自然エネルギー財団のインフォメーション・パッケージ「日本の石炭火力輸出政策5つの誤謬」(2020年2月)を読みました。
資料集趣旨
< 目 次 >日本の石炭火力政策のもう一つの問題点は、東南アジアなど海外への石炭火力輸出政策 を続けていることです。政府や一部の企業などは、「日本の最新石炭火力は、高効率であり、世界の温室効果ガス削減に貢献する」など、あれこれの弁明をしています。しかし、これらの言い訳は、世界では全く通用せず、国際世論の中で厳しい批判にさらされています。この資料集は、石炭輸出政策を正当化する議論の誤りを事実にもとづいて明らかにするものです。気候危機との戦いにとって決定的に重要な2030年への10年が始まる今年、今後のエネルギー政策の議論が、正確なデータ・資料をもとに進められるよう期待して、この資料を発表します。
■日本の石炭火力輸出に対する国際的な批判の高まり
■石炭火力輸出正当化論の5つの誤謬
現実1 「高効率な石炭火力発電(USC)」でもCO2削減はわずか数% ガス火力の2倍の排出量
現実2 高効率石炭火力に更新しても削減できるのは2割弱 8割以上の排出を長期間、固定してしまう
現実3 今や中国の石炭火力発電は技術力で日本と同等 日本の60倍以上の建設実績
現実4 (1) 石炭火力の公的輸出実績は、インフラ輸出目標30兆円の1%程度
現実4 (2) 高効率石炭火力の価格競争で中国に完敗 日本の公的輸出案件でも中国・韓国の技術を採用
現実5 東南アジア諸国でも自然エネルギーが拡大中 石炭火力からの転換支援こそ、日本の役割
(参考資料) アジアの石炭火力に融資する邦銀と外銀の動向
※「メガバンクが石炭火力に融資停止 環境団体は「海外に比べ周回遅れ」」(東京新聞TOKYO Web 2020年6月27日 16時57分 )
※「脱炭素、3メガ銀苦渋 みずほ「石炭火力融資行わない」明記 「まだ不十分」投資家圧力」(『毎日新聞』2020年5月20日)
※自然エネルギー財団『石炭火力発電投資の事業リスク分析 エネルギー転換期における座礁資産リスクの顕在化』(第2版、2019年10月)
東日本大震災以降、原子力発電の稼働停止による電力不足を補うことなどを理由に掲げ、約2,100万kWもの石炭火力新増設計画が発表されました。これまでに、約700万kWの建設計画が中止またはLNGやバイオマス発電等へ計画変更されましたが、未だに建設中、または着工前の新増設プロジェクトが20基、1,100万kW以上もあります。
これらのプロジェクトの多くは、80%から90%という高い設備利用率を想定していますが、電力広域的運営推進機関の推計によっても、2028年の全国平均の設備利用率は70%以下になります。本報告書では、電力需要と設備利用率の低下、自然エネルギー発電の増加など市場環境が変化するとともに、気候変動対策の強化が進む中で、これらの新増設プロジェクトが採算割れを引き起こし、座礁資産化するリスクが大きいことを明らかにしています。
ドイツやオランダでは新設直後の石炭火力発電所が市場環境や政策環境の変化で、運転停止に追い込まれる事例も生まれています。自然エネルギー財団は、本報告書が今後の日本のエネルギー政策の転換と電力ビジネスの発展に寄与する一助となることを期待します。
※気候ネットワーク『石炭火力2030フェーズアウトの道筋』提言レポート(2018年11月)