岩殿満喫クラブ 岩殿 Day by Day

市民の森保全クラブ Think Holistically, Conduct Eco-friendly Actions Locally

生きもの豊かな田んぼづくりプロジェクト

上太田田んぼ再訪 6月13日

茨城県牛久市上太田(かみおおた)にある谷津田を再訪しました。NEC田んぼ作りプロジェクトで「100年後にトキの野生復帰」を目指して始めた耕作放棄地再生活動で復田しました。前回訪れたのは2013年11月23日です。その時の写真は当ブログ2014年2月18日の記事にあるので比べてみてください。
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牛久市は人口84,432人、東松山市は90,373人で、面積は58.92平方㎞と65.35平方㎞。人口密度と高齢者率は牛久市1,433人、29,78%、東松山市1,383人、29.69%です。地形は異なっていますが、ともに東京50㎞圏の都市なのでいろいろと比較できそうです。
牛久市の概況『牛久市環境報告書』2021年版、1頁)
牛久市環境報告書(2021)_1

牛久市の位置と面積(『牛久市第4期環境基本計画』2022年、12頁)
牛久市第4期環境基本計画_1

田んぼに落葉を入れる 3月17日

13日の雨で流され土水路を塞いでいた落ち葉を引き揚げて岩殿A地区の中の田んぼに入れました。今年からA地区の田んぼは1枚増えるので、今までの「上、下の田んぼ」から「上、中、下の田んぼ」に改称します。
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物置周りの掃除をして、溜まっていた落葉は上の田んぼに入れました。
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トウキョウサンショウウオの成体がいました。頭から尻尾の先まで11㎝位の大きさでした。
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地球温暖化の影響でトウキョウサンショウウオが大型化? 都立大研究者が指摘(Yahoo!ニュース 2021年2月22日 7:00配信)
 東京都立大はこのほど、絶滅危惧種のトウキョウサンショウウオが地球温暖化の影響で大型化していることを同大理学研究科の研究者が発見した、と発表した。発見は国際誌Biological Journal of the Linnean Society誌のオンライン版に掲載された。
 同大理学研究科の岡宮久規・日本学術振興会特別研究員らが、トウキョウサンショウウオの体サイズが40年間で最大2割増加していることを長期観測データから確認したという。理学研究科は東京都内の繁殖地で1976年から現在まで継続的にトウキョウサンショウウオを観測。この観測データに、そのほかの全国61地点で得た1904の成熟個体のデータを合わせ「大型化」を突き止めた。
 同時に都内繁殖地のデータに全国96地域で得たデータを加えて、メスが産む「卵の数」の変化を分析したところ、40年間で最大3割増えていることも分かった。
 岡宮研究員らは「温暖化によって冬眠から覚める時期が早まり、成長に割ける期間が長くなったことがこれらの変化を促したと考えられる」と大型化の理由を説明。今回の発見については「気候変動が生物に与える影響についてはまだ不明な点が多く、特に研究例の少ない両生類について、その影響を明らかにした重要な研究成果。成果は40年以上にわたる長期観測データから得られたもので、気候変動の影響を知る上で長期観測を継続していくことの重要性を示している」と観測を継続する必要性を強調した。
 トウキョウサンショウウオは福島県と関東地方(群馬県を除く)の丘陵地に分布する体長[頭からしっぽの付け根までの長さ]5~8センチほどの小型サンショウウオの一種。普段は森林の林床で暮らす。早春に繁殖活動を始め、小さな池や田んぼなどの水中に数十個の卵が詰まった卵嚢(らんのう)を産む。
【研究発表】地球温暖化の影響でサンショウウオが大型化!? ~40年の長期観測データからわかった気候変動に対する絶滅危惧種トウキョウサンショウウオの応答~東京都立大学 2021年2月5日掲載)
1.概要
2.ポイント
 1.進行する地球温暖化に伴い、過去40年間でトウキョウサンショウウオの体サイズと産卵数が大幅に増加していることを発見
 2.地球温暖化によって、冬眠から覚める時期が早まり、成長に割ける期間が長くなったことが、これらの変化を促したと示唆
 3.気候変動に対する生物の応答を理解し、保全に活用する上で重要な成果であり、気候変動の影響を評価する上での長期観測データの重要性を示す成果
3.研究の背景
 進行する地球温暖化が生物に与える影響を評価することは生態学の重要な課題の一つです。動物の体の大きさや産むことができる仔の数は温度と強く関係していることから、地球温暖化はそれらに強い影響を及ぼす可能性があります。いくつかの分類群で、温暖化に関係した体サイズの変化が報告されていますが、その効果の大きさや方向性(体サイズを大きく変化させるか小さく変化させるか)についてはよくわかっていません。また、サンショウウオ類のような小型の陸生動物についてはこれまで研究例がほとんどありませんでした。
4.研究の詳細
5.研究の意義と波及効果
 地球温暖化が生物に及ぼす影響を理解することで、今後も進行が予想される気候変動のもとでの生物集団の未来を予測し、将来の保全計画に役立てることができます。トウキョウサンショウウオは生息地の開発や外来種などの影響により近年その生息数を減らしており、各地で積極的な保護活動が行われています。今回得られた知見をもとに生息数の将来予測などを行うことで、保全策の計画立案に貢献することが期待できます。
 地球温暖化に伴う体サイズやクラッチサイズの増加はもしかすると生息数の回復に寄与するかもしれません。一方で、これまでの種内・種間関係を変えてしまうことで予期せぬ影響を及ぼす可能性もあります。例えば体サイズが大きくなることで目立ってしまい捕食者に狙われやすくなることなどが考えられます。また、サンショウウオは高温に弱い生き物なので、今後温暖化が進行して気温が上がりすぎると、今度はトウキョウサンショウウオにとって致命的な結果を招く可能性もあります。この希少なサンショウウオを守り、未来に残していくために、今後もモニタリングを継続し、その動態を注意深く見守っていく必要があります。
 今回の研究成果は40年以上続く長期観測データを解析することで明らかになりました。過去の状態を知り、気候変動に対する生物の応答を理解するためにはこのような長期観測データは不可欠です。生物多様性を保全し、私たち人類の未来に役立てていくためにも、今後も様々な生物種の長期観測データを充実させていく必要があります。
      報道発表資料(1.62MB)

トウキョウサンショウウオの一生こども動物自然公園ファンのつどい 2016年3月26日)
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ミズオオバコ 8月9日

児沢の上の田んぼに、今年はミズオオバコが増えてきました。沈水生の1年草で雌雄同株。夏に花を咲かせ自家受粉によって結実。さや状の実がはじけて水中にまき散らされ、土中で越冬。翌年、5、6月頃発芽します。
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『田んぼのおもしろ生きもの図鑑』(農村環境整備センター、2006年)に、「以前は田んぼの普通の雑草だった。けれど、水質の悪化や水のにごり、また農薬に弱いので、最近はなかなか見ることができなくなってしまった。山すその水のきれいな田んぼや無農薬栽培の田んぼで探すと、見つかるかもしれないよ。」(293頁)とあります。岩殿、児沢の田んぼは農薬を使っていないので、復活してきたのでしょう。

水鳥の食害防止 3月26日 

岩殿A地区の上の池にヘチマロンを置きました。冬の間、水位を上げてメダカの凍死を防ぎました。春になって元気に泳いでいますが、これからはサギやカモがやって来ます。
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ヘチマロンを田んぼの水路に置く 2月14日

児沢の田んぼのフェンス側の水路を少し掘り下げて、ヘチマロンを2個置きました。アライグマの食害対策です。
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「里山保全問題」について考える 2月12日

『陸生ホタル研』№85(2017年1月25日発行)に掲載されている小俣軍平さんの「「里山保全問題」について考える」を読みました。

1.はじめに
2.池の沢の自然環境
3.池の沢のホタル
   1)棲息分布
   2)種別の状況
      ①ゲンジボタル ②ヘイケボタル ③スジグロボタル ④陸生のホタル4種
陸生ホタルの4種は、丘陵部の二次林内、底地の杉の人工林の中に広く棲息しています。水生の3種とは異なり多発生することは有りません。6年ほど前までは、旧農道・遊歩道沿いで少数ですが目視で成虫・幼虫を見ることができました。6月にゲンジボタルの観察会で、明るいうちに自然環境を見てもらおうと、参加者を案内して農道・遊歩道を歩いていると、道端にオバボタル・ムネクリイロボタル・カタモンミナミボタルの成虫がしばしば飛翔していました。捕虫網で採集して、「これが陸生のホタルで・・・」と説明できました。しかし、現在は農道・遊歩道端ではこれらの陸生ホタルの成虫を見かける事は極まれになりました。なぜ見られなくなったのかよく判りませんが、一つ思い当たるのは農道・遊歩道の整備が進み、道沿いの植物のエンジンカッタ-による刈払いが毎年行われていることです。こうした刈払い作業は池の沢だけでなく、今では保全緑地や公園の整備、農作業などで、どこでも普通に行われていることですが、その結果が、土壌動物や陸生のホタルにどのように影響するのか不明のままです。もう一つの原因は、ここ7、8年池の沢では、ホタルの観察会を始め自然体験学習、八王子市の学習会等のイベントが開催され、日常的にもここを訪れる人の数が多くなっています。規模の小さい谷戸ですので、生物の多様性の基礎となる無数の小さな土壌動物(大人の片足の踏みつける小さな面積に、数千匹棲息しているという記録がありますscience window 2014 1-3 土と生命」)が、農道・遊歩道周辺から消滅している可能性が高いです。この問題が陸生のホタルが見られなくなってきている原因の一つになっているのではないかと思います。これもまた緑地・里山保全の重要な研究課題です。
4.池の沢の保全を巡り直面する問題
   (1)存在が判っても、保全対策が判らない(植物の場合)
最初に報告しました様に、池の沢には国・都から保全の対象に指定されている植物が26種もあります。そのためここでは、ホタルだけではなく池の沢のすべての生物を守って次世代に引き継いで行こうというのが合い言葉です。しかし、個々の植物についてどうしたら守っていけるのか、対象植物の生態が判っていませんので、具体手な手立てがみつからないままに試行錯誤しながら、手探りで以下の様な事をやっています。
・対象の植物が盗掘の恐れの無い場合、自生している場所周辺の刈り払いを行い囲いのテ-プを張り池の沢を訪れる人々に存在を知ってもらう(公開)。
・その植物の周囲を綺麗に刈払いする。しかし、囲いや標識は付けない(非公開)。
・盗掘される恐れのある種の場合、できるだけ人目につかないように自生地の周囲にバリア-を置き、安易に立ち入りできないようにする(非公開)。
・二次林内や湿地で刈払いをすると、今までその場所では自生していなかった植物が突然発芽して来る場合があります。その場合は、そのまま手をかけずにおいて、自立して増えて行くかどうか見守ります。発芽できたのだからそのまま自生して行けるのでは・・・?と期待しますが、多年草の場合でもその多くが3、4年出てきてその後はまた消滅します。なかなか定着できません

   (2)湧水の保全
丘陵地でも「谷戸」の場合、保全の最重点は湧水の維持です。池の沢の場合奥の湿地だけでも湧水のわき出し口が10箇所あります(赤丸印)。赤矢印の左側見えない所に3箇所あります。わき出し口は、いずれも丘陵地と湿地の境目です。
1:図【図がないとわからないので、図は本文のPDFファイルで確かめて下さい】
谷戸の湧水は、その谷戸の丘陵部の二次林・杉、檜の人工林を水源としているものと、もう一つ、多摩丘陵の様に大きな丘陵地になりますと、関東山地の西南端から続く、丘陵全体の水源となる共通した大規模な地下水脈があるようですが、今のところそうした研究資料、文献が見つかりません。それから、上記の1:図の湿地の場合、湧水の保全を巡ってもう一つ大きな問題があります。それは、2:図の模式図のように、昔は、ここは湿地では無く池でしたので、太線の所が水面でした。湧水のわき出し口の多くは水面より高い位置にあったようです。

2:図 湿地の断面の模式図【図がないとわからないので、図は本文のPDFファイルで確かめて下さい】
ところが、現在は長い年月がたち、池に大量の堆積物が貯まりカサスゲの群落を中心とする多様な植物の茂る湿地となっています。湿地の水面は点線のところです。湧水のわき出し口は、堆積物の貯まった水面の位置よりも低いところに埋没しています。堆積物の内容は、土砂を含むものの大部分は周辺の落葉広葉樹林からの落ち葉です。深さは2mくらいあり、下部は炭化し始めています。江戸時代に「底なし沼」といわれた時代には、池の周囲は草地かあるいは針葉樹林だったのかも知れません。現在気になるのは、湿地の水面が堆積物の為に年々上がり、わき出し口が埋もれて塞がり、湧水が別のところに逃げていってしまう事です。これを防ぐのには湿地の下流の方から堆積物を取り除く事ですが、これは人力だけでは無理ですし、また、取り除いた大量の旧堆積物をどう処理するのかも問題です。湿地の中にはゲンジボタル・ヘイケボタル・スジグロボタルが棲息していますし6種類の貴重な植物もありこれらは、発芽しないまま長期にわたり堆積した地中に残っている種子もあります。浚渫作業をする場合にこれらの保全をどうするのか・・・、見通しが立ちません。

   (3)持ち込まれ遺伝子的にかく乱されたゲンジボタル
池の沢のゲンジボタルは、遺伝子解析から見ますと、上述のように現在の所3タイプに分かれます。昔から棲息していた東日本型、人の手により持ち込まれた西日本型、東日本型と西日本型の交雑種です。持ち込みは、1970年代~80年代にかけて、市内の自然保護団体の手によるもので、取り付きを流れる殿入川のゲンジボタルを守る目的で行われました。私もその当事者の一人です。当時ゲンジボタルの遺伝子上の違いについてはまだ解明されていませんでしたので、他地域からの持ち込みが、市内のゲンジボタルに取りかえしのつかない重大な影響を及ぼすとの認識はありませんでした。今にして思えば痛恨の極みです。八王子市内で起きているようなゲンジボタルの持ち込みによる遺伝子のかく乱問題は、東京都下ばかりでなく関東地方でも同様に広く起きている問題です。しかし、この問題の処理に今後どう対応したらいいのか、現在の所まったく分りません。池の沢のような場合この谷戸についてだけみれば、数年かけて現在飛んでいる成虫をすべて捕獲して絶滅させ、その後、市内に残っている本来のゲンジボタルを採集し産卵・孵化させ幼虫を飼育して、放流する事は可能です。ただ、市内の主要河川である南浅川、北浅川の遺伝子的にかく乱されたゲンジボタルを、一時的に絶滅して入れ替えることはかなり難しい事です。そのため、これができないとすれば、池の沢のゲンジボタルを一時的に再生しても、水系がつながっていますので、今後、年月が経過すればいずれかく乱が再発すると思います。また八王子市内では、今は自然保護団体による持ち込みは無くなりましたが、ゲンジボタルの他所からの持ち込み放流は、色々な形で現在も行われています。その一つは特定の個人によるもので、一昨年も湯殿川で、6月に突然ある場所からゲンジボタルが多発生しました。驚いて地元での聞き込み調査をしてみますと、流域の住人がゲンジボタルの成熟幼虫を業者から自前でお金を払い購入して持ち込み、放流したようです。今から3~40年前は、ゲンジボタルの幼虫を育てて河川に放流するには、ホタルの生態についてある程度の知識と室内飼育をするための技を持っていないとできない事でした。しかし、今はインタ-ネット上でお金さえ払えば誰でも大量にゲンジボタルの成熟幼虫を業者からたやすく購入することができます。東京都・八王子市でもゲンジボタルの他地域からの持ち込みと放流を禁止する条例はありません。野放し状態です。放流した個人を特定して訪ねてみますと、当人は確信犯で、「自腹を切ってゲンジボタルの幼虫を購入し放流して沢山のゲンジボタルが飛び、地域の人々も大喜びしているのに何が悪いのか!」とこちらが叱られます。

   (4)多摩丘陵には西型のゲンジボタルが昔から棲息していたのでは・・・?
ゲンジボタルの持ち込みに関しては、もう一つ板当沢時代から陸生ホタル研に移行してまもなくからですが、多摩丘陵での生息地調査が進むにつれて気になる問題があります。丘陵地の成虫を採集して遺伝子解析をしてみますと、西型のゲンジボタルが棲息している湿地と東型のゲンジボタルが棲息している湿地があります。東京都では、これまで遺伝子解析で西型が出た場合には、すべて「持ち込まれたもの」として記録・処理されています。ところが、上記の池の沢のゲンジボタル問題と同じように、その湿地の在る谷戸の昔からの農家の方々は、「この谷戸の湿地にゲンジボタルを持ち込んだ事は無い」と、異口同音に否定されます。そしてこのような証言をして下さる方々は、私と同じ80才を超えてる方々で生存者がもうわずかになっています。私自身も、かつて多摩丘陵の湿地に棲息していたゲンジボタルを、文献記録に惑わされてもともと棲息していたものでは無く、汚染された河川から避難し逃げ込んだものと思い込み、とんでもない誤認をした体験が有るだけに、「これも?」と、大変気になる問題です。

   (5)里山保全とゲンジボタルの保全
全国各地で広く行われているゲンジボタルの保全活動の多くは、人の手による採卵・孵化、幼虫の人工飼育・放流とホタル観察会、それから幼虫の餌となるカワニナの人工飼育と放流・ゲンジボタルを飼育するための施設造りです。「池の沢にホタルを増やす会」の中でも、ゲンジボタルの保全に付いてはいろいろな意見があります。上記のように人の手を直接加えることによって、ゲンジボタルの発生数を増やすこともできるのだから、やるべきではないかという意見もあります。しかしこれまでの14年間は、直接人の手を加えるような取り組みはしてきませんでした。それはなぜだったのかといえば・・・・、
・池の沢での緑地の保全活動は、一言でいいますと、「池の沢に生息するすべての生物を丸ごと守り育てること」です。ゲンジボタルだけを守ることではありません。
・池の沢にどれだけのゲンジボタルが棲息できるのかは、ここの保全に関わる人間が人間の好みで勝手に決めることではありません。目に見えることはほとんど無い無数の菌類を始め、食べたり食べられたりの関係で、池の沢の生態系を守り生きているすべての生物の声なき声の合意が必要です。
・池の沢の多様な生物の発生状況を見ていますと、ゲンジボタルだけではなくすべての生物に、あるときは多発生し、翌年は減少するという風景は珍しい事ではありません。なぜ増えたり減ったりしたのか、池の沢の自然条件を検討すると、冬の降水量が極端に少なかったとか、夏の平均気温が例年より低かったとか・・・・、これではないかと思い当たる内容が見つかる事もありますし、その原因がさっぱり判らない事もあります。「池の沢に棲息するすべての生物を・・・」といえば、誰にも快く聞こえますが、いざ実現するとなると難しい問題が立ちはだかります。
・14年前には谷戸の奥のカサスゲの生い茂る湿地にも沢山のゲンジボタルが飛んでいました。しかし、今はこの湿地で一晩に見られるゲンジボタルの成虫の数は10匹~20匹程です。なぜ減少したのかと言えば、思い当たる事があります。この湿地には、絶滅の恐れのある植物が4種類在りました。ところが、これらの植物が花は咲かせるものの種子が実りませんでした。その原因を色々と検討した結果、最大の原因は、湿地を取り巻く周囲の落葉広葉樹がなにも手を付けられずに大きく成長し生い茂り、湿地の日射量が減少した為ではないかということでした。そこで、試行錯誤の取り組みの一つとして、八王子市にお願いして、湿地の周囲の落葉広葉樹を10本ほど伐採してみました。
・大きな変化が翌年早速起きました。湿地の奥のこれまでオオニガナが全く見られなかった所にまとまって40株ほど出現しました。それまで減り続けていたアギナシもこれまで見かけなかった所に7株自然発生しました。ミズオトギリも、眠っていた種子が目を覚まして発芽し、20株以上復活しました。これまで花が咲いても種子が付かなかった貴重種の植物にも種子が付きました。これは良かった、やはり日射量が影響していたのかと気を良くしました。
・ところが・・・・、マイナス現象も起きました。池の沢で永年昆虫類を中心に観察調査を続けている市民の中の一人、石垣博史氏から、「湿地周辺の木を切り倒したことで、この湿地に暮らしてきた暗い環境を好む昆虫類が一斉に姿を消した・・・、当然ゲンジボタルの発生数にも影響が出るのではないか・・・」という内容のメ-ルでした。石垣氏の予想は当たりました。「こちら立てればあちらが立たず」と言うことわざがありますが、本当に難しいものです。

   (6)激減したは虫類・両生類
14年前に池の沢にホタルを増やす会が生まれた頃には、夏に草刈りをしているとごく自然に、シマヘビ・アオダイショウ・マムシ・ヤマカガシなどを見かけました。アズマヒキガエル・ヤマアカガエル・ニホンアカガエル・シュレ-ゲルアオガエルも飛び出してきました。しかし、最近ではこれらの生物をまれにしか見かけません。奥の湿地に落ち葉が降り積もり水面が見えないようになってきたのでカエルの産卵場所がないのでは・・・というので、一つの対策として、放棄水田跡に20坪ほどの池を造ってみました。次の年からアズマヒキガエルとヤマアカガエルが早速やってきてこの池に産卵するようになりました。メダカも復活してきました。やれやれこれでひとまず良かったと胸をなで下ろしました。ところが、ここ2年ほど前から何者かがやってきて、産卵されたカエルの卵を孵化する前に、卵のうごと掬いとって持ち去る事件が起きました。人の目を避けて深夜に密かにやってきて盗るのだと思いますが、防ぎようがありません。

   (7)盗掘される植物
池の沢には26種の貴重な植物が見られますが、そのうちのランヨウアオイとサワギキョウが盗掘にあい激減したり絶滅したりしました。この両種を盗った者は、盗掘の跡からみて市民サイドのマニアの仕業とは思えません。と言いますのは、ランヨウアオイの場合掘り取った跡を丁寧に埋め戻し、はぎ取った腐葉土や落ち葉を敷き詰めてきれいに整地しています。サワギキョウの場合、絶滅しない様に最後の一株は残してありました。サワギキョウについては、市内の多摩丘陵で自生しているサワギキョウの苗を10株分けていただき再生の取り組みを進めています。植え付け場所を人目につかない奥の湿地から谷戸の放棄水田跡に切り替えて、「絶滅した貴重な植物の再生の取り組みをしています」と書いた看板も立てて公開したかたちで取り組んでいます。現在3年経過し問題はいろいろありますが、株数は50株をこえて順調に育っています。盗掘は今のところありません。

5.おわりに

池の沢の制札板
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谷津田の裾刈り 2月11日

岩殿B地区の奥の区画とA・B地区とD地区の間の土手の裾刈りをしました。
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アメリカザリガニ6匹 8月31日

岩殿A地区の池に昨日仕掛けた四手網を引き揚げました。アメリカザリガニ6匹、ほかにドジョウ、メダカ、エビ類が入っていました。
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昨日のB地区の池ではドジョウはかかっていませんでした。

アメリカザリガニ30匹+ 8月30日

昨日、仕掛けた四手網を引き上げたら、アメリカザリガニが30匹以上入っていました。
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大きなものはいませんでしたが、数の多さは予想以上でした。
今日は四手網を下の岩殿A地区の池に仕掛けました。

四手網を仕掛ける 8月29日

アメリカザリガニ捕獲のために、岩殿B地区の池に四手網(よつであみ)を仕掛けました。
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80㎝×80㎝で、餌は煮干しにしました。


高橋清孝『よみがえる魚たち』目次 8月28日

いきなり田んぼの水がなくなってしまう田んぼの畦からの漏水。アメリカザリガニやモグラ、ネズミなどによる掘削穴が原因で、見つけ次第、穴埋めしています。アメリカザリガニをトラップ(籠)で捕獲して、数を減らそうと計画していますが、高橋清孝『よみがえる魚たち』 (恒星社厚生閣、2017年6月)の第2章第3節アメリカザリガニの侵入を読んでみました。

 高橋清孝『よみがえる魚たち』(恒星社厚生閣、2017年6月)
1 章 淡水魚を取り巻く情勢
 1-1 絶滅のおそれのある淡水魚の現状と全国で展開する保護活動(小林 光・半沢裕子)
 1-2 絶滅のおそれのある野生生物種の現状と保全戦略(徳田裕之)

2 章 減少原因と対策
 2-1 開発による生息環境の破壊(高橋清孝)
 2-2 侵略的外来種の侵入
  2-2-1 オオクチバスの影響と対策(藤本泰文)
  2-2-2 ブルーギルの影響と対策(芦澤 淳・藤本泰文)

 2-3 アメリカザリガニの侵入
  2-3-1 アメリカザリガニの生活史 ―繁殖生態を中心に―(川井唯史)
   1. 生活史と繁殖周期
   2. 繁殖生態の特徴
   3. 繁殖生態から見た蔓延の理由

  2-3-2 アメリカザリガニが生態系に与える影響 ―浅い湖沼を中心として―(西川 潮)
   1. はじめに
   2. 湖沼食物網におけるアメリカザリガニの生態的地位
   3. 浅い湖沼の安定状態とその変化
   4. 侵入魚駆除の落とし穴

  2-3-3 アメリカザリガニの影響と対策 ―水生植物への影響と対策および効果―(森 晃)
   1. はじめに
   2. 水生植物のもつ生態学的機能
   3. アメリカザリガニの影響
   4. 伊豆沼・内沼における沈水植物保全とアメリカザリガニの対策
    1) 保護柵を用いた対策
    2) 埋土種子を用いた対策

  2-3-4 アメリカザリガニが水生昆虫類に及ぼす影響と対策およびその効果(西原昇吾・苅部治紀)
   1. はじめに
   2. アメリカザリガニが水生昆虫に及ぼす影響
   3. アメリガザリガニの駆除とその効果
    1) 千葉県のシャープゲンゴロウモドキ
    2) 石川県や岩手県の水生昆虫
    3) ベッコウトンボやオオモノサシトンボ
    4) 水田の水生昆虫の事例
   4. 今後に向けて

  2-3-5 アメリカザリガニによる魚類への影響―ゼニタナゴ,シナイモツゴ,メダカなど希少魚の繁殖が脅かされている―(高橋清孝・長谷川政智・久保田龍二・藤本泰文)
   1. はじめに
   2. アメリガザリガニの大繁殖によりゼニタナゴが全滅(中核ため池の事例)
    1) タガイはなぜ減少したのだろうか
    2) なぜタガイは下段池で全滅し、上段池では全滅しなかったのか?
   3. 池干し後にタガイとゼニタナゴが激減(C池の事例)
   4. アメリカザリガニ駆除後にシナイモツゴとミナミメダカが急増(中核ため池の事例)
   5. まとめ

  2-3-6 効果的なアメリカザリガニ防除技術の開発 ―トラップで低密度化を実現―(高橋清孝・長谷川政智・浅野 功・芦澤 淳・安住芳朗・久保田龍二)
   1. はじめに
   2. 効果的なトラップと使い方
    1) 市販トラップの性能比較
    2) 効果的な誘引餌
    3) トラップの設置間隔
   3. 連続捕獲装置を開発し省力化を実現
    1) 装置の仕組み
    2) 装置の設置間隔
    3) 実証実験

  2-3-7 アメリカザリガニの繁殖阻止を目指す捕獲方法の検討(高橋清孝・長谷川政智・西原昇吾・苅部治紀・林 紀男)
   1. 小型幼体とふ化稚仔を抱えた雌の捕獲
    1) しばづけとさで網すくい採りで小型幼体を捕獲する
    2) 小型定置網で稚ザリガニを抱えた雌を捕獲する
   2. 成熟親の捕獲と拡散防止
    1) 見つけ採り
    2) 巣穴に生息する雌雄ペアを捕獲する
    3) 浅所で塩ビ管や竹筒で捕獲する
    4) 池干しに伴う移動拡散を阻止する
   3. 池沼の冬期低水位管理によるアメリカザリガニ低密度化
   4. アメリカザリガニを防除して地域の生態系を復元

 2-4 その他の外来種の侵入
  2-4-1 ウシガエルの影響と対策(佐藤良平・西原昇吾)
  2-4-2 ミシシッピアカミミガメによる影響と対策(片岡友美)
  2-4-3 宮城県に侵入した外来淡水エビのカワリヌマエビ属(長谷川政智)
 2-5 東日本大震災の教訓 ―支えあって大災害を乗り越える―(高橋清孝)

3 章 地域ぐるみで全滅の危機を乗り越えたシナイモツゴの郷
 3-1 繰り返し発生した全滅の危機(高橋清孝)
 3-2 淡水魚を守る戦略と戦術
  3-2-1 魚類学的保全単位としての超個体群 ―遺伝的多様性を維持してきた淡水魚の戦略に学ぶ―(細谷和海)
  3-2-2 シナイモツゴ郷の会の戦略(高橋清孝)

4章 シナイモツゴの郷の取り組みと成果
 4-1 だれでもできる自然再生技術を開発し市民参加を実現
  4-1-1 だれでもできるシナイモツゴの人工ふ化(坂本 啓・高橋清孝)
  4-1-2 だれでもできるシナイモツゴとゼニタナゴ稚魚の飼育(高橋清孝・久保田龍二)
  4-1-3 だれでもできるグリーンウォーター ―植物プランクトンをペットボトルで簡単培養―(丹野 充)
 4-2 シナイモツゴ里親たちの活躍
  4-2-1 地域ぐるみの活動と里親活動による後継者の育成(二宮景喜)
  4-2-2 里親小学校子どもたちの取り組み
   4-2-2-1 命をつないで ―シナイモツゴの里親活動をとおして―(飯塚 昇)
   4-2-2-2 シナイモツゴの里親として(那須 孝)
   4-2-2-3 シナイモツゴと環境教育(佐々木洋一)
   4-2-2-4 里親小学校の取り組みと教育(加藤英紀)
   4-2-2-5 津波被害を乗り越え継続した里親活動(渋谷雄二郎)
   4-2-2-6 総合的な学習の時間で取り組む「シナイモツゴ」の教材価値を考える ―3 年生と6 年生の実践を通して―(浦川裕之)
  4-2-3 飼育保存と保全啓発を目指す水族館の取り組み(松本憲治)
 4-3 シナイモツゴ郷の米認証制度でため池を守る農業者を支援
  4-3-1 自然再生の側面から ―ため池を守る農業者を支援する体制づくり―(高橋清孝)
  4-3-2 中山間地域農業存続の側面から ―シナイモツゴ郷の米と地元住民の取り組み―(吉田千代志・菅井 博・佐藤弘樹)
 4-4 遺伝的多様性を維持しながら生息池拡大を実現―シナイモツゴおよびゼニタナゴ移植個体群の遺伝的多様性調査―(池田 実)
 4-5 地域ぐるみで後継者を育成(大崎市産業政策課)

5 章 よみがえる魚たち
 5-1 ため池と流域河川でよみがえった魚たち(高橋清孝)

まとめ ―魚でにぎわう水辺の自然をいつまでも―(高橋清孝)
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千葉県生物多様性センター
 『ストップザリガニ!』ポスター
 アメリカザリガニの及ぼす影響
 アメリカザリガニは生態系に大きな被害をもたらしています!(教員向け補足資料)

農研機構
 アメリカザリガニの畦畔掘削による漏水の実態と対策技術(若杉晃介、藤森新作、北川 巌)

※『農業および園芸』88巻8号(2013年8月)
 アメリカザリガニによる水田漏水の実態と対策(若杉晃介)

2016年度の岩殿丘陵入山谷津の植物調査 3月20日

2016年度は入山谷津の植物調査を全11回実施しました。調査に参加された二宮さん、坂田さん、加倉井さん、渡部さん、中村さん、ありがとうございました。来年度は4月24日から、5月22日、……と継続して実施します。

加倉井さんのブログ『環感クラブ trustsizen.exblog.jp』に調査時に撮影した植物や動物の写真が掲載されています。リンクをつけていますので、他の地区の調査の記事も合わせてごらんください。勉強になります。
 環感クラブの記事
 2016年4月28日の記事、5月24日の記事、6月20日の記事、7月25日の記事、8月31日の記事、9月19日の記事、10月5日の記事、10月24日、11月7日、2017年2月7日の記事、3月13日の記事

排水路のウキクサ取り 8月7日

昨日に続いて、苗箱を使って児沢の上の手前の田んぼの水路のウキクサをすくい取りました。ドジョウやスジエビ、トンボのヤゴ、などがいました。
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アメリガザリガニは駆除しました。

田んぼに退避溝をほる 8月6日

今日も猛暑です。児沢の上の奥の田んぼに水がほどよく入っていたので、受水口の改造などは見合わせ、田んぼに水がなくなった時に田んぼの生きものが退避できるように退避溝を上の奥と手前の田んぼの苗を植えていない部分にほりました。
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 上の手前の田んぼ
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 上の奥の田んぼ
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水がにごっているので溝状にうまく掘り下げられているかどうかわかりません。

手前の田んぼの排水口付近に穴があいて漏水しているのを見つけて漏水箇所をふさぎ、排水路を覆っていたウキクサを苗箱を使ってすくいとりました。
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水田の自然再生マニュアル(福井県)

スジブトハシリグモを運ぶオオモンクロクモバチ 7月18日

スジブトハシリグモを運ぶオオモンクロクモバチ(旧称:オオモンクロベッコウ)です。クモは麻酔されて動けません。岩殿A地区の物置の脇のブルーシートをかけている資材置場にいました。どこに巣があるのでしょう。
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児沢探検隊のビオトープ草刈り 7月17日

岩殿満喫クラブの田んぼと児沢探検隊の田んぼとの間にあるビオトープの池の草刈りを探検隊がしました。三本さん、松井さん、ありがとうございます。
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羽化に失敗したトンボ 7月9日

岩殿B地区の上の田んぼのイネについていました。ヤゴの殻に頭部が見えています。身体が抜けきらないままに硬化してしまったようです。
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粗朶で水中生物の保護 5月1日

児沢探検隊の田んぼのまわりのビオトープ池。粗朶(そだ)を使って、生きものの隠れ場を作っています。
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三本さん、午前中は児沢で大奮闘。午後は……

水路の畦板をはずし畦の補修 4月18日

1月から水路にかぶせていた畦板をはずし、畦と水路の補修をしました。
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アライグマ捕獲 4月4日

児沢探検隊の田んぼの罠にアライグマがかかっていました。
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今年2匹目で、市役所に引き取られていったそうです。

こども動物自然公園ファンのつどい 3月26日

こども動物自然公園3月のファンの集い「トウキョウサンショウウオの産卵のお話し」に参加しました。
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園内でもアライグマに頭をかじられて死んでいる個体がみつかっているようですが、アライグマのねぐらはどこにあるのでしょう。

池に畦板をはる 3月21日

岩殿A・B地区の2つの池の田んぼ側に畦板をはりました。

 上の池
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 下の池
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昨年はカルガモやサギが来て、エサを探していました。今年はネットをかぶせて鳥が入れない部分も作ってみようかと思っています。

国立環境研「実験水田を用いた農薬の生物多様性への影響変化」

3月17日の『朝日新聞』に、「農薬 トンボへ悪影響」「水田実験で生息数に差 国立環境研」という記事が掲載されていました。国立研究開発法人国立環境研究所生物・生態系環境研究センターの記者発表・配布資料(3月16日)もとづくものです。
  国立環境研究所は実験水田を用いて、ネオニコチノイド農薬など浸透移行性殺虫剤が、トンボ類を含む水田の生物相に対してどのような影響を与えるのかを調べました。
   その結果、以下のことが明らかになりました。

①フィプロニルが使用された水田で一部のトンボ種の発生に強い負の影響が見られたこと

②試験薬剤であるクロチアニジン、フィプロニル、及びクロラントラニリプロールはそれぞれ使用された水田内において、その水中濃度は適用後3か月以内に検出限界程度に減少するが、土壌中では栽培シーズン終了時まで比較的高濃度で検出されること

   本研究成果は、現在、国内でも広く使用される浸透移行性殺虫剤が土壌に吸着しやすく、長く留まる傾向が強いことを示すとともに、一部の殺虫剤は水田中においてトンボ相に深刻な影響を及ぼすリスクがあることを示しています。このことは、現在の農薬登録の枠組みにおいて審査を通過した農薬であっても、一部の野生生物に予期せぬ影響をもたらす可能性があることを意味しています。そのような予期せぬ影響をいかに予測可能へと近づけるかが今後の課題であり、種の多様性や生態系の多様性を考慮した農薬のリスク評価システムを構築して行くことが重要であると考えられます。
   この研究成果をまとめた論文が、2016年3月16日(日本時間午後7時)に英国科学誌(オープンアクセスジャーナル)「Scientific Reports」に掲載されました。
以下、配付資料は、1.背景、2.方法、3.結果と考察(①農薬濃度、②水田生物群集への影響、③ショウジョウトンボ、及びシオカラトンボの発生数の比較)、4.今後の課題、5.問い合わせ先、6.発表論文、7.参考論文、と続きます。
4. 今後の課題

   2004年以降、国立環境研究所では、実験用水田を用いたメソコズム試験を通じて、農薬など、化学物質が生態系に及ぼす影響の評価を行ってきました(例えば、参考論文2-4)。これまでの結果から、薬剤によっては環境中で速やかに分解するもの、あるいは逆に環境中に長く留まるものもあり、その特性によって、影響を受ける生物が異なることや、僅かな薬剤成分でも水田中の生物多様性に大きな変化が生じることを示してきました。

   今回の研究では、近年特にその環境影響が議論されている水稲用浸透移行性殺虫剤についてメソコズム水田における生物相への影響を調べましたが、これまでの研究成果と同様に、剤によって水田の生物相に及ぼす影響が異なることが明らかになりました。特に今回調査した薬剤の中では、ネオニコチノイド系殺虫剤であるクロチアニジンよりも、フェニルピラゾール系殺虫剤のフィプロニルの方がトンボ類に対して強い影響を示すことも判明しました。これまでにもフィプロニルがトンボ類に影響を及ぼすことは指摘されてきましたが(例えば、参考論文1, 5)、今回のメソコズム試験の結果は実際の水田により近い環境条件において、トンボに対する顕著な影響を実証したことにより、これまでの結果を大きく前進させるものです。また、今回調査したいずれの農薬も水田中の土壌に吸着して長時間土壌中に留まることが示されました。今後、この土壌中に残った成分が次年度以降にどのような動態を示すのか、またその結果生物群集にどのような影響を及ぼすのかという、長期間の生態影響についても追跡して調べる必要があります。

   メソコズム試験によって複雑な生態系における農薬の生物相に対する影響を検証することが可能となりました。ただし、メソコズムはあくまでも限られた空間に設計された実験生態系になります。そこで観察された生態影響が実際の野外の水田環境で起こっている生物多様性の変化にどのように反映されるのかを知るためには、さらなる詳細な実験と調査が必要とされます。特に、近年減少が懸念されているアキアカネは今回のメソコズム試験では調査対象とすることができなかったため、本研究で示されたトンボ類への影響がアキアカネでも同様に生じるかについては今後の研究課題となります。

   農作物の栽培において殺虫剤は害虫の発生をコントロールするために必要な資材であり、今後可能な限り、生態系や生物多様性に対する影響に配慮しながら活用していくことが望まれます。そのような生態系への影響に配慮した農薬の活用を実現するためには、今回の研究で示されたような科学的知見の集積が必要となります。今後、生物多様性に対する負荷を軽減できる農薬やその施用方法を選択する手法を開発するために、本研究で行なったメソコズム試験のさらなる活用が期待されます。

   なお、本研究は環境省 環境研究総合推進費2013年度開始課題4-1303「農薬による水田生物多様性の総合的評価手法の開発」(課題代表者:林 岳彦 国立環境研究所 主任研究員)により実施されました。
※『Scientific Reports』に掲載された論文「A. Kasai, T. I. Hayashi, H. Ohnishi, K. Suzuki, D. Hayasaka and K. Goka. (2016) Fipronil application on rice paddy fields reduces densities of common skimmer and scarlet skimmer

※ネオニコチノイド系7種(アセタミプリド、イミダクロプリド、クロチアニジン、ジノテフラン、チアクロプリド、チアメトキサム、ニテンピラム)と、フィプロニル、クロラントラニリプロールなどを含有する農薬の商品名については、独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)の「農薬登録情報提供システム」で検索、ダウンロードできます。

※当ブログの「ネオニコチノイドを含む記事」、「トンボを含む記事」。

トウキョウサンショウウオ・シンポジウム 2月20日

立川市のトヨタドライビングスクール東京で開かれたトウキョウサンショウウオ研究会主催『第18回トウキョウサンショウウオ・シンポジウム 両生類にまつわる最近の様々な話題』に参加しました。
4本の講演がありました。岡宮久規「トウキョウサンショウウオとヤマアカガエルにみる繁殖適応度の集団間変異~多摩丘陵を中心とした40集団の卵死亡率調査からわかったこと~」、吉川夏彦「最近の日本産ハコネサンショウウオ属の分類について」、星昇「里山の性格とその変貌:史資料に見る山林利用の変遷」、藤田宏之「埼玉県内のトウキョウサンショウウオの生息状況」。休憩時には「トウキョウサンショウウオの繁殖行動」のビデオ上映もあり盛会でした。
埼玉県立川の博物館の藤田さんの講演からスライドを紹介します。
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近くにある埼玉県立こども動物自然公園内のアライグマの写真があります。埼玉県で最初に野生化したアライグマが発見されたのは1982年です。2004年から被害は急増し、現在にいたっています。アライグマの行動を特徴づけるのは「歩ける川と高い木のあること」(古谷益朗『ハクビシン・アライグマ おもしろい生態とかしこい防ぎ方』農文協、2009年、56頁)だそうです。児沢に出没するアライグマのねぐらはどこにあるのでしょうか。

耕作放棄地の除草作業 1月14日

昨日作業した現場の点検。藪の中に埋もれていた境界杭が何本か見えるようになりました。
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鳥の撮影をしている人に出会い、お話しをうかがいました。笹藪に生息する小鳥にも配慮した耕作放棄地の再生を目指します。

水路に畦板をおく 1月9日

アライグマ対策に児沢探検隊が児沢の田んぼの水路に畦板を設置しました。
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畦板の下にアライグマがもぐりこまないように柵をつけ、水位調整用に土のうを置きました。

トウキョウサンショウウオ・シンポ開催 2月20日(土)

トウキョウサンショウウオの産卵の時期が近づいて来たので、ネットで調べていたら見つけました。川の博物館の藤田さんも講演します。児沢では、昨年、産卵にきた成体がアライグマに食べられていることがわかりました。

第18回トウキョウサンショウウオ・シンポジウム
  主催:トウキョウサンショウウオ研究会
  日時:2016年2月20日(土) 13:00-17:00
  場所:東京都立川市 トヨタドライビングスクール東京 ホール
      立川市羽衣町1-3-4 Tel 042-526-3551 JR立川駅南口徒歩10分
  プログラム:
      13:00 受け付け開始
      13:20 開会 (司会進行:川上洋一)
      13:25 講演 多摩地区周辺における両生類の卵死亡率の個体群間変異とその要因 (仮題)
           岡宮久規(首都大学・理工・生命科学)
      13:45 講演 最近の日本産ハコネサンショウウオ属の分類について
           吉川夏彦(国立科博・分子生物多様性研究資料センター)
      14:35 休憩・ビデオ上映 トウキョウサンショウウオの繁殖行動(仮題)  中川遊野
      15:05 講演 里山の性格とその変貌:史資料に見る山林利用の変遷
           星 昇 (日本EIMY研究所)
      15:55 講演 埼玉県内のトウキョウサンショウウオの生息状況
           藤田宏之(埼玉県立川の博物館)
      16:45 閉会(連絡・後片付けなど)

トウキョウサンショウウオは生き残れるか?-東京都多摩地区における生息状況調査報告書-(編著:草野保・川上洋一、トウキョウサンショウウオ研究会、1999年10月 )
   第2章トウキョウサンショウウオとはどんな生き物?(草野保さん)から
      トウキョウサンショウウオの生息地
       トウキョウサンショウウオの生息地

      東京近郊のトウキョウサンショウウオの生活史
        トウキョウサンショウウオのライフサイクル

来年の植物観察・モニタリング相談 12月22日

今年に続いて来年も、岩殿A・B・C地区、市民の森の植物調査・モニタリングを二宮さん、中村さんにお願いしました。テーマをしぼった観察会・勉強会などもおこなう予定です。
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里山再生ボランティア養成講座2日目 12月12日

里山再生ボランティア養成講座2日目です。今日は学生が授業で来られないので、刈払機の講習はなしで岩殿C地区の整備作業をしました。市民の森保全クラブから応援に来てくれた鷲巣さんを含め参加者は6人です。

金曜日の雨で、岩殿C地区進入路で車がハンドルをとられそうな程ぬかるんだので、道路補修から始めました。
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岩殿C地区と接する市民の森の草刈りを鎌や刈払機で行いました。進入路から無名沼イ号にかけては傾斜が急なので、刈払機と鎌やノコギリ、ナタなど手道具を使った作業となり、刈り取り後の表土の流出抑制のための地拵えも必要です。
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下の田んぼの下になる今回の実習地と無名沼ロ号周辺のアズマネザサやセイタカアワダチソウなどを8枚刃の刈刃で刈りました。
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午後、むさしの里山研究会の新井裕さんに「アキアカネと共存できる田んぼ作り」について話していただきました。
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 ①稲刈り後にすぐに耕耘せず、田んぼに水を引くか、バケツで水をまくなどして水たまりができやすくする(産卵場所となる水たまりを作る)
 ②水入れは5月上旬までに行う(卵が孵化する時期に合わせて水を入れる)
 ③殺虫剤は使わない(使う場合は赤とんぼへの影響が少ないものを選ぶ)
 ④中干しは7月中旬以降に行う(赤とんぼの羽化を終えてから)
 ⑤わらや牛ふんなどの有機質肥料を施す(ヤゴの餌となるミジンコを増やす)
 ⑥春に荒起こしをする(一時的な水溜りができて、水入れ前に卵が孵化しないようするため)
 ⑦ブロックローテーションを行う場合には、稲作を2年続ける
などです。田んぼの水利や周囲の環境など田んぼ1枚、1枚の条件に合わせて赤トンボと共存する田んぼづくりを来年も試していきたいと思います。

児沢のビオトープの池の浚渫

児沢のビオトープ池の浚渫を児沢探検隊の三本さんが土曜日にしました。掘りあげた泥は探検隊の上から二番目の田んぼに置かれています。
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タコノアシ 10月24日

岩殿の田んぼの側の草刈りをした耕作放棄地に生えてた多年草のタコノアシ(ユキノシタ科→タコノアシ科)。全身が真っ赤に紅葉するとまさに「茹(ゆ)で蛸(だこ)」状態になるそうです。
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緑肥を刈る 10月20日

澤田さんと岩殿C地区の緑肥を刈払機で刈りました。
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数日前、軽自動車が放置され、オイルが田んぼの水路に捨てられる事件がありました。その後始末で水路に新聞紙を敷いて油膜を吸い取らせました。ドジョウやザリガニ、メダカなどが死んでいます。
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岩殿B地区田んぼと湿地の植物調査 10月8日

二宮さんと北さんが岩殿B地区の田んぼと湿地の植物調査に来てくださいました。9月28日の植物リストに何種類か追加があったようです。
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アケビやガマズミの実がお土産になりました。そのうちガマズミ酒の試飲ができるかもしれません。



アキアカネ 9月14日

アキアカネ(トンボ科)です。児沢の上の畑で撮影しました。
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『トンボ入門』 9月13日

新井裕さんの『トンボ入門』(どうぶつ社、2004年7月、141頁、1,600円)を読みました。トンボ観察の基本書です。新井さんは寄居町にあるNPO法人むさしの里山研究会の代表で、昨年の10月4日の田んぼの学校では、田んぼでトンボの勉強会の講師をしていただきました。今年は、児沢、岩殿の田んぼでアキアカネが孵化・羽化しているのか等を調べる「児沢・生きもの豊かな田んぼづくりプロジェクト」でお世話になっています。
 新井裕『トンボ入門』目次
 ステップ1 トンボに出会う
 ステップ2 トンボのからだ
 ステップ3 自分流の写真術
 ステップ4 トンボ採りと標本作り
 ステップ5 ヤゴを飼う
 ステップ6 トンボの一生
 ステップ7 彼らの暮らし
 ステップ8 新発見に挑戦しよう
 ステップ9 トンボを呼ぶ
 ステップ10 トンボの雑学
 ステップ11 トンボを見分ける
 ステップ12 ヤゴ(抜け殻)を見分ける
 ステップ13 次へのステップ
トンボを見分ける
・調べたいトンボと巻頭の全32頁のカラーページの識別ポイントとをよく見くらべて、「絵合わせ式」で見分ける。(117頁)
・調べる順序 ①まず、調べたいトンボが均翅亜目(きんしあもく)なのか、不均翅亜目なのかを確認する。②カラーページをめくって、よく似たトンボを見つける。③識別ポイントをチェックしたり解説文を読み、記述に該当するかどうかを確認し、種類を判断する。④もし、記述が該当しなければ、よりくわしい図鑑で調べる。(118頁)
・いっぺんにはわからなくても、見慣れてくると識別眼が養われてくるが、一人で調べるよりも、トンボにくわしい人に手ほどきを受けること。(119頁)

ヤゴ(抜け殻)を見分ける
・125~127頁の写真をみて、おおざっぱな科の区別をする。
  均翅亜目 からだが細く、きしゃな感じ・腹部の先端に3本の尾鰓(びさい)。
       カワトンボ科・イトトンボ科。
  不均翅亜目 からだつきが、がんじょうで尾鰓がない。
       平べったいもの、筒状など、様々な体型。
       トンボ科・エゾトンボ科・ヤンマ科・オニヤンマ科・サナエトンボ科。
・よく似た種類を見分けるのは初心者には至難の業。
  抜け殻を見つけた場所・環境(止水か流水)・時期をヒントにする。
  よく見つかる15種類のヤゴの抜け殻の見分け方の写真・ポイント(125~132頁)。

『博士たちのエコライス -いのちをはぐくむ農法で米作り-』 9月9日

小池恒男さんの『博士たちのエコライス -いのちをはぐくむ農法で米作り-』を読みました。琵琶湖岸の平場の圃場での米作り8年間の奮闘記です。耕作放棄された谷津田を再生し、市民の利用に供するという「岩殿市民田んぼ事業」を推進している岩殿満喫クラブとして、このエコライス農法を「ビジネスモデル」として検討、活用していきたいと思いました。

滋賀県立大学環境ブックレット8 小池恒男『博士たちのエコライス -いのちをはぐくむ農法で米作り-』(サンライズ出版、2015年7月、83頁、800円)
農学博士たちが大学近くの田んぼを借りて、無農薬で化学肥料を使わない「理想の農法」での米作りを始め、学生たちも田植えや草刈り、収穫などに初チャレンジ!利益の出る農業をめざした8年間の奮闘の記録。

1 稲のごく「普通」の作り方
慣行作のバリエーション
私にとっての稲の慣行作
そして今日のいわゆる慣行稲作

2 「いのちをはぐくむ農法」とは何か
農法とは何か
稲作を取り囲む自然環境
私たちがめざした稲作とその農法
 -開出今教育研究圃場プロジェクトのめざしたもの-

3 ざっと見、稲作の1年
稲作の基本にある圃場の整備
 -田んぼがなければ稲作はできません-
開出今の圃場がかかえていた問題
稲作にとっての水と土
元肥施肥から収穫作業まで

4 ビジネスモデルは実現できたか
収量はどのように推移してきたか
食味なんてあてにならないか
なぜ経営成果が問われるのか

5 私たちがめざした農法とその評価
何ができて何ができない
冬季湛水はなぜ行きづまった
不耕起栽培はなぜ行きづまった
紙マルチ田植え技術

6 米作りは誰にでもできますか
「自家栽米」について考える
わが家ではどれだけお米を食べるか
「自家栽米」は可能か
「マイ田んぼ」「オーナー制度」という形もあります
 -「可能な限り自ら生産に取り組みましょう」という呼びかけについての意味-
生活空間や山々と混在してある日本の田んぼ
日本農業の比較優位から見えてくるもの

7 あとがき
冒険の記録、絶望の記録、驚きの記録、そして希望の記録
お世話になったみなさんへ

私たちがめざした稲作とその農法
 ー開出今教育研究圃場プロジェクトのめざしたもの-
●農法としての成立と経営としての成立
 開出今[かいでいま]教育研究圃場プロジェクトの基本は、2.40㏊の水田[20a区画の圃場2枚、30a区画の圃場4枚、40a区画の圃場2枚]で、無化学肥料・無農薬・、通年湛水・不耕起(収穫後の田畑を耕さずに種をまいたり苗を植えたりする。土壌浸食の防止や作業の省力化などの利点がある)等を内容とする農法での稲作栽培です。同時に、このような農法による稲作が経営的に成立するものでなければ現実的な意味は半減するわけですから、もう一つの課題としては、当然のことながら経営としての成立条件の確保が求められます。つまり、農法としての成立と経営としての成立という二つの条件についての検討が求められます。
 さらに、農法の課題に加えて付随的技術として、慣行作より作期を遅らせる(田植えの時期を、慣行作の5月初旬を6月初旬に)、疎植にする(苗箱採用量を慣行作の22箱を16箱に、1株1~2本植え、株間・畝間広幅植え)技術の採用があります。
 経営としての成立という課題にかかわって、生産されたお米の特長(セールスポイント)としてさらに主として消費者向けには、①犬上川の冷たい伏流水で育てた、②無化学肥料・無農薬で育てた、③「魚のゆりかご水田」[ニゴロブナ]で育てた、④「花咲く景観水田」[畦畔に花を植えつけ]で育てた、⑤良食味を求めて育てた、等々の点をアピールすることにしました。
 そしてビジネスモデルとしてわかりやすく、①「いのちをはぐくみ農法」で、②単收(10a当たりの収穫量)8俵(480㎏)とって、③食味80以上を獲得して(静岡製機食味計)、④1俵3万円で売る、の四つの目標をかかげることにしました。「いのちをはぐくむ農法」とは、ここでは無化学肥料・無農薬と通年湛水・不耕起栽培の二本柱の技術的条件と、二つの付随的技術と、五つのセールスポイントのすべてを含む概念として設定しました。……(20~21頁)

●「自家栽米」はもともと農家でない人の「わが家で食べるお米の栽培」のこと(68頁)

●年間1人当たりのお米の購入数量は25㎏(2013年、「家計調査年報」)。10a当たり480㎏(8俵)の収量だとすると、5人家族で3.5a(35m×10m)の広さの田んぼがあれば十分。(69頁)

●「自家栽米」は可能!
 この程度の耕作であれば、トラクターも、田植機も、コンバインも要りません。すべて手作業で可能です。耕起も代かきもトラクターがなくても手作業でできます。田植えも、稲刈りも手作業で可能です。乾燥は「はさ架け」でよしとして、精米も近所にあるコイン精米でできます。残るは苗と収穫後の籾摺り(籾から玄米にかえる工程)です。苗は買い求めるとして、問題は籾摺りですが、この作業は近くの大規模農家に任せるのが一番です。
 ということで、大型機械のないことが米づくりのできない理由にはなりません。また「田んぼがないから」も、「わが家で食べるお米の栽培」ができない理由にはなりません。なぜならば今日では、田んぼを貸してくれる人が周囲にたくさんおられるからです。むしろ問題は3.5aの小さな田んぼをさがすのがむずかしいということかもしれません。まわりを見渡せばほとんどの田んぼは圃場整備されていて、サイズは30a(30m×100m)とかなり大きいのです。……(69~70頁)
●「自家栽米」を成り立たせる七つの条件
……自家栽米に取り組むということになりますと、まず田んぼがなければなりません。加えて、作業(農業機械)、先立つ資金、栽培技術、用水の確保、「集落農政」等々の壁をクリアしなければなりません。しかし、あれやこれやの工夫と柔軟な対応が求められますが、結論として言えることは、「自家栽米」はできるということです。肝心なことは、あたりまえのことですが、原点として「やりたい、やり抜く」という強い意思があることです。意思まで加えますと、「自家栽米」を成り立たせる七つの条件です。その上であえて確認をしておきたいのは、地域に維持されている本隊としての稲作があってこその「自家栽米」だという点です。「自家栽米」はあくまで「コバンザメ」栽培であって、本隊の稲作あっての「自家栽米」です。(71頁)

『減るバッタ 増えるバッタ』 9月8日

台風18号の影響で昨晩から雨が降っているので、外の作業をよして内田正吉さんの『減るバッタ 増えるバッタ -環境の変化とバッタ相の変遷-』を読みました。9月3日、新宿小学校3年生の市野川応援隊を支援した時、吉見の百穴前の市野川の河原にバッタがたくさんいるのに気づき、どんな種類がいるのか確かめてみたくなりました。内田さんの本を先に読んでしまいましたが、河原でバッタを採集してみます。

内田正吉『減るバッタ 増えるバッタ -環境の変化とバッタ相の変遷-』((資)エッチエスケー、2005年12月、141頁、1,200円)

はじめに

第1章 バッタが減っている
 減った半自然草原のバッタ
  クルマバッタの減少が意味すること/高度経済成長とバッタの減少/クルマバッタの生息環境/再進出のきざし

 山地草原のバッタとなったイナゴモドキ
  寒冷地のバッタ/標本による分布調査/東京産のイナゴモドキ/同じ場所にすんでいたバッタたち/半自然草原としてのススキ草原/牧による草原の維持/草葺屋根の材料/土地利用の変化とススキ草原の減少/姿を消していった草原性の昆虫たち

 二種のイナゴの栄枯盛衰 -ハネナガイナゴはなぜ減ったのか?-
  水田のバッタ/コバネイナゴの生息地/水田以外の生息地/乾燥した草原にも生息/ハネナガイナゴの過去の記録/ハネナガイナゴの生息環境/分布記録の杜絶と殺虫剤散布/追い打ちをかけた乾田化/人と昆虫との関わりの変容/均質化された水田/湿性草原に生息するツマグロイナゴ/重ならない分布域

第2章 増えているバッタ
 マダラバッタは開発とともに?
  分布域の広いバッタ/戦前は東京では稀/海岸付近での採集例/埋め立て地からの記録/泥質の潟が本来の生息地か/東京湾の埋め立て地/内陸部への進出/急増する記録/2タイプの生息環境/埋め立て地との共通点/河川敷の造成と分布拡大の関係/内陸部への浸入のストーリー/クルマバッタとの違いは?

第3章 すみかから見えてくるバッタの素顔
 ショウリョウバッタはなぜ「ハの字型」なのか?
  脚を開いて止まるバッタ/ショウリョウバッタモドキとの区別点/ショウリョウバッタの生息場所/意外なところに/ショウリョウバッタの餌場/複数の葉に体重分散?/ショウリョウバッタが優先する理由

 縦じまの複眼が意味するもの
  生息地が局地的なバッタ/生息地の特徴/バッタの多様性が高い環境/高低二つの群落を使い分ける/複眼が縦じま模様である意味/セグロバッタの生息環境/局限される理由

 カワラバッタと河川の増水
  石ころだらけの河原に生息するバッタ/意外に長い発生期間/生息地の特異性/台風前夜の観察/カワラバッタの生息地予測/カワラバッタが減ったわけ/砂利採取の影響/荒川での砂利採取の歴史/大規模ダムの影響/カワラバッタの食性/トンボの翅を食べる/気になる荒川のカワラバッタの今後

第4章 河原とバッタ
 荒川に沿って
  荒川の昆虫調査/バッタ調査のメリット/調査方法/各調査地の概要/荒川本流を5区に分ける/バッタにも適合する区分け/独自性の高いA流区/丘陵地のバッタが多く見られるB流区/乾燥草原を好む種が多いC流区/広分布型のバッタが多いD・E流区/多様な環境をもつ中流域

 利根川のバッタ
  利根川のバッタ調査/河川敷の環境の相違/荒川との類似性/単調か環境の下流域/荒川との相違点

第5章 バッタから見える地域の環境

おわりに

参考文献

高度経済成長、都市化・開発の中でバッタの生息環境の変化、河原や草原の減少、その中での新たな生息地の拡大など、丹念な文献調査と標本調査から明らかにされており、一気に読了しました

ミズオオバコの花 8月24日

児沢の下の田んぼでミズオオバコの花が咲いていました。
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埼玉県ではミズオオバコは絶滅危惧Ⅱ類ですが、児沢の田んぼ、岩殿B地区の田んぼには生えています。

雑草図鑑水田雑草ミズオオバコ

水質検査の候補地検討 8月8日

比企の川づくり協議会の渡辺さんと山本さんが、岩殿入山、青木ノ入地区のため池・水路、九十九川の水質調査パックテストの水採取候補地の現地検討に来てくれました。調査地点に児沢の田んぼを加えて、8月、9月中に2回調査し、結果は環境未来フェアで展示します。
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シオカラトンボ♀ 8月7日

岩殿A地区の上の田んぼにいました。羽化したシオカラトンボのメスです。
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■ヤゴの抜け殻採取(8月7日)
   岩殿B地区中の田んぼ:ウスバキトンボ1、シオカラトンボ1
   岩殿B地区の下の田んぼ:シオカラトンボ2
   岩殿A地区上の田んぼ:シカカラトンボ5、カトリヤンマ1
   児沢上の手前の田んぼ:シオカラトンボ1

赤トンボの育つ田んぼを目指して 8月5日

むさしの里山研究会の新井さんを岩殿の田んぼに案内して、赤トンボの育つ田んぼについてお話しをうかがいました。来年、岩殿田んぼでもアキアカネの育つ稲作を目指します。
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岩殿C地区の下の田んぼ。カトリヤンマの抜け殻の上にウスバキトンボの抜け殻がありました。
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カトリヤンマ 8月3日

岩殿C地区の下の田んぼにいました。羽化したばかしのカトリヤンマです。
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ウスバキトンボ 8月3日

岩殿C地区の上の田んぼでウスバキトンボが羽化していました。
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ヤゴの抜け殻も上の田んぼでウスバキトンボ34、下の田んぼでウスバキトンボ4、カトリヤンマ1、児沢の上の手前の田んぼでシオカラトンボ3を採取しました。

ミヤマアカネ 8月1日

児沢の田んぼにいました。羽に茶色の帯があります。
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※兵庫県立人と自然の博物館『みやまあかねとすてきななかまたち』(ミヤマアカネを素材とした学習の手引き)

ウスバキトンボ 7月31日

岩殿C地区の上の田んぼのイネにウスバキトンボのヤゴの抜け殻がたくさん(84匹)ついていました。
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隣の下の田んぼには、ウスバキトンボのヤゴの抜け殻はなく、カトリヤンマのヤゴと抜け殻だけでした。
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ショウジョウトンボ♂ 7月25日

児沢探検隊の三本さんが送ってくれた写真です。児沢の田んぼで撮影した全身真っ赤なトンボ。ショウジョウトンボのオスだそうです。
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ミズアブの幼虫 7月24日

児沢の上の奥の田んぼにいました。ミズアブの仲間の幼虫です。体調20㎜弱。
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※向井康夫『絵解きで調べる 田んぼの生きもの』(文一総合出版、2014年、900円)
※HP『知られざる双翅目(そうしもく)のために

ヤゴの抜け殻 7月23日

岩殿A地区の上のモチの田んぼの草取りをしていた時、イネについているヤゴの抜け殻に気がついたので集めてみました。大きいのがカトリヤンマ、小さいのはシオカラトンボだそうですが、抜け殻のある田んぼとない田んぼの差は何によるのでしょう。たまたまでしょうか。
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岩殿C地区の田んぼ 7月22日

岩殿C地区の上の田んぼのイネを植えていない部分は干し上げてしまおうと思っていましたが、ユスリカの幼虫、オタマジャクシ、ゲンゴロウの仲間、ヤゴなどが他の田んぼよりは多いみたいなので、水が残るように排水口を閉じました。
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畔を補強するために田んぼの土を寄せました。

赤トンボの羽化 7月8日

児沢の上の奥の田んぼで赤トンボ(アキアカネ)が羽化していました。
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