取り残され、政治的対応からも置き去りにされる人間の集団が生まれる前触れ」ではないのか、とカロリン・エムケは問うている(同訳書40頁)。
あるいはそうなのかもしれない。予断は許されない。しかし、状況はそこまで危機的ではないと思わせる要素もまた存在している。
それは、ドイツ社会には、和解のレジリエンスとも言うべきバランス回復の機能があるからだ。レジリエンスとは、元来は物質が外的な力を受けた際に元に戻ろうとする力を意味し、転じて心理学用語として個人の内面がストレスに抗して回復する能力として用いられていたが、最近では社会の危機的状況や災害からの機能回復や復興をさして使われるようになっている。
1990年代前半以来くり返されてきた外国人に対する暴力事件は、たしかにドイツ社会のなかに大きな傷を開けた。しかし、その傷口をただちに閉じ、苦痛を癒やし、社会の統合を再構築する動きが、随所で即座に自発的に出現するのだ。……
9.レジリエンスの動揺?
ケムニッツの事件に対して、ドイツ社会はこのような和解のレジリエンスを機能させることで、傷口を閉ざし、危機を乗り切ったかに見える。ドイツ社会の統合とコンセンサスはいま一度守られ維持されたのだろうか。レジリエンスは、万能のものとして機能しているのだろうか。
残念ながら、現実はそう簡単ではない。ケムニッツの事件とその顛末には、ドイツ社会のレジリエンスが動揺し変化しつつある兆候を見て取ることが可能である。これは、とくに事件に対する政治家の発言に見て取ることができる。暴力が振るわれたことに対しては、断固たる拒絶の意思を示すものの、外国人への連帯や共生社会への賛成を示す力強い言葉はそこにはほとんど聴かれず、むしろ難民を厄介者扱いし、非難するような発言が目立った。……
10.おわりに――レジリエンスと「憂慮する」市民たちの今後
……「憂慮する」ことが当たり前になりつつあるドイツ社会では、外国人に対する大小の暴力事件は、残念ながら今後も完全にはなくならないだろう。ケムニッツのような感情的な暴発もまた予期されるところである。
しかし、そうした事件のあと、今後も和解のレジリエンスが発動されることもまた確実である。多くの人が自発的に立ち上がり、街頭に出て、あるいはネット上で暴力にノーを叫ぶだろう。多くの抗議声明が出され、評論家は口角泡を飛ばして論じ、政治家は美辞麗句をちりばめた名調子で事件を非難し、今後の再発防止を誓うだろう。
しかし、もしかすると、和解のレジリエンスは、ひとびとの善意と真心を借りて、外国人への暴力事件がひとたびあったとしても、その衝撃を緩和し、社会を何事もなかったかのように修復してしまう魔法の道具、一種の通過儀礼にすぎなくなっていくのかも知れない。そうなれば、やがてはAfDや極右さえ、何食わぬ顔でレジリエンスに参加していくようになるかも知れない。
とはいえ、このようなドイツ社会のレジリエンスのあり方は、何かの事件が起こるたびに、お茶の間の賞味期限が過ぎるまではさんざんにマスコミが取りあげ、プライヴァシーを無視した取材をおこない、面白おかしく報道し、話題を独占しておいて、その後何の反省もなく完全に忘れ去られる社会より、どれほどいいか知れない。それはドイツ市民社会の本領発揮であり、精華である。
(11.2019年3月21日加筆)
2019年3月18日、ドレスデンのザクセン州立裁判所で、ケムニッツ殺人事件の容疑者の裁判が始まった。これをきっかけに、昨年夏の事件はもう一度ドイツ世論の注目を浴びることになった。……
*3:1992年8月にはロストック=リヒテンハーゲンでベトナム人労働者の宿舎が放火され、4日間にわたって警官隊とネオナチが激しい衝突を繰り広げた。

岩殿E地区の枯れ草刈り終わる 1月3日

昨日、刈り残した道下の区画と道上の刈れ草刈りをして、岩殿E地区は終了。
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上段のヌマトラノオの群落部分は水がたまって湿地化しています。黒い部分は以前、刈り草を燃した灰。



道下の枯れ草刈り 1月2日

岩殿E地区の道下の枯れ草刈りをしました。9月21日以来です。
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元日の岩殿田んぼ 2020年

あけましておめでとうございます!!
岩殿満喫クラブの活動は7年目になります。今年もよろしくお願いします。
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※※元日の岩殿田んぼ写真:2014年15年16年17年18年19年
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