2019年度東松山市環境基本計画市民推進委員会の市民プロジェクトに登録した『市民の森のコナラ林&アカマツ林育成プロジェクト』の事業報告です。

【事業の詳細】昨年度までは日報風にまとめていましたが、今年は簡略版です。毎回の記録は当ブログのカテゴリー別アーカイブ「市民の森保全クラブ」で見られます。)

   年度後半に参加、協力、共催を予定していたすべてのイベントが台風19号被災復興、コロナウィルス感染予防対策により中止となったが、落ち葉掃き1215日、22日)、キノコの駒打ち(126日)は会員で実施した。

   コナラ林(旧エリア、1ヘクタール)では例年どおり、枯損木伐採、刈払機主体の林床管理(南向き斜面、北向き斜面)、10月中旬からはコナラ林更新のためにチェンソーによる伐倒を実施した。

   新エリア(1ヘクタール)の内、南向きの緩斜面と無名沼イ号~作業道付近では昨年度刈り取ったアズマネザサと落ち葉を斜面下に掃き下して片付け、刈払機で裾刈りを実施した(4月・5月・6月・7月)。

   新エリアの尾根部分(園路から南側20m幅のゾーン)のアカマツ林では、4月・8月・9月に鎌と刈払機で林床整理実施。

   尾根の園路付近(新・旧エリア)では業者が緊急処理した台風19号による掛かり木や倒木の幹・太枝などをチェンソー、ノコギリで再処理して片付け、スツール材やホダ木など資材として使えるものを選定した(3月)。

⑥作業エリア林床に残っている小枝(粗朶[ソダ])はチッパーで細断し、木チップとして利用した(6月)。

【事業による効果】

   市民の森保全クラブは結成以来、環境基本計画市民プロジェクトに、「市民の森保全事業」(20121314年度)、「市民の森保全事業&森の魅力発見プロジェクト」(2015年度)、「市民の森のコナラ林若がえりプロジェクト」(20161718年度)、今年度は「市民の森のコナラ林&アカマツ林育成プロジェクト」を登録して事業を展開してきた。最初の3年間は、「みどりの埼玉づくり県民提案事業」県補助金(50万円×3年)を使って刈払機・チェンソー・チルホール・滑車・ハシゴなど森林整備作業に必要な道具を揃えた時期である。会員個人がそれぞれ手持ちのノコギリ・手鎌など持ち寄っただけでは放置されたコナラの大径木林には手がだせなかっただろう。

   活動を始めて驚いたことの一つが「市民の森」が市民に認知されていないということだった。こども動物自然公園までは来ても市民の森まで足を運んだことはない。そこではじめたのが「市民の森の魅力発見」プロジェクト。「落ち葉掃き」(現在「落ち葉掃き&焼き芋」、「キノコの駒打ち体験」)などイベントの開催につながる。

   コナラ大径木の伐倒を通じてわかってきたこと。この森は萌芽更新では再生できない。樹齢50年のコナラは伐っても萌芽しない。ドングリから苗を育てていかなければならない(2016年度からの「市民の森のコナラ林若がえりプロジェクト」)。

   枯損木除伐・大径木伐採、林床のアズマネザサ刈りを続けて林内が見通せるようになってきた。見えて来たものは林床の草本類、ヤマツツジなど小低木だけではない。市民の森のマツ林(アカマツ・テーダマツ)をどうするのかという問題。かつて台地の平地林や丘陵の尾根にあったアカマツ林は松食い虫の被害と土地利用の変化によりほぼ消滅し、市内で美しいマツ林があるのはゴルフ場。市民の森では松食い虫の被害を受けて防除施策が実施されてきたが樹勢を回復するまでにはいたっていない(やがて消滅へ?)。そこで、今年度から「尾根みち」(園路)のアカマツ林を作業エリアに追加して再生に取り組むことにした(「市民の森のコナラ林&アカマツ林育成プロジェクト」)。5060年代?に植林されたテーダマツは巨木となり、倒木は谷間に放置されている。テーダマツ林をどうするのかは次の課題。

   8種類に分類される森林の多面的機能の内、「土壌保全機能」は生物多様性保全機能と並ぶ根源的機能である。落ち葉掃き、斜面下部・林縁の裾刈は、林床の植物再生・保全の試みであるが、表面土壌を喪失しないようにしなければならない。裸地化して表層土壌層が失われないよう、急斜面には「土留め工」を実施するなど土壌流出対策を実施していきたい。

台風19号被災。各所で倒木、落枝、ボッシュ林と石坂の森見晴らしの丘下の斜面では表層崩壊(土砂崩れ)がおきていた。市民の森のリル(深さ30㎝程度までの表面流)、ガリ侵食(深い溝)についてはかねてより注視してきたが、入山沼の集水域の谷間(谷みち)にも最近目につくようになってきている。岩殿満喫クラブが管理する入山沼の奥にある無名沼イ号、太平洋セメントの所有する「セメント林」(仮称)に接している市民の森の谷底では人の背丈ほどの深さの穴があいている箇所があり洗掘がすすんでいる。市民の森は九十九川の水源林である。土砂災害に備えた「自然災害に強い森づくり」も心がけたい。


【今後の課題】
森林整備作業は成果がでるまでに10年、20年と長い時間がかかるため、活動参加者のモチベーション(気力)を維持し活動を継続していくことが重要課題である。年をとれば体が思う様に動かなくなり、メンバーが固定化して孤立すると事業を続けていけるのか不安になってくる。市民の森保全クラブは創立以来、「無理なく・楽しく・安全に」をスローガンに活動してきた。体調に合わせて現場でできる仕事、在宅でできる仕事など一人一役の役割分担、さらに取組むことによって会員相互の親睦も深められるプログラムを開発する。そして活動の社会的認知と会員拡大、財政力強化のために積極的に広報活動・イベント開催に取り組んでいきたい。