植物調査
成木は葉が不分裂。実生など若木は3裂するものが多い。
見分けは葉が対生。翼果。幹、枝に緑色の筋が入る。よく似るモミジイチゴは互生、棘がある。
ウリカエデは丘陵、ウリハダカエデは丘陵にもあるが、県民の森など少し高い山地に多い。
はしがき
改訂再版にさいして
第1部 野外観察の方法
野外観察のねらい
1 校庭内外の雑草の生活
2 田畑の雑草
3 帰化植物の生活
4 日本の草原
5 森や林のつくり
6 竹林のつくり
7 山を調べる
8 水辺の植物の生活
9 湿原を調べる
10 河原の植物
11 海岸の植物
12 磯の潮だまり(タイドプール)
13 植物季節を調べる
14 環境の調べ方
15 生活型を調べる
第2部 指導計画と生態教材
1 中学校の生態教材
2 高校の生態教材
3 観察のための学校園
4 生物クラブの活動とその方法
あとがき
索引
人工栽培に関してキンランの人工栽培はきわめて難しいことが知られているが、その理由の一つにキンランの菌根への依存性の高さが挙げられる。
園芸植物として供させるラン科植物の、菌根菌(ラン科に限ってはラン菌という言葉も習慣的に用いられる)はいわゆるリゾクトニアと総称される、落ち葉や倒木などを栄養源にして独立生活している腐生菌である例が多い。 ところがキンランが養分を依存している菌は腐生菌ではなく、樹木の根に外菌根を形成するイボタケ科、ベニタケ科(担子菌門)などの菌種である[2][3]。外菌根菌の多くは腐生能力を欠き、炭素源を共生相手の樹木から得、一方で樹木へは土中のミネラル等を供給し共生している。キンランはその共生系に入り込み、養分を収奪し生育している。
ラン科植物は多かれ少なかれ菌類から炭素源(糖分など)や窒素源(アミノ酸など)を含め、さまざまな栄養分を菌根菌に依存している[4]。菌への依存度はランの種類によって異なり、成株になれば菌に頼らなくても生きていける種類(独立栄養性種=栽培できる有葉ラン)から、生涯を通じてほとんどすべての栄養分を菌に依存する種類(菌従属栄養性種=一般に‘腐生ラン’と総称される)までさまざまな段階がある。本種の菌依存度は独立栄養植物と菌従属栄養植物の中間(混合栄養性植物)で、坂本らの調査[5]によれば本種は炭素源の34~43%、窒素源の約49%を菌から供給されており、同属のギンランでは炭素源の48~59%、窒素源の90%以上と、さらに高い依存度を示している。
このような性質から、キンラン属は菌類との共生関係が乱された場合、ただちに枯死することは無いが長期的に生育することは困難になる。そのため、自生地からキンランのみを掘って移植しても5年程度で枯死してしまう。外生菌根菌と菌根共生するラン科植物は多くあり、キンランと同様に里山に生育するオオバノトンボソウ(ノヤマトンボソウ)も同様の性質を持つ[6]。
理論上は菌根性樹木・菌根菌・キンランの三者共生系を構築すれば栽培が可能である。実際Yagame and Yamato(2013)[7] は、キンランからイボタケ科の菌根菌を分離培養後、外生菌根性の樹種であるコナラの根に分離株を接種し菌根を形成させ、そこへ無菌培養条件下で種子発芽から苗まで育てたキンランを寄せ植えし、30ヶ月育成させることに成功している。この実験では、植え付けたキンランの多くの苗が地上部を形成せず、根のみを伸長させ生育する様子が観察されている。この現象から、キンランが高い菌従属栄養性を有することがわかる。しかし、このキンラン・菌根菌(イボタケ科)・樹木(コナラ)の3者共生系の構築は①菌根菌の分離・培養、②菌根菌の樹木への接種、③安定した共生系の維持(ほかの菌根菌のコンタミネーションの防止)といった技術上解決しなければならない問題点が多く、一般家庭で行うことは困難である。自然環境中に外菌根菌は6000種程度存在し[8]、キンランが生育する環境下にも多様な外生菌根菌が共存していると考えられる。その中でキンランに養分を供給する菌種は限られているため、単純にキンランと樹木を寄せ植えにしても、その樹木にキンランと共生関係を成立させうる外菌根菌が共生していなければ、キンランを生育させることはできない。
※「里山のランラン[前編]キンラン・ギンラン」(『サカタのタネ園芸通信』連載の小杉波留夫さん『東アジア植物記』の2017年4月18日記事)
※長谷川啓一・上野裕介・大城温・井上隆司・瀧本真理・光谷友樹・遊川知久「キンラン属 3 種の生育環境と果実食害率:保全に向けての課題」(『保全生態学研究』22巻2号、2017年)
要旨:キンラン属は、我が国の里山地域を代表する植物種群であり、菌根菌との共生関係を持つ部分的菌従属栄養植物である。全国的に、里山林の荒廃や樹林の減少に伴って生育地が減少しつつある。本研究では、キンラン、ギンラン、ササバギンランの 3 種を対象に、(1)樹林管理の有無とキンラン属の分布にどのような関係があるか、(2)キンラン属が生育するためにどのような環境整備が必要か、(3)ハモグリバエ類の食害はどの程度生じているのか、を明らかにし、今後、キンラン属の保全のためにどのような方策が必要かを検討した。……
キンラン属の生育地保全のための樹林管理手法
本研究の結果、3 種とも樹林管理を行っている区域に生育地が集中し、同所的に出現していた一方で、種ごとの生育環境にはほとんど違いが見られなかった(図 3)。このことは、保全上、2 つの重要な示唆を含んでいる。第 1 に、キンラン属の生育地の保全には、樹林管理がきわめて重要であること、第 2 に、管理手法を種ごとに検討することは必須ではなく、共通の対策で 3 種の共存が可能なことである。……一方、本研究では、5 月の開花期の環境条件を基に検討を行っているが、下草刈りの時期や実施内容については、キンラン属植物の年間の生活史を踏まえて検討する必要がある。通常の樹林管理では、草本が繁茂する初夏~秋に雑草の繁茂抑制を目的とした下草刈りが行われるが(例えば、川崎市(2010))、この時期はキンラン属の果実の成長・成熟期にあたり、草刈りにより多くの株が消失してしまう危険性が高い。また、初夏~秋は翌年の開花期に向けて個体に栄養を蓄える時期であり、十分な光を受けて光合成を行える環境が重要と考えられる。そのためキンラン属の生育エリアでは、キンラン属のフェノロジーにあわせ、4 ~ 5 月の花期に生育位置を確認し、初夏~秋には光環境の種間競争を手助けするための生育箇所周辺の部分的な草刈等が必要である。その上で、種子散布後の 1 ~ 2 月に全面的な樹林管理を行い、生育エリア全体としてアズマネザサの繁茂抑制を行う等、持続的に明るい林床環境を維持するための対応が必要であろう。……
キンラン属3種の環境ごとの生育株数の違いと樹林管理
生育株数を目的変数とした GLMM の結果から、本調査地のように成立年代や地質、気候、植生的によく似た樹林であっても、微環境の違いによって生育株数が異なることがわかった。すなわち、キンランとギンランは樹冠が開け、草本被度の小さい、明るい林床環境ほど株数が多くなる傾向があったのに対し、ササバギンランは植生や光環境に対する増減傾向は検出されなかった(表2)。他方、ギンランとササバギンランは、土壌硬度が高いほど(山中式土壌硬度計の目盛りで 15 mm 以上)、株数が減少する傾向が確認されたのに対し、キンランは土壌硬度よりもリター厚が厚くなるほど株数が少なくなる傾向が確認された(表 1)。これらのことから、キンラン属 3 種の生育株数を増加させるためには、光条件やリター厚、高木層や草本類との相互作用(例:光や空間をめぐる競争)がキンラン属の生育に適した状態に近づくように、枝打ちや下草刈り、落ち葉かき等の樹林の人為的管理が重要であることが示唆された。その際、踏みつけなどによって土壌硬度が高まらないよう配慮が必要である。
生育地点近くの樹種についても、キンランとギンランでは違いが見られた。キンランは、落葉・常緑問わずにブナ科樹木の近くで生育株数が多く、ギンランは、アカマツまたはクヌギやコナラ等の落葉性のブナ科樹木の近くほど生育株数が多いことがわかった(表 2)。この理由として、樹種ごとの共生する菌種の違いが考えられる。土壌中の菌根菌の把握は、播種試験法(辻田・遊川 2008)を用いることで局所的な菌根菌の種や分布を把握可能であるが、広域的に把握する手法はない。他方、分子生物学的手法の急速な発展により、これら土壌中の菌とキンラン属との関係性も明らかにされつつある(例:Sakamoto et al. 2016)。さらに近年、土壌中の菌類の調査技術が急速に発達しており(谷口 2011)、これまでブラックボックスであった土壌中の菌根菌と外生菌根性の樹木、キンラン属の 3 者の相互関係の解明が期待されている。将来的には、それらの成果を活用することで、地上部の樹種の違いだけでなく、菌根菌の分布も考慮した保全手法の開発につながるだろう。
3種間での袋がけの効果とハモグリバエ類の影響の違い(略)
※【コラム】スマート農業 研究第一人者に聞く「スマート農業最前線」(SMART AGRI
農業とITの未来メディア)
●「菌根菌」とタッグを組む新しい農法とは? 〜理化学研究所 市橋泰範氏 前編
日本の農業に貢献するための微生物研究施設
植物と微生物の関係性がやっと見え始めた
●「アーバスキュラー菌根菌」とは何者か?〜理化学研究所 市橋泰範氏 中編
無機成分の土壌診断だけでは通用しなくなっている
リン酸を植物に“供給”してくれる菌根菌という存在
日本は貴重なリン肥料を無駄に使いすぎている
●「フィールドアグリオミクス」により微生物と共生する農業へ 〜理化学研究所 市橋泰範氏 後編
土壌、植物、微生物を解析する「フィールドアグリオミクス」とは
世界の土壌は病んでいる。では、日本は?
微生物と共生する、21世紀型の緑の革命を
『日本経済新聞』(2021年3月6日)に船橋玲二「アカガエルの産卵 多様な命 復活支える」が掲載されていました。
3月になると小さな草の芽が出てきて日ごとに春を感じる機会が増えてくる。関東地方では2月の半ば頃から田んぼや水路でカエルたちがすでに動き始めている。暑さの苦手なアカガエルの仲間が卵を産みに水辺に集まってくるのだ。
条件が良ければ1枚の田んぼに数百個もの卵塊が見られる。一つの卵塊は1千個以上の卵が集まっているから、数十万~数百万もの命が生まれたことになる。地域によって産卵の時期は少しずつ違い、九州では年末から、東北地方では3月から5月に行われる。
産卵は陽の光を受けて水温が上がりやすい水深の浅い場所が選ばれる。産み落とされた場所が浅すぎると明け方の冷え込みで凍ってしまうし、深すぎれば水温が低くて成長が進まない。
私が湿地を歩いて卵塊を見つけた時の水深記録は、約2千例の平均で7センチメートルであった。この深さは冬も田に水を張る「ふゆみずたんぼ」を行うとちょうど実現できる。アカガエルは10メートル四方ほどの庭先でも、池や草むらがあれば卵を毎年産み、世代を繰り返せる。早春の田んぼに水があれば無数の卵であふれるはずだ。
かつて、排水が思うようにできない湿田が全国各地に存在していたので、アカガエルはどこでもごく普通の種だった。それが近代化によって冬に乾かせる田んぼが増えると、どんどん姿を消していった。
埼玉県のさいたま市から川口市にまたがる見沼田んぼは、洪水対策で緑地空間こそ残されたものの乾燥化が進む。かつてほぼすべてが水田だった約1千ヘクタールの中で卵が確認できる場所は数ヶ所しか残っていない。多くの生きものを育む湿地環境が、私たちの身近な空間からどんどん消えていることがわかる。……
夕方から北西の風が吹き始め、鳩山アメダスでは午後9時に11.7m/sの風速を記録しています。気象用語では平均風速10m/s以上15m/s未満を(強風の一段階下の)「やや強い風」とよぶそうです。気象庁が採用している世界気象機関(World Meteorological Organization、WMO)の13段階のビューフォート風力階級表では風力6の雄風[ゆうふう](風速10.8〜13.8m/s)。陸上では大枝が動く・電線が鳴る・傘はさしにくいとされています。
※畑の雑草図鑑〜スギナ編〜【畑は小さな大自然vol.30】(『マイナビ農業』2020年2月4日)
生命力が高く、栄養豊富な雑草
スギナの祖先は電柱サイズだった!?
スギナはどんな場所で増える?
スギナが生える土地の地力レベルは?
スギナはどう対策する?
スギナの役割とそれを肩代わりする方法
スギナの特徴をうまく活かそう
スギナは世界的に広く分布するトクサ科の多年生雑草で、国内でも、畑地、樹園地、牧草地、畦畔、路傍、造成地など農耕地、非農耕地を問わず、古くから広範な地域で発生が認められ、重要な防除管理対象雑草とされてきた)。1980年代以降、畑作における不耕起栽培の普及、農耕地および緑地管理の省力化にともない、本種の防除の困難さが強調されるようになったが、笠原(1951)以降、農耕地における発生や雑草害の実態は不明なままであった。また、スギナは胞子、根茎、塊茎の3種類の繁殖器官を持つこと、また、増殖力が強大であることが知られているが、その発生生態、増殖機構等についてはまだ不明な点が多く残っているのが現状である。本研究は、本草種の効果的また合理的な防除・管理技術の開発に資するために、農耕地における発生や雑草害の実態を明らかにするとともに、繁殖に関与する生理生態的特性、特に環境応答に関する特性の解明を行ったものである。1.発生および防除に関する実態調査
2.繁殖器官の定着・増殖特性と環境応答
(1)胞子からの発芽定着
(2)地下部栄養繁殖器官からの増殖
(3)繁殖器官形成に及ぼす除草剤処理効果
3.畦畔植生群落をモデルとした繁殖特性と環境応答
4.繁殖器官形成制御要因
要約 スギナの防除技術を確立するために、繁殖の主体と考えられる地下部繁殖器官の形成あるいは死滅に及ぼす環境要因の影響を検討した。第1にスギナの各器官の成長に及ぼす日長の影響について検討した。8時間日長よりも16時間日長条件下で、根茎伸長、塊茎形成数および各器官の乾物重は顕著に増加した。第2に各器官の発育に及ぼす土壌水分の影響を検討した。その結果、萌芽前から湛水状態にすると塊茎は休眠状態となり萌芽しないが、萌芽後生育途中で湛水状態とした場合には塊茎形成のみが抑制され、地上部生育、根茎伸長は抑制されなかった。また、萌芽後生育途中で冠水状態(地上部が水面下にある状態)とすると地上部生育、根茎伸長、塊茎形成とも抑制された。第3に不良な環境条件に対する耐性について塊茎および根茎で比較した結果、高温および乾燥に対する耐性は塊茎よりも根茎が優れた。
総合考察 近年、農耕地への分布拡大が指摘されているスギナは、一度圃場に侵入すると防除が非常に困難な雑草である。スギナは地下部に強大な栄養繁殖器官を形成するが、効率的な防除法を確立するためにはその増殖機構の解明とともに器官の死滅に関与する環境条件を明らかにする必要がある。本研究において、スギナは長日条件で各器官の生育が優れること、萌芽前から湛水状態にすると塊茎は休眠状態となり萌芽しないが、萌芽後生育途中で湛水状態とした場合には塊茎形成のみが抑制され、地上部生育、根茎伸長は抑制されないこと、高温および乾燥等の不良な環境条件に対する耐性は塊茎よりも根茎が優れること等が明らかになった。先述したように、長日条件によるスギナの地下部の生育促進が日長反応性のみに因るのではなく、光合成器官である地上部の生育量と連動している可能性から、地上部の生育を抑制し、地下部繁殖器官の増殖を防ぐような防除技術を策定する必要も考えられる。また、転換畑等にスギナが繁茂してしまったような場合、湛水状態にすることによって防除する方法も考えられる。しかし、本実験の結果から、スギナはかなり高い湛水耐性を持っていることが示され、中途半端な湛水処理はかえって根茎伸長を助長すると思われる。また、かなり早期の萌芽前の湛水処理によって新たな増殖を抑制することは可能でも、根絶することは困難と思われる。なお、田畑輪換においては、3~4か月以上の長期間の湛水が行われるが、こうした条件におけるスギナの繁殖器官の生存については今後さらに検討が必要である。著者らは以前、スギナの根茎と塊茎では、新根茎の伸長力が異なり、塊茎から発生した根茎の方が根茎の節から発生した根茎よりも伸長力が優っていることを明らかにしている18)。土中の分布域拡大を担う根茎が高温や乾燥などの不良環境に対して強い耐性を示すのに対し、不良環境に対し耐性の弱い塊茎は、根茎より分離すると根茎から発生するものよりも速い速度で新たに根茎を伸長させ、さらに分布域を拡大するという生態的特性を持っているといえる。この両器官の巧みな連携によりスギナの繁殖戦略は強化されていると考えられる。環境に対する反応性は一つの植物種であっても、その前歴により異なる可能性があり、種内における変異性が大きく現れる部分でもある。今回の試験は一地域のみで採取した材料のみを用いて行ったものであり、具体的に防除方法等を考える際には、採取地の異なる材料等を用いて、さらに、自然条件下における環境変化に対する耐性を検討する必要があり、今後の課題であると考えられる。
1.はじめに
2.スギナの発生と防除の実態
3.スギナの生態的特性
(1)胞子からの増殖
(2)地下茎繁殖器官からの増殖
4.防除のポイント
やっかいな雑草の本体は地下にあり。多年草の特性と効果的な対策(草刈り、耕起、除草剤、防草シート、地被植物など)を平易に解説。草種ごとに地下部の貴重な写真とイラストを満載し、生態と管理法を具体的に示す
まえがき
Ⅰ.生活圏の雑草状況―悪化する植生
1.深刻化する雑草問題
2.対策が必要な場面は多種多様
3.主な対象雑草は多年生
4.近年やっかいな雑草が増え続けている原因
1)直接的要因―雑草地の増加、草刈りなど
2)間接的要因―温暖化、CO2濃度上昇など
Ⅱ.多年生雑草とは―やっかいな特性
1.生活サイクルと繁殖戦略
2.基本構造とタイプ―拡張型と単立型
3.地下拡張型の特徴
1)地下部の基本構造
2)地下器官系の大きさと土中分布
4.再生のしくみ
5.栄養繁殖・拡散のしくみ
Ⅲ.雑草管理の基本とは―踏むべき手順
1.目的の設定―何が問題か
2.関係要因に関する情報収集
1)雑草の種類と発生状況
2)利害関係者
3)使用できる労力・コスト
4)管理による環境負荷
3.プログラムを作成し計画的に
Ⅳ.管理手段その1―機械的手法
1.刈取り・刈払い
1)刈取りは何のために行うのか
2)刈取り回数・時期に関する事例
3)生長の季節消長からみた刈取り時期
4)イネ科中心の植生への移行と刈取り
2.耕起
3.手取り除草
Ⅴ.管理手段その2―化学的手法
1.除草剤の利用
1)多年生雑草の制御に必要な特性
2)施用法
3)長期的視野の必要性―処理後の種類の変化
2.抑草剤の利用
Ⅵ.管理手段その3―地表を被覆する手法
1.防草シート
2.植物発生材
3.地被植物
1)センチピードグラス
2)ダイコンドラ
3)ほふく性タイム
Ⅶ.多年生強害草に対処するには
1.対処の手順―標的雑草の特定・排除から
2.各種の特性を知れば対処法がわかる
Ⅷ.主要38種の生態と管理法
■根茎で拡がる:イタドリ、オオイタドリ、セイタカアワダチソウ、フキ、アキタブキ、ヨモギ、ドクダミ、カラムシ、ヒルガオ、コヒルガオ、ハマスゲ、シバムギ、セイバンモロコシ、チガヤ、アズマネザサ、ネザサ、ヨシ、ススキ、スギナ、イヌスギナ、ワラビ
■クリーピングルートで拡がる:ヒメスイバ、ヤブガラシ、ガガイモ、セイヨウヒルガオ、ハルジオン、セイヨウトゲアザミ、ワルナスビ
■ほふく茎で拡がる:クズ、シロツメクサ、ヘクソカズラ
■短縮茎をもつ:エゾノギシギシ、スイバ、ヘラオオバコ
(『田舎の本屋さん』書誌詳解情報から)
[ラン科]8.キンラン属 Cephalanthera L.C.Rich. 1818
地生植物で、一部に半腐生の草本もある。短縮した根茎から肉質の根を出す。茎は直立して分岐せず、下部には鞘状葉があり、普通葉とともに互生、質は薄く、扇状にたたまれてしわがある。総状可除花序は頂生、花は平開せず、萼片は離生。花弁はこれより短い。唇弁は直立し3裂。基部は袋状、あるいは短い距となる。花粉塊は2個。ヨーロッパから東アジアにかけて約16種、日本には3種。
A.花は黄色----------------------------------------------(1)キンラン
A.花は白色
B.花序の下に長い托葉がある。--------------------------(2)ササバギンラン
B.このような托葉はない------------------------------------------------------------(3)ギンラン
(1)キンラン Cephalanthera falcata (Thunb.) Blume
夏緑性、丘陵林下に生える、やや発達した根茎とひげ根をはる。茎は単立して40~50㎝あり、無毛、6~7葉を互生。葉は立てじわがあり、長楕円形、先はとがり、基部は茎をだく。5月頃茎頂に短い総状花序をつくり、3~10個ぐらいの半開の花をつける。苞は短い。花は長さ1.3㎝、花被は全体黄色く、唇弁ナインひだのみ赤く彩る。また、短い距をもち、横から見て三角に花外へ突き出る。蒴果は長さ2㎝の楕円体。シロバナキンラン form.albescens S.Kobayashi が佐倉市、四街道市、千葉市から報告がある(千資料№16)。これはときに幼い株に現れる現象とも言う。分布:本州、四国、九州;朝鮮、中国。●側向・黄花:虫媒:風散:互生・単葉・全縁・夏緑:中多年草(G)。定着度24。県評価:一般保護。国RD:絶滅危惧Ⅱ類(VU)
(2)ササバギンラン Cephalanthera longibracteata Blume
林床に生える夏緑の多年草。短い根茎から春30~40㎝の1茎を立てる。基に数枚の鞘状葉があり、その上に5、6枚の広披針形の通常葉を螺旋状に配列する。5~6月茎頂に総状花序をつくり10花前後をつける。花序の下には特に長い苞葉があり、ときに花序の長さを超える。花は唇弁上のひだの黄褐色を除いて白く、半開で上を向いて開く傾向がある。長さ12㎜位。蒴果はごく短い柄を持ち、直立する。分布:北海道、本州、四国、九州;朝鮮、中国(東北部)。●側向・白花:虫媒+自媒:風散:互生・単葉・全縁・夏緑・中多年草(G)。定着度:25。県評価:要保護
(3)ギンラン Cephalanthera erecta (Thunb.) Blume
林下、草地に生える夏緑の小草。ときに肥大する根がまざるのは菌根組織のためか。20㎝程の単立する茎の上部に3~4葉を互生するが、花の時期には十分に広がっていない。5~6月、頂きに7個前後の総状花序をつくる。花は半開で白く、唇弁に短い距があり、花外に突出する。県内では北部、西部からの報告が多い。分布:本州、四国、九州;朝鮮。ブナ群綱●側向・白花:虫媒+自媒:風散:互生・単葉・全縁・夏緑:低多年草(G)。定着度:25。県評価:要保護
『神奈川県植物誌2001』(神奈川県立生命の星・地球博物館、2001年)500頁
[ラン科]13.キンラン属 Cephalanthera Rich.
地上生。根茎は太く長い。茎は直立し、花は披針形~長楕円形、脈は顕著で数枚が互生する。花は総状につき白色または黄色。平開しない。苞は小さく開花時に脱落する。萼片は離生し、側花弁はやや小形。唇弁はずい柱の基部につき、3裂し、側裂片はずい柱を包み、中裂片は大きく幅広い。唇弁基部は短い距となる。花粉塊は4個。東アジア~ヨーロッパ、北アメリカにかけて約15種が知られ、日本には4種が分布し、いずれも県内に自生する。
A.花は黄色。萼片は長さ15㎜以上、唇弁には5~7本の隆起線がある ----------------------------------------------(1)キンラン
A.花は白色。萼片は長さ12㎜以下、唇弁には3~5本の隆起線がある
B.葉は線状披針形~狭長楕円形で長さ7~15㎝、葉の裏面や縁には白色の微毛がある--------------------------(2)ササバギンラン
B.葉は長楕円形で長さ2~8㎝、稀に鱗片状に退化、微毛がなく平滑
C.葉身の基部は平坦でなく、距は明かで側萼片の間から斜め後方に突き出る
D.葉は数枚つき長さ3㎝以上--------------------------(3a)ギンラン
D.葉は上部に1~2枚または鞘状葉で長さ3㎝以下--------(3b)ユウシュンラン
C.葉身の基部は平坦となる。距は短くわずかに側萼片の間から出る ----------------------------------------------(4)クゲヌマラン
(1)キンラン Cephalanthera falcata (Thunb.) Blume
夏緑性。根は先が肥厚しない。茎は高さ20~70㎝。葉は長楕円状披針形で5~8枚が互生し、無毛で茎を抱く。花期は4~5月。花は3~12個を茎頂に上向きにつけ半開性。苞は3角形で小さい。萼片は卵状楕円形、側花弁は萼片よりやや短く同形。唇弁は3裂し、基部は距となり側萼片の間から少し突き出る。側裂片は3角形、中裂片は円心形である。蒴果は長楕円形。本州、四国、九州:朝鮮、中国に分布する。山地や丘陵の疎林内や林縁に生える。県内ではシイ・カシ帯~クリ帯に広く分布する。特に手入れの行き届いた雑木林内や林縁を好んで生えるが少ない。白花品はシロバナキンラン form. albescens S.Kobay. in:15(1966)といい、藤沢市六合発見され、記載された。標本:シロバナキンラン 藤沢市六合 1966.5.16 小林純子 MAK.
(2)ササバギンラン Cephalanthera longibracteata Blume
夏緑性。根は先が肥厚しない。茎は高さ20~50㎝。葉は5~8枚が互生し、茎を抱く。花期は5~6月。花はまばらに数個を茎頂に上向きにつけ半開性。苞は線形。萼片は披針形。側花弁は卵状披針形。唇弁は3裂し、基部は短い距となって側萼片の間からやや突き出す。蒴果は長楕円形。北海道、本州、四国、九州;千島列島、朝鮮、中国(東北部)に分布する。丘陵やときに山地の疎林内に生える。県内ではシイ・カシ帯~ブナ帯に点在するが少ない。
(3a)ギンラン Cephalanthera erecta (Thunb.) Blume var.erecta
夏緑性。根は先が一部肥厚する。茎は高さ10~30㎝。葉は3~6枚が互生し、無毛で基部は茎をわずかに抱く。花期は5~6月。花は茎頂に上向きに3~10個つき半開性。苞は3角形。萼片は披針形で先は尖り、側花弁はやや短く先は丸い。唇弁は先端が3裂し基部には距があり、キンランの距より長く側萼片の間から突き出す。蒴果は長楕円形。北海道、本州、四国、九州;朝鮮、中国に分布する。山地や丘陵の疎林内、林縁に生える。県内ではシイ・カシ帯~ブナ帯に広く点在するが少ない。
(3b)ユウシュンラン Cephalanthera erecta (Thunb.) Blume var.subaphylla (Miyabe & Kudo) Ohwi;C.subaphylla Miyabe & Kudo
夏緑性。根は先が肥厚する。茎は高さ5~15㎝。葉は退化し、大部分が鞘状葉で、ときに花序のすぐ下に1~2枚の葉をつける。葉は狭長楕円形で長さ2~3㎝、幅は1~1.5㎝。花期は4~5月。花は茎頂に2~5個つけ半開性。苞は卵状楕円形でごく小さい。萼片は披針形。側花弁は卵状長楕円形で萼片よりやや小さい。唇弁は3裂し、距の先は3角状に尖りやや著しく突出する。蒴果は長楕円形。北海道、本州、四国、九州;朝鮮に分布する。山地の腐食土の多い林床に生える。県内では丹沢、箱根のシイ・カシ帯上部~ブナ帯のやや湿った腐食土の多い林床に生えるが稀。「神奈川RDB」では絶滅危惧種とされた。
(4)クゲヌマラン Cephalanthera shizuoi F.Maek., Iconogr. Pl. Orient. 1:58(1936)の基準産地は藤沢市鵠沼
夏緑性。ギンランによく似た種類。根は先が1部肥厚する。茎は高さ20~40㎝。葉は4~7枚が互生し、無毛で基部は茎を抱く。花期は4月下旬~5月。花は茎頂に10個前後つける。苞は線状披針形。背萼片は狭卵形、側萼片は斜卵形。側花弁は卵形、唇弁は広卵形で先端は3裂し、中裂片は広卵形、側裂片は3角状卵形、距は側萼片の間からわずかに円頭状に頭を出す。蒴果は長楕円形。日本固有種。和名は鵠沼(藤沢市)という地名にちなみ、東京大学の生化学者服部静夫が採集し、同大学でランを研究されていた前川文夫が調べ、1936年に新種として東亜植物図説に図をつけて発表した。北海道(胆振、空知)、本州(青森県~和歌山県)、四国(香川県・徳島県)のおもに太平洋側に分布する。海岸地帯の疎林内の砂地や松林の林床に生える。県内では湘南海岸地帯のクロマツ林内や雑木林に生えるが稀。「神奈川RDB」では絶滅危惧種とされた。
『増補改訂版 フィールドで使える 図説 植物検索ハンドブック[埼玉2882種類]』(NPO法 埼玉県絶滅危惧植物種調査団、2016年)98~101頁
キンラン属 Cephalanthera
1.花は黄色。唇弁に5~7本のすじが隆起する。茎や葉に乳頭状突起なし----------------------------------------------キンラン
1.花は白色。唇弁に3本のすじが隆起する
2.下部の苞葉は花序より長い。茎の稜や葉の脈上に乳頭状突起あり--------------------------ササバギンラン
2.下部の苞葉は花序を超えない
3.距は明かで、根元に大きな葉がある。茎や葉に乳頭状突起なし
v.ユウシュンランは、根元に葉の退化した褐色の鱗片があり、花序のすぐ下には1-2枚の小さい葉あり--------ユウシュンラン
3.距は全くない----------------------------------------------(4)クゲヌマラン
※ユウシュンラン(HP『四国の野生ラン』)
分布 世界には、温帯アジアを中心におよそ30種が分布する。
ヨーロッパ・・・・9種
アフリカ・・・・・3種
温帯アジア・・・22種
熱帯アジア・・・・8種
北アメリカ・・・・1種
(注)Kew WRLD CHECKLIST による。
「種」には変種なども含まれる。(2015/11/13調べ)
日本には、次の種が分布する。これらは、すべて四国での自生も確認されている。
・キンラン C. falcata
・ギンラン C. erecta
・ユウシュンラン C. subaphylla
・クゲヌマラン C. alpicola var. shizuoi
・ササバギンラン C. longibracteata
生態・形態
地生種で、冬季には地上部がかれる。
春に地上に直立の茎をだし、上部に花をつける。葉は互生する。
ユウシュンランは半腐生ランで花を咲かせる株だけが地上に現れるが、キンラン属全般にラン菌への依存度が高いようである。
はしがき
1章 「波丘地」の歴史
なぜ「波丘地」とよばれたか
2章 波丘地の土壌と渓流水
2.1 波丘地土壌の物理性と水循環
2.2 渓流水の富栄養化とN2O発生
2.3 大気降下物による土壌酸性化
3章 波丘地の大気
3.1 波丘地の気象の記録
3.2 波丘地の降水の化学成分
3.3 波丘地の地表オゾン濃度
4章 波丘地の植物
4.1 植物の四季
4.2 クロムヨウランに始まりクロムヨウランに終わった8月
4.3 アズマネザサの調査(星野義延、八木正徳)
1.アズマネザサというササ
2.アズマネザサの繁茂
3.アズマネザサの稈[かん]と株の構造
アズマネザサは土中に地下茎を伸ばし、その節から地上部の稈を発生させ、さらに直立した稈の基部からも稈を発生させることによって大きさや空間分布を変化させて、コナラ林の林床に繁茂しているのである。(97~98頁)
4.波丘地内におけるアズマネザサの分布状況
アズマネザサはこれまでみてきた刈り取りなどの人為的な管理の違いによって、稈サイズなどに違いがみられるが、より大きなスケールでみると丘陵地のなかでも、微地形の違いや上層で優先する樹木の種類などによってその広がりや優先の度合いが異なる。
アズマネザサは波丘地全域に分布しているが、耕作地や崩壊斜面、毎年下草刈りが頻繁に行われている草地や雑木林の林床、スギ植林やモウソウチク竹林の林床など日照量の少ない場所で優先することは稀である。しかし、それ以外の場所ではコナラが優先する雑木林の林床、林縁、日照を遮る樹冠のないオープンサイトを問わず、アズマネザサが広く優先している。(99頁)
A型:アズマネザサの稈高約3~6m、篠竹と呼ばれるほど大型化。光環境の良好な雑木林の林縁、樹木の疎らな林内の一部
B型:平均稈高が1.5~3mのBa型、約0.5~1.5mのBb型。雑木林の林縁や林床
C型:平均稈高が最大でも0.5m未満。頻繁に刈り取り等の管理が行われている場所。
5.アズマネザサの生態学的管理に向けて
アズマネザサは頻繁な刈り取りによって繁茂を抑制することができるとされている(例えば、石坂、1989、重松、1988など)が、地下茎で繁殖するアズマネザサの生態学的な管理には地下部の把握が不可決であると考える。(101~102頁)
4.4 波丘地の畑地としての土壌
5章 波丘地の動物
5.1 波丘地の鳥
5.2 昆虫:特に蛾と性フェロモンについて