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鳩山町宮山台の森の歴史(1986年の新聞記事から)③ 11月23日

『毎日新聞』埼玉版(1986年2月16日)の記事です。鳩山町宮山台の森の歴史(1986年の新聞記事から)とあわせて読むと概略がわかります。日立製作所の基礎研究所は1990年5月、40.37ヘクタールの敷地に設置されました。

緑地は60%以上保全
 鳩山 宮山台地域の開発案
  町審議会が採択

 比企郡鳩山町の中心部、宮山台地域の開発について、15日開かれた同町企業開発調査審議会(竹本寿一委員長)は「緑地を60%以上保全し、研究開発団地(仮称・鳩山リサーチ・パーク)」とする開発構想案を採択した。町当局が宮山台国有林を中心とした工業団地構想を一昨年に打ち出して以来、住民間で、自然保護か、企業誘致かの論争が続いていたが、この構想案によって今後の方向性が示された。
 町は宮山台国有林41ヘクタールを中心に、その周辺部を含め約91ヘクタールを「工業団地」とする構想だった。同国有林は、すでに日立製作所が買収、基礎研究所を建設する計画で、町は全体構想の調査、研究を日本立地センター(東京)に依頼していた。
 この日の審議会で採択されたのは、同センターが作成した案。それによると、同地域を「21世紀の主役と考えられる知識集約的な機能のセンターを形成する研究開発型団地とする」ことを提案。具体的な導入産業としては研究所、情報産業、銀行などの事務計算センター、先端技術産業などをあげている。
 構想地域は、現在ほとんどが樹林地であるが、緑保全については手を加えない「保全緑地」を40%、「造園緑地」20%の計60%の緑地確保を求めている。また、日立製作所の基礎研究所建設を第1期開発地域とし、全体の91ヘクタールを3期に分けた段階的開発を提案している。
 同地域は、第2次総合振興開発計画で、これまで「レクリエーション緑地」と定めていたが「工業系地域」に変更する改定案が、県からの同意を得ており、町は3月定例議会に改定案を提出、可決されれば、同構想に沿って開発が進められる。
  『毎日新聞』埼玉版(1986年2月16日)



鳩山町宮山台の森の歴史(1986年の新聞記事から)② 11月22日

『朝日新聞』埼玉版(1986年2月16日)の記事です。記事にある農水省林業試験場が管理していた国有林が東松山市の市民の森です。

守られた自然100選 鳩山町の「宮山台の森」
 住民の声実り計画変更
  工業用地60ヘクタールに縮小
   残る30ヘクタールを緑地で保存

 比企郡鳩山町の旧宮山台国有林と周辺の山林計90ヘクタールを工業団地化する町の計画に住民が反対していた問題は、同町が県と協議した結果、開発地域を60ヘクタールに縮小することで15日までに一応の決着がついた。同町は3月議会で承認を受けることにしているが、森林保全を訴え続けてきた住民の声が計画変更につながった形だ。鳩山町は58年[1983年]暮れ、宮山台国有林払い下げを土台に、周辺一帯に工場を誘致しようと構想を立て、将来の土地利用を定めた同町第2次総合振興計画で、この一帯を「レクリエーション緑地地域」から「工業地域」に変更する改定案作りを進めた。

 これに対し、同地域に隣接する鳩山ニュータウンの住民などから「貴重な緑を残してほしい」と反対の声が出て、昨年12月には改定案作りに住民の参加を求める条例の制定請求も行われたが否決された。また、朝日新聞社と県などが主催した「埼玉の自然100選」では、住民が「宮山台の森」に38万票近くを投じた。その後、同国有林は日立製作所に払い下げられ、日立は緑を生かした研究所建設を公表している。
 振興計画の改定案をめぐる県との協議で手直しされた点は、町が90ヘクタールとした工業地域を、日立製作所が買った宮山台の森約40ヘクタールと農水省林業試験場敷地約7ヘクタールなど計60ヘクタールに縮小、残りはレクリエーション緑地地域のまま保全するというもの。
 県地方課では「90ヘクタールをいっぺんに工業地域にするのは無理で、地理的に言っても工場誘致は難しい。今は緑地を保全をして、宮山台の開発の結果を見る方が良い。結果として町民の意見がかなり反映された案になっていると思う」と言っている。また、反対運動をしてきた鳩山町住民集会実行委メンバーの竹林信明さんは「私たちの声を県も無視できなくなったということで、大変うれしい。今後は日立の研究所が緑を十分生かしたものになるか、レクリエーション緑地地域とされた部分がまた工業地域に変更されたりしないか、監視を続けて行きたい」と語っている。

 宮崎得一鳩山町長の話 今回の手直しが一歩後退とは思っていない。町としては今回工業地域とされる部分を第一期、第2期の開発地域と考え、縮小された部分は第3期の開発として、第3次総合振興計画での改訂を図りたい。
  『朝日新聞』埼玉版(1986年2月16日)

鳩山町宮山台の森の歴史(1986年の新聞記事から)① 11月21日

『朝日新聞』埼玉版(1986年1月7日)の記事です。「宮山台の森」は、1985年に行われた21世紀に生きる子供たちに残したい「埼玉の自然百選」(朝日新聞社・埼玉県・財団法人森林文化協会主催、環境省、県教育委員会など後援)で、全投票数423万票中、37万票を獲得して2位選出されました。現在、日立製作所の基礎研究センタ(鳩山町赤沼2520番地)があります。


自然と人と 100選の舞台で 2
 工業団地推進する町
  環境の圧壊恐れる住民

 比企丘陵のうねりが南に向かい、なだらかに関東平野にとけ込む。そのすそのに、宮山台の森はある。コナラ、アカマツの尾根に浅い谷が小川と田んぼをつくっている。40ヘクタールの森にはサンコウチョウ、サシバ、タヌキなどの生き物が豊かに暮らす。

 この森の開発をめぐって、鳩山町と鳩山ニュータウンの住民たちが2年近くも対立を続けている。周辺の林を含めて100ヘクタールに及ぶ工業団地を造りたい町。環境の悪化を恐れる住民。
 「こんばんは。栗を持って来ました」。自然100選の応募が始まると、毎週火曜日の夜、きまって伊藤建三さん(45)が朝日新聞支局を訪ねてきた。ニュータウンの住民組織、鳩山町住民集会実行委員会のひとりだ。岩槻の勤め先からの帰りに、住民の応募票をまとめて届け、新しい応募用紙を受け取って行く。
 岩槻から引っ越して来て10年になる。「当時は生活には不便だったけれども、この自然環境には代えられないと思って」。家庭菜園を借りて無農薬野菜を作った。2人の子供と、森へよく遊びに行った。自然の中で体を動かす喜びにひたった。
 鳩山ニュータウンも、山を切り開いた住宅地だ。「自然破壊の上に住んでいるくせに」。「東京ばかり向いて、地元のことを考えていない」。そうした批判は、伊藤さんも知っている。「でも、土地が高騰している中で、よい環境を求め、必死になって探したのがここなんです。町民の半数を超えるニュータウン住民が工業団地はいらないと言っているのに、それでも強行するのが町のためなんでしょうか」

 宮崎得一町長(51)は、朝5時半に起きて牛の世話をする。代々、この地の農家だ。「昔はずっと乳しぼりをやっていましたから、ほら手がこんなですよ」。指先は、武骨に太く広がっている。
 「いま町には産業と言えるものがほとんどない。人口も増え、将来を考えると企業の誘致は絶対に必要です」
 町長は、ことばを続ける。「私だって緑は大切だと思う。しかし町の面積のうち緑地は約7割。その10分の1にも満たない土地を、町の将来のために開発することは許されるでしょう。工場を建てるといっても緑地は3割以上残すし、公害は厳しくチェックします」

 宮山台の森は、国有林だった。だが、昨年暮れも押しつまった12月18日、日立製作所に払い下げられた。
 3日後、応募票の集計結果が発表された。「宮山台の国有林」は、37万7660票で、第2位だった。

宮山台の森(鳩山町)
あし 東武東上線高坂駅から鳩山ニュータウン行きバスでニュータウン中央バス停下車。徒歩約5分で、森の外縁につく。
  『朝日新聞』埼玉版(1986年1月7日)

彩の国さいたま人づくり広域連合政策研究成果発表会 2月13日

さいたま市の埼玉県民健康センターで開かれた彩の国さいたま人づくり広域連合2017年度政策研究成果発表会に午後から参加し、「持続可能な郊外住環境実現プロジェクト」研究会と「公共空間の利活用による地域活性化プロジェクト」研究会の研究成果の発表を聞きました。彩の国さいたま人づくり広域連合のサイトから2010年度以降の政策課題共同研究の活動レポートや報告書はダウンロードできます。
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持続可能な郊外住環境実現プロジェクト」の報告後、コーディネーター藤村龍至さんの「講評・解説」がありました。パワポのスライドを印刷したものが配布されたので一部を掲載しておきます。東武東上線沿線の自治体区分では、和光市~ふじみ野市が安定通勤圏(都内通勤率25%以上)、川越市~滑川町が変動通勤圏(都内通勤率10%以上25%未満)、嵐山町~寄居町が地域通勤圏(都内通勤率10%未満)になります。

都心通勤圏の縮小

・1970年、1990年、2015年と移行するに従って都心一極集中傾向は弱くなっている
・10%通勤圏を1つの指標とし、東京駅と新宿駅を都心と定義して都心からの距離との関係をみると1990年代は都心60㎞圏まで拡大しているが2015年には40㎞まで縮小している

「変動通勤圏」に空き家と高齢者が集中する

・広域行政単位ではなく鉄道沿線単位で地域を再設定し、状況を把握
・丘陵地に大規模NT(ニュータウン)の開発が進んだ西武池袋線・東武東上線と旧街道沿いに敷設された路線では状況が異なる
・埼玉県内で鉄道沿線自治体の都内通勤率のデータをみると、大きく3段階に分かれる
・都内通勤率が40%程度の「安定通勤圏」と10%以下の「地域通勤圏」のあいだを「変動通勤圏」と定義
・「変動通勤圏」=将来高齢者と空き家が集中的に発生するであろう地域
・JR高崎線でいうと上尾から行田までの地域がそれにあたる(=圏央道沿線自治体)
・現状では住宅政策・都市政策ともに対象化されているとはいいがたい

鉄道4路線ごとの課題の課題パターン図
政策課題共同研究報告書概要版2015年度

遠郊外住宅団地をあと10年以内に本物のリタイアメントコミュニティに
・男性の89.1%、女性の100%が80歳前後で自立度2、84歳前後で自立度が1へと低下
・1980年代に団塊の世代を受け入れた遠郊外受託団地の住民の自立度が一斉に低下するのは2027年前後
・生涯活躍のためには社会性の維持が鍵となるが郊外住宅地では空間もコンテンツも不足している
・住宅地を病院のように機能させる=24時間訪問医療介護の体制を可能にする空間づくりが鍵
・空き家を提供し小規模多機能居宅介護のための拠点にしたり、日常的な交流空間に転用する
・住民の理解が不可欠だが「閑静な住宅地」という虚構から抜け出すためには早めの啓蒙が必要

自然発生的なリタイアメント・コミュニティ
・高齢化率は中山間離島地域並みだがその範囲がコンパクト
・住民の経済的なポテンシャルが高い
=自然発生的なリタイアメント・コミュニティが発生している(園田真理子)
 足りないのは24時間の身守り体制や交流空間など
→適切な再投資が必要

鳩山NT:地方創生関連交付金を活用し「コミュニティ・マルシェ」を整備【略】

かすみ野:医療法人・社会福祉法人が積極的に施設開放し街と関わる【略】

白岡NT:住民集会所を利用しカフェ&マルシェを試験的に実施【略】

香日向:空き店舗を利用したトークイベントによるイメージの共有【略】

椿峰NT:シンポジウムから公園利活用、まちと緑をまもるプロジェクトへ【略】

住宅団地再生の空間戦略
住宅と施設のあいだの「マルシェの層」と「住み開きの層」の活性化に活路を見出す
<マルシェの層>
・対象:空き店舗等の再活用・公園等の利活用・小学校の空き教室等
・公共施設として整備・民間企業が提供・住民有志が自ら開催など
・若い世代にとっては小さな起業の場・高齢者にとっては居場所・対外的にはまちのイメージを発信する場
<住み開きの層>
・住宅の1階のリビング等を小さく改修して外部へ開いていく
・第1種住居専用地域の専用住宅を50㎡未満の店舗等に改造し兼用住宅化
・保健所の対応(「専用区画」の定義等)、協定等の改定など周辺住民の理解が重要

住宅団地マネジメントの担い手像
担い手像は世代によって変化しており、45歳以下を巻き込むにはマルシェが有効
<地縁組織型>
・自治会、婦人会、老人会などで上の世代から地域の行事(餅つき・夏祭り等)を受け継ぐ
・大きな組織を代々引き継ぎトップは75歳以上の男性、会長OBらが顧問というケースも多い
・自らは高い志に支えられて参加しているが下の世代が引き継ぎたがらないのが共通した悩み
<緩やかな連帯型>
・団塊の世代(1947-49年生まれ)を中心としたアクティブシニアなどがNPO法人を設立
・強制的に参加させられる既存の地縁組織に強い違和感があり自発的なボランティア活動に高い意欲
・企業等で安定的に雇用されていた世代であり自分で稼ぐことには大きな抵抗感がある
<スモールビジネス型>
・団塊ジュニア世代(1971-74年生まれ)前後の子育て世代などが起業し株式会社等を設立
・非正規雇用が多かった世代であり稼ぐことに意欲的だが持続性のないボランティア活動には強い抵抗感
・ツールを駆使してソーシャルネットワークを形成しマルシェなどで積極的に交流

持続可能な郊外住環境実現に向けて
3年間にわたって取り組んだ研究のまとめ
・通勤圏縮小に伴い遠郊外(東京の場合都心40-60㎞圏)が特に空洞化しつつある
・郊外自治体の市街化区域の中で再スプロール化がおこっており小さな地域間競争が発生
・住宅団地の高齢化率は高いがその範囲はコンパクトで住民の経済的ポテンシャルは高い
・一部では自発的なリタイアメントコミュニティが出来上がりつつある
・足りないのは24時間の医療福祉体制や交流空間の整備
・住宅団地の再投資には公共投資の例もあれば、民間投資の例もあるが投資効率は高い
・住宅団地で得られたノウハウを既存の公共サービスや施設の体系にフィードバック
・いずれも空きストックの有効活用が鍵
・空間的には「マルシェ層」と「住み開き層」の活性化が鍵
・担い手像は世代によって変化しており、多世代を巻き込むにはマルシェは有効
・(1)地域の空間資源を再検討し(2)人材を発掘し(3)世代を超えた協働から起業へとつなげる
・行政はまず研究対象化をはかり、プロジェクトを設定し、実験を行うことが有効

2015年度共同研究報告書『「埼玉県の空き家」の課題パターン抽出とその解決策の提言』

※2016年5月20日、16年度政策課題共同研究オープニングセミナーレポート(全文
政策課題共同研究オープニングセミナー2016年度1政策課題共同研究オープニングセミナー2016年度2政策課題共同研究オープニングセミナー2016年度3

※2017年2月10日、2016年度成果発表会(プレゼンテーションスライド
2016年度研究報告書『「サステイナブルタウン」を目指して-超高齢社会の包括的タウンマネジメント-』

※2017年5月18日、17年度政策課題共同研究オープニングセミナーレポート(全文
政策課題共同研究オープニングセミナー2017年度
2017年度研究報告書の発行がまたれます。

※鳩山ニュータウンについては『週刊東洋経済』第6772号(2018年2月3日)88頁に牧野和弘「人が集まる街 逃げる街第12回 鳩山ニュータウン[埼玉県] かつて栄えたニュータウンで深刻化する“孤立化”」が掲載されています。

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