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国立環境研「実験水田を用いた農薬の生物多様性への影響変化」

3月17日の『朝日新聞』に、「農薬 トンボへ悪影響」「水田実験で生息数に差 国立環境研」という記事が掲載されていました。国立研究開発法人国立環境研究所生物・生態系環境研究センターの記者発表・配布資料(3月16日)もとづくものです。
  国立環境研究所は実験水田を用いて、ネオニコチノイド農薬など浸透移行性殺虫剤が、トンボ類を含む水田の生物相に対してどのような影響を与えるのかを調べました。
   その結果、以下のことが明らかになりました。

①フィプロニルが使用された水田で一部のトンボ種の発生に強い負の影響が見られたこと

②試験薬剤であるクロチアニジン、フィプロニル、及びクロラントラニリプロールはそれぞれ使用された水田内において、その水中濃度は適用後3か月以内に検出限界程度に減少するが、土壌中では栽培シーズン終了時まで比較的高濃度で検出されること

   本研究成果は、現在、国内でも広く使用される浸透移行性殺虫剤が土壌に吸着しやすく、長く留まる傾向が強いことを示すとともに、一部の殺虫剤は水田中においてトンボ相に深刻な影響を及ぼすリスクがあることを示しています。このことは、現在の農薬登録の枠組みにおいて審査を通過した農薬であっても、一部の野生生物に予期せぬ影響をもたらす可能性があることを意味しています。そのような予期せぬ影響をいかに予測可能へと近づけるかが今後の課題であり、種の多様性や生態系の多様性を考慮した農薬のリスク評価システムを構築して行くことが重要であると考えられます。
   この研究成果をまとめた論文が、2016年3月16日(日本時間午後7時)に英国科学誌(オープンアクセスジャーナル)「Scientific Reports」に掲載されました。
以下、配付資料は、1.背景、2.方法、3.結果と考察(①農薬濃度、②水田生物群集への影響、③ショウジョウトンボ、及びシオカラトンボの発生数の比較)、4.今後の課題、5.問い合わせ先、6.発表論文、7.参考論文、と続きます。
4. 今後の課題

   2004年以降、国立環境研究所では、実験用水田を用いたメソコズム試験を通じて、農薬など、化学物質が生態系に及ぼす影響の評価を行ってきました(例えば、参考論文2-4)。これまでの結果から、薬剤によっては環境中で速やかに分解するもの、あるいは逆に環境中に長く留まるものもあり、その特性によって、影響を受ける生物が異なることや、僅かな薬剤成分でも水田中の生物多様性に大きな変化が生じることを示してきました。

   今回の研究では、近年特にその環境影響が議論されている水稲用浸透移行性殺虫剤についてメソコズム水田における生物相への影響を調べましたが、これまでの研究成果と同様に、剤によって水田の生物相に及ぼす影響が異なることが明らかになりました。特に今回調査した薬剤の中では、ネオニコチノイド系殺虫剤であるクロチアニジンよりも、フェニルピラゾール系殺虫剤のフィプロニルの方がトンボ類に対して強い影響を示すことも判明しました。これまでにもフィプロニルがトンボ類に影響を及ぼすことは指摘されてきましたが(例えば、参考論文1, 5)、今回のメソコズム試験の結果は実際の水田により近い環境条件において、トンボに対する顕著な影響を実証したことにより、これまでの結果を大きく前進させるものです。また、今回調査したいずれの農薬も水田中の土壌に吸着して長時間土壌中に留まることが示されました。今後、この土壌中に残った成分が次年度以降にどのような動態を示すのか、またその結果生物群集にどのような影響を及ぼすのかという、長期間の生態影響についても追跡して調べる必要があります。

   メソコズム試験によって複雑な生態系における農薬の生物相に対する影響を検証することが可能となりました。ただし、メソコズムはあくまでも限られた空間に設計された実験生態系になります。そこで観察された生態影響が実際の野外の水田環境で起こっている生物多様性の変化にどのように反映されるのかを知るためには、さらなる詳細な実験と調査が必要とされます。特に、近年減少が懸念されているアキアカネは今回のメソコズム試験では調査対象とすることができなかったため、本研究で示されたトンボ類への影響がアキアカネでも同様に生じるかについては今後の研究課題となります。

   農作物の栽培において殺虫剤は害虫の発生をコントロールするために必要な資材であり、今後可能な限り、生態系や生物多様性に対する影響に配慮しながら活用していくことが望まれます。そのような生態系への影響に配慮した農薬の活用を実現するためには、今回の研究で示されたような科学的知見の集積が必要となります。今後、生物多様性に対する負荷を軽減できる農薬やその施用方法を選択する手法を開発するために、本研究で行なったメソコズム試験のさらなる活用が期待されます。

   なお、本研究は環境省 環境研究総合推進費2013年度開始課題4-1303「農薬による水田生物多様性の総合的評価手法の開発」(課題代表者:林 岳彦 国立環境研究所 主任研究員)により実施されました。
※『Scientific Reports』に掲載された論文「A. Kasai, T. I. Hayashi, H. Ohnishi, K. Suzuki, D. Hayasaka and K. Goka. (2016) Fipronil application on rice paddy fields reduces densities of common skimmer and scarlet skimmer

※ネオニコチノイド系7種(アセタミプリド、イミダクロプリド、クロチアニジン、ジノテフラン、チアクロプリド、チアメトキサム、ニテンピラム)と、フィプロニル、クロラントラニリプロールなどを含有する農薬の商品名については、独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)の「農薬登録情報提供システム」で検索、ダウンロードできます。

※当ブログの「ネオニコチノイドを含む記事」、「トンボを含む記事」。

育苗箱施用農薬の水生生物への影響

家の光協会発行の『地上』に連載されているコラム、松永和紀「食と農を科学する EBRのススメ!」の12回「育苗箱施用の農薬は悪いのか? 国立環境研究所が調査」が2015年10月号(80頁)に掲載されています。EBR:Evidence Based Agriculture(科学的根拠に基づいた農業)
 農薬の安全性は、食べる人、使う人への影響を極力小さくすることに加え、「ターゲットの病害虫以外の生き物への影響」を検討しなければなりません。自然界には数えきれないほどの生物種がいて、すべての事前チェックは不可能。でも、農薬を使わなければ、食料の安定生産は難しい。そのジレンマのなかで、農薬開発は行われています。
 稲作での殺虫剤の使用は作業が楽で効き目が長く続く育苗箱施用が一般的。作物の根や葉から成分が吸収されて作物の体内に移行し、葉を食べた虫が死ぬ(浸透移行性)。
国立環境研究所の実験用のミニ水田で、ネオニコチノイド系のイミダクロプリド(製品名:アドマイヤー)とフェニルピラゾール系のフィプロニル(製品名:プリンス)を用いて、殺虫剤を使用した群としていない群を比較する試験を3年間行った結果、二つの殺虫剤共に複数年にわたって使用すると水生昆虫への影響が大きくなり昆虫が減っていくことがわかってきた(特にフィプロニル)。動物プランクトンやイトミミズ類などの底生生物の数は一時的に影響を受けてもまた戻った。メダカへの影響は死亡率には変化はないものの、体が小さくなった(殺虫剤の影響か餌のプランクトンの一時的減少のためなのか、詳細はまだ不明)。
 農薬は、水生生物にたいしても問題がないことが試験で確認したうえで登録されていて、販売や使用が始まります。しかし、その方法はOECD(経済協力開発機構)が決めた国際的なルールに基づくもの。藻類、ミジンコ、魚類の三種をそれぞれ容器で飼い、水に農薬を溶かし込んで影響をみます。イミダクロプリドもフィプロニルも、この試験はパスしています。しかし、実際の水田の影響はとても複雑。環境研究所の研究者により、OECDの方法では不十分であることがわかってきたのです。
 二つの殺虫剤を禁止した時に使われる殺虫剤(たとえば有機リン系農薬)がよりよいものなのか、環境研究所は研究を継続。実際の田んぼでの調査もすすめている。
……どの農薬をどのように使うのが、多くの生物と共存しながら食料生産を維持できる方法なのか。科学者の模索はずっと続いているのです。
※2015年7月15日、国立環境研究所で公開シンポジウム『ネオニコチノイド系農薬と生物多様性〜 何がどこまで分かっているか? 今後の課題は何か?』が開催され、OECDルールの問題点が議論された。

岩殿C地区の田んぼの除草 8月28日

岩殿C地区の上の田んぼの除草を澤田さんとしました。7割程度終わりました。
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※イネの穂にカメムシがついて汁をすっていました。カメムシの吸汁により変色した着色粒が斑点米です。玄米の検査規格では着色粒の混入率が0.1%超で二等米、0.3%超で三等米、0.7%超で等外米に格付けされてしまいます。2005年度東北地方産米の2等以下に格付けされたものの45.1%はカメムシ類による着色粒の混入過多でした。混入率0.1%超とは、1000粒(にぎり寿司2個くらい)で2粒弱です。米の価格は60㎏で600円から1,000円安くなります。米の検査で等級が下げられると農家は収入が減ってしまうので、カメムシ防除の農薬を散布します。水稲で使用する殺虫剤で一番多いのがカメムシ防除の農薬(有機リン系、ネオニコチノイド系)だそうです。斑点米は健康に悪いわけでも、味が落ちるわけでもない。安全性には全く問題がないとされています。また、斑点米は色彩選別機ではじかれ、さらに精米するので消費者に届くときにはほぼ消えています。外観重視の検査規格が過剰な農薬散布につながっているのではと危惧します。(→今野茂樹「(私の視点)コメの検査規格 消費者に有用な制度に」『朝日新聞』2015年5月2日掲載。『米の検査規格の見直しを求める会』のHPから全文を読むことができます。)
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※田んぼのウスバキトンボ
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公開シンポジウム『ネオニコチノイド系農薬と生物多様性』 7月15日

つくば市の国立環境研究所で開かれた公開シンポジウム『ネオニコチノイド系農薬と生物多様性〜 何がどこまで分かっているか? 今後の課題は何か?』に参加しました。会場の大山記念ホールは200人をこす参加者で、この問題に対する関心のひろがりを感じました。
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「ネオニコチノイド系農薬の基礎知識」永井孝志(農業環境技術研究所)
「ネオニコチノイド系農薬等のハナバチ類への影響」中村純(玉川大学)
「ネオニコチノイド系農薬の生態リスク評価」五箇公一(国立環境研究所)
「水田におけるネオニコチノイド系農薬影響実態」日鷹一雅(愛媛大学)

※白井洋一「ネオニコチノイド系殺虫剤とミツバチ減少の関係 クロかシロかはっきりしない理由」(HP『FOOCOM.NET』)

有機稲作ポイント研修会 7月10日

かわごえ里山イニシアチブ主催『有機稲作ポイント研修会』第4回に参加しました。前回と同様に、民間稲作研究所の稲葉光圀さんの指導です。川越市福田の耕福米高梨農園の田んぼでイネの生育診断、その後、北部ふれあいセンターに移動して座学しました。3月14日4月18日5月28日の研修会に続くものです。
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今回は、実証田の雑草と抑草の成功事例&失敗事例、イネの分げつの規則性、ネオニコチノイド系農薬の危険性などについて学びました。苗半作と言われているように健苗を作ること、水管理がきちっとできる圃場整備をすること、根腐れしやすい田んぼでの長期間の湛水(冬水田んぼ)の注意など、今後の田んぼづくりにとてもためになる4回の研修会でした。

アキアカネの減少

 赤トンボ(アキアカネ)が激減し、その原因がイネの育苗箱に入れるネオニコチノイド系の農薬にあるという記事があります。児沢ではサンショウウオやカエルが産卵し、夏はホタル、秋には赤トンボがとびまわっていますが、児沢の田んぼからアキアカネが育っているのでしょうか。
 寄居町のむさしの里山研究会代表・新井裕さんは、埼玉県でのアキアカネの減少の主因は、耕作放棄水田の増大と6月に田んぼに水を入れるまでの田んぼの乾燥にアキアカネの卵が耐えられず干からびることにある。5月10日頃までに田んぼに水を入れると、アキアカネの卵は干からびることなく孵化できると考えています。
 児沢の田んぼは、季節を問わず田んぼに水を入れることができので、新井さんに協力して児沢の田んぼでアキアカネの孵化と田んぼの湛水時期(5月上旬と6月上旬)との関係を調査します。田植えや湛水の時期、水深など、赤トンボと共存できる稲作をめざします。

アキアカネの減少(ネイチャーガイド『日本のトンボ』文一総合出版、2012年、70頁)
 かつて、秋ともなれば何千、何万とみられたアキアカネは、1990年代の後半から、全国各地で激減している。その原因として最近有力視されているのが、稲作において、イネ苗といっしょに水田に埋め込まれている箱処理材である。
 箱処理材の代表的な農薬である「イミダクロプリド」は1993年、「フィプロニル」は1996年から全国に出荷されているが、これらはアキアカネ幼虫の致死率を上げることが実験によって確認され、特にフィプロニルを使用した場合に、致命的な影響を及ぼすことが報告されている。実際、北陸地方におけるアキアカネやノシメトンボの確認個体数の変化(減少)は、フィプロニルの出荷量と年代的な相関がみられる。
 なお、地域によっては、水田の中干し時期の変化といった複数の要因もまた、減少の原因として考えられている。
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