岩殿満喫クラブ 岩殿 Day by Day

市民の森保全クラブ       Think Globally, Act Locally

読書ノート

川合伸幸『凶暴老人』 2月14日

川合伸幸さん(比較認知科学専攻)の『凶暴老人 認知科学が解明する「老い」の正体』(小学館新書316、2018年10月)を読みました。「なぜ高齢者ばかりがキレるのか? あなたも他人事ではいられない!」「世界に類を見ない日本人固有の特徴を解き明かす」「・暴行・傷害事件は平成8年の20倍に激増 ・衝動的な行動を止められないのはなぜか ・なぜブレーキとアクセルを踏み間違えるのか ・有酸素運動とビデオゲームが機能回復に役立つ これだけ知っておけば老後は大丈夫!」(帯から)

川合伸幸『凶暴老人』目次(第1~4章は章タイトルのみ)
はじめに
第1章 キレる高齢者は本当に増えているのか
第2章 前頭葉の「機能低下」が感情のブレーキを壊す
第3章 怒りと前頭葉の深い関係
第4章 認知能力は鍛えられる
第5章 冷たい視線に晒される高齢者の社会的存在
・高齢者の「暴力」に耐えかねる日本の高齢者介護施設職員
・「よそ者」には共感しにくい
・高齢者は外集団か?
・日本の大学生は高齢者をどうみているか
・犠牲にしても良いと考える年齢は70歳と95歳では差がない
・ヒトを人とみなさない風潮が広がっている
・日本での非人間化
第6章 「孤立」が高齢者を追いつめる
・8割の高齢者が就労意欲を強く持つ
・高齢者の就業は経済的な理由でない場合が多い
・誰かとかかわることで生きがいが生まれる
・高齢男性は周囲に付き合いのない人が多い
・高齢者のおかれた状況の国際比較
・新たな仲間を求める高齢者
・再犯をした高齢者の半数以上はおひとりさま
・社会とのつながりが強いほど健康
・仲間はずれにされると怒りを感じる
・温かい家庭で育つと高齢期に強固な人間関係を形成する
・「まぁいいか」が幸せの秘訣
・腹を立てる高齢者を許さない社会
・豊島区の「姥捨山」政策
・共生社会を推進せよ
・流行した「紐帯」はどこへいった?
・高齢者との共生へ向けて
おわりに

東洋経済20160319表紙

【第1特集】この現実に社会は耐えられるか キレる老人
第1章 暴走する老人に大迷惑
(社会) 公共の場でもお構いなし 自分勝手なシニアの醜態
(分析) 激変する脳と心 高齢者の“暴走”は必然だ
第2章 子を悩ます困った親たち
(車) 「自分は大丈夫」が危険 過信が生む高齢運転の悲劇
課題にどう向き合うか 若年層でなり手がいない 職業ドライバーの高齢化
(色恋) 財産トラブルの火種 争族を生む老いらくの恋
(金銭) カモにされる理由がある 高齢者の銀行信仰は危険
(健康) 暴言、自己中は酒のせいかも アルコール依存症に要注意
課題にどう向き合うか 認知症患者の鉄道事故「家族に責任なし」でも残る課題
課題にどう向き合うか 一時金は最高300万円“認知症保険”は損か得か
第3章 激化する世代間バトル
(職場) 「生涯現役」の落とし穴 会社を蝕むシニア社員
(企業) ホンダ、すかいらーくが導入 動き出した定年延長の実情
名経営者も“迷経営者”に 居座り続ける老害経営者
INTERVIEW│「死ぬまで現役」宣言で老害化しませんか? 似鳥昭雄●ニトリホールディングス会長
(制度) 今もメディアをにぎわす 年金の世代間格差は本当か?
INTERVIEW│「経産省の介入派こそ老害だ!」 古賀茂明●元経済産業省官僚
(政治) なぜ若者の声は反映されない? シルバー民主主義の幻想
高齢議員がメロメロ 小泉進次郎の処世術

オイスカ「海岸林再生プロジェクト10ヵ年計画」報告会 1月26日

埼玉会館で開催された公益財団法人オイスカ主催の「海岸林再生プロジェクト10ヵ年計画」報告会に参加しました。
日本の森林の現状と森林生態系を活用した防災・減災
~東日本大震災復興支援 海岸林再生プロジェクト報告会 in さいたま~
オイスカ20190126

さいたま市長清水勇人さんの挨拶、太田猛彦さん「日本の森林の現状と森林生態系を活用した防災・減災」、小林省太さん「元新聞記者の目から見た東日本大震災復興支援 海岸林再生プロジェクト」の講演がありました。


  (林野庁全5回、2011.05.21~2012.01.25)

※東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関する検討会

※太田猛彦さんのホームページ『もっと豊かな森・役に立つ森を創ろう!

   (安井至さんのHP『市民のための環境学ガイド』2015.11.22記事)

『やさい畑』の「肥料・堆肥」特集号から 1月15日

JAグループ家の光協会発行『やさい畑』は毎年秋号で肥料特集をしています。この3年間では、「2016年秋号特集 すごい肥料&堆肥」、「2017年秋号特集 めざせ!肥料の達人」、「2018年秋号特集 理想の堆肥」がありました。
岩殿満喫クラブ&市民の森保全クラブでは、市民の森の作業エリアに堆肥箱を設置してコナラ落ち葉の堆肥づくりを行い、できあがった堆肥を耕作放棄地を再生した畑に入れて、サツマイモを栽培し、収穫したサツマイモを落ち葉掃きイベントで焼き芋にして参加者に提供するという活動を行っています。
また大東大須田ゼミの畑でも落ち葉堆肥を利用した「岩殿ドングリかぼちゃ」(白皮栗かぼちゃ・坊っちゃんカボチャ等)の栽培を試行中です。17年度にはイベント参加者に1個づつ配ることができました。これ以外にも岩殿の落ち葉堆肥を使って栽培した野菜が提供できないか検討しています。

肥料と堆肥の新常識 野菜はアミノ酸を吸収できる(『やさい畑』2016秋号、14~15頁)
  肥料の常識を変えるアミノ酸
  エネルギーロス少なく野菜が生長できる
  悪天候や病害虫に負けない野菜になる
  おいしく、栄養価の高い野菜になる
  アミノ酸で多收、高品質が実現

肥料と堆肥の大誤解(『やさい畑』2016秋号、16~21頁)
 その1 堆肥は完熟堆肥がいい?
  未熟な堆肥はもちろん論外
  完熟堆肥では土壌病害虫を抑えきれない
  完熟の一歩手前が理想の堆肥
 その2 有機質肥料は化学肥料より効きが遅い?
  発酵済みなら化学肥料同様、早く効く
  味だけでなく、収量や品質も向上させる
  有機質肥料ならではの効用も
有機物を発酵させると、さまざまな整理活性物質(生体の生理活動に何らかの作用をする物質)ができます。発酵に関わる微生物の種類によっては、ビタミンやホルモンなどの増殖や植物の生長を促す物質や、土壌病原菌などを抑制する抗菌物質(抗生物質)をつくります。これらの機能性物質は、微生物が関わってはじめてつくられるもので、化学肥料を用いた栽培では得られません。
 その3 ボカシ肥だけ施しておけばよい?
  ボカシ肥のみでは4~5年で頭打ちに
  頭打ちの主原因は苦土(マグネシウム)不足
  不足のミネラルは補給が必要
   石灰も肥料だと認識しよう
    苦土石灰・カキ殻石灰・貝化石

肥料と堆肥が生まれ変わる万能納豆液
場所も時間もとらない土中堆肥速熟法
市販の有機質肥料をパワーアップ アミノ酸肥料簡単製造法
極上の液肥「カル酢」をつくる(以上『やさい畑』2016秋号、21~29頁)

まとめ 中熟堆肥を用い、ミネラルとアミノ酸を適切に施す(『やさい畑』2016秋号、30~31頁)
 有機栽培に用いる3つの資材とその働き
  中熟堆肥、アミノ酸、ミネラル
 経験や勘に頼らず科学的な施肥設計を

種類別肥料ガイド(『やさい畑』2017秋号、13~30頁)
 じっくりと長く効く有機質肥料・油粕(元肥に)
 分解が早く微量要素も多い・魚かす(元肥、追肥に)
 効き目が早く追肥にも使える・発酵鶏ふん(元肥、追肥に)
 長期間じわじわと効くリン酸肥料・骨粉(元肥に)
 すぐに効くカリ肥料・草木灰(元肥、追肥に)
 緩やかに長く効く・IB入り化成(元肥、追肥に)
 時間差で効く・被覆肥料入配合肥料(元肥、追肥に)
 速効性と緩効性を併せ持つ・有機配合肥料(元肥、追肥に)
 すぐに効く窒素肥料・硫安(硫酸アンモニウム)(元肥、追肥に)
 即効性のリン酸肥料・過リン酸石灰(過石)(元肥に)
 イモ類に向く即効性のカリ肥料・硫酸カリ(硫加)(元肥、追肥に)
 超速効で簡単に施せる・液体肥料(追肥に)
 じつは「肥料」ではない活力剤
  窒素、リン酸、カリなどの肥料成分を一定以上含むものだけが、肥料として販売できる
  肥料を食事だとしたら、活力剤はサプリメント
 簡単につくれて野菜がすぐ吸収できる・ボカシ肥
 植物を畑で育てて土に還す・緑肥

堆肥づくりのための落ち葉図鑑(『やさい畑』2017秋号、54~58頁)
 半年程度で堆肥になるもの
  モモ、ウメ、ケヤキ、ナンキンハゼ、アジサイ、ハナミズキ、クリ、ブドウ、カエデの仲間
 半年から1年で堆肥にできるもの
  イチョウ、キンモクセイ、ビワ、ツバキ、サクラ、カキ、シイの仲間、クスノキ
 堆肥化に1年以上かかるもの
  カラマツ、スギ、タケ・ササ類、マツ  
マツ 分解速度:かなり遅い(1~2年)
油脂を多く含み葉の組織も堅いので、単独で堆肥にするには時間がかかる。和歌山県美浜町では、松葉に石灰窒素入の籾殻を加えて堆肥化し、キュウリやトマト、イチゴに使用して「松」を関したブランド名で特産化を図っている。ほかにも生ごみや窒素分を多く含む副資材を使用して発酵を促すようにすると、早く堆肥になりやすい。
松葉をマルチに使用すると雑草抑制効果があるとされる。また、畑の水はけと通気の改善のために溝を掘るさいは、排水溝に松葉を入れておくと、何年も効果を保つことができる。
庭先でもできる 省スペース落ち葉堆肥のつくり方(『やさい畑』2017秋号、59頁)
 腐植しない樹脂製のもので、ホームセンターで入手できる、籾殻を入れるメッシュの袋を使う
 堆肥づくりのカギは水と空気にあり
  落ち葉100ℓに、米ぬか5ℓ、水は材料の50~60%
  (ぬらした落ち葉1つかみをぎゅっと握って、指の間からわずかに水分がしみ出してくる程度)
  袋の上下を返して中身をときどき動かすほかは、たいへんな作業はない

堆肥が畑を健康にする 堆肥の7大効能(『やさい畑』2018秋号、14~15頁)
①補肥力の向上、②団粒構造の形成、③中量(マグネシウム、カルシウム、硫黄)、微量(鉄、マンガン、ホウ素、亜鉛など)要素の供給、④リンの有効化、⑤地温上昇効果、⑥土壌微生物の健全化、⑦(微生物増殖による)肥料供給の増大

理想の堆肥の条件とは 炭素と窒素の黄金比は10~25(『やさい畑』2018秋号、16~17頁)
自然界を循環する物質、微生物と堆肥の役割、理想の炭素率(C/N比)は一汁三菜の食事と同じ
 土壌を豊かにし長く緩やかに効く落ち葉堆肥 炭素率38、肥料成分N0.4・P0.2・K0.4
 土壌改良と有機への転換には必須バーク堆肥 炭素率55、肥料成分N0.6・P0.3・K0.8
 すぐ効く、よく効く鶏ふん堆肥 炭素率6、肥料成分N3.8・P2.7・K2.5
 効果がたちまち実感できる豚ぷん堆肥 炭素率16、肥料成分N1.9・P1.3・K1.9
 繊維質に富み土壌改良に最適馬ふん堆肥 炭素率15、肥料成分N1.8・P1.2・K1.7
 バランスのよさが持ち味牛ふん堆肥 炭素率24、肥料成分N1.0・P0.8・K1.7

堆肥の効果を高める有機資材(『やさい畑』2018秋号、18~22頁)
 植物由来の資材
 ・米ぬか 炭素率25、肥料成分N2.2・P3.2・K1.6
 ・木質チップ 炭素率700、肥料成分N0.05・P0.03・K0.26
 ・籾殻くん炭 炭素率184、肥料成分N0.22・P0.08・K0.02
 ・菜種油粕 炭素率8、肥料成分N5.1・P1.8・K1.4
 ・大豆かす 炭素率7、肥料成分N6.1・P0.7・K2.4
 動物由来の資材
 ・魚かす 炭素率4、肥料成分N7.7・P5.4・K1.2
 ・カキ殻石灰 炭素率3、肥料成分N0.17・P0.19・K0.08
 ・骨粉 炭素率5、肥料成分N4.1・P7.6・K0.4
 堆肥になる雑草
 ・カラスノエンドウ 炭素率18、肥料成分N2.5・P0.2・K2.1
 ・クズ 炭素率27、肥料成分N1.8・P0.2・K2.2
 ・ヨモギ 炭素率23、肥料成分N2.0・P0.3・K1.5
 ・スギナ 炭素率8、肥料成分N4.5・P0.2・K3.9
 ・ヤブカラシ 炭素率8、肥料成分N5.6・P0.2・K3.6
 ・アカツメグサ 炭素率27、肥料成分N1.9・P0.1・K2.0
 ・ススキ 炭素率32、肥料成分N1.5・P0.2・K0.7
ススキ 炭素、ケイ素が多く分解は遅いが、茎の長さとかたさを生かし、わらマルチのような使い方が向く。空気をよく含むので、保温効果大。ちなみに、生息域が近いセイタカアワダチソウは炭素率120で、肥料効果は乏しい。
詰めて埋めるだけ 土のう袋でつくる落ち葉堆肥(『やさい畑』2018秋号、30~32頁)
  狭い畑でつくれる 簡単!手間入らず
  土のう袋1枚で始められる
 ・仕込み編(11月~)
  ①落ち葉を集める
  ②油粕、米ぬかを加える
    水はたっぷりと加える
    米ぬかと油粕を混ぜていく
  ③2月まで地上に保管
    まとめて積んで発酵を進める
 ・熟成編
  ①土に埋める(3月)
  ②地中で熟成させる(4~翌2月)
  ③完成した堆肥を掘り上げる(翌3月)

都立園芸高校やさい畑実験部「肥料の種類で野菜の味が変わるか調べてみよう」(『やさい畑』2018秋号、67~71頁)
 実験方法:有機質肥料と化学肥料で小カブとホウレンソウを栽培して比較
 実験結果:有機質肥料のほうが大きく育った
 生食は化学肥料、加熱は有機質肥料に軍配
・肥料の違いが食味や食感に影響する
・アミノ酸の多い有機質肥料では、セルロースがしっかりつくられ、かたくかんじられる
・有機質肥料にはさまざまな成分が含まれている
・生の小カブで化学肥料のほうがおいしいと感じられたのは、雑味やアクとなる物質がすくなかったからかもしれない
・ホウレンソウは生ではあまり差がなかったが、ゆでると断然、有機質肥料の方がおいしくなった
・ゆでてアクが抜けると、糖やアミノ酸が際だって、有機質肥料のほうがおいしいと感じられた

「持続性ある実践的多自然川づくりに向けて」提言(2017) 1月12日

12月8日に見学したエコプロ2018国土交通省国土技術政策総合研究所(NILIM)のブースで入手した『国総研レポート2018』に河川研究部長・天野邦彦さんの「河川環境の整備と保全のこれから」が掲載されていて、1997年に河川法が改正されて20年が過ぎ、2017年6月に河川法改正20年 多自然川づくり推進委員会提言持続性ある実践的多自然川づくりに向けてがとりまとめられたことを知り,、『提言』を国交省HPからダウンロードして読んでみました。

天野邦彦「河川環境の整備と保全のこれから」
1.はじめに
河川法の改正で「河川環境の整備と保全」が追加される(1997年)。
河川法改正20年 多自然川づくり推進委員会の提言「持続性ある実践的多自然川づくりに向けて」がとりまとめられる(2017年6月)。

2.多自然川づくり
・1990年、多自然型川づくりが始まる
・2006年、「多自然川づくり基本指針」通知
「多自然川づくり」は、「河川全体の自然の営みを視野に入れ、地域の暮らしや歴史・文化との調和にも配慮し、河川が本来有している生物の生息・生育・繁殖環境及び多様な河川景観を保全・創出するために、河川管理を行うこと」と定義。
・今回の「提言」では、多自然川づくりの5課題と対応方針を提示
 ①河川環境の目標設定
 ②具体的技術と調査から維持管理までの取り組み過程
 ③人材育成と普及啓発
 ④持続可能な多自然川づくり
 ⑤日本の河川環境の将来像の想定
提言に示された課題への対応方針は、多自然川づくりを進める上での、具体的な手法を提示するというよりは、大きな方向性を示す形をとっている。このような形をとっていることが、多自然川づくり、ひいては河川環境の整備と保全を考える上での難しさを示している。

3.河川環境の整備と保全のこれから
(1)河川環境は流域の空間スケールと長期の時間スケールでも見る
河川環境の整備・保全を検討する際には、河川のみでなく周辺環境も含めて適切な時空間スケールで状況を評価し、河川環境変化の駆動力をしっかりと見極めた上で整備・保全の実施へとつなげる必要がある。
(2)多元的な河川環境評価に向けたデータ利用
河川環境の評価を試みる場合、比較的指標化しやすい物理的環境要素だけでも、河道形状、流況、水質、流砂のように多元的で、これらの組み合わせは無数にある。さらに、生物的環境要素(動植物相、生態系)は、指標化できたとしても定量化が困難な場合が多い。これらのことから、河川環境に関しては、目標設定どころか、評価自体が容易なことではない。このため、河川環境の評価手法の向上が強く望まれる。……
(3)治水事業こそ河川環境整備の機会
河道形状、流況、水質、流砂といった河川環境を規定する物理的環境要素は、治水のための河川整備や管理においてもその設定が重要となる要素である。治水上安全な川にするための河道改修や治水施設の整備は、物理的環境要素の改変を伴うことが多いため、河川環境の整備や保全と対立するものと捉えられがちである。しかし、改修後の河道状況が、環境面においても好ましいもので、なおかつ維持管理労力が少なくてすめば、最適な環境整備になる。……河川の周辺環境も含めて、治水のための河川整備は、環境整備につなげることが可能である。

4.おわりに
治水安全度の向上のために今後も河川改修が進められるが、その際には河川ごとに、中長期的な視点から、河川環境整備・保全に資するとともに維持管理が容易な改修方法を順応的に確立していくことで、「多自然川づくり基本方針」が目指す河川管理が可能となるだろう。

国土交通省では、2016年12月に委員会(学識委員:山岸哲(委員長)、池内幸司、高村典子、谷田一三、辻本哲郎、中村太士、百武ひろ子)を設置し、生物の生息・生育・繁殖環境と多様な河川景観の保全・創出を行う「多自然川づくり」のこれまでの成果等をレビューし、今後の方向性について5回の委員会で検討し、17年6月「提言」がとりまとめられた。今後はこの提言を踏まえ、河川環境の整備と保全のため「持続性ある実践的な多自然川づくり」を推進する。

提言は、大きく2つの視点からとりまとめられている。
○「実践・現場視点」常に現場視点で考え、河川環境の整備と保全を現場で徹底し、順応的に挑戦し続けるべきであること
○「持続性・将来性」日常的な河川管理の中で様々な工夫を凝らして河川環境の整備と保全を徹底し、地域社会との関わりを深めていくこと

この2つの視点をもとに、以下の7項目について対応方針が示された。①目標の設定、②技術の向上・一連の取り組み過程の徹底、③人材の育成・普及啓発、④日常的な環境への取り組みの徹底、⑤持続可能な川づくりのための地域連携の強化、⑥変化を踏まえた将来の河川像の検討、⑦国際社会への貢献。

2006年の多自然川づくり基本指針により、多自然川づくりは普遍的な川づくりであるとして全国に展開され、様々な取り組みがこの10年で拡大してきたが、その一方で、整理すべき課題も多く存在
実践・現場視点:いかに現場で多自然川づくりを進め、定着させていくのかを、常に「現場視点」で考え、河川環境の整備と保全が現場で徹底されるようにすることが重要。あわせて、自然環境には不確実性があるため、得られた結果を貴重な知見・経験として次の取り組みに活かしていくことが重要であり、そのための課題解決に向けて順応的に挑戦し続けるべき。
「持続性ある実践的多自然川づくりに向けて」実践・現場視点

持続性・将来性:日常的な河川管理の中で、まずは自然の営力を活用した効率的な管理を第一に考え、これのみによることができない場合に、様々な工夫を凝らした河川環境の整備と保全を徹底していくことが重要。加えて、将来へ向けた持続性を高めるために、地域社会との関わりを深め、更には、気候変動などの河川の環境を取り巻く将来的な変化も見据えつつ、日本の原風景である美しい川を引き継いでいくための、川と人との持続的な関わりのあり方について検討を続けるべき。
「持続性ある実践的多自然川づくりに向けて」持続性・将来性

目次
1.はじめに

2.多自然川づくりの現状
 (1)前回提言への対応状況
 (2)河川環境のマクロ評価

3.多自然川づくりの課題
 (1)目標の設定
 (2)技術と取り組み過程
 (3)人材の育成・普及啓発
 (4)持続可能な多自然川づくり
 (5)日本の河川環境の将来像

4.対応方針
 (1)目標の設定
  ①環境目標設定の手法確立と実践展開
 各河川の河川環境の目標設定に向けて、まずは、河川生態系の観点について、「良好な状態にある生物の生育、生息、繁殖環境を保全するとともに、そのような状態に無い河川の環境についてはできる限り向上させる」という目標設定の考え方を基本として、河川の環境を評価する手法を具体化する。
  ②生態系ネットワーク形成の推進
 (2)技術の向上・一連の取り組み過程の徹底
  ①多自然川づくりの技術的なレベルアップ
  ②多自然川づくりの一連の取り組み過程の徹底
  ③多自然川づくりが河川生態系へもたらす変化の把握
  ④多様な分野の学識者等との連携推進
  ⑤技術等の開発
 (3)人材の育成・普及啓発
  ①人材の育成
  ②多自然川づくりアドバイザーの養成
  ③多自然川づくりの普及・啓発
 多自然川づくりが地域で広く認知され、地域の将来にとって大切な価値を生むものであると理解され、社会から求められるものとなることが重要である。そのために、多自然川づくりの基本的な考え方や治水・環境両面の役割と効果について、広く一般の市民に浸透させるためのわかりやすい説明を工夫し、発信する内容や対象などに応じ、現地における表示なども含め、様々な手段を用いて周知を図る。
 川をフィールドとして活動している市民団体等と連携し、市民が継続的に川に親しみを持ち、生き物と触れ合い、地域の歴史や文化を含めた川そのものや川の景観等について学び、理解した上で、市民目線で多自然川づくりに積極的に関わっていくための河川環境教育やその普及・啓発を推進する。
 また、次世代を担う子供たちが川により親しめるよう、河川環境教育の一環として、子供自らが川の自然を調査・研究し、その優れた成果を表彰するなど、子供のやる気を上手に引き出すための仕組みを構築する。
 (4)日常的な環境への取り組みの徹底
  ①河川管理における環境への適切な取り組みの着実な実施
  ②戦略的な多自然川づくり
 (5)持続可能な川づくりのための地域連携の強化
  ①地域社会が支える川づくり
  ②流域住民と一体となった生態系ネットワーク形成
 (6)変化を踏まえた将来の河川像の検討
  ①気候変動や人口減少などの河川を取り巻く状況の変化等の分析
  ②100年後を見据えた人と河川の持続的な関わりのあり方の検討

別紙 河川環境に関する施策等の変遷

全国メガソーラー問題中央集会(1月14日) 1月10日

2019年1月14日(月)13:00~(開場:12:00)、なかのZERO 大ホールで「国メガソーラー問題中央集会~自然と調和し、地域と共生する再生可能エネルギーを考えるが開かれます。
2018121610

太陽光発電の問題点について(2018.12.19)
日本の風土と暮らしについて
 日本は国土が狭く地形が急峻です。その上、梅雨、秋雨、台風などによって大量の雨が降ります。近年ではゲリラ的豪雨による災害が多発しています。昔から里山で暮らす人々は住み分けをしてきました。裏山の森林は、炭を焼いたり、落ち葉を集める場所でした。また、森は水を育む重要な場所だから、裏山を大切に守りながら暮らしてきたわけです。時代が変わり、森林は手入れされなくなりましたが、裏山が水を育む場所として重要なのは今も変わりません。そうした森を伐採し山を切り崩す環境破壊型ソーラー建設に対し、全国各地で反対運動が起こっています。

多くのメガソーラー建設に共通している問題点
・大規模な森林伐採により環境への影響が大きい。
・保水力の低下に伴い下流域では斜面崩壊、水害、土石流などの危険性が高まる。
・計画地の下では湧水や地下水を水道水源として利用している場合が多く影響が懸念される。また、計画地周辺から流れる水を利用して米作りを行っている人も多く、影響が心配される。
・発電した電気は近くでは使用されずに、大消費地に送電されることが多い。(送電ロスが大きい。地産地消とならない。)
・事業者は東京など大都市圏に本社のある企業が多く、ファンドの多くは海外を含め外部からの資本である。

■太陽光発電における制度的な問題点
 FIT制度の欠陥
いつまでも着工せずにパネルの価格が低下するのを待っている案件についても申請時の買取価格が維持されていた。(2017年4月から変更)
同一敷地内での計画を50kW未満に分割して申請することが認められていた。(2014年4月以降の申請から禁止)

全量買取制度の問題
ドイツ、スペイン、イギリスでは、買取対象となる事業の規模を細かく、頻繁に見直している。(5メガ、10メガを基準としてきた)
ドイツでは、森林を伐採した場合には、その6倍の面積に植林することを義務付けている。
イタリアでは、自家消費が多い事業者や公的団体に優遇した価格(5%増)を設定している。
日本のFIT制度は太陽光バブルを誘発し、全国各地でソーラー開発が環境問題となっている。

事業認定の問題
他人の土地に対して本人の許可も無く勝手に申請し設備認定が受けられる。
一度事業認定を受けた権利(ID番号)が転売されるケースも多い。
関係自治体は事業認定取得後でなければ情報が得られない。
FIT法は特別措置法でつくられているので最上位の法律となり地方公共団体の条例などで規制できない。

基本的な問題として
全発電量に占める太陽光発電の割合は5.7%(2017年)である。(ISEP推計)たった5.7%でこれだけ環境問題が発生することを考えると、日本では、これ以上太陽光発電を増やすことには無理があると考えざるを得ない。

 お金の流れ
高い買取固定価格は、一般消費者から徴収された再エネ賦課金によって賄われている。このお金は、地元地域の経済循環には寄与することなく、殆どが海外を含む地域外の事業者・投資家へと流出している。
標準家庭の一ヶ月の賦課金額(電力使用量が300kWh)
2016年→675円(2.25円/1kWh 買取費用2兆3000億円)
2017年→792円(2.64円/1kWh 買取費用2兆7045億円)
2018年→870円(2.90円/1kWh 買取費用3兆1000億円になると想定)
2030年→経産省は買取費用が当初の想定を1兆円ほど上回り4.7兆円に膨らむと試算している。
電力多消費事業者(鉄鋼業界など)に対しては再エネ賦課金の8割が減免されている。

 電気の流れ
地方から→都市へ
再生可能エネルギーは地域資源のはずである。
本来ならば自家消費(オフグリット化)を優先し、余剰分で地域の電力(コミュニティパワー)をまかなう形で電力の地域自給を目指すのが理想であるが、その方向には進んでいない。
逆に太陽光発電の普及が地方の自然環境を破壊する結果となっている。これは原発の仕組みと同じである。
再エネは送電ロス分にも賦課金が掛けられている(太陽光発電施設の出口に設置されたメーターにより電力量が計算されているため)この送電ロス分も消費者が負担しなければならない。
太陽光発電施設を環境影響評価の対象とする事に関する環境省への要請書(案)2019.01.15
はじめに
 FIT法(固定価格買取制度)によって全国各地でメガソーラー(1MW以上の出力を持つ太陽光
発電施設)の建設ラッシュが始まりました。FIT法が導入された当初は、再生可能エネルギーの普及により脱原発社会の実現が可能になると期待が高まりましたが、現状では、景観を乱すだけでなく、今までにない大規模な土地造成・森林伐採による環境悪化、水源への影響、災害誘発など、さまざまな問題が浮き彫りになり、危機感を持った人々が全国各地で反対の声をあげる住民運動を展開しています。
 法規制を整備する間も無く国策としてスタートし、推進されているソーラー事業ですが、このまま何も手立てを講じることもなく放置すれば、私たちの生命を守ってきた自然環境と平穏な暮らしが、ソーラー事業によって奪われる可能性があり、エネルギー施策が今後批判を浴びることになりかねません。自然と調和し、地域と共生する再生可能エネルギーの実現と持続可能な社会を構築するため以下の内容で要請書を提出します。
 記
 1. 太陽光発電施設を環境影響評価の対象とする際の規模要件について
 現在、太陽光発電施設を環境アセスの対象としている県は長野県(2016.1~、2017.9配慮書追加)、山形県(2017.10~配慮書を含む)、大分県(2018.1~配慮書を含む)の3県です。また、面開発の一種として太陽光発電施設もアセスの対象になり得る都道府県が29府県あります。さらにいくつかの県が太陽光発電施設を環境アセスの対象とするための検討を開始しています。太陽光発電施設を環境アセスの対象としている3つの県の規模要件は、長野県が第1種事業50ha以上、第2種事業20ha。(添付資料1)山形県が普通地域50ha以上、特別地域20ha以上。(添付資料2)大分県が、第1種、第2種共に20ha以上。(添付資料3)となっています。
 それに対し、現在環境省が検討を始めている「太陽光発電施設等に係る環境影響評価の基本的考え方に関する検討委員会」で示されている規模要件は、第1種事業100haです。(添付資料4
第1種事業に対する規模要件が100haでは、ほとんどの計画がアセスの対象から外れてしまい、現在全国各地で問題となっている環境破壊型太陽光発電の問題を解決することには繋がりません。
 よって、現在太陽光発電施設を環境アセスの対象としている、長野県、山形県、大分県と同じく、最低でも第1種事業については適用を50ha以上とし、第2種事業については、20ha以上を基本とし、たとえ事業規模が小さくても関係自治体の首長もしくは議会から要望がある計画に対しては全て環境影響評価の対象とすることを求めます。また、資源エネルギー庁の太陽光発電に関する事業計画ガイドライン(添付資料5)には、「事業計画作成の初期段階から地域住民と適切なコミュニケーションを図るとともに、地域住民に十分配慮して事業を実施するように努めること。 地域住民とのコミュニケーションを図るに当たり、配慮すべき地域住民の範囲や、 説明会の開催や戸別訪問など具体的なコミュニケーションの方法について、自治体と相談するように努めること。環境アセスメント手続の必要がない規模の発電設備の設置計画についても自治体と相談の上、事業の概要や環境・景観への影響等につ いて、地域住民への説明会を開催するなど、事業について理解を得られるように努めること。」と記載されています。 
 よって、小規模な太陽光発電施設に対しては、ガイドラインや自由アセスで対応するのではなく、第2種事業の判定(スクリーニング)において、関係自治体から説明会の対象として指定された行政自治区または自治会より要請がある場合には、事業規模に関係なく環境影響評価の対象となる制度にすることを求めます。
 なお、環境への影響は、開発面積の大きさに比例して増大するので、規模要件は出力(kW)ではなく、面積(ha)で規定することを求めます。

 2. 戦略的環境アセスメントの導入について
 戦略的環境アセスメントの導入については、戦略的環境アセスメント総合研究会において長年に渡り議論が行われ、その結果を踏まえ平成19年3月に戦略的環境アセスメント総合研究会報告書が提出されています。(添付資料6
 この報告書の前文の最後には次のように記載されています。「我々は、本ガイドラインに基づいて各計画に応じたシステムが早急に導入され、各計画に適切な環境配慮が組み込まれることにより、持続可能な社会の構築への新たな歩みが加速されることを期待するものである。」
 国に先がけて太陽光発電施設を環境アセスの対象とした長野県、山形県、大分県の3県は全て、この戦略的環境アセスメント総合研究会報告書が提示した戦略的環境アセスメントのガイドラインに沿って、配慮書の審査手続きが第1種事業と第2種事業の両方に導入されています。
 今回、太陽光発電施設等に係る環境影響評価の基本的考え方に関する検討委員会で検討されている環境影響評価においても、配慮書の手続きを第1種事業と第2種事業の両方に導入することを求めます。
 その上で対象の計画が以下の2つの条件に当てはまる場合には、配慮書の段階で事業の中止を促すことを求めます。
・計画地の近くに住宅地が存在し、ソーラーパネルの反射が住宅地に影響する場合。
・調整池を常時流水のある河道内に設置する場合。
理由としては、常時流水のある河道内に調整池を設置した場合には、水量の調節をして欲しくない計画地以外の集水域から流下する水についても水量調節が行われてしまうことなどがあります。
 開発調整池とは本来、開発により生ずる雨水排水増を適正量に緩和し、泥土を沈殿させて濁水などを河川を含む開発下流域に流しださないことを目的に設置されるものです。しかし、調整池を増水禍や汚濁を与えてはならない河道内に設定した場合には、調整池本来の機能を果たす事にはなりません。
 よって、河道内以外の場所に調整池を設置出来ない計画については、計画を中止するべきです。

 3. 環境影響評価法と条例の関係について
 環境影響評価法と地方公共団体が条例で定めた環境影響評価の手続きが重複した場合には、事業者の負担を軽減するため重複を避け、国が定める環境影響評価の方を優先し実施することになっています。(添付資料7)しかし、地方公共団体によっては、太陽光発電事業を国が定める環境影響評価法よりも厳格な規定によって環境影響評価の対象に加え審査している場合もあります。つまり、国が定める環境影響評価が選択されることによって、地方公共団体が条例で定めた環境影響評価を実施した場合に比べて環境への影響が増大してしまう可能性があります。
 よって、環境影響評価法と地方公共団体が条例で定めた環境影響評価の手続きが重複した場合には、その選択権を地方公共団体に委ねる必要があります。 

 4. 評価の手法について
 日本の環境影響評価の手続では、「評価」は事業者自らが行い、「評価」に対して住民や行政側が意見を述べることは出来ない仕組みとなっていますが、これは制度的な欠陥です。
 よって、準備書の審査で提出された意見を踏まえ事業者以外の第三者的機関が評価を行うように制度の改正を求めます。

 5. 事後調査の実施及び報告書の作成について
 事業開始後に行う「事後調査の実施」及び「報告書の作成」の手続きにおいては、太陽光発電パネルの廃棄について調査と報告を行うよう義務付けることを求めます。
 また、事業終了後には計画地から太陽光発電パネルが完全に撤去されることと、適正に廃棄されることを担保する仕組みが必要です。
 参考までに、平成30年11月1日開催の「第4回太陽光発電施設等に係る環境影響評価の基本的考え方に関する検討会」において、山田委員が次のように意見を述べています。

【山田委員】 7の廃棄物等のところです。
最近、産廃の処分業者さんとお話しすることがあって聞いたのですけれども、今、かなりの業者さんが太陽光パネルの受け入れはとめているそうです。その理由の一つが、これは製品によって違うらしいのですけれども、有害物質が入っているものがあり、それがどれかはわからないというのが一点で、もう一点は、これは基盤を外してしまえばそういうことはないのですが、つけたまま廃棄されると通電して火災の原因になるということです。 この2点で今は受け入れをとめているところが相当数あるということを聞きました。
それで、環境影響評価においても、この2点については予測なのか保全措置なのかどちらに記載しておいたほうがいいと思います。つまり、使っているパネルの含有物質情報、 それからもう一つは適正な処理の方法という2点についての環境配慮を記述しておいたほうが将来的によろしいかなと思います。あともう一点は、この間のヒアリングで、供用中に大体何枚ぐらい常に壊れますかと聞いても誰も答えられなかったのですが、やはり供用期間中にどれぐらい廃棄されるかという廃棄率みたいなものを、故障関数とかもあるので何とか見積もって示しておく必要があるのではないかなと思いました。私も具体的にどうやって見積もったらいいかはわからないですけれども、また評価のためにはある程度の経験が必要なのかもしれませんが、やはりそういうのも必要だと思います。以上です。(添付資料8

 上記5項目の要請を実現するため必要に応じて速やかに環境影響評価法の改正を行うことを求め
ます。 以上

 添付資料
1. 太陽光発電施設を環境影響評価の対象とする際の規模要件について
 添付資料5「事業計画策定ガイドライン (太陽光発電) 」(資源エネルギー庁)

2. 戦略的環境アセスメントの導入について

3. 環境影響評価法と条例の関係について
 添付資料7「環境アセスメントのあらまし」(環境省、2018年10月改定)

4. 評価の手法について

5. 事後調査の実施及び報告書の作成について

さらなるFIT法改正を求める経産省への要請書 (案)2019.01.15
はじめに
 東日本で起きた未曾有の大震災以来、次世代を担うエネルギー電源として大きな期待をもって迎えられた再生可能エネルギーが今、大きな転機を迎えようとしています。
FIT法が施行されると共に、再生可能エネルギー事業へ新規参入する事業者は激増しました。その中でも比較的設備の設置が簡単である太陽光発電は、担い手を失った手つかずの山林などを広範囲に伐採し、大掛かりな造成工事によって山を削り取り、谷を埋め立て、一面をパネルで埋め尽くすといった想定外の太陽光発電所計画を次々に生み出すような事態を招きました。
本来なら、再生可能エネルギーとして期待されるはずの太陽光発電事業によって私たちの地域が脅かされようとしています。大切に育まれてきた自然や文化、日常生活までもがある日突如として踏みにじられ、工事によって環境破壊や大災害を誘発しかねない事例が各地で多発しています。説明や同意の義務をまったく果たさないまま強行に工事を開始し、地域住民と衝突するような事例も後を絶ちません。さらには、再エネ賦課金が電気料金を押し上げ、国民負担が年ごとに増大していくことも危惧されます。
 地域と共生できない事業をなくし、国民負担を軽減するため以下のようにさらなる法改正を求めます。

 
1. 地域との共生について
 2017年4月1日施行の改正FIT法において、認定時に土地利用や安全性に関する他法令(条例を含む。)の遵守を求めること。関係法令に違反した事案について、改善命令を行い、認定取消を行うことができること。が盛り込まれたが、地域との共生を考えた場合、これではまだ十分な改正とは言えない状態です。
 資源エネルギー庁のホームページにおいて、平成28年10月より運用している「不適切案件に関する情報提供フォーム」へは、2018年8月末までに延べ223件の通報が寄せられています。このうち自治体からは24件の通報があり、その大半は法令違反、条例違反及び地元との調整に関するものです。(添付資料1
 条例を含む関係法令に違反した悪質な事業を無くし、地域との共生を図るために、以下のように法改正を求めます。
①認定について
関係する地方公共団体(注1)の条例を含む関係法令を遵守し、同意を得ることとする。
②未稼働案件について
関係する地方公共団体(注1)の首長または議会から条例を含む関係法令に違反しているとする申請があった場合には認定取消しとする。
③稼働中の案件について
関係する地方公共団体(注1)の条例を含む関係法令に違反した場合には認定取消しとする。
(注1):計画地が所在する市町村並びに都道府県に加え、計画地を集水域とする河川が存在する市町村及び都道府県を関係する地方公共団体と定義する。 

2. 国民負担の抑制について
 2018年の賦課金(国民負担)の総額は、2.4兆円で、電気料金に占める賦課金の割合は、産業用・業務用で16%、家庭用で11%に増大しています。
 また、FIT制度に伴う国民負担を、再エネ比率を10%から15%に増加させるのに要した負担単価と総額で内外比較してみると、日本の国民負担単価は2.25円/kWh、総額1.8兆円/年に対し、ドイツは、国民負担単価0.63円/kWh、総額3,307億円/年、イギリスは、国民負担単価0.28円/kWh、総額962億円/年と、日本の国民負担が大幅に高いことがわかります。
 認定価格の高い2012年(40円)、2013年(36円)、2014年(32円)の3年間に認定を取得し、まだ稼働していない未稼働案件は合計で23,515万kWあり、今後この案件が稼働し出すと国民負担が更に増大することになります。(添付資料2
 事業用太陽光発電のシステム費用は認定時に比べ運転開始の時期が遅れた場合には遅れるほどコストが低減しています。よって、買取価格の決定は認定時ではなく運転開始時とすべきです。また、過去に認定を受けたまま稼働していない未稼働案件についても運転開始時の買取価格に変更するよう法改正を求めます。 以上

 添付資料
 添付資料1「再生可能エネルギーの地域共生に向けた取組みについて」(資源エネルギー庁再生可能エネルギー推進室長杉山佳弘、2018.10.30)

 添付資料2「既認定案件による国民負担の抑制に向けた対応」(資源エネルギー庁、2018.10.15)

「らいてうの家」前の太陽光発電施設建設計画(2016年~) 1月9日

長野県上田市真田町にある「らいてうの家」の前に計画された太陽光発電施設。NPO法人平塚らいてうの会代表米田佐代子さんのブログ『米田佐代子の「森のやまんば日記」』 の記事から追ってみました。
iesyasinn

らいてうの家に営利事業の「太陽光発電」は似合わない!

らいてうが愛し、私たちが守ってきた国立公園あずまや高原の自然と歴史・文化が、目の前の「太陽光発電」計画で失われようとしています。

わたしたちは事業責任者のHJアセット・マネジメント社に計画の白紙撤回を要求するとともに、この計画について上田市と長野県に対しては厳正に審査することを、国立公園内の事業に許認可権限を持つ環境省に対しては許可しないことを要請したいと思います。……

  1. らいてうの家の目の前に建設される「ソーラーパネル」の林立は、上信越高原国立公園における自然の景観と環境を破壊し、らいてうの家訪問者をはじめ、住民や観光客のいこいの場を台無しにするものです。
  2. 現地は標高1,450mを超える高地で12月から4月初旬までは雪に閉ざされる低温地帯かつ登山道に面する急傾斜地です。パネル設置によって土地の保水力が失われ、下流地域にまで水害が及ぶ恐れがあります。
  3. ここは日本百名山で知られる四阿山登山路に面し、1300年の歴史を持つ山家神社奥社への参道でもあります。らいてうをはじめ60年前にこの土地を求めた人びとも「大切な土地」として手つかずの自然を守ってきました。こうした先人たちの歴史と文化を無視するものです。
  4. 「自然とともに生きる」ことをめざしてきたらいてうの家の基本理念と存立基盤をおびやかすものです。

  2017年9月  特定非営利活動法人 平塚らいてうの会 会長 米田佐代子


らいてうの家の真向かいに南面傾斜の草地があり、隣接ホテルの所有地ながら借景としては申し分のない風景で、夜そこに寝転ぶと満天の星が一望できる、すてきな場所だったのですが、8月早々突然「この土地(およびそこから続くおよそ20,000平方メートルの土地)を買い取り、太陽光発電所を設置する」という業者が現われたのです。太陽光発電は「自然エネルギー」というので、個人だけでなく、山林や遊休農地などをつかってソーラーパネルの大群を設置発電、電力会社に「売電」する事業が大流行しています。「原発じゃないからいいでしょう」と思われそうですが、それにしても風景は一変、ここにやってくるウグイスやカッコウ、アカゲラ、そして有名なわたり蝶のアサギマダラもやってくる自然豊かなこの地の環境も激変するかもしれない。真っ黒なソーラーパネルがずらりと林立する光景は、どう考えてもらいてうの家にふさわしいとは言えません。
内容は、各地で太陽光発電設備設置をめぐって「反対運動」が起り、該当地域の市町村や県などが対応に追われているというものですが、その焦点がサブタイトルに「アセス義務化 事業の停滞も」とあるように、自治体が「独自の条例などで、環境アセスメントを義務付ける」ところが出てきたことをあげて、「手続きが煩雑で手間がかかるため、太陽光発電の普及自体を妨げる心配もある」という論調になっていることです。「国のエネルギー基本計画では、16年度に15%だった再生可能エネルギーの割合を、30年度には22~24%に高めるとしている。中でも太陽光が先行して普及しており、土地の有効利用の観点でも利点が多いとされている」とあります。ある事業者の声として「(負担が大きいので)アセスが必要なところでは事業はしない」という意見も載せています。
これはどうみても「国の政策である太陽光発電を推進するうえで、環境アセスは普及を遅らせるおそれがある」と言っているのと同じではないでしょうか。国が法的規制もキチンとせず、野放し状態で太陽光発電を推進、沸き起こった住民の反対に、やむなく自治体が「ガイドライン」や「条例」で地域の環境破壊を抑えようとしているのに、これは「アセスなどやって業者をチェックしないほうがいい」と言わんばかりです。
内容を全部紹介できないので、感想を言います。 第一に、ここでの問題提起は、メガソーラー反対だけでなく、そもそも日本でいま展開されている「太陽光発電」そのものが「日本の国土の自然、生活環境に適合するのか」という問題提起をはらんでいるようにわたしには思われたことです。そこから出てくる第二の点は、ではわたしたちが望む原発やCO2削減をめざす電力はどうやって生み出せばいいのか、という問題。これらを含めて第三にメガソーラーを止めさせ、小規模ソーラーや水力、バイオマスなどによる発電で「地域の生活を地域で生み出す」あるいは「ソーラーシェアリング」のような太陽光発電と農業振興を結びつける方策が生みだされたとしても、それで大企業を含む電力需要全体が賄えるのか、という疑問です。(中略)
「太陽光発電は、ほんとうに推進すべき自然エネルギーか?」「たとえメガソーラーに限定して反対するとしても、原発や火力発電ではない電力を創出するにはどうしらいいか?」「小規模発電というかんがえかたは賛成できる面もあるが、これで生活電力はまかなえるとしても大企業の電力をどうやって確保するのか?」―これらの疑問を抱えて帰宅しましたが、その後ほぼ同じときに同じ長野県の飯田で「第10回市民・地域協同発電所 全国フォーラムin飯田」(10月5-7日)が開かれたことを知りました。
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全国メガソーラー問題シンポジウム(茅野市民館、2018.10.08)(YouTube
基調講演 :高田宏臣「現代土木の限界と災害、大地環境の仕組みから、メガソーラーの問題を診る」、梶山正三「メガソーラーをやっつけろ!~闘う住民のための十訓~」、
佐久祐司「FI T法の何が問題か」等の講演資料は、『全国メガソーラー問題シンポジウム』の「報告 」タブからダウンロードできます。

上田市民エネルギー・FoE Japan共催『ソーラー開発問題と市民・地域エネルギーを考える公開勉強会(上田市中央公民館、2016.09.23)
・茅野恒秀「全国、長野県の自然エネルギー開発問題の概要
・長野県環境部「太陽光発電を適正に推進するための市町村対応マニュア ル」(2016.06)
・上田市「開発規制ガイドライン
 ・藤川まゆみ(NPO法人上田市民エネルギー)「上田市発全国発信 市民共同設置「相乗りくん」の可能性
・吉田明子(FoE Japan)「電力自由化、私たちの選択

※追加資料(2019.01.15)※
サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル
   地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して
  ●環境新聞連載:「再生可能エネルギーと地域再生」より、10回目
    「上田市の再生可能エネルギーと地域づくり(1)」(2017.03.17)
  ●環境新聞連載:「再生可能エネルギーと地域再生」より、11回目

『科学』2018年10月号特集「再エネ:地域社会の再生へ」 1月8日

『科学』88巻10号(岩波書店、2018年10月)は、「再エネ:地域社会の再生」が特集されていました。
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安田陽「再生可能エネルギーがもたらす便益とは」
  便益という概念の不在
  我々のシステムは完璧だろうか?
  外部コスト、またの名を、隠れたコスト
  再び、再エネの便益とはなにか
  倫理と経済学
  結びに:地域経済への貢献

※『日本経済新聞』連載「やさしい経済学」電子版
 安田陽「地域分散型エネルギーと地産地消」
 (1) エネルギー自治の時代 2019/1/4
 (2) 電力の「鎖国」は非効率 2019/1/7
 (3)蓄電池設置は高コストに 2019/1/8
 (4)安易な防災目的、負の遺産にも  2019/1/9

京都大学大学院再生可能エネルギー経済学講座
 安田陽「エビデンスベースなエネルギー論争のために

中山琢夫「再エネが農村地域にもたらす経済的な力」
  持続可能な地域の発展に向けて
  地域付加価値分析とは
  岡山県西粟倉村における事例と分析
   (1)小水力発電所
   (2)バイオマス熱供給事業
  まとめ

※中山琢夫「生態系サービスの市場化をとおした中山間地域経済の自立についての研究

田中信一郎「地域を元気にする再エネ -長野県の事例からー 」
  地域主導型を促進する再エネ普及方針
  地域主導型を促進する政策
  地域主導型の事例
   おひさま進歩エネルギー株式会社(飯田市)
   上田市民エネルギー(上田市)
   まめってぇ鬼無里/自然エネルギー信州ネット(長野市)
  再エネ100%地域を目指して
  [まとめ]
   (1)持続可能な地域を目指すことの地域全体での理解の深化
   (2)人口減少を見据えてのインフラの長期的・効率的な利用
   (3)国内外の先進的な知見の積極導入とネットワーク化

地域政策デザインオフィス掲載メディア

※田中信一郎「エネルギーで地域経済を創生する

丸山康司「再生可能エネルギーの導入と地域の合意形成 -課題と実践ー 」
  再生可能エネルギーのもたらす社会的課題
  再生可能エネルギー利用における個と全体の緊張
  〈被害〉の曖昧さと合意の可能性
  社会的摩擦を招きやすい日本の現状
  合意形成を促す社会的仕組み
  社会の豊かさを実現するために

※丸山康司「環境影響評価法を巡る最近の動向

山下紀明「地域で太陽光発電を進めるために地域トラブル事例から学ぶ
  急速に拡大する太陽光発電
  太陽光の地域トラブル事例の全体像
   メディアでの地域トラブル報道状況
   全国自治体アンケートから見る地域トラブル
   国および地方自治体の制度の概況
  具体的な事例と教訓
   諏訪市・茅野市にまたがる地域トラブル
   富士見町での「冷静な撤退」
   長野県の制度的対応
   伊東市での地域トラブルの行方
   中小規模事業の地域トラブル
   ソーラーシェアリングへの懸念
  地域の受容性を高める地域主導型再エネ事業
   福島・冨岡復興ソーラー
   新潟・「おらって」の官民協働ソーラー
   広がるご当地エネルギー
  教訓を活かす
   地域トラブル事例からの教訓
   地域トラブルを減らしていくために

※山下紀明「メガソーラー開発に伴うトラブル事例と制度的対応策について
      (環境エネルギー政策研究所ISEP 2016.03.01)
 1. 問題関心
  メガソーラー事業の急拡大
  顕在化するトラブル
 2. 既往研究
 3. トラブル事例の整理
  トラブルの理由
  トラブルの発生地域
  開発主体の所在地
  トラブル事例の事業規模
  その後の経過
 4. トラブル事例への政策的対応
  具体的な対応事例
  4つの制度的対応策
①今後の開発計画に対し、既存の景観条例や自然保護条例を改定または新設し、メガソーラーの開発を直接的に抑制する規制的手法
②環境アセスメント条例の改定を通して、一定規模以上のメガソーラーの建設に対する調査や住民説明会の開催を義務付ける手続的義務による手法
③条例の制定やガイドラインの設置などにより数 MW 以下のメガソーラーの建設予定を事前に届出を義務付ける手続的義務による手法
④事業者との協定や交渉を通じて開発の影響を軽減する、代替措置を講ずる、住民との丁寧な合意形成を促すなど、行政指導を通じた自主的手法
  国、地域の双方からの予防的アプローチの必要性
  トラブル対策だけでなく、望ましいあり方への議論を
 5. まとめ

千葉恒久「ドイツの風力発電を支える計画制度」
  風車をどこに立てるのか
  地元住民の受容

※千葉恒久「欧州における地域・市民主導の低炭素社会づくり ~なぜ市民が主役なのか?」(2015年2月10日講演

市川大悟「再生可能エネルギー普及に、なぜ、いまゾーニングが必要か?」
  国内でも取り組みの兆し、いま注目されるゾーニングとは
  ゾーニングが必要となる理由
   トラブルが散見されるなか急増する再エネ計画
   環境アセスメントでの対応の難しさ
  ゾーニング普及への課題
  結びに

※市川大悟「自然エネルギー100%を実現する「要」 − 環境配慮の大切さについて考える」(自然エネルギー100%プラットフォーム

※WWFジャパン 気候変動・エネルギーグループ「自治体で進める地域協同でのゾーニングのすすめ ―地域環境と調和した 自然エネルギーの普及に向けて」(2017年11月)
はじめに
第1章 ゾーニングとはなにか?
 1-1 ゾーニングについて
 1-2 ゾーニングの国内外事例
 1-3 国内のゾーニングに向けた動き
第2 章 なぜいまゾーニングなのか?
 2-1 再生可能エネルギーへの期待
 2-2 期待される再エネ普及の規模感
 2-3 普及にともなう地域課題
 2-4 ゾーニングの必要性
第3 章 ゾーニングの実例紹介
 プロセス 1 検討体制の構築
 プロセス 2 協定書の締結
 プロセス 3 ゾーニングの進め方の検討[手法検討]
 プロセス 4 ゾーニングの実検討[影響項目の設定]
 プロセス 5 ゾーニングの実検討[各項目の評価]
 プロセス 6 ゾーニングの実検討[最終評価]
 プロセス 7 公表方法の検討
第4 章 今後の課題
 1 本ゾーニングにおける課題点
 2 ゾーニングの各地での普及の課題
おわりに
脚注・参考文献
※追加資料(2019.01.15)※
※『100%再生可能エネルギー地域のブログ』(滝川薫・田代かおる・近江まどか・池田憲昭・村上敦)ヨーロッパの各国、ドイツ、スイス、オーストリア、デンマーク、イタリアにおける再生可能エネルギー(新エネルギー、自然エネルギー)によって自立を目指す地域や自治体を紹介した本をより詳細に知るためのページ
※『滝川薫の未来日記
※『ドイツ・フライブルク市から地球環境を考える 村上敦

太陽光発電主力電源化に暗雲 1月7日

2018年9~10月に『週刊東洋経済』に3回連載された「主力電源化に暗雲」(岡田広行)を読みました。昨年12月2日の記事「森林を脅かす太陽光発電を考える」講演会に参加①「〃」②に関わるものです。
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●「第1回 太陽光発電の落とし穴」2018/09/15
集中豪雨で設備の損壊事故が続発し、ずさんな開発で住民とのトラブルが相次ぐ。大量導入が進む太陽光発電で何が起きているのか。

不十分な立地規制 災害に弱い設備も/安全に配慮欠くと民事訴訟で敗訴も/発電事業者の多くが電気安全の認識欠く
豪雨で太陽光パネル崩落 タイナビ電力「タイナビ姫路発電所」/地盤ごと崩落 DMM.com「姫路藤原発電所」/太陽光発電が突出して拡大 -再生可能エネルギーの累積導入量-/出力規模に応じて規制が異なる -太陽光発電設備に関する保安規制の状況/さくが設置されていない小規模発電所(山梨県笛吹市)/最大40度の急斜面に設置された太陽光発電所(山梨県甲州市)/件数で50キロワット未満が大半 -太陽光発電設備の導入状況(2017年12月末)/将来、放置・不法投棄のおそれも -産廃・リサイクル費用を確保している太陽光発電事業者の割合

長野・山梨現地ルポ 森が伐られ突然の着工 乱開発が住民を脅かす
造林の届出で伐採 裏で発電所建設を準備/手続きを経ずに着工 住民の怒りが爆発/FIT法違反の数々 規制強化の流れに/住民とのトラブルを招いた開発 長野県富士見町/小規模ソーラー乱立で“電柱銀座に” 山梨県北杜市/改正FIT事業法違反の施設があちこちに(山梨県北杜市) さくなし/さく標識なし/さくなし(ロープ不可)

INTERVIEW 「法違反には厳正に対処する」(経済産業省新エネルギー課長)

●「第2回 シャープ製パネルで相次ぐ火災事故の深層」2018/09/22
火災多発の背景には、設計不良があると専門家は指摘する。しかしシャープは「原因が特定できない」とし、製品リコールに否定的だ。

積水ハウスが施工した屋根材一体型で表面化/メーカー任せにせず安全対策の実行を
シャープ製品で火災事故報告が目立つ -住宅用太陽電池モジュールに関連した火災事故情報-/数センチ被さっていただけだが…

専門家に聞く シャープ製火災多発の技術的背景
火災を多発させる3つの複合要因/屋根材一体型が建物への延焼を招く シャープ製が出火する3つの要因/はんだ緩みを機に激しく発熱 -太陽電池セルの拡大図-

●「第3回 表面化し始めた品質保証問題 根拠が薄い長期性能保証」2018/10/06
太陽光発電所で初期不良問題が相次いで表面化。パネルメーカーの長期性能保証はセールストークの色彩が強く、根拠が不十分だ。

容易でない無償交換 メーカー任せが裏目に/長期信頼性を欠いた部材が広く使用される
2割以上で目視により不具合を確認 -太陽電池モジュールの部位別不具合現象- セルの接続不良/バックシートの亀裂/出力低下にはさまざまな要因がある -結晶シリコン太陽電池モジュールの稼働期間と出力低下要因の関係-/「長期信頼性」と「設計および製造プロセス」が低い傾向

安全を軽んじた普及の弊害
発電効率やコストを最優先

太陽光パネル用語解説
パワーコンディショナー/太陽電池モジュール/太陽電池セル/インターコネクター/バックシート/バイパス回路

※※追加資料※※
  (アゴラ研究所『GEPR』記事)

※「太陽光発電事業の環境保全対策に関する自治体の取組事例集」(環境省、2016年4月)

※『太陽光発電所を売却するためのWEBマガジン

マツ枯れの仕組みと防除③ 1月3日

森林被害対策シリーズ  No.1 「松くい虫」の防除戦略  マツ材線虫病の機構と防除』(独立行政法人 森林総合研究所、2006年)を再読しました。市民の森保全クラブ会員必読です。

松枯れは線虫と昆虫が共同して引き起こす病気です。その仕組みは以下の通りです(冒頭の番号は下図と対応しています)。
1)5~7月にマツノマダラカミキリ成虫がマツノザイセンチュウ(線虫)を体内に入れて(主に気管の中)前年に枯れたマツから脱出。
2)カミキリ成虫は生きたマツの枝をかじって栄養摂取。この傷から線虫が樹体内に侵入。
3)侵入後、線虫はマツの樹脂道(ヤニの通り道)を通って樹体全体に広がり、マツの細胞から栄養を摂取。線虫の活動にともなって、水(木部樹液)の通路である仮道管から水分が抜けて無くなり、樹液が上昇できなくなる。感染後1〜2ヶ月で、水不足のため葉が変色し、樹幹内で線虫が増殖。  
4)カミキリ成虫は枯死したマツが放つ匂いに引かれ、枯損マツの樹幹に産卵。10日ほどで孵化して幼虫になる。
5)夏から秋にかけてマツ林で枯損が目立つようになる。
6)カミキリ幼虫は枯死したマツの樹皮下を食害して成長。
7)十分に食べた幼虫は材内にもぐり、蛹室を作り、翌年春に蛹になる。
8)材内にいた線虫は蛹室に集まり、カミキリ成虫の気門(空気を取り入れるために体表にある穴)に入り込み、カミキリとともに材の外へと旅立つ。
松枯れの仕組み

  松枯れを防除しなければマツ林は消滅
松枯れを引き起こすマツノザイセンチュウは北アメリカから侵入した侵入生物で市民の森に植林されたアメリカ原産のテーダマツは抵抗性が強いが、日本の在来種のアカマツは致命的に弱い。マツノマダラカミキリは日本在来の昆虫であるが、マツノザイセンチュウが侵入する以前は枯木や枯枝が少なかったので、マツノマダラカミキリの繁殖できる資源が少なく、虫の密度が低かった。マツノザイセンチュウが侵入後、マツノマダラカミキリがマツノザイセンチュウと結びづき、枯れ木が増えたため、繁殖を妨げるものがなくなり、爆発的に増える条件が整った。放置すれば被害は広がるのみ。マツ林を守るには人間による制御が必要!!


  マツ枯れ防除の基本戦略
   ①マツノマダラカミキリまたはマツノザイセンチュウを絶滅させる
これが可能なのは、島嶼など、周囲から隔離された場所だけです。鹿児島県沖永良部島で実証例があります。周辺に被害マツ林がある場合やマツ枯損木の移動(持ち込み)が考えられる場所では、不可能
   ②マツ林を抵抗性の強い品種に変換する
抵抗性家系でも感染して枯れることはあるものの、苗木を積極的に植栽すると将来の被害を減らすことができる
   ③マツノマダラカミキリの増殖率を抑える
天敵として、菌類、センチュウ、クモ、ダニ、昆虫、鳥類など多くが知られていますが、マツノマダラカミキリの数をコンスタントに制御できる有効な天敵は見つかっていない
   ④予防散布や伐倒駆除を継続することにより微害を維持する
被害量が少ない場合、微害に維持するための費用はそれほど多くかからない。狭い地域ならば予算的にも、防除労力、枯損木探査の確実性等からみても可能

現状では④の方法、また条件の整った場所では①が実現可能。②は長期的な防除費用や薬剤の使用を減らせる点で今後はより重要になると考えられる。③についてはいまのところ有効な方法はない。[「マツノマダラカミキリを振動で寄せ付けない方法」が③でしょうか]

  防除手順の実際
   微害(林野庁では枯損率が1%以下の場合を指す)を維持する
   手順1:「保全するマツ林」の決定
   手順2:現在の被害量を微害に誘導
   手順3:微害の維持
    ①周辺マツ林の樹種転換
    ②保全するマツ林における徹底的な駆除
     ●すべての枯損木を見つける
     ●見つけた枯損木は、すべて駆除対象とする
     ●駆除対象の枯損木からマツノマダラカミキリをすべて殺虫
    ③保全するマツ林の成立本数の確保
     予防散布だけで被害がゼロになった例はない
予防散布と伐倒駆除(薬剤散布)の組み合わせだけでは被害量を減らせることは難しく、枯損木の焼却やチップ化による特別伐倒駆除との併用が被害を減少させるにあたって効果的

  個別防除法 ①予防散布

  個別防除法 ②伐倒木の処理
   焼却
   破砕(チップ化)
   燻蒸
   薬剤処理

  個別防除法 ③効果を上げるには
   枯損木の見落とし対策
   駆除残し対策
   駆除率を上げる

  戦略を実行する手順
   実施前
   1年目-5年
   5年目以降
   周辺マツ林の取り扱いの重要性

  防除の成功例


マツ枯れの仕組みと防除② 1月2日

神戸大学大学院農学研究科黒田慶子教授の『マツの材線虫病』。

松食い虫や松枯れと呼ばれる現象の実体は、マツ材線虫病という伝染病である。北米からの侵入病害で、日本原産のアカマツ・クロマツは感受性が高く、感染すると大半が枯れる。過去の記録から、1905年に長崎で起こった集団枯死が最初の被害と推定されている。マツノザイセンチュウが病原体であることを徳重と清原(1971)が発見し、それから30年以上の研究を経て、発病および萎凋のメカニズムは、かなり細部まで説明できるようになった。近年では、抵抗性のアカマツやクロマツが選抜され、苗木の生産が行われている。しかし、「発病メカニズムは全然わかっていない」という誤解や、「線虫が枯らしているのではない」と、強く主張される場合が依然としてあり、防除推進の妨げともなっている。
発病のメカニズムについて基本的な事柄が理解されていれば、マツ枯れの防除はより効果的に実行できる。また、薬剤使用についても正確な判断が可能となる。
線虫はマツの柔細胞類の内容物を酵素分解して吸収するが、発病前の早い段階では摂食によって壊死[えし]する細胞はごく僅かであり、マツの組織を食い荒らして枯らすのではない。
「気体による通道阻害」が明らかになるまで、枯損理由は「線虫や松ヤニが仮道管や樹脂道に詰まるため」と説明されていた。まだこの説で説明されている事例がある。
 なお、材線虫病で枯れたマツの材に糸状菌類(カビ)が繁殖しているため、糸状菌を萎凋の原因とする説もあったが、糸状菌類単独でマツ枯れを起こすという説は否定された。
  感染から枯死までのプロセス 仮道管の排水
感染から枯死までのプロセス

なお、毒素で枯れるという説もあるが、樹木の細胞を多量に壊死させ枯死に至らせる毒性物質は発見されていない。「未知の物質」程度の意味合いで「毒素」という言葉が用いられて、誤解をまねくことがある。
  抵抗性のマツ
   1)抵抗性種の特徴
病原線虫とのつきあいがたった100年間という日本産のアカマツやクロマツは感受性が非常に高く、接種実験では70~90%が枯れる。一方、北米原産のテーダマツやストローブマツは抵抗性が高く、感受性により枯れる率が低い。ただし、100%枯れないわけではない。テーダマツでは、線虫はマツ組織に感染(侵入)できるが、樹幹内での移動は不活発で、増殖できない。仮道管の排水現象は局部的に起こるが、樹液流動は持続するので枯れにくいという結果が出ている。抵抗性発現のメカニズムとしては、線虫の移動阻害と増殖阻害の二つが考えられる。線虫の活動を妨げるような化学物質が組織に含まれている可能性はあるが、まだ検出されていない。
   抵抗性マツの利用に関する今後の課題
マツは10年生ぐらい成長するとマツ材線虫病に罹病しやすくなる。植栽地で罹病率調査を実施する必要があるが、単なる「枯死率調査」ではなく、材線虫病による枯死かどうか確認しなければ、有用なデータとはならない。
※池田武文「キャビテーションとエンボリズム ―渇きのシグナル―
    (シリーズ 森をはかる その8 『森林科学』24巻、1998年10月)

   樹木をめぐる水移動とキャビテーション[空洞現象]
樹木をめぐる水移動とキャビテーションの検出
   エンボリズム[通道(通導)阻害]の形成メカニズム
エンボリズムの形成メカニズム

※黒田宏之「マツ枯損防止のための新戦略構築」(『木材研究・資料』第35号、1999年)
    材線虫病に対するマツの抵抗性
材線虫病に対するマツの抵抗性
     抵抗性の強さ A>B>C>D
     アカマツC クロマツD テーダマツA

マツ枯れの仕組みと防除① 12月31日


マツを守る
  1.なぜマツを守るのか
  マツを守る6つの意義
 2.マツと人とのつながり
  日本の原風景
 3.マツが危ない
  海岸林の消失・衰退
  マツ枯れの推移
 4.マツ枯れの正体
  マツ材線虫病発生の謎
  発生のメカニズム
 5.マツ枯れ対策
  マツ材線虫病の診断
   ・樹脂の出方による診断 
   ・葉の枯れ方による診断 
  マツノマダラカミキリの駆除
   物理的・科学的駆除
    ①焼却駆除
切り倒した被害マツを焼却駆除
材の表面から内側に1㎝程度炭化させる
土壌が加熱されるとつちくらげ病の地中の休眠胞子が活動を始める引き金となるので、焼却はマツ林の外で行う
    ②破砕(チップ化)処理
材に潜り込んだ幼虫や蛹の大きさから、チップ材片の暑さは規則で6㎜以下
幼虫は2㎝ほどの細い枝にも潜り込んでいるので、細い枝も残さず破砕
    ③土中処理
切り倒した被害マツを土の中に埋めて処理
地下15㎝以上の深さに埋めて土をかける
    ④薬剤散布
切り倒した被害マツの枝を払い、幹を玉切りにして駆除薬剤を散布
「秋期駆除」(~10月末頃)幼虫が樹皮下にいるか、穿入孔道を掘っている
「冬期駆除」(10月末~3月末)
「春期駆除(3月末以降)成虫が羽化脱出するまでに
    ⑤くん蒸剤処理
縦1m横2.5m程度を浅く掘り、被害マツの切り払った枝を下に敷き、その上に玉切りした幹を高さ90㎝ほどに積み重ね、全体をビニールシートで密閉し、薬剤を用いてくん蒸、7日間放置して処理
  生物的駆除
   ①天敵微生物(カビの1種ボーベリア菌をマツノマダラカミキリの幼虫に感染させる)
   ②天敵昆虫(オオコクヌスト、サビマダラオオホソカタムシが有望)
   ③天敵鳥類(キツツキ類)
  6.マツ材線虫病の予防
   マツノマダラカミキリの成虫を退治すること
空中散布(航空機を利用する特別防除)
貴重な野生動植物の生息地又は生育地や周辺に病院や学校、水源などがある森林ではできない。また、住宅、公園、レクリエーション施設、水道、鉄道等の周辺の森林やタバコや桑、お茶などの栽培地、畜産、養蜂、かいこなどに影響が及ぶおそれがある場合、水産生物、漁場、保護水面などのある場合などについても、地域住民からの要望があり、かつ、地域住民等関係者の意向を十分確認でき、これらの環境に悪影響を及ぼさないよう安全かつ適切な防止対策を講ずることができなければ特別防除という手法はできない。
地上散布(ポンプや送風散布装置、スプリンクラーなど)
  7.抵抗性マツの利用と樹種転換
抵抗性マツの利用
 マツノザイセンチュウが樹体内に侵入しても枯れないマツ
樹種転換
 しっかりと守る必要があるマツ林の周辺にあり、そのマツ林へ病気をうつす恐れのあるマツを取り除いて、広葉樹などの林に変えること。
 マツノマダラカミキリは、2km以上はなれているマツ林にはほとんど移動できないことがわかっている。
  8.マツ林の手入れ
・手入れされたマツ林は、枯れるマツの本数が少ない。
・マツ林をきれいにして、そこに生えているマツを健康に育てることにより、被害を少なくしようとするもの。
・燃料が薪や炭から石油やガスに代わるとマツ林は放置され荒れるにまかされてきた。そのため、マツ林には草やほかの樹が生えて藪化、枯れたマツの樹もそのまま放置されることが多く、マツノザイセンチュウを運んで病気をひろげるマツノマダラカミキリの大発生源となって、病気がひろがった。
  昔から行われている松葉かきや下草刈りなどを続けているマツ林では、それをやめてしまったマツ林に比べ、枯れるマツの本数が少ないことがわかってきた。
 マツ林の手入れとマツ材線虫病の被害の関係は、まだはっきりとした答えをだすことはできないが、これからの研究によってマツ材線虫病に負けない強いマツ林を育てていくマツ林手入れの方法が見つかることが期待される。

マツノマダラカミキリを振動で寄りつかせない方法 12月28日

12月23日の『朝日新聞』夕刊に「ブルブル木揺らし…松枯れ害虫優しく撃退 天敵と勘違い」という記事が掲載されていました。
 松枯れを引き起こすのにかかわる「マツノマダラカミキリ」を駆除する新たな方法を、森林総合研究所(茨城県つくば市)などのグループが開発した。鳥や動物などの天敵が歩く時の振動をまねて松の幹を揺らすと逃げ出すという。殺虫剤を使わない環境に優しい方法だ。
 研究所の高梨琢磨・主任研究員によると、マツノマダラカミキリは1秒間に100回程度の振動にとても敏感だという。6本の足の太ももに木から伝わってくる振動を感じる感覚器官があり、天敵のキツツキなどが近づくと感じる。
 研究チームは数年前から、この振動を与える円筒形の装置(直径約5センチ、長さ約20センチ)を国内メーカーと開発してきた。松の幹にベルトをつけ、カミキリ10匹の様子を調べた。
 2時間後、装置を取り付けなかった幹にはカミキリはそのままいたが、取り付けた幹では平均4割が逃げた。また、松の丸太に一晩メス6匹をつけたところ、振動を与えなかった丸太には産卵したが、振動を与えると全く産卵しなかった。
 カミキリが松の樹皮を食べると、そこからカミキリ体内にいた線虫が侵入し、根からの水を通す管を詰まらせて松枯れが起きる。被害は全国に広がっている。殺虫剤でカミキリを駆除する対策が主流だが、環境への影響が心配されている。
 高梨さんは「松1本に装置1個で十分な効果があり、市街地の公園などでも安心して使える。数年以内に安価で小型な装置を実用化させたい」と話す。振動による駆除法はトマトの害虫「コナジラミ」などにも効くとみて、開発を進めている。(三嶋伸一)
         [朝日新聞DIGITAL 2018年12月23日08時48分
ネットで検索してみると、11月10日に共同通信社が「松の害虫、振動で寄りつかせず 薬剤減らす対策に新手法」を配信し、『沖縄タイムス』、『京都新聞』、『佐賀新聞』など地域紙が記事を転載し、『毎日新聞』は11月22日に「森林総合研究所 小刻みの振動、松の害虫回避 新手法開発」をデジタル版に掲載していました。松枯れの原因として記事にある「根からの水を通す管を詰まらせて」とか「松が水を吸えなくなる」とかの説明でよいのでしょうか。松枯れ病は「マツの体内で線虫(マツノザイセンチュウ)が増殖し、水を運ぶ仮道管に障害が起こることで、マツが枯れてしまう」病気ですが、そのメカニズムについて再度、学習してみたいと思いました。

マツノマダラカミキリを寄せ付けないで産卵を抑制して増殖率を抑える新手法
農薬を散布することでカミキリを駆除する方法は、周囲の生物にも影響を与え、生態系を破壊してしまうことが懸念されています。そこで森林総合研究所の高梨琢磨さんたちが着目したのが、カミキリがマツの木に伝わる天敵の振動を察知して逃げるという行動です。カミキリが脚にある感覚受容器で振動を感知して不動化するメカニズムが明らかになり、天敵が発する振動をマツに与えることでカミキリを駆除する小型の振動発生装置を数年間かけて国内メーカーと開発、実用化の目途が立ったようです。


※日本木材学会 組織と材質研究会 2014年秋季シンポジウム『樹木と昆虫のインタラクション ̶ 樹幹加害の多面的理解ー 』(2014年9月18日)

荻上チキ Session-22(TBSラジオ)の2014年10月放送「積水化学の自然に学ぶものづくり」(ゲスト:高梨琢磨さん)①「超音波とはどういうものなのか」、②「なぜ、昆虫が振動・超音波を発するのか?」、③「松枯れを起こす害虫マツノマダラカミキリ」、④「虫よけ技術の秘密兵器」

※森林総合研究所研究成果2017年紹介「振動でカミキリムシが不動化するメカニズムを解明

「林業に新規参入する労働者に係る労働災害防止対策推進事業」報告書目次 12月27日

2013年度厚生労働省委託事業「林業に新規参入する労働者に係る労働災害防止対策推進事業」報告書』(株式会社森林環境リアライズ、2014年3月)は全7章、本文127頁ですが、イラスト・写真類も多数掲載されて読みやすい報告書です。「第5章 実地検証後の報告書」(84~110頁)については節・項・目まで詳細な目次を紹介しています。
 なお、前年に発行された『林業に新規参入する労働者のための安全な作業のテキスト』、『安全作業に必要な作業計画の作成支援』(株式会社森林環境リアライズ、2013年1月)は、株式会社森林環境リアライズHPの「[厚生労働省委託事業]林業に新規参入する労働者に係る労働災害防止対策推進事業」ページの「林業に新規参入する労働者のための「安全な作業のテキスト」及び「安全な作業に必要な作業計画書の作成支援」についてからダウンロードできるのであわせて目を通してもらいたいと思います。
平成25年度厚生労働省委託事業報告書表紙
まえがき
 森林林業における労働災害の発生状況は、中長期的にみると減少傾向にあるものの、他産業に比べると発生率が高い水準で推移しており、災害の程度も死亡災害など重篤な災害の割合が高い状況にある。また、長引く木材価格の低迷の中で生産活動による利益を上げるため、コスト低減や高い労働生産性を求めるあまり、安全対策が十分講じられず労働災害の危険性が高まりかねない状況にある。
 近年の死亡災害の内訳をみると、①間伐作業中における災害、②不適切な方法による「かかり木」処理中における災害、③複数の林業労働者の近接作業が原因の災害が多くなっている。また、林業機械の普及等により、車両系の林業機械の転倒、転落や周囲の労働者を巻き込む災害が多発している。
 本事業は、林業に新規参入する労働者に係る労働災害防止対策推進事業の一環として、安全性能の高い保護具着用の徹底等の諸外国の先進的な林業労働災害防止対策の調査・検討と、検討結果に基づく対策の実地検証の実施により、林業における労働災害防止対策の推進をはかることを目的に取りまとめた。
章立て
1. 事業の概要
2. 事業の実施計画
3. 先進的な林業労働災害防止対策の検討
4. 検討結果に基づく対策の実地検証
5. 実地検証後の報告書
6. 留意事項およびその他
7. 林業機械等の検討課題の抽出と検討方針等について

詳細目次
1. 事業の概要
 1 . 1 事業の目的と内容
2. 事業の実施計画
 2 . 1 事業の実施方針等
 2 . 2 事業項目等
 2 . 3 各項目の実施内容
 2 . 4 事業実施に伴う提案事項
3. 先進的な林業労働災害防止対策の検討
 3 . 1 林業作業に伴う安全な服装と保護具
 3 . 2 チェーンソーによる安全な伐木作業指針
 3 . 3 かかり木処理作業
 3 . 4 集材作業
 3 . 5 林業労働災害防止対策検討委員会
4. 検討結果に基づく対策の実地検証
 4 . 1 実地検証対象事業場の選定
 4 . 2 実地検証用調査票作成
 4 . 3 実地検証の実施
  1) 実地検証事業場の事業規模等
  2) 実地検証事業場の林況等
  3) 実地検証事業場の作業システム等
  4) 実地検証概況
 4 . 4 実地検証結果
  1) 安全な服装と防護具の装備
  2) 手工具の管理とチェーンソーの大きさ等
  3) 伐木作業に伴う安全確保およびチェーンソー取り扱いの基本
  4) 欧州等の安全な伐木方法の取組み
  5) 造材作業に伴う安全確保および枝払いの基本
  6) かかり木処理作業の実態

5. 実地検証後の報告書[84~110頁]
 5 . 1 安全な作業の基本
  1)林業作業に伴う安全な服装と保護具の装着
   (1)作業用衣服
   (2)防護・防振手袋
   (3)安全靴等
   (4)チェーンソー等林業作業のための防護衣等
   (5)保護帽・保護網・保護眼鏡および防音保護具
    参考:保護具の性能と切断に関する保護性クラス

  2)手工具の管理と使用方法
   (1)手工具の種類と主な作業項目
   (2)林業機械・器具の種類と主な作業項目
   (3)機械・器具の整理整頓と点検整備
   (4)安全な持ち運びと現場における管理
    参考:クサビの種類
    参考:トビ・ツルの使い方

 5 . 2 伐木・造材作業
  1)伐木作業に伴う安全の確保
   (1)伐木作業前の準備
   (2)伐木作業に伴う立入り禁止区域および伐木者の退避

  2)チェーンソー取り扱いの基本
   (1)チェーンソー作業時の立入禁止区域
   (2)チェーンソー取り扱いの基本

  3)伐木作業の基本
   (1)受け口切り
   (2)追い口切り
   (3)クサビの打ち込み
   (4)つるを適切につくる
   (5)伐木

  4)先進的なチェーンソー伐木技術の取り組み
   (新規就労者の安全なチェーンソーによる伐木技術)
   (1)取り組みの目的
 ① チェーンソー用防護ズボンの安全性は、ガイドバーが長いと防護クラスに対応した安全性は保障されない。このため、ガイドバー45cm 程度のチェーンソーで伐木する技術の体系化が必要である。
 ② 日本国内ではクラス1(最低限の性能)の防護ズボンが広く普及しているため、ガイドバー45cm 程度のチェーンソーの使用が望ましい。
 ③ ガイドバーが短く重量が軽いチェーンソーは、取り扱いやすく安全な作業が行える。また、重量が軽い出力3.5kW程度のチェーンソーは、燃料消費が少ないので手持ち資材も軽いなど労働負荷の観点からも、ガイドバーが短いチェーンソーの使用が望まれる。
 ④ 特に、新規就労者はチェーンソーの取り扱いは未熟のため、取り扱いやすいガイドバーの短いチェーンソーの使用が望ましい。
   (2)20 ㎝以上の伐木の一般的な伐木方法(オリエンテーションカット)
 オリエンテーションカットは、近年、ヨーロッパの林業専門作業員の伐木方法のスタンダードとして指導教育される方法である。受け口、つる幅・高さ、追い口切りの基本は、国内の基準と同様である。
 伐木方法の特徴は、伐木の安全作業を向上させるため、伐木方向づけ(オリエンテーション)を確実にするために、【①受け口の直角方向の側面を切り落として、つる面と側面を四角に整形して伐木する。】【②つるの幅と高さを厳守させるために、切り落とした側面につる幅と高さを木材チョークなどで(熟練者はチェーンソーの刃を使用)印をつけて、その目印を基準に伐木する。】
 なお、側面の切り落としは、国内の一般的な根張り切り(根元切り・斧目)に類似するが、オリエンテーションカットは、つる幅と高さを基準に幹部を四角に整形する作業であり、根張り切りとは異なる方法である。
   (3)伐木径直径約20 ㎝以下の場合(オープンフェイスノッチカット)
 オープンフェイスノッチカットは、ヨーロッパや北欧における小径木(胸高直径20cm以下)の伐木方法として広く普及する。国内の小径木の切捨て間伐等の伐木は、簡易な受け口を取り、一気に伐木することが多い。このため、かかり木の発生が多く、径級が細いことから、投げ倒し(あびせ倒し)や元玉切りを安易に行うことが散見され、重大事故の招く要因となっている。
 オープンフェイスノッチカットの特徴は、伐木時に人が押してコントロールできる20cm 以下の径級の立木のかかり木を避けるため、正しい伐木方向に倒すことを目的とした技術である。
 なお、オープンフェイスノッチカット(広角受け口)は、「伐木造林業務従事者必携-安全衛生教育用テキスト-(林業・木材製造業労働災害防止協会)」により、伝統的受け口伐木方法より安全度が高く、高い精度で伐木方向が決まる。また、元口の跳ね上がりと制御不能な動きを減らすことが出来ると紹介される伐木方法である。
   (4)腐朽木の伐木
 伐根部分が腐朽している木および凍裂などの被害木の伐木は、つるやクサビが均一に機能せず伐木方向が変化したり、伐木中に幹が裂けたりして非常に危険である。

   (5)伐木に伴う安全作業のまとめ

  5)造材作業の基本
   (1)造材作業に伴う安全の確保
   (2)枝払い作業の基本【大径木および太い枝の樹種(広葉樹)の場合】
   (3)枝払い作業の基本【小径木および細い枝の樹種(針葉樹)の場合】

  6)玉切り作業の基本
   (1)作業の基本
   (2)片持ち材、橋状の材の玉切り
   (3)クサビの使用例
   (4)小径木の玉切り方法
   (5)中~大径木の玉切り方法

 5 . 3 かかり木処理作業
 かかり木の処理は伐木作業の中でもっとも危険な作業である。かかり木処理については「かかり木の処理の作業における労働災害防止のためのガイドライン」を基本にして、事前に適切な処理方法を学び、適切な機械器具を使用して処理する。
  1)安全なかかり木処理作業
   (1)事前調査と準備
   (2)確実な合図と退避
   (3)適切な処理方法
    参考:欧州のかかり木処理方法

  2)かかり木処理の禁止事項
   (1)かかられている木の伐木の禁止
   (2)投げ倒し(あびせ倒し)は禁止
   (3)かかっている木の元玉切りは禁止
   (4)かかっている木の肩担ぎは禁止
   (5)かかられている木の枝切りは禁止

  3)止むを得ない場合の危険区域の設定
(1)かかり木が発生した場合は、できるだけ速やかに処理する。
(2)やむを得ず放置する場合は、危険区域に他の作業者が立ち入らないよう、標識の掲示、縄張りなどの立入禁止の措置を行う。
 5 . 4 集材作業
  1)架線集材
   (1)作業開始前の点検
   (2)安全な荷かけの方法

  2)安全な荷かけ・荷はずし作業の方法
(1)架線集材作業では合図と退避が必須条件で、指差し呼称して運転者に合図する。
(2)張力がかかっているときのロープの内角作業は行わない。
(3)同一斜面の上下作業は行わない。半地引き集材では斜面上部から、転石・切り捨てられた端材などが落下するため注意する。
(4)引戻索の台付け索が切れた場合、ワイヤーはバネのように跳ねて転石・枝・切り捨てられた端材を跳ね飛ばすので注意する。
(5)ロージングブロックが停止してから荷かけを行う。
(6)荷の巻上げ後、すぐに主索の直下に入らない。また、主索の下の荷の落下などのおそれのある箇所では作業しない。
  3)車両系集材
   (1)作業開始前の点検
   (2)安全な荷かけ作業の方法
   (3)無理な荷かけはしない
   (4)集材作業の注意事項
   (5)荷かけ作業の禁止事項
    参考:チェーンおよび可動式チョーカーフック

6. 留意事項およびその他
 6 . 1 事業効果の把握
  1) アンケート様式
  2) アンケート結果

7. 林業機械等の検討課題の抽出と検討方針等について
 7 . 1 林業機械の安全基準及び安全な作業
 7 . 2 伐木、造材等の見直しについて
 7 . 3 路網整備関係の安全作業
 7 . 4 木質バイオマス燃料生産機械の安全基準および安全な作業について
 7 . 5 林業機械等の検討課題のロードマップ

※『東京都保全地域保全活動ガイドライン=東京の自然環境を次世代に伝えるために=』(1918年)をはじめ、里山保全活動や作業に関わるガイド、マニュアル類は自治体から種々発行されています。森づくり安全技術・技能全国推進協議会からは『森づくり安全技術マニュアル』(基本編・動力機械編・応用作業編・指導編)が発行されており、1冊2,000円の寄付で入手できます。
 市民の森保全クラブの現場作業はチームで行っています。チェンソー、刈払機を使っている、使っていないにかかわらず、全会員が「無理なく・楽しく・安全に」里山保全活動が続けられるように、これらのテキストを自習するとともに集団で研修する機会を設けて認識を深め、現場活動で体得していきたいと思います。
※「保全作業の安全確保」(2018年12月22日記事)


平田美紗子『人to木』 12月13日

林業漫画『お山ん画』、樹木漫画『りん子の絵日記』に続いて平田美紗子さんの『人to木 人と木をつなぐ仕事』(林野庁林野図書資料館発行)を読みました。いずれも林野庁の「イベント情報」のページからダウンロードして読むことができます。
人と木event-17

人to木』目次
1.木地師
2.原木しいたけ栽培
3.炭焼き 
 人to炭(里山の萌芽更新、暮らしの中の炭、BBQと炭、備長炭と花火)
4.紙漉き
5.林業
6.原木市場
7.製材
8.CLT
9.プレカット
10.工務店
巻末.林業作業説明図
1.植付
2.下刈り
3.除伐・つる切り
4.枝打ち
5.間伐
6.主伐
7.造材・搬出
8.地拵え

平田美紗子『お山ん画』・『リン子の絵日記』 12月10日

エコプロ2018の会場で手にした平田美紗子さんの林業漫画『お山ん画』と樹木漫画『りん子の絵日記』(林野庁林野図書資料館発行)。
PC100020

お山ん画』目次
1.山歩きの基本は足下から
2.コンテナ苗
3.注意動物
4.夏の林業作業 下刈りとつる切り
5.鹿害と向き合う
6.魅惑のきのこワールド
7.きのこは贈り物
8.炭焼き
9.間伐しよう
10.冬の山を行く
11.スプリングエフェメラル
12.CLT工法
13.伐木チャンピオンシップ
14.ツキ板[突板]

リン子の絵日記』目次
1.サクラ、2.コナラ、3.カエデ、4.スギ、5.ヒノキ、6.マツ、7.クスノキ、8.ヤマモモ、9.イチョウ、10.ケヤキ、11.トチノキ、12.シラカンバ、13.ツバキ、14.ヒイラギ、15.スダジイ、16.キリ、17.シュロ、18.ウメ、19.フジ、20.アオキ、21.サンショウ、22.ツツジ、23.ユズ、24.クワ、25.クヌギ、26.カキノキ、27.エノキ、28.ソテツ、29.ブナ、30.カシワ

能條歩『あなたにもできる! 環境教育・ESD』 12月6日

能條歩『自然体験教育ブックレット② あなたにもできる! 環境教育・ESD』(NPO法人北海道自然体験活動サポートセンター、2017年)の第1章を読みました。

はじめに
・3つの公平
・SDGsからのバックキャスティング
・3つのレベルの生物多様性と4つの危機
・人知を超えた時空概念
・“循環型社会”
の5つの視座のいずれかに関連付けて授業や活動を実施すれば、それは環境教育

~この本をお読みになる方ヘ~
視座とは
①3つの公平 世代内・世代間・種間の公平
②3つのレベルの生物多様性と4つの危機 遺伝子・種・生態系の多様性とそれらを脅かす危機
③“循環型社会” 生態系の循環システムをかく乱しない自然と調和した社会
④SDGsからのバックキャスティング
 持続可能な未来づくりに向けて2030年までに解決しようと国際合議した課題からの目標設定
⑤人知を超えた時空概念 畏敬の念とそれにつながる自然のスケール感
という「自然や環境を考える時のものの見方」のこと


第1章 持続可能な未来のための教育
 第1の視座 3つの公平
  1-1 持続可能な未来のための教育(ESD)とは?
●「持続可能な開発」は、将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、現在の世代のニーズを満たすような社会づくりのこと
●そのために、「環境の保全」(前提)「経済の開発」(手段)「社会の発展」(目的)を調和の下に進めていくことが必要
●取組にあたっては、「環境保全や資源の過剰利用の抑制の視点」「貧困の克服」「保健衛生の確保」「質の高い教育」「性・人種による差別の克服」等への配慮が必要
●一人ひとりが、世界の人々や将来世代、また環境との関係性の中で生きていることを認識し、行動を変革することで「持続可能な開発」を目指すための教育がESD
●ESDの目標は、「すべての人が質の高い教育の恩恵を享受し、持続可能な開発のために求められる原則、価値観、及び行動が、あらゆる教育や学びの場に取り込まれ、環境、経済、社会の面において持続可能な将来が実現できるような行動の変革をもたらすこと」
「ESDは特定の教育内容を指すものではなく、さまざまな活動によって到達すべき共通のゴールや理念である」(10頁)

  1-2 持続可能性と3つの公平
   環境(配慮)行動のための指針
①世代内の公平:いわゆる南北問題のような、現代に生きる同じ世代の中にある不公平を解消することにつながるか
②世代間の公平:将来世代と現在の私たちを比較して、将来世代に不利益をもたらすことはないか
③種間の公平:ヒト以外の生物に対して著しい不公平を生じさせることにつながらないか
   例:第1の視点からみた原子力発電と3つの公平
     ①世代内で公平か? ②世代間で公平か? ③種間で公平か?
     安全に稼動できるかどうかという尺度だけで判断してはいけない(15頁)

 第2の視座 3つのレベルの生物多様性と4つの危機
  1-3 “生態系”とは?
   “自然”と“環境”と“生態系”
   “生態系”を理解するために
    自然…ヒトの意志とは関係なく存在するモノや状態の全体像のこと
    環境…私たちと応答的関係(つながりや関係性)があると意識されているモノや状態のこと
    生態系…「物質やエネルギーが循環しているまとまり」という「動的な状態」のこと

  1-4 生物多様性とは?
   5つの基本戦略(「生物多様性国家2012-2020」)
    ①生物多様性を社会に浸透させる
    ②地域における人と自然の関係を見直し・再構築する
    ③森・里・川・海のつながりを確保する
    ④地球規模の視野を持って行動する
    ⑤科学的基盤を強化し、政策に結びつける
   3つのレベルの生物多様性と4つの危機
    遺伝子の多様性 種の多様性 生態系の多様性

   4つの危機
第1の危機:人間活動や開発が直接的にもたらす種の減少、絶滅、あるいは生態系の破壊、分断、劣化を通じた生息・生育空間の縮小、消失など
第2の危機:生活様式・産業構造の変化、人口減少など社会経済の変化に伴い、自然に対する人間の働きかけが縮小撤退することによる里地里山などの環境の質の変化、種の減少や生息・生育状況の変化など
第3の危機:外来種や化学物質など人為的に持ち込まれたものによる生態系のかく乱
第4の危機:地球温暖化によってもたらされる種の生息・生育地の縮小、消失等の影響

 第3の視座 “循環型社会”
  1-5 再生可能か不可能か~素材(資源)とエネルギーの選び方~
   “循環型社会”(天然資源の消費の抑制を図り、もって環境負荷の低減を図る社会)
「“大量生産・大量消費・大量廃棄”型の経済社会から脱却し、生産から流通、消費、廃棄に至るまで物質の効率的な利用やリサイクルを進めることにより、資源の消費が抑制され、環境への負荷が少ない“循環型社会”を形成する」(環境省「循環型社会形成推進基本法(2000年)の趣旨」)

「天然資源の消費の抑制を図り、もって環境負荷の低減を図る社会」(環境省「環境・循環型社会・生物多様性白書」)

   再生可能か不可能か
    再生可能エネルギー:「太陽・地球物理学的・生物学的な源に由来し、自然界によって利用する以上の速度で補充されるエネルギー全般」(IPCC「再生可能エネルギーと気候変動に関する特別報告書」)

   3R
    Reduce(優先度1)廃棄物の発生抑制(ゴミになるものを生み出さない)
    Reuse(優先度2)資源や製品を再利用する
    Recycleマテリアル・ケミカル(優先度3)
     再使用が不可能なものを原料として再生利用
    Recycleサーマル(優先度4)
     再使用が不可能で原料としての再生利用も不可能なものを焼却して熱エネルギー源として利用
    埋立処分(廃棄物) 最終処分(適正処分)これ以上の使用が不可能となり循環から外れたもの
……生態系から人の社会に持ち込まれたものは、いずれ社会の循環の枠の中から出て行きますが、その際には生態系の循環をかく乱しないようにしなければいけません。また、生態系のかく乱が予測される不要物質については「生態系からも人間社会からも隔離して管理する」ようにしなければなりません。物質やエネルギーを生態系から過剰に取り込むことは、すなわち排出したり隔離したりしなければいけない物質を生み出す可能性を高めることにつながります。ここに、資源を社会に取り込む段階でのReduceがもっとも重要である理由があります。「持続可能な社会作り」を考える時には、社会の中でのモノの循環だけをイメージするのではなく、生態系も含めた範囲で負荷をかけない循環を成立させる「真の循環型社会」を考えなければいけないのです。(30~31頁)

  1-6 ライフスタイルの転換~「地球にやさしい」ってどんなこと?~
   NeedsとWantsの区別
    必要不可欠なもの=Needs
    (生活の質を下げないために)あると嬉しいもの=Wants
    Wantsにあたるものを、「どうしてもなければいけないか?」と見直してみる

   ライフスタイルの転換
    「地球にやさしい」=「自然の循環と調和する行動」
    「再生可能か不可能か」
    「リサイクル可能か不可能か」
    「NeedsかWantsか」
エネルギーや資源の消費量を減らしたり、自然の循環をかく乱しないようにしたりすることへの理解を深めて行動につなげる活動は環境教育(ESD)であり、持続可能な社会づくりのための教育である(35頁)

「森林を脅かす太陽光発電を考える」講演会に参加② 12月2日

埼玉県生態系保護協会東松山・鳩山・滑川支部主催『森林を脅かす太陽光発電を考える ―遊休地・休耕地・山林の活用法― 』に参加①の続きです。

第1部講演:辻村千尋氏(日本自然保護協会保護室室長)「急増するメガソーラー問題」
・各地でメガソーラー開発が軋轢を生んでいる
・現状では太陽光発電事業は環境影響評価法の対象事業となっていないので、環境アセスをする必要がない。
・自治体独自で太陽光発電事業を環境アセスの対象とする条例をつくっているところもあるが、国と同様に対象としていない自治体も多くある。
・もともと森林だった場所を太陽光発電のために皆伐して違う環境に変化させることは、本来、地球温暖化という生物多様性への危機に対しての対策のはずであったものが、開発という行為による生物多様性への新たな危機になってしまうという本末転倒の事態を生み出している。
・メガソーラー開発は、環境影響評価法の対象とするべきである。日本自然保護協会は環境影響法の抜本的改正が必要だと考え、環境省や立法府への働きかけを行っているが、すぐには実現できない。
・そこで、自治体に対して、開発に際しての地域住民との合意形成プロセスを義務化する条例を制定するよう働きかけをすることを提案する。
(出席者に配布された『自然保護』№566、2018年11・12月号掲載辻村「急増するメガソーラー問題」から)

第2部講演:中安直子(日本ナショナル・トラスト協会総務部長)「ナショナル・トラスト運動」
・アマミノクロウサギ・トラストについて
  アマミノクロウサギ・トラスト・キャンペーン経過報告その1
  アマミノクロウサギを守る特別キャンペーン 目標達成!


※「地域自然資産区域における自然環境の保全及び持続可能な利用の推進に関する法律」(「地域自然資産法」、2015年4月1日施行)
地域自然資産区域における自然環境の保全及び持続可能な利用の推進に関する法律(平成27年法律85号)(以下「地域自然資産法」)は、地域における自然環境の保全や持続可能な利用の推進を図るため、入域料等の利用者による取組費用の負担や寄付金等による土地の取得等、民間資金を活用した地域の自発的な取組を促進することを目的として、議員立法によって平成26年6月25日に制定され、平成27年4月1日に施行されました。
この法律により、都道府県又は市町村は、協議会を設置し自然環境の保全及び持続可能な利用の推進に関する地域計画を作成することができ、その計画に基づいて、入域料等を経費として充てて行う「地域自然環境保全等事業」や、寄付金等による土地の取得等(自然環境トラスト活動)を促進する「自然環境トラスト活動促進事業」を行うことができます。
都道府県又は市町村が民間団体や土地の所有者等の多様な関係者と合意形成を図り、このような取組を進めることで、地域社会の健全な発展にもつなげていくことを目指しています。

※※日本ナショナル・トラスト協会「地域自然資産法」に関する意見書(2014年5月14日)
平成26年5月14日 自由民主党環境部会長 片山さつき様
「地域自然資産区域における自然環境の保全及び持続可能な利用の推進に関する法律案」に関する意見書
     公益社団法人日本ナショナル・トラスト協会会長池谷奉文
日本の自然環境保全に関する先生の多大なご貢献に、平素敬服しておりますことを、先ず述べさせていだきます。
さて本日は、公表されましたトラスト活動と関係がある標記法律案について、懸念する点があり、意見を述べさせていただきます。
わが国のトラスト活動は、1964年、鎌倉・鶴岡八幡宮の裏山に、宅地造成が計画されたことをきっかけとして、鎌倉市民が立ち上がり、土地確保のための募金活動を開始したのが始まりといえます。その後、知床や天神崎、小清水、柿田川などにおける活動に引き継がれ、現在では全国50以上の地域で、トラスト活動が展開されるに至っています。わが国のトラスト活動は、行政が先ず責任をもち「税金」で自然環境等の保全を行うべきところを、それが難しい場合に、市民が中心となって必死に「寄附金」を集め、持続可能な社会の創造に資するため、危機にある自然環境等を買い取り等により守ってきた取り組みということができます。
鎌倉の大佛次郎氏や天神崎の外山八郎氏をはじめ、地域で懸命にトラスト活動に取り組んできた先駆者の精神を忘れず、この大切なトラスト活動を進めていくことが、これまでの50年の歴史を振り返り、いま、改めてそれが私たちの重要な使命と考えます。
こうしたなか公表されました標記法律案ですが、地域にとって重要な自然環境については、他の社会資本同様に、まずは「税金」でその保全をしっかりして進めていくことを地方自治体に強く促すべきところを、逆に、市民等からの「寄附金」で保全していくことを地方自治体に促す法律となってしまっているなど、問題がいくつかあります。
この法律が制定されますと、長年にわたり努力してきた地方の各民間団体において、寄附金集め及び土地取得が困難となり、わが国における真の意味でのトラスト活動が阻害されるようになることが強く懸念されます。
このため、(公社)日本ナショナル・トラスト協会として、以下の通り意見を述べさせていただきます。
長年、トラスト活動に取り組んでまいりました私たちの意見をお汲み取りいただき、わが国のトラスト活動を推進する法律としていただきますよう、切にお願い申し上げます。

  記
1.トラスト活動とは、主として民間団体が行う活動であるという点を明確にすること
2.地方自治体に対して、他の社会資本同様に先ずは「税金」で、良好な自然環境の保全・再生(土地の取得を含む)に取り組むべきことを明確に示すこと
3.地方自治体に対してトラスト活動基金の設置をことさら促している第19条の規定を削除する、又は、
「自然環境トラスト活動基金」との名称を「地域自然資産区域基金」とすること
4.自然環境トラスト活動により取得した土地(良好な自然環境)については、人の利用よりも自然環境の保全・再生が優先されること、かつ、永久に保存されるものであることを明確に示すこと   以上

※※「朝日新聞「私の視点」に関する補足」(田中俊徳さんのブログ『熱帯京都』、2014年6月21日)
今日の朝日新聞朝刊「私の視点」に私のオピニオンが掲載されました。さる6月18日に成立した「地域自然資産区域における自然環境の保全及び持続可能な利用の推進に関する法律」(以下、自然資産法と呼びます)に対する批判です。この法律は入域料の徴収と自然環境トラスト活動の推進から構成され、後者については、すでに一部の自然保護団体から批判があり、最低限の修正が見られたので、入域料について懸念を表明しました。
新聞特有の字数制限・分かりやすさ優先といった制約から、十分に意を尽くせていない部分があるので、ここで補足します。
まず、掲載された本文の要点は次でした。
・自然資産法は規制がセットになっていないので、過剰利用や混雑といった問題を解決することができない。
・自然公園法の利用調整地区制度やエコツーリズム推進法の特定自然観光資源といった課金ができ、かつ、規制もセットになった優れた制度があるのだから、これらの活用を検討すべき(ただし下記で補足するように、手数料と入域料は少し性質が違います。また、厳密には、エコツーリズム推進法の特定自然観光資源に指定するだけでは課金はできず、条令の制定とセットでなければばなりません。これらは字数制限から加えることができませんでした)
・ただでさえ、日本の自然保護制度は多くの省庁にまたがって合意形成が困難な面があるのに、地方自治体が自然資産区域を定めて入域料の徴収を始めると、利害関係がさらに複雑化し、過剰利用をはじめとする諸問題に円滑に対応できない可能性がある。
・規制をともなわず、入域料の徴収のみが先走ると、財政難の自治体にとっては、利用促進のための制度になる可能性がある。
いくつか論点を補足したいと思います。
第一に、自然資産区域の指定が、当該区域の自然環境保全を行う資金の捻出を受益者負担で行うということを目的にしているのであれば、新たな法を作らずとも、地方税法に定められる「法定外目的税」という制度を使えば、事足りる話です。実際に、岐阜県の乗鞍環境保全税や渡嘉敷村の環境協力税などが条例によって定められています。また、法律に頼るまでもなく、現在、日本中で「協力金」や「募金」といった形で入域料が実質的に徴収されています。これら任意の入域料は、それなりに課題を抱えていますが、使途の柔軟性が高いという点では、自然資産法に定められる「入域料」よりもずっとましです。なぜ、あえて入域料徴収のための法律を作る必要があるのか、より詳細な説明が欲しいと思います。場合によっては、様々な主体の乱立による法定・非法定を問わない二重三重の徴収が生じる可能性もあります。
なお、自然公園法の利用調整地区制度によって課金できるのは「事務手数料」であり、自然資産法に定められる「入域料」とは性質が異なります。自然公園法の「事務手数料」は、その名の通り、入域にかかる事務手続きの諸費用にしか用いることができず(例えば人件費や印刷代)、登山道の整備やトイレの整備等に用いることは、現在の内閣法制局の解釈ではできないと言われています。この点において、自然資産法の「入域料」は、使途を定めない点に魅力があるわけです(ただし、繰り返す通り、現在各地で徴収されている協力金や環境協力税の方がずっと使途が自由)。
しかし、注意しなければいけないのは、自然公園法に定められる利用調整地区制度を導入している地域(知床五湖や西大台)の経験からすると、実のところ、人件費や印刷代など必要な経費を支払うと、もはや登山道の整備等に使えるお金はありません。例えば、西大台で徴収される手数料は1000円、知床五湖は500円ですが、前者は恒常的な赤字、後者も年度によって赤字になっています。
つまり、たとえ、他の地域が「入域料」なるものを徴収してみても、大方は人件費や必要経費に消えて、残っても雀の涙程度の可能性が高いと言えます。ということは、そもそも、入域料の徴収が実現されうるのは、「必要経費が賄えるだけの入込が期待できる場所」に限定されてしまい、そういう場所は、必然的に過剰利用のリスクを抱えているということになります。よって、規制を伴わない自然資産法に既存の制度を凌駕する利点を見出すことは難しいと言えます。
どうしても「法制化」する必要があるのであれば、順番としては、自然公園法で想定される「手数料」の解釈変更を検討することや、エコツーリズム推進法に自然資産法の要素を加味して、法改正することを検討すべきです。
ちなみにエコツーリズム推進法(エコツー法)の仕組みは大変複雑で、新聞では、字数制限のため「特定自然観光資源への指定」によって課金が可能という書き方をしましたが、厳密には、自治体が全体構想に沿って条例を制定することが必要です。2014年6月現在、特定自然観光資源への入込者制限と手数料徴収を定めた自治体の例はありませんが、沖縄県の慶良間諸島(渡嘉敷村及び座間味村)が条例策定に向けて合意形成を行っています。過去には、鹿児島県の屋久島で全体構想の策定まで行きましたが、縄文杉ルートへの入込者数を制限するための条例案が2011年に屋久島町議会で「全会一致で否決」された過去があります。
なぜ、エコツーリズム推進法による規制が、あまり利用されないかについては、別途論文を書きたいと思っていますが、根本的には、観光利益に依存している地方自治体が事務局となって、観光利益の抑制につながる規制を行うことは実質的に困難であることが挙げられます。実際に、屋久島で、規制案が「全会一致で否決」された理由は、観光利益の問題でした。
気候変動の国際交渉において、気候変動が地球益なのに対して、経済発展という国益が合意形成を阻害します。これと同様に、自然保護は地球レベルないし国レベルの利益を体現しているのに対して、自治体は、自治体の経済発展を追求する傾向にあるので、自治体がイニシアティブをとることが自然保護レベルの向上に貢献しないことが往々にしてあるという点には注意が必要です。近年は、地方自治体から先進的な取り組みを見せることもあるので、一概には言えませんが、自然保護の古典を考えれば、国-自治体は、そうした利害関係にあることを肝に銘じるべきです。
次に、「受益者負担」という考え方そのものは、社会保障費の増大に苦しむ現在の日本では支持されやすいと思いますが、「自然保護」の根本的な性質についても知っておく必要があります。元来、自然保護は、市場ベースでは十分に保全が達成されない性質の自然環境を公共財として政府が保護することからスタートしています。一方、日本では、「自然はタダ」といった考え方が強く、政府もしっかりと保護をしてきませんでした。私が日本の国立公園制度を「弱い地域制」と指摘した2012年論文では、国立公園にかかる予算や人員、権限を他国と比較して、いかに日本が国立公園制度や自然保護制度に資源を割いていないかを論じています。
また、韓国が国立公園の入園料を2007年に廃止したように「受益者負担」という考え方は、必ずしも国際的なスタンダードではありません。図書館で本を借りることが無料であるように、美しい自然を享受する権利は、国民に等しくあるべきで、そのためには、市場ベースで解決できる話ばかりではないという意見もあることを知ってほしいと思います。例えば、入域料の設定によって、経済的弱者(特に若者)が自然を享受する機会を逸する可能性を考慮する必要もあります。
蛇足ですが、日本では、環境省当局を含め、自然保護(私が「自然保護」という場合、「自然と人間の関係性の保全」というニュアンスで使っています)と真剣に向き合ってきたか疑問に思うことが多いです。例えば、アメリカでは、1920年代にGetPeopleVisittheParksというキャンペーンを行い、実際に国民に国立公園の自然を見てもらおうと考えました。そうすることで、「自然保護に対する公共の支持基盤」を醸成することを目指したのです。ダムや道路など、開発が怒涛の勢いで進む時代にあって、大変先見性のある取組でした。結果的に、「国立公園はアメリカが開発したもっとも素晴らしいアイディア」と呼ばれ、世界遺産条約の制定などにつながります。しかし、日本の当局が、自然環境保全の政策優先度を高めるような積極的な取り組みを行ってきたとは言い難いです(少なくとも「効果的な政策」という意味では)。日本では公共事業利益に見られるように「鉄の三角形」が形成されましたが、自然環境を守るための「緑の三角形」が形成されても良かったはずです。
日本ほど豊かな自然環境を有する国はなかなかありません。あまりに豊富であったため、そのありがたみが分かっていない面もあるかもしれません。だからこそ、いざ過剰利用や資金不足といった自然保護の問題が見え始めると、すぐにそれを「個人的な」問題にすり替えてしまう。そうではなく、この豊かな自然を守ることは、国益の最たるものであり、そこに必要な税金を投入することは不可欠なことだという論理が共有されていないように思えます。例えば、日本の国立公園事業予算は、アメリカの4%程度に過ぎません。日本で公共事業に用いられる1%で結構です(昨年の公共事業予算は約6兆円)。それを自然環境保全や文化保全に使うことはできないでしょうか。これには国民の声が必要です。
(実は、この部分は、強く主張したかったのですが、字数制限と分かりやすさのために削除しました。朝日新聞の担当の方には、今や、福祉も教育も「もっと税金が必要」と言っている。同じような議論になってしまうと面白くない、とご指摘をいただきました。なるほど視野が狭かったと思いつつ、やはり、日本はもっと自然環境保全や文化保全にお金を使うべきだと思っています。公共事業のように1兆円単位の話をしているわけではありません。100億円程度でいいのです)
最後に、そもそも、自然資産法が想定している「受益者」とは何を指して言っているのでしょうか。実際にそこに行った人が「受益者」というのは、経済学的に言えば「間接的利用価値」を享受した人を指しているにすぎません。「受益」には、実際には行っていないけれど得られる「非利用価値」や将来世代の「オプション価値」も含まれるはずです。今日も日本の美しい自然が、盗掘や密猟から守られているという安心(日本では絶滅危惧種がネットで売買されるなど、盗掘が大問題になっています)であったり、テレビを通じて美しい風景を鑑賞できるという喜びであったり、私たちの子々孫々も、この美しい自然を享受できる、という安心は、国益に関する重要なことです。
にも関わらず、訳の分からない事業には湯水のようにお金をつぎ込み、肝心な自然環境や文化の保全にお金をかけない、そして、いざ問題となれば「受益者負担」と言うのは問題です(この場合の「受益者」は相当範囲が狭いです)。
自然資産法に関係されている議員の方々は、おそらく自然保護や文化保全に関心の高い方々が多いと思います。だからこそ、この法律を制定する前にやるべきことがたくさんあったはずです。自然や文化が大切だというならば、安易な方向に走るのではなく、より本質的な議論をしないといけないと思います。

※※「トラスト活動に行政介入?」(『読売オンライン』2014年07月20日)
自然資産区域法 民間団体が懸念
地域の貴重な自然環境を保全するため、自治体が入域料を徴収することを認める自然資産区域法が6月、国会で成立した。
同法では、保全活動の一環として土地の取得・管理を行う「自然環境トラスト活動」を支援する基金の設立も認めたが、市民レベルで土地取得を進めるナショナル・トラスト運動の推進団体には「行政の介入で逆に活動が阻害される」という懸念が広がっており、今後、論議になりそうだ。
市民運動がモデル
超党派の議員立法で成立した同法では、自治体が、環境保全を図る上で重要な区域を「地域自然資産区域」に指定。区域内の土地を取得する「自然環境トラスト活動」を推進し、財政面で活動を支援する基金を設置できると規定した。
法律では基金の使途は明示されず、同様のトラスト活動を行う既存の民間団体は「自治体が自分たちのためだけに基金を使い、民間の活動が困難になる」と不安視する。民間団体を束ねる「日本ナショナル・トラスト協会」が法案審議に際し、「トラスト活動は主として民間団体が行う、という点を法律で示すべきだ」とする意見書を与野党に提出するなど、反発は強い。
一方、同法を所管する環境省は「自治体の性悪説に立てば民間団体の懸念は理解できるが、法律にそこまでの意図はない」と話し、議論はかみ合っていない。
柿田川の教訓
そもそも同法の仕組みは、19世紀に英国で始まったナショナル・トラスト運動がモデル。寄付を集めて土地を買い取り、自然環境や建造物などを保全・管理する市民運動で、国内では天神崎(和歌山県)や鎌倉の運動で知られる。
静岡県清水町で活動する公益財団法人「柿田川みどりのトラスト」会長の漆畑信昭さん(78)は実体験を踏まえ、「行政と土地買収が競合すると、民間は不利だ」と話す。
同町に流れる柿田川は、川底から湧き出す富士山系の地下湧水を水源とする清流で、貴重な動植物の宝庫だ。しかし、周辺の宅地化が進み、1987年には河畔の原生林が伐採されるなど、危機的な状況に陥った。
地元住民らは、開発から自然を守ろうとトラスト団体を設立。88年から始めた河畔の土地取得活動で、2872平方メートルを買収したほか、1379平方メートルを借り上げた。
だが、柿田川に全国から観光客が訪れるようになると、町は都市公園化を計画。公金で土地取得を進め、遊歩道などの整備を進めようとした。市民側は土地取得を続けて対抗しようとしたが、地権者が町に土地を売却すれば、民間と違って税金がかからないため、土地取得は困難を極めた。
市民側は「行政のトラスト潰しだ」とマスコミを通じて世論に訴え、「ありのままの自然を残すことに価値がある」と町側を説得。その結果、町は取得地のほとんどを保護すると約束し、市民の憩いの場として保全に協力することになった。
資金先細りの恐れ
自治体によるトラスト活動を奨励する新法について、漆畑さんは「行政が新法を利用して土地を確保すれば、首長の意思一つで、開発を許してしまう」と懸念する。
同様の声は、日本ナショナル・トラスト協会に複数寄せられる。関健志事務局長は、「自治体のトラスト活動基金についての懸念が多い」と指摘する。民間団体はわずかな寄付金や募金頼みで、行政の看板を掲げた基金に寄付金が集中し、資金が先細りする恐れを抱いているという。
ただし新法では、自治体が自然資産区域を指定する際、住民や有識者、民間団体などと協議することになっている。トラスト活動に関するルールも今後、同省などが検討する国の基本方針に基づくよう定められている。同省自然環境局では「基金の活用方法など、民間団体からも意見を聞き、よりよい法制度になるよう調整する」と話している。(稲村雄輝)
自然資産区域法の骨子
▽風景地や名勝地など、自然環境の保全を図る上で特に重要な土地を「地域自然資産区域」とする
▽自然資産区域で徴収した入域料を環境保全費に充てることができる
▽環境保全のための土地取得を「自然環境トラスト活動」と定義
▽自治体はトラスト活動促進経費に充てる「自然環境トラスト活動基金」を設けることができる
▽国は自然資産区域での環境保全推進に関する基本方針を定める

「森林を脅かす太陽光発電を考える」講演会に参加① 12月2日

鳩山町今宿コミュニティセンターで開かれた埼玉県生態系保護協会東松山・鳩山・滑川支部主催『森林を脅かす太陽光発電を考える ―遊休地・休耕地・山林の活用法― 』に参加しました。
181202太陽光発電講演会ポスター181202太陽光発電講演会開催趣旨

開催趣旨と参加呼びかけ
野山や森林など自然を大きく切り捨てるメガソーラー発電設置事業は、地球温暖化防止を謳ったエコエネルギーなどではなく、むしろ環境破壊行為でしかないということを皆さんはご存知でしょうか。単に景観を損ねるだけではありません。沢山の種類の生き物達がそれぞれ生き抜くために必要な環境は、実に多種多様です。また、自然はそこに息づく生命にとってだけでなく、自然体験が私達人間の健全な心と体を育む上で無くてはならない存在であるということも、近年よく言われているところです。多様性に富んだ自然環境を守り、子供達に受け継いでいく責任が、私達にはあるのです。
しかしながらその一方で、広い土地を持て余している地主さんにとって、税金や土地の管理は大きな負担となっています。そのためメガソーラーに手を出そうとお考えのあなた、ちょっとお待ちください!メガソーラー発電には、まだ他にも想像以上に大きな問題点が隠されているのです。ぜひお話しを聞きにいらしてください。また、メガソーラー以外で対処する方法などのお話しをしていただける専門家の先生もお呼びしています。ぜひお誘いあわせの上、お越しください。手遅れになる前に!
会場で配布された「講演会開催趣旨について」から(資料追加)
埼玉県内の太陽光発電設置要綱を作った自治体
県北地区:秩父市、長瀞町、皆野町、小鹿野町、美里町、寄居町
県西地区:日高市、横瀬町
比企周辺:小川町、嵐山町、滑川町、鳩山町、東松山市、坂戸市
県東部地区:蓮田市、羽生市

鳩山町の太陽光発電設置要綱(2018年4月1日施行)
別表:設置するのに適当でない区域
1.不法投棄、最終処分等により廃棄物が残置されている場所(廃棄物の処理及び清掃に関する法律):再生可能エネルギー発電施設を設置することで、当該廃棄物を適正処理することが相当困難であるとともに、周辺の地下水等生活環境に支障を生じるおそれがある。
2.農用地区域内の農地、甲種農地、第1種農地(農地法):優良農地を確保するため、転用が厳しく制限されている。
3.農用地区域内の農地・採草放牧地(農業振興地域の整備に関する法律):優良農地を確保するため、転用が厳しく制限されている。
4.保安林(森林法):水源の涵養、土砂流出の防備、土砂崩壊の防備、その他災害の防備や生活環境保全・形成等の目的を達成するために指定された区域であり、立木の伐採や土地の形状変更等が厳しく規制されている。
5.河川区域、河川保全区域、河川予定地(河川法):出水時に流下阻害発生のおそれがあるとともに、河川管理施設を損傷させるおそれがある。
6.急傾斜地崩壊危険区域(急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律:)崩壊のおそれのある急傾斜地(30度以上)で、崩壊により相当数の居住者等に危害が生じるおそれのあるもの及びその隣接地のうち、当該急傾斜地の崩壊が助長され、又は誘発されるおそれがないよう、一定行為を制限している区域であり、他のエリアに比べて災害発生により地域住民の財産・生命等脅かすリスクが高い。
7.土砂災害警戒区域(土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律):急傾斜地の崩壊等が発生した場合に、住民等の生命又は身体に危害が生ずるおそれがあり、土砂災害を防止するために警戒避難体制を特に整備する区域であり、他のエリアに比べて災害発生により地域住民の財産・生命等脅かすリスクが高い。
8.重要文化財、国指定史跡、名勝、天然記念物等(文化財保護法):復元が不可能な国民共有財産であり、適切な保護管理措置がとられている。
9.県指定有形文化財、県指定有形民俗文化財、県指定史跡名勝天然記念物、県指定史跡(埼玉県文化財保護条例):復元が不可能な県民の共有財産であり、適切な保護管理措置がとられている。
10.町指定有形文化財、町指定民俗文化財及び町指定史跡、町指定名勝、町指定天然記念物(鳩山町文化財保護条例):復元が不可能な町民の共有財産であり、適切な保護管理措置がとられている。
11.埼玉県オオタカ等保護指針に基づき事業者に対し配慮を求める区域(埼玉県オオタカ等保護指針):希少であるオオタカを保護することにより、地域の生態系を維持し生物多様性を保全する(営巣地の半径1.5㎞以内は事業者に配慮を求める)。

比較:「東松山市太陽光発電施設の設置に関するガイドライン」(2018年10月1日施行)別表2(設置するのに適当でないエリア)から(理由は略)
1. 不法投棄等により廃棄物が残置されている場所(廃棄物の処理及び清掃に関 する法律)
2. 鳥獣保護区特別保護区(鳥獣の保護及び管理並びに 狩猟の適正化に関する法律)
3.甲種農地・採草放牧地・第1種農地・採草放牧地(農地法)
4. 農用地区区域内の農地・採草放牧地(農業振興地域の整備に関する法律)
5.域、河川保全区域、河川予定地(河川法)
6.災害警戒区域(土砂災害防止法)
7.文化財、国指定史跡、名勝、天然記念物等(文化財保護法)
9.県指定有形文化財、県指定有形民俗文化財、県指定史跡名勝天然記念物、県指定旧跡(埼玉県文化財保護条例)
・要綱にオオタカに関する規定を設けているのは鳩山町のみ。
・鳩山町は、ほぼ全域にオオタカが営巣。太陽光発電施設設置可能な場所はない(営巣地半径400m以内は×)。

熊井の森の希少動植物

太陽光発電の新聞折り込み勧誘チラシが2017年4月頃から毎月は入るようになった。18年10月は毎週入る。

鳩山町大豆戸[まめと]太陽光発電施設開発。18年4月に住民の間で開発計画が噂となる。毎年営巣しているオオタカの高利用域に入っているが、事業者は計画をすすめている(工事期間:12月3日~19年6月28日)。オオタカの繁殖期に重なる。

埼玉県環境アセスメント要件。太陽光発電施設は20㏊以上。

太陽光発電事業環境保全対策先進自治体
 ・札幌市:環境保全・緑地保全に関する条例
   1000㎡以上が対象。里山地域では敷地境界から10m幅の緑地を配置する。
   里山では敷地の30%~50%の樹林を残すこと。
 ・さいたま市:環境影響評価条例
   開発面積1㏊(10000㎡)以上は環境アセスメント対象。

「⑧日本では、山林を価値のないものとして認識されていることが多い。人が生きていく上で生物多様性は必要不可欠で、持続可能な社会づくりに最重要であるという認識は世界の潮流。欧米のみならず、中国や韓国、東南アジア諸国にも遅れをとっている日本。それを、幸いにも世界に誇れる自然環境が残っている鳩山町をはじめとした比企地域で、住民自らが考えて自然を残したまま進める地域づくりのきっかけにしたいと考えています。」


市民のための環境公開講座聴講 11月20日

日本環境教育フォーラム・損保ジャパン日本興亜環境財団・損害保険ジャパン日本興亜株式会社共催の「市民のための環境公開講座」(全9回)の8回目、『持続可能な社会の実現をめざして イオンの挑戦』を聴講しました。講師はイオングループ環境・社会貢献部の金丸治子さんです。
1.イオンの概要、サステイナビリティ基本方針
2.環境重点課題 3つの挑戦
●チャレンジ1 脱炭素長期ビジョン2050
 店舗、商品・流通、お客さまとともに
●チャレンジ2 持続可能な調達方針・2020年目標(2017年4月発表)
農産物
・プライベートブランドは、GFSIベースの適正農業規範(GAP)管理の100%実施をめざす
・オーガニック農産物の売上構成比5%をめざす
畜産物
・プライベートブランドは、GFSIベースの食品安全マネジメントシステム(FSMS)または、適正農業規範(GAP)による管理の100%実施をめざす
水産物
・連結対象のGMS、SM企業で、MSC、ASC流通・加工認証(CoC)の100%取得をめざす
・主要な全魚種で、持続可能な裏付けのあるプライベートブランドを提供する
紙・パルプ・木材
・主要なカテゴリーのプライベートブランドについて、持続可能な認証(FSI認証等)原料の100%利用をめざす
パーム油
・プライベートブランドは、持続可能な認証(RSPO等)原料の100%利用をめざす
●チャレンジ3 食品廃棄物削減・資源循環モデル構築
・食品廃棄物を20205年までに半減
・(単に廃棄するのではなく資源として活用できるよう)食品資源循環モデルの構築
3.持続的な取り組み ~これまでも・これからも
・イオンの植樹活動
ふるさとの森づくり(店舗)
森の循環プログラム 植える・育てる・活かす
東北復興ふるさとの森づくり
※藤田香『SDGsとESG時代の生物多様性・自然資本経営』(日経BP社、2017年)
企業の社会的活動(CSR)報告書の読みかたCSR図書館.net
AEON Report 2017

『人と自然をつなぐ教育Ⅱ -自然体験教育の実践-』 11月19日

能條歩編『人と自然をつなぐ教育Ⅱ -自然体験教育の実践-』(NPO法人北海道自然体験活動サポートセンター、2015年)を読みました。「自然体験活動」を実践している方や関心のある皆さんには購入をお勧めします(1,080円)。

能條歩編『人と自然をつなぐ教育Ⅱ -自然体験教育の実践-』目次
はじめに
第1章 自然を読み解こう ~「自然解説」から「自然が先生」へ~
  1.モノの名前を知る=自然を知る?
 「自然について学ぶ」あるいは「自然の中で学ぶ」という活動には、多かれ少なかれ「自然のしくみやなりたち」「自然の利用・活用」などについての解説的な時間が含まれます。解説的な時間そのものが目的になっている場合もそうでない場合もありますが、従来の自然解説(自然ガイド)には「総花的な単なる知識や名称の羅列にすぎない」「分類学的な側面だけにとどまり、事前の事象どうし、あるいは自然事象と自分(人)との関係性がわからない」「自然との関係性において紡がれてきた文化や歴史的側面が見えない」などの反省がありました。
 例えば、森林散策という自然体験教育を企画するような場合を考えてみましょう。せっかく季節や土地柄といったその場所で体験できる自然との関わりを重要視するといる視座を持っていても、企画内容が動植物の名前や特徴を羅列的に紹介するような「単なる自然観察」になっていないでしょうか。こうした解説は新しい知識の獲得には繋がるものの、悪く言えば指導者の「知識のひけらかし」や「知識の切り売り」だけになりかねませんので、こういう学習が好きな人以外にとっては「押し付け」になってしまい、むしろ自然への興味が失われる場合もあります。いろいろな体験型ツアーに参加する人たちへのアンケートの結果をみると、こうした学習体験型ツアーに参加している人たちは、「ガイドしてくれる人に知識や経験の豊富さを期待してはいるものの、高度の知識の習得は望んでいない」ように読みとれます。その一方で、「語り口のユーモラスさや専門的で面白い情報の提供」にはかなりの期待があり、そうしたことの充実による「楽しい体験」を期待していると考えられます。これらのことから、体験型ツアーのような学習に参加してくる人は、必ずしもたくさんの知識を「教えられること」を望んでいるわけではなく、専門的な内容に基づく“面白さ”を求めているように見えます。では、この“面白さ”とはどのようなコトなのでしょうか。……

   コラム①ゲシュタルト転換
  2.インタープリテーションとは
 前述のように、自然体験教育が「これは○○です。こんな分類的特徴があり、▽▽とはこの点が違います」といった、生物の分類や特徴を羅列的に説明する“自然解説”に偏っていたという反省から、インタープリテーション(以下IPと表記)という教育方法の有効性が指摘されるようになって、もうずいぶん長い年月がすぎました。IPはもともとは“通訳”・“解釈”などの意味ですが、自然体験教育や環境教育の領域では、「個別の名前を知ったり特徴を覚えたりするだけでは見えてこない、自然の事象のもつ背景や意味合いなどを感じとること、いわばコトバを持たない自然が私たちに語りかける価値や文化を学ぶような活動やその技能」を指します。……今日では、「環境保全地域、公園、博物館など、社会教育の場における持続可能な社会づくりのための教育的コミュニケーション」で「参加者の興味や関心を引き出しながら、ものごとの背後にある本質に迫ろうとする、体験を重視した教育活動」と説明されています。このように社会教育に限定した教育活動としてIPを紹介する場合もありますが、本書では学校教育も含めて、自然と人をつなぐ教育活動における解説活動をIPと呼ぶことにします。

  3.インタープリテーションの原則
  4.興味を起こさせる・意味を伝える ~発問の工夫~
   コラム②和名と学名
  5.インタープリテーションのプランニング
   コラム③太陽ばんざい
  6.インタープリテーションに必要な自然についての知識
   コラム④特殊化と進化
第2章 自然体験教育アクティビティ事例集&知識のセルフチェックリスト集
  1.雨天や地域の自然・文化を活かす実践
     自然体験教育アクティビティ事例集
   コラム⑤幽霊と妖怪
  2.読み解きのためのセルフトレーニング
     知識のセルフチェックリスト集
第3章 自然への配慮 ~畏敬の念と環境倫理の教育~
  1.自然への畏敬の念はどうやったら育めるか?
  2.自然の中にある共通性
  3.科学の限界
   コラム⑥木のシルエット
  4.自然との一体感と自然への畏敬の念
   コラム⑦気配・・・
  5.自然への配慮と体験活動-Leave No Trace 実践例-
  6.LNT誕生の背景と歴史
  7.LNTの7原則
   コラム⑧LNT講習会のタイプと内容
  8.日本におけるLNT
   コラム⑨直火禁止!
第4章 自然との距離を縮めるネイチャークラフト ~教育の方法と実践例~
  1.自然体験教育の切り札 ~ネイチャークラフト~
  2.クラフト指導の心得
  3.テーマの設定
  4.評価と励まし
     ネイチャークラフト実践例
第5章 体験を学びに ~参加型授業・自然体験ワークショップ運営法~
  1.行動主体を育てる教育
  2.学習のながれ
   コラム⑩「ふりかえり」と「わかちあい」
  3.参加型学習実践例
   コラム⑪這い回る経験主義
第6章 資料から実践へ ~情報の読みこなしから活用へ~
  1.身近な自然での野遊び実践
  2.地域の中での自然体験教育プログラム
  3.計画時に活用した地域の資料
  4.地域の活動から生まれた新たな資料
   コラム⑫数えきれない数って?
第7章 安全管理と応急手当 ~危険への予知・回避・対策~
  1.自然体験教育で最も大切なこと
  2.安全管理の基本
  3.危険予知トレーニング
  4.ファーストエイド
   コラム⑬感覚をとぎすまそう!
  5.現場の安全、DOTS と SAMPLE
  6.手当てと RICE
  7.身近な病気や怪我
  8.安全管理体制&セルフチェックリスト
おわりに
※能條歩『自然体験活動を学校で』(2009年)(印刷用pdf.-26.2Mb)(閲覧用pdf.-1.6Mb)
   (NPO法人北海道自然体験活動サポートセンター関連資料データベースより)

徳永桂子『日本どんぐり大図鑑』 11月15日

徳永桂子『日本どんぐり大図鑑』(偕成社、2004年)を読みました。京都科学読み物研究会編『本から自然へ 自然から本へ ~子どもと楽しむ生きものの世界~』(連合出版、2008年)で紹介されている本です。

徳永桂子『日本どんぐり大図鑑』目次
まえがき
一年じゅう緑の葉をつけるどんぐりの木(常緑樹)
 ウバメガシのなかま
  ウバメガシ
  チリメンガシ
 カシのなかま
  アラカシ
  アマミアラカシ
  シラカシ
  ウラジロガシ
  オキナワウラジロガシ
  アカガシ
  ツクバネガシ
  オオツクバネガシ
  ハナガガシ
  イチイガシ
 シイのなかま
  スダジイ
  オキナワジイ
  ツブラジイ
 マテバシイのなかま
  シリブカガシ
  マテバシイ
冬に葉を落とすどんぐりの木(落葉樹)
 ナラのなかま
  コナラ
  テリハコナラ
  ミズナラ
  ミヤマナラ
  モンゴリナラ
  ナラガシワ
 クヌギのなかま
  クヌギ
  アベマキ
 カシワのなかま
  カシワ
 クリのなかま
  クリ
 ブナのなかま
  ブナ
  イヌブナ
外国産のどんぐりの木
 ヨーロッパ~アジアのどんぐり
  イングリッシュッオーク
  セイヨウヒイラギガシ
  ロタンディフォリアガシ
  コルクオーク
  ロイコトリコフォラガシ
 北アメリカのどんぐり
  レッドオーク
  バーオーク
  ピンオーク
  ホワイトオーク
  バレーオーク
解説
 1 「どんぐり」って、どんな木?
 2 「どんぐり」と「お皿」
 3 日本のどんぐり、世界のどんぐり
 4 ブナ科は日本の自然林を代表する樹木
 5 植生遷移とブナ科樹木
 6 どんぐりの繁殖戦略
 7 ブナ科の樹木を食べる昆虫たち
 8 どんぐりの木を土に返す生き物たち
 9 ブナ帯文化と照葉樹林文化
 10 どんぐりの木とわたしたちの生活
どんぐりの大きさくらべ
用語解説
英文解説
和名さくいん・学名さくいん

前見返し どんぐりの木の見分け方(常緑樹)
後ろ見返し どんぐりの木の見分け方(落葉樹)
※渡部さんに紹介された資料です。
自然観察指導員・北岡昭彦さんの「これは何の木のドングリ?」(『自然保護』535号、2013年10月)

いわさゆうこ『どんぐり見聞録』 11月14日

いわさゆうこさんの『どんぐり見聞録』(山と渓谷社、2006年)を読みました。京都科学読み物研究会編『本から自然へ 自然から本へ ~子どもと楽しむ生きものの世界~』(連合出版、2008年)で紹介されている本です。

いわさゆうこ『どんぐり見聞録』目次
どんぐりと出会う-序にかえて
見る
 いろいろあるどんぐり
  ●どんぐりはブナ科の木の実
  ●どんぐりの背くらべ
  ●殻斗の違い
  ●どんぐりのからだ
 どんぐりの発芽に立ち会う-アカガシ、ミズナラ、ナラガシワなど
  ●アカガシとトキの赤ちゃん
  ●どんぐりの発芽
  ●のんびり発芽する常緑樹のどんぐり
  ●どんぐりを植えるときの注意点
 シイの木はわが家の守り神だった-スダジイ、ツブラジイ
  ●臭う花、匂う花
  ●寝ころぶと見えたもの
  ●伊豆大島のスダジイ
  ●花のたくらみ
 木の下ウォッチング-クヌギ、コナラなど
  ●下を向いて歩こう
  ●木の落とし物
  ●カラスの好物、スズメの好物
  ●ふり落とされる未熟な実
 どんぐり穴のあるじ-コナラ、クヌギ、クリなど
  ●ゾウムシのいろいろ
  ●ハイイロチョッキリとシギゾウムシ
  ●ハイイロチョッキリが枝を切り落とすわけ
  ●どんぐりのメッセージ
 どんぐりをまくのはだれ?-クヌギなど
  ●どんぐり好きな鳥は?
  ●どんぐり好きの動物は?
  ●どんぐりの海
  ●昨日の敵は今日の友、今日の友は明日の敵
 花は春とはかぎらない-シリブカガシ
  ●冬に花を咲かせる樹木たち
  ●シリブカガシとの出会い
  ●落下のときは親離れのとき?
 カシワは枯れ葉を離さない-カシワ
  ●冬でも葉が落ちないカシワ
  ●枯れ葉をつけてても、木が枯れるわけではない
  ●カシワの葉
 鳥と木の実とアカガシと
  ●ピラカンサの食べごろは?
  ●種子を守るために
  ●コゲラとアカガシ
  ●高尾山のどんぐりを運ぶのは?
 オータム、そして冬芽-コナラ、クヌギ、アラカシ、シラカシなど
  ●オータムがやってきた
  ●いろいろな冬芽
 マテバシイくん北上中-マテバシイ
  ●めざましい生長ぶり
  ●都市部を北上中
  ●マテバシイの季節
 炭の王様ウバメガシ-ウバメガシ
  ●備長炭はなんの木?
    備後屋長右衛門→備長
  ●松のように見えたウバメガシ
  ●ウバメって姥目、姥芽?
歩く
 絶滅危惧種ハナガガシ-ハナガガシ
  ●林試の森公園
  ●春のどんぐり
  ●芽を出せ! ハナガガシ
 初夏に落ち葉の高尾山を歩く-ウラジロガシ、シラカシ、アカガシ
  ●常緑樹だって落葉する
  ●葉の裏が白いのは?
 ハラハラドキドキの上水べり散策-シラカシ
  ●消えた赤い実
  ●丸裸になったシラカシ
  ●負けない、シラカシ
 日本一のどんぐりに会いに-オオウラジロガシ、アマミアラカシ
  ●オキナワウラジロガシに会える場所
  ●いざ、石垣島のバンナ森林公園へ
  ●発芽を楽しみに
 大きなクヌギのある家-クヌギ
  ●クヌギの木を訪ねて
  ●落葉の楽園
  ●クヌギの木に集まるものは?
  ●クヌギが私を呼んだ
 トトロの森を子どものワタシと歩く-コナラ
  ●きっかけは、どんぐり
  ●冬の雑木林
  ●幻は子どものワタシ
  ●歩こ、歩こ、私は元気
 まぎらわしいものたち-ナラガシワ、オオツクバネガシ、アベマキ
  ●京都府立植物園のナラガシワ
  ●片倉城跡公園のオオツクバネガシ
  ●クヌギのそっくりさん、アベマキ
 神宮の森のイチイガシに会いにいく-イチイガシ
  ●人工の森
  ●明かり係の木
  ●せつなる母の祈り
 イヌブナとブナの春の芽生え-ブナ、イヌブナ
  ●かいわれ大根の親分
  ●殻を持ち上げて発芽する
  ●ブナの芽生え
  ●春の妖精たち
 どんぐりの花追い-ブナ、クヌギ、コナラなど
  ●風媒花の観察
  ●高い木の花を観察するには
  ●ブナの花追い
  ●クマは春のブナの花数で凶作を知る?
 公園で見る外国からきたどんぐり-ピンオーク、レッドオーク、ヨーロッパナラ
  ●ピンオーク
  ●レッドオーク
  ●ヨーロッパナラ
食べる
 柏ってだあれ?-カシワ
  ●柏餅の葉もいろいろ
  ●葉っぱのごちそう
  ●カシワの不思議
  ●つまりカシワとは
 東北で復活したどんぐり食-コナラ
  ●どんぐり干しの記憶
  ●しだみのはな
 どんぐりコーヒーはおいしいか?-コナラ、クヌギ、マテバシイ、スダジイ
  ●どんぐりの早稲ってあるの?
  ●どんぐりコーヒーの下ごしらえ
  ●どんぐりコーヒーってどんな味?
  ●元祖どんぐりコーヒー
  ●試飲は続く
  ●夢のどんぐり産業
 おいしいシイの実-スダジイ、ツブラジイ、オキナワジイなど
  ●浄化水場のシイの実
  ●ところ変われば
  ●つぶらなツブラジイ
  ●トゲトゲ殻斗のシイ
  ●シイの実を楽しむ
  ●どんぐり酒
 縄文人の食材①クリ-クリ、イチイガシ、シリブカガシなど
  ●クリと縄文人
  ●カチグリ、オシグリ、スナグリ
  ●甘栗と生食できるどんぐりたち
 縄文人の食材②どんぐり-マテバシイ、イチイガシなど
  ●アク抜きの技術と縄文人
  ●下宅部遺跡
  ●どんぐりの貯蔵穴
  ●どんぐりでつくる縄文クッキー
 九州に見るどんぐり食を訪ねて-アラカシ、イチイガシ
  ●かしの実だんご
  ●婦人会の名物会長さん
  ●いちごんにゃくのつくり方
  ●持ちきれないほどのいただきもの
 どんぐり汁粉で今年もよろしく-コナラ
  ●野田村のしだみだんご
  ●野田村のどんぐりの渋抜きは
  ●どんぐりあんに挑戦
  ●どんぐり汁粉
  ●雪の下で
遊ぶ
 木の実拾いにはご用心
  ●台風の落としもの
  ●ぎんなん拾いにはご用心
  ●落ちたては重い
  ●どんぐり拾い道
  ●マテバシイの使い道
 染めのルーツはツルバミ染め?
  ●植物の薬効と布
  ●染料に使われたクヌギ
  ●どんぐりだんご
  ●どんぐり染め
  ●染めのヒント
 どんぐり展のすすめ
  ●大どんぐり展
  ●どんぐり虫の憂欝
  ●案ずるよりも……
 どんぐり炭を作ろう
  ●懐かしい匂い
  ●日本の炭
  ●どんぐりで炭を作ってみよう
  ●家でもできるどんぐり炭の作り方
  ●木の実炭アート
 作って遊ぼう、どんぐり工作
  ●Iさんのどんぐり人形
  ●どんぐりゴマとやじろべえ
  ●どんぐりで作る森の楽隊
  ●ファンタジックな生きもの
  ●どんぐり時計
  ●どんぐりで作るミニミュージアム
 どんぐりマニアの整理術
  ●集めたどんぐりの収納保存は?
  ●写真を撮る、ファイルする
  ●葉っぱのフロッタージュ
あれやこれや
 どんぐりの名前と由来
  ●どんぐりはまるいもの?
  ●だめなクリだから、どんぐり
  ●ブナ(橅)とイヌブナ(犬橅)
  ●どんぐりたちの名前と由来
 困窮を極めたあのころのどんぐり
  ●イナゴとり
  ●戦時中のどんぐり
  ●いまや困窮とは?
  ●普及しなかった、どんぐり粉
  ●木の実や種を握りしめ、動物園へ
 どんぐりの歌より
  ●どんぐりの歌は宮城県生まれ?
  ●歌い継がれている三番
  ●もうひとつの続きの歌詞
  ●西の金子みすゞ、北のスズキヘキ
 文学の中のどんぐり
  ●寺田寅彦の『團栗』
  ●昭和天皇の歌
  ●小林一茶
  ●どんぐりに託すもの
 縄文クッキーがうそなんて
  ●幻の縄文クッキー
 それは新聞によってもたらされた。記事のタイトルは「小・中学校で人気の縄文クッキー作り」「科学的根拠に強い疑問」とある。私は、むさぼるように読み進んだ。
 帯広畜産大学の中野益男教授は、山形県押出遺跡[おんだしいせき]から出土した縄文時代前期(約5000年前)の縄文クッキーに残された脂肪酸(残留脂肪酸)を分析し、「クリ・クルミの粉に、シカ・イノシシ・野鳥の肉・イノシシの骨髄と血液・野鳥の卵をまぜ、食塩で調味し、野菜酵母を加えて発酵させていた」と発表したが、この分析結果には化学的根拠がなく、そのうえ、これらの誤った知識が教育の場に広まってしまったことを憂う内容だった。(243~244頁)[新聞記事は下の※のリンクからご覧ください]
  ●鵜呑みは時として
  ●縄文クッキーから学ぶもの
  ●ふたつの仮説
  ●想像力と創造力が解決する
 エコロジーの使者
  ●豚とどんぐり
  ●どんぐりが旗印
  ●どんぐりの別の顔
あとがき
どんぐり本
参考文献
綴じ込み付録-どんぐり絵巻
●この本に出てくるブナ科の木の実たち 13頁
●どんぐりのからだと名称 14頁
●どんぐりからどんぐり粉をとる 143頁
●しだみのはなの作り方 143頁
●どんぐりコーヒーの作り方 149頁
●どんぐりクッキーの作り方 165頁
●いちごんにゃくの作り方 171頁
●どんぐり汁粉の作り方 177頁
●どんぐりで染めてみよう 192頁
●木の実の炭を作ってみよう 205頁
●葉っぱのフロッタージュ 216頁
●植物をスケッチする 216頁

2003年3月7日『朝日新聞』夕刊文化欄の記事「小・中学校で人気の縄文クッキー作り 科学的根拠に強い疑問」 「誤り」の流布 今後に活かせ 岡安光彦(アークビジョン代表・考古学者)

盛口満『ドングリの謎-拾って、食べて、考えた-』 11月12日

盛口満『ドングリの謎-拾って、食べて、考えた-』(どうぶつ社、2001年)のちくま文庫版(筑摩書房、2011年)を読みました。京都科学読み物研究会編『本から自然へ 自然から本へ ~子どもと楽しむ生きものの世界~』(連合出版、2008年)で紹介されている本です。

盛口満『ドングリの謎-拾って、食べて、考えた-』目次
パート1 拾いながら、考えたこと
 夢かなう
 子供の頃からドングリ拾い
 将来、何になりたいか
 ボルネオへ
 キナバル国立公園へ
 寂しく過ごした最初の夜
 僕を不安にさせたもの
 高い木に登るには
 はるかに高い木の上の営み
 ぐらぐらゆれる吊り橋の上で
 熱帯の森を実感
 世界最大の花を見る
 世界最大級のドングリ拾い
 ドングリって何なんだ?
 ドングリという木はあるか、ないか?
 ドングリの「定義」
  ブナ科全体?
  コナラ属、マテバシイ属、ブナ属?
  コナラ属、マテバシイ属、シイ属?
  コナラ属、マテバシイ属?[著者○]
  コナラ属だけ?
 大ナラ小ナラ
 堂々の巨大ドングリ
 はなはだしい“本末転倒”
 ドングリは果実か種子か?
 果実のようなタネもある
 タネのような果実もある
 石のように堅い果実
 イガとハカマは同じもの
 登山で見つけた奇妙なドングリ
 舌を巻くがんじょうさ
 ドングリの虫
 ハイイロチョッキリ
 コナラシギゾウムシ
 “同じような生活”をしていると
 弱点を見逃すな
 納得いかない変な写真
 “無敵”のように思えるけれど
 我が身を犠牲にすることもある
 ヤマアラシを味方につける
 砂漠で拾ったドングリのこと
 ドングリは英語でエイコン
  The Life of an Oak: An Intimate Portrait by Glenn Keator
 ドングリに“故郷”を思う

パート2 食べながら、考えたこと
 マテバシイのドングリを食べる
 クッキーやキントン作り
 渋いものと渋くないもの
 “旬”の味覚
 虫がつくもの、つかないもの
 ロウソクも作ってみたが
 食べてほしい相手のために
 渋抜きをどうするか
 クズ湯、ゼリー、コンニャク、トウフ
 クレープ作りは美事に失敗
 もう一工夫してみたら
 いろんな種類を試食する
 元祖縄文クッキング
 できる年とできない年
 七年間の意外な結実
 当たらなかった僕の予想
 豊作年と不作年
 花の咲かない年がある
 いっせいに花が咲く時
 なぜ、どのようにして、それが起こるか
 生きるための知恵くらべ
 一方的な“勝ち”はない
 見渡せば、不規則でまちまち
 毎年拾えるマテバシイ
 ドングリの花
 虫媒花と風媒花
 幻のカクミガシ
 三角形の果実が三つ
 それはブナ科のシーラカンス
 一軒長屋に三人住まい
 一つの実には一つの種
 アカネズミ現る
 彼らをその気にさせる大きさ
 存在の秘密の鍵
 もう一つ不思議なこと
 見方を変えれば“はずれ者”
 矛盾の中にバランスを

パート3 そして結局、こうなった
 西表島へ
 日本最大のドングリ拾い
 南の島に分布する
 遠い遠い昔のできごと
 ドングリコロコロ……川の中
 マテバシイは“心のふるさと”
 名前の由来
 目的は食べること
 今どきの17歳の女の子
 ささやかな予期せぬ出会い
 食べる人と食べさせる人
 一時代昔の話
 それは当時の日常食
 えんぴつの味がする
 様々な渋抜き法
 アイヌ人のドングリ料理
 渋さがうまい!
 命がけで拾ったもの
 僕を呼ぶ遠い声
 鳩間節
 ハマグリとドングリと
 その詩の背景にあるもの
 沖縄が呼んでいる
 迷いに迷って出した結論
 そして結局、こうなった

 最後に一言
 文庫版あとがき
 解説 チチ松村
※盛口満『ひろった・あつめた ぼくのドングリ図鑑 -ちしきのポケット 12』(岩崎書店、2010年)

盛口満『ひろった・あつめた ぼくのドングリ図鑑』 11月12日

盛口満『ひろった・あつめた ぼくのドングリ図鑑 -ちしきのポケット 12』(岩崎書店、2010年)を読みました。

盛口満『ひろった・あつめた ぼくのドングリ図鑑』目次 
形いろいろ
色もいろいろ
ふつうのドングリ
珍しいドングリ
大きい・小さい・丸い・細い
山のどんぐり、ふもとのドングリ
 ミズナラ
 フモトミズナラ
  ミズナラによく似ているが、山のふもと(低いところ)に生えている謎のドングリ
おいしいドングリ
  この本では、ドングリの中にシイの実をふくめていませんが、考え方によっては、シイの実をドングリにふくめる場合もあります。スダジイ、オキナワジイ、ツブラジイ
葉っぱ、いろいろ
  日本には全部で17種類のドングリがある
  ドングリをつける木々以外にも、ブナやクリ、シイといった木がある
枝ごとドングリ
ボウシ図鑑
ドングリ・クローズアップ
ドングリの解剖
公園のドングリ
雑木林のドングリ
海のドングリ
ジャングルのドングリ
街中のドングリ探検
日本ドングリいろいろ図鑑
世界のドングリいろいろ図鑑

宮國晋一『ポケット版ドングリさんぽ手帖』 11月9日

宮國晋一『ポケット版ドングリさんぽ手帖 ~名前と見分け方が楽しくわかる!~』(世界文化社、2018年9月)を読みました。

宮國晋一『ポケット版ドングリさんぽ手帖』目次
日本産ドングリ一覧
ドングリの各部の名称
この本の使い方と用語の説明
ドングリの花
ドングリの成長の推移
ドングリの採集時期一覧
落葉樹のドングリ
 コナラ 小楢
  コナラのドングリの多様性
   ミズナラとの識別ポイント
  コナラの葉の多様性
 クヌギ 椚
  クヌギのドングリの特徴
   アベマキとの識別ポイント
  クヌギのドングリの多様性
 column1 ドングリの芽生え
 アベマキ 棈
  アベマキのドングリの多様性
  アベマキの殻斗の多様性
   クヌギとの識別ポイント
 ナラガシワ 楢柏
  ナラガシワのドングリの多様性
 column2 ドングリを食べる虫 ハイイロチョッキリ
 ミズナラ 水楢
  ミズナラのドングリの多様性
   他の樹種との交雑種
 カシワ 柏
  カシワのドングリの多様性
   カシワの殻斗の変異
 column3 ドングリの標本を作ろう
 ブナ 橅
  ブナのドングリの多様性
   三稜形の堅果
 イヌブナ 犬橅
  イヌブナのドングリの多様性
 クリ 栗
  クリのドングリの成長過程
 column4 ドングリを食べてみよう
常緑樹のドングリ
 マテバシイ 馬刀葉椎
   堅い果皮
  マテバシイのドングリの多様性
 シリブカガシ 尻深樫
   シリブカガシのドングリの特徴
  シリブカガシのドングリの多様性
   マテバシイとの識別ポイント
 スダジイ 椎
  スダジイの葉の多様性
  スダジイのドングリの多様性
 ツブラジイ 円椎
  ツブラジイの葉の多様性
  ツブラジイのドングリの多様性
   スダジイとの識別ポイント
 シラカシ 白樫
  シラカシのドングリの多様性
 アラカシ 粗樫
  アラカシのドングリの多様性
 イチイガシ 一位樫
  イチイガシのドングリの多様性
 ツクバネガシ 衝羽根樫
   ツクバネガシのドングリの特徴
  ツクバネガシのドングリの多様性
 column5 ドングリ美術館
 アカガシ 赤樫
   アカガシのドングリの特徴
  アカガシのドングリの多様性
 ハナガガシ 葉長樫
  ハナガガシのドングリの多様性
 ウバメガシ 姥目樫
  ウバメガシの葉の多様性
   ウバメガシのドングリの特徴
  ウバメガシのドングリの多様性
   いびつな堅果
 column6 ドングリの殻斗の多様性
 ウラジロガシ 裏白樫
  ウラジロガシのドングリの多様性
 世界最大級のドングリ オキナワウラジロガシ
  オキナワウラジロガシのドングリの多様性
  オキナワウラジロガシの殻斗
外国のドングリ
 レッドオーク
 ピンオーク
 イングリッシュオーク
 コルクガシ
おわりに

宮脇昭『いのちを守るドングリの森』 11月7日

宮脇昭『いのちを守るドングリの森』(集英社新書、2005年)を読みました。

宮脇昭『いのちを守るドングリの森』目次
序章 ドングリの苗を植える
 1 植樹祭
 2 木を植える目的
 3 植樹に参加する人たち
 4 なぜ、ドングリの苗か

第1章 森と人間生活
 1 森と私のかかわり合い
  (1)周り中、緑
  (2)学問の対象としての緑
  (3)生態学にのめり込む
  (4)現存植生と潜在植生の違い
  (5)森の見分け方
   ⅰ 人工林
   ⅱ 里山の雑木林
 次に、里山の雑木林である。里山林は、木炭や薪にするため、15年から25年に1度行われる伐採や1ないし3年ごとの下草刈りや落葉かきという、粗放的ではあるが定期的な管理をすることにより、二次遷移の途中相として足踏み状態で維持されてきた典型的な持続群落である。
 土地利用、エネルギーの長期的、効率的な利用という観点からは、里山の雑木林は理想的であった。針葉樹は地上部を伐採すれば、その後は根まで腐って、切り株から蘖[ひこばえ]が5本の10本も出て、持続的な利用が可能である。農家の人たちは昔から、1本の切り株から出た萌芽を2~3本ほど残して他は切って燃料などに使っていた。
 このように里山の雑木林は必ず根元から株立ちしているのですぐわかる。自然林に近いシイ、タブ、カシ類の常緑広葉樹林や、山地のブナ、ミズナラなどの落葉広葉樹林では、株立ちはあまり見られず、1本の太い幹がほぼまっすぐに伸びているものが多い。
 また雑木林は落葉樹林で、高木の葉が繁る前に林内に日光が入る。そのため、定期的に下草刈り、落ち葉かきなどをしないと、本来は自然林で林内に急に光や風が入らないように森の保護組織の機能を果たしていた林縁に、群落構成種のクズやカナムグラ、半日陰、半日向に育つヌルデ、ウツギ、サルトリイバラなどが、また草原生のススキ、アズマネザサ(関西以西ではネザサ)などと共に林内に侵入して、いわゆる藪になる。
 里山を保全する場合には、誰が15年ないし25年ごとに伐採するのか、誰が1~3年に1回下草刈りや落葉かきをするのか、定期的な管理の担保が必要である。管理しなければいわゆるジャングル状態になって利用しづらい。外観も荒れた状態になる。木材利用などの目的で植林された人工林や、定期的に管理されている里山の雑木林は、管理を止めたとたんに藪になる、ということを知っておきたい。(37~40頁)
   ⅲ 土地本来の森
  (6)日本各地のマツ、スギ林
  (7)ダイナミックで安定した本物の森
  (8)都市に生活して
 2 命を守る鎮守の森
  (1)阪神・淡路大震災
  (2)ふるさとの森の計算化できない役割
  (3)体感するふるさとの森
  (4)日本の自然保護の歴史
  (5)自然保護から緑環境再生へ

第2章 植生の研究
 1 生物圏と植生
 2 生物圏における人間の位置
 3 植生と環境
  (1)外因:環境
  (2)内因:社会的な掟
  (3)競争力の強弱と分布
  (4)共生
 4 植生の区分
  (1)相観的な区分
  (2)優占種による区分
  (3)植物社会学的な群落区分-種の組み合わせによるー
 5 植生の空間的配分
  (1)水平的な配分-植生図-
  (2)時間的な配分
 6 日本とアジアの植生
 7 ヨーロッパの植生
 8 アメリカの植生
 9 現在の植生
 10 森づくりのステップ
  (1)植栽計画
  (2)樹種の選定
  (3)移植を可能にしたポット苗
  (4)種子(ドングリ)集め
  (5)播種の仕方
  (6)ポット苗をつくる
  (7)植栽対象地の準備
  (8)植え方-植樹祭-
  (9)植栽後の管理
  (10)森の成長に沿った対応

第3章 ふるさとの森づくり
 1 斜面の森
  (1)斜面保全
  (2)これまでの実例
 2 都市・産業立地の森づくり
  (1)産業立地
  (2)道路沿い
  (3)ニュータウン
  (4)公共施設
  (5)商業施設
 3 水辺の防災・環境保全林づくり
  (1)海浜
  (2)ダムと河川
 4 鎮守の森、教会の森
  (1)多神教のもつ意義
  (2)21世紀の鎮守の森

第4章 世界の森づくり
 1 東南アジア
 2 ブラジル・アマゾン
 3 中国とモンゴル
 4 人類の未来と森づくり

エピローグ 本物を目指して-不安の現代から希望の未来へー

参考文献
宮脇昭『森よ生き返れ』(大日本図書、1997年)

『ドングリ図鑑』(フィールド版) 11月6日

ドングリの図鑑』フィールド版(北川尚史監修・伊藤ふくお著、トンボ出版、2007年)を読みました。京都科学読み物研究会編『本から自然へ 自然から本へ ~子どもと楽しむ生きものの世界~』(連合出版、2008年)で紹介されている本です。

『ドングリ図鑑』目次
まえがき
ドングリの成長パターン
 1年成ドングリ、2年成ドングリ
ドングリ各部位の名称
 柱頭、花被、首、肩、殻斗、鱗片、へそ、総苞
  ウロコ状殻斗、リング状殻斗
ドングリのなかま(ブナ科)の特徴
1年成ドングリ/コナラの発芽と成長
 春・夏・秋・冬
2年成ドングリ/クヌギの発芽と成長
ドングリの成長
 春・夏・秋・冬
クヌギ
アベマキ
カシワ
ナラガシワ
コナラ
ミズナラ
ウバメガシ
イチイガシ
アラカシ
シラカシ
ハナガガシ
ウラジロガシ
オキナワウラジロガシ
アカガシ
ツクバネガシ
シリブカガシ
マテバシイ
ツブラジイ
スダジイ
クリ
ブナ
イヌブナ
殻斗の形でグループ分け
 ①殻斗は細長い鱗片に覆われるドングリ
   クヌギ、アベマキ、カシワ
 ②殻斗はドングリを包み込む熟すと3片や4片に裂けるドングリ
   スダジイ、ツブラジイ、ブナ、イヌブナ
 ③殻斗は全体が鱗片で覆われたドングリ
   コナラ、ナラガシワ、ミズナラ、ウバメガシ、マテバシイ、シリブカガシ
 ④殻斗は輪を積み重ねたしま模様で覆われたドングリ
   イチイガシ、アラカシ、ハナガガシ、シラカシ、ウラジロガシ、オキナワウラジロガシ、アカガシ、ツクバネガシ
 ⑤鋭く細長い棘で覆われた殻斗
   クリ(野生種)、クリ(栽培種)
ドングリを食べる幼虫
冬芽
紀伊半島で見られる不思議なドングリ
 葉柄の短いアカガシ
 鋸歯のあるツクバネガシ
 葉が白くないウラジロガシ
落葉を集める
ドングリに似た木の実
 トチノキ、ハシバミ、ツノハシバミ
インドネシア(ジャワ島)と中国(海南島)のドングリ
縄文時代の遺跡から発掘されたドングリの貯蔵穴
うまいドングリ、渋いドングリ
  虫食いドングリの見分けかた
 ①あく抜きをしなくても、炒ったり炊いたり、粉にして団子にしても食べられるドングリ
   クリ、スダジイ、ツブラジイ、マテバシイ、イチイガシ、シリブカガシ、ブナ、イヌブナ
 ②少し渋味があるので、水にさらし、アク抜きして粉にしてから食べる。アク抜きをせず小麦粉と混ぜてドングリ味のクッキーもできる。
   コナラ、ナラガシワ、ミズナラ
 ③青くさくて少し渋いので、ドングリの皮をはずし、水にさらしてアク抜きをして細かくつぶすか粉にして、何かに混ぜて食べる。
   カシワ、クヌギ、アベマキ、ウバメガシ
 ④渋柿ほどではないが渋い。皮をはずしてよく水にさらし、アク抜きをして細かくつぶすか、粉にして何かに混ぜる。
   アラカシ、シラカシ、アカガシ、ツクバネガシ、ハナガガシ、ウラジロガシ

大久保達弘編『ドングリ(コナラ)の絵本』 11月5日

まるごと発見!校庭の木・野山の木⑤『ドングリ(コナラ)の絵本』(大久保達弘編・アヤ井アキコ 絵、農山漁村文化協会、2016年)を読みました。

『ドングリ(コナラ)の絵本』目次
日本の森はどんぐりの木がおおう森
縄文時代から、くらしに身近だった木
 ●ドングリの語源と地方名
しゅるい
 ブナ科の一族の中のコナラ兄弟
 ブツブツ殻斗で落葉樹のナラ兄弟
 シマシマ殻斗で常緑樹のカシ兄弟
 世界に約300種 ヨーロッパでは「森の王」
そだち
 コナラの四季と成木にそだつまで
 春、新芽が開きはじめた!
  ●手入れされた雑木林に、春の妖精が花開く
 1本の木に雄花と雌花 風を頼りに受粉
 初夏から夏の枝葉ののび方
  ●身近な木と友だちになろう!
 昆虫たちが集まるコナラカフェ
 夏から秋、ドングリの成長
  ●ドングリとともに生きるコナラシギゾウムシ
 ドングリは、だれがまく? 冬越し作戦
さいばい
 ドングリを発芽させよう、苗を育てよう
 コナラの二次林と天然林
りよう
 薪、炭、落ち葉 雑木林の利用と手入れ
 炭焼きやほだ木に 材を使おう
  ●クヌギは、人とともに日本にやってきたのか?
 スイーツ、コーヒー ドングリレシピ
里山の木として、ともに生きる
 人に好まれ、利用されることで繁栄してきた木々が、わたしたちコナラや、クヌギなどです。
 わたしたちは、人里近い里山という環境の中で、人とともにくらすことで、生きてきました。
 わたしたちコナラのドングリは、ほとんどを虫や動物に食べられてしまいますが、それでも、毎年必ず芽生えます。切り株から萌芽して、新しい幹になることもできます。
 この強い繁殖力と、人に利用される価値をもったことで里山に広くくらしてきました。
 薪や炭としての利用がなくなって、人が森の管理をしてくれなくなった林に、近年、ナラ枯れという病気が猛威をふるっています。
 里山の雑木林は、物質的な資源としての価値だけでなく、人の心にも大きな癒しをもたらすものです。
 コナラが、これからも人里近くの山や林でくらしていくためには、人とわたしたちコナラとのよりよい関係を真剣に考え、管理のしかたをくふうすることがだいじです。
 福島第一原発事故の放射能の影響で、シイタケの原木としての価値や落ち葉堆肥への影響が心配されています。これからの日本が将来世代にわたって背負わなくてはならなくなった大きな問題です。
 未来へむけて、どうしたらさらによりよい雑木林と人との関係をつくることができるか、考えつづけてほしいのです。(38~39頁)

松原厳樹『落ち葉でしらべよう どんぐりのいろいろ』 11月4日

しぜんたんけんずかん(5)『落ち葉でしらべよう どんぐりのいろいろ』(松原厳樹 絵・文、小峰書店、1999年)を読みました。
 どんぐりとはブナ科のナラやカシの木の実(堅果)のことです。どんぐりはそれぞれがとてもよく似ているので、くべつをするのがなかなかむずかしいのですが、この本ではまず第一に、その木が常緑樹であるか落葉樹であるかに注目してもらいます。つぎに葉の形や色、樹皮のとくちょうをかんさつし、どんぐりのかくと(殻斗:はかまともいいます)についてもていねいにしらべることによって、種類がわかるようにしました。
 木の葉は上の方の枝と下の枝では形がちがうばあいがあります。また生長するとちゅうで色や形がかわることもあり、どれが典型的な形であるかをみつけることが重要になります。落ち葉はたいていのばあい成熟したもので、数も多く、そのうえ高いこずえの葉までまじっていますから、あつめてみくらべれば、典型的な形の葉をさがしだすのに役立ちます。
松原厳樹『落ち葉でしらべよう どんぐりのいろいろ』目次
どんぐりひろい
どんぐりのいろいろ
どんぐりのひみつ
 ○くらべてみよう【ヒマワリと】
どんぐりのなる落葉樹1 コナラ
 ○ゾウムシのいたずら
どんぐりのなる落葉樹2 ミズナラ
 ○オトシブミの芸術作品
どんぐりのなる落葉樹3 クヌギ
 ○どんぐりににている虫こぶ【クヌギタマフシ、ナラタマフシ】
どんぐりのなる落葉樹4 カシワ
どんぐりのなる常緑樹1 シラカシ
 ○シラカシとウラジロガシの葉をくらべると
どんぐりのなる常緑樹2 アラカシ
どんぐりのなる常緑樹3 アカガシ
 ○木のうろは動物のたいせつなすみか
どんぐりのなる常緑樹4 マテバシイ
 ○どんぐりごまにきれいな色をぬるには【下塗りに白色のジェッソをつかう】
どんぐりのなる常緑樹5 スダジイ

森廣信子『ドングリの戦略』 11月3日

森廣信子『ドングリの戦略』(八坂書房、2010年)を読みました。
ドングリの気持ちで森を見る! 食べ尽くそうとする動物との攻防、木と木の間の駆け引き、一本一本の木の個性的なふるまいなど、森の営みを象徴する「ドングリ」のすべて(書籍の帯より)。

森廣信子『ドングリの戦略』目次
1章 人はなぜドングリを拾うのか
 雑木林にて
 栄養としての魅力
 人、ドングリを食べる
 ドングリの謎

2章 ドングリとは何か
 クリもドングリの仲間
 どこで出会える?
 【コラム】分類と種
 日本のドングリ
  コナラ属
  マテバシイ属
  シイ属
  クリ属
  ブナ属
 世界のドングリ
  北半球
  南半球
 ドングリの誕生
 ドングリの形と大きさに見られる個性

3章 奥多摩のドングリ
 奥多摩の森
 ドングリの個性が気になる
 落下量を調べる
 【コラム】ドングリの数を調べる方法
 調査の始まり
 さまざまな落下物
 落下パターン
 気象の影響
 ドングリの重さが変わる
 枯死する母樹たち
 間伐の影響
 実のなる年ならない年
 結実変動の大きさを比べるには
 木と木は同調しているか
 同調の広がり
 種間同調

4章 ドングリをめぐる動物たち
 動物に狙われるドングリ
 樹上の昆虫
  ハイイロチョッキリ
  コナラシギゾウムシ
 樹上の哺乳類と鳥
  ツキノワグマ
  ニホンザル・ニホンリス・ムササビ・ヒメネズミ・カケス
 地上の動物たち
  ツキノワグマ
  ニホンジカ・イノシシ・ニホンリス
 夜の森の動物たち
 食物の貯蔵
 貯蔵の仕方
 貯蔵食糧の量
 哺乳類のことはわからない

5章 タネをまく木々-生き残り戦略-
 果実がおいしい理由
 種子散布
  風の利用
  水の利用
 動物の利用
  その1~4
  自動散布
 散布によって種子が動く範囲
 ドングリは転がらないほうがいい
 結実変動は、動物にどんな影響を及ぼすか
  コナラシギゾウムシの場合
  コナラシギゾウムシの休眠期間
 大型動物はどうか
 野ネズミには影響が大きいか
 選ばれるために
  八王子の森のリス
  八ヶ岳の森のリス
  奥多摩のリス
 苦いドングリは体に悪い
 動物はドングリを味で選ぶか
 味と大きさで動物をあやつる
 選ばれやすさが変わる?
 ブナ科の祖先の種子散布
 ブナ科の果実の進化
 【コラム】ブナ科の分類と分布
 形の経済
 ドングリが大きくなったわけ
 東アジアの森のドングリの進化
 栄養と渋味の多様化

6章 結実変動があるのはなぜか
 結実変動が起こる原因を探る
 結実変動の多様性
  熱帯林の一斉開花
  タケの一斉開花・結実
  同調繁殖
  同調繁殖の広がり
  結実変動の周期性
 結実変動の要因は何か
  仮説①風媒花の受粉効率
  仮説②捕食者飽食
  仮説③環境予測
  仮説④資源適合
  仮説⑤動物送粉者
  仮説⑥ 動物散布
  仮説⑦繁殖の付帯コスト
  仮説⑧大型種子
  風媒花の受粉効率仮説の検討
  捕食者飽食仮説の検討
 植物によって異なる事情
 同調繁殖を導く要因

7章 個性的な木々
 「ドングリの背比べ」はほんとうか
 ドングリの重さを比べる
 野生の樹木が持つ豊かな個性

8章 駆け引きする木
 豊凶を作る個体
 風媒花の受粉効率仮説に関する「井鷺モデル」
  エネルギーの蓄積と消費に関する仮定
  不作は受粉失敗によって起こるか
 樹木の生長とドングリ作り
 樹木の死
 間伐からの再生過程でのドングリ作り
 ドングリを作る意味

9章 ドングリをめぐる複雑な関係性
 一対一の関係
 第三者の介入
 貯蔵をめぐる争い
 結実変動の大きさの解釈
 失われた関係性
  東京都最奥の森のドングリ
  共存するドングリの関係

あとがき

※奥村みほ子「堅果-森のネズミの冬の食料-」(大日本山林会『山林』2008年1月号)

※林典子・井上真理子・大石康彦「アカネズミの食性調査手法の簡易化と環境教育における利用の試み」『森林総合研究所研究報告』10巻3号、2011年)

小田英智『ドングリ観察事典』 11月2日

自然の観察事典⑯『ドングリ観察事典』(小田英智構成・文 久保秀一写真、偕成社、1998年)を読みました。京都科学読み物研究会編『本から自然へ 自然から本へ ~子どもと楽しむ生きものの世界~』(連合出版、2008年)で紹介されている本です。

ドングリをみつけに雑木林にでかけてみませんか。[カバーより]
 ●ドングリのなる雑木林って、どんな林なのでしょう。
 ●細長いドングリや丸いドングリがあるのは、なぜ?
 ●ドングリの実は種子です。
 ●ドングリの花をみたことがありますか?


小田英智『ドングリ観察事典』目次
 雑木林にいってみよう
 ドングの実のなかまたち
 春をまつコナラの冬芽
 芽ぶきの季節
 コナラの花の季節
 新緑の季節のオトシブミ
 赤ちゃんドングリの成長
 緑のなかの小さな妖精
 幹の成長
 雑木林の樹液の広場
 秋にむかってそだつドングリ
 ドングリの実に産卵するゾウムシ
 色づいて落ちるドングリの実
 秋のみのりをまつ動物たち
 ドングリの実であそぼう
 落ち葉の世界
 ドングリの実の発根
 ドングリの実の春の芽ぶき

 さくいん
 食品としてのドングリ
 あとがき
あとがき
 ドングリの実がなる雑木林は、いつ行っても、なにか収穫があります。めずらしいオトシブミが葉をまいていたり、大きなクワガタムシが樹液をなめていたり、シギゾウムシが梢を飛んでいたり、いつでも期待を裏切りません。林をふきわたる四季おりおりの風や、かわいいドングリの実の成長も、楽しみの一つです。
 雑木林は、炭や肥料を得るために、人間がつくりだした林です。そのため、多くの昆虫だけでなく、鳥や獣たちにとっても安住の場所となっていました。
 しかし、燃料の炭は石油にかわり、落ち葉の肥料も化学肥料がつかわれるようになり、雑木林は資源としての価値を失いました。そして、多くの雑木林が宅地などに開発されてしまいました。残った雑木林も、人間の手によって管理されることなく、荒れはて、老齢化してきています。
 いま、私たちは、人工の都市空間のなかで、ある種の息苦しさを感じています。生命感の乏しい空間で、自然の息ぶきを求めています。近くに、まだ、ドングリの実がなる雑木林が残っていたら、いちど足を運んでみませんか。林の梢をさらさら鳴らしてわたる緑の風が、朽ちた落ち葉の豊潤な香りが、私たちをやさしくむかえてくれます。そこには、私たちが失ってきたものが、たくさんあります。
 豊かな自然の空気をたっぷり呼吸したら、ゆっくりと、こうした雑木林を私たちのまわりに再生させる妙案を考えてみようではありませんか。自然と人間の豊かな共存の方法を……。 (小田英智)

七尾純『ドングリ』 11月1日

自然たんけん⑮『ドングリ』(七尾純 構成・文 佐藤有恒 指導、国土社、1986年)を読みました。京都科学読み物研究会編『本から自然へ 自然から本へ ~子どもと楽しむ生きものの世界~』(連合出版、2008年)で紹介されている本です。

七尾純『ドングリ』目次
どんぐりがみのって
どんぐりのいろいろ
どんぐりをおとして
冬を越して


 芽ぶきの季節
  雑木林にいった日・いったところ
  見つけた花の○に色をぬりましょう
 雑木林は人工林
 お花とめ花
 風のたすけをかりて
  ためしてごらん・よくみてごらん[雄花]
  よく見てごらん・たしかめてみよう


 いっぱいに葉をひろげて
 木の一日
  どんな虫がくるかな? 見つけたら○に色をぬろう(日中・夜間)
 そだつ小さなドングリ[コナラとクヌギの比較]
 ドングリは実? たね?
  はかってごらん
  ためしてごらん
 葉やドングリを食べて
  オトシブミのゆりかごをさがそう
  ドングリを切ってみよう
  虫こぶをさがそう
  虫こぶを、見たとおりの大きさに、スケッチしよう
  虫こぶの大きさをはかろう


 ドングリの成長
 ドングリを切る
  ドングリをスケッチしよう
 クヌギは2年がかりで
 ドングリの成熟
 おちるひみつ
  ためしてみよう・よく見てごらん


 落ち葉にまもられて
 ドングリのひみつ
  そだててみよう
 冬の雑木林
 ●落葉のなかの虫たち
   フユシャクのかんさつ
   落葉をめくってみよう
   しげみをのぞいてみよう
   木のくぼみやすきまをのぞいてみよう

あとがき

あとがき
 太平洋戦争が終わりに近づいたころ、日本はとても貧しい生活をしいられていました。ほとんどの若者が戦争にかりだされていったので、田畑を耕すにも人手が足りず、少ししか食料を収穫することができなかったからです。
 そんなとき、四季折々にゆたかな食べ物をそなえてくれたのが雑木林です。雪解けにはタラの芽、ノビルの芽、春にはカタクリ、ワラビ、ゼンマイなどなど、細縄であんだカゴを背負って、雑木林を歩きまわったものでした。
 夏がくると雑木林は、ひもじさをわすれさせてくれるほどの楽しみをあたえてくれました。虫とりです。まだ暗いうちに起きだして、秘密の樹液の泉にでかけたものでした。
 そして秋はキノコ狩りやドングリひろい。キノコ狩りはお年寄りの役目、ドングリひろいは子どもの役目。兵隊さんに送る食料として、トラック3台分もひろわなければなりません。「こんなもの食べられるべかなあ……」といぶかりながらも、何日も雑木林をはいまわったものでした。そしてごほうびはキノコ汁。
 こんな思い出がしみついているせいか、大人になった今でもときどき雑木林を訪れないと気がやすまりません。しかしざんねんなことに、雑木林がつぎつぎに姿を消しています。人々の暮しが雑木林に依存しなくなったせいで、自然のゆたかさがかえりみられなくなったからでしょう。
 雑木林は2次林、つまり人間が自然と助け合って暮らした記念樹です。雑木林は今でも、人間が自然の一員として守らなければんらないルールを教えてくれます。わずかに残された雑木林に足を踏み入れるたびに、私の耳に木々のささやきが聴こえてくるようです。「これでいいのですか?」      七尾純

日高哲二『子どもとの自然観察スーパ-ガイド』④ 10月30日

 3  ドングリウォッチングの構成
  【コラム】最初が肝心
  【コラム】絵本を使おう
  【コラム】下見で決まる観察会の成否
  【コラム】観察を深める言葉のキャッチボール】
  【コラム】観察会の主導権は参加者にある】
   【コラム】最初が肝心(93頁)
 観察会の最初の10分間は、とても大切な時間である。この間に、参加者の気持ちをどれだけ今日のテーマに引きつけられるかで、そのあとがうまく流れるか、ぎこちないものになるかが決まるといってもいい位だ。観察会のはじめに、案内役のガイドが最初に口を開く瞬間は、参加者全員が注目し、期待する時である。長々とあいさつを続けたり、いろんな注意事項や連絡などに使うのはもったいない。簡単にあいさつを切り上げ、すぐに本題に入ろう。「おやっ」と思わせる意外な切り口で始めると、参加者を引きつけ、その後の観察にうまくつなげられる場合が多い。特に「ドングリウォッチング」といった漠然としたテーマの時には効果を発揮する。
   【コラム】絵本を使おう(95頁)
 最近は観察会に使える絵本が多く出版されていると感じる。斬新な視点から身近な自然を紹介する絵本を目にする機会が多いからだ。これらは絵が個性的で、大人も引きつける力を十分持っている。昆虫や植物の一部分を大写しにした写真や考え抜かれた構図で風景を撮影した本もある。どれも、大勢の人が一度に見るのに十分な大きさを持っている。
 自然を扱った絵本は、学校の図書館に入れておくだけでも子どもたちによい影響を与えると思う。しかし、観察会のガイドや先生が子どもと一緒に野外で使うともっと力を発揮することだろう。ふだんから、どんな内容の絵本があるか、図書館や本屋をのぞいておくと、きっと役立つ日がやってくる。
   【コラム】下見で決まる観察会の成(101頁)
 観察会の前には必ず下見を行う。これはとても大切。この時に、観察テーマやねらいに合わせ、参加者が面白く感じたり関心を示しそうなものを見つけておく。その後で、テーマやねらいが無理なく展開できる当日の流れを組み立てる。
 今回の観察会では、ドングリが落ちてすぐに根を出すこと、それを参加者に発見させることを柱に据えた。そこから発展させて、ドングリとほかの生き物とのかかわりをとらえ、ドングリから時間の流れを感じてほしかった。ただし、これは下見の時点で、直接観察できないとわかった。そこで、不自然な場所に見られる芽生えを見つけてその理由を考えたり、大木が生える場所に立ち、一粒のドングリから成長するまでの時間を感じるなど、頭の中で作業をつなぎあわせる手法を取ることにした。そのためには、下見の時に、それができる場所を見つけておくのである。
   【コラム】観察を深める言葉のキャッチボール(107頁)
 観察会では、参加者に「あれっ、何だろう」と思わせ、もっと知りたい、よく見たいと思う気持ちを起こさせることが重要だ。つまり、観察の動機づけをいかに行うかである。そのために、観察会当日までの間、参加者を自発的に動かす言葉を考える。さまざまな人の年齢や顔つきを頭の中で描き、いろんな言葉で、観察の視点や自然の不思議を投げかけてみる。そして、どれがいちばん彼らのひとみを輝かせるか想像する。うまくいきそうな言葉を思いつくと、忘れないように記憶する。メモはしない。当日はメモを読みながら案内できないので、ひたすら頭に入れる。
 話すと同時に聞くことも大切だ。ぼくは観察会の中で、説明をなるべく控えるように心がけている。その代わり、参加者にたくさんの問いかけを行っている。みんなが知っていて簡単に答えられるもの、誰でも観察すればわかる問いを考え使っている。それは、参加者から戻ってくる言葉を使いたいからだ。参加者が発する短い言葉の中に、観察を深めるための視点が含まれていたり、新たな疑問が見つかる。そこには、ガイドの言葉より、ほかの参加者を共感させ、動かす力がある。
   【コラム】観察会の主導権は参加者にある(111頁)
 ぼくは観察会の間、参加者の興味や関心がどこにあるのかを絶えず探っている。参加者の顔つきや雰囲気を読みながら、頭の中で言葉を選び使っている。だから、せっかく用意した言葉を使わずに終わることも多い。それでもいいと思っている。参加者の様子から判断して、次に予定していた観察に関心が向かないと感じたら、変更することだってある。だから、いつも事前に作った計画どおりに進行するとはかぎらない。
 大人と子どもが一緒の場合は、子ども中心に話をする。……
 歩く時は、小さい子どもや年配者に歩調をあわせるようにしよう。休憩時間を取ることも大切だ。その場の雰囲気をうまくとらえ、参加者が疲れる前に休む。休憩は何もしない時間ではない。気持ちのいい場所で、風や周囲の音に耳を傾ける時間を取ったり、遠くの景色を眺める時間を作ることで、観察しながら体や精神の疲れを取る。観察会の流れを断ち切らずに、参加者の判断で休めるようなさりげない配慮がほしいものだ。

日高哲二『子どもとの自然観察スーパ-ガイド』③ 10月30日

 3  ドングリウォッチングの構成
  ●ドングリ会議
  ●ドングリの話をしよう
  ●根はどこから出るのかな
  ●スダジイの子ども
  ●スダジイの子ども
  ●スダジイの森を歩く
  ●スダジイの大木の前で  
    ドングリ会議
……三宅島には、ドングリをつけるクヌギやコナラ、カシの木が一本も生えていない。この島でドングリと呼べるのはスダジイの実だけだ。今日のテーマは、秋の森でシイのみをじっくり観察し、面白い発見をしたり、シイの実から森のしくみを考えることだ。(85頁)

[こうやすすむ『どんぐりかいぎ』(絵・片山健、福音館書店)を読む]
   ドングリの話をしよう
「ここで、ドングリを好きなだけ拾ってください。15分くらいたったら、声をかけますから集まってくださいね」
「みなさん!たくさん拾ったようですから、こちらのテーブルのある場所に集まってください」
「イスに腰かけて、テーブルに拾ったドングリを広げてください」
「たくさん拾った人がいますね」
「ひとつひとつのドングリを比べてみましょう。形や大きさはどうですか。色に違いがありますか」
   根はどこから出るのかな
「さて、地面に落ちたあとのドングリはどうなっているか、もう一度林の中で見てみましょう」
「あれ。なんか実から出ている。芽かなぁ?」
「みなさん。ちょっとこちらに集まってください。ここに面白いものがありますよ」
「ほら、このドングリからひもみたいな、白くて長いものが地面に伸びているでしょう。これなんだと思いますか?」
 観察会は知識を伝達する場ではなく、自然の中に潜む不思議を見つけ出し、自身の観察や推理によって答えを導く過程を楽しむ場なのだ。(97頁)
「芽かな?」「いや、根かもしれない」
「実から出ているこの白いものは、どこに伸びているの」
「みなさんも自分で、根が出ているドングリを見つけてください。根はドングリのとがっている側と丸まっている側のどちらから出ているかも調べてくださいね。それと、芽が出ているものを見つけたら教えてください」
   ●スダジイの子ども
「ところで、今年の春に出た芽があったはずですが、気がつきましたか?」
「昨年はドングリが不作の年だったので、芽生えが少なかったのでしょう。それにしても、葉をつけるまでに成長するものは意外と少ないですよね」
   スダジイの森を歩く
 ずっと同じ場所で、下ばかり見ていたので、飽きてきた子どもがいるようだ。これから少し趣向を変え、歩きながら観察を続けることにする。(102頁)
 ぼくを先頭に、一行は池に向かう遊歩道を一列になって進む。今日は、参加者が多いので列も長くなる。ここまで、集中して観察を続けたので、リラックスした雰囲気が必要だ。観察会に詰めこみは禁物。集中はゆとりから生まれる。緊張とリラックスのメリハリを交互に保たせることが大切なのだ。参加者がお互い自由なおしゃべりができるように、全体への呼びかけはせずにゆっくり歩く。今日紹介したくて準備した観察項目は、あとふたつだけ。その場所に着くまで何も話す必要はない。(103頁)
 えぐれた部分の最も奥なので、落ちただけではこの場所に転がらないとすぐにわかる。一度道に落ちてから跳ね返ったとしても、かなり急な坂を上がらなければならない。林の中なので、強い風で吹き飛ばされたとは考えにくい。そうやって、自力で落ちた可能性を否定していると、「ヤマガラがくわえて運んできたドングリが、芽を出したんだよ」と子どもが答えた。(103~104頁)
「この芽生えは、ヤマガラの食べ残しかもしれませんね。それでは、ヤマガラがドングリを土の中に画す時、とがっている側と丸まっている側のどちらを先にして埋めこむんでしょうか」
「誰か、ヤマガラがドングリを隠すところを見たことはありませんか」
「それでは、推測するしかありませんね。もし、みなさんがヤマガラだったら、ドングリを土に埋めこむ時はどっちを先にしますか」
「ドングリにとっても、とがっている側が土の中にあれば、そこから根が出るので都合がいいよね。でも、本当のところはどうだろう? 確かめてみないとわからないね。これからヤマガラの行動に気をつけて、自分の目でドングリのどちら側を先に隠すか確かめてください」
 ぼくは、疑問はわからないままで残しておくことも必要であると考えている。気になれば自分で確かめたいと思うものだし、観察会の中だけですべてわかってしまうより、未解決部分がある方が、日常的に自然に目を向けるようになる。それが自然を見る目を養うことにつながっていくと思う。(105頁)
   スダジイの大木の前で
「これもスダジイです。こんな大きな木も始まりは一個のドングリでした。ほら、みなさんの足もとに落ちている実の一つですよ」
「毎年たくさんの実が落ち、その中から運のいいものだけが芽を出し葉を広げます。その中には、ヤマガラに運ばれ土の中に隠されながらも、食べられずに芽を出したドングリが含まれているかもしれません。でも、林の中には、小さいシイの木があまり見当りませんよね」
「何百年も生きられる木は、とても幸運の持ち主だと思います。たくさんんのドングリの中から、奇跡と言えるくらいの確率で生きている一個が、いま目の前に立つこの木です。そして、この木は多くの命を支えています」
 ここでは、小さなドングリを題材にしながらも、頭の中で自由に空想することで、時間と地理的な視野をぐっと広げられること。それから、スダジイが島にたどり着く過程を考えながら、自然を推理する楽しさとロマンを感じてもらいたかった。(112頁)
「じゃあここで、お一人ずつ、今日の感想を簡単に言ってください」
 いつも最後に、参加者から感想をもらうことにしている。これは、今日の自分への反省材料だ。参加者がどこに興味を持ち、何を感じたか、何が印象に残ったか、次の観察会に向けて参考になる話が多い。
 全員の感想を聞き終え、最後に一言。
「今日は、小さなドングリを通して、大路池のまわりの自然を見てきました。みなさんの家の近くでも、ちょっとしたことから、自然の面白さ、不思議がきっと見えてくると思います。家に帰ってから今日のことを思い出し、探してみてください。ありがとうございました」
 これは、ぼくの定番になっている終わりのあいさつ。自然観察は、観察会の中だけで行うものではない。本当は、日常生活の中で行うものだと思っている。それが、日々の暮らしをきっと豊かにしてくれるものだから。そうぼくは信じている」(113頁)

日高哲二『子どもとの自然観察スーパ-ガイド』② 10月30日

章末にある「観察会実施の流れ」から。スダジイしかドングリの木はない三宅島での観察会であることを忘れずに。

観察会実施の流れ
(115頁)
1 テーマとねらいを決める
2 日時、場所を選ぶ
3 参加者の想定
4 下見とプログラム作成
5 コース、所用時間の検討
6 備品の準備
7 観察会実施
8 反省

テーマとねらいを決める(114頁)
 ①ドングリの観察を通して、自然に興味、関心を持たせる。
 ②植物と動物の関係、森の成り立ちについて考えるきっかけとする。
 ③一粒のドングリが大木になるまでの時間の流れを感じさせる。

下見とプログラムの作成(114頁)
 ①ドングリには豊作の年と不作の年があることを知る(室内)
 ・読物によって、豊作年と不作年が訪れる意味を知り、ドングリに関心を持たせ、観察会の導入とする。
 ②ドングリを拾い、形、大きさ、色を観察する。
 ③実の色と違いがあることを知り、その意味を考える。
 ・黒い実と茶色の実があることに気づく。[以下略]
 ④木から落ちた実はどうなるか確かめる。
 ・地面に落ちた実から根が出ていることを発見する。
 ・芽は出ていないことを確認する。
  *実は落ちるとすぐに根を出し、春に芽が出る。
 ⑤前年に落ちた実の芽生えを探す。
 ・崖の途中や朽木の幹の中など、不自然な場所から発芽している芽生えを見つけその理由を考える。
 ・ドングリを隠すヤマガラの行動を知る
 ・ヤマガラがドングリを隠す様子を想像する。
 ・ドングリとヤマガラのかかわりについて考える。
 *ヤマガラにはドングリが大切な食糧になり、ドングリにはヤマガラが分散を助けている。
 ⑥一本の大木を見て考える
 ・大木を見ながら一粒のドングリから育つまでにかかった時間を感じる。
 ・大木が多くの命を支えていることを観察する。
 ・スダジイが三宅島にたどり着き、定着するまでの物語を想像し、観察会のまとめとする。

日高哲二『子どもとの自然観察スーパ-ガイド』① 10月30日

日高哲二さんの『子どもとの自然観察スーパ-ガイド』(築地書院、2001年)は11月18日に市民の森で実施する自然体験プログラムの企画にあたり読み込んだ本のひとつです。
ドングリの木はスダジイしかない三宅島が舞台ですが、第3章ドングリウォッチングは大変勉強になりました。プログラムの組み立てだけでなく、参加者との巧みな言葉のキャッチボールはすぐにでも使えそうです。
あとがきに
「あなたが、子どもたちと行っている観察会の様子を、言葉に注意して記録しておくといいわよ。子どもたちを動かす言葉が、大切なのよね。だって学校で自然を観察しようと思っても、なかなかやり方がわからないし、そもそも、何で観察するのか考え方がはっきりしてないもの。こんなことが書いてある本があればいいのに。ねぇ、記録がたまったら、本にしてだしてよ」
 ある日、アカコッコ館の観察会に参加した妻は、ぼくが家に帰るのを待ちかまえて、こう言った。これは、本書を書くきっかけとなった。(282頁)
ありますが、亡くなった奥様の願いを実現した作品になっています。

日高哲二『子どもとの自然観察スーパ-ガイド』目次
 はじめに
 本書の利用のしかた
1 伝えたいこと
2 三宅島
3 ドングリウォッチング
4 大路池[だいろいけ]へ行こう
5 見よ!植物のパワーを
6 みんなで一緒に自然クイズ
7 春を探そう
8 子どもと一緒に自然をみよう
 あとがき
 参考文献
 著者紹介

セイタカアワダチソウの刈り取り 10月24日

岩殿D地区の下の段のセイタカアワダチソウを刈り取りました。前回7月23日から2ヵ月ぶりです。10月18日に刈った岩殿F地区上段のものよりは、小型で開化が遅れていました。
PA250005

※井手久登・亀山章編『緑地生態学』(朝倉書店、1993年)4.2 草地の植生管理(前中久行)
(4)草地の植生管理の手法 b.刈取り
 刈取りの時期や間隔の効果は植物季節と関連する。たとえば一年生の好ましくない植物については、種子が成熟する以前に刈り取ることで防除できる。
 多年生の草本植物は一般に次のような生活サイクルをもつ。すなわち、前の生育期間に地下部に蓄えた貯蔵物質を用いて春に急激に葉や茎を増大させて初期生育を行う。この期間においては地下部の重量は減少する。その後、展開した葉によって光合成を行い、光合成産物を地上部器官の拡大に振り向ける。地上部の拡大に必要な量以上の光合成が行われた場合は、これを地下部に回収蓄積して次の成長期間に備える。これよりも短い間隔で刈取りを繰り返せば、その植物は持続されず、より短期間に貯蔵物質を回収できる植物種と置き換わることになる。
 セイタカアワダチソウでは地下部の蓄積は8月以降にはじまる。それ以前では光合成生産の50~60%が葉へ振り向けられる(前中・平田、1982)。地下部の再蓄積が始まる以前に、光合成器官を取り除かれた場合には、地下部に残された貯蔵養分を用いて光合成器官を再生させる。このために刈取り後のセイタカアワダチソウの地下部重は図4.11【略】のように減少する。地上部の成長に振り向けた地下部の貯蔵物質が回収される以前に刈取りが行われると貯蔵物質の収支は負となる。6月から9月まで時期を変えて刈り取った場合の成長シーズンの終わりにおける地下部の現存量は、地下部への蓄積が開始される8月に刈り取ったときに最も小さくなった
 また刈り取る時期によってその後の成長や開花・結実の状況も異なった。すなわち6月刈や7月刈では、無刈と同じ時期に開花し、花序、草丈ともに小型化したために、鑑賞にも適している8月刈では開花期が約1か月遅れて花序はさらに小型化する(図4.12、4.13)【略】。9月刈ではわずかに再生したのみで、開花しなかった。これらの結果からセイタカアワダチソウの消滅を目的とする場合には、6月に1度刈り取り、その後地上部の再生によって地下部の蓄積養分を消費させ、さらに地下部への養分の蓄積がはじまる9月ごろに再び刈り取るのが効果的である。またある程度成長を抑制し、開花させるためには、6月または7月ごろ刈り取るのがよい。この場合に枯れ草を取除く目的で、11月中旬以後に再び刈り取ることが望ましい。(153~155頁)

岩田好宏『植物誌入門 多様性と生態』第2章 9月30日

今日は、児沢の下の田んぼで田んぼの学校・教室の稲刈りを実施する予定でしたが、台風による降雨が予報されていたので、28日までに中止の連絡をいけぶくろ自然クラブとTOTOの皆さんにしました。

岩田好宏さんの『植物誌入門 多様性と生態』(緑風出版、2010年9月)「第2章 植物の光をめぐる争い」を読みました。岩殿D地区の下の段と上の段、岩殿F地区の上の段はセイタカアワダチソウの群落があります。この部分は土壌が常時湿気っていることはないので作付けが可能とみていますが、当面、セイタカアワダチソウの群落の拡大を抑止するために適切な時期に草刈りをしながら、モニタリングをしていくるつもりです。

 『植物誌入門 多様性と生態』第2章植物の光をめぐる争い目次
1、植物の基本構造 植物群落の生産構造
   門司・佐伯研究との出会い
   植物の基本構造 生産構造
   なぜ生産構造図というか
2、相対照度から生産構図を描く試み
   相対照度と積算葉量
   パイプモデル説
3、生産構造図から物質経済を読み取る
   数学モデル
   積み上げ方式
4、生活の基礎としての物質経済
   草原・森林の葉面積密度
   植物の経済生活を具体的にみる
5、植物の光をめぐる争い
   なかま争い
 セイタカアワダチソウは、地中に横に伸びている茎があり、そこから枝のように地上茎を垂直に伸ばして生育します。地上の茎はたがいの間隔を広くとっていませんから、密集した群落をつくります。また2mをこえる茎を伸ばしても、花期をむかえるまでは枝分かれしません。この地上の葉のついた茎は一本の個体のようにみえますが、地中の横走り茎でたがいにつながっていますので、個体ということはできません。当然のことながら最初の生育の時には前年に合成されて地中茎に蓄えられた栄養物資が利用されます。ですから地中の茎とそこから出ている地上部全体が一つの個体です。地上に出ているものは、その個体の部分ということになります。地上に出ているものは一つの個体ではありませんが、個体のような形態をして、後で紹介しますように、たがいに争いをしますので、便宜上、「地上個」というように呼ぶことにします。(68頁)
   なかま争いはあった
   争いに勝つのも生活がきびしい
   争いの過程を調べる
   茎の太さの意味
   なかま争いの結果と優劣を決める要因
 セイタカアワダチソウのなかま争いは、生きものにとってもっともきびしい、生きるか死ぬかという結果を生みだしました。調査結果の範囲でいいますと、第1回の調査日であった5月1日の時は、争いはさほどひどくありませんでしたが、つぎの1ヶ月も経たない5月27日までの間では発生していたと予想できます。この間に、あとから芽を出して生まれてきたものが多くあって、数のうえで読み取ることができませんでしたが、その一方で、すでに枯れ死んだものがいたと思われます。その後さらに1ヶ月経ったところでは、明らかに地上個数が減少し、それからさらに1ヶ月近い間に、減少はさらにはげしくなりました。7月9日から8月4日の間に半数以上のものが消えていました。
 もう一つ、生き残っているもののなかには、背丈がさほど低くないのにやせ細っているものが、多数みられました。それはさらに争いが続けば、まちがいなく枯れ死ぬという危機のなかにあるものたちです。
 こうした優劣の差別がどこから生まれたのかという理由も、つぎのようなこととわかりました。
 (a)冬越ししたあとの地上個の大きさのちがい
 (b)冬越ししたものと地中茎からのちに生育を始めたものとのちがい
 (c)以上の二つのことが原因しながら、光をめぐる争いに勝ったものと敗れたものとのちがい
 (d)地中茎から出た地上茎の太さのちがい (78~79頁)
おわりに
   環境が異なれば物質経済も変わる

生育地特性で草本を分類して、それぞれのグループがどこに生育しているかをマッピングし、それに応じて目標植生と管理のレベルを変える

高柳芳恵『わたしの研究11 どんぐりの穴のひみつ』 9月3日

高柳芳恵『わたしの研究11 どんぐりの穴のひみつ』(絵:つだかつみ 偕成社、2006年)を読みました。

高柳芳恵『わたしの研究11 どんぐりの穴のひみつ』目次
1 「どんぐり虫」との出会い
2 どんぐりの穴あけのひみつ、みつけた!
3 穴の数≠幼虫の数
※どんぐりもちのつくり方
4 どんぐりの穴の犯人をさがそう
5 魔法の部屋に守られて―シギゾウムシの幼虫は長生き
6 二種類のどんぐりの穴―シギゾウムシの産卵
7 小さなお母さんの大きな仕事―ハイイロチョッキリの産卵
8 そんなに食べて大丈夫?―ハイイロチョッキリは大食漢
9 とびだす蛹―ガのなかま
10 穴あけは他人にまかせて―寄生バチ
11 親子同居のマイホーム―キクイムシ
12 穴あけはできないけれど―虫こぶ
13 「どんぐりの穴」は、みんなちがう
14 「どんぐりの穴」からの贈りもの
あとがき
※高柳芳恵『わたしの研究11 どんぐりの穴のひみつ』紹介ページ
   →どんぐりの穴のひみつ|3年生|小学生のための読書案内|家庭学習研究社
   →しらべてみよう! | 国立国会図書館キッズページ

ドングリの本いろいろ 8月30日 

京都科学読み物研究会編『本から自然へ 自然から本へ ~子どもと楽しむ生きものの世界~』(連合出版、2008年)

〈目次〉
はじめに
科学と子どもたちのよりよい出会いのために
第1章 植物
 ヒマワリ つる植物 たね マメ ドングリ ジャガイモ やさい コケ・シダ
 【コラム】 【やさしい自然教室】←各章にあり
第2章 昆虫など
第3章 両生類 爬虫類
第4章 鳥類
第5章 哺乳類
後書きにかえて
やさしい自然教室の地図
つくる・あそぶ・実験
やさしい自然教室の歩み
読書会のテーマ

科学と子どもたちのよりよい出会いのために
 子どもの科学読み物は、科学の本質的なことがらを難しい言葉を使わずに、わかりやすく、そして興味を引き出すように工夫して書かれています。そこが私たち大人にもおもしろく魅力のあるところです。子どもが読んでおもしろいものは大人も楽しく読めます。その意味で、子どもの科学読み物は子どもはもちろんのこと、いろいろな世代の人たちがいっしょに楽しむことができる本だといえるでしょう。またそのような本の出版を私たちは望んでいます。(4頁)

 私たちは子どもの科学読み物という視点で本を選んだので、大人向けの本であっても、子どもが興味をもって読める本は取りあげました。ぜひ、図書館に行って、一冊だけでなく何冊か読んで、知りたいと思うテーマを深めてほしいと思います。……(5頁)

ドングリ(2003年11月読書会・担当:笠川 高嶋)
 林のどんぐり
  新日本動物植物えほん15
  広井俊男 文 伏原納知子 絵
  新日本出版社 1982年

 どんぐり
  フレーベルの科学えほん36
  米津景太 絵 岡本素治 指導
  フレーベル館 1983年

 どんぐり
  かがくのとも傑作選
  こうやすすむ 作
  福音館書店 1988年(1983年175号)

 どんぐりだんご
  かがくのとも特製版
  小宮山洋夫 作
  福音館書店 2004年(1984年187号)

 どんぐりかいぎ
  かがくのとも傑作選
  こうやすすむ 文 片山健 絵
  福音館書店 1995年(1993年295号)

 ドングリ
  えほん・フォトかみしばい13
  清水清 監修 七尾純 構成・文
  あかね書房 2001年

 山のごちそう どんぐりの木
  絵本〈気になる日本の木〉シリーズ
  ゆのきょうこ 文 川上和生 絵
  理論社 2005年

 カシの木
  ゴードン・モリソン 作 越智典子 訳
  ほるぷ出版 2006年〈2000年〉

 ドングリ
  自然たんけん15
  七尾純 構成・文 佐藤有恒 指導
  国土社 1986年

 ドングリ
  科学のアルバム
  埴沙萌 著
  あかね書房 1987年 新装版2005年

 ドングリ観察事典
  自然の観察事典16
  小田英智 構成・文 久保秀一 写真
  偕成社 1998年

 どんぐりノート
  いわさゆうこ、大滝玲子 作
  文化出版局 1995年

 落ち葉でしらべよう どんぐりのいろいろ
  しぜんたんけんずかん5
  松原厳樹 絵・文
  小峰書店 1999年

 ドングリ図鑑
  北川尚史 監修 伊藤ふくお 著
  トンボ出版 2001年 フィールド版2007年

 探して楽しむ ドングリと松ぼっくり
  森の休日2
  平野隆久 写真 片桐啓子 文
  山と溪谷社 2001年

 日本どんぐり大図鑑
  徳永桂子 著 北岡明彦 監修・解説
  偕成社 2004年

 ドングリクッキー 縄文時代の食事を体験しよう
  発見!体験!日本の食事!
  次山信男 監修
  ポプラ社 2002年

 森よ生き返れ
  ノンフィクション・ワールド
  宮脇昭 著
  大日本図書 1999年

 ドングリの謎 拾って、食べて、考えた
  盛口満 著
  どうぶつ社 2001年

 どんぐりの穴のひみつ
  わたしの研究11
  高柳芳恵 文 つだかつみ 絵
  偕成社 2006年

 どんぐり見聞録
  いわさゆうこ 著
  山と溪谷社 2006年

以上21册の本が紹介されています。

平岡豊『実践型農業マーケティング』 8月24日

平岡豊さんの『実践型農業マーケティング』(全国農業会議所新書2、2006 年8月発行、2012年5刷)を読みました。

  平岡豊『実践型農業マーケティング』目次
第1章 マーケティングの基礎知識
 はじめに 「マーケティング」をひとことで言えば
 1 マーケティングの基本的な展開
 2 マーケティング戦略を構成する「4つのP」
 3 消費者・市場・流通への目くばり
  (1)消費者はいろいろ
  (2)市場をどう捉えるか
  (3)農産商品の流通をどう構築するか
 4 実需者の動きに対応し、実需者の新しい動きをつくろう
 5 「認定農業者」と「農業経営」をどうとらえるか?
 6 2極分解していく中での「消費者・生活者」との関わり
 7 消費者・生活者への目くばり
     食に対しての対応
      ①頭脳タイプ、②五感タイプ、③心情タイプ
      ④胃袋タイプ、⑤財布タイプ
 8 「連携展開マーケティング」と「個別展開マーケティング」
  (1)連携展開マーケティング
  (2)個別展開マーケティング

第2章 農業マーケティングで重要な5つの力
 はじめに
     4P戦略(product price place promotion)
 1 状況力
  (1)社会環境
  (2)暮らしの変化
  (3)競合の多様化
 2 商品力  納得購入してもらうには
  (1)つくり保証
  (2)えらび保証
  (3)とどけ保証
  (4)ブランド
  (5)谷山農産物、優位差別化の3つのポイント
    ①鮮度
    ②風味と食感
    ③地域個性品
 3 情報発信力(広告力)
  (1)パブリシティへの目くばり
  (2)マスコミ、ミニコミ、クチコミの連動
 4 販売促進力
  (1)特定ルートコミュニケーション
  (2)マスベディア
    ①マスメディアイベントの仕組み方
     イベントのタイトルを面白くする
     絵になる工夫をする
     国際色のある大会にする
     公共性があること
     話題をつくる
     継続性を大事にする
     予告への工夫をする
    ②マスメディアイベントの目的ーたとえば、モノが違うことを実感してもらう
 5 組織力
  (1)プロジェクトマネージャー
  (2)情報担当
  (3)企画担当
  (4)渉外担当
  (5)広報担当
 効果をあげるマーケティングの実践のため「3×3適」への目くばり
  (1)適地・適作・適技
  (2)適量・適質・適価
  (3)適層(ターゲット)・適流・適時

第3章 農業者が主体的に展開するマーケティング活動
 はじめに マーケティング活動は5K力で推進しよう
 1 企画活動での5K力
  (1)行動力
  (2)考察力
    ①「雑学」を踏まえた「多視点考察」
    ②先進地視察プラス事例考察
    ③3つのキセイ概念から自由になろう
      キセイ1 既成概念
      キセイ2 規制概念
      キセイ3 気勢概念
        勢いに乗って深く考えずに行動を起こす
  (3)興味力
  (4)構築力
      「なにを」「だれに」「どのように」
      ①現状把握、②問題点の発見、③課題の明確化、④課題解決のための企画立案
  (5)協調力
 2 取引活動での5K力
  (1)交流力
      交流を高める損得、体面、好き嫌い
  (2)交渉力
    ①意味(コトバ)←→イメージ(絵)
    ②納品におけるマイナス3K=欠品失格、規格厳守、価格競争、への対応
    ③礼、理、利を踏まえた交渉力
  (3)協働力
  (4)改良力
  (5)完遂力
 3 社会活動での5K力
  (1)共感力
  (2)規範力
  (3)貢献力
  (4)共益力
  (5)共生力
 共通して必要なのは「継続力」
 「農業マーケティング」をはじめよう
   現状把握、問題点の発見、課題の明確化、課題解決のための企画立案
 心をこめて「観察」し、日常的にマーケティング活動を続けよう

第4章 マーケティングアイデア55
 1 農産物の使い勝手
 2 浅漬け、みそ汁の地位向上を
 3 消費者の「損得」「体面」「好き嫌い」
 4 加工グループ連携プロジェクト
 5 「レンジでおいしい焼き芋」の売り方
 6 「顔の見える農業」で成果をあげる
 7 目標数字で実現を具体化
 8 品切れをチームで防げ
 9 「モチの日常化」のヒント
 10 “また来たい”につながる未体験演出
 11 観光農園に平日客を呼ぶ
 12 牛乳鍋で消費拡大
 13 企業への通販で農産物を売る
 14 物語のあるギフトシステム
 15 周辺都市化を差別化に
 16 茶園見学者を顧客に
 17 ちょっとした手土産は300円まで
 18 知恵とセンスで施設をつくる
 19 大豆の研究で小学生と生産者が近づく
 20 「爽冷地野菜」のプロジェクト
 21 人気の棚田オーナー、次の展開
 22 イベントを盛り上げるスペインのジューサー
 23 総額5万円の花火大会が大盛況
 24 残り野菜を個人病院へ販促
 25 「高くても国産物」選らんでもらうには?
 26 ブランドとは、「責任」と「自信」の表明
 27 3つの保証でブランド化
 28 だれに売るかで変わる商品の味
 29 地元こだわり品種への愛着
 30 「正しい活動」で「良い噂」を広げる
 31 生産者と消費者共同で自給率をあげる
 32 農業経営者が連携してマーケティング活動を
 33 「卵かけご飯」に「江戸たまご」。卵もお土産に
 34 薬効情報で消費量アップ
 35 易しい言葉で語りかけ
 36 「コトバと絵」で風評被害防止へ
 37 話題素材提供でワイドショー広報を
 38 「明確なコトバづくり」を進めよう
 39 ブレンド米への消費者の誤解を解くには?
 40 効果抜群!「実需者」を生かしたPR手法
 41 テレビCMを戦略的にとらえる
 42 農産物直売所を情報発信の拠点に
 43 料理提案を活かす解説
 44 「情報発信プランナー」になろう
 45 お客様からの質問をきっかけに
 46 目くばりと工夫で経営改善
 47 時代の先を見越して対応する
 48 「習練」でプロとしての商品づくり
 49 「お箸づかいコンテスト」で消費拡大
 50 給食を「食育ランチ」にしよう
 51 10年後の大人の消費者を育てる
 52 地域連携の食育推進
 53 給食で食技練習、のススメ
 54 農業にも「インフォームド・コンセント」を
 55 百貨店の危機管理に学ぶ

マーケティングの4Pと農業マーケティング
農業経営診断実践マニュアルに関する調査研究報告書』(中小企業診断協会、2010年)87頁
●製品 (Product)
 ・作目、品種およびそれらの組み合わせ、 パッケージング、品質、 ブランド
 ・加工を加える (例:カット野菜にして業務用に販売)、サービスを加える(例:観光農園、直売所) 複合経営(栽培時期を組み合わせ、人や設備の繁閑期を平準化する、生産物を再利用する(藁→畜産→堆肥→米作など)
●価格 (Price)
 ・市場や JA(少品種多量、低マージン、価格不安定)と直売や直販(多品種少量、高マージン、価格安定)のバランス
 ・コストプラス型の価格設定がしっかりできていない。販売価格・仕入(資材)価格が市価により変動→リスク
 ・価格決定権の保持(直売所での販売、加工業者・外食産業との契約栽培)
●流通(Place)
 ・系統流通(JA)
  一般の流通(卸業者、加工・外食・小売との直接契約)
 ・重い、かさばる、鮮度が落ちる農産物の運搬コスト。
 ・作ってから売る(系統流通)から、売ってから作る(契約栽培)への移行。ブランド化できれば通販も有効。
●販促(Promotion)
 ・販売の方法・手法 (場所、人、宣伝)
 ・現状では、販売の現場では、品種×産地の「ブランド」が最も重視されている。商品の高付加価値化→目で見てわかりにくい「品質」「こだわり」「安全・安心」をどう伝えるか?→販促ツール、
販売員教育、自社販売などの検討。

宮脇昭『森よ生き返れ』 8月7日

宮脇昭さんの『森よ生き返れ』(大日本図書、1997年7月)を読みました。「環境保全林」、「ふるさとの森」、「いのちの森」、「潜在自然植生」など学んでいくことが増えました。

  宮脇昭『森よ生き返れ」目次
 プロローグ
1 森が死んでいく
   消えるまわりの木や森
2 なぜ森が必要なのか
 1 人間は森の寄生虫-生態系の一員である
 2 森は人類文明の敵だった?
 3 森の消滅と文明の興亡
 4 森と共生してきた日本人の歴史
 5 鎮守の森と日本文化
 6 森は災害を防ぐ-阪神・淡路大震災や酒田市の例
 7 魚を守る森
 8 環境保全と森
3 森から学ぼう
 1 森の姿-構造
 2 里山の森-雑木林
 3 二一世紀の鎮守の森-命と文化と遺伝子資源を守る森
4 ふるさとの木によるふるさとの森づくり
 1 土地の主役の木をさがす
 2 苗をつくろう-植物は根で勝負する
  (1)ドングリを拾う
  (2)苗床づくり-ポット苗づくり
  (3)木を植える-自然の森の姿を見習おう
   ①土の条件を調べる
   ②根は生きている
   ③植え方
   ④敷藁(マルチング)
   ⑤植えた後の手入れ
 3 足もとから地球の森を
 生物は、私たち人間を含めて、一年早く生まれた者を後の者が追い越すことはできない。そのことから一日も早く、その土地本来の森の主役になる木を中心に、できるだけ多くの樹種を混植、密植するべきである。日本各地の学校や地域から、一人ひとりが額に汗し大地に手を接して、たとえ幅が1メートルでも、エコロジーの脚本にしたがって、“ふるさとの木によるふるさとの森”をつくっていくことが大切である。……
5 木を植える世界の子どもたち
 1 日本
 2 マレーシア
 ……熱帯雨林は一度伐採、火入れして破壊されると再生は不可能ではないかとすら言われていた。そこで何とかすぐ育つ木を植えればという安易な考えの下に、もともとオーストラリアに自生していたユーカリの類やアメリカに生育している葉の長いマツ、テーダーマツやアカシアマンギウムなどよそものの木を植える。しかし、このような早生樹といわれる木は、一時的には早く生育するがあまり長持ちしない。しかも、土地に合わない木を植えても、その下には雑草など生育するが、土地本来の階層的に揃った森は形成されない。当然、何百年、何千年、何万年もの間、その土地本来の森と共生していた植物、虫や小動物も生きていけない。
 ……当時は植樹といえば、早生樹(早く大きくなる木)と名付けて外国から入れたユーカリ、アメリカマツしか植えられていなかった。私たちは、どうしても土地本来のフタバガキ科のラワンと呼ばれている木を植えて森をつくりたいと考えていたが、なかなか思うようにいかなかった。……
 3 タイ
 4 ブラジル-アマゾン
 5 チリ
 6 中国、マーアンシャン、万里の長城の森づくり
6 地球の命のドラマの主役は人間
 1 告発だけの時代は終わった
 2 主役は私たち人間-幕が降りてしまってからでは悲劇である
感想文
 ……そんな事を考えながら植えていくと、気になることが一つありました。私たちが植えた木たちが、高速道路を超えるほどの大木になった時、その周辺が、全部かげになってしまいます。そうなると、その周りの家の人たちは、そう音でいっぱいの、暗い木のかげの家に住むことになります。もしかして、木を植えて一つ環境を良くしたとしても、また一つ環境を悪くしたことになったんじゃないかなぁ、と思いました。こう考えると、環境問題はきりがありません。……
※「ドングリの本いろいろ」(2018年8月30日)

※7月24日、31日に続いて、今日は、公益社団法人日本環境教育フォーラム ・公益財団法人損保ジャパン日本興亜環境財団・損害保険ジャパン日本興亜株式会社共催2018 年度「市民のための環境公開講座」【パート1】「生きものの変化と気候変動を知る」を受講しました。


富山和子『森は生きている』 8月5日

富山和子さんの『森は生きている』(1981年発行の講談社版)を読みました。東京書籍の小学校5年生の国語教科書(下)の「森林のおくりもの」は、本書第1章「日本は森の国です」を基に,教科書用に書き下ろされたものです。

  富山和子『森は生きている』目次
〈おくりものがいっぱいです〉

日本は森の国です
 木のくらし
 木はどのようにつかわれたでしょうか
 木は生きものです
 紙のおくりもの
 火のおくりもの
 水と土のおくりもの

山国の人たち
 森林は人間がそだてました
 山国の人たちは、心のやさしい人たちでした
 山はとてもにぎやかでした
 山は神のすむ場所でした
 植林のはじまり

森林のはたらき
 森林は風をふせいでくれました
 森林は雪もふせいでくれました
 森林は気温を調節します
 森林は火事をふせいでくれました
 海岸林は国土をつくってくれました
 森林は海のさかなもやしなってくれました
 森林は風景をつくりだしてくれました
 外国の森林の歴史

土こそが人間を守る
 もしも山に人がいなくなってしまったら
 土こそが人間を守る

あとがき
 ……この「森は生きている」で、森林のもつさまざまな働きをさらにくわしく学び、自然をまもるとはどういうことかを、考えてほしいとねがったのです。
 歴史的にものを見るということは、大切な科学の方法です。ましてこの国土の自然を語る場合、歴史の眼を抜きにしては語れません。
 森林の偉大さとは、つまるところ土壌の形成者であるという点につきます。その土壌こそ、人間の労働の産物だったのです。木ばかり見ず、土を見なくてはなりません。土を養ってきた人間の歴史を見なくてはいけません。
 すでに「川は生きている」は多くの専門家も大人も読んで下さり、大学でもテキストに使っていただいています。同じようにこの「森は生きている」も、大人のみなさんにも読んでいただきたいとねがっています。心理はつねに、身近かなところにあります。子供も大人も共通して読める本を書くことのしあわせを、この三部作【『川は生きている』、『道は生きている』、『森は生きている』】をとおして私は教えられたのです。

生源寺眞一『農業がわかると、社会のしくみが見えてくる』 4月24日

生源寺眞一『農業がわかると、社会のしくみが見えてくる 高校生からの食と農の経済学入門』(家の光協会、2010年)を読みました。高校生から大学低学年の年齢の若者を想定して、世界の食料、日本の農業、そして毎日の食生活の三つの場面のつながりを、授業形式で判りやすく伝える本。3月末に改訂(新)版が出たそうです。

ホームルームの時間 授業を始める前に

1限目 食料危機は本当にやってくるのか?
 食料事情を左右する三大穀物と大豆
 「食料」と「食糧」
 何が食料価格高騰の原因か
 楽観論が後退した食料の見通し
 伸び悩む穀物の収穫量
 豊かになると穀物を食べなくなる
 食料は単純な予測の問題ではない

2限目 「先進国=工業国、途上国=農業国」は本当か?
 10億人が栄養不足
 「途上国=農業国、先進国=脱農業国」は正しいか
 食料を大量に輸入する日本は特異な国か
 広がる先進国と途上国の農業力の差
 低賃金でも優位に立てない途上国農業
 「緑の革命」にノーベル平和賞
 食糧不足のアフリカに必要なのは「虹の革命」
 農業保護で対立したアメリカとヨーロッパ
 農産物貿易をめぐる新たなルール作り
 先進国の農業保護を途上国が批判するわけ

3限目 自給率で食料事情は本当にわかるのか?
 食料自給率はひとつではない時代によって違う自給率低下の原因 ほか)
 時代によって違う自給率低下の原因
 自給率98%なのに栄養不足?
 大切なのは自給率より自給力
 安定した社会に欠かせない食料安全保障
 万能ではない市場経済と事由貿易
 問題は行きすぎた農業保護
 自給率に現れた日本農業の特徴

4限目 土地に恵まれない日本の農業は本当に弱いのか?
 土地が限られた日本にも元気な農業がある
 気がかりなのは飼料や燃料の価格
 世代交代が進まない土地利用型農業
 日本農業のシンボル=水田が消える?
 10ヘクタールは大規模か
 土地利用型農業の活路となる3つの工夫
 多彩なメンバーが支える農村コミュニティ

5限目 食料は安価な外国産に任せて本当によいのか?
 外国産が国産より安いのはなぜか
 日本に農業が必要なわけ
 お金に換算できないところに農業の価値がある
 いのちと向き合う面白さと難しさ
 もうひとつの宝は農村コミュニティの共同力
 遠くなった農業の現場
 真に豊かな食生活とは
 距離の拡大で見抜きにくくなったインチキ
 広がる農家の情報発信
 農業・農村との接点を取り戻す
 君自身が始める食と農の旅

授業を終えて 少々長めのあとがき

千葉学ブックレット『グリーン・ツーリズム -都市と農村の新たな関係に向けて- 』 4月18日

大江靖雄『グリーン・ツーリズム -都市と農村の新たな関係に向けて- 』(千葉日報社、2013年3月、762円)を読みました。「県土と県民の豊かな未来に向けて」出版された『千葉学ブックレット』の「都市と農業-4」で、都市と農村の混在する千葉県を舞台にグリーン・ツーリズムのあり方を探った本です。

  はじめに
第1部 グリーン・ツーリズムの社会的背景と意義
    国民的関心の変化
    都市と農村の関係とグリーン・ツーリズムの意義
    グリーン・ツーリズムの歴史と特徴
    わが国グリーン・ツーリズムの特徴
第2部 千葉の観光と農村資源の現状
    千葉県における観光の特徴
    千葉県の農林水産資源
    千葉県グリーン・ツーリズムの特徴
第3部 事例にみる千葉からの動き
    NPO法人千葉自然学校-統合型NPO組織の意義と役割-
    枇杷倶楽部-房州びわを活用した商品開発のコミュニティ・ビジネス-
    自然の宿「くすの木」-集落管理運営による交流施設-
    棚田倶楽部 鴨川大山千枚田-都市農村交流による地域資源の保全-
    鴨川農家民泊組合
    千草台園芸サークル-市民管理運営型の市民農園-
    谷当グリーンクラブ-交流による里山保全の経済的自立化を目指して-[やとう]
    須藤牧場-酪農教育ファームと交流型ファミリー・ビジネス-
    ペンション・スズキアグリ-定年帰農者による農林漁業体験民宿-
  むすび
  あとがき
 参考文献と文献案内-さらに知識を深めたい方々へ-

環境学習会・おもいやり経済システム~電力会社のサードウェーブ~ 3月11日

環境基本計画市民推進委員会主催「環境学習会2018」が市役所総合会館3階会議室でありました。「思いやり経済システム~電力会社のサードウェーブ~」をテーマに、講師はHappyEnergy株式会社最高執行責任者(COO)・西本良行さんでした。講演後の質疑では、「地域新電力」についての議論もありました。
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※所沢市:地域新電力設立へ『毎日新聞』2017年11月14日
所沢市は13日、再生可能エネルギーによる県内初の地域新電力会社「所沢新電力(仮称)」をJFEエンジニアリング、飯能信用金庫、所沢商工会議所と共同で来年5月に設立すると発表した。自治体が出資する地域新電力は各地で設立されているが、県内では初。同10月には市内の公共施設への電力供給を始める予定だ。【清藤天】
所沢市は13日、再生可能エネルギーによる県内初の地域新電力会社「所沢新電力(仮称)」をJFEエンジニアリング、飯能信用金庫、所沢商工会議所と共同で来年5月に設立すると発表した。自治体が出資する地域新電力は各地で設立されているが、県内では初。同10月には市内の公共施設への電力供給を始める予定だ。【清藤天】
所沢市は13日、再生可能エネルギーによる県内初の地域新電力会社「所沢新電力(仮称)」をJFEエンジニアリング、飯能信用金庫、所沢商工会議所と共同で来年5月に設立すると発表した。自治体が出資する地域新電力は各地で設立されているが、県内では初。同10月には市内の公共施設への電力供給を始める予定だ。【清藤天】
※埼玉県秩父市、4月に地域新電力会社を設立『日本経済新聞』2018年2月8日

 埼玉県秩父市は地域を限って電力を供給する「地域新電力会社」を4月に設立する。市内の発電事業者から電力を買い取り、公共施設に電力を供給する事業を2019年4月までに開始する。太陽光など再生可能エネルギーの普及を促すと共に、事業収益を地域活性化に役立てる狙いもある。 

 新会社の仮称は「秩父市新電力」で、資本金は約2000万円。市が50%以上出資し、地域新電力事業を支援しているみやまパワーHD(福岡県みやま市)や地元金融機関なども資本参加する予定だ。 

 みやまパワーHDはみやま市と共同で地域新電力会社を立ち上げた実績があり、秩父市の新会社でも運営ノウハウなどを提供する。市は1月末、同社と新会社の設立準備に向けて協定を結んだ。 

 新会社は太陽光などを使って発電している市内の事業者と契約し、日本卸電力取引所を通じて電力を調達。市内にある100を超す公共施設に電力を供給する。現在、公共施設の電力需要を調査している。 

 公共施設向けの事業が軌道に乗れば、企業や家庭向けにもサービスを広げる方針。将来は市内だけでなく、秩父地域1市4町から成る「ちちぶ定住自立圏」での事業展開も検討する。 

 市内にはごみ処理の際のエネルギーを利用した発電施設のほか、水力や太陽光による発電施設もある。現在、これらの施設でつくられた電力の大半は市外の電力会社や企業に売電されているが、市は地域新電力事業によって、エネルギーの「地産地消」を目指す。「市外に支払っていた電気使用料金を地域内で循環させ、地域経済の活性化につなげる」(環境立市推進課)狙いだ。 

 地域新電力の多くは電力需要の予測をコンサルティング会社などに外注している例が多いが、新会社はみやまパワーHDから予測システムを導入し、自前で需給を管理できるようにする。 

 電力事業で得た収益は地域の課題解決に活用する。高齢者の買い物代行サービスなど、社会問題を解決する事業を展開する方針だ。 

 電力の小売り全面自由化を受け、各地で自治体が出資する地域新電力会社の設立が相次いでいる。埼玉県内では所沢市が会社を設立する計画を示している。

※みやま市出資の新電力に黄信号『産経ニュース』2017年12月8日

 福岡県みやま市と民間企業が出資して平成27年に設立した電力小売り企業「みやまスマートエネルギー」(みやまSE、磯部達社長)が、債務超過の状態に陥っていることが7日、分かった。さらに労働基準監督署から、9件もの是正勧告を受けていた。「エネルギーの地産地消」をうたい、自治体新電力の草分けとして注目される同社の行き先に、早くも黄信号が灯っている。 (高瀬真由子)

                   ◇

 同日の市議会一般質問で、末吉達二郎市議が問題を指摘した。

 市議会に提出された資料などによると、同社の最終赤字は27年度が1700万円、28年度は1800万円。2年連続の赤字で、累積赤字は3500万円となり、資本金2千万円を上回る状態に陥った。

 大口顧客の獲得が計画通りに進まなかったことなどから、売上高が伸びなかったという。これまでの市側の議会答弁などによると、28年度の売上高目標は26億円だったが、実績は7億円だった。

 末吉氏は「会社を解散した場合、(市による)1100万円の出資が消える。三セクであり、負債の一部を市が負担することも考えられる。市長には重大な責任がある」と追及した。

 西原親市長は答弁で「この会社は年齢がたてばたつほど、どんどん黒字になる。心配しなくて結構です。債務超過は許容範囲だ」と強調した。

 市側は、29年度は最終黒字を見込み、30年度中にも、累積赤字はほぼ解消できると説明する。

 また市議会では、同社が10月、大牟田労働基準監督署から、労働環境改善に関して9件の是正勧告、3件の指導を受けたことが明らかになった。労働基準法に基づく労使協定を結ばないまま、時間外労働をさせていたという。同社には現在57人の従業員がいる。

 こうした問題に関し、市長の議会での答弁は、感情的になった。

 問題を指摘する末吉氏に対し、西原氏は「全国に(電力の)地産地消を広げようと、(磯部)社長が全国を飛び回っている。それに対し、不満分子が10人くらいおる。あなたは10人の意見を聞いて一生懸命になっている」と述べた。

 末吉氏は「労働管理の正常化など、建設的なことを協議していたはずだ」と批判した。

 市議会側はこれらの問題ついて、今後も追及する構えをみせる。

 ◆民業圧迫

 みやまSEは資本金2千万円のうち、市が55%、民間企業の「みやまパワーHD(旧・九州スマートコミュニティ)」が40%、筑邦銀行が5%出資する。

 28年に始まった電力小売り全面自由化で、家庭向け電力販売に参入した。これまでに3800件の契約者を獲得。電力は市内の太陽光発電施設や、卸売市場などから調達。一般社団法人「低炭素投資促進機構」からの交付金もあって、九州電力より割安で販売する。

 みやまSEは、自治体が行う「新電力」として、メディアにも多く登場した。福岡県八女市や鹿児島県肝付町に誕生した電力会社にも、電力を供給する。

 ただ、電力全面自由化から1年8カ月。不採算を理由に、電力事業から撤退する業者も現れた。

 電力事業は薄利多売であり、契約者を多く獲得する必要がある。顧客獲得には大手電力会社をはじめ他社との競争が待ち構える。みやまSEの先行きは険しい。さらに、市場原理から離れた中で事業を展開する同社に対し、「民業圧迫」との批判もある。

村谷 敬=村谷法務行政書士事務所・所長「地域新電力が挫折する理由~地産地消や地域貢献の徹底がカギ」(『日経エネルギーNext』2018年1月19日

失敗しない地域新電力の作り方(その4)シュタットヴェルケを知ろう
     (『パワーシェアリング電力コラム連載・地域新電力第19回、2017年12月13日)
 いきなり、ちょっと脱線します。
私は、数年前からドイツのシュタットヴェルケを紹介していますが、最近になってやっと日本でもこの言葉が市民権を得てきたように思います。ところが、その中身についてはまだまだあまり知られていません。一番困るのは、ドイツのシュタットヴェルケと最近設立が聞かれるようになった日本の自治体新電力とを混同してしまうことです。
【中略】
 一方で、日本の自治体新電力は、たとえ自治体が50%以上の資本を有していても、基本的にはお客さんゼロ(仮に自治体の全施設を供給先に出来ても地域全体では一部)からスタートしますし、発電施設などのインフラはほとんど持っていないのが当たり前で、配電網はありません。これらの差は驚くほど大きく、まずはこの2つは全く別物と考えるべきなのです。
 ということで、自治体主導で新電力を立ち上げる時は、十分に気を付けなければならないことがあります。簡単に言えば、慌てないことです。
 どういうことかと言うと、すぐにシュタットヴェルケになろうとしないことです。前述した通り、ドイツのシュタットヴェルケはインフラや顧客などのベースがしっかりしています。だからこそ、電力などのエネルギー事業の余剰金を赤字の交通などの事業に回せるのです。最初はよちよち歩きの自治体新電力に多くを求めると、あっという間に事業採算性を失ってしまいます。ですから、まずは電力供給事業にしっかり取り組んで新電力の基盤を作ることです。その後で、ゆっくり市民サービスなどに取り組めばいいのです。
【中略】
 これを書いているのは12月10日(2017年)の日曜日です。日曜日に仕事をするのは、私も良くないと思いつつ、まあ、その話は置いておきましょう。さて、おととい、ある新聞が、日本で最も有名な自治体新電力「みやまスマートエネルギー」の経営危機について書きました。その新聞は、再生エネなど新しいエネルギー地産地消の動きに後ろ向きのメディアですが、記事の根拠はみやま市議会でのやり取りなので、内容はほぼ間違いないでしょう。
結論から言うと、みやまスマートエネルギーが二年連続で赤字となり、資本金を超える借金で債務超過の状態だという事です。この業界(新電力業界??ってあるのでしょうか)では知らない人がいない自治体新電力なので、あっという間に話が広がっています。良くあるパターンで、自治体新電力やまとめて新電力自体は危ないというような流れにならないか心配もあります。
 それを回避するためには、なぜそんな状態になったかということを知る必要があります。記事によると債務超過の主たる原因は、予想した売り上げに到達しなかったこととなっています。私から見ると、あまりに大きい固定費のせいではないかと思われます。昨年度の売り上げがわずか数億円の会社に60名近い社員がいるというのは疑問です。小売電気事業は薄利多売のビジネスです。また、需給管理を自前でやることにこだわるのも固定費を増やす原因に見えます。
 当事者ではないので想像の域を出ませんが、このコラムで書いたように、リスクを最小限にするということの重要性を再度認識したニュースでした。
地域から流出するエネルギー費はいったいいくらなのか
                            (同上連載第10回、2017年7月26日)
  ◎環境省の地域経済循環分析自動作成ツール環境省HP「地域経済循環分析」
                ツールのダウンロード、マニュアル、サンプル(岩手県久慈市)

農泊シンポジウム2.0 2月21日 

農林水産省主催・時事通信社共催・観光庁後援「農泊シンポジウム2.0」(東京会場)に参加しました。
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農林水産省、観光庁から施策の説明があり、3本の講演がありました。
農泊とフードツーリズムを核とした滞在型田園リゾートについて(ANA総研・稲岡研士氏)

国内外の観光客が農泊地域に求めるもの(日本旅行・三好一弘氏)
  ・日本国内マーケット 30代~50代では店頭販売よりWEB販売が利用される傾向
                WEB販売における関東居住者の割合は人口比率よりも高い
                店頭販売ではファミリーの旅行が圧倒的シェアを誇る
  ・インバウンドマーケット成長の3つの要因
    環境的要因(円安の進行) 制度的要因(ビザの緩和) 政策的要因(海外でのプロモーション拡大)
    ①主要4市場(中韓台香)のシェアが増加 67%(2014年)→74%(2017年)
    ②伸び率mもアジア各国は顕著(2014年→2017年の伸び率)
        全体:214% 中国:305% 韓国:259% 台湾:161% 香港:241%
       →世界的に増加しているが、特に東アジアからの伸びが顕著
  ・インバウンドマーケット 訪日旅行の目的
    各地での体験を重視する欧米に比べて、アジアはまだショッピングや街歩き等観光の要素が強い
    今後はこれまでの日本人の旅行の変遷と同じ様に、欧米的な体験型へ
       →モノ消費からコト消費へ
  ・農泊に取り組むために
    ①自ら(自地域)を知る! 
      客観的データを様々な角度から読み解くことで、自地域での課題が見えてくる
      他地域を分析することも必要 
    ②同じ環境の地域はない! 
      似たような地域があったとしても絶対に違う
      他地域と同じことをやっても成功するとは限らない
      他地域の取り組みをベンチマークしつつ、自地域独自の取り組みを
    ③何かをすれば人がくるわけではない!
      頑張っているのは自地域だけではない
      他地域も頑張っているなか、効率的施策の実行が必要
      そのための分析が重要
  ・宿泊者(日本人)が農家民宿に求めること
    「食事」に関して、宿泊者が訪れた地域の食事を求めている
    農家民宿での「農林漁業等の体験」や「交流」は、独自の魅力である
    「食事面」では、地元産の食材や地域特有の食材を利用した郷土料理、伝統料理、行事食を希望
  ・宿泊者(日本人)の年代別にみた農家民宿に求めること
    20代から30代の宿泊者が「交流」を、40代から50代は「農林漁業等の体験」を求める傾向

農泊地域と旅行会社等との連携事例
    ~農泊地域と企業とのより良い連携に向けて~ (JTB総研・上田嘉通氏)

※「2015年度 観光と連携したグリーン・ツーリズムの推進報告書」(農協観光、2016年3月)

※「農林漁家民宿開業・運営の手引」(農協観光、2016年3月)

【1章】: 農家民宿開業に向けた準備について

【2章】: 農家民宿の開業手続きについて

【3章】: 宿泊者との関わり方について

【4章】: 安全管理について

【5章】: 関係者との連携について

【6章】: 外国人旅行者の受入れについて

【巻末資料】


※「2014年度 観光と連携したグリーン・ツーリズムの推進報告書」(農協観光、2015年3月)

緑のボランティア活動助成セミナー2018 2月17日 

本日の「ボランティア活動助成セミナー2018」は、NPO法人森づくりフォーラムが共催です。
話題提供として「森林ボランティアの進化と変化 -森林づくり活動実態調査・分析結果と今後-」(筑波大学大学院 ・富井久義さん)、「森林ボランティアの未来」(NPO法人よこはま里山研究所・松村正治さん)がありました。
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「森林づくり活動実態調査は1997年から3年ごとに継続され、森林整備活動を行っている団体・活動規模の推移と時々の活動団体の有する課題と必要な支援は何なのかを明らかにしてきました。
2015年調査は林野庁補助事業として森づくりフォーラムが全国3005団体に調査票を送り、1232団体から有効回答がありました。この調査の結果と分析については、『森から人へ、人から森へ ~森づくりの活動の今とこれから~』(「森づくり政策」市民研究会、2015年3月)、『森づくり活動の一歩先をめざして』(NPO法人森づくりフォーラム、2017年2月)で確認して下さい。

団体タイプ別の会員年齢構成比(%)
70代が多い「大都市型」、「都市近郊型」(退職者が中心となって団体運営)、50代が多い「農山村型」、「漁業者団体」(地域活動の一環?)、若い人が多い事業体(企業のCSR活動など)
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60代、70代中心メンバーで、50代は「若い人」、40代はまれでは、この先10年たつとどうなっているのでしょうか?
【活動団体の類型については、任意団体とNPOは便宜的に所在地が大都市にある団体を「大都市型」(125団体、10%)、大都市以外の市にある団体を「都市近郊型」(621団体、50%)、町村にある団体を「農山村型」(2013団体、16%)とし,活動目的に「魚付き林の整備・漁場の保全」を挙げる団体を「漁業者団体」(54団体、4%)、その他の事業体(企業など)を「事業体」(129団体、10%)、財団法人、社団法人などを「その他」(100団体、8%)にしています。】

テーマ別セッショントーク「躍動する団体に共通するポテンシャルとは!?」を3つのテーマに分かれて実施しました。3テーマは①次世代に継ぐ森林づくりのための「企業と地域の連携」(ファシリテーター&話題提供:森の健康診断出前隊・丹羽健司さん)、②次世代に継ぐ森林づくりのための「後継者育成と持続的な取り組み」(ファシリテーター:認定NPO法人JUON(樹恩)鹿住貴之さん、話題提供:NPO法人いわきの森に親しむ会・松崎和敬さん)、③次世代に継ぐ森林づくりのための「新規参加者を獲得するためのポイント」(ファシリテーター:NPO法人よこはま里山研究所・松村正治さん、話題提供:多摩の森・大自然塾 鳩ノ巣協議会・小島圭二さん)です。
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森林ボランティア団体等が共通して抱える4つの課題をクリアするためのポイントやヒント
   (『森林・里山と人がつながる社会をめざして 次世代につなぐプロジェクトの運営と組織づくり』20~23頁)
①新規会員・参加者の確保
・参加してもらうための入り口を広げる
  “参加しやすさ”の訴求
・参加者自身のやりたいことが実現できる場にする
  主体的に関わってもらうように促していく
・参加者の声を聴き、ニーズに対応する
  できるだけ直接的な対話を通じて聞き出す
・やりっぱなしにしない。どうだったか、改善することは何かを皆で議論する
  活動に関わった者全員でふりかえり、次に反映あるいは改善することを明確にする
・参加者と楽しかったことを共有する
  参加者を含めて皆で共有する
・実際に参加した人の声で広報する
  実際に参加した人の声に乗せて広報していく(口コミ)
・有償スタッフとして参加してもらう

②継続的な活動
・地域のニーズに対応する
  地域住民や行政等のニーズがあるのであれば、それらを受け入れる
・「やりたいこと」を実現するための組織をつくる
  必要であれば組織のあり方を改善できるしくみやルールをつくる
・活動の場に“学べる”をプラス
  あらたな気づきや、あらたな自分の可能性を発見できる学びの機会
・活動資金を確保する
  受託業務や助成金を活用するにあたっては情報収集と、行政・企業等とのネットワークづくりも重要なタスクとして捉える
・参加者が“楽しい”と実感できる活動にする
  皆“楽しかった”と実感できる活動にすることを目指す
・「やりたいこと」を確認する
  そもそもボランティア団体は、共通の「やりたいこと」を持った人たちが集まっているのであり、それが何であるのかということを定期的に確認して忘れないということが大切
・活動のゴールや期限を決めて、終了したら一旦やめる
  活動のゴールや期限を決めて取り組みそれが達成した時点で一旦やめて、その活動の成果や結果を評価する

③後継者育成
・参加者に自分の居場所を見つけてもらう
  自分の居場所(心地よいと思える場所や空間、時間等)
・思想や価値観を押し付けない
  活動経験の豊かな人や年配者の思想や価値観を若手や中堅で頑張っている人に押し付けてはダメ
・活動の場であると同時に教育の場にする
  自分探しの場、あらたな成長の場
・多様な参加理由、ニーズを理解する
  日頃から良いコミュニケーションを図っておく
・「やってみない?」という新たな可能性の扉を開く声がけが必要
  参加者それぞれのの魅力や才能等を見つけ出したら、その人の新たな可能性を広げる動機付けとして声がけをする
・活動のビジョンは崩さない
  活動のビジョンが明確かつ揺るぎないからこそ共感する参加者が増え、またその中で自分がやりたいことが定まっていく
・期待しすぎない
  何が何でも後継者を育成すると意気込まない

④他団体、自治体・企業との連携
・共に汗をかくことが連携
  共に汗をかいて互いのビジョンを達成していく
・多様な主体者と連携することで活動を広げ深める
  様々な知恵や技術が融合されて活動が広域に広がったり、深まったりする
・WIN-WINの関係を共有
  関係する団体それぞれのメリットとデメリットを検証し、事前に相互で共有しておく
・連携する相手とは対等な関係を維持することが重要
・つなぎ役になるということもある
  自分たちの活動に参加してもらうだけでなく、他の活動に参加したい人と別の活動を行っている人や地域をつなぐプラットホームになる

緑のボランティア活動助成セミナー2018 2月16日

公益社団法人・国土化推進機構が16、17日、千代田区麹町の弘済会館で開催する「ボランティア活動助成セミナー2018」に参加しました。
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緑のボランティア活動事例報告(3団体)
・森づくり×コミュニティづくり 苫東・和みの森の挑戦(自然体験活動指導者ネットワークえんりっと 仁瓶奈律香さん)
・森づくり×企業や地域、学校、行政との連携を通じた取り組み(NPO法人環~WA 代表理事 大和文子さん)
・森づくり×後継者育成と継続的な取り組みのポイント(NPO法人里山倶楽部 理事 寺川裕子さん)

パネルディスカッション「~企業や地域との連携、会員獲得、若返りのコツを探る~ 」
3人の事例報告者がパネラーで、コーディネイターはどさんこミュゼ(株) 代表取締役の宮本英樹さん(元NPO法人ねおす専務理事)で行われました。

大阪府南河内郡河南町を活動地域とする里山倶楽部は、「好きなコトして、そこそこ儲けて、いい里山をつくる」活動をしています。里山保全事業(雑木林、竹林、棚田、果樹園など)、生産販売事業(薪炭、ほだ木、無農薬野菜、米、桜チップなど)、環境教育事業(里山キッズクラブ、学校林、ワークショップ里山日和など)、人材養成講座(安全技能講習、里山応援講座、スモールファームなど)、木質バイオマスエネルギー利用(万博記念公園での森の足湯など)、オーダーメイド型活動・研修(企業CSR活動、団体研修、講師派遣など)をそれぞれの事業が独立採算制をとって運営しています。各事業の運営担当者は、利益の5~10%を共同運営費として事務局に支払います。「儲けも赤字も自分持ち」で団体としては赤字になりません。また、「組織ではなく里山を引継ぐ」スクラップ&ビルドを継続的な取り組みのポイントの一つとしています。組織の「かたち」を引継ぐ必要はない、既存の「場と資源」をつかって、新しい仕事、新しい暮らしをつくるなどなるほどと思いました。

※『森林・里山と人がつながる社会をめざして 次世代につなぐプロジェクトの運営と組織づくり』(国土緑化推進機構、2017年7月)。NPO法人いぶり自然学校+エンリット、NPO法人里山倶楽部、NPO法人よこはま里山研究所(NORA)、矢作川水系森林ボランティア協議会などの活動、運営スタイルが紹介されています。


彩の国さいたま人づくり広域連合政策研究成果発表会 2月13日

さいたま市の埼玉県民健康センターで開かれた彩の国さいたま人づくり広域連合2017年度政策研究成果発表会に午後から参加し、「持続可能な郊外住環境実現プロジェクト」研究会と「公共空間の利活用による地域活性化プロジェクト」研究会の研究成果の発表を聞きました。彩の国さいたま人づくり広域連合のサイトから2010年度以降の政策課題共同研究の活動レポートや報告書はダウンロードできます。
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持続可能な郊外住環境実現プロジェクト」の報告後、コーディネーター藤村龍至さんの「講評・解説」がありました。パワポのスライドを印刷したものが配布されたので一部を掲載しておきます。東武東上線沿線の自治体区分では、和光市~ふじみ野市が安定通勤圏(都内通勤率25%以上)、川越市~滑川町が変動通勤圏(都内通勤率10%以上25%未満)、嵐山町~寄居町が地域通勤圏(都内通勤率10%未満)になります。

都心通勤圏の縮小

・1970年、1990年、2015年と移行するに従って都心一極集中傾向は弱くなっている
・10%通勤圏を1つの指標とし、東京駅と新宿駅を都心と定義して都心からの距離との関係をみると1990年代は都心60㎞圏まで拡大しているが2015年には40㎞まで縮小している

「変動通勤圏」に空き家と高齢者が集中する

・広域行政単位ではなく鉄道沿線単位で地域を再設定し、状況を把握
・丘陵地に大規模NT(ニュータウン)の開発が進んだ西武池袋線・東武東上線と旧街道沿いに敷設された路線では状況が異なる
・埼玉県内で鉄道沿線自治体の都内通勤率のデータをみると、大きく3段階に分かれる
・都内通勤率が40%程度の「安定通勤圏」と10%以下の「地域通勤圏」のあいだを「変動通勤圏」と定義
・「変動通勤圏」=将来高齢者と空き家が集中的に発生するであろう地域
・JR高崎線でいうと上尾から行田までの地域がそれにあたる(=圏央道沿線自治体)
・現状では住宅政策・都市政策ともに対象化されているとはいいがたい

鉄道4路線ごとの課題の課題パターン図
政策課題共同研究報告書概要版2015年度

遠郊外住宅団地をあと10年以内に本物のリタイアメントコミュニティに
・男性の89.1%、女性の100%が80歳前後で自立度2、84歳前後で自立度が1へと低下
・1980年代に団塊の世代を受け入れた遠郊外受託団地の住民の自立度が一斉に低下するのは2027年前後
・生涯活躍のためには社会性の維持が鍵となるが郊外住宅地では空間もコンテンツも不足している
・住宅地を病院のように機能させる=24時間訪問医療介護の体制を可能にする空間づくりが鍵
・空き家を提供し小規模多機能居宅介護のための拠点にしたり、日常的な交流空間に転用する
・住民の理解が不可欠だが「閑静な住宅地」という虚構から抜け出すためには早めの啓蒙が必要

自然発生的なリタイアメント・コミュニティ
・高齢化率は中山間離島地域並みだがその範囲がコンパクト
・住民の経済的なポテンシャルが高い
=自然発生的なリタイアメント・コミュニティが発生している(園田真理子)
 足りないのは24時間の身守り体制や交流空間など
→適切な再投資が必要

鳩山NT:地方創生関連交付金を活用し「コミュニティ・マルシェ」を整備【略】

かすみ野:医療法人・社会福祉法人が積極的に施設開放し街と関わる【略】

白岡NT:住民集会所を利用しカフェ&マルシェを試験的に実施【略】

香日向:空き店舗を利用したトークイベントによるイメージの共有【略】

椿峰NT:シンポジウムから公園利活用、まちと緑をまもるプロジェクトへ【略】

住宅団地再生の空間戦略
住宅と施設のあいだの「マルシェの層」と「住み開きの層」の活性化に活路を見出す
<マルシェの層>
・対象:空き店舗等の再活用・公園等の利活用・小学校の空き教室等
・公共施設として整備・民間企業が提供・住民有志が自ら開催など
・若い世代にとっては小さな起業の場・高齢者にとっては居場所・対外的にはまちのイメージを発信する場
<住み開きの層>
・住宅の1階のリビング等を小さく改修して外部へ開いていく
・第1種住居専用地域の専用住宅を50㎡未満の店舗等に改造し兼用住宅化
・保健所の対応(「専用区画」の定義等)、協定等の改定など周辺住民の理解が重要

住宅団地マネジメントの担い手像
担い手像は世代によって変化しており、45歳以下を巻き込むにはマルシェが有効
<地縁組織型>
・自治会、婦人会、老人会などで上の世代から地域の行事(餅つき・夏祭り等)を受け継ぐ
・大きな組織を代々引き継ぎトップは75歳以上の男性、会長OBらが顧問というケースも多い
・自らは高い志に支えられて参加しているが下の世代が引き継ぎたがらないのが共通した悩み
<緩やかな連帯型>
・団塊の世代(1947-49年生まれ)を中心としたアクティブシニアなどがNPO法人を設立
・強制的に参加させられる既存の地縁組織に強い違和感があり自発的なボランティア活動に高い意欲
・企業等で安定的に雇用されていた世代であり自分で稼ぐことには大きな抵抗感がある
<スモールビジネス型>
・団塊ジュニア世代(1971-74年生まれ)前後の子育て世代などが起業し株式会社等を設立
・非正規雇用が多かった世代であり稼ぐことに意欲的だが持続性のないボランティア活動には強い抵抗感
・ツールを駆使してソーシャルネットワークを形成しマルシェなどで積極的に交流

持続可能な郊外住環境実現に向けて
3年間にわたって取り組んだ研究のまとめ
・通勤圏縮小に伴い遠郊外(東京の場合都心40-60㎞圏)が特に空洞化しつつある
・郊外自治体の市街化区域の中で再スプロール化がおこっており小さな地域間競争が発生
・住宅団地の高齢化率は高いがその範囲はコンパクトで住民の経済的ポテンシャルは高い
・一部では自発的なリタイアメントコミュニティが出来上がりつつある
・足りないのは24時間の医療福祉体制や交流空間の整備
・住宅団地の再投資には公共投資の例もあれば、民間投資の例もあるが投資効率は高い
・住宅団地で得られたノウハウを既存の公共サービスや施設の体系にフィードバック
・いずれも空きストックの有効活用が鍵
・空間的には「マルシェ層」と「住み開き層」の活性化が鍵
・担い手像は世代によって変化しており、多世代を巻き込むにはマルシェは有効
・(1)地域の空間資源を再検討し(2)人材を発掘し(3)世代を超えた協働から起業へとつなげる
・行政はまず研究対象化をはかり、プロジェクトを設定し、実験を行うことが有効

2015年度共同研究報告書『「埼玉県の空き家」の課題パターン抽出とその解決策の提言』

※2016年5月20日、16年度政策課題共同研究オープニングセミナーレポート(全文
政策課題共同研究オープニングセミナー2016年度1政策課題共同研究オープニングセミナー2016年度2政策課題共同研究オープニングセミナー2016年度3

※2017年2月10日、2016年度成果発表会(プレゼンテーションスライド
2016年度研究報告書『「サステイナブルタウン」を目指して-超高齢社会の包括的タウンマネジメント-』

※2017年5月18日、17年度政策課題共同研究オープニングセミナーレポート(全文
政策課題共同研究オープニングセミナー2017年度
2017年度研究報告書の発行がまたれます。

※鳩山ニュータウンについては『週刊東洋経済』第6772号(2018年2月3日)88頁に牧野和弘「人が集まる街 逃げる街第12回 鳩山ニュータウン[埼玉県] かつて栄えたニュータウンで深刻化する“孤立化”」が掲載されています。

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