岩殿満喫クラブ 岩殿 Day by Day

市民の森保全クラブ Think Holistically, Conduct Eco-friendly Actions Locally

ESD・SDGs

SDGsフォーラム「みんなで捉えろ!気候変動と生物多様性」(上田市) 2月23日

雨天で市民の森保全クラブの活動が中止になったので、午前・午後、SDGsフォーラムin信州上田「みんなで捉えろ!気候変動と生物多様性」(主催:上田市、共催:上田市環境衛生協議会、筑波大学山岳科学センター長野県環境保全研究所)を視聴しました。
気候変動と生物多様性1気候変動と生物多様性2
「雪が少なくなった」「桜の開花が早いなぁ」―暮らしの中で感じる気候や自然の変化、実際はどうなっているのでしょうか?気候変動の実際や生物多様性の課題に、科学的な視点から迫ります。午後は、世界に誇る信州上田の生物多様性を紹介し、自然共生サイトに登録された草原の維持について30by30として取り組むキリンホールディングス株式会社の取り組みを紹介します。地域の自然を味わい、維持していくことの重要性について、ぜひ聞きにきてください。
《午前の講座》まだまだ知らない気候変動のお話
①気候変動入門:私たちはどうなる?どうする? 廣田充(筑波大学)
②信州の気候はどう変化? 栗林正俊(長野県環境保全研究所)
③みんなの情報で将来の気候変動からライチョウを守る!  堀田昌伸(長野県環境保全研究所)
④信州の味噌からみえる気候変動の影響 高橋聖(信州大学繊維学部3年生)
長野県内の味噌屋さんにヒアリングをし、長野県を代表する食品“味噌”に何が起こっているかを最近よく聞く(と思う)気候変動と絡めてまとめてみました。
気候変動が起きると何が起きるのか?強いて言えば最近暑くなった?なかなか想像出来ないと思います。今回は身近な食品の味噌と絡めて何が起きているかを発表します。
面白そうなことの一環で,年に1回,興味のあるテーマについて長野県環境研究所と連携し調べています。今年で2回目。去年は長野県の各地域の特産物と気候変動をテーマに皆で分担して調査を行いました。私は東信地方の農産ということでリンゴを担当。今年は発酵食品と言うことで味噌についてやりました。今年は私のみの個人戦。普段忘れた頃に実験発表を十数人規模の前でガタガタ震えながらやるような私が、果たして大人数の前で発表しきることができるのか?よろしくお願いします。
《午後の講座》生物多様性の育て方~人と自然が共生する信州上田~
⑤上田の身近な自然の魅力~高原・ため池・山城の草原再生~ 田中健太(筑波大学山岳科学センター)当ブログ2月28日記事
⑥シャトー・メルシャン椀子ヴィンヤードにおける生物多様性と「30by30」 藤川宏(株式会社キリンホールディングス)
キリングループのCSV経営と環境ビジョン、長野県上田市にありますシャトー・メルシャン 椀子ヴィンヤードにおける自然環境についてお話しします。
キリングループの環境ビジョン「ポジティブインパクトで、豊かな地球を」と、それを掲げる背景をご説明した後に、長野県上田市にある「シャトー・メルシャン 椀子ワイナリー/ヴィンヤード」における事業や取り組みを通じて、自然環境にどのような良い影響を与えているのかについて発表します。
信州上田学
現在、少子高齢化社会の進展により、深刻化する地域の担い手不足とこれに伴う地域経済活動の縮小が顕在化しており、今後も高齢者人口の増加と地域の担い手となる生産年齢人口(15歳~64歳)、年少人口(14歳以下)の減少は続くものとされています。
 こうした現状を踏まえて、上田市では、持続可能な地域の創出に向け、地域に脈々と受け継がれてきた歴史、文化、自然、風土、産業等を「学ぶ」ことで、住民が「住み続けたいと感じる地域づくり」、地域を離れて進学した学生が「ここに帰ってきたいと感じる人づくり」を行い、さらには、「上田を離れても地域を想い続けてもらう人づくり」につなげていくことを目的として、信州上田学を積極的に推進していきます。
※信州上田学の学びの手法「上田メソッド」(上田市立長野大学『信州上田学』
  地域で・地域と協働する学び 地域課題解決の方法論
上田は「信濃自由大学発祥の地」であり、この地の人々が自ら学び地域を築いてきた歴史と気風があります。この伝統に基づき、「信州上田学」は、単に地域のあれこれを教え込むものではなく、大学という研究機関が中核となり、地域と学生がともに自ら学び続け地域を創造する、「研究」と「人づくり」の中核をなす地域学です。
◎地域の魅力を掘り起こし、ローカルナレッジを普遍的視野から再構築、再評価し、地域資源を創造する地域学の創造
◎地域の豊富な資源を持続的に活用して地域の発展を牽引できる人づくり
・ 地域の豊かさや地域の人々に触れ、自ら地域づくりに関わっていく過程を通して、地域に愛着を感じ、自分が生きていく場としてこの地域を選ぶ若者の増加も期待される
・ 圏外の出身地へ就職しても、自らの地域の発展を牽引するとともに、信州上田をよく知り、出身地と信州上田をともに発展させていく、いわゆる「関係人口」の増大が期待される

田口一成『9割の社会問題はビジネスで解決できる』② 4月5日

ボーダレス・ジャパン
ボーダレス・ジャパンの定款前文は本にも掲載されていますが、サイトの「ボーダレスとは」、「私たちの考え方」を読むと理解が深まります。
社会の不条理や欠陥から生じる、貧困、差別・偏見、環境問題などの社会問題。
それらの諸問題を解決する事業「ソーシャルビジネス」を通じて、
より良い社会を築いていくことが
株式会社ボーダレス・ジャパンの存在意義であり使命です。

株式会社ボーダレス・ジャパンは、
社会起業家が集い、そのノウハウ、資金、関係資産をお互いに共有し、
さまざまな社会ソリューションを世界中に広げていくことで、
より大きな社会インパクトを共創する「社会起業家の共同体」です。

ここに集う社会起業家は、
利他の精神に基づいたオープンでフラットな相互扶助コミュニティの一員として、
国境・人種・宗教を超えて助け合い、良い社会づくりを実現していきます。

1 すべての事業は、貧困、差別・偏見、環境問題など社会問題の解決を目的とします。
2 継続的な社会インパクトを実現するため、経済的に持続可能なソーシャルビジネスを創出します。
3 事業により生まれた利益は、働く環境と福利厚生の充実、そして新たなソーシャルビジネスの創出に再投資します。【恩送りのエコシステム ボーダレスの福利厚生
4 株主は、出資額を上回る一切の配当を受けません。
5 経営者の報酬は、一番給与の低い社員の7倍以内とします。
6 エコロジーファースト。すべての経済活動において、自然環境への配慮を最優先にします。
7 社員とその家族、地域社会を幸せにする「いい会社」をつくります。【ボーダレスイズム
8 社会の模範企業となることで、いい事業を営むいい会社を増やし「いい社会」をつくります。
第3章以外でチェックした箇所です。
第1章 「社会問題を解決するビジネス」を次々と生み出す仕組み
 世界に広げていく仕組み①
  恩送りのエコシステム -余剰利益は共通のポケットに
 世界に広げていく仕組み②
共同体経営 -グループの全社長による合議制
多数決が採用されて、自分の意に反して物事が決まっていくなら、組織に対する「自分ごと感」は薄れていく
マイノリティの意見にはマジョリティが見逃していたユニークな視点があり、決して無駄ではない
 世界に広げていく仕組み③
  独立経営 -採用も報酬も自分で決定
 キャッシュフロー経営 -資金が尽きたら一旦終了
 出資額を超える株主配当は一切しない
 経営者の報酬は一番給与の低い社員の7倍以内

第2章 この“仕組み"がどうやって生まれたのか。その実験の歴史
 「貧困問題を解決したいなら、自分でコントロールできるようになりなさい」
寄付金には寄附者の意向が伴うし、助成金はその時々でテーマが変わる。じっくり取り組む必要があっても、常に資金との闘いでなかなかそうもいかない

第4章 ビジネス立ち上げ後の「成功の秘訣」
 月に1度の経営会議では、ここをチェックする
月次経営会議シート①経営状態
月次経営会議シート②①経営課題
 違和感はスルーしない
・当事者意識を持って社会参加する人たちを増やしたい
・小さく始める。これが確実に成功させるための鉄則
・より良い社会をつくりたいと願う消費者に対し、エシカルな選択肢をつくっていくのもソーシャルビジネスの大切な役割
・社会問題解決のためのビジネスは「何のために事業をやるのか」が明確なので、儲からないからといってすぐにやめるわけにはいきません

終 章 一人ひとりの小さなアクションで、世界は必ず良くなる
・僕たち市民は、どんな大企業より、どんな大物政治家より大きなパワーを持っています
・「無関心」なのではなく「未認知」
・自分の周りの世界から「いい生活者」を増やしていくことは、とても大きな社会づくり
・僕たちは「微力」ではあるかもしれないが、「無力」ではない
・大きな問題が目の前にあるのに、困っている人がそこにいるのに、どうせ無理だ、理想論だという傍観者ではありたくない
・「生まれた時よりも、きれいな社会にして死んでいく」

田口一成『9割の社会問題はビジネスで解決できる』① 4月4日

田口一成『9割の社会問題はビジネスで解決できる』(PHP、2021年6月)を読みました。
ボーダレス・ジャパン
ボーダレスマガジン特別号「ソーシャルビジネスの本を出版!『9割の社会問題はビジネスで解決できる』制作秘話を初公開!」ボーダレスジャパン、2021.05.28 )に、「これまで取材や講演で良く聞かれてきた、ボーダレスグループの仕組みとソーシャルビジネスのつくり方を余すところなく紹介しています。本当は2冊に分けるべき内容かも(笑)あとは、ボーダレスグループの社員もあまり知らない創業期の話。まとまった形ではどこにも出ていないので、読み物としても楽しんでもらえると思います」とありますが、第3章「社会問題を解決するビジネス」のつくり方はメモをとって読みました。

本書の構成と主な項目(Amazonの商品の説明から)
■第1章 「社会問題を解決するビジネス」を次々と生み出す仕組み
 ・資本主義の本質は「効率の追求」。そこから取り残される人がどうしても出てくる
 ・非効率を含めてビジネスをリデザインする
 ・社会起業家の数=解決できる社会問題の数
 ・ソーシャルビジネスをたくさんつくる仕組み(起業家採用など)
 ・世界に広げていく仕組み(恩送りのエコシステムなど)
 ・ソーシャルインパクト─売上・利益よりも重要な独自の指標
僕たちは社会問題を解決するために事業をしているので、その目的を果たすために自分たちが追いかけるべき成果を明確にした独自の指標を持っています。
それが、解決したい社会問題に対してどれだけインパクトを与えられたかを数値で表した「ソーシャルインパクト」です。
 ・【Q&A】ボーダレスグループの「リアル」。よくある質問・疑問に答えます!
■第2章 この“仕組み"がどうやって生まれたのか。その実験の歴史
 1.ソーシャルビジネスにたどり着くまで
 ・起業するも、寄付できたのはたったの7万円
 ・「ビジネスそのもので社会問題を解決できる! 」という気づきが大きな転機に
 2.ソーシャルビジネスしかやらない会社へ
 ・本当に「助けたい人」のためになっているか
 ・ソーシャルビジネスは、失敗できない闘い
 3.社会起業家のプラットフォームへ
 ・「1年に1事業」のペースでは遅すぎる!
 ・グループ外からも社会起業家を募るように
■第3章 「社会問題を解決するビジネス」のつくり方
 ・大原則「ビジネスモデルの前に、まずソーシャルコンセプト
 ・テーマ選びに原体験はいらない
 1.ソーシャルコンセプトを考える
 ・社会問題の「現状」「理想」「対策」を徹底的に考える
 ・当事者ヒアリングのコツは「行動」を聞くこと
 2.制約条件を整理する
 3.ビジネスモデルを考える
 ・ソーシャルインパクトを設定する
■第4章 ビジネス立ち上げ後の「成功の秘訣」
 ・「勝ちシナリオ」が見つかるまでは、仮説・検証をひたすら繰り返す
 ・成長期に入るまでは、絶対に社員を雇ってはいけない
 ・事業が成功するかどうかは、続けるかどうかにかかっている
 ・ボーダレスグループ6社の事例
■終 章 一人ひとりの小さなアクションで、世界は必ず良くなる
 ・まずは一人ひとりが「ちゃんとした消費者」になる
 ・みんなが「ハチドリのひとしずく」の精神で

第3章 「社会問題を解決するビジネス」のつくり方(書き抜き)
 プランニングのゴールは「1枚のシート」を完成させること
1.ソーシャルコンセプト:誰のどんな社会問題を、どのように解決して、どのような社会を実現していくのか
2.制約条件:ソーシャルコンセプトに当てはまるビジネスアイデアを考えるうえで押さえておくべき条件
3.ビジネスモデル:誰に・何を・どのように提供するのか。制約条件を満たした商品やサービスをビジネスに落とし込んだもの
 大原則「ビジネスモデルの前に、まずソーシャルコンセプト」
 ソーシャルコンセプトがなぜそんなに重要なのか
社会問題の原因に対する「対策」を忠実に体現した商品・サービスをつくり、それをビジネスモデルに落とし込んでいく
この順番でなければ、ピントの外れたビジネスモデルになってしまい、社会問題を解決する社会ソリューションになりません
ソーシャルコンセプトという社会作りの設計図=「幹」がしっかりあるからこそ、ビジネスアイデアという「枝葉」の部分はどんどん変えていける
 テーマの「ベスト探し」をやめて、まずは動いてみよう
ベターな選択肢の中から、最もベターな選択肢を一つ選らんで、まずそれをやってみる
一つに決めようとするから、先に進めなくなる
まずは一つをしっかり形にしてこそ、次の挑戦にいける
実際にやってみないことには、本当にやりたいことかどうかもわからない
 テーマ選びには原体験はいらない
原体験が邪魔することもあるので注意が必要
1.ソーシャルコンセプトを考える
 社会問題の「現状」「理想」「対策」を徹底的に考える
 1-1【現状】のチェックポイント-対象者の顔が見えるか?
どこの誰の話なのかを明確にしない限り、彼らが直面するリアルな課題や、その裏にある本質的な原因にはたどり着けない
地球温暖化はどうでしょう。こういう地球環境の問題は、対象者の「顔」が見えにくいと思うかもしれませんが、そんなときは「この問題を引き起こしているのは誰か」という視点で対象者を捉えます。そう考えると、地球温暖化の原因である二酸化炭素(CO2)を排出している対象者が企業であり、一般生活者である私たちでもあります。どういう産業が一番CO2を排出しているのか。また一般家庭で一番CO2を出しているのは何なのか。車か?電気か? そう考えていくことで、地球温暖化という大きな問題であっても、具体的な対象者を定め、その「原因」と「対策」を考えていくことができるのです。
 こうやって、対象者を定めていくと、社会問題にはたくさんの当事者がおり、それを引き起こしている原因もたった一つではなく、様々な原因がいくつも絡み合って起こっていることが分かってきます。いきなり課題に対して対策を考えても的外れになるよ、という理由はこういうところにあります
対象者を定めていくと、社会問題にはたくさんの当事者がおり、それを引き起こしている原因もたった一つではないし、様々な原因がいくつも絡み合って起こっていることが分かってきます
社会問題を引き起こしている原因が複数あらからといって、たった一つの対策でそのすべての原因を解決しようと慌ててはいけません
一つひとつの原因を丁寧につぶしていくのが、結果的に一番の近道
できるものから一つずつ確実の解決していくことが大切
多種多様な社会問題があり、そして多種多様な原因がある。その一つひとつに対して、たくさんの対策を講じていかなければいけない

 1-1【現状】のチェックポイント-課題は明確か?
課題を考える時は、「誰のどんな課題か」をセットで考える
 1-1【現状】のチェックポイント-課題の本質的原因か?
なぜその課題が起きているのかという「課題の本質的な原因」
表面に見える課題を掘り下げていくことでしか、本質的な原因を見極めることはできません。その際、常識や規制概念にとらわれないことが大切
 1-2【理想】のチェックポイント-景色として目に浮かぶか?
「具体的な姿」とは、「景色」として目に浮かぶ姿であること。変化したあとの対象者の暮らしが、まるで景色を見るように鮮明にイメージできることが大切
みんながそれいいね!という「みんなの夢」となる理想を描く
 1-3【HOW】のチェックポイント-原因に対する対策になっているか?
ソリューションとは、すなわち現状と理想のギャップを埋めるための対策
シートの書き方の注意点 原因と対策を太字にしましょう
箇条書きではなく、必ず文章で
箇条書きで書くと、いろいろな課題・いろいろな原因の列挙になりがちで、各要素の因果関係がよく分かりません
因果関係をはっきりさせるために、1~2文の文章で書くことをルールに
イケてないソーシャルコンセプトにならないように、「本当のようなウソ」に気をつける
ソーシャルコンセプトをつくる時に必要なのは、「それって本当?」と常に疑う姿勢
概念で考えるのではなく、リアルな現場に行く、当事者に会いに行く
そうしてはじめて、「自分はこういう人たちのために頑張りたいのだ」と当事者の顔がありありと浮かんでくる
 社会問題の本質的原因に対する独自の切り口が、独自の社会ソリューションへ
「これが本質的な原因だ」という唯一の正解があるわけではない
同じ社会問題を解決するのにも、社会起業家が3人いたら、三様の捉え方があります。実際には三様どころか、もっとたくさんの原因があるでしょう
その中で、自分はどの原因に対して対策を講じていきたいのか。それを追求していくことが大切です
みんなが同じことをする必要はないのです。もし、まったく同じソリューションをすでにやっているところがあればそこにジョインするのが一番です。ソーシャルビジネスというのは、みんなで社会の「穴」を埋めていく作業です。誰か一人で社会の穴を埋めきることはできません。だから、社会起業家に必要なのは、同じ穴を競争して取り合うことではなく、まだ放置されたままの隣の穴を埋める役割分担です。これからのビジネスに必要なのは、「競争」ではなく「協創」なのです
 当事者ヒアリングのコツは「行動」を聞くこと
アンケート調査はやらなくていい
ヒアリングでは、当事者に何を聞くかが重要
「では、今の状況から抜け出すために具体的に何をしていますか?」
聞いてもあまり有効な回答を得られないと思っているのが、ソリューション(解決策)に関する質問
「何があれば助かりますか?」という質問
いきなり、解決策を探そうとせず、当事者のおかれた状況、その課題が起こっている本質的な「原因」をつかむことに集中する
「いいと思いますか?」ではなく、「あなたは参加しますか?」と行動を聞く
 最低でも10人に話を聞く
3人程度の少人数では絶対にダメ
2.制約条件を整理する
ビジネスモデルを考える前にやるべきことがある
3.ビジネスモデルを考える
 制約条件をクリアするビジネスモデルを考える
この価格で売るのに、どんな付加価値をつけて誰に売るのか。ここではじめてビジネスアイデアが必要になってくる
 ビジネスモデルを考える上でのポイント(3-1~5それぞれのポイント)
  3-1 商品サービス
今すでにあるもののモノマねはいけません。同じようなものをつくっても、価格競争になるだけです。単純な価格競争は、消耗戦になり、コストを切り詰める戦い、つまり効率の追求にまっしぐらです。非効率を含めて成り立たせようとするビジネスには不利な領域です。また、単なるモノマネは、相手にとっても失礼なのでやめましょう。どうせやるなら、すでにあるものよりも圧倒的にいいものをつくる覚悟でいきましょう
  3-2 顧客と課題
どんな優れた商品であっても、全員が買ってくれるものはありません。「その商品・サービスを利用してくれる人は誰なのか? 顧客は誰で、どんな課題を持っているのか?」を明確にします
  3-3 今ある選択肢との違い
ビジネス用語でいうところの「差別化」
既存の商品・サービスと比べてどのような違いがあるのかを明らかにする
  3-4 顧客ベネフィット
顧客はただその商品を買いたいのではなく、その商品・サービスを利用することで何らかのベネフィット(便益)を得ようとしている
  3-5 価格/販売チャンネル/プロモーション方法
 ビジネスモデルの良し悪しを見極めるチェックポイント
「自分が顧客の立場だったら本当に利用するか?」
「自分が顧客だったらこの値段で本当に買うだろうか?」
 ビジネスモデルは、修正、修正を繰り返す
ソーシャルコンセプトさえ決まれば、制約条件が明確になるので、あとはそれを満たすビジネスアイデアを、いろいろな人の知恵を借りながら探すだけ
 ソーシャルインパクトを設定する
ソーシャルインパクトは、その社会問題がどれだけ解決されているかを測定するための指標
社会問題の解決を目的とするからには、その目的がどれだけ達成できたのかという結果を追うことは必須
なぜソーシャルインパクトの設定にこだわるのかというと、これがなければいつの間にか売上・利益重視のビジネスになりかねない
理念・ビジョンだけで、事業のソーシャルインパクトを設定していない、またはそれを数値として追っていない会社は、本気でそれを追いかけていない

12歳までに身につけたいSDGsの超きほん 1月6日

蟹江憲史監修『12歳までに身につけたいSDGsの超きほん』(朝日新聞出版、2021年7月)を読みました。小学校高学年からの児童書です。SDGs研究の第一人者蟹江憲史さんの著作に『SDGs(持続可能な開発目標)』(中公新書2604、2020年8月)もありますが、この児童書も読んでおくとよいでしょう。
SDGsの超きほん
「17の目標をきちんと理解しよう!」「将来の自分たちのためにできることとは?」「SDGsは未来の世界を生き抜くための新常識!」。マンガ+ワーク+図イラストつき解説の三つの手段で、知りたかったテーマがすっきりわかるシリーズ。タイムスリップしてきたネコロボット”ミライ”が、小学5年生のメイ、悟、理人へSDGsに取り組むためのヒントを与える。SDGsを自分事としてとらえ、身近な存在にするための本。
   
蟹江憲史監修『12歳までに身につけたいSDGsの超きほん』目次
1.貧困をなくそう
 世界のあらゆる場所のあらゆるかたちの貧困をなくそう

2.飢餓をゼロに
 飢えをなくし、だれもが栄養のある食料を十分に手に入れられるよう、地球の環境を守りながら農業を発展させよう

3.すべての人に健康と福祉を
子どももお年よりもだれもが健康で幸せな生活を送れるようにしよう

4.質の高い教育をみんなに
 だれもが平等によい教育を受けられるようにし、また一生にわたって学習できる機会を増やそう

5.ジェンダー平等を実現しよう
 男女差別をなくし、すべての女性と女の子の能力を伸ばし可能性を広げよう

6.安全な水とトイレを世界中に
 だれもが安全な水とトイレを利用できるようにし、自分たちでずっと管理していけるようにしよう

7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに
 だれもが、安全で現代的なエネルギーを安い価格でずっと利用できるようにしよう

8.働きがいも経済成長も
 だれもが人間らしい仕事をしながら、持続可能な経済発展を進めていこう。働かなければならない子どもをなくそう

9.産業と技術革新の基盤をつくろう
 災害に強いインフラを整え、新しい技術を開発し、みんなが参加できる経済発展を進めよう

10.人や国の不平等をなくそう
 国と国の間にある不平等や、国の中にある不平等を減らそう

11.住み続けられるまちづくりを
 だれもがずっとくらしていける、安全で、災害にも強いまちをつくろう

12.つくる責任つかう責任
 地球の環境と人々の健全な生活を守るため、責任を持って生産し、消費しよう

13.気候変動に具体的な対策を
 気候変動から地球と人々を守るために、今すぐ行動を起こそう

14.海の豊かさを守ろう
 海や海の資源を守り、持続可能な方法で利用しよう

15.陸の豊かさも守ろう
 森林を管理し、砂漠化を防いで、多様な生きものが生きられるようにしよう

16.平和と公正をすべての人に
 だれもが受け入れられ、すべての人が法律で守られる平和な社会をつくろう

17.パートナーシップで目標を達成しよう
 世界中の人が協力し合い、これらの目標を達成しよう
SDGsのすべての目標はつながっている:SDGsの17の目標は、3つの層に分けられる。「環境」(海や森林など、地球の環境を守るための目標6、13、14、15)によって、人間の「社会」(1、2、3、4、5、7、11、16)が支えられ、社会によって「経済」(8、9、10、12)の発展が成り立つ。頂点の「パートナーシップ」(17)が、目標全体のゴールになる。

中学校『公民』教科書のSDGs記述
  教育出版
   公民(教育出版)
  帝国書院

綿野恵太『みんな政治でバカになる』 1月5日

綿野恵太『みんな政治でバカになる』(晶文社、2021年9月)を読みました。
みんな政治でバカになる1

みんな政治でバカになる2

みんな政治でバカになる3

『みんな政治でバカになる』目次
はじめに
 ■認知バイアスゆえにバカげた言動をする
 ■ほとんどの人が政治的無知= バカである
第1章・大衆は直観や感情で反応する
第2章・幸福をあたえる管理監視社会
第3章・よき市民の討議はすでに腐敗している
第4章・ポピュリズムは道徳感情を動員する
第5章・もはや勉強しない亜インテリ
第6章・部族から自由になるために
あとがき

はじめに」は晶文社のサイトで公開されていて全文読めます。
 本書のタイトルは「みんな政治でバカになる」である。
「バカなんて許せない!」とイラッとした人も多いかもしれない。しかし、ちょっと待って欲しい。本は読まれなければ、意味がない。人間は「理性」よりもまず「感情」が反応することがわかっている。「バカ」という乱暴な物言いで、あなたの「道徳感情」に訴えかけて、本書を手に取ってもらったわけである。
 ところで、「許せない!」という「道徳感情」は政治に大きな影響を与えることがわかっている。「思想」や「利益」以上に「道徳」に基づいて私たちは政治を判断するようなのだ。しかも、「道徳感情」は私たちに「バカ」な言動を引き起こさせる原因でもある。
 2020年のアメリカ大統領選で民主党のジョー・バイデンが共和党のドナルド・トランプに勝利した。トランプは選挙に不正があったとして票の再集計を求め、その翌年にはトランプの勝利を信じる支持者たちが国会議事堂を襲撃し、多数の死傷者を出した。ドナルド・トランプが小児性愛者の秘密結社と闘うヒーローだという「Qアノン」と呼ばれる陰謀論が流行した。驚いたことに、日本においてもバイデンの当選をフェイクニュースだと唱える人びとがいた。
 なぜフェイクニュースや陰謀論が後を絶たないのか。それは私たちがバカだからだ。もう少し正確にいうと、私たちには人間本性上「バカ」な言動をとってしまう傾向がある。しかも、この傾向は政治がかかわるとさらにひどくなる。注意して欲しいが、これは「民衆は愚かだ」と決めつける愚民思想ではない。専門家や知識人といった知的能力が高い人でさえ、「バカ」な言動をとってしまうからだ。
認知バイアスゆえにバカげた言動をする
 「二重過程理論」という認知科学の有力な仮説がある。人間の脳内には「直観システム」と「推論システム」という異なる認知システムがあるという説である。図にまとめたように、ふたつの認知システムにはさまざまな呼称がある。本書では読者がぱっと見てわかりやすい「直観システム」「推論システム」を採用する。
 「直観システム」は、経験や習慣に基づいて直観的な判断をくだす。非言語的・自動的・無意識的であるため、素早く判断できる。しかし、間違いも多い。その間違いには一定のパターン=「認知バイアス」がある。
 「推論システム」は言語的・意識的な推論をおこなう。「直観システム」に比べて間違いは少ないが、時間や労力を必要とする。ざっくりいうと、「直観システム」と「推論システム」は「感情」と「理性」と言い換えられるかもしれない。
 すでにおわかりかもしれないが、「許せない!」という「道徳感情」は「直観システム」に当てはまる。「直観システム」は非常に重要な認知機能である。それなしでは私たちは日常生活を営めない。しかし、一定の間違いのパターン=認知バイアスがある。専門家や知識人といった知的能力の高い人でも、「認知バイアス」ゆえに「バカ」な言動をとってしまう(ジャン=フランソワ・マルミオン編『「バカ」の研究』田中裕子訳、亜紀書房、2020年)。
 池谷裕二『自分では気づかない、ココロの盲点』(朝日出版社、2013年)はクイズ形式で認知バイアスを学ぶことができる良書だが、ここから「政治」に関係する「認知バイアス」をざっと書き出してみよう。
◆後知恵バイアス 生じた出来事について「そうなると思った」と後付けする傾向
◆確証バイアス 自分の考えに一致する情報ばかりを探してしまう傾向
◆現状維持バイアス 「いままで通りでよい」と変化を好まない保守的な傾向
◆公正世界仮説 (世界は公正にできているから)失敗も成功も自ら招いたものだと因果応報や自己責任を重視すること
◆自己奉仕バイアス 成功したときは自分の手柄だと思い込み、失敗したときは自分に責任がないと思う傾向
◆システム正当化 たとえ一部の人に不利益があろうとも、現状を正当化したくなる傾向
◆ステレオタイプのバイアス 人種や性別や職種などの付加情報があると、その典型的なイメージに引きずられて記憶が歪められること
◆正常性バイアス 非常事態への対応を避けたがる傾向
◆生存者バイアス 成功者には注目するが、その背後に多くいるはずの敗者や犠牲者には注意を向けない傾向
◆ダニング=クルーガー効果 無能な人ほど(無能がゆえに自分の無能さに気づかず)自己を高く評価する傾向
◆敵対的メディア効果 自分の信念に沿わない報道は誤解や偏見に満ちているように感じる傾向
◆同調圧力 少数派が暗黙のうちに多数派の意見に迎合すること
◆内集団バイアス 仲間や家族を優遇する傾向。誕生日や名前が同じというだけでも仲間意識は生まれる
◆バックファイア効果 自分の考えに合わないことに出会ったとき、これを否定しつつ、自分の考えにさらに固執してしまう傾向
◆フレーミング効果 同じ情報であっても置かれた状況によって判断が変わること
◆利用可能性ヒューリスティック 事例を容易に思い出せるというだけで「正しい」と判定してしまう傾向(池谷裕二『自分では気づかない、ココロの盲点』)
 あなたの周りにこんな人はいないだろうか。会議では多数派にすぐに同調する(同調圧力)。経営者のビジネス書を読んで憧れを抱いている(生存者バイアス)。自分は優秀なのに正しく評価されていないと感じている(ダニング=クルーガー効果)。転職したいと思いながら、会社にズルズルと居続けている(現状維持バイアス)。
 もちろん、これらのケースで不利益を被るのは自分一人だ。しかし、政治になると話は別である。ニュースや新聞を見ても、自分の考えをなかなか変えようとしない(確証バイアス)。むしろ、最近のメディアは偏向報道ばかりだと怒っている(バックファイア効果、敵対的メディア効果)。少子高齢化、人口減少、貧困、格差社会、気候変動といった社会問題は知っているが、いまのままでよいと思っている(現状維持バイアス、システム正当化)。さまざまな危機が予測されているが、なんとなく大丈夫だろうと楽観視する(正常性バイアス)。
 注意すべきは、認知バイアスによって知的能力が高い人でも「バカ」な言動をとってしまうことだ。「自分の信念を裏付ける情報だけを集める」という「確証バイアス」があるが、「認知能力が優れている人ほど、情報を合理化して都合の良いように解釈する能力も高くなり、ひいては自分の意見に合わせて巧みにデータを歪めてしまう」ことが指摘されている(ターリ・シャーロット『事実はなぜ人の意見を変えられないのか-説得力と影響力の科学』上原直子訳、白揚社、2019年)。
 そして政治に大きく関係するのが、内集団バイアスである。「あいつら」=自らが所属しない集団(外集団、他集団)よりも、「われわれ」=自らが所属する集団(内集団、自集団)に無意識的な選好を持つ傾向である。たとえば、白人の担当者が就職面接をすると、同じ白人の候補者が合格しやすくなる。また、「われわれ」に比べて、「あいつら」を過度に一般化し、事実とは異なるステレオタイプに当てはめる傾向がある(外集団同質性バイアス、ステレオタイプ化)。このような内集団バイアスは幼少期から確認されていて、たとえば三歳児は自分と同じ人種の顔を好むことがわかっている(ニコラス・クリスタキス『ブループリント-よい未来を築くための進化論と人類史(上・下)』鬼澤忍、塩原通緒訳、ニューズピックス、2020年)。
 内集団バイアスは「われわれ」に忠誠を尽くすだけではない。注意すべきは、「われわれ」と「あいつら」との「差」にすごく敏感なことだ。自集団と他集団に報酬を割り振る実験をおこなったところ、自集団が得る総額を最大にするよりも、自集団と他集団が得る報酬の「差」が最大になるように選択する傾向があった。つまり、どちらの集団にも利益がある「ウィン‐ウィン」の関係を目指すのではなく、「われわれ」が少し損をしても、もっと「差」が開くように「あいつら」を蹴落とすことを好むのである(クリスタキス『ブループリント(下)』)。
 私たちは仲間かどうかを直観的に判断し、自分の仲間だと認めたものをひいきしてしまう。このような傾向は「部族主義」と呼ばれる。近年の政治状況は「部族主義」を掻き立てている。だから、「みんな政治でバカになる」というタイトルは文字通りに受け取って欲しい。
ほとんどの人が政治的無知= バカである
 くわえて問題なのは、ほとんどの人が政治的に無知=バカである、ということだ。
 たとえば、2014四年にロシアがウクライナのクリミア半島に侵攻した際、アメリカでは軍事介入すべきか、という議論が起こった。しかし、ワシントン・ポスト紙の調査によると、ウクライナの位置を地図上で示すことができたのは、六人中一人しかいなかった(トム・ニコルズ『専門知は、もういらないのか-無知礼賛と民主主義』高里ひろ訳、みすず書房、2019年)。しかも、ウクライナから離れた場所を示した人ほど、アメリカの軍事介入を支持する割合が高かった。
 そのほかにもこんな例がある。アメリカの共和党支持者の45パーセントが「バラク・オバマは合衆国で生まれたのでないから、大統領になる資格がない」と思っていた。たいして民主党支持者の35パーセントが「ジョージ・ブッシュ大統領が9.11同時多発テロの攻撃を事前に知っていた」と信じていた(イリヤ・ソミン『民主主義と政治的無知-小さな政府の方が賢い理由』森村進訳、信山社、2016年)。多くの人が政治を正しく判断できるほどの知識を持っていないのである。このような政治的無知はアメリカだけでなく、日本においても見られるという。
 むかしに比べて教育制度は充実している。知能指数(IQ)も上昇している。インターネットで情報も簡単に手に入るようになった。にもかかわらず、政治についての知識は低いままなのだ。その理由は単に人びとが愚かだからではない。政治について学ぶ意欲を持てないからだ。法哲学者のイリヤ・ソミンによれば、私たちが選挙で投票しても、自分の一票が選挙の結果を左右することはほぼない。そのため、私たちは政治的な知識を獲得する努力をしない(「合理的無知」)。たとえば、2020年の東京都知事選挙の有権者数は1129万229人であった。もし東京都民であれば、あなたの意見は1129万229分の1に過ぎないわけである。投票しようがしまいが、結果は変わらない。であれば、趣味や仕事に時間を使ったほうがいい、となる。
 くわえて、政治を判断するために必要な知識量は膨大になっている。政府の活動は多岐にわたる。いくつもの省庁に分かれ、テレビの国会中継を見ればわかるように、担当大臣でさえ把握できないほど、政策は細分化している。個々の政策を正しく理解しているのは、専門家や官僚といった一部のエリートだけだろう。しかし、そのエリートでさえも、自分の精通する分野以外は素人同然となる。
 ただし繰り返すが、ここで言いたいのは「民衆は愚かだ」と決めつける愚民思想ではない。ほとんどの人が政治について無知=バカであるのは事実である。しかし、その理由は政治に興味を持てないからだ。政治に興味を持てないのは、自らの意思が政治に反映されない無力感のためである。そのような無力感を生んでいるのは現在の政治制度にほかならない。つまり、私たちは単に愚かなのではない。「環境」によって政治的無知=バカになっている。
 私たちは人間本性上バカな言動をとってしまう。くわえて、ほとんどの人が政治について無知=バカである。いわば、「人間本性」によるバカ(認知バイアス)と「環境」によるバカ(政治的無知)とがかけ合わさった「バカの二乗」である。これがフェイクニュースや陰謀論が後を絶たない理由である。とはいえ、「やはり民衆は愚かだ」とシニカルに冷笑するつもりはない。私もバカのひとりでしかないからだ。しかし、そのいっぽうで、バカとして居直るつもりもない。自らのバカさを認めるには、自分を客観視できる程度のシニカルさは必要だと思っている。むしろ、重要なのは、バカとシニカルのあいだなのだ。そして読者の皆さんもそのあいだを進んで欲しい、と思っている。本書がその一助になれば幸いである。
この本については、小田嶋隆さんの「みんな政治でバカになるのだろうか」(2021.10.15)が日経ビジネス電子版 小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」~世間に転がる意味不明に掲載されています。

また、綿野恵太「インテリ気取りで「受け売りの知識」を披露…私たちはみんな「亜インテリ」なのかもしれない」(2021.10.09)が講談社の現代ビジネスサイトにあります。
インテリを気取ってはいるけれど、そのじつ耳学問で仕入れた受け売りの知識をひけらかしているだけの人々-丸山眞男はいまから50年以上前にこうした存在を「亜インテリ」と呼びましたが、じつは現代こそが「亜インテリ」というキーワードによって特徴づけられるのかもしれません。『みんな政治でバカになる』(晶文社)を上梓した、批評家の綿野恵太氏が解説します。
放送大学「リスク社会における市民参加」を聴講した流れで『みんな政治でバカになる』を手に取りました。引用、紹介されている本が多数あり、それらをじっくり読んでみたくなります。私たちは本能的にバカである上に無知であるという「バカの2乗」から抜け出すためにはどうしたらよいのか。本書第6章部族から自由になるためにの末尾にある「バカの居直りでもなく、シニカルな冷笑主義でもない。その間として、ドジな存在が求められている」にあるバカとドジの違いに注目した武久真士 「綿野恵太『みんな政治でバカになる』-バカな人からドヂな人になる」(「バカの二乗」・「バカ」から抜け出すために・「ドヂ」になれ・本書の重要性とメッセージを届けることの難しさ・おわりに)(note2021年10月31日記事)をぜひ読んでください。
※千葉雅也『勉強の哲学 来たるべきバカのために 増補版』 (文春文庫、2020年3月)

年末・年頭のラジオ番組 1月3日

大晦日の19時30分~20時15分まで放送大学(ラジオ)リスク社会における市民参加』第14回・熟議と市民参加の場の設計を聴きました。気候市民会議については、東松山市環境基本計画(第3次)市民策定委員会に参加する中で、その必要性を痛感してきました。1月3日07:16まで利用出来たので聴き直しました。

科目の概要:現代社会はリスク社会である。食の安全をめぐる問題や、先端情報技術によるプライバシー侵害の懸念、各種の事故や災害、さらには気候変動問題への対処に至るまで、さまざまな損害と災難を自分(たち)自身の意思決定の帰結、すなわち「リスク」として捉え、行動する社会に、私たちは生きている。そこで焦点となる問題の多くは、不確実性が高く、多様な利害と価値観が絡むことから、科学技術の専門家だけでは「正解」を導き出すことができない。この状況に対処すべく、ここ約四半世紀の間に、リスクをめぐる社会的意思決定への市民参加が求められ、それを具体化する数々の方法論が生み出されてきた。本科目ではこうした動向を科学技術への市民参加という切り口で捉え、その経緯と理論的背景について理解を深めつつ、豊富な具体例をもとに、リスク社会における市民参加のあり方を学習する。
   

※三上直之「気候変動と民主主義 ~欧州で広がる気候会議~」(『世界』2020年6月号)
※三上直之「欧州の市民が議論した「新型コロナと気候変動」」(『科学』2020年12月号)
江守さんが強調していたとおり、気候市民会議の参考人は、「情報提供者」なのか「意見表明者」として呼ばれているのか、その場の役割を混同しないことが肝要です。選択肢を提示する情報提供者であっても「やるっきゃない」という態度変容を迫る信条がついつい出てしまいますね。

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新春トーク 若者たちが語る「アフターコロナ」
 NHKラジオ第1 2022年1月2日(日)午後5時05分~午後5時55分、午後6時05分~午後6時40分
コロナの先にはどんな未来がやってくるのか?
資本主義を否定し、「人新世」の新たな世界を提唱する斎藤幸平、現場主義で様々な社会問題に挑む安部敏樹、“若者の政治参加が日本を変える”と活動する能條桃子、各分野で活躍する2~30代の若者3人が、気候変動、格差・貧困などをテーマに激論を交わす。2022年の幕開け、未来を大きく展望する激アツの新春トーク番組をお届けする。
岩殿からの帰宅途中に軽トラ車中で聞き、帰宅後に続きを聴きました。NHKラジオらじる☆らじるで1月9日まで聴き逃し配信をしています。
  

要求項目

エクスティンクション・レベリオンの掲げる目標はウェブサイトにおいて、以下のように述べられている: [1][12][13]

  • 「政府は気候とより広範な生態学的な緊急事態について事実を語り、矛盾する政策を撤回し、メディアと協力して市民に情報伝搬する。
  • 政府は2025年までに炭素排出量をゼロとし一般物品の消費量を減らすべく、法的拘束力のある政策措置を講じる。
  • これらの変化を監督するための国民の議会を設立し、正しく機能する民主主義を確立する。」
基本方針

エクスティンクション・レベリオンはウェブサイト上で次の内容を説明している:[14][15]

  1. 「XRは後世代の人々が暮らしていける世界を作るため、変革を起こすという理念を共有している。
  2. XRが変革に必要として挙げる使命は、集団の推進力を活用した運動を実行するべく、総人口に対する3.5%の市民の参加を目指す。
  3. 人類は、健康的で対応性と再生力を備えた、循環的な文化体質を確立する必要がある。
  4. XRは自らの在り方も含め、現状に安住せず、既存の有害な社会構造に対して明白な疑問を投じ、変革を進めるべく活動を行っていく。
  5. XRは自らの経験、自己反省から学び、外部からの情報を吸収して常に活動内容の改善と開発に努める。
  6. XRはいかなる人々のいかなる規模の参加も歓迎し、積極的に安全で敷居の低い活動環境を提供する。
  7. XRは意図的に権力を握ることを避け、内部の上下関係を排除し、より公平な参加体制を築く。
  8. XRは非難や侮辱と言った手法を避ける。社会構造は有害であるが、その中の個人に責任を課し責めることはしない。
  9. XRは非暴力の組織であり、変化を起こすには非暴力の作戦・手段が最も有効であると考える。
  10. XRは自立的で拡散型の活動スタイルを基盤とし、既存の権力体制に挑戦するための手法・構造は集合的に創造していく。この基盤を用いた、いかなる市民活動も "RisingUp!" の名の下に実行することが出来る」[16]
※XR日本(HPTwitter
 

※鐙麻樹「派手な演出デモをする彼らは何者か ノルウェーの石油政治を批判」(『Yahoo!ニュース』2021.08.31 17:06)

SDGsを自分ごと化する8つのフェーズ 12月5日

SDGsのまちづくり推進講座『だれ一人取り残さない 松山と比企の明日を共に創ろう』(NPO法人エコム主催)第1回「住みつづけられるまちづくり」(SDGs目標⑪)をに参加しました。講師は石井雅章さんでした。
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石井さんのお話しは、①SDGsのポイント(ビジョン、17ゴール、169ターゲット、231インディケイター)、②「持続可能な開発」(Sustainable Development、公正)とは、③SDGsを「自分ごと化」する8つのフェーズでした。

読んで見ようSDGsの前文・宣言(ユニセフ『SDGs Club』から)
  
※2020年に越谷青年会議所がYouTubeで公開した『まだ間に合う!学んで始めてSDGs ~動画で分かる最新の必須科目~ 」(全10話)。字幕もついています。
学んで始めてSDGs

12月6日にオンラインで開催された『「挑戦する教室」を応援する SDGs教育セミナー』(社団法人SOLVE主催 首都圏模試センター協賛)の石井報告からスライドを掲載しておきます。SDGsとESD(持続可能な教育)との関係がわかります。
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●SDGsを「自分ごと化」する8つのフェーズ
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 知ってあてはめる段階
  認識段階
   1.認知する
   2.理解する
  対象化段階
   3.当てはめる
   4.貢献する
 自らの存在や活動を捉え直す段階
  ステイクホルダー段階
   5.ステイクホルダーに当てはめる
   6.ステイクホルダーとの関係を捉え直す
  システム段階
   7.既存のシステムを捉え直す
   8.システムにおけるあり方を捉え直す

※村山史世・石井雅章・陣内雄次・高橋朝美・滝口直樹・長岡素彦・村松陸雄「2030アジェンダ・SDGsを理解し、自分事化するためのワークショップの実践6つの事例と自分事化のフェーズ」(『武蔵野大学環境研究所紀要』 No.8、2019年)司会・進行
2.自分事化のフェーズ
「自分事」にすることとは、事象を自身との関係に基づいて理解することである。すなわち、SDGsの自分事化とは、SDGsと自分との関係を理解することに他ならない。本論では、自分事化のフェーズを以下のように分類した。
①存在を認識するフェーズ:世界が目指すSDGsという目標が存在することを認識する段階。この段階では、SDGsに関する情報を得ることが具体的な活動となる。
②内容を理解するフェーズ:2030アジェンダとSDGsに記述されている内容を理解する段階。この段階では、SDGsで示される内容を理解するための研修や、啓発に向けた情報発信が具体的な活動となる。
③活動に当てはめるフェーズ:SDGsの各目標を自身(自組織)の活動に当てはめる段階。自身の活動とSDGsの各目標との関連性を認識する段階である。この段階では、各自の事業活動や施策をそれらと関連するSDGsの各目標とマッチングすることが具体的な活動となる。
④活動を当てはめるフェーズ:自身(自組織)の活動をSDGsの各目標に当てはまる段階。SDGsの達成に貢献できる自身の活動を認識する段階である。この段階では、SDGsの各目標の達成に貢献できそうな各自の事業活動や施策を列挙して、マッチングすることが具体的な活動となる。
⑤ステークホルダーに当てはめるフェーズ:自身と関係するステークホルダーとSDGsの各目標との関係を当てはめる段階である。この段階では、自身(自組織)のステークホルダーを列挙し、それらとSDGsの各目標との関係を整理し、可視化することが具体的な活動となる。
⑥ステークホルダーとの関わり方を捉え直すフェーズ:自身とステークホルダーの関係性をSDGsの観点から捉え直す段階。この段階では、ステークホルダーそのものとSDGsの関係を認識するのでなく、自身(自組織)とステークホルダーの関係(例えば、取引関係など)を、SDGsの観点から捉え直し、必要に応じて関係を再構築することが具体的な活動となる。
⑦既存システムを捉え直すフェーズ:自身が立脚(依存)するシステムをSDGsの観点から捉え直す段階。この段階では、サプライチェーンなどの自身が立脚(依存)する既存のシステムをSDGsの観点から捉え直し、必要に応じてシステムを新規創造、再構築することが具体的な活動となる。
⑧システムにおけるあり方を捉え直すフェーズ:自身が立脚(依存)するシステムにおける自身(自組織)の存在について、SDGsの観点から捉え直す段階。この段階では、主に生態系システムなどの人為的には変更することができないシステムにおける自身の存在を再認識し、当該システム内でのあり方を捉え直し、事業や施策に反映させることが具体的な活動となる。(48~49頁)
SDGsを自分ごと化するとは、SDGsを理解し当てはめる段階(①~⑤)から更に自身(自組織)とステークホルダーとの関係や既存システム、環境をSDGsの観点から捉え直す段階(⑥~⑧)にいたることとして整理されています。

村山史世・相場史寛「2030アジェンダ・SDGsを自分事化するためのツールの開発」(『日本環境教育学会関東支部年報』No.12、2018年3月)。2018年6月17日、東松山市総合会館で開かれた市民環境会議で村山史世さんからSDGsと自分自身をつなげるSDGsおでんワークシートについて学びました。
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石井 雅章・陣内 雄次・勝浦 信幸・長岡 素彦「PBL 実践における学修成果の可視化手法に関する実践と考察」(『関係性の教育学』 17巻1号、2018年、 15~27頁)
  YouTubeのScience Agora Channel 2020年11月15日配信
SDGsは知っていても、自分たちとどんなつながりがあるか? 持続可能な世界を創造するために、何をしなえればいけないのか? 本ワークショップでは、みなさんと一緒に、SDGsのアイコンを活用して、持続可能な開発のためのゴールと未来のビジョンやアジェンダ(行動指針)を体験的かつ協働的に考えてゆきます。SDGsは、課題に満ち溢れた世界を持続可能な世界へ変革してゆくためのヒントです。
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ホイスコーレは民主主義を育て生涯学習を体験する場 11月23日

社会をもっとよくするアイデアを集めたウェブマガジンIDEAS FOR GOODのサイトで「デンマーク」を検索すると150以上の記事がヒットし、「デンマーク特集」(#0~10)がありました。特集の記事からニールセン北村朋子さんが関わっている#0、#1、#3を読みました。ホイスコーレとはフォルケホオイスコーレの略称です。前記事「デンマークの教育と福祉から考える」をご覧下さい。

【デンマーク特集#0】よい人生ってなんだろう?北欧の小さな国で問い直す、私のしあわせ、あなたのしあわせ by IDEAS FOR GOOD 編集部 2019年4月8日記事
デンマークは本当に幸せな国なのか?デンマークにおける「幸せ」とは何なのか?そしてデンマークの何がそこまで人を惹きつけるのか?デンマーク国内の2つの地域(首都コペンハーゲン、ロラン島)を訪問し、特集を始めるにあたって編集部が見つけた「デンマークの今をひも解く切り口」となるキーワードを紹介。
    1.エネルギー自給率800%の小さな島、ロラン島
    2.興味をとことん追求する学校、フォルケホイスコーレ
    3.ニュー・ノルディック・キュイジーヌ(新北欧料理)
    4.サステナブルな街づくり
    5.サステナブルな暮らし

【デンマーク特集#1】自分の幸せは、地球規模の幸せ。ロラン島で気づかされた、成熟社会の行きつく先。 by 宮木志穂    2019年4月10記事
IDEAS FOR GOOD編集部は、デンマークのロラン島に降り立ち、「ニュー・ノルディック・キュイジーヌ(新北欧料理)」のワークショップに参加した。ニュー・ノルディック・キュイジーヌについては次回の記事で言及するが、ここではロラン島にフォーカスをあてたい。
ロラン島とは、人口4万2千人程度で面積は沖縄本島と同じくらいの小さな島である。毎年人口が減少し続けており、日本と同じように少子高齢化という問題を抱える。ここには日本からデンマークに移住したニールセン北村朋子さんが住んでおり、デンマークの教育やデンマークで大事にしている生き方を日本に伝えるアドバイザーやコーディネーター、ジャーナリストとして活動している。今後はデンマーク出身のニコライ・フロストらとともにフォルケホイスコーレを立ち上げる予定だ。
 ●「食」という切り口から、暮らしを考える
   Q:今回の「New Nordic Cuisine」プログラム開催のきっかけは?
   Q:なぜ、食をテーマに選んだのか?
 ●身近なテーマから、民主主義のあり方を考える
Q:企画側として特にこだわった点は?
例えばプログラム内の料理セッションでは、料理が得意な生徒も、包丁をほとんど持ったことがないという生徒も、シェフでさえもフラットに参加するシステムです。
最低限のレシピだけが与えられ、絶対的な答えや手本がない状態で、進むべき道筋を明らかにしていく。そのために皆で徹底的に対話する。やるべきことが割り出せたら、できる人ができる部分を担当、協力しながら同じ目標を目指す。……これができなければ、その日の食事にありつくことはできませんでした。「料理をつくる」という一連のプロセスを通じて、民主主義をうまくまわす「体験」をしていた、ということですね。
学校ごとに扱う内容は違いますが、このように一つのテーマを通じて「民主主義のあり方」を考えるのは、どこのフォルケホイスコーレでも同じ大きな目標なんです。その意味でも、フォルケホイスコーレは「民主主義の学校」と言われます。
民主主義と自分とのつながりが分からない状態では、それがいかに大切なものかを知るのは難しいことです。子どもたちが自然に「民主主義ってこんなもの」ということを体得してくれたら、それが一番です。「こういうことができるのも社会のシステムがいい方向に働いているからだ」「こういう社会の仕組みなら、もっとこういうことができる」というような「気づきを得られる機会」をつくることが重要だと考えています。だからこそ、民主主義を学ぶことを目的とするのではなく、身近な題材から考えてみる、ということが必要なんですね。
デンマークでは実際に、フォルケホイスコーレで学んだ人が政治家となり、国を変えていったんです。「良い民主主義とは何か」を普段から考える機会と、考えたことをほかの人とじっくり話せる場があり、そこで学んだ人が少しずつ増えていく……そうすれば、実際に世の中を変えられるのだということを表すパワフルな例ですよね。
 ●大切なのは、皆が納得できる「最上の妥協点」を探すこと
   Q:目指す未来について
Q:ニールセンさんが考えるフォルケホイスコーレの価値とは?
フォルケホイスコーレという場所では、誰からも否定されません。先生が生徒へ教えるという一方通行の関係ではなく、皆がフラットな立場で向き合います。日本でもそういう雰囲気のなかで、社会について気軽に話しあえる場がつくれるといいなと思うんですよね。
一人ひとりが大切な存在だから、誰もが自分の意見を持てるのは当たり前のこと。違う人間なのだから意見がぶつかるのも当たり前。大切なのは「じゃあどうやってコンセンサスをとっていこうか?」ということ。皆が納得できる「最上の妥協点」を探すこと、それが一番大切なことなんです。デンマークの人たちは、ルールを「自分の自由を制限するもの」ではなく「発想を膨らませていくためのベースライン」として捉えているように感じます。「~してはいけない」というルールがあったら「じゃあ、それ以外のものならいいんだよね?」「どういう方法ならできるかな?」というふうに考えようとする人が多いんですね。考え方を少しだけ変えてみるだけで、世界は変わるんですよ。
とはいっても、そのような考え方ができるためには「自分は社会を構成するひとりの大切な存在で、暮らしたい社会に変えていく権利があるし、実際に変えていくことができる」という自己効力感が必要です。だからこそ、日本の子どもたちにも「否定されずに自分の意見を気兼ねなく言える経験」をたくさんしてほしいと思います。
教育体制を今すぐに変えるのは難しい。ですが、学校とは違う形で「民主主義をきちんと考え、語れる場」をつくることはできます。そういう場で学び、「今のままだといけないな」と思う人が少しずつ増えていけば―デンマークでそうだったように―「根本から教育を変えていこう」という動きだって生まれていくはずです。
 ●編集後記
自分という存在の重要さを知ること―それこそが、すべての始まりなのではないか、と感じさせられた。「自分は、この社会を構成する一員なのだ」という感覚や「自分の意見を聞いてもらうことができる」という他者への信頼感がなければ、社会を良くしようなんて思えるはずがない。自分を大切に想い、自らの心身の安全を確保できなければ、同じ時代を生きる人たちにやさしい目を向けることもできないだろう。
「自分の意見は大切、相手の意見も同じように大切」そう気づけたとき、そして「互いにハッピーになるにはどうしたらいい?」という疑問が浮かぶようになったとき──遠いものだったはずの民主主義が、自分ゴトになる。
教育体制を今すぐに変えることは難しいかもしれないが、「否定しない/されない関係づくり」や「制限を活かす発想の仕方」などをヒントにして身の回りに小さな変化を起こすことはできる。
「じゃあ、どうする?」
答えはあなたの中にある。

デンマーク特集#3】「気づいたら、分かってた」が理想。ニールセン北村さんに聞く、デンマーク流・民主主義の学び方 by 木原優佳 2019年4月15日記事
異なる意見を持つ人々どうしで、じっくりと対話しながら答えを探す―そんな「民主主義的な問題解決の方法」を学べる場所がデンマークのフォルケホイスコーレだ。フォルケホイスコーレは17歳以上ならだれでも入学できる全寮制の学校で、それぞれの興味を追求するため年齢も国籍も異なる生徒たちが集まっている。授業はディスカッションが中心で、教室でも寮でもとにかく「対話すること」が大切にされている。暮らしのなかで生徒一人ひとりの「社会」観や「民主主義」観を育むスタイルは、言葉の通りまさに「民衆の・高等学校(=フォルケ・ホイスコーレ)」といえるだろう。
2月末、デンマーク・ロラン島にて、「食」を切り口にフォルケホイスコーレ教育を体験するプログラム「New Nordic Cuisine(ニュー・ノルディック・キュイジーヌ)」が開催された。前回の記事「新しい」北欧料理のワークショップから、食がもたらす豊かさを知るでは5日間のプログラム概要について紹介したが、今回の記事では「企画側の意図」や「プログラムに込められた想い」に焦点を当てていく。
編集部は、プログラム企画者の1人、2001年からロラン島に移住した日本人・ニールセン北村朋子さんにお話を伺うことができた。彼女はロラン島のサステナブルな地域づくりに感銘を受け、地域の再生エネルギー施策や農業、教育について世界中に発信することを決意。以来、島の知名度向上や島外地域との関係づくりに大きく貢献し続けてきた。同僚からは「ロラン島の歴史は、朋子“前”と朋子“後”に分けて説明できる」との声が上がるほどだ。
彼女がプログラムを通して伝えたかったこととは?そして、デンマーク流の学び方の可能性とは?
 ●「食」という切り口から、暮らしを考える
       Q:今回の「New Nordic Cuisine」プログラム開催のきっかけは?
       Q:なぜ、食をテーマに選んだのか?
 ●身近なテーマから、民主主義のあり方を考える
       Q:企画側として特にこだわった点は?
今回のプログラムで、単に料理のレシピを教えたかったのではありません。食というテーマを通して「人と一緒に良い社会をつくる」ということについて考えてもらうのが、大きなテーマでした。
例えばプログラム内の料理セッションでは、料理が得意な生徒も、包丁をほとんど持ったことがないという生徒も、シェフでさえもフラットに参加するシステムです。
最低限のレシピだけが与えられ、絶対的な答えや手本がない状態で、進むべき道筋を明らかにしていく。そのために皆で徹底的に対話する。やるべきことが割り出せたら、できる人ができる部分を担当、協力しながら同じ目標を目指す。……これができなければ、その日の食事にありつくことはできませんでした。「料理をつくる」という一連のプロセスを通じて、民主主義をうまくまわす「体験」をしていた、ということですね。
学校ごとに扱う内容は違いますが、このように一つのテーマを通じて「民主主義のあり方」を考えるのは、どこのフォルケホイスコーレでも同じ大きな目標なんです。その意味でも、フォルケホイスコーレは「民主主義の学校」と言われます。
民主主義と自分とのつながりが分からない状態では、それがいかに大切なものかを知るのは難しいことです。子どもたちが自然に「民主主義ってこんなもの」ということを体得してくれたら、それが一番です。「こういうことができるのも社会のシステムがいい方向に働いているからだ」「こういう社会の仕組みなら、もっとこういうことができる」というような「気づきを得られる機会」をつくることが重要だと考えています。だからこそ、民主主義を学ぶことを目的とするのではなく、身近な題材から考えてみる、ということが必要なんですね。
デンマークでは実際に、フォルケホイスコーレで学んだ人が政治家となり、国を変えていったんです。「良い民主主義とは何か」を普段から考える機会と、考えたことをほかの人とじっくり話せる場があり、そこで学んだ人が少しずつ増えていく……そうすれば、実際に世の中を変えられるのだということを表すパワフルな例ですよね。
 ●大切なのは、皆が納得できる「最上の妥協点」を探すこと
       Q:目指す未来について
       Q:ニールセンさんが考えるフォルケホイスコーレの価値とは?
フォルケホイスコーレという場所では、誰からも否定されません。先生が生徒へ教えるという一方通行の関係ではなく、皆がフラットな立場で向き合います。日本でもそういう雰囲気のなかで、社会について気軽に話しあえる場がつくれるといいなと思うんですよね。
一人ひとりが大切な存在だから、誰もが自分の意見を持てるのは当たり前のこと。違う人間なのだから意見がぶつかるのも当たり前。大切なのは「じゃあどうやってコンセンサスをとっていこうか?」ということ。皆が納得できる「最上の妥協点」を探すこと、それが一番大切なことなんです。デンマークの人たちは、ルールを「自分の自由を制限するもの」ではなく「発想を膨らませていくためのベースライン」として捉えているように感じます。「~してはいけない」というルールがあったら「じゃあ、それ以外のものならいいんだよね?」「どういう方法ならできるかな?」というふうに考えようとする人が多いんですね。考え方を少しだけ変えてみるだけで、世界は変わるんですよ。
とはいっても、そのような考え方ができるためには「自分は社会を構成するひとりの大切な存在で、暮らしたい社会に変えていく権利があるし、実際に変えていくことができる」という自己効力感が必要です。だからこそ、日本の子どもたちにも「否定されずに自分の意見を気兼ねなく言える経験」をたくさんしてほしいと思います。
教育体制を今すぐに変えるのは難しい。ですが、学校とは違う形で「民主主義をきちんと考え、語れる場」をつくることはできます。そういう場で学び、「今のままだといけないな」と思う人が少しずつ増えていけば―デンマークでそうだったように―「根本から教育を変えていこう」という動きだって生まれていくはずです。
 ●編集後記
自分という存在の重要さを知ること―それこそが、すべての始まりなのではないか、と感じさせられた。「自分は、この社会を構成する一員なのだ」という感覚や「自分の意見を聞いてもらうことができる」という他者への信頼感がなければ、社会を良くしようなんて思えるはずがない。自分を大切に想い、自らの心身の安全を確保できなければ、同じ時代を生きる人たちにやさしい目を向けることもできないだろう。
「自分の意見は大切、相手の意見も同じように大切」そう気づけたとき、そして「互いにハッピーになるにはどうしたらいい?」という疑問が浮かぶようになったとき──遠いものだったはずの民主主義が、自分ゴトになる。
教育体制を今すぐに変えることは難しいかもしれないが、「否定しない/されない関係づくり」や「制限を活かす発想の仕方」などをヒントにして身の回りに小さな変化を起こすことはできる。
「じゃあ、どうする?」
答えはあなたの中にある。
デンマークが教えてくれる持続可能な都市経営5つの視点
https://note.com/output_shukan/n/n1e556f6fcbb4
 by shunsuke kaminaka@都市経営 2021年1月15日記事
デンマーク・川崎市の都市経営について、ニールセン北村さんと対談させていただきました。
デンマーク ロラン島在住の北村さんは、ジャーナリスト、国賓クラスの通訳、デンマークの教育機関で食のフォルケホイスコーレの立ち上げといった幅広い分野で活躍中です。
幸福度ランキングで常に上位にある国で有名ですが、(2020年はデンマーク2位、日本は62位)
幸福の一言には表せない、ものすごく洗練された社会システムがありました。そして日本と私たちの、未来へのメッセージも。
今回は、北村さんからのお話、そして中島健祐さんの書籍から、デンマークを都市経営の視点で紹介したいと思います。
はじめに
 ・デンマークとは
 ・電力自給率800%のロラン島
 ・「デザインDNA」と4方よし
1.複合的に課題を解決するパブリックデザイン
 ①ゴミ処理場から健康、教育、熱供給
 ②移民の文化が共存する公園
 ③歩行者専用空間と自動車のあり方
 ④食からアプローチする地球環境
2.本質や課題解決を学ぶ教育
 ①デンマークの教育
 ②レゴブロックに学ぶアプローチ
3.デンマークにおける社会でのアプローチ手法
 ①PPP(トリプルヘリックス)
 ②デザイン・ドリブン・イノベーション
 ③Denmark design center(DDC)
4.都市と地方の関係をデザインする
5.改めて問われる日本の民主主義
  (デザインコンサルティング『ロフトワーク』HPから by 岡田恵利子  2020年6月13日記事)
    プレゼン3つに共通していたデンマークらしい民主主義の話
    1. デンマークの参加型デザイン・共創の現場あれこれ
    2. インキュベーション施設 Institut for (X) と、そこで実践されていた民主主義的建築
    3. デンマークの教育事情と世界一の学生寮 Tietgen での生活風景

 
デンマークにおける「共創・参加型デザイン」についての事例を紐解きながら、日本における共創・参加型自治が生まれる場作りについての可能性を議論します。……Withコロナ/Afterコロナ における、デンマークの状況・対応についても触れながら、自分たちの暮らしや仕事のあり方を自分たちごととして納得しながらデザインすることが上手なデンマークから、日本に活用できるヒントを探ります。

デンマークの教育と福祉から考える 11月22日

21日に東松山・自由学校主催で開かれた『デンマークの教育と福祉から考える』でのニールセン北村朋子さんのお話しの部分がYouTubeで限定公開されていましたので聴講しました。ニールセン北村朋子さんの講演は、3月21日、10月17日にも聴いています(10月17日記事)。
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今も書架のどこかに眠っている石見尚『協同組合論の系譜―その遺産と課題 』(家の光協会、1968年) や綱沢満昭『日本の農本主義』(紀国屋新書、1971年)をはるか昔に読んで以来、大正・昭和期の「日本国民高等学校」、「塾風教育」の歴史に関心を持っていますが、人生のための学校という視点からデンマークのフォルケホイスコーレについて学び直してみたいと思いました。
フォルケフオイスコーレとは・意味(『IDEAS FOR GOOD』の「用語集」から)
フォルケホイスコーレとは?
フォルケホイスコーレ(Folkehøjskole)とは、17.5歳以上(*1)であれば誰でも学べる全寮制の学校のこと。デンマークを発祥として北欧に広がっている。現地語では「ホイスコーレ」「ホイスコーレン」と呼ばれることが多い。
デンマークには約70校あり、学校によって特色はあるが、対話を中心とした授業を行うことや、生徒が主体となって学ぶことなどが共通している。入学資格やテストはなく、年齢、国籍、学歴を問わず誰でも入学できる。そして、成績評価がなく、単位も学位も与えられないという独自の制度を持つ。
フォルケホイスコーレの特徴をまとめると、下記の5つである。
    入学試験、資格がない
    成績の評価はされない
    単位や学位は与えられない
    校舎の中、あるいは校舎から近い宿舎で共同生活をする
    対話、民主主義教育をする
授業の合間には、教員と生徒が食事をともにし、立場やバックグラウンドの違いも関係なく対話する。片付けや掃除なども自分たちで分担して行うところが多い。……10代の学生から社会人、高齢者まで、さまざまな世代が生徒となって学び、それぞれが納得するまで自身の知的好奇心を追求するのだ。
フォルケホイスコーレは何のためにある?
「民衆の(フォルケ)高等学校(ホイスコーレ)」という名前の通り、フォルケホイスコーレはもともと、教育格差の激しかった1800年代前半のデンマークで「すべての人に教育を」というコンセプトのもと生まれたものだ。デンマークの教育の父、NFS・グルントヴィが理念を提唱し、同じくデンマークのクリステン・コルが実際には創始した。コルは、デンマークのオルタナティブ教育の創始者でもある。
1844年にデンマークの南部に創設された最初のフォルケホイスコーレでは、冬の11月から3月にかけて授業が行われた。対象者は地方部に住む農民などアカデミックな教育を受けられない人々で、彼らは冬以外の季節は農作業をしていたからだ。はじめは男性の参加者のみだったが、徐々に女性の参加も認められるように。
フォルケホイスコーレは、デンマークの国民意識、そして民主主義教育に大きく寄与したと言われている。それが今、デンマークの「幸福度ランキング」の好成績もあいまって、日本でも注目されているのだ。フォルケホイスコーレは、民主主義を育てる場であると同時に、すべての人が学べる「生涯学習」の体験の場でもある。

特集:デンマークの“人生の学校” 「フォルケホイスコーレ」とは?(【違う】で立ち止まり、観察する ライフジャーナルマガジン『考える。暮らし、雛形』HP)
大人が仕事をしないで、自分の暮らしや働き方と向き合おうとするとき、「ニート」と呼ばれたり、「ぶらぶらしている」と言われたりする。日本には、積極的に立ち止まったり、能動的に迷うときの選択肢が、少ないのかもしれない。社会のペースから少し外れて、自らの暮らしや将来、幸せについて考える時間を持つという考え方が根付いたら、日本はどんなふうに変わるだろう?
人生のための学校、デンマークの「フォルケホイスコーレ」って、どんな学校?【前半】2019年5月24日更新記事
年齢や性別の重圧から開放されて。デンマーク・人生の学校「フォルケホイスコーレ」から持ち帰ったもの。【後半】2019年5月30日記事
  


     (『Energy Democracy Salon』2015年9月10日記事)
 エネルギーと社会のあり方が分散型へと変化していくなかで、個別の取り組みを長期的な時間軸の中で体系的に位置付ける思想、哲学、コンセプト、アイデアなどを探るEnergy Democracy Salon。今回は「デンマークに見る現代エネルギーデモクラシーの源流」をテーマに、中島健祐氏(デンマーク大使館)と飯田哲也(環境エネルギー政策研究所)の対話をお届けします。
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豊かさを支える社会システムづくり
デンマークのエネルギーデモクラシー
信頼と価値創造
− いろいろキーワードや切り口があると思いますが、長期的な時間軸で考えて、過去・現在・未来という流れで議論を進めていきたいと思います。まずは過去について、歴史的背景からデンマークと日本を見たときに、社会システムや価値創造の面で共通点や相違点はどのようなところにあるのでしょうか。
− 「豊かさ」の話について、北欧は高い税負担のもとで社会を支える分配のシステムがつくられていますが、それはどのように維持しているのでしょうか。
地域の未来と価値創造
− 日本とデンマークの過去から現在の流れを踏まえた上で、「分散型」「共生デザイン」といったようなキーワードがあるかと思いますが、未来について、地域からの視点も交えつつ、これから先の20〜30年はどのような価値を生み出し、現実をつくっていくことが必要でしょうか。
経験とアイデンティティ
− 未来を考えて、新しい価値をつくり出す上で、若い世代がどのような教育を受け、経験を積んでいくことが必要でしょうか。
共創のダイナミズム

※中島健祐『デンマークのスマートシティ ~データを活用した人間中心の都市づくり~ 』(学芸出版社、2019年12月)
1章 格差が少ない社会のデザイン
 1 格差を生まない北欧型社会システム
 2 税金が高くても満足度の高い社会を実現
 3 共生と共創の精神
 4 課題解決力を伸ばす教育
 5 働きやすい環境
 6 格差がないからこそ起きること
2章 サステイナブルな都市のデザイン
 1 2050 年に再生可能エネルギー100 %の社会を実現
 2 サーキュラーエコノミー(循環型経済)の推進
 3 世界有数の自転車都市
 4 複合的な価値を生むパブリックデザイン
3章 市民がつくるオープンガバナンス
 1 市民が積極的に政治に参加する北欧型民主主義
 2 市民生活に溶け込む電子政府
 3 高度なサービスを実現するオープンガバメント
 4 サムソ島の住民によるガバナンス
4章 クリエイティブ産業のエコシステム
 1 デンマーク企業の特徴
 2 世界で活躍するクリエイティブなグローバル企業
 3 デジタル成長戦略と連携して進展するIT産業
 4 スタートアップ企業と支援体制
 5 新北欧料理とノマノミクス
5章 デンマークのスマートシティ
 1 デンマークのスマートシティの特徴
 2 コペンハーゲンのスマートシティ
 3 オーフスのスマートシティ
 4 オーデンセのスマートシティ
6章 イノベーションを創出するフレームワーク
 1 オープンイノベーションが進展する背景
 2 トリプルヘリックス(次世代型産官学連携)
 3 IPD(知的公共需要)
 4 社会課題を解決するイノベーションラボ
 5 イノベーションにおけるデザインの戦略的利用
 6 社会システムを変えるデザイン
7章 デンマーク×日本でつくる新しい社会システム
 1 日本から学んでいたデンマーク
 2 デンマークと連携する日本の自治体
 3 北欧型システムをローカライズする
 4 新たな社会システムの構築
おわりに
第1章格差の少ない社会のデザイン1 格差を生まない北欧型社会システム◈デンマーク社会を支えた哲学にフオルケホイスコーレの理念を提唱したニコライ・フレデリク・セヴェリン・グルントヴィ(Nikolaj Frederik Severin Grundtvig、1783年9月8日 - 1872年9月2日)が取りあげられいます。
グルントヴィの理念は、現在のデンマーク社会に次のような影響を与えている。
・国民はすべてが平等な生活を送ることに価値をおく=格差の少ない北欧型社会システム
・知識ではなく対話を重視=コンセンサス型社会システム
・死の学校から生のための学校=知識から、知恵や問題解決能力を習得する教育(同書27頁)
また、◈ヤンテの掟とフラットな社会(同書32~36頁)では、ヤンテの掟(Janteloven)の影響として、「こうした国民の振る舞いが、格差を感じることの少ない社会をつくりだしている一因だろう」と肯定的に評価しています。近藤浩一『スウェーデン 福祉大国の深層 ~金持ち支配の影と真実~ 』(水曜社、2021年2月)47~50頁の本音を言わず主張もしない「ヤンテの掟」での、「自己主張をせず、本音をなかなか言わず、人との衝突を避ける国民性をもたらす」、「日本人以上に建て前社会であり、社会体制に逆らわない国民性」という否定的評価とは対照的です。

小学生のためのSDGs 7月15日

一般社団法人子供教育創造機構が2020年10月にリリースした動画学習サイト『小学生のためのSDGs


【目標15】陸の豊かさを守ろう!
FireShot Capture 9600 - 小学生のためのSDGs - welearn.design

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生物多様性とは?(『宇都宮市』サイトから)

 



こども環境白書2019(環境省、2019年1月)

『週刊東洋経済』特集 SDGs 日本を代表する500社 6月28日

『週刊東洋経済』7月3日号が発売されました。SDGs 日本を代表する500社が特集しています。
東洋経済20210703img-210703184700-0004

目次

 基礎編
  サステナビリティが企業にもたらす課題
  サステナビリティ専門家に聞く 企業経営直撃!重要6テーマ

 SDGs 日本を代表する500社ランキング【2021年版】
 SDGs企業ランキング評価項目90
  人材活用/環境/社会性/企業統治

 テーマ別に見るSDGs
  ①[ダイバーシティ]女性部長比率ランキング
  ②[カーボンニュートラル]炭素利益率(ROC)ランキング
  ③[生物多様性]生物多様性保全支出額ランキング
  ④[社会参加]ボランティア休暇取得者数ランキング
  ⑤[リスクマネジメント]内部通報件数ランキング

 SDGs企業ランキング トップ企業インタビュー
  [総合]オムロン 取締役会長 立石文雄
     「『非財務価値』が約6倍に 有報や短信に開示拡大へ」
  [人材活用部門]ファンケル 理事、SDGs推進室室長 山本真帆
  [環境部門]J.フロント リテイリング 執行役常務 平野秀一
  [社会性部門]帝人 取締役常務執行役員 小山俊也
  [企業統治部門]SOMPOホールディングス サステナブル経営推進室長 平野友輔

 ニッポンはSDGsをどう達成するのか
  「危機感が足りない まず目標を設定せよ」 慶応大学大学院教授 蟹江憲史
  「限界値を超える前に社会システム変革を」 ジャーナリスト 国谷裕子

 SDGs企業×高年収企業、長寿企業

 投資編
  評価会社のプロはここをチェック ESGファンドの選び方
  SDGs銘柄のパフォーマンス比較 上昇期待は中下位企業、上位はTOPIX下回る
  「ESGの対応いかんで市場の企業選別が進む」
    GPIF 投資戦略部次長 チーフ・ストラテジスト 塩村賢史
  売り手は熱心 「ESGファンド」の人気度
  かつては東芝、シャープがトップ  CSR企業ランキング 15年興亡史

 実践編
  「やっているふり」は経営にマイナス SDGsウオッシュ予防の10原則
  持続可能性の観点で整理 サプライチェーンで発生する大損害を防ぐ
  SDGsと『論語と算盤』の共通点
  気候変動軸にESGの情報開示規制強まる
  ポストコロナのSDGs 経営の羅針盤として活用へ
  欧州企業が存在感放つ 世界のSDGsランキング
   SDGs企業 業種別ランキング

※『東松山市第3次環境基本計画』が2021年4月発行されました。19年から東松山市環境基本計画市民推進委員会のメンバーとして関わってきましたが、当初、「SDGs」について聞いた事が一度もない人がかなりいた印象です。サスティナビリティやレジリエンスなども同様でしたが、この2年間で様変わりしています。SDGsウォッシュという言葉があり、「SDGsに真剣に取り組んでいないのに、取り組んでいるフリをすること」「うわべだけのSDGs」という意味で使われています。
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東松山市第3次環境基本計画_01_2東松山市第3次環境基本計画_01_1
環境基本計画では5つの環境目標脱炭素に向けた暮らしを推進するまち廃棄物の削減と資源循環に取組むまち生き物、自然と共生するまち安全で快適に暮らせる生活環境が整ったまち市民・地域のチカラが発揮される協働のまち)毎に、SDGsとの関連性について東松山市の施策とのつながりを示したページがありますが、市の取組みにとりあえずSDGsのアイコンを貼りつけている見かけ倒しのウォッシュ自治体にならないよう取り組んでいきましょう。

農業・食料問題受講生の田植え 6月1日

須田先生の講義「農業・食料問題」の受講生が岩殿A地区下の田んぼで田植えをしました。
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SDGs目標2|飢餓ってなに?【アニメでわかる!SDGs】SDGsジャーナル


エコ~るど京大
https://eco.kyoto-u.ac.jp/
【今日も明日もSDGs!】2020年11月11日~12月4日
【今日も明日もSDGs!第Ⅱ弾】2021年2月1日~2月20日
【今日も明日もSDGs!第Ⅲ弾】2021年5月20日~6月11日
 YouTubeチャンネルのSDGs Kyoto Timesから観ることができます。





3月17日は「みんなで考えるSDGsの日」 10月10日

2019年9月、中小企業を支援する経営革新等支援機関連合会は、特別にSDGsを注目する日にちを設定することでSDGsの盛り上がりがつくりだせるのではないかと考えて、毎月17日を「国民的SDGsの日」として設定しました。
国民的SDGsの日0317
国民的SDGs:「持続可能な開発目標(SDGs)」は、政府や大企業などの一部の組織が向き合うべき問題ということではありません。しかしながら多くの中小企業ではSDGsは自らが取組むべき課題であると認識されていません。[関東経済産業局・日本立地センターの2018年12月の「中小企業のSDGs認知度・実態等調査結果概要」(WEBアンケート調査)によれば、98%の企業が「(詳しく)知らない」「対応を検討していない」と回答している]
「国民的SDGs」は、SDGsが「日常的」「身近な」存在となり、国民一人ひとりがSDGsを「知り」「考え」「行動」する社会とすることを目指しています。そのような社会を実現するためには日本社会を支える何百万社の中小企業によってSDGsが発信され、コミュニケーションが生まれ、価値観が移り変わるような環境がつくられていくことが重要だと考えています。[『kokumin SDGs.com by 経営革新等支援機関連合会』サイトから]

2020年3月、PR総研一般社団法人日本記念日協会の認定を受け、毎年3月17日を「みんなで考えるSDGsの日」に制定しています。
みんなで考えるSDGsの日
みんなで考えるSDGsの日総合PR会社である共同ピーアール株式会社の総合研究所(PR総研)が制定。国連が定めた持続可能な開発目標であるSDGs(Sustainable Development Goals )についてのさまざまな企業の取り組みをより多くの人に伝えることが目的。また企業だけでなくひとり一人がSDGsについて考える日にとの思いも込められている。日付はSDGsに持続可能な世界を実現するために掲げられている17のゴールから「みんな(3)」で「17」のゴールを実現しようという意気込みで3月17日に。


NHKの大学生とつくる就活応援ニュースゼミ「1からわかる」シリーズ 10月9日

NHKの大学生とつくる就活応援ニュースゼミ・目指せ!時事問題マスター「1からわかる」シリーズ。

1からわかる!地球温暖化(1)パリ協定って何?
 
”グレタ現象” 関心は若い世代へ/パリ協定って何?
(土屋敏之解説委員、聞き手:伊藤七海 井山大我 西澤沙奈、編集:水上貴裕)

 
はじまりは28年前/パリ協定は緩い?/気温上昇を抑えることは・・・

 
そもそも「地球温暖化」とは?/温暖化を取り巻くさまざまな説/温暖化が進んだ先にある未来とは?

 
温暖化対策、進捗状況は?/なぜアメリカはパリ協定から離脱するの?/アメリカの温暖化対策、今後どうなる?/世界第1位の排出国・中国は/世界第3位の排出国・インドは/ヨーロッパ各国は?

1からわかる!地球温暖化(5)日本の対策、どうなってる!?
 
なぜ批判される?日本の温暖化対策/批判集める「石炭火力発電」とは?/日本の目標は?

 
再生可能エネルギーの可能性は/どんな社会を目指すべき?/就職先にも実は関係!?企業の温暖化対策は/私たちにできることとは
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1からわかる!プラスチックごみ問題(1)
 
本当はとっても怖い…? プラスチックごみ/日本のプラごみ処理の実情は
(土屋敏之解説委員、聞き手:高橋薫 田嶋あいか)

 
まだ間に合う?日本はどうするの?
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1からわかる!「ESG」
 
「ESG」ポイントは“投資家”と“取引先”/「ESG」なぜ注目されるように?/「ESG」これだけは押さえておこう!
(みずほ情報総研株式会社アナリスト大谷舞、聞き手:鈴木マクシミリアン貴大 伊藤七海)
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1からわかる!「SDGs」
 
「SDGs」って、何のこと?/なぜ広まってきたの?/企業には浸透しているの?/17の目標にはストーリーがあった!
(みずほ情報総研アナリスト、聞き手:鈴木マクシミリアン貴大 伊藤七海)

エコプロ2018に参加 12月8日

江東区有明の東京ビッグサイト(国際展示場)で12月6日から開かれているエコプロ2018見学会に参加しました。東松山市からは小学生親子と乗り合わせてバス一台52名が参加しました。
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太平洋セメントのブースでは原料工程・焼成工程での総合廃棄物リサイクル(マテリアル&サーマルリサイクル)システムについて学びました。
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ミキサー車型えんぴつ削り 車体を持って少し後に引き手を離すとゼンマイで走ります(プルバックカー)。

埼玉県、企業・団体、地権者の3者による「埼玉県森林づくり協定」締結による森林[もり]づくり(2006年~)フィールドマップ(34事例)
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ボッシュりん(東松山市民の森内8.0ha、2007年~)(ボッシュ株式会社)
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森林保全業務委託契約による保全活動+体験活動(ボッシュりん)
「森林保全活動により自然豊かな森林を従業員や家族が学び親しみ、森林の大切さを体験学習できる森林活動「ボッシュりん」を運営していきます。」

※太平洋セメントの『CSRレポート2018』の「社会とのコミュニケーション」には、「当社の行動指針の中には「広く社会とのコミュニケーションを行います。」と定めています。国内外の各拠点において、事業活動を行うのみならず、地域コミュニティのニーズに対して、太平洋セメントグループの事業特性を活かした様々な参画を行い、地域とともに持続的な成長を目指しています。」とあり、地域環境保全テーマに「森林や地域の自然保護活動」があり、「苗木の植樹、間伐等の森林保全活動への参加。地域の農地保全活動の支援。森林組合とのパートナーズ協定締結。地域の希少動植物保護活動」事例があげられている(64頁)。

能條歩『あなたにもできる! 環境教育・ESD』 12月6日

能條歩『自然体験教育ブックレット② あなたにもできる! 環境教育・ESD』(NPO法人北海道自然体験活動サポートセンター、2017年)の第1章を読みました。

はじめに
・3つの公平
・SDGsからのバックキャスティング
・3つのレベルの生物多様性と4つの危機
・人知を超えた時空概念
・“循環型社会”
の5つの視座のいずれかに関連付けて授業や活動を実施すれば、それは環境教育

~この本をお読みになる方ヘ~
視座とは
①3つの公平 世代内・世代間・種間の公平
②3つのレベルの生物多様性と4つの危機 遺伝子・種・生態系の多様性とそれらを脅かす危機
③“循環型社会” 生態系の循環システムをかく乱しない自然と調和した社会
④SDGsからのバックキャスティング
 持続可能な未来づくりに向けて2030年までに解決しようと国際合議した課題からの目標設定
⑤人知を超えた時空概念 畏敬の念とそれにつながる自然のスケール感
という「自然や環境を考える時のものの見方」のこと


第1章 持続可能な未来のための教育
 第1の視座 3つの公平
  1-1 持続可能な未来のための教育(ESD)とは?
●「持続可能な開発」は、将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、現在の世代のニーズを満たすような社会づくりのこと
●そのために、「環境の保全」(前提)「経済の開発」(手段)「社会の発展」(目的)を調和の下に進めていくことが必要
●取組にあたっては、「環境保全や資源の過剰利用の抑制の視点」「貧困の克服」「保健衛生の確保」「質の高い教育」「性・人種による差別の克服」等への配慮が必要
●一人ひとりが、世界の人々や将来世代、また環境との関係性の中で生きていることを認識し、行動を変革することで「持続可能な開発」を目指すための教育がESD
●ESDの目標は、「すべての人が質の高い教育の恩恵を享受し、持続可能な開発のために求められる原則、価値観、及び行動が、あらゆる教育や学びの場に取り込まれ、環境、経済、社会の面において持続可能な将来が実現できるような行動の変革をもたらすこと」
「ESDは特定の教育内容を指すものではなく、さまざまな活動によって到達すべき共通のゴールや理念である」(10頁)

  1-2 持続可能性と3つの公平
   環境(配慮)行動のための指針
①世代内の公平:いわゆる南北問題のような、現代に生きる同じ世代の中にある不公平を解消することにつながるか
②世代間の公平:将来世代と現在の私たちを比較して、将来世代に不利益をもたらすことはないか
③種間の公平:ヒト以外の生物に対して著しい不公平を生じさせることにつながらないか
   例:第1の視点からみた原子力発電と3つの公平
     ①世代内で公平か? ②世代間で公平か? ③種間で公平か?
     安全に稼動できるかどうかという尺度だけで判断してはいけない(15頁)

 第2の視座 3つのレベルの生物多様性と4つの危機
  1-3 “生態系”とは?
   “自然”と“環境”と“生態系”
   “生態系”を理解するために
    自然…ヒトの意志とは関係なく存在するモノや状態の全体像のこと
    環境…私たちと応答的関係(つながりや関係性)があると意識されているモノや状態のこと
    生態系…「物質やエネルギーが循環しているまとまり」という「動的な状態」のこと

  1-4 生物多様性とは?
   5つの基本戦略(「生物多様性国家2012-2020」)
    ①生物多様性を社会に浸透させる
    ②地域における人と自然の関係を見直し・再構築する
    ③森・里・川・海のつながりを確保する
    ④地球規模の視野を持って行動する
    ⑤科学的基盤を強化し、政策に結びつける
   3つのレベルの生物多様性と4つの危機
    遺伝子の多様性 種の多様性 生態系の多様性

   4つの危機
第1の危機:人間活動や開発が直接的にもたらす種の減少、絶滅、あるいは生態系の破壊、分断、劣化を通じた生息・生育空間の縮小、消失など
第2の危機:生活様式・産業構造の変化、人口減少など社会経済の変化に伴い、自然に対する人間の働きかけが縮小撤退することによる里地里山などの環境の質の変化、種の減少や生息・生育状況の変化など
第3の危機:外来種や化学物質など人為的に持ち込まれたものによる生態系のかく乱
第4の危機:地球温暖化によってもたらされる種の生息・生育地の縮小、消失等の影響

 第3の視座 “循環型社会”
  1-5 再生可能か不可能か~素材(資源)とエネルギーの選び方~
   “循環型社会”(天然資源の消費の抑制を図り、もって環境負荷の低減を図る社会)
「“大量生産・大量消費・大量廃棄”型の経済社会から脱却し、生産から流通、消費、廃棄に至るまで物質の効率的な利用やリサイクルを進めることにより、資源の消費が抑制され、環境への負荷が少ない“循環型社会”を形成する」(環境省「循環型社会形成推進基本法(2000年)の趣旨」)

「天然資源の消費の抑制を図り、もって環境負荷の低減を図る社会」(環境省「環境・循環型社会・生物多様性白書」)

   再生可能か不可能か
    再生可能エネルギー:「太陽・地球物理学的・生物学的な源に由来し、自然界によって利用する以上の速度で補充されるエネルギー全般」(IPCC「再生可能エネルギーと気候変動に関する特別報告書」)

   3R
    Reduce(優先度1)廃棄物の発生抑制(ゴミになるものを生み出さない)
    Reuse(優先度2)資源や製品を再利用する
    Recycleマテリアル・ケミカル(優先度3)
     再使用が不可能なものを原料として再生利用
    Recycleサーマル(優先度4)
     再使用が不可能で原料としての再生利用も不可能なものを焼却して熱エネルギー源として利用
    埋立処分(廃棄物) 最終処分(適正処分)これ以上の使用が不可能となり循環から外れたもの
……生態系から人の社会に持ち込まれたものは、いずれ社会の循環の枠の中から出て行きますが、その際には生態系の循環をかく乱しないようにしなければいけません。また、生態系のかく乱が予測される不要物質については「生態系からも人間社会からも隔離して管理する」ようにしなければなりません。物質やエネルギーを生態系から過剰に取り込むことは、すなわち排出したり隔離したりしなければいけない物質を生み出す可能性を高めることにつながります。ここに、資源を社会に取り込む段階でのReduceがもっとも重要である理由があります。「持続可能な社会作り」を考える時には、社会の中でのモノの循環だけをイメージするのではなく、生態系も含めた範囲で負荷をかけない循環を成立させる「真の循環型社会」を考えなければいけないのです。(30~31頁)

  1-6 ライフスタイルの転換~「地球にやさしい」ってどんなこと?~
   NeedsとWantsの区別
    必要不可欠なもの=Needs
    (生活の質を下げないために)あると嬉しいもの=Wants
    Wantsにあたるものを、「どうしてもなければいけないか?」と見直してみる

   ライフスタイルの転換
    「地球にやさしい」=「自然の循環と調和する行動」
    「再生可能か不可能か」
    「リサイクル可能か不可能か」
    「NeedsかWantsか」
エネルギーや資源の消費量を減らしたり、自然の循環をかく乱しないようにしたりすることへの理解を深めて行動につなげる活動は環境教育(ESD)であり、持続可能な社会づくりのための教育である(35頁)

「森林を脅かす太陽光発電を考える」講演会に参加② 12月2日

埼玉県生態系保護協会東松山・鳩山・滑川支部主催『森林を脅かす太陽光発電を考える ―遊休地・休耕地・山林の活用法― 』に参加①の続きです。

第1部講演:辻村千尋氏(日本自然保護協会保護室室長)「急増するメガソーラー問題」
・各地でメガソーラー開発が軋轢を生んでいる
・現状では太陽光発電事業は環境影響評価法の対象事業となっていないので、環境アセスをする必要がない。
・自治体独自で太陽光発電事業を環境アセスの対象とする条例をつくっているところもあるが、国と同様に対象としていない自治体も多くある。
・もともと森林だった場所を太陽光発電のために皆伐して違う環境に変化させることは、本来、地球温暖化という生物多様性への危機に対しての対策のはずであったものが、開発という行為による生物多様性への新たな危機になってしまうという本末転倒の事態を生み出している。
・メガソーラー開発は、環境影響評価法の対象とするべきである。日本自然保護協会は環境影響法の抜本的改正が必要だと考え、環境省や立法府への働きかけを行っているが、すぐには実現できない。
・そこで、自治体に対して、開発に際しての地域住民との合意形成プロセスを義務化する条例を制定するよう働きかけをすることを提案する。
(出席者に配布された『自然保護』№566、2018年11・12月号掲載辻村「急増するメガソーラー問題」から)

第2部講演:中安直子(日本ナショナル・トラスト協会総務部長)「ナショナル・トラスト運動」
・アマミノクロウサギ・トラストについて
  アマミノクロウサギ・トラスト・キャンペーン経過報告その1
  アマミノクロウサギを守る特別キャンペーン 目標達成!


※「地域自然資産区域における自然環境の保全及び持続可能な利用の推進に関する法律」(「地域自然資産法」、2015年4月1日施行)
地域自然資産区域における自然環境の保全及び持続可能な利用の推進に関する法律(平成27年法律85号)(以下「地域自然資産法」)は、地域における自然環境の保全や持続可能な利用の推進を図るため、入域料等の利用者による取組費用の負担や寄付金等による土地の取得等、民間資金を活用した地域の自発的な取組を促進することを目的として、議員立法によって平成26年6月25日に制定され、平成27年4月1日に施行されました。
この法律により、都道府県又は市町村は、協議会を設置し自然環境の保全及び持続可能な利用の推進に関する地域計画を作成することができ、その計画に基づいて、入域料等を経費として充てて行う「地域自然環境保全等事業」や、寄付金等による土地の取得等(自然環境トラスト活動)を促進する「自然環境トラスト活動促進事業」を行うことができます。
都道府県又は市町村が民間団体や土地の所有者等の多様な関係者と合意形成を図り、このような取組を進めることで、地域社会の健全な発展にもつなげていくことを目指しています。

※※日本ナショナル・トラスト協会「地域自然資産法」に関する意見書(2014年5月14日)
平成26年5月14日 自由民主党環境部会長 片山さつき様
「地域自然資産区域における自然環境の保全及び持続可能な利用の推進に関する法律案」に関する意見書
     公益社団法人日本ナショナル・トラスト協会会長池谷奉文
日本の自然環境保全に関する先生の多大なご貢献に、平素敬服しておりますことを、先ず述べさせていだきます。
さて本日は、公表されましたトラスト活動と関係がある標記法律案について、懸念する点があり、意見を述べさせていただきます。
わが国のトラスト活動は、1964年、鎌倉・鶴岡八幡宮の裏山に、宅地造成が計画されたことをきっかけとして、鎌倉市民が立ち上がり、土地確保のための募金活動を開始したのが始まりといえます。その後、知床や天神崎、小清水、柿田川などにおける活動に引き継がれ、現在では全国50以上の地域で、トラスト活動が展開されるに至っています。わが国のトラスト活動は、行政が先ず責任をもち「税金」で自然環境等の保全を行うべきところを、それが難しい場合に、市民が中心となって必死に「寄附金」を集め、持続可能な社会の創造に資するため、危機にある自然環境等を買い取り等により守ってきた取り組みということができます。
鎌倉の大佛次郎氏や天神崎の外山八郎氏をはじめ、地域で懸命にトラスト活動に取り組んできた先駆者の精神を忘れず、この大切なトラスト活動を進めていくことが、これまでの50年の歴史を振り返り、いま、改めてそれが私たちの重要な使命と考えます。
こうしたなか公表されました標記法律案ですが、地域にとって重要な自然環境については、他の社会資本同様に、まずは「税金」でその保全をしっかりして進めていくことを地方自治体に強く促すべきところを、逆に、市民等からの「寄附金」で保全していくことを地方自治体に促す法律となってしまっているなど、問題がいくつかあります。
この法律が制定されますと、長年にわたり努力してきた地方の各民間団体において、寄附金集め及び土地取得が困難となり、わが国における真の意味でのトラスト活動が阻害されるようになることが強く懸念されます。
このため、(公社)日本ナショナル・トラスト協会として、以下の通り意見を述べさせていただきます。
長年、トラスト活動に取り組んでまいりました私たちの意見をお汲み取りいただき、わが国のトラスト活動を推進する法律としていただきますよう、切にお願い申し上げます。

  記
1.トラスト活動とは、主として民間団体が行う活動であるという点を明確にすること
2.地方自治体に対して、他の社会資本同様に先ずは「税金」で、良好な自然環境の保全・再生(土地の取得を含む)に取り組むべきことを明確に示すこと
3.地方自治体に対してトラスト活動基金の設置をことさら促している第19条の規定を削除する、又は、
「自然環境トラスト活動基金」との名称を「地域自然資産区域基金」とすること
4.自然環境トラスト活動により取得した土地(良好な自然環境)については、人の利用よりも自然環境の保全・再生が優先されること、かつ、永久に保存されるものであることを明確に示すこと   以上

※※「朝日新聞「私の視点」に関する補足」(田中俊徳さんのブログ『熱帯京都』、2014年6月21日)
今日の朝日新聞朝刊「私の視点」に私のオピニオンが掲載されました。さる6月18日に成立した「地域自然資産区域における自然環境の保全及び持続可能な利用の推進に関する法律」(以下、自然資産法と呼びます)に対する批判です。この法律は入域料の徴収と自然環境トラスト活動の推進から構成され、後者については、すでに一部の自然保護団体から批判があり、最低限の修正が見られたので、入域料について懸念を表明しました。
新聞特有の字数制限・分かりやすさ優先といった制約から、十分に意を尽くせていない部分があるので、ここで補足します。
まず、掲載された本文の要点は次でした。
・自然資産法は規制がセットになっていないので、過剰利用や混雑といった問題を解決することができない。
・自然公園法の利用調整地区制度やエコツーリズム推進法の特定自然観光資源といった課金ができ、かつ、規制もセットになった優れた制度があるのだから、これらの活用を検討すべき(ただし下記で補足するように、手数料と入域料は少し性質が違います。また、厳密には、エコツーリズム推進法の特定自然観光資源に指定するだけでは課金はできず、条令の制定とセットでなければばなりません。これらは字数制限から加えることができませんでした)
・ただでさえ、日本の自然保護制度は多くの省庁にまたがって合意形成が困難な面があるのに、地方自治体が自然資産区域を定めて入域料の徴収を始めると、利害関係がさらに複雑化し、過剰利用をはじめとする諸問題に円滑に対応できない可能性がある。
・規制をともなわず、入域料の徴収のみが先走ると、財政難の自治体にとっては、利用促進のための制度になる可能性がある。
いくつか論点を補足したいと思います。
第一に、自然資産区域の指定が、当該区域の自然環境保全を行う資金の捻出を受益者負担で行うということを目的にしているのであれば、新たな法を作らずとも、地方税法に定められる「法定外目的税」という制度を使えば、事足りる話です。実際に、岐阜県の乗鞍環境保全税や渡嘉敷村の環境協力税などが条例によって定められています。また、法律に頼るまでもなく、現在、日本中で「協力金」や「募金」といった形で入域料が実質的に徴収されています。これら任意の入域料は、それなりに課題を抱えていますが、使途の柔軟性が高いという点では、自然資産法に定められる「入域料」よりもずっとましです。なぜ、あえて入域料徴収のための法律を作る必要があるのか、より詳細な説明が欲しいと思います。場合によっては、様々な主体の乱立による法定・非法定を問わない二重三重の徴収が生じる可能性もあります。
なお、自然公園法の利用調整地区制度によって課金できるのは「事務手数料」であり、自然資産法に定められる「入域料」とは性質が異なります。自然公園法の「事務手数料」は、その名の通り、入域にかかる事務手続きの諸費用にしか用いることができず(例えば人件費や印刷代)、登山道の整備やトイレの整備等に用いることは、現在の内閣法制局の解釈ではできないと言われています。この点において、自然資産法の「入域料」は、使途を定めない点に魅力があるわけです(ただし、繰り返す通り、現在各地で徴収されている協力金や環境協力税の方がずっと使途が自由)。
しかし、注意しなければいけないのは、自然公園法に定められる利用調整地区制度を導入している地域(知床五湖や西大台)の経験からすると、実のところ、人件費や印刷代など必要な経費を支払うと、もはや登山道の整備等に使えるお金はありません。例えば、西大台で徴収される手数料は1000円、知床五湖は500円ですが、前者は恒常的な赤字、後者も年度によって赤字になっています。
つまり、たとえ、他の地域が「入域料」なるものを徴収してみても、大方は人件費や必要経費に消えて、残っても雀の涙程度の可能性が高いと言えます。ということは、そもそも、入域料の徴収が実現されうるのは、「必要経費が賄えるだけの入込が期待できる場所」に限定されてしまい、そういう場所は、必然的に過剰利用のリスクを抱えているということになります。よって、規制を伴わない自然資産法に既存の制度を凌駕する利点を見出すことは難しいと言えます。
どうしても「法制化」する必要があるのであれば、順番としては、自然公園法で想定される「手数料」の解釈変更を検討することや、エコツーリズム推進法に自然資産法の要素を加味して、法改正することを検討すべきです。
ちなみにエコツーリズム推進法(エコツー法)の仕組みは大変複雑で、新聞では、字数制限のため「特定自然観光資源への指定」によって課金が可能という書き方をしましたが、厳密には、自治体が全体構想に沿って条例を制定することが必要です。2014年6月現在、特定自然観光資源への入込者制限と手数料徴収を定めた自治体の例はありませんが、沖縄県の慶良間諸島(渡嘉敷村及び座間味村)が条例策定に向けて合意形成を行っています。過去には、鹿児島県の屋久島で全体構想の策定まで行きましたが、縄文杉ルートへの入込者数を制限するための条例案が2011年に屋久島町議会で「全会一致で否決」された過去があります。
なぜ、エコツーリズム推進法による規制が、あまり利用されないかについては、別途論文を書きたいと思っていますが、根本的には、観光利益に依存している地方自治体が事務局となって、観光利益の抑制につながる規制を行うことは実質的に困難であることが挙げられます。実際に、屋久島で、規制案が「全会一致で否決」された理由は、観光利益の問題でした。
気候変動の国際交渉において、気候変動が地球益なのに対して、経済発展という国益が合意形成を阻害します。これと同様に、自然保護は地球レベルないし国レベルの利益を体現しているのに対して、自治体は、自治体の経済発展を追求する傾向にあるので、自治体がイニシアティブをとることが自然保護レベルの向上に貢献しないことが往々にしてあるという点には注意が必要です。近年は、地方自治体から先進的な取り組みを見せることもあるので、一概には言えませんが、自然保護の古典を考えれば、国-自治体は、そうした利害関係にあることを肝に銘じるべきです。
次に、「受益者負担」という考え方そのものは、社会保障費の増大に苦しむ現在の日本では支持されやすいと思いますが、「自然保護」の根本的な性質についても知っておく必要があります。元来、自然保護は、市場ベースでは十分に保全が達成されない性質の自然環境を公共財として政府が保護することからスタートしています。一方、日本では、「自然はタダ」といった考え方が強く、政府もしっかりと保護をしてきませんでした。私が日本の国立公園制度を「弱い地域制」と指摘した2012年論文では、国立公園にかかる予算や人員、権限を他国と比較して、いかに日本が国立公園制度や自然保護制度に資源を割いていないかを論じています。
また、韓国が国立公園の入園料を2007年に廃止したように「受益者負担」という考え方は、必ずしも国際的なスタンダードではありません。図書館で本を借りることが無料であるように、美しい自然を享受する権利は、国民に等しくあるべきで、そのためには、市場ベースで解決できる話ばかりではないという意見もあることを知ってほしいと思います。例えば、入域料の設定によって、経済的弱者(特に若者)が自然を享受する機会を逸する可能性を考慮する必要もあります。
蛇足ですが、日本では、環境省当局を含め、自然保護(私が「自然保護」という場合、「自然と人間の関係性の保全」というニュアンスで使っています)と真剣に向き合ってきたか疑問に思うことが多いです。例えば、アメリカでは、1920年代にGetPeopleVisittheParksというキャンペーンを行い、実際に国民に国立公園の自然を見てもらおうと考えました。そうすることで、「自然保護に対する公共の支持基盤」を醸成することを目指したのです。ダムや道路など、開発が怒涛の勢いで進む時代にあって、大変先見性のある取組でした。結果的に、「国立公園はアメリカが開発したもっとも素晴らしいアイディア」と呼ばれ、世界遺産条約の制定などにつながります。しかし、日本の当局が、自然環境保全の政策優先度を高めるような積極的な取り組みを行ってきたとは言い難いです(少なくとも「効果的な政策」という意味では)。日本では公共事業利益に見られるように「鉄の三角形」が形成されましたが、自然環境を守るための「緑の三角形」が形成されても良かったはずです。
日本ほど豊かな自然環境を有する国はなかなかありません。あまりに豊富であったため、そのありがたみが分かっていない面もあるかもしれません。だからこそ、いざ過剰利用や資金不足といった自然保護の問題が見え始めると、すぐにそれを「個人的な」問題にすり替えてしまう。そうではなく、この豊かな自然を守ることは、国益の最たるものであり、そこに必要な税金を投入することは不可欠なことだという論理が共有されていないように思えます。例えば、日本の国立公園事業予算は、アメリカの4%程度に過ぎません。日本で公共事業に用いられる1%で結構です(昨年の公共事業予算は約6兆円)。それを自然環境保全や文化保全に使うことはできないでしょうか。これには国民の声が必要です。
(実は、この部分は、強く主張したかったのですが、字数制限と分かりやすさのために削除しました。朝日新聞の担当の方には、今や、福祉も教育も「もっと税金が必要」と言っている。同じような議論になってしまうと面白くない、とご指摘をいただきました。なるほど視野が狭かったと思いつつ、やはり、日本はもっと自然環境保全や文化保全にお金を使うべきだと思っています。公共事業のように1兆円単位の話をしているわけではありません。100億円程度でいいのです)
最後に、そもそも、自然資産法が想定している「受益者」とは何を指して言っているのでしょうか。実際にそこに行った人が「受益者」というのは、経済学的に言えば「間接的利用価値」を享受した人を指しているにすぎません。「受益」には、実際には行っていないけれど得られる「非利用価値」や将来世代の「オプション価値」も含まれるはずです。今日も日本の美しい自然が、盗掘や密猟から守られているという安心(日本では絶滅危惧種がネットで売買されるなど、盗掘が大問題になっています)であったり、テレビを通じて美しい風景を鑑賞できるという喜びであったり、私たちの子々孫々も、この美しい自然を享受できる、という安心は、国益に関する重要なことです。
にも関わらず、訳の分からない事業には湯水のようにお金をつぎ込み、肝心な自然環境や文化の保全にお金をかけない、そして、いざ問題となれば「受益者負担」と言うのは問題です(この場合の「受益者」は相当範囲が狭いです)。
自然資産法に関係されている議員の方々は、おそらく自然保護や文化保全に関心の高い方々が多いと思います。だからこそ、この法律を制定する前にやるべきことがたくさんあったはずです。自然や文化が大切だというならば、安易な方向に走るのではなく、より本質的な議論をしないといけないと思います。

※※「トラスト活動に行政介入?」(『読売オンライン』2014年07月20日)
自然資産区域法 民間団体が懸念
地域の貴重な自然環境を保全するため、自治体が入域料を徴収することを認める自然資産区域法が6月、国会で成立した。
同法では、保全活動の一環として土地の取得・管理を行う「自然環境トラスト活動」を支援する基金の設立も認めたが、市民レベルで土地取得を進めるナショナル・トラスト運動の推進団体には「行政の介入で逆に活動が阻害される」という懸念が広がっており、今後、論議になりそうだ。
市民運動がモデル
超党派の議員立法で成立した同法では、自治体が、環境保全を図る上で重要な区域を「地域自然資産区域」に指定。区域内の土地を取得する「自然環境トラスト活動」を推進し、財政面で活動を支援する基金を設置できると規定した。
法律では基金の使途は明示されず、同様のトラスト活動を行う既存の民間団体は「自治体が自分たちのためだけに基金を使い、民間の活動が困難になる」と不安視する。民間団体を束ねる「日本ナショナル・トラスト協会」が法案審議に際し、「トラスト活動は主として民間団体が行う、という点を法律で示すべきだ」とする意見書を与野党に提出するなど、反発は強い。
一方、同法を所管する環境省は「自治体の性悪説に立てば民間団体の懸念は理解できるが、法律にそこまでの意図はない」と話し、議論はかみ合っていない。
柿田川の教訓
そもそも同法の仕組みは、19世紀に英国で始まったナショナル・トラスト運動がモデル。寄付を集めて土地を買い取り、自然環境や建造物などを保全・管理する市民運動で、国内では天神崎(和歌山県)や鎌倉の運動で知られる。
静岡県清水町で活動する公益財団法人「柿田川みどりのトラスト」会長の漆畑信昭さん(78)は実体験を踏まえ、「行政と土地買収が競合すると、民間は不利だ」と話す。
同町に流れる柿田川は、川底から湧き出す富士山系の地下湧水を水源とする清流で、貴重な動植物の宝庫だ。しかし、周辺の宅地化が進み、1987年には河畔の原生林が伐採されるなど、危機的な状況に陥った。
地元住民らは、開発から自然を守ろうとトラスト団体を設立。88年から始めた河畔の土地取得活動で、2872平方メートルを買収したほか、1379平方メートルを借り上げた。
だが、柿田川に全国から観光客が訪れるようになると、町は都市公園化を計画。公金で土地取得を進め、遊歩道などの整備を進めようとした。市民側は土地取得を続けて対抗しようとしたが、地権者が町に土地を売却すれば、民間と違って税金がかからないため、土地取得は困難を極めた。
市民側は「行政のトラスト潰しだ」とマスコミを通じて世論に訴え、「ありのままの自然を残すことに価値がある」と町側を説得。その結果、町は取得地のほとんどを保護すると約束し、市民の憩いの場として保全に協力することになった。
資金先細りの恐れ
自治体によるトラスト活動を奨励する新法について、漆畑さんは「行政が新法を利用して土地を確保すれば、首長の意思一つで、開発を許してしまう」と懸念する。
同様の声は、日本ナショナル・トラスト協会に複数寄せられる。関健志事務局長は、「自治体のトラスト活動基金についての懸念が多い」と指摘する。民間団体はわずかな寄付金や募金頼みで、行政の看板を掲げた基金に寄付金が集中し、資金が先細りする恐れを抱いているという。
ただし新法では、自治体が自然資産区域を指定する際、住民や有識者、民間団体などと協議することになっている。トラスト活動に関するルールも今後、同省などが検討する国の基本方針に基づくよう定められている。同省自然環境局では「基金の活用方法など、民間団体からも意見を聞き、よりよい法制度になるよう調整する」と話している。(稲村雄輝)
自然資産区域法の骨子
▽風景地や名勝地など、自然環境の保全を図る上で特に重要な土地を「地域自然資産区域」とする
▽自然資産区域で徴収した入域料を環境保全費に充てることができる
▽環境保全のための土地取得を「自然環境トラスト活動」と定義
▽自治体はトラスト活動促進経費に充てる「自然環境トラスト活動基金」を設けることができる
▽国は自然資産区域での環境保全推進に関する基本方針を定める

「森林を脅かす太陽光発電を考える」講演会に参加① 12月2日

鳩山町今宿コミュニティセンターで開かれた埼玉県生態系保護協会東松山・鳩山・滑川支部主催『森林を脅かす太陽光発電を考える ―遊休地・休耕地・山林の活用法― 』に参加しました。
181202太陽光発電講演会ポスター181202太陽光発電講演会開催趣旨

開催趣旨と参加呼びかけ
野山や森林など自然を大きく切り捨てるメガソーラー発電設置事業は、地球温暖化防止を謳ったエコエネルギーなどではなく、むしろ環境破壊行為でしかないということを皆さんはご存知でしょうか。単に景観を損ねるだけではありません。沢山の種類の生き物達がそれぞれ生き抜くために必要な環境は、実に多種多様です。また、自然はそこに息づく生命にとってだけでなく、自然体験が私達人間の健全な心と体を育む上で無くてはならない存在であるということも、近年よく言われているところです。多様性に富んだ自然環境を守り、子供達に受け継いでいく責任が、私達にはあるのです。
しかしながらその一方で、広い土地を持て余している地主さんにとって、税金や土地の管理は大きな負担となっています。そのためメガソーラーに手を出そうとお考えのあなた、ちょっとお待ちください!メガソーラー発電には、まだ他にも想像以上に大きな問題点が隠されているのです。ぜひお話しを聞きにいらしてください。また、メガソーラー以外で対処する方法などのお話しをしていただける専門家の先生もお呼びしています。ぜひお誘いあわせの上、お越しください。手遅れになる前に!
会場で配布された「講演会開催趣旨について」から(資料追加)
埼玉県内の太陽光発電設置要綱を作った自治体
県北地区:秩父市、長瀞町、皆野町、小鹿野町、美里町、寄居町
県西地区:日高市、横瀬町
比企周辺:小川町、嵐山町、滑川町、鳩山町、東松山市、坂戸市
県東部地区:蓮田市、羽生市

鳩山町の太陽光発電設置要綱(2018年4月1日施行)
別表:設置するのに適当でない区域
1.不法投棄、最終処分等により廃棄物が残置されている場所(廃棄物の処理及び清掃に関する法律):再生可能エネルギー発電施設を設置することで、当該廃棄物を適正処理することが相当困難であるとともに、周辺の地下水等生活環境に支障を生じるおそれがある。
2.農用地区域内の農地、甲種農地、第1種農地(農地法):優良農地を確保するため、転用が厳しく制限されている。
3.農用地区域内の農地・採草放牧地(農業振興地域の整備に関する法律):優良農地を確保するため、転用が厳しく制限されている。
4.保安林(森林法):水源の涵養、土砂流出の防備、土砂崩壊の防備、その他災害の防備や生活環境保全・形成等の目的を達成するために指定された区域であり、立木の伐採や土地の形状変更等が厳しく規制されている。
5.河川区域、河川保全区域、河川予定地(河川法):出水時に流下阻害発生のおそれがあるとともに、河川管理施設を損傷させるおそれがある。
6.急傾斜地崩壊危険区域(急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律:)崩壊のおそれのある急傾斜地(30度以上)で、崩壊により相当数の居住者等に危害が生じるおそれのあるもの及びその隣接地のうち、当該急傾斜地の崩壊が助長され、又は誘発されるおそれがないよう、一定行為を制限している区域であり、他のエリアに比べて災害発生により地域住民の財産・生命等脅かすリスクが高い。
7.土砂災害警戒区域(土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律):急傾斜地の崩壊等が発生した場合に、住民等の生命又は身体に危害が生ずるおそれがあり、土砂災害を防止するために警戒避難体制を特に整備する区域であり、他のエリアに比べて災害発生により地域住民の財産・生命等脅かすリスクが高い。
8.重要文化財、国指定史跡、名勝、天然記念物等(文化財保護法):復元が不可能な国民共有財産であり、適切な保護管理措置がとられている。
9.県指定有形文化財、県指定有形民俗文化財、県指定史跡名勝天然記念物、県指定史跡(埼玉県文化財保護条例):復元が不可能な県民の共有財産であり、適切な保護管理措置がとられている。
10.町指定有形文化財、町指定民俗文化財及び町指定史跡、町指定名勝、町指定天然記念物(鳩山町文化財保護条例):復元が不可能な町民の共有財産であり、適切な保護管理措置がとられている。
11.埼玉県オオタカ等保護指針に基づき事業者に対し配慮を求める区域(埼玉県オオタカ等保護指針):希少であるオオタカを保護することにより、地域の生態系を維持し生物多様性を保全する(営巣地の半径1.5㎞以内は事業者に配慮を求める)。

比較:「東松山市太陽光発電施設の設置に関するガイドライン」(2018年10月1日施行)別表2(設置するのに適当でないエリア)から(理由は略)
1. 不法投棄等により廃棄物が残置されている場所(廃棄物の処理及び清掃に関 する法律)
2. 鳥獣保護区特別保護区(鳥獣の保護及び管理並びに 狩猟の適正化に関する法律)
3.甲種農地・採草放牧地・第1種農地・採草放牧地(農地法)
4. 農用地区区域内の農地・採草放牧地(農業振興地域の整備に関する法律)
5.域、河川保全区域、河川予定地(河川法)
6.災害警戒区域(土砂災害防止法)
7.文化財、国指定史跡、名勝、天然記念物等(文化財保護法)
9.県指定有形文化財、県指定有形民俗文化財、県指定史跡名勝天然記念物、県指定旧跡(埼玉県文化財保護条例)
・要綱にオオタカに関する規定を設けているのは鳩山町のみ。
・鳩山町は、ほぼ全域にオオタカが営巣。太陽光発電施設設置可能な場所はない(営巣地半径400m以内は×)。

熊井の森の希少動植物

太陽光発電の新聞折り込み勧誘チラシが2017年4月頃から毎月は入るようになった。18年10月は毎週入る。

鳩山町大豆戸[まめと]太陽光発電施設開発。18年4月に住民の間で開発計画が噂となる。毎年営巣しているオオタカの高利用域に入っているが、事業者は計画をすすめている(工事期間:12月3日~19年6月28日)。オオタカの繁殖期に重なる。

埼玉県環境アセスメント要件。太陽光発電施設は20㏊以上。

太陽光発電事業環境保全対策先進自治体
 ・札幌市:環境保全・緑地保全に関する条例
   1000㎡以上が対象。里山地域では敷地境界から10m幅の緑地を配置する。
   里山では敷地の30%~50%の樹林を残すこと。
 ・さいたま市:環境影響評価条例
   開発面積1㏊(10000㎡)以上は環境アセスメント対象。

「⑧日本では、山林を価値のないものとして認識されていることが多い。人が生きていく上で生物多様性は必要不可欠で、持続可能な社会づくりに最重要であるという認識は世界の潮流。欧米のみならず、中国や韓国、東南アジア諸国にも遅れをとっている日本。それを、幸いにも世界に誇れる自然環境が残っている鳩山町をはじめとした比企地域で、住民自らが考えて自然を残したまま進める地域づくりのきっかけにしたいと考えています。」


市民のための環境公開講座聴講 11月20日

日本環境教育フォーラム・損保ジャパン日本興亜環境財団・損害保険ジャパン日本興亜株式会社共催の「市民のための環境公開講座」(全9回)の8回目、『持続可能な社会の実現をめざして イオンの挑戦』を聴講しました。講師はイオングループ環境・社会貢献部の金丸治子さんです。
1.イオンの概要、サステイナビリティ基本方針
2.環境重点課題 3つの挑戦
●チャレンジ1 脱炭素長期ビジョン2050
 店舗、商品・流通、お客さまとともに
●チャレンジ2 持続可能な調達方針・2020年目標(2017年4月発表)
農産物
・プライベートブランドは、GFSIベースの適正農業規範(GAP)管理の100%実施をめざす
・オーガニック農産物の売上構成比5%をめざす
畜産物
・プライベートブランドは、GFSIベースの食品安全マネジメントシステム(FSMS)または、適正農業規範(GAP)による管理の100%実施をめざす
水産物
・連結対象のGMS、SM企業で、MSC、ASC流通・加工認証(CoC)の100%取得をめざす
・主要な全魚種で、持続可能な裏付けのあるプライベートブランドを提供する
紙・パルプ・木材
・主要なカテゴリーのプライベートブランドについて、持続可能な認証(FSI認証等)原料の100%利用をめざす
パーム油
・プライベートブランドは、持続可能な認証(RSPO等)原料の100%利用をめざす
●チャレンジ3 食品廃棄物削減・資源循環モデル構築
・食品廃棄物を20205年までに半減
・(単に廃棄するのではなく資源として活用できるよう)食品資源循環モデルの構築
3.持続的な取り組み ~これまでも・これからも
・イオンの植樹活動
ふるさとの森づくり(店舗)
森の循環プログラム 植える・育てる・活かす
東北復興ふるさとの森づくり
※藤田香『SDGsとESG時代の生物多様性・自然資本経営』(日経BP社、2017年)
企業の社会的活動(CSR)報告書の読みかたCSR図書館.net
AEON Report 2017

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