河出書房新社から2010年に出版。14歳の世渡り術シリーズの1冊。そのまま大人になるつもり? 未来が見えない今だから、「考える力」を鍛えたい。行く手をてらす書き下ろしシリーズ。2017年に文庫化。「おわりに 扉を開ける」が第5章に入り、第6章 必要性増す「災害ボランティア」文庫版あとがきが加筆される。
  仕組みを知らないと、その「善意」がムダになる!(旧版帯から)
  仕組みが正しくないと、「いいこと」してもムダになる(文庫版帯から)

田中優『幸せを届けるボランティア 不幸を招くボランティア』(2010年3月)目次
序章 やさしさの届け方
 さりげないボランティア
 目立ちたがりのボランティア
 幸せと不幸の境界線
 好きなことが仕事になるまで
 ぼくがしている活動
  ・環境NGO
  ・NPOバンク
  ・日本国際ボランティアセンター
  ・天然住宅
  ・コモンズの森
 苦しくつらいもの? 楽しいもの?

第1章 それって「ボランティア」?
 空き缶拾いは何のため?
「環境問題の解決として」って言われるんだけど、ごみを拾うことが本当に環境問題の改善につながるのかという点だ。今、問題になっているのは、人類がこの地球上に行き続けられるかどうかだ。たとえば地球温暖化で、人類が滅びてしまうのではないかと心配しているのだ。自分の家のまわりにごみが散らかっているかどうかの問題じゃない。つまり「環境」には二つの意味がある。「身のまわり、周囲のこと」と、「地球環境問題のような大きな環境」のこと。これは必ずしも一致しない。……(29頁)
 クリーンアップの意味
 空き缶にはデポジット
 「空き缶はくずかごへ」?
 図書館司書のボランティアとは
 生活できない人を増やす仕組み
 ボランティアスタッフってタダ働きのことなの?
 「スタッフ募集」の問題点
 「タダでもやろう」という心意気
 詐偽まがいの街頭募金
 募金はボランタリーに

第2章 さまざまな「入り口」
 好き好んで自発的に
 ボランティアは不幸の言葉?
 楽しむにはコツがある
 仕事にすることもできる
 特別なことは考えない
 最初は「ほめられたい」でもいい
 自分がいてもいい場
 「自分のための」ボランティア
 「相手のための」ボランティア
 役割がないと生きていけない
 「いい子」を捨てる
 国際機関の支援とNGO活動との違い
 「キャリア」UPの道具
 ボランティア至上主義はあり?
 今いる場所からの一歩
 生活の「百姓」
 ボランティアをしない自由もある
 さりげなさも大切
 対手への配慮と「ありがた迷惑」
 日本人は「努力・忍耐」好き
 楽しむボランティアに

第3章 ボランティアの「経験値」
 里親になって感じた疑問
 善意が生み出す不公平
 ワンダラー小僧の住む社会
 相手の状態を思いやる
 「忘れない」文化
 「もらう方が威張る」文化
 相手の文化に暮らすこと
 どこまで深く理解できるか
 生死の境での選択
 難民キャンプの逆格差
 対手を背景ごと受け止める
 災害対策ボランティア
 依存しない、させない

第4章 私たちにできること
 たかが子どもに何ができる?
 「子ども」であることを活かす
 学校を捨て、外に出よう
 本当の原因を調べる
 「無力」ではなく「微力」
 訴える主体は未来のある子ども
 子孫を苦しめる大人たち
 「残す」ことの価値
 仲間と一緒に活動する
 自らの足元でやれることを
 みんなの才能を結集する
 小さな力で社会をつくる
 寄付するのだってボランティア
 事業を興して収入にする
 おカネ以外の「寄付」
 「施設」と「資格」とは関係ない

第5章 世界と未来へつなげる
 問題の根本を見つめて
 身近でないことにも目を向ける
 戦争は「心の問題」なんだろうか?
 カネ儲けとしての戦争
 問題を広げて考えれば複数の解決ができる
 国際的な税「グローバルタックス」
 仕組みで解決を
ぼくは問題を解決しようと考えるとき、いつも仕組みから解決しようとする。「心」や「心がけ」という個人的であいまいなものではなく、人々がボランティア活動をした方が得するようにしたいからだ。たとえばデポジット制度が導入されたら、空き缶は拾った方が得になる。だから誰も捨てなくなる。先に見たグローバルタックスも、良いことをした方が企業としても利益につながる。その仕組み作りが重要だと思うのだ。(154頁)
 持続する活動のために
 勤めてからこそボランティア活動を
 キャパシティ(能力・容量)の問題
 ボランタリーな精神
 アウトプットをしよう
 人それぞれの楽しみ方で

おわりに 扉をあける

巻末付録 取り組みやすい活動ガイド
 テーマ1 食
 テーマ2 集めて寄付
 テーマ3 おカネの使い方
 テーマ4 社会福祉
 テーマ5 教育
 テーマ6 自然・環境
 テーマ7 国際協力
 活動に参加するときに、気を付けてほしいこと

文庫版あとがき
社会は与えられるものではない。自分たちで作り出すものだ。その主体性は観客席にいては得られない。ボランティアは特別なことではなく、そもそもの意味である「自発的な生き方」に戻して考えるのがいい。自発的に始めることが「ボランティア」なのだから、観客席を蹴って自発的に参加することが第一歩だ。(161頁)